(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付した図に関連して本発明は説明され、ここで同様の引用された数字は、等価又は同等の要素を指定するために図中に用いられる。この図は寸法通りには描かれておらず、単にこの発明を説明するためだけに提供される。説明のための各実施例に関連して、本発明のいくつかの態様が以下に説明する。数々の具体的な詳細、関係、方法は、本発明の十分な理解を提供するために説明されることを理解されるべきである。関連する当業者は、しかしながら、この発明が具体的な詳細の一つもしくはいくつかを用いることなく、または他の方法を用いて実施され得るとすぐに分かるだろう。他の例で、本発明を分かりにくくすることを避けるため、よく知られた構造または作用は詳細には示されていない。本願発明は作用や事象の説明された順序付けに制限されず、作用の中には異なる順序及び/又は他の作用や事象と共に発生するものがあるかもしれない。さらに、すべての説明された作用や事象が、本願発明に従った手順で実施されなければならないとは限らない。
【0009】
平らな圧電素子を基にしたモータの様な、アクチュエータとしての従来の二次元波励起圧電モータを使用することの実在する制限の一つが、通常は前記接触点の直線運動で起こることに関連した低効率である。この低効率の理由は、移動する台の巡回方向に関してこの直線運動の方向は通常斜めであるからである。その結果、圧電素子により発生する力のわずか(すなわちこの力の移動する台の巡回方向への投射)が移動する台に印加される。さらに、アクチュエータの様な前記接触点の振動動作は通常、接触点が対角線上に位置する状態で側面がλ/2の正方形の圧電共振子の拡大と縮小を起こす、ただ一つの平面波の結果である。したがって、通常は単一の圧電素子の拡大と縮小を組み込むための構造を基にして動作する様なシステムは、接触点の可能性の数を制限する。結果として、この構造の一つの欠点は、多数の接触点は通常不可能であるということである。
【0010】
さらに、動作中に機械的な結合を供給するための、圧電素子の表面に接続されている一つ以上の接触点又は摩擦点を、通常この様な構造は使用する。しかしながら、この様な層は、発振器から駆動素子への音響エネルギーの移送の間に、通常はいくらかのエネルギーの内部消費が生じるだろう。結果として、前記システムの効率は通常この様な構造に悪影響を与えられる。
【0011】
これらの制限を考慮して、本願発明の様々な具体例は新しい圧電モータを提供する。特に新しい圧電モータは、音響定在波を使用している共振型の圧電モータである。以下に説明される様に、横移動又は圧電素子又は台を供給するために、圧電素子上の異なる接触点で高効率のナノ単位の楕円形(nano-elliptical)動作を供給することによりその新しい圧電モータは動作する。この新しい圧電モータの高効率は、前記接触点が前記移動する台に作用しているとき、前記接触点は比較的平坦な楕円形の経路の先端の一部に沿って動いているということが原因である。したがって、前記台に接触する前記接触点により印加された前記力の相当部分は、通常はその移動方向と平行な方向である。接触点の前記ナノ単位の楕円形の動作は、ただ一つの平面波とは対照的に、2つの直行する定在波の重ね合わせにより供給される。結果として、高次モードの励起を発生させることが可能になり、多数の接触点がアクチュエータに供給されることが可能になる。
【0012】
音響定在波を有する共振圧電モータは、回転変形から動作を作り出す。これらの回転変形は、通常は非常に小さいナノ単位の楕円形状である。多数の接触点を使用して動作を作り出すために、回転変形の方向と同様もしくは一致する様にナノ単位の楕円形動作は定められなければならない。例えば圧電共振子の第1の側面に対称的に位置している点に第1の直線方向に直線動作を供給するため、その楕円形の回転は通常は第1の回転方向である。圧電共振子の第2の側面の点に第1の直線方向に直線動作を供給するため、通常その楕円形の回転は第1の回転方向とは逆の第2の回転方向である。結果としてそれらの回転方向が異なっているにもかかわらず、向かい合った場所の接触点は同じ方向の力を印加することにより協調的に作用する。
【0013】
