(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記導電性シートにおける前記貫通部は、前記液体との接触部の少なくとも一部に、前記液体に対して界面活性を有する界面活性剤が付着されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の液体感知シート。
前記絶縁シートは、前記透液構造における前記液体との接触部の少なくとも一部に、前記液体に対して界面活性を有する界面活性剤が付着されていることを特徴とする請求項9に記載の液体感知シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の液体感知シートは、周縁部を接着することにより一体化した構成であるため、一体化された形状やサイズを単位として用いることが必要になっている。しかしながら、漏水を検知する場所は、例えば従来の液体感知シートの単位サイズよりも小さな場所のように、多様なサイズや形状であることが多いため、従来の液体感知シートを適用できない場合が少なからずある。
【0005】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、適用対象の自由度が高い液体感知シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記構成を備える液体感知シートであって、液体により導電性を発揮する透液構造の絶縁シートと、前記絶縁シートの両面に接合された導電性シートとを備えており、前記導電性シートの少なくとも一方は、前記液体を通過させる貫通部を有しており、前記絶縁シートと前記導電性シートとは、接合面全体において分散配置された接着剤により接合されており、前記接着剤は、前記導電性シートの表面
に部分的に配置されている。
【0007】
上記の構成によれば、接合面全体において分散配置された接着剤により絶縁シートと導電性シートとを面全体で接合することができるため、所望のサイズや形状に切り取っても、同一の感知性能及び接合強度を有した液体感知シートとして用いることができる。即ち、従来のようにシートの周縁部を接着剤で接合した構成の場合には、サイズや形状が限定されるが、上記の構成によれば、サイズや形状を任意に変更できるため、適用対象の自由度が高い液体感知シートとすることができる。
【0008】
本発明における前記導電性シートは、 金属層であってもよい。上記の構成によれば、分散配置された接着剤の隙間の領域が導電性シートの露出面となり、この露出面が平坦状の金属層になるため、貫通部を除いた部分全体で導電状態の有無を感知することができる。
【0009】
本発明における前記金属層は 金属箔であっても良い。上記の構成によれば、さらに、屈曲性のある液体感知シートとすることができる。
【0010】
本発明
は、前記貫通部を有する前記導電性シートにおける前記絶縁シートとは反対側の面に配置された保護シートを有しており、前記保護シートは、隣接する前記導電性シートの前記貫通部に重複する通過孔を有し、前記導電性シートは、
前記保護シートに導電性ペースト
を塗布することにより形成されていても良い。上記の構成によれば、
液体感知シートを衝撃や擦れによる外力からの保護および液体感知シートの強度アップや絶縁機能を持たすことができる。また、導電性ペーストの塗布により導電性シートを形成することができるため、液体感知シートを容易に得ることができる。
【0011】
本発明における前記貫通部は、孔及びスリットの少なくとも一つであっても良い。上記の構成によれば、孔及びスリットの1以上の組み合わせにより液体の種類、感度など目的に応じた液体感知シートとすることができる。
【0012】
本発明は、前記導電性シートの両方共に前記貫通部を有しており、一方の前記導電性シートと他方の前記導電性シートとの前記貫通部同士が重ならないように配置されていても良い。
【0013】
上記の構成によれば、一方の導電性シートの貫通部から絶縁シートに透過した液体が他方の導電性シートで堰き止められるため、液体感知が確実に行える液体感知シートとすることができる。
【0014】
本発明における前記導電性シートにおける前記貫通部は、前記液体との接触部の少なくとも一部に、前記液体に対して界面活性を有する界面活性剤が付着されていても良い。
【0015】
