(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インク受理層には、カチオン性高分子を含むインク定着剤が無機顔料100質量部に対して5〜40質量部の範囲で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の難燃性不織布。
前記インク受理層と難燃不織布基材との間、及び/又は前記難燃不織布基材のインク受理層を設けてない側の面上に、難燃剤を含む難燃塗工層を固形分換算で片面当たり3〜10g/m2の範囲で設けたことを特徴とする請求項1に記載の難燃性不織布。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、インク受理層に配合された難燃剤が印刷性能に影響して印字滲みや印字ムラなどを引き起こすという問題があった。また、特許文献2に記載された技術では、上部層となるインク受理層には難燃剤が配合されていないものの下部層のインク受理層には難燃剤が配合されているため、この難燃剤がインクジェット記録適性に悪影響を及ぼす問題があり、加えて、2種類のインク受理層を設けるために製造コストが高くなるといった問題がある。このように特許文献1、特許文献2に記載の技術では、難燃性とインクジェット記録適性とを両立するのは困難であった。
【0007】
また、難燃剤による印刷性能の低下を防ぐために不織布基材に難燃剤を含まないインク受理層を設けた場合には、難燃剤を含んだインク受理層を設けた場合と比べて難燃性不織布全体としての難燃性は低下する。そのため、難燃剤を含まないインク受理層を設けた上で難燃性不織布全体として消防法で定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性を得るためには、難燃処理を施した繊維からなる不織布を基材として用いるなど、不織布基材自体に高度な難燃性を持たせる必要がある。
【0008】
しかしながら、難燃処理を施した繊維からなる不織布は高価であり、このような不織布を使用すると製造コストが嵩むという問題がある。不織布基材に難燃性を付与する方法としては、他にも前述した難燃剤を含む含浸液を不織布に含浸させる方法があり、こちらの方法を用いれば難燃性の繊維を用いた不織布を使用する場合と比べて製造コストは比較的安価に抑えることができるが、このようにして得られた不織布基材に難燃剤を含まないインク受理層を設けた難燃性不織布は難燃性に劣り、消防法に定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性を得ることは困難であった。また、不織布自体が密度のバラツキが多いものであるため、含浸液の浸透量にバラツキが生じ含浸ムラが起こりやすいという問題点もあった。
【0009】
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、難燃処理を施していない繊維からなる不織布を用いた場合であっても、消防法で定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性と、インクジェット記録適性とを有する難燃性不織布を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的並びに作用効果については、本明細書の以下の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明の難燃性不織布は、難燃化処理を施されていない繊維からなる不織布に難燃剤を均一に浸透させることにより高度な難燃性を付与し、更に、難燃剤を含まないインクジェット受理層を設けた場合であっても、消防法で定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性を担持させるものである。
【0012】
具体的には、本発明の難燃性不織布は、難燃不織布基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなるものであり、難燃不織布基材は、難燃処理のなされていない繊維からなる不織布に難燃性含浸液を不織布100質量部に対して15質量部以上含浸させたものであり、前記難燃性含浸液は、難燃剤と、難燃剤100質量部に対して固形分換算で0.5〜10質量部の浸透剤を含み、前記浸透剤は、下記A群から1種又は2種以上を用いるものであり、前記インク受理層は、無機顔料及びバインダを含み、固形分換算で片面当たり6〜25g/m
2の範囲で設けられ、JIS L1091 A−1法による残炎時間が3秒以下、残じん時間が5秒以下、燃焼面積が30cm
2以下である。
(A群:イソプロピルアルコール、ポリエーテル変性シリコーン、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレンジオール、モノアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0013】
ここで、難燃性の評価基準としてJIS L1091 A−1法による基準を採用しているのは、JIS L1091 A−1法では試験条件と評価基準が詳細に設定されており、また同基準の区分3を満足するものであれば消防法に定められている防炎基準は満足されるためである。なお、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下、燃焼面積30cm
2以下という条件は、同基準の区分3(合格基準)に相当する。
【0014】