本願発明の一具体例に従った圧電共振子は電極を含み、縦振動、特に音響定在波の励起のために圧電共振子の向かい合った場所の連動をさせるように導く。その縦振動は、その圧電共振子の上面及び下面の接触素子を経たガイドの摩擦により相互に作用させ、接触場所の動作を引き起こす。本発明のいくつかの具体例では、前記接触素子は前記圧電共振子と一体的に形成される。バネの様な圧力作成装置により供給された圧力下の前記ガイドに、前記圧電共振子は保持されることが可能である。前記接触場所は、前記共振子の最大振動速度の場所に位置する。前記圧電共振子の長さ方向に沿った前記圧電共振子の第1の方向の高次の縦振動モードの同時形成の条件と、前記圧電共振子の幅方向に沿った第2の方向の1次の縦振動モードの励起条件とを満たすために、前記圧電共振子の大きさと前記電極の場所が選択される。さらにまた本願発明の様々な具体例では、前記第1及び第2の方向に沿った固有周波数(共振周波数)は異なり、前記第1及び第2の方向に沿った固有周波数の間の周波数を持つ交流電圧電源が、前進又は逆転動作の間に前記圧電共振子を励起させるために用いられる。
【0014】
本願発明の様々な具体例が
図1−4に関して説明されるだろう。
図1は本願発明の一具体例に従った、その長さ方向に沿った2次の縦振動モード(n=2)とその幅方向に沿った1次の縦振動モードのために構成された典型的な圧電アクチュエータ100の側面図の略図である。
図2は本願発明の一具体例に従った、その長さ方向に沿った4次の縦振動モード(n=4)とその幅方向に沿った1次の縦振動モードのために構成された典型的な圧電アクチュエータ125の側面図の略図である。
図3は本願発明の一具体例に従った、その長さ方向に沿った6次の縦振動モード(n=6)とその幅方向に沿った1次の縦振動モードのために構成された典型的な圧電アクチュエータ150の側面図の略図である。
図4は本願発明の一具体例に従った、その長さ方向に沿った2次の縦振動モード(n=2)とその幅方向に沿った1次の縦振動モードのために構成された典型的な圧電アクチュエータ175の透視図の略図である。
【0015】
図1−4で、典型的な圧電アクチュエータ100,125,150,175はそれぞれ、圧電共振子3と接続素子5を含む。典型的な圧電アクチュエータ100,125,150はまた、ガイド2とバネ1も含む。動作時、本願発明に従った圧電共振子3の励起は、ナノ単位の楕円形の経路に沿った接触素子5の動作を引き起こす。一般的に、楕円形の経路12,13は約数十から数百ナノメートルの大きさ(すなわちその楕円形の短軸及び長軸の寸法)を持ち、動作方向に関して通常は平坦である。すなわち、楕円形の経路12,13の結果として発生するその長軸は、通常は動作方向に平行に位置付けられる。接触素子5が楕円形の経路12,13に沿ってその圧電共振子から最も遠い点にある時、ガイド2に関して圧電共振子3の直線のマイクロ単位の動作(micro-motion)を開始するため、接触素子5はガイド2の摩擦により相互に作用する。適切な摩擦力に確実にするため、バネ1は圧電共振子3とガイド2に垂直力を供給する。接触素子5が楕円形の経路12,13に沿ってその圧電共振子から最も近い点にある時、接触素子5とガイド2の間にはほとんど又は全く摩擦が発生せず、結果としてほとんど又は全く動作が発生しない。振動が継続している時、ガイド2に関して圧電共振子3の繰り返しの動作をもたらす様にそのマイクロ単位の動作は繰り返される。
【0016】
本願発明の様々な具体例では、ガイド2又は圧電共振子3がそのアクチュエータに直線動作を供給する様に、典型的な圧電アクチュエータ100,125,150,175が構成され得る。すなわち、ガイド2か又は圧電共振子3が固定され得る。ガイド2の位置が固定された場合、移動させるために圧電共振子3は台18に取り付けられる。結果として、接触素子5のナノ単位の楕円形動作は圧電共振子3とその取り付けられた台の動作をもたらす。その一方、圧電共振子3の位置が固定された場合、移動させるためにガイド2は台18に取り付けられる。結果として、接触素子5のナノ単位の楕円形動作はガイド2とその取り付けられた台の動作をもたらす。従来の圧電アクチュエータとは対照的に、この様な形態がさらなる構造の柔軟性を提供する。
【0017】
