(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722239
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】まつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有する皮膚保湿用化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/97 20060101AFI20150430BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20150430BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
A61K8/97
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-551982(P2011-551982)
(86)(22)【出願日】2010年2月25日
(65)【公表番号】特表2012-519165(P2012-519165A)
(43)【公表日】2012年8月23日
(86)【国際出願番号】KR2010001181
(87)【国際公開番号】WO2010098596
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年2月13日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0017079
(32)【優先日】2009年2月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】株式会社アモーレパシフィック
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】ハ ジョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】クォン リー キョウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロ ホー シク
(72)【発明者】
【氏名】ハン サン ホン
【審査官】
川島 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−339113(JP,A)
【文献】
特開平03−101607(JP,A)
【文献】
特開昭63−183513(JP,A)
【文献】
特開2007−204444(JP,A)
【文献】
特開2003−277223(JP,A)
【文献】
International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,米国,The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association,2006年,Eleventh Edition,pp.1768-1769
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてまつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有することを特徴とする皮膚保湿力改善用化粧料組成物。
【請求項2】
有効成分としてまつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有することを特徴とする肌のきめ改善用化粧料組成物。
【請求項3】
有効成分としてまつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有することを特徴とする皮膚透明度改善用化粧料組成物。
【請求項4】
有効成分としてまつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有することを特徴とする皮膚輪郭改善用化粧料組成物。
【請求項5】
上記有効成分は、組成物の全体重量に対して各々0.001〜10重量%含有されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項6】
上記赤松葉抽出物は、赤松葉のエタノール抽出物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧料組成物。
【請求項7】
上記赤松根抽出物は、赤松根のエタノール抽出物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として、まつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有する皮膚保湿用化粧料組成物に関する。より詳細には、本発明は、有効成分として、まつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有し、皮膚の保湿力向上と共に、肌のきめ改善、皮膚透明度改善、皮膚輪郭改善の効果を有する。
【背景技術】
【0002】
まつやに(樹液)とは、赤松が傷ついた時に分泌する物質であって、赤松は、まつやにを分泌し、傷を覆って自分を保護する役目をする。これにより、自分の水分が飛ぶことを防止し、病菌の繁殖や浸透を防止する。また、傷治療の性質を有していて、傷部位が腐敗することを防止する。
【0003】
各種漢方医書と民間療法において活用されている漢方原料のうち、まつやには、各種炎症、胃腸疾患、肺結核などに効果がある。最近には、にきび皮膚に適用する場合、まつやにパウダーを水に溶いて顔にパックをすれば、にきびが減少することが報告されている。
【0004】
一方、各種漢方医書と民間療法で活用されている漢方原料のうち韓国の各地で自生している赤松の葉は、肝臓疾患、泌尿生殖器系疾患、胃腸疾患、循環器系疾患、皮膚疾患などに効果が知られていて、最近、様々な文献に松葉抽出物の芳香性、抗菌性、抗酸化及びメラニン活性抑制作用などについて報告されている(Jung et, al, Antioxidant principles from the needles of red pine, Pinus densiflora. Phytother Res., 17(9):1064-1068, 2003)。松葉の薬理作用に関する実験としては、松葉添加食餌が正常の白色ねずみの脂質代謝に及ぶ影響、抗菌性、抗変異原活性、抗酸化能、そして抗高血圧効果に関する研究が報告された(Kang et al., Korean J. Food Sci. Technol., 27(6):978-984, 1995)。