そして、このような構成によれば、浸透剤により不織布に難燃剤をムラなく均一に含浸させることができ、難燃不織布基材が高度な難燃性を有するものとなる。このため、難燃不織布基材上に難燃剤を含まないインク受理層を設けても、難燃性不織布全体としては高い難燃性が得られ消防法で定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性不織布とすることができる。また、インク受理層には難燃剤が含まれていないため、難燃剤によりインク受理性が阻害されてインクジェット記録適性の低下をもたらす虞がなく、インクジェット記録適性に優れた難燃性不織布となる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記浸透剤は、モノアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの中から選ばれた1種又は2種以上であってもよい。このような構成によれば、難燃性含浸液が不織布にムラなく均一に浸透し、良好な難燃性を有する難燃性不織布が得られる。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記難燃剤はノンハロゲン系難燃剤であり、リン系化合物もしくはリン系有機化合物を含むものであってもよい。このような構成によれば、焼却処分をする際などで不織布を燃焼させてもダイオキシン等の有害物が発生しにくい難燃性不織布が得られる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記インク受理層において、バインダは無機顔料100質量部に対して20〜80質量部の範囲で配合されるものであってもよい。このような構成によれば、インクジェット記録適性及び塗工層強度に優れるインク受理層を設けた難燃性不織布とすることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記インク受理層には、カチオン性高分子を含むインク定着剤が無機顔料100質量部に対して5〜40質量部の範囲で含まれていてもよい。このような構成によれば、インクジェットインクの定着性と発色性が向上し、より優れたインクジェット印刷適性を有する難燃性不織布が得られる。
【0019】
また、本発明の他の実施の形態においては、前記インク受理層と難燃不織布基材との間、及び/又は前記難燃不織布基材のインク受理層を設けてない側の面上に、ノンハロゲン系難燃剤を含む難燃塗工層を固形分換算で片面当たり3〜10g/m
2の範囲で設けてもよい。このような構成によれば、難燃性不織布全体としてより高い難燃性が得られる。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記インク受理層に含まれる無機顔料は、シリカであってもよい。このような構成によれば、インク受理層がよりインク吸収性に優れたものとなる。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記不織布はポリエチレン繊維又はポリエステル繊維からなるものであってもよい。このような構成によれば、強度や耐久性に優れた難燃性不織布が得られる。
【0022】
また本発明は、難燃性不織布の製造方法としても捉えることが出来る。本発明に係る難燃性不織布の製造方法は、難燃剤と、難燃剤100質量部に対して固形分換算で0.5〜10質量部の浸透剤を用いて難燃性含浸液を調製する難燃性含浸液調製ステップと、前記難燃性含浸液を不織布に、不織布100質量部に対して15質量部以上含まれるよう含浸させて難燃織布基材を作る難燃不織布基材製造ステップと、無機顔料とバインダと水を用いてインク受理層用塗布液を調製するインク受理層用塗布液調製ステップと、前記難燃不織布基材の少なくとも一方の面に前記インク受理層用塗布液を塗布し、固形分換算で片面当たり6〜25g/m
2の範囲となるようにインク受理層を設けるインク受理層塗布ステップと、を有するものである。
【0023】
また、前記浸透剤は、下記A群から1種又は2種以上を用いるものであり、JIS L1091 A−1法による残炎時間が3秒以下、残じん時間が5秒以下、燃焼面積が30cm
2以下である。
(A群:イソプロピルアルコール、ポリエーテル変性シリコーン、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレンジオール、モノアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0024】
そして、このような構成によれば、不織布に難燃剤を均一に含浸することができ、安定した難燃性を有する難燃性不織布を製造することが出来る。加えて、インク受理層には難燃剤が含まれていないためインク受理性が阻害されず、優れたインクジェット記録適性が得られる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明で明らかなように、本発明の難燃性不織布は、難燃不織布基材に難燃剤がムラなく均一に含浸されていることから難燃不織布基材が高度な難燃性を有するものとなり、難燃不織布基材上に難燃剤を含まないインク受理層を設けても難燃性不織布全体としては高い難燃性が得られ、消防法で定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性不織布とすることができる。また、インク受理層には難燃剤が含まれていないために難燃剤によりインク受理性が阻害されることがなく、インクジェット記録適性にも優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。