本願発明の様々な具体例では、最大振動速度の位置9が接触素子5の位置と一致する様に、圧電の共振器又は圧電共振子3の直行する振動モードと関連する2つの定在波の重ね合わせにより、接触素子5の楕円形動作は形成される。すなわち、直行する振動モードの両方の定在波が最大になる、圧電共振子3での場所である。接触素子5のそれぞれに関連する一組の電極4aと4b(まとめて電極4と呼ぶ)の一つを通って励起電圧を供給することにより、その振動モードは励起される。すなわち、第1の方向にナノ単位の楕円形の経路を供給するため、しかも電極4aへの第1の方向に力を供給するために、励起電圧は電極4aに供給される。同じ様なナノ単位の楕円形の経路を供給するため、しかしその逆の方向(電極4bへの方向)に力を供給するために、励起電圧は電極4bに供給される。以下に説明される様に、接地点又は共通接点8、及び電極4a,4bにそれぞれ接触している励起接点6,7の一つを通ってその励起電圧は供給される。
【0018】
振動モードの一つが、圧電共振子3の長さLに沿った第1の縦軸10に沿って形成された定在波により生じる縦振動である。その他の振動モードは、圧電共振子3の幅Bに沿って、及び第1の縦軸10に垂直な第2の縦軸11に沿った縦振動である。したがって、圧電共振子3は2つの直線状の共振器、一つは圧電共振子3の長さLに沿って作動し、もう一つはその幅Bに沿って作動する、を組み合わせる。したがって、縦軸10,11により定義された面でのナノ単位の楕円形動作を供給するために独自で2つの直交する振動の同時励起を引き起こすという点において、圧電共振子3は効率的な“組み合わせた共振器(combined resonator)”である。
【0019】
本願発明の様々な具体例では、接触素子5に最大振動速度を供給するために、直交する振動の2つの種類の間の合成は除かれる必要がある。一般的にもしこの様な合成が起こったら、接触素子5の動作を供給するために使用されているエネルギーの代わりに、エネルギーが一つの振動モードから他方の振動モードに伝達されてしまう。しかしながら、もし基本の(1次の)縦モードが圧電共振子3の幅Bと交差して励起され、高次の縦の倍音(overtone)モード(n=2,4,6)が圧電共振子3の長さLに沿って同時に励起されたとしたら、この合成は取り除かれることができることを本願発明者は発見している。
【0020】
一般的に、前記共振器の幅方向に交差した1次の縦モードの励起条件は次の方程式により表されることができる。
【数1】
【数2】
ここで、λ1は組み合わせた共振器の幅方向に交差した波の波長、Bは組み合わせた共振器の幅、ν1は幅Bに沿ったその共振器の固有周波数、Cはその共振器の音波の伝播速度である。前記共振器の長さ方向に沿った高次の縦振動の励起条件は、一般に次の方程式により表されることができる。
【数3】
【数4】
ここで、λ2は組み合わせた共振器の長さ方向に沿った波の波長、Bは組み合わせた共振器の長さ、n=2,4,6(すなわち振動の次元)、ν2はλ2に対応したその共振器の固有周波数、Cはその共振器の音波の伝播速度である。圧電共振子3の幾何学的なパラメータにより、固有周波数ν1と固有周波数ν2はお互いに様々な関連がある。
【0021】
本願発明の様々な具体例では、圧電共振子3の向かい合った面のナノ単位の楕円形12,13もまた、一般に反対方向に回転するために構成される。これは、圧電共振子3の両側の接触素子5がその反対方向に同調して移動するのと同じ方向へ、圧電共振子3にガイド2を押して移動させる。例えば
図1−3では、ナノ単位の楕円形12に沿った動作は反時計回りであり、その時のナノ単位の楕円形13に沿った動作は時計回りである。
【0022】
一般的に、楕円形の経路12,13の方向が相反する様なナノ単位の楕円形動作を供給するため、通常は圧電共振子3の2つの直角に交わる定在波の構成が要求される。これらの定在波は、通常は直角に交わる方向のそれぞれの励起電圧を供給している結果である。通常は、同じ周波数でお互いに対して実質的に90°位相をずらした2つの交流電圧電源と専用の電極配置を使用している圧電共振子の励起を、この様な励起システムは要求するだろう。残念ながら、あらゆる不安定さがそのモータの基本性能に直接影響を与えるので、通常はこの様な2つの発生器の励起システムは複雑であり、維持される位相関連の高い安定性を要求する。これは一般にその励起システムの制御でさらなる要求を課し、全体の費用を増やす。
【0023】
