特許第5722212号(P5722212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722212
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
   A61B5/05 370
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-504852(P2011-504852)
(86)(22)【出願日】2010年3月17日
(86)【国際出願番号】JP2010054489
(87)【国際公開番号】WO2010107041
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2013年3月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-66476(P2009-66476)
(32)【優先日】2009年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(72)【発明者】
【氏名】野中 正幸
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−023938(JP,A)
【文献】 特開2008−005943(JP,A)
【文献】 特開2005−040464(JP,A)
【文献】 特開昭62−073146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01R 33/20−33/58
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場発生手段と、
前記静磁場発生手段が発生する静磁場に磁場勾配を生成する傾斜磁場発生手段と、
静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場を印加する高周波磁場送信手段と、
前記被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信する第1の受信コイルと、前記第1の受信コイルの感度領域を含み前記第1の受信コイルより広い感度領域を持つ第2の受信コイルと、を備えた受信手段と、
所定のパルスシーケンスに基づいて、前記傾斜磁場発生手段、高周波磁場送信手段および受信手段を制御する制御手段と、
前記核磁気共鳴信号を処理する信号処理手段と、
を備え、
前記パルスシーケンスは、一繰り返し時間(TR)内で一つのグラディエントエコーを計測するものであり、
前記制御手段は、傾斜磁場の印加量を順次変化させながら複数のエンコードステップを実行して、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データの取得の際、該k空間データの内の低周波領域データの収集において前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信を同一エンコードの核磁気共鳴信号毎に交互に切替え、高周波領域データの収集において前記第1の受信コイルによる受信のみ行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第2の受信コイルは、前記高周波磁場送信手段に備えられた送信用コイルを兼ねる全身コイルであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1の受信コイルは、前記被検体の関心領域からの信号を受信する局所コイルであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記第1の受信コイルは、互いに感度分布領域の異なる複数の小型受信コイルからなるマルチプルコイルであることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記信号処理手段は、前記第1の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号と、前記第2の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号とを用いて前記第1の受信コイルの感度分布を算出する感度分布算出手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記感度分布算出手段は、前記第1の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号から作成した画像と、前記第2の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号から作成した画像とを除算することにより前記第1の受信コイルの感度分布を算出することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記第1の受信コイルを用いて前記被検体の生体情報を画像化するための核磁気共鳴信号を取得する撮像を制御する本撮像手段を備え、
前記信号処理手段は、前記本撮像手段による撮像で取得した核磁気共鳴信号と前記感度分布算出手段が算出した第1の受信コイルの感度分布を用いて前記被検体の生体情報の画像を生成する画像生成手段を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
請求項7に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信の切替を、前記本撮像手段による撮像において実行することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気共鳴イメージング装置において、