【0028】
本発明の難燃性不織布は、難燃不織布基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなるものであり、難燃不織布基材は、難燃処理のなされていない繊維からなる不織布に難燃性含浸液を不織布100質量部に対して15質量部以上含浸させたものであり、前記難燃性含浸液は、難燃剤と、難燃剤100質量部に対して固形分換算で0.5〜10質量部の浸透剤を含み、前記浸透剤は、下記A群から1種又は2種以上を用いるものであり、前記インク受理層は、無機顔料及びバインダを含み、固形分換算で片面当たり6〜25g/m
2の範囲で設けられ、JIS L1091 A−1法による残炎時間が3秒以下、残じん時間が5秒以下、燃焼面積が30cm
2以下であることを特徴とするものである。
(A群:イソプロピルアルコール、ポリエーテル変性シリコーン、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレンジオール、モノアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
【0029】
先にも述べたように、本発明に係る難燃性不織布は、難燃性能乃至防炎性能において消防法の基準を満たすことを目的の一つとしている。
ここで、消防法施行規則について説明する。
消防法で防炎性能を有するカーテン、じゅうたん等防炎物品の使用が義務付けられている防火対象物として代表なものを記載する。
消防法第8条の3第1項 高層建築物(31mを超える建物)、地下街
消防法施行令 別表第一(1)イ…劇場、映画館、演劇場 ロ…集会場
(2)イ…カフェなど ロ…遊技場など ニ…カラオケボックスなど
(3)イ…待合、料理店など ロ…飲食店
(4)百貨店、マーケットなど
(5)イ…旅館、ホテルなど
(6 イ…病院など ロ…養護老人ホームなど ハ…養護老人ホーム
(9)イ…公衆浴場のうち蒸気浴場、熱気浴場など
(12)ロ…映画又はテレビスタジオ
【0030】
次に消防法第8条の3第1項で記載されている防炎対象物品を記載する。
1 カーテン
2 布製のブラインド
3 暗幕
4 じゅうたん等
5 展示用の合板
6 どん帳その他舞台において使用する幕
7 舞台において使用する大道具用の合板
8 工事用シート(網目12mm以下)
【0031】
次に消防法の燃焼試験方法について代表なものを記載する。
45°ミクロバーナー法、45°メッケルバーナー法、45°たるませ法、45°コイル法、45°エアーミックスバーナー法
【0032】
本発明の難燃性不織布は、カーテン、布製ブラインド、工事用シート、薄手布で着炎する物に該当し、更に物品質量が450g/m
2以下であるため、炎の長さが45mmで加熱時間が1分の条件の評価に該当する。本発明において難燃性の評価を行うに際しては、試験条件と評価基準が詳細に設定されているJIS L1091 A−1法による評価を行う。これは、同基準の区分3を満足するものであれば消防法に定められている防炎基準は満足されるためである。なお、残炎時間3秒以下、残じん時間5秒以下、燃焼面積30cm
2以下という条件は、同基準の区分3(合格基準)に相当する。
【0033】
本発明において難燃不織布基材に用いる不織布としては、難燃処理のなされていない繊維からなる不織布を用いる。不織布を構成する繊維としては、羊毛やコットンなどの天然繊維、レーヨンやアセテートなどの化学繊維、ポリオレフィンやポリエステルなどの合成繊維、などの繊維から構成されているものを用いることができるが、これらの中でも強度や耐久性の点からポリエチレン繊維又はポリエステル繊維からなる不織布を使用することが好ましい。
【0034】
本発明において難燃性含浸液に用いる難燃剤としては、特に限定するものではなく、公知の難燃剤を用いることが可能である。しかしながら、臭素、塩素などのハロゲン化合物からなる難燃剤は、燃焼条件によってはダイオキシン等の有害物を発生する可能性がある為、ノンハロゲン系難燃剤を使用することが好ましい。
【0035】
ノンハロゲン系難燃剤としては、市販されている無機系の難燃剤や、リンおよび/または窒素含有の有機系の難燃剤を用いることが可能である。これらの難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、亜リン酸アルミニウム等の金属酸化物、ホウ酸、ホウ酸亜鉛などのホウ素系化合物、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、アミノ基変性リン酸エステル、又は水酸基含有リン酸エステル等のリン系化合物、メラミン又はメラミンシアヌレート化合物、メラミンリン酸塩、メラミンボレート等のメラミン系誘導体、グアニジン若しくはスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等のグアニジン系誘導体などのリンおよび/または窒素含有化合物など挙げられる。これらのノンハロゲン系難燃性化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0036】
本発明において難燃性含浸液に用いる浸透剤としては、イソプロピルアルコール、ポリエーテル変性シリコーン、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレンジオール、モノアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどを用いることができるが、これら例示化合物に限定されるものではない。なお、上述のものの中では、水との相溶性が高いことから、モノアルキルアンモニウムクロライド、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0037】