しかしながら、固有周波数ν1及び固有周波数ν2に近い値だがそれらのどちらにも一致しない第3の周波数ν3で動作する励起電源を使用して、ナノ単位の楕円形が励起されることができることを本願発明者は発見している。この様な振動数は、その圧電共振子の向かい合った側面の相反する回転を確実にする、その圧電共振子の振動速度の中心の相反している最大値(central opposing maxima)でのナノ単位の楕円形の構成を許可する。したがって本発明の様々な具体例では、前に説明した励起電極の専用の構成を必要とせず、2つのモードを同時に励起するのに周波数ν3での交流電源が1つ使用される。よって本発明の具体例では、単独の励振源の組み合わせ共振器が提供される。すなわち、縦の共振器が長さ方向に沿って供給され、縦の共振器が幅方向を横切って供給され、ここで同じ電極が独自で2つの種類の直交する振動を同時に励起する。
【0024】
固有周波数ν1及び固有周波数ν2に近い値のあらゆる周波数ν3がその圧電共振子を励起するのに使用され得るけれども、その2つの方向での振動のその振幅を改良するためにν3が選択されることもできる。これは
図5Aと5Bで説明される。
図5Aは周波数と振幅を示したグラフ(X-Y plot)であり、圧電共振子の幅及び長さに沿った圧電共振子の周波数の反応を示している。ここで、圧電共振子の長さは幅の実質的に5倍である。
図5Aで、X軸はその共振器の励起周波数νexを示し、Y軸は励起により生じる音響振動の振幅を示す。一般的に、励起周波数が次元の共振周波数に近づくにつれて、その形成された音波の振幅が増える。この反応の統計データは、
図5Aに曲線502と曲線504で描かれている。曲線502はその長さ方向に沿った圧電共振子での反応曲線を示し、曲線504はその幅方向に沿った圧電共振子での反応曲線を示す。さらに、共振周波数ν1は前記組み合わせ共振器の幅方向を横切った縦振動の固有共振周波数に相当し、共振周波数ν2は前記圧電共振子の長さ方向に沿った縦振動の固有共振周波数に相当する。
【0025】
図5Aに示す様に、曲線502と曲線504は部分的に重なり合う。したがって本発明の様々な具体例において、その圧電共振子の長さ方向及び幅方向に沿った相当の励起を供給するため、固有周波数ν1と固有周波数ν2との間の励起周波数ν3は、曲線502と曲線504がお互いに実質的に重なり合う点を選択することができる。しかし、もし励起周波数ν3もまたその生じた波の位相特性を考慮して選択されるとしたら、前記長さ方向及び幅方向に沿った励起の振幅もまた改良されることができる。
図5Bに関してこれは説明される。
【0026】
図5Bは、周波数の反応が
図5Aで示されたシステムの周波数と位相を示したグラフであり、その高さ方向及び幅方向に沿った圧電共振子での位相の反応506と位相の反応508をそれぞれ示している。
図5Bに示す様に、その励起が長さ方向を横切った振動と幅方向を横切った振動の間にπ/2の位相差をもたらす様な中間の振動数ν3がある。したがって、この振動数で、又はこの振動数付近で圧電共振子を励起することは、それらの間で約π/2の差を持ち共振器の幅方向及び長さ方向に沿った2つの直交する振動の励起をもたらす。これら2つの振動の重ね合わせは、その接触素子の場所で振動速度の中心の相反している最大値でのナノ単位の楕円形を生じる。その結果この様なν3の選択は、その圧電共振子の長さ方向及び幅方向の両方に沿った振動モードの同時励起の新しいやり方を許可する。
【0027】
したがって本願発明の様々な具体例において、第1の縦軸10及び第2の縦軸11と平行な方向の圧電共振子3に固有周波数ν1と固有周波数ν2との間のいくらかの分離を供給するため、ナノ単位の楕円形12,13の相反する動作は圧電共振子3の幾何学的寸法の選択による励起電圧電源を使用することで供給されることができる。特に、圧電共振子3の幾何学的寸法はLが2Bと等しくならない(L≠2B)様に選択される。よって前記組み合わせた共振器の周波数はその直交した方向に沿った同じ方向ではなくなるが、2つの周波数ν1と周波数ν2を発生させる。ここで周波数ν1と周波数ν2は等しくなく(ν1≠ν2)、次の式に従って分離される。
【数5】
例えば、周波数ν1と周波数ν2は5%、10%、15%、20%で分けられることができる。その結果、圧電共振子3の向かい合った側面の中心にナノ単位の楕円形もまた形成させる圧電共振子3を励起させるために、周波数ν1と周波数ν2の間の第3の周波数が選択されることができる。さらにまた
