(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の樹脂絶縁層及び複数の導体層を積層して多層化した積層構造体を有し、チップ部品の端子をはんだ接続するための複数の主面側接続端子が前記積層構造体の主面上に設けられるとともに、外部基板との電気的接続を図るための裏面側接続端子が前記主面の反対側にある裏面上に設けられた配線基板の製造方法であって、
前記複数の主面側接続端子及び前記複数の裏面側接続端子が形成されるとともに、最表層の前記樹脂絶縁層としてソルダーレジスト層が形成された前記積層構造体を複数準備する準備工程と、
前記裏面側へのめっき液の浸入を防止すべく2つの前記積層構造体の前記裏面側が互いに向かい合った状態で各積層構造体を一体化させる一体化工程と、
前記一体化工程の後に、無電解めっき及び電解めっきを行い、前記主面側接続端子の表面上に、後にバンプとなるべき金属部を形成するめっき工程と、
前記めっき工程の後、前記各積層構造体を分離して前記裏面を露出させる分離工程と
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
前記めっき工程を行った後であって前記分離工程を行う前に、熱を加えて前記金属部を溶かすことにより半球状のバンプを形成するリフロー工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
前記一体化工程では、接合用治具を用いて前記2つの積層構造体の外周部を挟み込んで固定するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板の製造方法。
前記一体化工程では、前記2つの前記積層構造体の間に、シート状のスペーサを介在させた状態で前記各積層構造体を一体化することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の配線基板の製法方法。
前記めっき工程では、前記無電解めっきにより銅めっき層を形成した後、前記電解めっきによりスズを含む含スズめっき層を形成することで、前記金属部を形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の配線基板の製法方法。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのマイクロプロセッサ等として使用される半導体集積回路素子(ICチップ)は、近年ますます高速化、高機能化しており、これに付随して端子数が増え、端子間ピッチも狭くなる傾向にある。一般的にICチップの底面には多数の端子が密集してアレイ状に配置されており、このような端子群はマザーボード側の端子群に対してフリップチップの形態で接続される。ただし、ICチップ側の端子群とマザーボード側の端子群とでは端子間ピッチに大きな差があることから、ICチップをマザーボード上に直接的に接続することは困難である。そのため、通常はICチップをICチップ搭載用配線基板上に搭載してなるパッケージを作製し、そのパッケージをマザーボード上に搭載するという手法が採用される。
【0003】
このパッケージを構成するICチップ搭載用配線基板としては、複数の樹脂絶縁層及び複数の導体層を積層して構成された多層配線基板が用いられる。そして、その多層配線基板の基板主面上にICチップを接続するための複数のICチップ接続端子が設けられるとともに、基板裏面上にマザーボード(母基板)に接続するための複数の母基板接続端子が設けられている。この種の多層配線基板において、導体層の配線パターンや各接続端子は、ファインピッチ化を図るために銅めっき(銅層)にて形成されている。そして、各接続端子の表面には、銅層を保護するためにニッケル−金めっき層などの金属層が形成されている。
【0004】
ところで、多層配線基板のICチップ接続端子に、はんだバンプを形成するためのはんだめっきを行う場合、はんだめっきのシード層を形成するために例えば無電解銅めっきを行う必要がある。しかしながら、無電解銅めっきを行うと、配線基板の表面に加えて、はんだめっきが必要のない裏面側にも銅めっき層が形成されてしまう。ここで、多層配線基板における裏面側の接続端子表面に、例えばニッケル−金めっき層が形成されている場合、銅めっき層が形成されることでその銅めっき層に金が溶け込んで、強度の弱い合金層が形成されてしまう。この場合、多層配線基板の信頼性が低下する。従って、ICチップ接続端子が形成される片側面のみに無電解銅めっきを行うことが望ましい。