また、これらの浸透剤は水に可溶で、且つHLB値(界面活性剤の水と油への親和性の程度を表す値。HLBとはHydrophile−Lipophile Balanceの頭文字)が10以上であるものを使用することが好ましい。
【0038】
前記難燃性含浸液における浸透剤の含有量は、固形分換算で難燃剤100質量部に対し、0.5〜10質量部とすることが好ましく、1〜3質量部とすればより好ましい。浸透剤の配合量が0.5質量部未満だと浸透剤が効力を発揮するのに十分な量ではないため密度のバラツキが大きい不織布において含浸ムラが多くなり、含浸液を均一に浸透させることができない。逆に、浸透剤の配合量が10質量部を超えると、使用量に見合うだけの効果が期待できないことに加えてコスト増加にも繋がる。
【0039】
また、本発明において不織布に含浸させる難燃性含浸液は、不織布100質量部に対して、含浸液に含まれる難燃剤が固形分換算で15質量部以上となるように含浸させ、より好ましくは18質量部以上とする。難燃剤の含浸量が15質量部未満であると目的とする難燃性能が得られず、消防法やJIS L1091 A−1法における区分3の条件を満たすことができない。なお、不織布への難燃剤の含浸量の上限については特に限定するものではないが、難燃剤の含浸量が不織布100質量部に対して30質量部を超えても使用量に見合うだけの効果が期待できず、経済的にも不利であるため、30質量部以下とすることが望ましい。
【0040】
ここで、不織布への難燃性含浸液の含浸方法については特に限定するものではなく、公知の含浸方法を用いることが可能であり、サイズプレスコータや含浸コータを用いることができる。
【0041】
先にも述べたように、本発明の難燃性不織布においては、難燃不織布基材の少なくとも一方の面にインク受理層を設けるものである。
【0042】
本発明においてインク受理層に用いる無機顔料は特に限定するものではなく、インクジェット印刷を目的としたインク受理層に用いられる公知の無機顔料を用いることができる。このような無機顔料としては、例えば、合成非晶質シリカ、焼成クレー、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、アルミナ、リトポン、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト等の白色無機顔料などを例示することができる。インク吸収性に着目した場合には、高いインク吸収性の点から合成シリカを用いることが好ましい。また、本発明の目的を損なわない範囲であれば、少量の有機顔料を用いることも可能である。
【0043】
本発明において、インク受理層に用いるバインダは特に限定するものではなく、インクジェット印刷を目的としたインク受理層に用いられる公知のバインダを用いることができる。このようなバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、変性でんぷん、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体等のエマルジョン型バインダ又はエマルジョン型であるウレタン樹脂バインダなどを用いることができる。これらのバインダの中で、インクジェット印刷適性や創業性の観点からはポリビニルアルコールが好ましい。なお、これらのバインダの重合度、ケン化度、Tg(ガラス転移温度)、MFT(最低造膜温度)などは、限定されず、また、これらの分子鎖中に架橋性の官能基を付加しても構わない。
【0044】
また本発明においては、インクの定着性と発色性を向上させるためにインク受理層にカチオン性高分子を主成分とするインク定着剤を含有させても良い。このようなインク定着剤としては、ポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ジメチルアミンアンモニアエピクロルヒドリン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリスチレン共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアミド共重合物、ジシアンジアミドホルマリン重縮合物、ジシアンジアミドジエチレントリアミン重縮合物、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミドエポキシ樹脂、メラミン樹脂酸コロイド、尿素系樹脂、カチオン変性ポリビニルアルコール、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型化合物、その他第4級アンモニウム塩類、ポリアミン等を用いることが可能である。
【0045】
インク受理層形成用の塗布液には、前記した無機顔料とバインダ以外の製紙用添加剤も本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて用いることができる。このような製紙用添加剤としては、分散剤、消泡剤、pH調整剤、湿潤剤、保水剤、増粘剤、架橋剤、離型剤、防腐剤、柔軟剤、ワックス、導電防止剤、帯電防止剤、サイズ剤、耐水化剤、可塑剤、蛍光増白剤、着色染料、還元剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、脱臭剤等が挙げられる。
【0046】
