(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物である紫外線吸収剤が、(b1)260〜400nmに吸収波長を有するヒドロキシフェニルトリアジン系化合物である紫外線吸収剤である請求項1に記載の紫外線遮蔽性積層塗膜。
基材である板状ポリカーボネート樹脂の波長420nm以上の可視光線の光透過率が80パーセント以上であり、得られた積層型硬化塗膜付きポリカーボネート樹脂基材の波長420nm以上の可視光線の光透過率が75パーセント以上であることを特徴とする、請求項6に記載の紫外線遮蔽性積層塗膜付き基材。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、(I)硬化性樹脂 100質量部および紫外線吸収剤 5〜100質量部を含有し、塗布時の膜厚が10〜200μmのプライマー層であって、[硬化性樹脂原料モノマー 100質量部あたりの紫外線吸収剤の含有量(質量部)]×[プライマー層の塗布時の膜厚(μm)]が100〜1000の範囲内にあることを特徴とするプライマー層 を備えることを第一の特徴とする。該プライマー層は、紫外線吸収剤を含有するため、本発明の積層塗膜に紫外線遮蔽性を与える。さらに、該プライマー層は、硬化性樹脂を主成分とするものであり、後述する特定のシリコーン系の光硬化性樹脂組成物を基材に対して強固に密着させ、本発明の積層塗膜の基材への密着性を改善する。一方、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜において、紫外線吸収剤を含むプライマー層は、シリコーン系の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなるオーバーコート層によって被覆されているため、長期間使用した場合、紫外線吸収剤の溶出が防止され、優れた紫外線遮蔽性が持続される。
【0021】
上記のプライマー層を用いず、シリコーン系の光硬化性樹脂組成物に大量の紫外線吸収剤を配合すると、高エネルギー線照射による硬化不良や塗膜の基材への密着不良が起こる場合がある。また、紫外線吸収剤を含有しないプライマー層を用いた場合には、シリコーン系の光硬化性樹脂組成物からなるオーバーコート層の密着性が不十分となる場合があり、また、得られる積層塗膜の紫外線遮蔽性が不十分となる。
【0022】
硬化性樹脂は、上記のプライマー層の主成分であり、硬化性樹脂原料モノマーを重合させてなる合成樹脂系の硬化性樹脂である。このような硬化性樹脂は、基材への密着性を改善するプライマーとして使用することができ、紫外線吸収剤との相溶性に優れるものであれば、特に限定されるものではなく、加熱硬化型であっても高エネルギー線照射による光硬化型のいずれであっても良い。かかる硬化性樹脂として、より具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が例示される。
【0023】
上記の硬化性樹脂原料モノマーは、アクリル系樹脂原料モノマーとしてアクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレートが例示される。同様に、ウレタン系樹脂原料モノマーとして、ジイソシアネート等のイソシアネート系モノマーおよびグリコール等のポリオール系モノマーが例示される。フッ素系樹脂原料モノマーとして、フッ化オレフィン系モノマーが例示される。ポリエステル系樹脂原料モノマーとして、テレフタル酸等の多価カルボン酸およびグリコール等のポリオール系モノマーが例示される。ポリアミド系樹脂原料モノマーとして、ε−カプロラクタム等のアミド系モノマー、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン系モノマーおよびテレフタル酸等の多価カルボン酸が例示される。ポリイミド系樹脂原料モノマーとして、例えば、ポリイミド系樹脂のプレポリマーであるポリアミド酸(ポリアミック酸)の原料であるテトラカルボン酸2無水物およびジアミン系モノマーが例示される。エポキシ系樹脂原料モノマーとして、ビスフェノール等の芳香族系モノマーおよびエピクロロヒドリン等のエポキシ官能性化合物が例示される。ポリオレフィン系樹脂原料モノマーとして、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素系モノマーが例示される。
【0024】
これらの硬化性樹脂は、公知の重合方法により、上記の硬化性樹脂原料モノマーを重合あるいは共重合させることによって得ることができる。基材上で容易に加熱硬化あるいは光硬化させることができることから、本発明のプライマー層を構成する硬化性樹脂として好適なものは、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂である。
【0025】
特に、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜において、好適な硬化性樹脂は(a)アクリル系樹脂であり、当該硬化性樹脂原料モノマーとして好適なモノマーは(a1)アクリル系樹脂原料モノマーである。かかる(a)アクリル系樹脂からなるプライマー層を用いることにより、紫外線吸収剤の配合が容易であり、容易に基材上に塗布して加熱または高エネルギー線照射によって容易に硬化させることができるためである。
【0026】
すなわち、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、好適には、(I)(a)アクリル系樹脂 100質量部、(b)紫外線吸収剤 5〜100質量部を含有し、塗布時の膜厚が10〜200μmのプライマー層であって、[(a1)アクリル系樹脂原料モノマー 100質量部あたりの(b)紫外線吸収剤の含有量(質量部)]×[プライマー層の塗布時の膜厚(μm)]が100〜1000の範囲内にあることを特徴とするアクリル系プライマー層 を備えることを第一の特徴とする。該プライマー層は、紫外線吸収剤を含有するため、本発明の積層塗膜に紫外線遮蔽性を与える。さらに、該プライマー層は、アクリル系樹脂を含有するので、後述する特定のシリコーン系の光硬化性樹脂組成物を基材に対して強固に密着させ、本発明の積層塗膜の基材への密着性を改善する。
【0027】
(a)成分は、プライマー層の主剤であるアクリル系樹脂であり、その主成分として、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレートの重合体が例示される。アクリル系樹脂として、好適にはポリアクリル樹脂またはポリメタクリル樹脂を主成分とするものであり、特に好適にはポリメタクリル樹脂を主成分とするものが使用できる。上記アクリル系樹脂は、紫外線吸収剤の配合によって紫外線遮蔽性に優れたプライマー層を形成し、本願発明のオーバーコート層を形成するシリコーン系の光硬化性樹脂組成物との密着性を著しく改善することができる。
【0028】
(a)成分であるアクリル系樹脂は、(a1)アクリル系樹脂原料モノマーを構成単位とする重合体であり、本発明においては、(a1)アクリル系樹脂原料モノマーと公知の重合開始剤を含むプライマーコーティング組成物を基材上に塗布し、加熱あるいは紫外線等の高エネルギー線を光照射することにより得ることができる。
【0029】
(a1)アクリル系樹脂原料モノマーは、より具体的にはアクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレートを含有する単量体であり、これらのモノマーから選択される1種類または2種類以上の混合物を使用できる。同様に、本発明において使用できる(a1)アクリル系樹脂原料モノマーには、これらのモノマーおよびこれらのモノマーと共重合可能な不飽和結合含有モノマーからなる単量体混合物が含まれ、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、多官能性アクリレートおよび多官能性メタクリレートからなる群から選択される1種類または2種類以上のモノマー 70〜100質量%およびこれらのモノマーと共重合可能な不飽和結合含有モノマー 0〜30質量%からなる単量体混合物を使用することができる。