【0005】
片側面のみにめっきを行う従来方法としては、めっきを施したくない表面にマスク用のテープを貼って非めっき部分を遮蔽する方法や、マスク用の治具を用いて非めっき部分を部分的に遮蔽する方法(例えば、特許文献1等参照)が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、マスク用のテープを使用する場合、片側面全体をテープで遮蔽する必要があるため、テープ材の材料コストが高くなる。さらに、多層配線基板の製品領域にテープを貼り付ける必要があり、めっき後にテープを剥がす際に、テープの粘着材等が製品領域の表面に残ると、多層配線基板の品質が低下してしまう。また、マスク用の治具を用いる場合でも、片側面全体を遮蔽する必要があるため、治具のサイズが大きくなるとともに重量も重くなり、取り扱い性が悪くなる。さらに、1枚の配線基板に対して1つのマスク用の治具が必要となるため、めっき工程での作業効率をあげることができなくなるといった問題が生じてしまう。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線基板の片面側のみに効率よく確実にめっきを行うことができる配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、複数の樹脂絶縁層及び複数の導体層を積層して多層化した積層構造体を有し、チップ部品の端子をはんだ接続するための複数の主面側接続端子が前記積層構造体の主面上に設けられるとともに、外部基板との電気的接続を図るための裏面側接続端子が前記主面の反対側にある裏面上に設けられた配線基板の製造方法であって、前記複数の主面側接続端子及び前記複数の裏面側接続端子が形成されるとともに、最表層の前記樹脂絶縁層としてソルダーレジスト層が形成された前記積層構造体を複数準備する準備工程と、前記裏面側へのめっき液の浸入を防止すべく2つの前記積層構造体の前記裏面側が互いに向かい合った状態で各積層構造体を一体化させる一体化工程と、前記一体化工程の後に、無電解めっき及び電解めっきを行い、前記主面側接続端子の表面上に、後にバンプとなるべき金属部を形成するめっき工程と、前記めっき工程の後、前記各積層構造体を分離して前記裏面を露出させる分離工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法がある。
【0010】
手段1に記載の発明によると、準備工程で準備された2つの積層構造体を用いて一体化工程が行われ、2つの積層構造体の裏面側が互いに向かい合った状態で各積層構造体が一体化される。このようにすると、各積層構造体において、裏面側接続端子が形成されている裏面側へのめっき液の浸入を防止することができる。そして、めっき工程により積層構造体の主面側に無電解めっき及び電解めっきが行われることで、主面側接続端子の表面に、後にバンプとなるべき金属部が形成される。この場合、裏面側接続端子の表面にめっきを施すことなく、主面側接続端子の表面にめっきを施すことで金属部を形成することができ、バンプを効率よく確実に形成することができる。また、裏面側接続端子の表面には、無電解めっき層が施されないため、従来技術のような強度の弱い合金層が形成されることがなく、裏面側接続端子の接続信頼性を十分に保つことができる。
【0011】
配線基板の製造方法において、めっき工程を行った後であって分離工程を行う前に、熱を加えて金属部を溶かすことにより半球状のバンプを形成するリフロー工程を含むことが好ましい。この場合、2つの積層構造体を一体化させた状態でリフロー工程を行うことができるので、個々の積層構造体と比較して剛性を確保でき、各積層構造体の反り等を防止することができる。このため、リフロー工程での作業性を向上させることができる。
【0012】
一体化工程では、テープ材を用いて2つの積層構造体を張り合わせて固定してもよい。このようにすると、外周部分のみにテープ材を貼り付けることで積層構造体の裏面側へのめっき液の浸入を防止することができる。この場合、従来技術のように裏面の全面をテープ材で覆う必要がなく、テープ材の材料コストを低く抑えることができる。
【0013】