本発明において、インク受理層は難燃不織布基材の少なくとも一方の面に、単層若しくは二層以上を設ける。インク受理層の塗布量は、片面当たり固形分換算で6〜25g/m
2の範囲とし、好ましくは10〜18g/m
2である。インク受理層の塗布量が6g/m
2未満だと、塗布量が少なすぎるためにインク受理層が難燃不織布基材表面の全体を均一に覆うことができず、また、インキ受理層の厚み自体も十分ではないため、印字滲み及び印字ムラをおこすなど十分なインクジェット記録適性が得られない虞がある。逆に、インク受理層の塗布量が25g/m
2を超えると、印刷適性の向上が見られず生産性やコスト的に好ましくないことに加え、難燃性が付与されてないインク受理層の割合が増加することで難燃性不織布自体の難燃性能を悪化させる虞がある。
【0047】
また本発明においては、難燃不織布基材上に難燃剤を含有させた塗布液を塗布し、別途難燃塗工層を設けてもよい。難燃塗工層を難燃不織布基材の少なくとも一方の面に設けることで難燃性不織布に更なる難燃性を付与することが可能である。ここで、同一の面に難燃塗工層とインク受理層とを積層する場合には、インク受理層によるインクジェット記録適性を損なわないようにインク受理層が最表層となるように順次積層させる必要がある。また、難燃不織布基材の一方の面のみにインク受理層を設けた場合には、インク受理層を設けていないもう一方の面に難燃塗工層を設けることで更なる難燃性を付与することも可能である。
【0048】
本発明において難燃塗工層に含有させる難燃剤は特に限定するものではなく、公知の難燃剤を用いることが可能であるが、臭素、塩素などのハロゲン化合物からなる難燃剤は、燃焼条件によってはダイオキシン等の有害物を発生する可能性がある為、ノンハロゲン系難燃剤を使用することが好ましい。ノンハロゲン系難燃剤としては、市販されている無機系の難燃剤や、リンおよび/または窒素含有の有機系の難燃剤を用いることが可能である。これらの難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、三酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、亜リン酸アルミニウム等の金属酸化物、ホウ酸、ホウ酸亜鉛などのホウ素系化合物、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、アミノ基変性リン酸エステル、又は水酸基含有リン酸エステル等のリン系化合物、メラミン又はメラミンシアヌレート化合物、メラミンリン酸塩、メラミンボレート等のメラミン系誘導体、グアニジン若しくはスルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン等のグアニジン系誘導体などのリンおよび/または窒素含有化合物など挙げられる。これらのノンハロゲン系難燃性化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0049】
また、難燃塗工層を形成するために塗布する塗布液には、難燃剤の他にバインダを含有させてもよい。バインダを添加することで、難燃塗工層の強度が増す等の利点がある。本発明において難燃塗工層に用いるバインダとしては、ポリビニルアルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、でんぷん、変性でんぷん、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、アルギン酸ソーダ、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、カゼイン、ゼラチン、テルペン等の水溶性バインダー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビスクロロメチルオキサシクロブタン、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルフォン、ポリ−p−キシリレン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、変性スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、メチルメタアクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル共重合体等のエマルジョン型バインダ又はエマルジョン型であるウレタン樹脂バインダを用いることができる。
【0050】
また、難燃塗工層を設ける場合には、難燃剤の塗布量が固形分換算で片面当たり3〜10g/m
2となるように設けることが好ましく、より好ましくは3〜6g/m
2である。また、目的とする難燃性の向上効果に応じて塗布量を適宜変更してもよい。難燃剤の塗布量が3g/m
2未満であると難燃性向上効果に乏しく、逆に塗布量が10g/m
2を超えると、難燃性向上効果自体は頭打ちとなるため、生産性やコスト増加の点から好ましくない。
【0051】
本発明において、インク受理層又は難燃塗工層を難燃不織布基材上に設けるにあたり、それら塗布液の塗布方法については特に限定されるものではなく、公知の塗布方法を用いることができる。例えばキスコータ、ブレードコータ、エアナイフコータ、ロールコータ、リバースロールコータ、バーコータ、ロッドブレードコータ、ショートドウェルコータ、カーテンコータ、ダイコータ、グラビアコータ、チャンプレックスコータ等から選ばれたコーターを用い、インク受理層又は難燃塗工層をそれぞれ単層又は多層に分けて塗布できる。塗布液の液性からはエアナイフコータ、カーテンコータ、ロッドコータが好ましく、更に好ましくはエアナイフコータである。