前記制御手段は、前記本撮像とは別に、前記第1の受信コイルの感度分布を計測するための核磁気共鳴信号を取得する計測を実行する感度分布計測手段を備え、
前記感度分布計測手段による計測において、前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信の切替を行なうことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記第1の受信コイルは、前記被検体の関心領域からの信号を受信する局所コイルであり、
前記信号処理手段は、前記感度分布算出手段が算出した局所コイルの感度分布を用いて、前記本撮像手段で取得した核磁気共鳴信号から生成した画像のシェーディング補正を行なう補正手段を備えることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記第1の受信コイルは、互いに感度分布領域の異なる複数の小型受信コイルからなるマルチプルコイルであり、
前記本撮像手段は、k空間データに対応する数のエンコードステップよりも少ない数のエンコードステップを実行して、画像の折り返しを生じうる核磁気共鳴信号を収集し、
前記信号処理手段は、前記本撮像手段で取得した核磁気共鳴信号を用いて画像を生成する際に、前記感度分布算出手段が算出した各小型受信コイルの感度分布を用いて折り返しのない画像を生成することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記受信手段は、受信コイルの受信ゲインを計測するゲイン計測手段を備え、
前記制御手段は、前記受信手段の受信ゲインを、前記ゲイン計測手段が計測した各受信コイルの受信ゲインのうち最小の受信ゲインに設定することを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記被検体の周期的動きを計測する手段からの信号を入力する周期動信号入力手段を備え、
前記制御手段は、前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信との切替を伴う核磁気共鳴信号の計測において、前記周期動信号入力手段が入力した信号に同期して核磁気共鳴信号の計測を行なうことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置であって、
前記制御手段は、前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信の交互切替えを、1乃至複数の核磁気共鳴信号の毎に行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
第1の受信コイルと、前記第1の受信コイルの感度領域を含み前記第1の受信コイルより広い感度領域を持つ第2の受信コイルとを用いて、所定のパルスシーケンスに基づいて被検体から複数の核磁気共鳴信号を計測する磁気共鳴イメージング方法において、
前記パルスシーケンスは、一繰り返し時間(TR)内で一つのグラディエントエコーを計測するものであり、
傾斜磁場の印加量を順次変化させながら複数のエンコードステップを実行して、前記複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データの取得の際、該k空間データの内の低周波領域データの収集において前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信を同一エンコードの核磁気共鳴信号毎に交互に切替え、高周波領域データの収集において前記第1の受信コイルによる受信のみ行うことを特徴とする磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核磁気共鳴現象を利用した磁気共鳴イメージング装置(以下「MRI装置」と言う)及び方法に係わり、特に核磁気共鳴信号を受信する受信コイルの感度分布計測に適した撮像技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置を用いた撮像では、撮像対象領域と受信コイルの感度との関係が画質のよい画像を得るための重要な要素であり、受信コイルの感度分布を用いて画像を補正する技術や、感度分布を利用した撮像技術などが種々提案されている。
【0003】
例えば、一般にシェーディング補正と呼ばれている技術では、受信感度の不均一性に依存した画像むらを受信コイルの感度分布を用いて補正する(特許文献1など)。また複数の小型受信コイルを配列したマルチプルアレイコイルを用いて、各小型受信コイルで撮像した画像を各小型受信コイルの感度分布で重み付け加算して合成画像を得る技術もある。
【0004】
さらに一般的にパラレルイメージングと呼ばれている撮像方法では、複数の感度分布の異なるRF受信コイルを用いて、計測空間のエンコードステップを間引いて計測を行い、RF受信コイル毎に取得した画像と、各RF受信コイルの受信感度分布を用いて画像の折り返し展開の演算を行う(非特許文献1)。
【0005】
感度分布を求める一般的な方法として、撮像に使用する各部位用の専用コイルと広範囲を撮像できるコイルの両方で撮像し、両方の画像を用いた演算により求める手法がある。
【0006】