図5Aに関して前に説明した様に、その発生した反応の統計データが実質的に部分的に重なり合う様に、周波数ν1及び周波数ν2が選択されることができる。あるいは
図5Bに関して前に説明した様に、位相差がπ/2になる様に、周波数ν1及び周波数ν2が選択されることができる。これは、振動数ν3が周波数ν1と周波数ν2の間なので、疑似共振状態(quasi-resonant state)をもたらす。この周波数ν3での励起のために、両方のナノ単位の楕円形12,13は形成され、それは最高振動速度の位置と一致し、複数の電圧電源の配置を必要とすることなく相反する回転を持っている。このやり方は、前記励起システムの構成を単純化する。その結果、本願発明の様々な具体例において、一般に周波数ν3の交流電圧電源一つだけが必要になる。
【0028】
さらにまた、縦軸10に平行な前進もしくは逆転動作のどちらかの様な励起接点6,7の一つにその励起電圧は印加されることができる。本願発明の様々な具体例において、これは電極4a,4bの内の適切な一つの励起により実現されることができる。すなわち
図1−3に示される様に、縦軸10に平行な第1の方向の動作を供給するため、前記圧電共振子は接触素子5にナノ単位の楕円形の経路を生成するために構成される(すなわち、楕円形の経路12の反時計回り動作と楕円形の経路13の時計回り動作)。この様な構成では、電極4bがフロート(float)してもいい間は電極4aと共通電極8の励起接点6を通じてその励起電圧が印加される。その一方で
図1−3に示される様に、縦軸10に平行で第1の方向に対向する第2の方向の動作を供給するため、前記圧電共振子は接触素子5にナノ単位の楕円形の経路を生成するために構成される(すなわち、楕円形の経路12の時計回り動作と楕円形の経路13の反時計回り動作)。この様な構成では、電極4aがフロートしてもいい間は電極4bと共通電極8の励起接点6を通じてその励起電圧が印加される。
【0029】
本願発明のいくつかの具体例において、圧電共振子3は実質的に立方体(cuboid)である。6つの面により囲まれた立体図形を、ここで使用される“立方体(cuboid)”という用語で呼ぶ。例えば前記圧電共振子は、第1の縦軸10に沿った長さLと第2の縦軸11に沿った幅Bの長方形の面の形で作成され得る。幅Bと長さL(さらに縦軸10,11と平行)により囲われたこれらの面は、プレートの前面14及び後面15を定義する。第2の縦軸11に垂直で長さLに沿った面は、そのプレートの上面16と下面17を定義する。前記モータの可動部がLの特質(dimension)に沿って直線的に移動させることができる様に、圧電共振子3はそのプレートの前面14及び後面15と直角に対立されることができる。この様な具体例において、接触素子5はその圧電共振子の上面16及び下面17に位置付けられる。本願発明の様々な具体例において、圧電共振子3の接触場所5とガイド2との間に接触圧を供給するバネ荷重のガイド1,2にその圧電共振子3は組み込まれる。
【0030】
本願発明の様々な具体例において、接触素子5の場所又は配置は(2i+i)(L/n)という式により定義される。ここで、nは前に説明した様に縦振動モードの次元(すなわちn=2,4,6)であり、iは(n−2)/2≧i≧0で定義される整数である。さらに前進もしくは逆転動作を供給するために、前に説明した様に、電極4が圧電共振子3の前面上に対の電極4a,4bで配置される。これら対の電極で第1の電極4aは2i(L/n)と(2i+1)(L/n)との間の位置に配置される。これら対の電極で第2の電極4aは、(2i+1)(L/n)と(2i+2)(L/n)との間の位置に配置される。したがって、圧電共振子3の長さ方向に横切って、電極4a,4bは交互になる(alternate)。
【0031】
本願発明のいくつかの具体例において
図1に示す様に、圧電共振子3は長さLに沿った2次の振動モードの構成の条件を満たす。この様な具体例では、一つの共通電極8をプレート後面15に接触させて、さらに2つの違う電極4a,4bをプレート前面14に接触させている状態で、接触素子5の対が圧電共振子3の上面16と下面17に配置される。これらの他の電極4a,4bは前面14を、第1の電極4aが第1の励起接点7に接続され第2の電極4bが第2の励起接点6に接続される、それぞれの長さがL/2の2つの等しい電極の場所に分けている。
【0032】
本願発明の他の具体例において