一体化工程では、接合用治具を用いて2つの積層構造体の外周部を挟み込んで固定してもよい。このようにすると、枠状の接合用治具を用いて積層構造体の裏面側へのめっき液の浸入を防止することができる。またこの場合、従来技術のように裏面の全面を覆う必要がなく、接合用治具の軽量化を図ることができ、めっき工程での作業性が向上される。
【0014】
さらに、一体化工程では、2つの積層構造体の間に、シート状のスペーサを介在させた状態で各積層構造体を一体化してもよい。このように、2つの積層構造体の間にスペーサを介在させることで、十分な剛性を確保でき、積層構造体の反り等を防止することができる。このため、めっき工程での作業性を向上させることができる。
【0015】
めっき工程では、無電解めっきにより銅めっき層を形成した後、電解めっきによりスズを含む含スズめっき層を形成することで、金属部を形成することが好ましい。また、金属部は20μm以上の厚さを有することが好ましい。このように、比較的厚い金属部を形成すると、リフロー工程でその金属部を溶かすことにより、半球状のバンプを確実に形成することができる。
【0016】
裏面側接続端子は銅層を主体として形成され、その表面には銅層を覆う金属層(例えば、ニッケル−金めっき層)が形成されることが好ましい。このようにすると、裏面側接続端子を金属層によって保護することができ、外部基板と接続する際の接続信頼性を十分に確保することができる。
【0017】
分離工程を行う前に、めっき工程で形成しためっきレジスト及び無電解めっき層を除去するための除去工程を含むことが好ましい。この場合、2つの積層構造体を一体化させた状態で除去工程を行うことにより、めっきレジストや無電解めっき層を効率よく確実に除去することができる。
【0018】
積層構造体は、配線基板となる製品領域が平面方向に沿って縦横に複数配列した多数個取り用基板であってもよい。この場合、個々の配線基板に分割するための切断工程を分離工程と同時に行うことが好ましい。このようにすると、複数の配線基板を効率よく製造することができ、配線基板の製造コストを抑えることができる。
【0019】
積層構造体は、コア基板を含まずに形成されたコアレス配線基板であってもよい。コアレス配線基板の場合、個々の配線基板は薄くなるため十分な強度を得ることができないが、上記のように一体化工程を行って2枚のコアレス配線基板を一体化させることで、剛性を高めることが可能となる。この場合、めっき工程やリフロー工程での作業性が向上され、コアレス配線基板を確実に製造することができる。
【0020】
積層構造体を構成する複数の樹脂絶縁層は、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。樹脂絶縁層の形成材料の好適例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂等が挙げられる。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料、あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。
【0021】
積層構造体を構成する複数の導体層、主面側接続端子及び裏面側接続端子は、主として銅からなり、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、フルアディティブ法などといった公知の手法によって形成される。具体的に言うと、例えば、銅箔のエッチング、無電解銅めっきあるいは電解銅めっきなどの手法が適用される。なお、スパッタやCVD等の手法により薄膜を形成した後にエッチングを行うことで導体層や各接続端子を形成したり、導電性ペースト等の印刷により導体層や各接続端子を形成したりすることも可能である。
【0022】
主面側接続端子に接続するチップ部品としては、コンピュータのマイクロプロセッサとして使用されるICチップ、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory )などのICチップを挙げることができる。さらに、チップ部品としては、それらのICチップに加えて、チップトランジスタ、チップダイオード、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップコイルなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施の形態における多層配線基板の概略構成を示す断面図。
【