これら両方の撮像は独立した撮像であるため、一般的には、これら2つの撮像を順番に行なう。しかし、これら2つの撮像の間で被検体位置にずれが生じると、感度分布の演算において感度分布に誤差が生じる。また撮像には通常、数秒から数十秒要するので、撮像中の被写体の動きによってアーチファクトが発生しやすい。拍動や呼吸動の影響によるアーチファクトは位相エンコード、スライスエンコード方向の結像性エラーなどとして現れるが、この偽像が発生する場所は一意には決まらず、専用コイルと広範囲コイルの間で差が生じてしまう。このような場合、受信感度を正しく求めることができず、パラレルイメージングの演算後もしくはシェーディング補正した画像においてアーチファクトが発生するという問題がある。
【0007】
この問題を解決するため、特許文献2では、A/D変換の各サンプリング周期を少なくとも2つに分割して、1つのエコーの受信を全身用コイルとアレイコイルとで行なうことが提案されている。しかし、この手法ではサンプリング間に非常に高速にコイルの切り替えを行わねばならず、現在の実用上の装置では実現が困難である。また、受信のサンプリング間隔を変えずに1エコーを2つのコイルで計測した場合には、1エコーの計測時間が延びるため繰り返し時間TRが延長し、エコー信号計測中の減衰が大きくなる。一方、1エコーの計測時間を変えずに2つのコイルで計測する場合には、サンプリング時間を半分にせねばならず、SNRが低下するといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-56928号公報
【特許文献2】特開2002-65633号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】SENSE: Sensitivity Encoding for Fast MRI (Klaas P. Pruessmann et.al), Magnetic Resonance in Medicine 42:952-962 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、2以上の異なる受信コイルでそれぞれ受信した画像を用いて、被検体或いは受信コイルに関する情報を画像化する撮像において、撮像中に被検体の動きがあった場合にも、それぞれの受信コイルで得た画像の同時性を確保し、且つ最終的に画像として得られる情報に対する被検体の動きの影響を大幅に低減することを課題とする。
【0011】
特に最終的に得られる情報が受信感度分布である場合に、被写体の動きの影響を大幅に低減したコイル感度を算出することができ、パラレルイメージングやシェーディング補正においてアーチファクトを低減し画質を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のMRI装置及び方法は、受信手段が、少なくとも2つの異なる種類の受信コイルを備え、同一エンコードステップ内で1乃至複数の磁気共鳴信号毎に第1及び第2の受信コイルを切替える。これにより、感度分布計測に必要な、2つの受信コイルからのデータを実質的に同時取得することが可能となり、被検体の動きの影響を低減できる。
【0013】
即ち本発明のMRI装置は、静磁場発生手段と、前記静磁場発生手段が発生する静磁場に磁場勾配を生成する傾斜磁場発生手段と、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場を印加する高周波磁場送信手段と、前記被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信する第1の受信コイルと、前記第1の受信コイルの感度領域を含み前記第1の受信コイルより広い感度領域を持つ第2の受信コイルと、を備えた受信手段と、所定のパルスシーケンスに基づいて、前記傾斜磁場発生手段、高周波磁場送信手段および受信手段を制御する制御手段と、前記核磁気共鳴信号を処理する信号処理手段と、を備え、前記パルスシーケンスは、一繰り返し時間(TR)内で一つのグラディエントエコーを計測するものであり、前記制御手段は、傾斜磁場の印加量を順次変化させながら複数のエンコードステップを実行して、複数の核磁気共鳴信号からなるk空間データの取得の際、該k空間データの内の低周波領域データの収集において前記第1の受信コイルによる受信と前記第2の受信コイルによる受信を同一エンコードの核磁気共鳴信号毎に交互に切替え、高周波領域データの収集において前記第1の受信コイルによる受信のみ行うことを特徴とする。
【0014】
また本発明のMRI装置は、信号処理手段が、前記第1の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号と、前記第2の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号とを用いて前記第1の受信コイルの感度分布を算出する感度分布算出手段を備える。前記感度分布算出手段は、前記第1の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号から作成した画像と、前記第2の受信コイルが受信した核磁気共鳴信号から作成した画像とを除算することにより前記第1の受信コイルの感度分布を算出する。
【0015】
さらに本発明のMRI装置は、制御手段が、前記第1の受信コイルを用いて前記被検体の生体情報を画像化するための核磁気共鳴信号を取得する撮像を制御する本撮像手段を備え、信号処理手段は、本撮像手段による撮像で取得した核磁気共鳴信号と感度分布算出手段が算出した第1の受信コイルの感度分布を用いて前記被検体の生体情報の画像を生成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1エンコードステップ内で或いは複数のエンコードステップからなるブロック内で受信を切替えることにより、実質的に同時に2つの受信コイルにより受信が可能となり、2つの受信コイルの画像間で処理を行なう場合に、2つの画像の取得時の違いに伴う被検体の位置ずれの問題を解決することができる。特に一方の受信コイルで得た画像を他方の受信コイルで得た画像で除算して一方の感度分布を求める場合、撮像時の被検体の動きによる影響を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明が適用されるMRI装置の全体概要を示す図