上記の構成によれば、界面活性剤により液体が絶縁シート内部に浸透し易くなるため、僅かな液体であっても絶縁シートに浸透して絶縁状態から導電状態に変化することになる。これにより、少量の液体でも感知することができたり、感知までの時間を短縮することができる。また、感知対象の液体の種類に応じて界面活性剤の種類を使い分けることができる。
【0016】
本発明における前記絶縁シートは、不織布であっても良い。上記の構成によれば、不織布により絶縁シートが形成されているため、僅かな液体であっても毛細管現象により絶縁シートに浸透して絶縁状態から導電状態に変化することになる。
【0017】
本発明における前記絶縁シートは、前記液体に対して親液性を有していても良い。上記の構成によれば、液体に対して親液性を有した絶縁シートであるため、僅かな液体であっても絶縁シートに浸透して絶縁状態から導電状態に変化することになる。
【0018】
本発明における前記絶縁シートは、前記透液構造における前記液体との接触部の少なくとも一部に、前記液体に対して界面活性を有する界面活性剤が付着されていても良い。
【0019】
上記の構成によれば、界面活性剤により液体が絶縁シート内部に浸透し易くなるため、僅かな液体であっても絶縁シートに浸透して絶縁状態から導電状態に変化することになる。また、感知対象の液体の種類に応じて界面活性剤の種類を使い分けることができる。
【0020】
本発明における前記絶縁シートは、前記液体により色が変化する着色部材を有しても良い。
【0021】
上記の構成によれば、液体により色が変化するため、視覚により漏液を感知可能な液体感知シートとすることができる。
【0022】
本発明は、
前記貫通部を有する前記導電性シートにおける前記絶縁シートとは反対側の面に配置された保護シートを有しており、前記保護シートは、
隣接する前記導電性シートの前記貫通部に重複する通過孔を有しても良い。
【0023】
上記の構成によれば、液体感知シートを衝撃や擦れによる外力からの保護および液体感知シートの強度アップや絶縁機能を持たすことができる。
【発明の効果】
【0026】
液体感知シートの適用対象の自由度を高くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(液体感知シート:全体構成)
図1に示すように、液体感知シート1は、液体により導電性を発揮する透液構造の絶縁シート4と、絶縁シート4の両面に接合された導電性シート3・5とを備えている。導電性シート3・5は、液体を通過させる貫通部31・51を有している。絶縁シート4と導電性シート3・5とは、接合面全体において分散配置された接着剤7により接合されている。換言すれば、液体感知シート1は、2枚の導電性シート3・5間に絶縁シート4が接合状態で配置された構成を有している。
【0030】
ここで、『液体』は、液体感知シート1による液状の感知対象物であり、液状であれば、材質や物性に限定されるものではない。液状は、絶縁シート4に含浸する程度の流動性を有することを意味する。『液体』の種類としては、純水や不純物を含む水の他、酸、アルカリ、油、有機溶剤等の有機物であってもよい。また、『液体』の物性は、液体感知シート1が使用される環境温度下で液化している物質であれば良い。
【0031】
上記のように構成された液体感知シート1は、接合面全体において分散配置された接着剤により絶縁シート4と導電性シート3・5とを面全体で接合することができるため、所望のサイズや形状に切り取っても、同一の感知性能及び接合強度を有した液体感知シートとして用いることができる。これにより、液体感知シート1は、サイズや形状を任意に変更できるため、適用対象の自由度が高いものになっている。
【0032】
また、液体感知シート1は、接合面全体において分散配置された接着剤により絶縁シート4と導電性シート3・5とを接合するため、長尺の絶縁シート4及び導電性シート3・5に接着剤を塗布することによって、連続的に製造することも可能になっている。さらに、連続的に製造された液体感知シート1は、製造途中で裁断することによって、所定長に切り揃えた短尺タイプの液体感知シートとして出荷及び保管することができると共に、長尺の液体感知シート1をロール状に巻回した液体感知ロール10として出荷及び保管することもできる。即ち、液体感知シート1は、大量生産に適した構成を有している。
【0033】