【0030】
(a1)アクリル系樹脂原料モノマーは、好適には、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマーまたはこれらのモノマーおよびこれらのモノマーと共重合可能な不飽和結合含有モノマーからなる単量体混合物である。より具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートであるアクリル酸エステル系モノマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートであるメタクリル酸エステル系モノマーを好適に使用することができる。また、これらのモノマーと共重合可能な不飽和結合含有モノマーとして、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物が例示される。
【0031】
本発明において、得られる紫外線遮蔽性積層塗膜の基材への密着性および紫外線吸収剤の配合による紫外線遮蔽性の点から、(a)成分であるアクリル系樹脂は、上記のメタクリル酸エステル系モノマーを主たる構成要素とするポリメタクリル樹脂を主成分とするものが好適である。特に、(a1)成分であるメチルメタクリレートを主たる構成要素とするポリメタクリル酸メチル樹脂を用いることが好ましい。特に、(a1)成分の75〜100質量%がメチルメタクリレートであり、該(a1)成分を重合させてなるポリメタクリル酸メチル樹脂が好ましい。
【0032】
(b)紫外線吸収剤は本発明の積層塗膜に紫外線遮蔽性を付与する成分で、該(b)成分は、硬化性樹脂、好適には(a)アクリル系樹脂 100質量部に対して5〜100質量部配合される。なお、本発明において、プライマー層を形成するプライマーコーティング剤組成物は、硬化前の段階では、硬化性樹脂原料モノマー、好適には(a1)アクリル系樹脂原料モノマーおよび(b)紫外線吸収剤を含有するものである。従って、上記(b)成分の配合量は、アクリル系樹脂が硬化してプライマー層を形成する前の段階では、(a1)アクリル系樹脂原料モノマー 100質量部に対する配合量である。
【0033】
(b)紫外線吸収剤の配合量は、硬化性樹脂、好適には(a)アクリル系樹脂 100質量部に対して5〜100質量部の範囲内であり、好適には7〜60質量部であり、より好適には7.5〜40質量部であり、最も好適には8〜20質量部である。(b)紫外線吸収剤の配合量が前記下限未満では、本発明に係る積層塗膜の紫外線遮蔽性が不十分となる。また、同配合量が前記上限を超えると上記のプライマー層を用いた場合であっても、シリコーン系の光硬化性樹脂組成物からなる硬化皮膜の基材への密着性が不十分であり、本発明の積層塗膜の剥落等の密着不良が起こる。
【0034】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を、波長300nm付近の紫外線によって光分解しやすいポリカーボネート樹脂等の基材を被覆する基材の保護層として用いる場合、(b)紫外線吸収剤は、(b1)260〜400nmに吸収波長を有する紫外線吸収剤であることが好ましい。また、成分(b)は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物およびシアノアクリレート系化合物からなる群から選択される220〜400nmに吸収波長を有する紫外線吸収剤であることが特に好ましく、これらは一種単独で用いるほか、二種以上を併用することができる。
【0035】
成分(b)は、より具体的には、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの1−メトキシ−2−プロパノール溶液、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2´エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2ヒドロキシ−4−[1−オクチルカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等のヒドロキシフェニルトリアジン系化合物;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3´−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3´−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系化合物から選択される1種類以上の紫外線吸収剤である。最も好ましくは、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物である。
【0036】
これらの紫外線吸収剤は市販されており、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の紫外線吸収剤として、チバ・スペシャリティ・ケミカル株式会社から提供されている品番(登録商標:TINUVIN、チヌビン):「TINUVIN400」、「TINUVIN405」、「TINUVIN479」を好適に使用することができ、特に好ましくは、「TINUVIN400」(登録商標:TINUVIN、チヌビン)が使用できる。
【0037】
以下、好適なヒドロキシフェニルトリアジン系化合物の紫外線吸収剤の構造式を例示する。
【化1】
【0038】
【化2】
【0039】
【化3】
【0040】
本発明の紫外線吸収性積層塗膜を構成するプライマー層は、硬化性樹脂、好適には(a)アクリル系樹脂 100質量部および(b)紫外線吸収剤 5〜100質量部を含有し、硬化して同プライマー層を形成するプライマーコーティング組成物は、硬化性樹脂原料モノマー、好適には(a1)アクリル系樹脂原料モノマー100質量部および(b)紫外線吸収剤 5〜100質量部を含有してなるものであるが、より好適には、さらに、(c)ヒンダードアミン系光安定剤を含むことが好ましい。かかる成分(c)は紫外線照射により発生したラジカル種を捕捉する効果を有するため、前記の紫外線吸収剤(成分(b))と併用することにより、上記のプライマー層の紫外線防御効果、耐候性の改善について、優れた相乗効果が得られるものである。かかるヒンダードアミン系光安定剤は低分子量型であっても、高分子量型であってもよい。また本発明の紫外線吸収性積層塗膜を構成するプライマー層に、2種類以上の(c)ヒンダードアミン系光安定剤を混合して配合することができる。本発明の紫外線吸収性積層塗膜と基材、特にポリカーボネート樹脂からなる基材との密着性の観点から、好ましくは、低分子量型のヒンダードアミン系光安定剤である。
【0041】
低分子量型のヒンダードアミン系光安定剤として、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート、{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエチル}−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレートが例示される。
【0042】