図2に示す様に、圧電共振子3は長さLに沿った4次の振動モードの構成の条件を満たす。この様な具体例では、一つの共通電極8をプレート後面15に接触させて、さらに電極4の2つの対をプレート前面14に接触させている状態で、接触素子5の複数の対が圧電共振子3の上面16と下面17に配置される。その電極4の対は前面14を、第1の電極と第3の電極4aがお互い同士と第1の励起接点7に接続され第2の電極と第4の電極4bがお互い同士と第2の励起接点6に接続される、それぞれの長さがL/4の4つの等しい電極の場所に分ける。
【0033】
本願発明のさらに他の具体例において図
3に示す様に、圧電共振子3は長さLに沿った6次の振動モードの構成の条件を満たす。この様な具体例では、一つの共通電極8をプレート後面15に接触させて、さらに電極4の3つの対をプレート前面14に接触させている状態で、接触素子5の複数の対が圧電共振子3の上面16と下面17に配置される。これらの電極4の対は前面14を、第1の電極と第3の電極と第5の電極4aがお互い同士と第1の励起接点7に接続され第2の電極と第4の電極と第6の電極4bがお互い同士と第2の励起接点6に接続される、それぞれの長さがL/6の6つの等しい電極の場所に分ける。
【0034】
その結果、前に説明した様に周波数ν3の適切な励起電圧を、前に説明した様に共通電極8と励起接点6に印加することで第1の方向の動作を供給し、その同じ励起電極を共通電極8と励起接点7に印加することで、第1の方向と同じ動作量で、しかし反対方向の動作を供給する。
【0035】
本発明の様々な具体例では直線状の圧電モータに関して前に説明しているが、
図6及び
図7に示す様に、円形の圧電モータ構成を供給するために
図4の圧電アクチュエータもまた使用されることができる。
図6及び
図7は本発明の他の具体例に従った、シリンダー状の圧電モータの一部の略図である。円形の軸(circular axis)(第1の縦軸)と第2の軸に沿った方向もしくはその円形の軸に実質的に垂直(第2の縦軸)な方向に音響定在波が生成される実質的なシリンダー状の圧電共振子を提供するため、その円形の軸により定義された第1の縦軸に沿って1つもしくは複数の圧電アクチュエータが配置される。円の外周により定義された軸を、ここで使用される“円形の軸(circular axis)”という用語で呼ぶ。以下に説明する様に、これらの圧電アクチュエータは
図1−4に示した圧電アクチュエータと類似して構成される。したがって前に説明した4a,4b,5,6,7及び8の部品の説明は、
図6及び
図7の同部品を説明するための目的には十分である。
【0036】
図6に示した第1の典型的なシリンダー状の構成において、X軸について円形の軸612に沿って3つの圧電アクチュエータ602,604,606を並べることにより、圧電共振子601は提供される。そして接触素子5がX軸と平行に伸ばすことができる様に、そのアクチュエータ602−606は配置される。その結果、
図1−4において前面に並べられた電極の構成と類似した構成で、圧電共振子601の外面601aに電極4aと電極4bが並べられる。
図1−4において後面に並べられた電極の構成と類似した構成で、圧電共振子600の内面601bに共通電極8が並べられる。この様な構成では、圧電共振子601の長さLは円形の軸612の外周によって定義されることができ、前に説明した
図1−4に関しての直線状の共振器の長さに相当する。同様に圧電共振子601の高さ614は、前に説明した
図1−4に関しての直線状の共振器の幅Bに相当するだろう。したがって、電極4aもしくは4bに印加させる単独の励起源を用いて円形の軸612や高さ614に平行な方向に沿った縦の定在波の同時励起を供給するという前に説明した方法に従って、圧電共振子601の次元や励起周波数が選択されることができる。この様な構成は、一つ以上のロータ616,618を回転させるために使用され得る。2つのロータを回転させる場合、
図1−3のバネが圧電共振子に接触するガイドを付勢するという方法と同じ様に、バネもしくは他の弾力性のある部品620が圧電共振子3に接触したロータ616,618を付勢するために使用されることができる。
【0037】