図2】受信手段の詳細を示す図
図3】第1の実施の形態の手順を示す図
図4】第1の実施の形態のコイル感度計測に用いるパルスシーケンスの一例を示す図
図5】(a)は、第1の実施の形態によるコイル感度計測のタイムチャート、(b)は、従来法によるコイル感度計測のタイムチャート
図6】除算によるアーチファクト除去を説明する図
図7】第2の実施の形態によるコイル感度計測のタイムチャート
図8】第3の実施の形態のコイル感度計測に用いるパルスシーケンスの一例を示す図
図9】第4の実施の形態における手順を示す図
図10】第4の実施の形態における信号処理の一例を説明する図
図11】第4の実施の形態における信号処理の他の例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明が適用されるMRI装置の全体構成を示すブロック図である。このMRI装置は、磁気共鳴現象を利用して被検体の断層像を得るもので、静磁場発生磁気回路1と、傾斜磁場発生系2と、送信系3と、受信系4と、信号処理系5と、シーケンサ6と、中央処理装置(CPU)7と、操作部8とを備えている。
【0019】
静磁場発生磁気回路1は、被検体9の周りにその体軸方向または体軸と直交する方向に均一な静磁場を発生させるもので、図には示されていないが、被検体9の周りのある広がりをもった空間に永久磁石方式又は常電導方式あるいは超電導方式の磁場発生手段が配置されている。
【0020】
傾斜磁場発生系2は、X、Y、Zの三軸方向に巻かれた傾斜磁場コイル10と、それぞれのコイルを駆動する傾斜磁場電源11とから成り、シーケンサ6から命令にしたがってそれぞれのコイルの傾斜磁場電源11を駆動することにより、X、Y、Zの三軸方向の傾斜磁場Gs、Gp、Gfを被検体9に印加するようになっている。この傾斜磁場の加え方により、被検体9に対するスライス面を設定することができる。
【0021】
送信系3は、シーケンサ6から送出される高周波磁場パルスにより被検体9の生体組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせるために高周波信号を照射するもので、高周波発振器12と変調器13と高周波増幅器14と送信側の高周波コイル15とから成り、高周波発振器12から出力された高周波パルスを高周波増幅器14で増幅した後に被検体9に近接して配置された高周波コイル15に供給することにより、電磁波が被検体9に照射される。
【0022】
本実施の形態において、高周波コイル15は計測空間全体をほぼカバーする感度領域を持つ広範囲撮像コイル(以下、全身コイルともいう)であり、送信用のみならず、受信用としても用いられる。
【0023】
受信系4は、被検体9の生体組織の原子核の核磁気共鳴により放出されるエコー信号(NMR信号)を検出するもので、受信側の高周波コイル16と増幅器17と直交位相検波器18とA/D変換器19とから成る。受信専用の高周波コイル16は、広範囲撮像コイルに比べ感度領域が狭く、被検体9(関心領域)に近接して配置される。このような高周波コイル16は、局所用コイルあるいは専用コイルと呼ばれる。
【0024】
また本実施の形態では、送信側の高周波コイル15も受信側の高周波コイルとして動作するので、受信系は、シーケンサ6からの命令によるタイミングで、高周波コイル15、16を切替えて、いずれかが検出した核磁気共鳴信号が受信する。高周波コイル15又は16で検出された信号は、増幅器17及び直交位相検波器18を介してA/D変換器19に入力されディジタル量に変換される。この際、シーケンサ6からの命令によるタイミングで直交位相検波器18によりサンプリングされた二系列の収集データとされ、その信号が信号処理系5に送られる。
【0025】
信号処理系5は、受信系4で検出したエコー信号を用いて画像再構成演算を行うと共に画像表示をするもので、エコー信号についてフーリエ変換、補正係数計算、感度分布計算、画像再構成等の処理及びシーケンサ6の制御を行うCPU7と、種々の記憶装置20〜24と、画像データを映像化して断層像として表示する表示部となるディスプレイ24とからなる。記憶装置は、例えば、経時的な画像解析処理及び計測を行うプログラムやその実行において用いる不変のパラメータなどを記憶するROM(読み出し専用メモリ)20、計測パラメータや受信系4で検出したエコー信号及び関心領域設定に用いる画像を一時保管すると共にその関心領域を設定するためのパラメータなどを記憶するRAM(随時書き込み読み出しメモリ)21、CPU7で再構成された画像データを記録するデータ格納部となる光磁気ディスク22や磁気ディスク23などから成る。
【0026】
シーケンサ6は、被検体9の生体組織を構成する原子の原子核に核磁気共鳴を起こさせる高周波磁場パルスをある所定のパルスシーケンスで繰り返し印加する制御手段となるもので、CPU7の制御で動作し、被検体9の断層像のデータ収集に必要な種々の命令を送信系3及び傾斜磁場発生系2並びに受信系4に送る。パルスシーケンスは、撮像や計測の目的に応じて種々の種類のものがあり、予めプログラムとして信号処理系5に格納されている。
【0027】