高分子量型のヒンダードアミン系光安定剤として、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]]、ポリ[{6−(1,1,3−トリメチルペンチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)イミノ}オクタメチレン{(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)イミノ}]、ポリ[(6−モルフォリノ−S−トリアジン−2,4−ジ)[1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル]イミノ]−ヘキサメチレン[(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)イミノ}]が例示される。
【0043】
これらの光安定剤は市販されており、チバ・スペシャリティ・ケミカル株式会社から提供されている品番(登録商標:TINUVIN、チヌビン):「TINUVIN 111 FDL」、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 144」、「TINUVIN 152」、「TINUVIN 292」、「TINUVIN 5100」等を挙げることができ、これらの光安定剤の構造は、下記式の通りである。
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
【化7】
【0048】
【化8】
【0049】
【化9】
【0050】
硬化して上記のプライマー層を形成するプライマーコーティング組成物において、成分(c)の配合量は、合成樹脂原料モノマー、好適には(a1)アクリル系樹脂原料モノマー100質量部に対して0.1〜20質量部であり、好適には0.5〜15質量部であり、1〜10質量部であることが好ましい。前記下限未満では、成分(b)との相乗効果として生じるプライマー層の紫外線遮蔽性、耐候性の改善が不十分となる場合があり、成分(c)の配合量があまりに多すぎると、特に該プライマー層を紫外線により硬化させた場合にプライマー層の硬化特性が低下する場合がある。
【0051】
硬化して上記のプライマー層を形成するプライマーコーティング組成物は、さらに、(d)脂肪族不飽和結合を有するオルガノアルコキシシランを含むことが好ましい。かかる成分(d)は、(a1)アクリル系樹脂原料モノマーと架橋してプライマー層の架橋度を向上させ、上記プライマーコーティング組成物を、加熱または高エネルギー線照射により硬化性を付与する成分である。成分(d)は、フッ素原子を含んでも、あるいは含まなくてもどちらでもよいが、一般に、フッ素原子を含まない。
【0052】
かかる成分(d)は一般式:R
1aYSi(OR
2)
3−aで表される化合物であることが好ましい。式中、R
1は脂肪族不飽和結合を有しない置換もしくは非置換の一価の炭化水素基(例えば、炭素原子数1〜20)であり、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,イソブチル基,オクチル基,デシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;3,3,3−トリフルオロメチル基、パーフルオロブチルエチル基,パーフルオロオクチルエチル基等のフルオロアルキル基が例示される。これらの中でも、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,イソブチル基が好ましい。R
2はアルキル基であり、炭素原子数1〜10のアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基であることが特に好ましい。Yは脂肪族不飽和結合を有する一価の有機基(例えば、炭素原子数1〜10)であり、メタクリルオキシ基,アクリルオキシ基,3−(メタクリルオキシ)プロピル基、3−(アクリルオキシ)プロピル基等のアクリル基含有有機基;ビニル基,ヘキセニル基,アリル基等のアルケニル基;スチリル基,ビニルエーテル基等が例示される。aは0または1である。
【0053】
成分(d)として、具体的には、3−メタクリルオキシトリメトキシシラン、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシランが挙げられる。
【0054】
硬化して上記のプライマー層を形成するプライマーコーティング組成物において、成分(d)の配合量は、合成樹脂原料モノマー、好適には(a1)アクリル系樹脂原料モノマー100質量部に対して1〜100質量部であり、5〜50質量部であることが好ましい。
【0055】
上記の成分(a1)〜成分(d)を含有するプライマーコーティング組成物は、基材上に塗布し、任意の方法で加熱することにより基材表面に加熱硬化型のプライマー層を形成することができる。一方、紫外線等の高エネルギー線照射により光硬化型のプライマー層を形成する場合には、上記のプライマーコーティング組成物に、公知の光重合開始剤を配合する必要がる。
【0056】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を構成するプライマー層として、光硬化型のプライマー層を使用する場合、上記の光重合開始剤は(e)波長360〜450nmに吸収波長を有する光重合開始剤であることが好ましい。本発明のプライマー層は(b)紫外線吸収剤を含有するため、波長300nmよりも低波長側に吸収を有する光重合開始剤を用いた場合、紫外線等の高エネルギー線照射に対して硬化阻害を起こす場合があるためである。
【0057】
さらに、(e)波長360〜450nmに吸収波長を有する光重合開始剤を用いることで、紫外線硬化時に、ポリカーボネート樹脂等の光分解・劣化を促す300nm付近の紫外線は、上記の成分(b)によって吸収され、ポリカーボネート樹脂等への影響が小さい波長である360〜450nmの紫外線によって硬化が促進されるので、上記プライマー層の紫外線硬化に伴うポリカーボネート樹脂等の基材の光分解・劣化を抑制できる利点がある。
【0058】
特に好適な成分(e)として、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オンが例示できる。これらの光重合開始剤は市販されており、チバ・スペシャリティ・ケミカル株式会社から提供されている品番(登録商標:イルガキュア):「イルガキュア907」、「イルガキュア184」、「イルガキュア369」等を好適に使用することができる。
【0059】
上記プライマー層は、硬化性樹脂、好適には前記の成分(a)および成分(b)を含有するものであり、さらに、任意で上記の(c)〜(e)を含有するものである。また、硬化して上記のプライマー層を形成するプライマーコーティング組成物は、硬化性樹脂原料モノマー、好適には上記の成分(a1)および成分(b)を含有するものであり、さらに、任意で上記の(c)〜(e)を含有するものである。
【0060】
上記のプライマーコーティング組成物において、さらに、任意で光硬化に用いる光重合開始剤に代えて、あるいは光重合開始剤と共に、(f)ラジカル重合開始剤を使用することができる。該ラジカル重合開始剤は、プライマー層の熱硬化を促進する成分であり、一般にラジカル重合法に使用される従来公知の化合物が用いられる。具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル),2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル),2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾビス系化合物;過酸化ベンゾイル,過酸化ラウロイル,tert−ブチルパーオキシベンゾエート,tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物が例示される。
【0061】