【0052】
また、インク受理層又は難燃塗工層を形成する塗布液の乾燥方式についても特に限定されるものではなく、熱風乾燥、赤外乾燥、常温乾燥、凍結乾燥等を用いることができるが、乾燥効率の点から赤外乾燥、熱風乾燥が好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明に係る難燃性不織布の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例中の「部」及び「%」は特に断らない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0054】
(実施例1)
<難燃不織布基材の作製>
難燃剤としてリン系化合物を含有するノンハロゲン難燃剤(商品名:フラムガードSP−10Y、90%濃度液、松本油脂製薬社製)100部を水中に添加し、更に、浸透剤としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(商品名:エマルゲンMS110、100%濃度品、花王社製)2部を添加して攪拌し、固形分濃度が32%の難燃性含浸液を得た。得られた難燃性含浸液を、難燃処理のなされていない繊維からなる不織布(商品名:タイベック1073D、坪量75g/m
2、旭デュポン社製)に含浸コータにて難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して18.1質量部となるよう含浸し、難燃不織布基材を得た。
<インク受理層用塗布液の調製>
非晶質シリカ(商品名:74X5500、グレースデビソン社製)70部、及び、非晶質シリカ(商品名:P−412、グレースデビソン社製)30部を水中に添加し、カウレス分散機で固形分濃度が27.5%の顔料スラリーを調製した。得られた顔料スラリーに、バインダとしてポリビニルアルコール(商品名:エクセバールRS2117、11.5%溶解液、クラレ社製)30部、エチレン酢酸ビニル共重合体(商品名:ポリゾールAD−13−50、50%濃度品、昭和高分子社製)20部、インクジェットインクの定着剤としてカチオン性樹脂(商品名:ユニセンスCP−103、40%濃度品、センカ社製)20部、バインダの耐水化剤として酢酸ジルコニル(商品名:ジルコゾールZA−30、30%濃度品、第一稀元素社製)10部を添加して攪拌し、さらに水を添加して攪拌し、固形分濃度が17.5%のインク受理層用塗布液を得た。
<難燃性不織布の作成>
難燃不織布基材の一方の面に、インク受理層用塗布液を、塗布量が固形分換算で10.5g/m
2となるようにエアナイフコータにて塗布し、次いでエアドライヤにて熱風乾燥を行い、目的とする難燃性不織布を得た。
【0055】
(実施例2)
実施例1において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して30.5質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を12.2g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0056】
(実施例3)
実施例1において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して16.5質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を10.8g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0057】
(実施例4)
実施例1において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して22.0質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を16.1g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0058】
(実施例5)
実施例1において難燃性含浸液中の浸透剤の配合量を0.5部とし、難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して15.1質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を10.1g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0059】
(実施例6)
実施例1において難燃性含浸液中の浸透剤の配合量を6部とし、難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して20.1質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を12.6g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0060】
(実施例7)
<難燃塗工層用塗布液の調製>
難燃剤としてリン系有機化合物を含有するノンハロゲン難燃剤(商品名:ニッカファイノンHFT−3、40%濃度液、日華化学社製)100部を水中に添加し、更に、バインダとしてエチレン酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン(商品名:スミカフレックス401HQ、55%濃度液、住化ケムテックス社製)10部を添加して攪拌し、固形分濃度が25%の難燃塗工層用塗布液を得た。