図2】上記多層配線基板の製造方法における準備工程を示す部分拡大断面図。
【
図3】上記多層配線基板の製造方法における準備工程を示す平面図。
【
図4】上記多層配線基板の製造方法における一体化工程を示す部分拡大断面図。
【
図5】上記多層配線基板の製造方法における一体化工程を示す平面図。
【
図6】上記多層配線基板の製造方法におけるめっき工程を示す部分拡大断面図。
【
図7】上記多層配線基板の製造方法におけるめっき工程を示す部分拡大断面図。
【
図8】上記多層配線基板の製造方法におけるめっき工程を示す部分拡大断面図。
【
図9】上記多層配線基板の製造方法におけるめっき工程を示す部分拡大断面図。
【
図10】上記多層配線基板の製造方法におけるリフロー工程を示す部分拡大断面図。
【
図11】上記多層配線基板の製造方法における分離工程を示す部分拡大断面図。
【
図12】別の実施の形態の製造方法における一体化工程を示す部分拡大断面図。
【
図13】別の実施の形態の製造方法における一体化工程を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施の形態の多層配線基板10の概略構成を示す断面図である。
【0025】
図1に示されるように、本実施の形態の多層配線基板10(配線基板)は、ICチップ搭載用基板であり、例えば縦50mm×横50mm×厚さ0.8mmのサイズを有する矩形平板状に形成されている。多層配線基板10は、コア基板を含まずに形成されたコアレス配線基板であって、ソルダーレジスト層20及び複数の樹脂絶縁層21,22,23と銅からなる導体層25とを交互に積層して多層化した積層構造体30を有している。各樹脂絶縁層21〜23は、同じ樹脂絶縁材料を主体として形成されている。本実施の形態における各樹脂絶縁層21〜23は、光硬化性を付与していない樹脂絶縁材料、具体的には熱硬化性エポキシ樹脂の硬化物を主体としたビルドアップ材を用いて形成されている。また、ソルダーレジスト層20は、例えば感光性エポキシ樹脂からなる最外層の樹脂絶縁層である。
【0026】
多層配線基板10において、積層構造体30における樹脂絶縁層22の上面31(主面)上には、チップ部品としてのICチップ12の端子13をはんだ接続するための複数の主面側接続端子41がアレイ状に配置されている。積層構造体30において上面側の最外層となる樹脂絶縁層23は、ソルダーレジスト層として機能する絶縁層である。この樹脂絶縁層23には、複数の主面側接続端子41を露出させるための開口部42が形成されている。主面側接続端子41は、銅層を主体として構成されており、その銅層の上面のみが銅以外のめっき層43で覆われている。めっき層43は、例えばニッケル−金めっき層からなる。また、開口部42内にて露出する接続端子41の表面(めっき層43)上には、複数のバンプ44が配設されている。各バンプ44は、例えばスズを含んで形成されており、ICチップ12の面接続端子13に電気的に接続されている。
【0027】
一方、積層構造体30における樹脂絶縁層21の下面32(裏面)上には、マザーボード(外部基板)との電気的接続を図るためのLGA(ランドグリッドアレイ)用の複数の裏面側接続端子45がアレイ状に配置されている。これら裏面側接続端子45は、主面側接続端子41よりも面積の大きな接続端子である。積層構造体30における樹脂絶縁層21の下面32はソルダーレジスト層20によってほぼ全体的に覆われており、そのソルダーレジスト層20には各接続端子45を露出させる開口部46が形成されている。裏面側接続端子45は、銅層を主体として構成されており、その銅層の下面のみが銅以外のめっき層47(金属層)で覆われている。めっき層47は、例えばニッケル−金めっき層からなる。
【0028】
樹脂絶縁層21,22には、それぞれビア穴33及びフィルドビア導体34が設けられている。各ビア導体34は、いずれも同一方向に(
図1では下面側から上面側に向かうに従って)拡径した形状を有し、各導体層25、主面側接続端子41及び裏面側接続端子45を相互に電気的に接続している。
【0029】
上記構成の多層配線基板10は例えば以下の手順で作製される。
【0030】
先ず、十分な強度を有する支持基板(ガラスエポキシ基板など)を準備し、その支持基板上に、従来周知のビルドアップ工程を行うことで樹脂絶縁層21〜23及び導体層25をビルドアップして積層構造体30を形成する。なお、支持基板上には、一対の銅箔を剥離可能な状態で密着させてなる積層金属シート体が配設されており、ビルドアップ工程後に、一対の銅箔の界面にて剥離することで、積層構造体30から支持基板を除去する。