操作部8は、信号処理系5で行う処理の制御情報を入力するもので、トラックボール25及び、キーボード26から成る。
【0028】
受信用の高周波コイルとして2以上の高周波コイルを備えた受信系4の詳細を図2に示す。本実施の形態では、一つは送信側高周波コイルを兼ねた広範囲撮像コイル(全身コイル)15であり、他の一つは被検体近傍に設置される専用コイル16であるが、コイルの種類はこれらに限定されないし、また一方又は両方のコイルが、複数の小型コイルを配列したマルチプルコイルであってもよい。専用コイルが、複数の小型受信コイルからなるマルチプルコイルの場合には、その小型受信コイルの数と同数の受信系4(増幅器、直交位相検波器、A/D変換器)が備えられる。
【0029】
図示するように、広範囲撮像コイル15は、送受信切替スイッチ27を介して送信系3及び受信系4のいずれかに接続されている。専用コイル16は、コイル切替スイッチ28を介して受信系4に接続されている。図では、送受信切替スイッチ27及びコイル切替スイッチ28は、模式的に各コイル15、16と送信系或いは受信系との間に挿入されたスイッチとして記載されているが、例えば全身用コイル15及び局所用コイル16の給電部に、コイルの回路を動作・非動作に切替える共振回路などをスイッチ手段として設けることも可能である。本実施の形態では、パルスシーケンスに従った制御タイミングに合わせて、コイル切替スイッチのオンオフが行なわれる。
【0030】
なお受信機(直交位相検波器18、A/D変換器19)のゲインは、通常は、コイルによって最適値が異なるためにそれぞれのコイルにあった最適値を前計測によって求めてそれぞれのコイルに合わせて決定している。本実施の形態では、切替えの回数が多く、また、切替えタイミングが非常に早いため、ハードウェアの制約によってこの切り替えが不可能な場合がある。この場合には、各コイルについて求めた値の内で最小のものをセットして、撮像中はゲイン値の変更を行わずに一定とする。
【0031】
次に上記構成のMRI装置による撮像について説明する。以下、説明する実施の形態は、本発明を、被検体の画像を得るための撮像(本撮像)に用いる受信コイルの感度分布の計測に適用したものである。感度分布の計測は、本撮像とは別に行なってもよいし、本撮像で取得する信号を用いて感度分布を計測することも可能である。本撮像は特に限定されず、画像再構成において感度分布を用いるものであれば、種々の撮像に適用することが可能である。
【実施例1】
【0032】
本実施例では、図3に示すように、本撮像(ステップ303)とは別に受信コイルの感度分布を計測するための撮像(ステップ301)を行なう。感度分布計測301では、全身コイルと専用コイルの2種の受信コイルを用いて撮像を行い、これら2種の受信コイルで得た画像を用いて専用コイルの感度分布を算出する(ステップ302)。本撮像は、専用コイルを用いて行い、専用コイルで得た画像(ステップ304)を、感度分布計測301で得た専用コイルの感度分布を用いて補正する(ステップ305)。専用コイルの形態は、特に限定されず、例えばマルチプルアレイコイルのような複数のエレメントからなるコイルや複数の小型受信コイルを組み合わせたものであってもよい。
【0033】
まず感度分布の計測301について説明する。
図4に、受信コイルの感度分布を計測に用いるパルスシーケンスの一例を示す。図中、RF、Gs、Gp、Grは、それぞれ高周波パルス、スライス方向傾斜磁場パルス、位相エンコード方向傾斜磁場パルス、リードアウト方向傾斜磁場パルスの印加タイミング及び強度を示し、ADはエコー信号のサンプリング時間を示している。このパルスシーケンスは、一般的なグラディエントエコー系のシーケンスであるが、同一エンコードステップを、受信コイルの数(ここでは2回)繰り返し、その中でエコー信号毎に受信コイルを切替える点が異なる。ADのうち、黒塗り部分401、403は専用コイルによる受信、斜線部分402、404は全身コイルによる受信である。専用コイルが複数の小型受信コイルからなるマルチプルコイルの場合には、複数の小型受信コイルで同時に受信が行なわれる。RFは、全身コイルで送信する。
【0034】
まず第1のエンコードステップでは専用コイルでエコー信号を計測し、次いで同じエンコードステップで、高周波パルス印加後に全身コイルを送信から受信に切替えるとともに局所用コイルをオフにして、全身コイルでエコー信号を計測する。次のエンコードステップでは、全身コイルを受信から送信に切替えるとともに専用コイルをオンにして、専用コイルで受信する。以下同様に全身コイルの送受信切替と、受信コイルの切替を行ないながら、所定の数のエンコードステップを繰り返し、コイル毎にk空間を埋めるデータを得る。k空間のサイズすなわちエンコードステップ数は、通常の被検体画像を得るための撮像では128、256などであるが、受信コイルの感度分布を求める撮像では、高空間解像度は必要とされないので、それより少なく、例えば32、64などでよい。
【0035】
なお図4では、位相エンコード方向の傾斜磁場が最も小さいステップを第1のエンコードステップとして計測する場合を示したが、k空間の計測順序は特に限定されず、−kmaxから+kmaxまでをシーケンシャルに計測してもよいし、位相エンコード0から順次−方向と+方向に1ステップずつインクリメントするように計測してもよい。
【0036】
上記計測のタイミングチャートとk空間データの配置例を図5(a)に示す。ここではシーケンシャルに計測した例を示している。図示するように、専用コイルが受信したデータはk空間501に配置され、全身コイルが受信したデータはk空間502に配置される。図5では、一つの専用コイルのデータ空間を示しているが、専用コイルがマルチプルコイルの場合には、マルチプルコイルを構成する各受信コイル毎にk空間データが得られる。次にこれらk空間データをそれぞれフーリエ変換し、画像再構成する。