上記のプライマーコーティング組成物において、上記のラジカル重合開始剤と共に公知のシラノール縮合触媒を配合することができる。また、上記の各成分の希釈剤として、有機溶剤を配合することができる。さらに上記のプライマーコーティング組成物には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、酸化防止剤;増粘剤;レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤;各種顔料,染料等の着色剤;アルミニウムペースト,タルク,ガラスフリット,金属粉などの充填剤;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT),フェノチアジン(PTZ)等のアクリレート類の自己重合禁止剤などを添加配合することができる。
【0062】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を構成するプライマー層は、塗布時の膜厚が10〜200μmの範囲にあることが必要であり、好ましくは膜厚が12.5〜50μmの範囲であり、特に好ましくは膜厚が15〜30μmの範囲である。プライマー層の膜厚が前記下限未満では、紫外線を遮蔽する役割を果たすプライマー層が薄すぎるため、積層塗膜の紫外線遮蔽性が不十分となる場合がある。一方、プライマー層の膜厚が前記上限を超えると、基材との密着性を高めるためのプライマー層が厚すぎるため、結果的に本願発明のオーバーコート層を形成するシリコーン系の光硬化性樹脂組成物との密着性を十分に改善することができず、本発明の積層塗膜の基材からの剥落等の密着不良が起こる。
【0063】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を構成するプライマー層は、第一に紫外線を遮蔽する保護層であり、第二にオーバーコート層であるシリコーン系の光硬化性樹脂組成物からなる硬化物と基材との密着性を改善する層である。一方、紫外線吸収剤の配合量が増加すれば、積層塗膜全体のの紫外線遮蔽性は改善されるが、プライマー層を介したシリコーン系の光硬化性樹脂組成物からなる硬化物と基材との密着性は低下する。また、プライマー層が薄すぎれば、密着性の改善効果が不十分であり、さらに紫外線遮蔽性も低下する。しかしながら、プライマー層が厚すぎれば、シリコーン系の光硬化性樹脂組成物からなる硬化物と基材との密着性の改善効果が不十分である。
【0064】
上記のように、プライマー層中の紫外線吸収剤の配合量およびプライマー層の膜厚は、各々、本発明の積層塗膜の紫外線遮蔽性および基材への密着性に密接に関連し、かつ相反する影響を本発明の積層塗膜に与える。従って、両者が一定の関係になければ、本願発明の目的を達成することはできない。
【0065】
より具体的には、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を構成するプライマー層(I)は、[硬化性樹脂原料モノマー 100質量部あたりの紫外線吸収剤の含有量(質量部)]と[プライマー層の塗布時の膜厚(μm)]を乗した値が100〜1000の範囲内にあることを特徴とする。前記の紫外線吸収剤の含有量が前記の上限値または下限値にあり、プライマー層の塗布時の膜厚が前記の上限値または下限値にある場合でも、当該値が上記関係を満たさない場合には、紫外線遮蔽性および基材への密着性のいずれかが不十分となる。一方、プライマー層中の紫外線吸収剤の配合量とプライマー層の膜厚を乗じて得た値が前記の範囲内であっても、紫外線吸収剤の配合量またはプライマー層の膜厚が前記の範囲内にない場合には、得られる積層塗膜の紫外線遮蔽性および基材への密着性のいずれかが不十分となり、やはり本発明の目的を達成することができない。
【0066】
本発明において、好適な硬化性樹脂はアクリル系樹脂であり、[(a1)アクリル系樹脂原料モノマー 100質量部あたりの(b)紫外線吸収剤の含有量(質量部)]と[プライマー層の塗布時の膜厚(μm)]を乗じた値は、好ましくは120〜600の範囲内であり、より好ましくは140〜500の範囲内であり、特に好ましくは160〜400の範囲である。最も好適には、170〜350の範囲であり、該アクリル系プライマー層およびシリコーン系の光硬化物からなる積層塗膜は、紫外線遮蔽性および基材への密着性に優れた基材の保護層となる。
【0067】
次に、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を構成する、(II)上記プライマー層表面に形成された下記成分(A)〜成分(D)を含有する光硬化性樹脂組成物を高エネルギー線照射により光硬化させてなる硬化層について詳細に説明する。
(A)多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレート 100質量部、
(B)脂肪族不飽和結合を有するオルガノアルコキシシラン 1〜100質量部、
(C)コロイダルシリカ 1〜300質量部
(D)光重合開始剤 0.01〜30質量部
【0068】
上記の光硬化性樹脂組成物を光硬化させてなる硬化層は、硬度、油脂汚れ付着防止性、油脂汚れ拭き取り性、耐擦傷性、透明性、撥水性、密着性、平滑性および均一性に優れた耐侯性の硬化皮膜であり、前述のプライマー層を介して基材に強固に密着され、オーバーコート層として基材を保護する役割を果たす。
【0069】
上記の光硬化性樹脂組成物は、本質的に上記成分成分(A)〜成分(D)からなるものであるが、さらに、任意で下記成分(E)〜成分(F)を含むことが好ましい。
(E)アミノ変性オルガノポリシロキサン 0.2〜20質量部、
(F)アルコールを含む有機溶剤 10〜1000質量部
【0070】
また、上記の光硬化性樹脂組成物は、上記の成分(A)〜成分(F)に加えて、下記成分(G)を任意で含むものであっても良い。
(G)水 0.5〜20質量部
【0071】
以下、成分(A)〜成分(I)について、詳細に説明する。
【0072】
成分(A)は多官能性アクリレートまたは多官能性メタクリレートであり、組成物に紫外線線硬化性を付与する成分である。該成分(A)は多官能性アクリレートであることが好ましく、フッ素原子および/またはケイ素原子を含んでも、あるいは含まなくてもどちらでもよいが、フッ素原子およびケイ素原子を含まないことが好ましい。かかる多官能性アクリレートは、2官能性以上(例えば、2官能性〜20官能性)のアクリレートモノマーまたは2官能性以上(例えば、2官能性〜20官能性)のアクリレートオリゴマーであり、硬化性の点から、5官能性以上(例えば、5官能性〜10官能性)のアクリレートを用いることが好ましい。かかる多官能性アクリレートとして、具体的には、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート,1,4−ブタンジオールジアクリレート,エチレングリコールジアクリレート,ジエチレングリコールジアクリレート,テトラエチレングリコールジアクリレート,トリプロピレングリコールジアクリレート,ネオペンチルグリコールジアクリレート,1,4−ブタンジオールジメタクリレート,ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート,テトラエチレングリコールジメタクリレート,1,3−ブチレングリコールジアクリレート,トリエチレングリコールジアクリレート,トリイソプロピレングリコールジアクリレート,ポリエチレングリコールジアクリレート,ビスフェノールAジメタクリレート等の2官能性アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリアクリレート,トリメチロールプロパントリメタクリレート,ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート,トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート等の3官能性アクリレートモノマー;ペンタエリスリトールテトラアクリレート,ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の4官能性アクリレートモノマー;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等の5官能性以上のアクリレートモノマー;ビスフェノールAエポキシジアクリレート,6官能性芳香族ウレタンアクリレート[商標:Ebecryl220],脂肪族ウレタンジアクリレート[商標:Ebecryl230],4官能性ポリエステルアクリレート[商標:Ebecryl80]のアクリレートオリゴマーが挙げられる。これらの多官能性アクリレートは、1種を単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、5官能性以上のアクリレートを含むことが好ましく、その含有量は成分(A)の30重量%以上(例えば30重量%〜100重量%)であることが好ましく、50重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