【0031】
ここで、積層構造体30における樹脂絶縁層22の上面31側には主面側接続端子41や最外層の樹脂絶縁層23(ソルダーレジスト層)が形成されている。また、積層構造体30における樹脂絶縁層21の下面32は、銅箔が露出した状態となる。その後、積層構造体30における樹脂絶縁層21の下面32の銅箔を、サブトラクティブ法でパターニングすることで、樹脂絶縁層21上に裏面側接続端子45を形成する。次に、樹脂絶縁層21上に感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト層20を形成する。その後、所定のマスクを配置した状態で露光及び現像を行い、ソルダーレジスト層20に開口部46をパターニングする。
【0032】
そして、開口部42から露出している主面側接続端子41の上面、及び開口部46から露出している裏面側接続端子45の下面に対し、無電解ニッケルめっき、無電解金めっきを順次施すことにより、ニッケル−金めっき層からなるめっき層43,47を形成する。以上の準備工程を経て、
図2に示すような積層構造体30を複数準備する。なお、ここで得られる積層構造体30は、
図3に示されるように、多層配線基板10となる製品領域51が平面方向に沿って縦横に複数配列した多数個取り用基板として製造される。また、積層構造体30における各製品領域51の外側には、後述する切断工程で除去される非製品領域52が設けられている。
図2に示されるように、非製品領域52には、ソルダーレジスト層20及び複数の樹脂絶縁層21〜23のみが積層されており、ソルダーレジスト20及び各樹脂絶縁層21〜23間に導体層25は形成されていない。
【0033】
そして、
図4に示されるように、準備工程で得られた2つの積層構造体30を用い、裏面32側へのめっき液の浸入を防止すべく各積層構造体30の裏面32側が互いに向かい合った状態で各積層構造体30を一体化させる(一体化工程)。本実施の形態では、
図4及び
図5に示されるように、各積層構造体30において非製品領域52である外周縁に沿ってテープ材55を貼ることで、各積層構造体30が張り合わされて固定される。このテープ材55によって、各積層構造体30の側面が完全に覆われ、各裏面32側の基板境界部分が密封された状態となる。
【0034】
一体化工程の後、従来周知の手法に従って無電解めっき及び電解めっきを行い、後にバンプ44となるめっき層を形成する(めっき工程)。具体的には、先ず、無電解銅めっきを行い、各積層構造体30の外側に露出している全面に銅めっき層61(無電解めっき層)を形成する(
図6参照)。ここで、銅めっき層61は、複数の主面側接続端子41の表面を含む主面31側の表面全体に形成される。そして、最外層の樹脂絶縁層23にめっきレジスト形成用のドライフィルムをラミネートし、同ドライフィルムに対して露光及び現像を行う。この結果、開口部62を有する所定パターンのめっきレジスト63を樹脂絶縁層23の表面に形成する(
図7参照)。なお、めっきレジスト63の開口部62は、樹脂絶縁層23において主面側接続端子41の表面を露出させている開口部42に対応した位置に形成される。
【0035】
その後、
図8に示されるように、めっきレジスト63を形成した状態で選択的に電解スズめっきを行うことで、主面側接続端子41の表面上に、スズを含むスズめっき層65(金属部)を形成する。スズめっき層65の厚さは30μm程度である。そして、
図9に示されるように、めっきレジスト63を樹脂絶縁層23から剥離した後、エッチングを行い、全面に形成されている銅めっき層61を除去する(除去工程)。
【0036】
次いで、リフロー工程を行い、スズの融点以上の温度(例えば、240℃)に加熱して、主面側接続端子41上にてスズめっき層65を溶かすことにより半球状のバンプ44を形成する(
図10参照)。
【0037】
リフロー工程後、一体化されている各積層構造体30を製品領域51毎に切断して個々の製品である多層配線基板10に分割する(切断工程)。またこの切断工程では、テープ材55が貼られている非製品領域52は、捨て材となり除去される。このとき、非製品領域52が除去されることで、各積層構造体30においてテープ材55による固定部分がなくなる。この後、