【0037】
次いで専用コイルで得た画像を全身コイルで得た画像で、次式(1)に従い除算することにより、専用コイルの感度分布を求める。
【0038】
【数1】
式中、Sm、Saはそれぞれ専用コイル及び全身コイルで得た画像を示し、Cmは専用コイルのm個のエレメント(小型受信コイル)の感度分布である。Sm、Sa及びCmは複素データであり、添え字r、iはそれぞれ、複素データの実数部、虚数部を示す(以下、同じ)。
【0039】
また専用コイルがマルチプルコイルである場合には、専用コイルの各エレメントを合成したコイル感度Cを次式(2)で求めることができる。
【0040】
【数2】
式中、nはマルチプルアレイコイルのエレメント数である。
なお式(1)或いは(2)の計算において、被写体が無い領域は、予め領域を識別して除算処理を行わずに、求められた感度分布から補間処理によって計算することが望ましい。
【0041】
こうして求められる感度分布は、算出に用いられる全身コイルの画像と専用コイルの画像が実質的に同時に取得されたものであるので、全身コイルの画像と専用コイルの画像との取得時のずれによる被検体位置変化の影響を受けることがない。また全身コイルと専用コイルで同じ位相エンコードの信号をほぼ同時に取得し、それを除算するので、撮像中に被検体の動きがあっても、動きの影響として信号に現れる位相ずれを解消することができ、極めて正確な感度分布を求めることができる。これに対し、図5(b)に示す従来法によれば、それぞれ独立した撮像で各コイルの画像を得ているので、撮像と撮像の間に生じうる被検体の位置ずれに起因する誤差を避けることができず、また除算をしても撮像中の被検体の動きの影響を取り除くことができない。
【0042】
除算処理の様子を図6に示す。図示するように、各受信コイルで撮像した画像601、602は、動きによるアーチファクトが発生している可能性があるが、このアーチファクトは同一形式で発生していることから、除算処理によりアーチファクトの影響を取り除いて、より正確な受信コイル感度分布603を求めることができる。
【0043】
上述した感度分布計測と別に行なわれる本撮像303は、撮像目的に応じて種々の公知のパルスシーケンスが採用可能であり、受信コイルには感度分布が計測された専用コイルが用いられる。以下、本撮像303がパラレルイメージングである場合を説明する。パラレルイメージングでは、感度分布が異なる複数の受信コイルを組み合わせたものを用いる。パラレルイメージングに適した受信コイルについては種々提案されており、公知のものが採用できる。
【0044】
またパラレルイメージングでは、撮像するFOV(視野)に必要とされる位相エンコードを計測の倍速数に応じて間引きしてデータを取得する。倍速数は、最大で受信コイル数と同数である。このデータを再構成した場合、倍速数だけ位相エンコード方向に折り返した画像となる。そこで、画像再構成ステップ304において、各受信コイルで得た信号を合成する際に、式(1)により求めた各受信コイルの感度分布Cmを用いて折り返しを展開し、折り返しのない画像を得る。具体的には、次式(3)の演算を行う。
【0045】
【数3】
式中、Mは本撮像で得られた受信コイルの信号値(mは受信コイル数)、Cはm個の各受信コイルの視野毎の感度分布(nは視野番号)、P1〜Pnは各視野における磁化分布であり、式(3)の行列式を展開することにより、視野全体についての磁化分布P、即ち折り返しのない画像を求めることができる。
【0046】
本実施例によれば、正確な感度分布を演算に用いることができるので、アーチファクトのない正確な画像を得ることができる。
【0047】
なお、式(3)では実空間データ(画像)を用いた演算例を示したが、パラレルイメージングにおける再構成演算には、計測空間データを用いた折り返し展開演算もあり、この場合にも感度分布を用いて式(3)と同様にアーチファクトのない正確な画像を得ることができる。
【0048】
次に、本撮像303が、位相エンコードを間引かない通常の撮像である場合を説明する。本撮像に用いられる専用コイルは、関心領域に近接して設置されるため、一般に全身コイルに比べ高い感度を持つが、感度のある領域は限定され、感度分布は全身コイルの比べ均一性は低い。このため本撮像によって得られた画像は、受信コイルの感度分布によるシェーディングを有している。画像補正ステップ305では、本撮像によって得られた画像M(x,y)を、感度分布算出ステップ302で得た感度分布C(x,y)で除算することにより、このシェーディングを補正する(式(4))。式(4)は、パラレルイメージングにおいて、コイル数1として演算したものと同じであり、受信コイルの各要素を自乗和で合成したものと等価となる。
【0049】
【数4】
専用コイルがマルチプルアレイコイルの場合には、式(2)により求めた各エレメントを合成したコイル感度C(画素毎の感度)を用いて、本計測画像M(x,y)に対して除算を行うことにより感度補正を行う。
【0050】
また専用コイルが複数の小型受信コイルを組み合わせたものである場合には、式(1)により求めた各小型受信コイルの感度分布Cmを用いて、本撮像において各小型受信コイルで得られた信号Mmに重み付けし、次式(5)により画像を合成することも可能である。この場合には、感度分布は信号合成の重みとして用いられている。
【0051】
【数5】
式中、Msumは合成後の本撮像の画像である。
【0052】