しかしながら、この様なシリンダー状のシステムが励起される時、振動の寄生性の放射モード(parasitic radial mode)もまた励起され得る。一般的に圧電共振子の寄生性の放射モードは、エネルギー共役が原因でシリンダー状の圧電共振子での振動の他の全ての望ましいモードを抑制してしまう能力がある。そのためシリンダー状の圧電共振子を使用した本発明の具体例では、2つの隣接した接点5の間の中間の完全もしくは部分的な切り取り、もしくはスリット610が中間に取り込まれることができる。そのスリット610は振動の放射モードの伝播を防ぐ。その結果いくつかの具体例において、圧電共振子601が実質的にシリンダー状にできるという点では、その圧電共振子により完全なシリンダー状に形成されないかもしれない。
【0038】
図7に示した第2のシリンダー状の構成において、X軸について配置された円形の軸712に沿って3つの圧電アクチュエータ702,704,706を並べることにより、圧電共振子701は提供される。しかしながら接触素子5がX軸に関して放射状に、及び円形の軸712に垂直に伸ばすことができる様に、そのアクチュエータ702−706は配置される。その結果、
図1−4において前面に並べられた電極の構成と類似した構成で、圧電共振子701の上面701aに電極4aと電極4bが並べられる。
図1−4において後面に並べられた電極の構成と類似した構成で、圧電共振子700の下面701bに共通電極8が並べられる。したがって圧電共振子701がシリンダー状の形をしている間は、環状のもしくはリング型に成形された圧電共振子として動作するよう構成される。この様な構成では、圧電共振子701の長さLは円形の軸712の外周によって定義されることができ、前に説明した
図1−4に関しての直線状の共振器の長さに相当する。同様に圧電共振子701の環状の幅(annular width)714は、前に説明した
図1−4に関しての直線状の共振器の幅Bに相当するだろう。半径方向に沿った環状もしくはリングの幅を、ここで使用される“環状の幅(annular width)”という用語で呼ぶ。したがって、電極4aもしくは4bに印加させる単独の励起源を用いて円形の軸712や環状の幅714に平行な方向に沿った縦の定在波の同時励起を供給するという前に説明した方法に従って、圧電共振子701の次元や励起周波数が選択されることができる。
【0039】
しかしながら、この様な環状のシステムが励起される時、振動の寄生性の放射モード(parasitic radial mode)もまた励起され得る。一般的に圧電共振子の寄生性の放射モードは、エネルギー共役が原因で環状の圧電共振子での振動の他の全ての望ましいモードを抑制してしまう能力がある。そのため環状の圧電共振子を使用した本発明の具体例では、2つの隣接した接点5の間の中間の完全もしくは部分的な切り取り、もしくはスリット710が中間に取り込まれることができる。そのスリット710は振動の放射モードの伝播を防ぐ。その結果いくつかの具体例において、圧電共振子701が実質的にシリンダー状にできるという点では、その圧電共振子により完全なシリンダー状に形成されないかもしれない。
【0040】
円形の圧電モータの典型的な具体例が圧電アクチュエータの限られた数だけを含めることとして示されているが、本発明の様々な具体例はこの観点に制限されるものではない。本発明の他の具体例において、あらゆる数の接触素子や電極を持ったあらゆる数の圧電アクチュエータが使用され得る。
【0041】
ここで説明されるモータへの応用例は、超小型の燃料電池ポンプのモータ構成部分としてそれを組み込むことも含むだろう。コンパクトで、安価で、静かなエアポンプは、効率的な燃料電池の新たな生成の一環として必要とされる。例えば、アクチュエータとして平坦な圧電共振子を使用した回転インペラーポンプを提供でき、そのアクチュエータはファンを取り付けたロータの回転を起こすための、その圧電共振子の長さ方向と幅方向に沿った縦振動モードの励起原理に影響を与える。しかしながら、ここで説明されるロータリーポンプは圧電共振子を含んでいるあらゆるアクチュエータ装置の型に使用されることができる。
【0042】
図8Aは、1つのファンと、本発明の一具体例に従って構成された圧電共振子とを使用したロータリーポンプ800を示す。
図6Bは、それぞれ反対方向のエアフローを供給するためそれぞれ反対方向の回転を持つ2つのファンと、本発明の具体例に従って構成された圧電共振子とを使用したロータリーポンプ850の上面図及び側面図をそれぞれ示す。これらの構造は、基部51,圧電共振子52,(複数の)軸受部を持ったロータ53,ファン54,バネ55,及び燃料電池素子56を含む。