図11に示されるように、それら積層構造体30を分離して積層構造体30の裏面32を露出させる(分離工程)。つまり、本実施の形態では、切断工程と分離工程とが同時に行われる。以上の製造工程を経ることで、
図1に示す多層配線基板10が製造される。
【0038】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0039】
(1)本実施の形態では、一体化工程を行うことにより、2つの積層構造体30の裏面32側が互いに向かい合った状態で各積層構造体30が一体化される。その後、めっき工程が行われるため、各積層構造体30の裏面32側へのめっき液の浸入を防止することができる。また、めっき工程により、積層構造体30の主面31側のみに無電解めっき及び電解めっきが行われることで、主面側接続端子41の表面に、バンプ44となるべきスズめっき層65が形成される。このようにすると、多層配線基板10において、裏面側接続端子45の表面に無電解銅めっきを施すことなく、主面側接続端子41の表面のみにバンプ44を効率よく確実に形成することができる。また、裏面側接続端子45の表面には、無電解銅めっきが施されないため、従来技術のような強度の弱い合金層が形成されることがなく、裏面側接続端子45の接続信頼性を十分に保つことができる。
【0040】
(2)本実施の形態では、2つの積層構造体30を一体化させた状態でリフロー工程が行われる。この場合、各積層構造体30を一体化させることで、個々の積層構造体30と比較して剛性を確保できるため、各積層構造体30の反り等を防止することができる。このため、リフロー工程での作業性を向上させることができる。
【0041】
(3)本実施の形態の一体化工程では、テープ材55を用いて2つの積層構造体30を張り合わせて固定している。このようにすると、各積層構造体30の非製品領域52である外周部分のみにテープ材55を貼り付けることで積層構造体30の裏面32側へのめっき液の浸入を防止することができる。この場合、従来技術のように裏面32側の全面をテープ材55で覆う必要がなく、テープ材55の材料コストを低く抑えることができる。
【0042】
(4)本実施の形態では、各積層構造体30の分離工程を行う前に、めっき工程で形成しためっきレジスト63及び無電解めっき層61を除去するための除去工程が行われる。この場合、積層構造体30を一体化させた状態で除去工程を効率よく確実に行うことができる。また、多層配線基板10の裏面32側にエッチング液等によるダメージが加わることがない。具体的には、裏面側接続端子45の表面には、めっき層47(例えば、ニッケル−金めっき層)が形成されており、そのめっき層47にダメージが加わることがない。従って、多層配線基板10の製造後において、裏面側接続端子45をめっき層47によって確実に保護することができ、マザーボードと接続する際の接続信頼性を十分に確保することができる。
【0043】
(5)本実施の形態では、各積層構造体30の分離工程と切断工程とが同時に行われているので、複数の多層配線基板10を効率よく製造することができ、多層配線基板10の製造コストを抑えることができる。
【0044】
(6)本実施の形態の多層配線基板10は、コア基板を含まずに形成されたコアレス配線基板であり、コア基板を有する配線基板と比較して薄く形成されている。この場合、個々の多層配線基板10の強度は弱くなるが、一体化工程で2枚の積層構造体30を一体化させることで、剛性を高めることが可能となる。この結果、めっき工程やリフロー工程での作業性が向上され、多層配線基板10を確実に製造することができる。
【0045】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0046】
・上記実施の形態では、一体化工程において、テープ材55を用いて2つの積層構造体30を固定していたが、これに限定されるものではない。例えば、
図12に示されるように、接合用治具70を用いて2つの積層構造体30を一体化させてもよい。具体的には、接合用治具70は、断面コ字状をなし、2つの積層構造体30において非製品領域52の外周部を挟み込んで固定する枠状の治具である。また、接合用治具70において、各積層構造体30を上下から挟み込む接触部には、積層構造体30との密着性を高めるためのシール材71が設けられている。この接合用治具70を用いて各積層構造体30を一体化させることにより、めっき工程において、積層構造体30の裏面32側へのめっき液の浸入を確実に防止することができる。またこの場合、従来技術のように裏面32側の全面を覆う必要がなく、接合用治具70の軽量化を図ることができ、めっき工程やリフロー工程等での作業性を向上させることができる。なお、軽量化を図る場合には樹脂製の接合用治具70を用いることが好ましいが、金属製の接合用治具70を用いてもよい。金属製の接合用治具70を用いる場合、各積層構造体30の反りを防止することができ、めっき工程やリフロー工程等を確実に行うことができる。