【0073】
成分(B)は脂肪族不飽和結合を有するオルガノアルコキシシランであり、前記の成分(d)と同様の成分が例示される。上記の光硬化性樹脂組成物において、成分(B)は、(C)コロイダルシリカを表面処理して成分(A)との親和性を向上させ、当該組成物に良好な保存安定性を付与する。また、硬化時には、成分(A)と架橋して硬化物の架橋度を向上させる点で、上記の光硬化性樹脂組成物に紫外線硬化性を付与する成分でもある。成分(B)の配合量は成分(A) 100質量部に対して1〜100質量部であり、5〜50質量部であることが好ましい。
【0074】
成分(C)はコロイダルシリカであり、上記の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる皮膜を高硬度化して耐擦傷性を向上させる成分である。成分(C)の配合量は成分(A) 100質量部に対して1〜300質量部であり、5〜200質量部であることが好ましい。成分(C)のコロイダルシリカは本発明の目的を損なわない限り、シリカ表面が加水分解性ケイ素基やシラノール基により修飾されていてもよい。また、成分(B)によるシリカ表面の処理効果が得られるため、未修飾のコロイダルシリカであっても用いることができるという利点がある。かかる未修飾のコロイダルシリカは酸性または塩基性の分散体形態で入手できる。本発明においてはいずれの形態のコロイダルシリカであっても使用できるが、塩基性コロイダルシリカを使用する場合は組成物のゲル化を防止するため、またシリカがコロイド分散系から沈殿することを防止するため、有機酸の添加のような手段によって分散体を酸性にすることが好ましい。
【0075】
成分(C)の分散媒は特に限定されるものではないが、乾燥性などの面から比較的低沸点(例えば、1気圧で30〜200℃、特に40〜120℃)の溶媒、すなわち通常の塗料用溶媒であることが好ましい。かかる分散媒として、具体的には、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−メチルプロパノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PGME)のようなアルコール類(例えば、炭素原子数1〜20);メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類(例えば、炭素原子数1〜10);ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトンなどが例示される。特に、水、アルコール類、特にプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)を分散媒として用いることが好ましい。以下、コロイダルシリカとそれを分散させている分散媒との一体物をコロイダルシリカ分散液という。コロイダルシリカの平均粒子径は、その分散性の点から200nm以下であることが適当であり、平均粒子径が1〜100nmであることが好ましく、1〜50nmであることが特に好ましい。また、コロイダルシリカ分散液として用いる場合、コロイダルシリカの含有量、すなわち濃度は任意であるが、取り扱いの容易さから10〜70重量%であることが好ましい。
【0076】
成分(D)は、光重合開始剤であり、紫外線等の高エネルギー線照射により本発明組成物の硬化を促進させる成分である。本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、上記の光硬化性樹脂組成物を紫外線照射により硬化させる場合、ポリカーボネート樹脂等の光分解・劣化を促す300nm付近の紫外線は、当該硬化層の下にあるプライマー層によって吸収され、ポリカーボネート樹脂等からなる基材の光分解・劣化を抑制できる利点がある。
【0077】
成分(D)は、光重合開始剤は、特に、より具体的には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンから選択される光重合開始剤であることが好ましく、これらは一種単独で用いるほか、二種以上を併用することができる。
【0078】
さらに、ポリカーボネート樹脂等の光分解・劣化を促す300nm付近の紫外線を用いた高エネルギー線硬化を避けるために、成分(D)として、(D1)300〜450nmに吸収波長を有する光重合開始剤を好適に用いることができる。特に、(D2)360〜450nmに吸収波長を有する光重合開始剤が最も好ましく用いられる。これらの光重合開始剤として、上記の成分(e)と同一の成分が例示される。
【0079】
成分(D)の配合量は成分(A) 100質量部に対して0.01〜30質量部であり、硬化皮膜の耐候性の改善性と組成物全体の硬化特性の見地から、5〜20質量部であることが好ましい。前記下限未満では、組成物の紫外線硬化性が不十分であり、前記上限を超えると、得られる硬化皮膜の物理的強度が低下する場合があるためである。
【0080】
上記の光硬化性樹脂組成物は、本質的に上記成分(A)〜成分(D)からなるものであるが、さらに、任意で(E)アミノ変性オルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。成分(E)は、オーバーコート層を構成する硬化皮膜に、撥水性や潤滑性を付与する成分であり、分子鎖末端や側鎖の一部に、該アミノ官能性有機基を有するオルガノポリシロキサンフルイドが挙げられる。
【0081】
成分(E)のアミノ官能性有機基としては、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基、3−(2−アミノエチル)アミノプロピル基、6−アミノヘキシル基が例示される。アミノ官能性有機基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;水酸基が挙げられる。これらの中でもメチル基が好ましい。オルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状もしくは一部分岐を有する直鎖状であることが好ましい。またそのシロキサン重合度は、2〜1000の範囲であることが好ましく、2〜500の範囲がより好ましく、2〜300の範囲が特に好ましい。
【0082】
このような成分(E)としては、下記式のような1級アミノ基を有するオルガノポリシロキサンが好ましく例示される。下記平均分子式中、Meはメチル基である。
【0083】
【化10】
【0084】