【0043】
ロータリーポンプ800及び850は次の通りに動作する。圧電のアクチュエータ62は電気的に励起され、楕円形の動作軌跡は、その動作の面が圧電共振子62の主要な面と平行な状態で、その両端がたどりながら振動する。その振動の楕円形の経路は、圧電共振子62の変形の組み合わせから生じるもので、これは圧電共振子62の電気的な励起により促進される。圧電共振子62の各端の楕円形動作が、圧電共振子と(各)ロータとの(各)接触域の摩擦を介して、(各)ロータ53の回転運動に伝達し、(各)ファン54を回転させることができる様に、圧電共振子62の(各)端は(各)ロータ53に接触するバネ55の圧力により保持される。動作時の酸素を供給するため、(各)ファン54からの空気は燃料電池素子56に移動させられる。
【0044】
もし回転するファン54の断面積Sが1cm
2(S=1cm
2)で、圧電共振子52の(各)端の直線動作をファン64の回転動作に変換する係数Kが0.4cm/rev(K=0.4cm/rev)であるならば、空気流量Q=200cm
3/minを確保するために必要とするファン64の回転速度nは以下の式で求められる。
【数6】
この様な構造の利点は多々ある。例えば、この様なポンプを非常に薄型で平坦なコンパクト容器で構成し、燃料電池筐体の壁部と一体部分又は壁部に対する付属品として、その容器を組み立てられ易いようにすることが可能である。もし圧電共振子52の厚さが2mmより薄いなら、そのロータリーポンプはほぼ2〜4cm3程度しか場所を塞がず、1辺25mmの正方形領域への収納を適合させることを可能にするだろう。
図8B及び
図8Cに示す様に、2つのファンの構造は、空気流量の容量の増加と燃料電池素子66への空気のより一層の供給効果を供給する。この構造は本来エネルギー効率が良く、ロータの軸受部の品質次第では実質的に音を立てなくすることもあり得る。
【0045】
出願人はここに上述の明白で理論的な態様を提示するが、その態様は本発明の各具体例に関してなされた見解を説明しようとするに正確なものであると確信する。しかしながら、本出願の具体例は提示された理論的な態様なしで実施されるかもしれない。加えて出願人は、その提示された理論に制約されるつもりはないことを理解する上で、その理論的な態様を提示する。
【0046】
本発明の様々な具体例が前に説明されている間、それらは単に例として提示されているだけで、それに制限されないことを理解されるべきである。本発明の精神や範囲から逸脱することなくここの開示に従って、開示された具体例の数々の変形が作成され得る。したがって、本発明の広さや範囲は、前に説明したいかなる具体例によっても制限されないこととすべきである。むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲やそれに相当するものに従って定義されるべきである。
【0047】
1つまたはそれ以上の実施に関して解説及び説明しているが、この明細書や付属する図面を読んで理解できる他の当業者は相当する変更や修正箇所に気がつくだろう。さらに、本発明の特定の特性が単にいくつかの実施の一つに関してだけ説明されているかもしれない一方で、あらゆる所定の又は特定の応用のために要求される様に及び好都合な様に、他の実施の他の一つ又はそれ以上の特性にこのような特性が組み合わされるかもしれない。
【0048】
ここで使用された技術は特定の具体例のみで説明する目的であり、本発明を制限する意図はない。次の用語、単数形の“a”、“an”、及び“the”は、特に文脈で明確な指示がない場合は複数形も同様に含むことを意図する。さらに、用語“including”、“includes”、“having”、“has”、“with”又はそれに関した色々なものが詳細な説明及び/又は特許請求の範囲で使用されるという点で、この様な用語は用語“comprising”と同様の方法を含めたことを意図する。
【0049】
特に指示がない場合、ここで使用される全ての用語(技術的、科学的用語も含む)は、この発明が属する当業者によって一般に理解されている様に同じ意味を持っている。例えば一般に辞書を使用して定義される様な用語は、技術に関係のある文脈のこれらの意味と一致する意味を持っていることとして解釈されるべきであり、ここで明確に定義されない場合は理想的もしくは過度に正式な意味で解釈される意志はない。