【0005】
昔から赤松(Pinus densiflora Sieb. Et Zucc.)は、無病長寿して神仙になるようにすると言われ、韓国民族の節義と忍耐などを象徴し、部位ごとに異なる効能をもって病症に使用して来た。
【0006】
赤松は、枝と幹の節を松節、幼い根または根白皮を松根、幼い枝または幼い枝の先端を松筆頭、葉を松葉、花粉を松花粉、丸い実を松球、樹皮を松木皮などと異なる名前で呼びながら薬用する。
【0007】
それらのうち、特に根は、春期に収穫して乾かして使用してきたが、漢方医学的には、味が苦くて、性質が暖かくて、毒がないと知られている。効能成分としては、α−ピネン75%、カンフェン、ジペンテン、α−テルピネオール、カンファー、p−メンタノールなどがある。
【0008】
漢方医学的には、五労(五臓の疲れ)を保養し、打撲によるあざや疼痛、筋骨痛、吐血、虫歯痛を治療するのに使用してきた。しかし、まだこれらのまつやに、赤松葉及び赤松根の皮膚保湿力向上及び肌のきめ改善、皮膚透明度改善、皮膚輪郭改善の効果については研究が全くない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これより、本発明者らは、研究を重ねた結果、赤松のまつやに成分、赤松葉成分及び赤松根成分が皮膚の保湿力を向上させ、肌のきめ改善、皮膚透明度改善、皮膚輪郭改善の効果を有することを明らかにし、本発明を完成するに至った。
【0010】
したがって、本発明の目的は、優れた保湿力を有する皮膚化粧料組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、肌のきめ改善、皮膚透明度改善及び皮膚輪郭改善の効果に優れた皮膚化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、有効成分としてまつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有する皮膚保湿用化粧料組成物を提供する。
【0012】
上記化粧料組成物のうちまつやに抽出物は、組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%含有することが好ましい。
【0013】
また、上記化粧料組成物において赤松葉抽出物は、組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%含有することが好ましい。
【0014】
また、上記化粧料組成物において赤松根抽出物は組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の皮膚化粧料組成物は、まつやに抽出物、赤松葉抽出物及び赤松根抽出物を含有し、皮膚保湿力を高め、且つ肌のきめ改善、皮膚透明度改善、皮膚輪郭改善の効果に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例1及び比較例1の適用前後に皮膚角質層の粗さ変化を示すグラフである。
【
図2】
図2は、実施例1及び比較例1の適用前後に皮膚きめの顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、実施例1及び比較例1の適用前後に皮膚水分量の変化を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例1及び比較例1の塗布直後の水分量比較グラフである。
【
図5】
図5は、実施例1及び比較例1の適用前後に皮膚血流量の変化を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例1及び比較例1の適用前後に皮膚血流量の変化を示す写真である。
【
図7】
図7は、実施例1の適用前後に皮膚明るさの変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施例1の適用前後に皮膚均一度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本願発明をより具体的に説明する。
本発明において使用されるまつやには、赤松に傷ができた時、その傷を保護し治療するために生成される物質を言う。本草綱目によれば、まつやには、味が苦くて且つ甘く、暖かい性質を有し、肺経と胃経に作用し、皮膚刺激減少、抗菌作用、炎症除去作用をする。また、東医宝監によれば、まつやには、五臓を楽にし、熱を除去し、風痺、死肌を治める。悪瘡、頭痺、白禿、疥癬を緩和し、脱毛治療、離膿と歯牙の風歯による穴を治め、すべての創傷に付着すれば、皮膚が生長し、痛症が止むと記録されている。
【0018】
本発明に使用されたまつやに抽出物は、原料まつやに(colophony)を結晶化反応させ、生成された物質を回収した後、これを液化、蒸留/補集し、上行及び下行部を除いた部分(総量の40%)を収去する。このような精製過程を2回進行した後、水素化反応を進行し、これをさらに3次精製し蒸留し、やはり上行及び下行部を除いた部分(総量の80%)を収去して得る。
【0019】
本発明の皮膚化粧料組成物は、上記まつやに抽出物を組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%で含有する。これは、0.001重量%未満では、顕著な効果を期待することができず、10重量%を超過する場合は、含有量増加による顕著な効果の増加が現われないからである。
【0020】
次に、本発明において使用された赤松は、松葉とも呼ばれ、味は苦いものの、性質は暖かくて且つ毒がなく、昔から心経と脾経に作用し、風湿滄、頑癬、疳滄、大風癩滄、歴節滄などの症状治療に使用されてきた。
【0021】
本発明に使用された赤松葉抽出物は、凍結乾燥された赤松葉50gを正確に重量を測定した後、70%エタノールで48時間常温冷浸して抽出した後、蒸発器(evaporator)を使用して抽出に使用されたエタノールを完全に蒸発させて濃縮した後、これ以上の操作なしに試料として使用した。