上記の光硬化性樹脂組成物において、成分(E)の配合量は成分(A)100質量部に対して0.2〜20質量部であり、1〜10質量部であることが好ましい。また、成分(E)の配合量は、成分(E)中の合計アミノ基のモル量が、成分(A)中のアクリレート官能基またはメタクリレート官能基のモル量よりも少なくなるような量であることがより好ましい。さらに、良好な性能が得られることから、成分(E)の重量が成分(A)の重量の1/5以下であることが好ましい。
【0085】
上記の光硬化性樹脂組成物は、さらに、希釈剤として、溶剤、例えば、有機溶剤、特にアルコールを配合することができ、特に、(F)アルコールを含む有機溶剤が好ましく使用される。
【0086】
成分(F)はアルコール単独でもよく、アルコールと他の溶剤の混合物であってもよい。また、アルコール、他の溶剤ともに2種以上を併用してもよい。上記の光硬化性樹脂組成物において、成分(F)の配合量は、成分(A)100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲であることが好ましく、10〜500重量の範囲がより好ましい。
【0087】
成分(F)は、具体的にはアルコールとして、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,ブタノール,イソブチルアルコール,エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,エチレングリコールモノメチルエーテル,ジエチレングリコールモノメチルエーテル,トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(PGME)のようなアルコール類が挙げられる。また、アルコール以外の有機溶剤としては、アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソブチルケトン等のケトン(例えば、炭素原子数2〜20);トルエン,キシレン等の芳香族系炭化水素(例えば、炭素原子数2〜20);ヘキサン,オクタン,ヘプタン等の脂肪族系炭化水素(例えば、炭素原子数5〜20);クロロホルム,塩化メチレン,トリクロロエチレン,四塩化炭素等の有機塩素系溶剤(例えば、炭素原子数1〜20);酢酸エチル,酢酸ブチル,酢酸イソブチル等のエステル類(例えば、炭素原子数1〜20)が挙げられる。アルコールの含有率は、全溶剤合計量の10〜90重量%の範囲であることが好ましく、30〜70重量%がより好ましい。
【0088】
さらに、上記の光硬化性樹脂組成物は、成分(G)として、水を配合することができる。かかる成分(G)は、成分(B)の加水分解に使用される任意の成分であり、その配合量は、成分(B)100質量部に対して1〜50質量部の範囲が好ましく、5〜30質量部の範囲がより好ましい。なお、成分(G)は、通常、成分(C)のコロイダルシリカ表面のシラノール基と反応し、さらに本成分(G)によって加水分解される。このため本成分(G)の配合量は成分(B)を完全に加水分解し得る量より少なくてもよい。
【0089】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜において、上記の光硬化性樹脂組成物からなる光硬化層はオーバーコート層であり、硬度、油脂汚れ付着防止性、油脂汚れ拭き取り性、耐擦傷性に優れる。一方、前記のプライマー層は、紫外線遮蔽性および上記の光硬化層の密着性を改善する機能を有する。しかしながら、上記の光硬化性樹脂組成物に、さらに(H)紫外線吸収剤 0.01〜20質量部および(J)ヒンダードアミン系光安定剤 0.1〜15質量部を配合することができ、紫外線遮蔽性積層塗膜の機能をさらに改善することができる。特に、前記のプライマー層に配合したものと異なる種類の紫外線吸収剤またはヒンダードアミン系光安定剤をオーバーコート層に配合することもでき、紫外線遮蔽性をさらに改善することができる。
【0090】
上記の光硬化性樹脂組成物に配合することができる(H)紫外線吸収剤または(J)ヒンダードアミン系光安定剤は、上記の成分(b)または成分(c)と同じ成分が例示される。
【0091】
上記の成分(H)および成分(J)を含む光硬化性樹脂組成物からなる光硬化型の硬化皮膜を用いる場合、(H1)220〜400nmに吸収波長を有する紫外線吸収剤0.01〜20質量部および(D1)300〜450nmに吸収波長を有する光重合開始剤0.01〜30質量部を併用することが特に好ましい。上記の成分(H1)が吸収する220〜400nmの短波長の紫外線に比して、若干長波長である300〜450nmの紫外線によって本発明組成物の硬化を促進させることができ、該成分(D1)は、成分(H1)の紫外線吸収剤による硬化阻害をほとんど受けずに、硬化してオーバーコート層となる光硬化性樹脂組成物を紫外線によって迅速かつ容易に硬化させることができるという利点があるためである。
【0092】
上記の光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、上記以外の成分を添加配合してもよい。たとえば、テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,メチルトリイソプロポキシシラン,エチルトリメトキシシラン,エチルトリエトキシシラン,エチルトリイソプロポキシシラン等のアルキルアルコキシシランが挙げられる。
【0093】
さらに上記の光硬化性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、必要に応じて、酸化防止剤;増粘剤;レベリング剤、消泡剤、沈降防止剤、分散剤、帯電防止剤、防曇剤などの界面活性剤;各種顔料,染料等の着色剤;アルミニウムペースト,タルク,ガラスフリット,金属粉などの充填剤;ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT),フェノチアジン(PTZ)等のアクリレート類の自己重合禁止剤などを添加配合することができる。当該組成物の保存安定性の見地から、フェノチアジン(PTZ)等のアクリレート類の自己重合禁止剤を成分(A)100質量部に対して、0.00001〜0.001質量部配合することが特に好ましい。
【0094】
上記の光硬化性樹脂組成物は各成分の相溶性に優れるため外観が均一であり、前記のプライマー層上に塗布した場合、均一で美観に優れた塗膜を形成することができる。また、公知の塗工方法で塗布した場合に、所望の厚さで塗布することができ、また、液だれや塗布後の諸成分の分離を生じないという利点を有する。
【0095】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、(I)プライマー層上に(II)光硬化性樹脂組成物を塗布して高エネルギー線により光硬化させることにより得られた硬化層により順次該基材を被覆してなることにより得ることができる。
【0096】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜により被覆される基材は特に限定されないが、波長300nm付近の紫外線によって光分解しやすいポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂からなる基材が最も好ましい。材質としては、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンイソフタレート,ポリエチレン−2,6−ナフタレート,ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン,ポリ(メタ)アクリル酸エステル,ポリアクリロニトリル,ポリ酢酸ビニル,ポリカーボネート,セロファン,ポリイミド,ポリエーテルイミド,ポリフェニレンスルフォン,ポリスルフォン,ポリエーテルケトン,アイオノマー樹脂,フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂;メラミン樹脂,ポリウレタン樹脂,エポキシ樹脂,フェノール樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アルキッド樹脂,ユリア樹脂,シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等の各種プラスティック、ガラス、セラミックス、アルミ,亜鉛,鉄,ニッケル,コバルト,銅,スズ,チタン,金,銀,白金またはこれらを含む合金等の金属類、コンクリート、木、繊維布帛、繊維、不織布、皮革、紙、及び石(大理石を含む)が挙げられる。