【0047】
・上記実施の形態では、一体化工程において、2つの積層構造体30の裏面32側を重ね合わせて一体化していたが、
図13に示すように、2つの積層構造体30の間に、シート状のスペーサ73を介在させた状態で各積層構造体30を一体化してもよい。このように、2つの積層構造体30の間にスペーサ73を介在させることで、十分な剛性を確保でき、積層構造体30の反り等を防止することができる。このため、めっき工程やリフロー工程等での作業性を向上させることができる。また、スペーサ73としては、積層構造体30の非製品領域52に配置されるように、枠状のスペーサ73を用いることができる。さらに、スペーサ73の両面に接着層を設けてもよく、この場合には、スペーサ73をテープ材として利用することができる。
【0048】
・上記実施の形態の多層配線基板10では、主面側接続端子41において、めっき層43上にバンプ44を形成していたが、このめっき層43は省略してもよく、主面側接続端子41の銅層にバンプ44を直接形成してもよい。但し、上記実施の形態のように主面側接続端子41にめっき層43を形成した方が、バンプ44を安定的に形成することができる。
【0049】
・上記実施の形態では、めっき工程において、無電解銅めっきを行って銅めっき層61を形成していたが、この無電解銅めっきの代わりに無電解スズめっきを行ってスズめっき層を形成してもよい。また、無電解銅めっきを行った後に、電解スズめっきによってスズめっき層65を形成していたが、電解はんだめっきを行ってはんだめっき層(即ち、組成中にスズを含む含スズめっき層)を形成してもよい。なお、はんだめっき層を形成するはんだめっき材料としては、例えば、90Pb−10Sn、95Pb−5Sn、40Pb−60SnなどのPb−Sn系はんだ、Sn−Sb系はんだ、Sn−Ag系はんだ、Sn−Ag−Cu系はんだ、Au−Sn系はんだなどがある。この場合、Pbフリーはんだの使用が好ましく、多層配線基板10の環境への負荷を低くすることができる。
【0050】
・上記実施の形態では、分離工程の前にリフロー工程を行うようにしたが、分離工程の後にリフロー工程を行ってもよい。また、分離工程の後工程として、各積層構造体30の切断工程を行うようにしてもよい。
【0051】
・上記実施の形態では、コア基板を含まずに形成された多層配線基板10に本発明を具体化していたが、これに限定されるものではない。例えば、コア基板の上面及び下面に複数の樹脂絶縁層及び複数の導体層を積層した積層構造体を有する配線基板に本発明を具体化してもよい。
【0052】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0053】
(1)手段1において、前記裏面側接続端子は銅層を主体として形成され、その表面上には前記銅層を覆う金属層が形成されていることを特徴とする配線基板の製造方法。
【0054】
(2)技術的思想(1)において、前記金属層は、ニッケル−金めっき層であることを特徴とする配線基板の製造方法。
【0055】
(3)手段1において、前記めっき工程で形成される前記金属部は、20μm以上の厚さを有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【0056】
(4)手段1において、前記分離工程を行う前に、前記めっき工程で形成しためっきレジスト及び無電解めっき層を除去するための除去工程を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【0057】
(5)手段1において、前記積層構造体は、前記配線基板となる製品領域が平面方向に沿って縦横に複数配列した多数個取り用基板であり、個々の配線基板に分割するための切断工程を前記分離工程と同時に行うことを特徴とする配線基板の製造方法。
【0058】
(6)手段1において、前記積層構造体はコアレス配線基板であることを特徴とする配線基板の製造方法。