<難燃性不織布の作成>
実施例1において得られた難燃性不織布のインクジェットインク受理層を設けていない面に、難燃塗工層用塗布液を難燃剤の塗布量が固形分換算で3.2g/m
2になるようにエアーナイフコータにて塗布して難燃性不織布を得た。
【0061】
(実施例8)
実施例7において不織布を坪量105g/m
2の不織布(商品名:タイベック1082D、坪量105g/m
2、旭デュポン社製)に変更し、難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して16.2質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を12.0g/m
2となるように塗布し、難燃塗工層用塗布液を難燃剤の塗布量が固形分換算で8.0g/m
2になるように塗布した以外は実施例7と同様にして難燃性不織布を得た。
【0062】
(実施例9)
実施例8において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して25.1質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を15.1g/m
2となるように塗布し、難燃塗工層用塗布液を難燃剤の塗布量が固形分換算で5.4g/m
2になるように塗布した以外は実施例8と同様にして難燃性不織布を得た。
【0063】
(比較例1)
実施例1において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して12.5質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を10.8g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0064】
(比較例2)
実施例1において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して8.6質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を11.0g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0065】
(比較例3)
実施例1において不織布を坪量105g/m
2の不織布(商品名:タイベック1082D、坪量105g/m
2、旭デュポン社製)に変更し、難燃性含浸液中に浸透剤を配合せず、難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して16.0質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を13.5g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0066】
(比較例4)
実施例1において難燃性含浸液を難燃剤の含浸量が固形分換算で不織布100質量部に対して19.5質量部となるように含浸し、インク受理層の塗布量を26.0g/m
2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして難燃性不織布を得た。
【0067】
<難燃性不織布の物性評価>
実施例1〜9、比較例1〜4で得られた難燃性不織布について、23℃×50%RHの条件で調湿後、以下の方法により難燃性及びインクジェット記録適性の評価を行った。結果を
図1に示す。
【0068】
<難燃性評価(燃焼性試験方法)>
繊維製品の燃焼性試験方法であるJIS L1091 A−1法(45°ミクロバーナー法)に準拠して、以下の条件で試験を行った。
試験条件:加熱時間 60秒、着炎後加熱時間 3秒
評価方向:表(縦、横)、裏(縦、横)
評価基準:○ 着炎しない。仮に着炎しても次の基準を超えないこと。
(残炎時間 3秒以下、残じん時間 5秒以下、炭化面積 30cm
2以下)
× 着炎し燃え広がる。
【0069】
<インクジェット記録適性>
インクジェットプリンタ EPSON PX G5300を用いてインク受理層を有する面に任意の図柄を印字して印字滲み及びムラを目視評価した。
○ 印字滲み及びムラがなく、合格。
× 印字滲み及びムラとも顕著で実用に耐えず、不合格。
【0070】
図1に示された結果から明らかなように、実施例1〜9により得られた難燃性不織布はいずれもJIS L1091 A−1法による区分3の条件を満たしており、これらは全て消防法で定められた防炎性試験に合格するレベルの難燃性を有していると言える。これは、浸透剤の配合割合や難燃性含浸液が適切であったために難燃不織布基材に難燃剤がムラなく均一に含浸されたためであると考えられる。
【0071】
また、実施例1〜9により得られた難燃性不織布はインクジェットプリンタによる記録適性についても良好であり、即ち、実施例1〜9により得られた難燃性不織布はいずれもの高い難燃性とインクジェット記録適性を両立したものである。
【0072】
これに対して、比較例1〜4により得られた難燃性不織布は、難燃性の点で実施例のものよりも劣りJIS L1091 A−1法による区分3の条件を満たさないものであった。これは、難燃性含浸液による難燃剤の含浸量が少ない(比較例1,2)、難燃性含浸液中に浸透剤が含まれていない(比較例3)、インク受理層の塗布量が多いことにより難燃剤の含浸量が相対的に低下している(比較例4)、といったことが原因であると思われる。