【0097】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、波長300nm付近の紫外線吸収効果、硬度、油脂汚れ付着防止性、油脂汚れ拭き取り性、耐擦傷性、透明性、撥水性、密着性、平滑性および均一性に優れた耐侯性の塗膜である。このため、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、特に屋外等で太陽光線に長時間暴露する環境で使用する基材であって、美観と強度が要求されるもの(より具体的には、自動車用窓ガラス代替プラスティック部材や、建材用窓ガラス代替プラスティック部材など)の表面を被覆する用途に好適である。特に、ポリカーボネート樹脂製の自動車用外装部材、ポリカーボネート樹脂製の建築用外装部材の表面を被覆することが好ましい。
【0098】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜により被覆される基材の材質としては、熱可塑性プラスティックが好ましい。透明性に優れ、耐候性と物理的強度を著しく改善できることから、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜によりポリカーボネート樹脂を被覆することが特に好適である。基材の形状は特に限定されず、板状,フィルム状,シート状,ボトル状,固形状が挙げられる。中でも、熱可塑性プラスチック板または熱可塑性プラスチックフィルムが好ましい。基材の厚さは特に限定されないが、フィルム状やシート状の場合には、通常、5〜100μmの範囲であり、厚みのある板状の場合には0.001m〜0.1mの範囲である。
【0099】
特に、厚さ0.001m〜0.1mの範囲である板状ポリカーボネート樹脂の両面または片面を本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜により被覆してなる紫外線遮蔽性積層塗膜付きポリカーボネート樹脂基材を容易に得ることができる。
【0100】
また、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は実質的に透明であり、基材である板状ポリカーボネート樹脂の波長420nm以上の可視光線の光透過率が80パーセント以上であり、得られた紫外線遮蔽性積層塗膜付きポリカーボネート樹脂基材の波長420nm以上の可視光線の光透過率が75パーセント以上であることを紫外線遮蔽性積層塗膜付きポリカーボネート樹脂基材を得ることができる。これらのポリカーボネート樹脂基材は、建築材料または自動車用車窓用材料として特に好適に使用することができる。
【0101】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜は、基材表面に、前記のプライマーコーティング組成物を塗布時の膜厚が10〜200μmとなり、かつ[硬化性樹脂原料モノマー 100質量部あたりの(b)紫外線吸収剤の含有量(質量部)]×[プライマー層の塗布時の膜厚(μm)]が100〜1000の範囲内となる量を塗布して硬化させることにより、基材表面をプライマー層により被覆した後、該プライマー層上に前記の光硬化性樹脂組成物を塗布して高エネルギー線により光硬化させることにより、順次該基材を被覆することにより製造することができる。
【0102】
プライマーコーティング組成物の塗工方法は特に限定されず、例えば、流し塗り,浸漬被覆,回転塗布(スピンコート),吹付け塗布,カーテン塗り,グラビア塗工,マイヤーバー塗工,ディップコーティング等の公知の方法によって、プライマー層を各種基材表面に形成することができる。また、塗工前の基材表面に予め、シランカップリング剤やその加水分解物等によるプライマー処理;コロナ処理等の表面活性化処理を行ってもよい。ただし、本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜の製造においては、プライマーコーティング組成物の塗布時の膜厚は10〜200μmとなり、かつ[硬化性樹脂原料モノマー 100質量部あたりの(b)紫外線吸収剤の含有量(質量部)]×[プライマー層の塗布時の膜厚(μm)]が100〜1000の範囲内となる量を塗布して硬化させることが必要である。
【0103】
基材上に塗布したプライマーコーティング組成物を硬化させるには、加熱あるいは紫外線等の高エネルギー線を光照射する手段を選択することができる。上記の熱硬化型のプライマー層であれば、オーブン等の公知の加熱手段を選択することができ、光硬化型のプライマー層においては、後述する高エネルギー線を照射することにより極めて短時間で硬化する。
【0104】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜の製造において、プライマーコーティング組成物は基材上で予め光硬化または熱硬化させることにより、基材をプライマー層で被覆しておくことが必要である。プライマーコーティング組成物を塗布した後、光硬化させずに未硬化のプライマーコーティング層上に、上記の光硬化性樹脂組成物を塗布してしまうと、光硬化に必要な紫外線がオーバーコート層である光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化層に吸収されてしまい、プライマー層の硬化が不十分となる場合があるためである。
【0105】
上記の光硬化性樹脂組成物をプライマー層上に塗布する方法は、プライマーコーティング組成物の塗工方法と同様の方法が例示される。該光硬化性樹脂組成物の塗布量は、耐擦傷性が要求される場合には、層の厚さが0.5〜25μmとなる量が好ましく、1〜20μmとなる量がより好ましい。塗工後は薄膜を乾燥させた後、後述する高エネルギー線を照射することにより極めて短時間で硬化を行なうことができる。
【0106】
本発明の紫外線遮蔽性積層塗膜を構成する硬化層は、予め基材をプライマー層で被覆した後、該プライマー層上に前記の光硬化性樹脂組成物を塗布して乾燥後、高エネルギー線を照射することにより順次被覆することで形成される。高エネルギー線としては、紫外線,電子線,γ線が例示される。本発明組成物は、紫外線硬化特性に極めて優れるため、紫外線により硬化させることが最も好ましい。紫外線を使用した場合には、極めて短時間で硬化薄膜層が形成されるためである。紫外線照射量は、少なくとも2mJ/cm
2であり、好ましくは100〜3000mJ/cm
2である。尚、前記の光硬化性樹脂組成物は常温で乾燥するが、より早く乾燥させる場合には加熱することができる。
【実施例】
【0107】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、下記の例において、部はいずれも質量部である。粘度は25℃において測定した値である。実施例および比較例の各特性は以下の方法に従って測定した。
【0108】
[光硬化型コーティング剤の粘度]
25℃に温調された恒温水槽内に浸漬させたウベローデ型粘度計を用いて測定した。
[耐候性試験]
岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスターSUV−W151を用い、下記表1に示す条件に従い照射、暗黒、結露の順のサイクルで耐候性試験を実施した。サンプルは96時間、192時間、288時間後に取り出し、物性を確認した。