本実施例によれば、本撮像とは別に感度分布計測のための撮像を行ない、その際、全身コイルと専用コイルを受信コイルに用いて、実質的に同時に受信を行い、それぞれの受信コイルで受信した信号から得られた画像を除算して感度分布を算出するので、感度分布計測の間に被検体の動きがある場合でも、極めて正確な感度分布を求めることができる。これにより、本撮像において、感度分布を用いて正確な折り返し展開演算や、シェーディング補正或いはマルチプルコイル合成を行なうことができる。
【0053】
なお、感度分布計測のためのパルスシーケンスとして、図4には、グラディエントエコー系の2次元パルスシーケンスを例示したが、3次元上の感度分布データを計測する場合には、3Dのパルスシーケンスを用いる。この場合、Gp(位相エンコード)軸に加えてGs軸にスライスエンコードが追加され、このスライスエンコードについても、同一スライスエンコード内でエコー毎に受信コイルの切替を行なう。即ち、3Dの場合には、スライスエンコードと位相エンコードのそれぞれについて、1インクリメント毎に交互に両方のコイルに切り替えを行い撮像する。
【0054】
また図4には、高速計測に好適なインコヒーレントなグラディエントエコー系のシーケンスを示したが、パルスシーケンスは、スピンエコー系のシーケンスであってもよい。
【0055】
さらに、感度分布計測用のパルスシーケンスは、公知の体動抑制方法を併用して実行してもよい。体動抑制方法としては、例えば、呼吸、心電、脈波のような生体信号に同期した計測法、息止めなどを数回に分けて行うなどの通常の動きによる偽像低減方法、ベルトなどによる被写体の動きを物理的に低減させる方法などがある。これらを併用することにより、被検体の動きが大きい場合にも、除算による効果に加えて、アーチファクトの低減を図ることができる。
【実施例2】
【0056】
実施例1では、感度分布計測301において、1エンコードステップ毎にステップ内で2つの受信コイルを切替える場合を示したが、受信コイルの切替はエンコード毎に行なうのではなく、2以上のエンコードステップを1ブロックとしてブロック毎に受信コイルの切替を行なう。但し、1ブロックの計測時間は被写体の動きに対して十分速くすることが望ましい。
【0057】
図7は、2ステップ毎に2つの受信コイルを切替える場合のタイミングチャートを示している。この場合には、第1のエンコードステップ及び第2のエンコードステップで、第1の受信コイル例えば全身コイルでエコー信号を計測し(701、702)、次いで傾斜磁場条件を第1のエンコードステップに戻し、第1のエンコードステップ及び第2のエンコードステップで、第2の受信コイル例えば専用コイルでエコー信号を計測する(711、712)。
【0058】
同様にして2つのエンコードステップを単位として2度繰り返し、繰り返し毎に第1のコイルによる受信と第2の受信コイルによる受信とを繰り替えす(703、704・・・713,714)。
【0059】
本実施例においても、第1の受信コイル(全身コイル)の画像と第2の受信コイル(専用コイル)の画像が実質的に同時に取得されたものであるので、両コイルによる信号取得時のずれによる被検体位置変化や撮像中の被検体の動きの影響を殆ど受けることなく、極めて正確な感度分布を求めることができる。
【0060】
求めた感度分布を、それとは別に行なわれる本撮像の画像の補正或いは合成に用いることは第1の実施の形態と同様である。
実施例1および実施例2の変更例
実施例1及び実施例2では、k空間の全域に亘って、第1の受信コイルによる受信と第2の受信コイルによる受信を切替える場合について説明したが、k空間を分割し、一部の領域例えば低周波数領域の計測のみで、受信コイルの切替を行なってもよい。その場合に、例えば、低周波数領域については、位相エンコードおよびスライスエンコードのステップ毎に受信コイルを交互に切替え、高周波数領域については、受信コイルの切替を1回とするか、低周波数領域の計測の場合よりも低頻度として計測を行なう。
【0061】
一般に画像コントラストは低周波数領域のデータで決まり、感度の情報は低周波数領域のデータに多く反映されているので、高周波領域については受信コイルの切替を少なくしても、その間の被検体の動きによる影響を受けにくい。従ってこの変更例においても第1および第2の実施の形態と同様に、動きの影響を排除して正確な感度分布を求めることができる。
【実施例3】
【0062】
実施例1および実施例2では、感度分布計測において、1回のスピン励起後に1つのエコーを計測するシングルエコーのパルスシーケンスを示したが、本実施の形態ではマルチエコーシーケンスを採用し、同一ショットで得られる複数のエコーのそれぞれを異なる受信コイルで受信する。
【0063】
本実施の形態で採用するパルスシーケンスの一例を図8に示す。図8の各軸の符号は図4と同じであり、ADの黒塗り部分801、803は専用コイルによる受信、斜線部分802、804は全身コイルによる受信である。また図8図4と同様に2Dのグラディエントエコー系パルスシーケンスを示したが、スライスエンコードを追加した3Dパルスシーケンスやスピンエコー系パルスシーケンスであってもよい。
【0064】
図示するように、本実施の形態では、高周波パルスRFを印加後に、第1のリードアウト傾斜磁場パルス811と、それと極性が反転した第2のリードアウト傾斜磁場パルス812を印加し、各リードアウト傾斜磁場パルスの印加中にエコー信号を計測する(801、802)。その際、エコー毎に受信コイルを切替え、例えば最初のエコー信号は全身用コイルで受信し、2番目のエコー信号は局所用コイルで受信する。以下同様にして、エンコードステップを順次インクリメントしながら、1回のRF印加後に発生する2つのエコーの計測の間で受信コイルを切替え、2つのエコーを異なる受信コイルで受信する。