【0022】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記の赤松葉抽出物を組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%で含有する。これは、0.001重量%未満では顕著な効果を期待することができなず、10重量%を超過する場合は、含有量増加による顕著な効果の増加が現われないからである。
【0023】
次に、本発明に使用される赤松根抽出物を収得する工程は、次の通りである。まず、赤松の根を水または有機溶媒で抽出し、発芽植物種子抽出物を収得する。この際、有機溶媒は、エタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテート及びクロロホルムよりなる群から選択された1つ以上であることができ、またはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒を使用することができる。好ましくは、80%エタノールを使用することができる。
【0024】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記赤松根抽出物を組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%で含有する。これは、0.001重量%未満では顕著な効果を期待することができず、10重量%を超過する場合は、含有量増加による顕著な効果の増加が現われないからである。
【0025】
本発明による皮膚外用剤組成物は、化粧品学及び皮膚科学的に許容可能な媒質及び/または基剤を含有する。これは、局所適用に適したすべての剤形、例えば、溶液、ゲル、固体または混練無水生成物、相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球、イオン型(リポソーム)及び/または非イオン型の小胞分散剤、クリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー及びコンシールスティックの形態で提供されることができる。これらの組成物は、当該分野における通常の方法によって製造されることができる。また、本発明による皮膚外用剤組成物は、フォームの形態、または圧縮された推進剤をさらに含有するエアロゾール組成物の形態で使用されることができる。
【0026】
本発明による皮膚外用剤組成物は、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発布剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型もしくは非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性もしくは親油性活性剤、脂質小胞、または化粧品に通常的に使用される任意の他の成分のような化粧品学または皮膚科学分野において通常的に使用される補助剤などを含有することができる。これらの補助剤は、化粧品学または皮膚科学分野において一般的に使用される含量で導入される。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び試験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0028】
〔製造例1〕まつやに抽出物の製造
まつやに抽出物は、原料まつやに(colophony)10kgを結晶化反応させ、生成された物質を回収した後、これを液化、蒸留/補集し、上行及び下行部分を除いた部分(総量の40%)を収去する。さらに2回の精製を進行した後、水素化反応を行い、さらに3次精製し蒸留し、やはり上行及び下行部分を除いた部分(総量の80%)を収去して得る。
【0029】
〔製造例2〕赤松葉抽出物の製造
凍結乾燥された赤松葉50gを正確に重量を測定した後、70%エタノールで48時間常温冷浸して抽出した後、蒸発器(evaporator)を使用して抽出に使用されたエタノールを完全に蒸発させて濃縮し、赤松葉抽出物を製造した。
【0030】
〔製造例3〕赤松根抽出物の製造
赤松の根部分1kgを収去し、80%エタノール水溶液5Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間沈積させた。その後、濾過布を用いた濾過と遠心分離を通じて残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮し、赤松根抽出物173gを得た。
【0031】
〔実施例1及び比較例1〕
下記表1の組成で実施例1及び比較例1をスキン剤形で製造した(単位:重量%)。
【0032】
【表1】
【0033】
〔試験例1〕即刻的な肌のきめ整頓効果
評価対象は、30歳の女性40名を選定し、実施例1及び比較例1を分配し、各々を塗布した直後、角質層の肌のきめを測定し、その平均結果を
図1及び
図2に示した。測定結果、実施例1は、肌のきめの粗さが46%改善し、比較例1の場合には、31%改善し、本発明の化粧料組成物は、一般スキンに比べて粗い肌のきめを約1.5倍滑らかに整えることが確認された。
【0034】
〔試験例2〕皮膚水分量測定
評価対象は、30歳の女性40名を選定し、実施例1及び比較例1を分配し、各々を使用した後、2週及び4週後に皮膚水分含有量を測定し、その平均結果を
図3及び
図4に示した。測定結果、実施例1は、2週後に17.93%、4週後に26.89%皮膚水分含有量が改善し、水分改善効果を比較すれば、本発明の化粧料組成物が一般スキンに比べて約2倍優れていることが確認された。
【0035】
〔試験例3〕皮膚血流量改善
評価対象は、30歳の女性40名を選定し、実施例1及び比較例1を分配し、各々を使用してから2週及び4週後に皮膚血流量を測定し、その平均結果を
図5及び
図6に示した。その結果、実施例1は、2週後に7.34%、4週後には25.58%皮膚血流量が改善した。
【0036】
〔試験例4〕皮膚色及び皮膚均一度改善
評価対象は、30歳の女性40名を選定し、実施例1を分配し、これを使用してから2週及び4週後に皮膚色及び皮膚均一度を測定し、その平均結果を
図7及び
図8に示した。測定結果、実施例1の使用後に、本来皮膚より約1.95%明るくなり、皮膚均一度が6.45%改善した。