【0109】
【表1】
【0110】
[色差]
BYK−Gardner社製color−guide 45/0を用いて耐候性試験前後の明度(L)、彩度(a、b)を測定し、その差ΔL、Δa、Δbを計算した。
[鉛筆硬度]
硬化皮膜の鉛筆硬度はJIS K5600に記載の方法に準じて測定した。荷重750gをかけた鉛筆により硬化薄膜をひっかき、傷がつかない鉛筆の硬度の最高値とした。
[耐擦傷性]
テーバ磨耗試験前後における硬化皮膜のヘイズの差(ΔH)で評価した。テーバ磨耗試験は、磨耗輪:CS−10F、荷重:500g、回転数:500回転/分の条件で行った。
【0111】
[光硬化型コーティング剤の調整例1]
フラスコに、14.2gのメチルエチルケトン(以下MEK)、ウレタンアクリレート系樹脂[日本化薬(株)製;商品名KAYARAD UX−5000]17.4g、分子鎖両末端3−アミノプロピル基封鎖ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング(株)社製;BY 16−853U)0.36gを投入してこれらを50℃で1時間加熱攪拌を行った。一旦冷却し、5.78gの3―メタクリロキシトリメトキシシラン、57.8gのコロイダルシリカのPGM分散液(濃度30wt%、コロイダルシリカの平均粒子径13nm)、0.58gの水の順に加えて攪拌後、50℃に加熱し1時間攪拌を行った。冷却後、光重合開始剤として2.10gの2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製;商品名イルガキュア907]、紫外線吸収剤として1.0gの2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの1−メトキシ−2−プロパノール溶液[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製;チヌビン400]、光安定剤として0.8gの2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製;チヌビン152]、4.3mgのフェノチアジンを加えて、「光硬化型コーティング剤」を調製した。該光硬化型コーティング剤の粘度は、6mPa・sであった。
【0112】
[プライマーの調製例(実施例1、比較例1〜3)]
下表2に示す成分を、機械力を用いて均一に混合することにより、プライマー1〜プライマー4を調製した。プライマー1は本願発明の実施例である熱硬化性のプライマー組成物であり、プライマー2〜4は比較例であるラジカル重合開始剤を含む光硬化性のプライマーコーティング剤である。表中、各成分の配合量は質量部で表す。
【0113】
【表2】
【0114】
(*1)DPHA(日本化薬製 多官能性アクリレート 商品名KAYARAD DPHA)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート/ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
(*2)イルガキュア184 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 商品名イルガキュア184)
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(*3)イルガキュア819 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製;商品名イルガキュア819)
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド
(*4)チヌビン400 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 チヌビン400)
2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの1−メトキシ−2−プロパノール溶液
(*5)チヌビン479 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 商品名チヌビン479)
2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン
(*6)チヌビン152 (チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製 チヌビン152)
2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)
【0115】
[実施例1]
上記プライマー1を、3mm厚のポリカーボネート板にスピンコーターを用いて均一に塗工して、オーブン中で120℃で2時間静置することにより、プライマー1を熱によりラジカル重合および加水分解縮合させ、プライマー1からなる均一なプライマー層(プライマー層の厚さ約20μm)を該ポリカーボネート板表面に形成した。
【0116】
次いで、3mm厚のポリカーボネート板上に形成された該プライマー層上に、上記光硬化型コーティング剤を、スピンコーターを用いて均一に塗布して、120℃で2分間乾燥した。さらに、USHIO電機製UVC−02512S1AA01(ランプ:メタルハライドランプ UVH−0251C−2200)で、2000mJ/cm
2の紫外線を照射して硬化させることにより、約8μm厚の硬化コーティング皮膜と基材の間に約20μmのプライマー層を有するポリカーボネート板を得た。初期のテーバ摩耗試験機によるヘイズの変化は6.0%であった。
該基材の耐候性試験の結果を表3に示す。また耐候性試験による色差の変化および鉛筆硬度の変化を表4に示す。
【0117】
[比較例1〜3]
上記プライマー2〜4を、各々、3mm厚のポリカーボネート板にスピンコーターを用いて均一に塗工して、オーブン中で120℃で5分間乾燥した。さらに、USHIO電機製UVC−02512S1AA01(ランプ:メタルハライドランプ UVH−0251C−2200)で、2000mJ/cm
2の紫外線を照射して光硬化させることにより、プライマー2〜4からなる均一なプライマー層を該ポリカーボネート板表面に形成した。プライマー層の膜厚を表3中に示す。
【0118】
次いで、3mm厚のポリカーボネート板情に形成された該プライマー層上に、上記光硬化型コーティング剤を、スピンコーターを用いて均一に塗布して、120℃で2分間乾燥した。さらに、USHIO電機製UVC−02512S1AA01(ランプ:メタルハライドランプ UVH−0251C−2200)で、2000mJ/cm
2の紫外線を照射して硬化させることにより、硬化コーティング皮膜と基材の間にプライマー層を有するポリカーボネート板を得た。コーティング皮膜の膜厚および該基材の耐候性試験の結果を表3に示す。
【0119】
[比較例4]
プライマーを用いない他は実施例1と同様にして、5μm厚の上記光硬化型コーティング剤の硬化皮膜のみを有するポリカーボネート板を得た。該基材の耐候性試験の結果を表3に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
表3に示す通り、実施例1のプライマー層を有するポリカーボネート板は288時間の耐候性試験によっても、硬化皮膜の剥離が発生せず、また色差の変化も非常に小さくポリカーボネートで問題となる黄変を防ぐことができた。これに対し、比較例1〜3では、96時間の耐候性試験で硬化皮膜の剥離が発生し、192時間後以降は皮膜が完全に消失し、ポリカーボネート板の著しい黄変が見られた。また、プライマー層を有しない比較例4のポリカーボネート板は、96時間後に既に皮膜が消失し、著しい黄変を示した。比較例1〜4のポリカーボネート板は、実施例1に比して耐候性が劣るものであった。