【0065】
こうして受信コイル毎に計測した信号を用いて画像を再構成すること、2つの画像から受信コイルの感度分布を求めることは第1の実施の形態と同様である。本実施の形態においても、第1および第2の実施の形態と同様に、動きの影響を排除して正確な感度分布を求めることができる。また本実施の形態では、同一位相エンコードステップ内で2つの受信コイル用のエコーを発生させるので、第1および第2の実施の形態に比べ、計測時間を短縮することができる。
【0066】
なお図8では、2つのエコーを発生させる例を示したが、エコー数は2よりも多くてもよい。例えば4エコーとし、全身コイルと専用コイルで、それぞれ2エコーずつ受信し加算してもよい。
【実施例4】
【0067】
以上説明した実施例では、感度分布を計測する撮像を本撮像とは別に行なったが、感度分布計測に本撮像で計測した信号を利用することも可能である。その場合の手順を図9に示す。
【0068】
まず撮像ステップ901では、受信コイルとして全身コイルと専用コイルを用い、所定のパルスシーケンスを実行する。パルスシーケンスとしては、図4或いは図8に示すように、1ショットで一つのエコーを計測するシングルエコーシーケンスでも、マルチエコーシーケンスでもよい。エンコードステップを2回繰り返すことによる計測時間の延長がないという点では、マルチエコーシーケンスであることが好ましい。但し、ここでは受信コイルで得られた信号は被検体の画像を作成するために用いられるので、被検体画像に要求される空間分解能が得られるエンコード数とする。
【0069】
撮像ステップでは、少なくとも低周波領域データの計測時において、位相エンコードステップ毎に或いは複数のエンコードステップからなるブロック毎に受信コイルを全身コイルと専用コイルとで切替えて受信する。このことは第1〜第3の実施例と同様であり、全身コイルと専用コイル両方共に、全エンコードのデータを得てもよい。この際、例えば、低周波数領域の計測時のみ受信コイルの切替を行ない、図10に示すように、全身コイルについては低周波領域のデータ502Aのみを取得してもよい。
【0070】
これらパルスシーケンスの実行によって、本実施の形態においても図5に示したように全身コイルで計測したk空間データ502と、専用コイルで計測したk空間データ501が得られるので、これら2つのk空間データを用いて画像を再構成し、除算することにより専用コイルの感度分布を求める(ステップ902)。除算に先立って、得られた画像は、必要に応じてLPF等を用いてフィルタリング処理される。図10に示すように、全身コイルによる受信を低周波領域502Aのみで行なった場合には、感度分布の計算に用いる専用コイルのk空間データは、全身コイルのデータと同じ低周波領域のデータ501Aとする。感度分布を求める計算は、第1の実施の形態と同様であり、式(1)或いは式(2)により専用コイルの感度分布を計算する。
【0071】
次に専用コイルで得たk空間データを用いて画像を再構成する(ステップ903)。この際、ステップ902で求めた感度分布を用いて、画像をシェーディング補正する(ステップ904)。或いは専用コイルがマルチプルコイルである場合には、それを構成する各小型受信コイル感度分布を重みとして用いて各小型受信コイルの画像を合成する。
【0072】
本実施例によれば、本撮像で計測したエコー信号を用いて感度分布を計測するので、感度分布計測を別途行なう場合に比べ全体としての計測時間を短縮することができる。
【0073】
なお実施例4として、本撮像でシェーディング補正する場合を説明したが、本撮像が位相エンコードを間引いて計測するパラレルイメージングである場合にも、本撮像で計測したエコー信号を用いて感度分布計測を行なうことが可能である。その場合、例えば図11に示すように、低周波領域については、位相エンコードを間引くことなく全身コイルと専用コイルでそれぞれデータ501A、502Aを収集し、その領域のデータを感度分布の計算に用いる。パラレルイメージングでは、専用コイルは複数(図ではm個)の受信コイルからなるので、複数の受信コイルについてそれぞれ感度分布を算出する。次いで、位相エンコードを間引いて計測した専用コイルのデータ501、すなわち高周波領域のデータ501B及び低周波領域データ501Aのうち高周波領域のデータと同じエンコードステップ幅で取得したデータと、専用コイルの感度分布とを用いて、パラレルイメージングによる折り返し展開を行い、画像を得るなどの変更を加えることができる。
【0074】
なお上述した第4の実施の形態においても、第1から第3の実施の形態における種々の変更例を採用することが可能である。例えば、2Dのパルスシーケンスは3Dシーケンスに変更可能であり、またk空間の計測順序はシーケンシャルでもセントリックでもよい。
【0075】
また受信コイルのゲインを最も小さいものに自動調整すること、同期撮影を併用することなど、適宜採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、撮像中の被検体の動きによる影響を大幅に低減し、受信コイルの正確な感度分布を求めることができる。この感度分布を用いることにより、シェーディング補正やパラレルイメージングにおける折り返し除去演算を正確に行なうことができ、アーチファクトのない画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 静磁場発生磁気回路、2 傾斜磁場発生系、3 送信系、4 受信系、5 信号処理系、6 シーケンサ、7 CPU(制御系)、8 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11