また、液体感知シート1は、2枚の保護シート2・6を有している。保護シート2・6は、液体感知シート1の表面(一方面)及び裏面(他方面)に位置するように、導電性シート3・5における絶縁シート4とは反対側の面にそれぞれ配置されている。これらの保護シート2・6は、液体感知シート1を衝撃や擦れによる外力からの保護および液体感知シートの強度アップや絶縁機能を持たしている。これらの保護シート2・6は、導電性シート3・5の貫通部31・51に重複する通過孔21・61を有している。
【0034】
(絶縁シート4)
液体感知シート1の厚み方向中心部に配置された絶縁シート4は、液体により導電性を発揮すると共に、液体を透過させる透液構造を有している。即ち、絶縁シート4は、液体の透過により全体として絶縁性から導電性に変化するように構成されている。
【0035】
絶縁シート4が備える『透液構造』は、感知対象物である液体を透過させる構造であれば、材質や形状に限定されるものではない。例えば、不織布構造、連続気泡等を有した多孔性構造、無孔性材料に1以上の孔が形成された構造、無孔性材料に1以上のスリットが形成された構造が例示される。絶縁シート4が不織布や紙である場合には、僅かな液体であっても毛細管現象により絶縁シート4に浸透して絶縁状態から導電状態に変化することになるため、高い感知精度の液体感知シート1とすることができる。
【0036】
絶縁シート4の材質は、液体との非接触時において電気抵抗の大きな材質であれば、特に限定されるものではない。
【0037】
絶縁シート4の材質としては、布や紙等のセルロースやセラミック、エンジニアリングプラスチックが例示される。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、アラミド、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。
【0038】
具体的には、ユニチカ株式会社製(登録商標:MARIX)のポリエステル樹脂からなる不織布を絶縁シート4に用いることができる。この不織布は、ポリエステル繊維を接着する樹脂は水溶性のアクリル樹脂であるため、親水性を有している。尚、上記の不織布の製造法はスパンボンド法である。不織布品番が#20507WTDにおいては、目付けが50g/m
2、平均厚みが155μmである。不織布品番が#20604FLDにおいては、目付けが60g/m
2、平均厚みが150μmである。不織布品番が#10606WTDにおいては、目付けが60g/m
2、平均厚みが215μm(嵩高性あり)である。
【0039】
絶縁シート4の厚みは、1μm〜5000μmが好ましい。また、絶縁シート4は、感知対象物である液体に対して親液性を有していることが好ましい。例えば、液体が水であれば、親液性は親水性と称される。親液性を有した構成であると、僅かな液体であっても絶縁シート4内に浸透して絶縁状態から導電状態に変化するため、少量の液体でも感知することができたり、感知までの時間を短縮する液体感知シート1とすることができる。
【0040】
尚、親液性は、絶縁シート4の材質自体が親液性を有していたり、疎液性の材質の表面に親液性の層が形成されたものでも良い。例えば、絶縁シート4は、透液構造における液体との接触部の少なくとも一部に、液体に対して界面活性を有する界面活性剤が付着されていても良い。この場合には、感知対象の液体の種類に応じて界面活性剤の種類を使い分けることによって、水、油など感知対象を選択可能な液体感知シート1とすることができる。
【0041】
さらに、絶縁シート4は、液体により色が変化する着色部材を有していても良い。着色部材としては、水や油等の溶媒からなる液体に溶解するカプセル内に染料等の着色剤を密封した構成を例示することができる。この場合には、液体によりカプセルが溶けたときに、密封されていた着色剤が流れ出ることによって、絶縁シート4の色が変化するため、視覚により漏液を感知可能な液体感知シート1とすることができる。
【0042】
さらに、絶縁シート4は、液体に溶解してイオン化する溶解材料(無機塩類:塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)が付着されていても良い。この場合には、液体自体に導電性がない液体(油等)でも、該液体によりイオン化した溶解材料が絶縁シート4を導電性に変化させることが可能になる。
【0043】
(導電性シート3・5)
上記の絶縁シート4の両面には、導電性を有した導電性シート3・5が接合されている。導電性シート3・5の厚みの下限は、0.05μmであり、厚みの上限は、200μmである。尚、スパッタや蒸着法により導電性シート3・5を形成した場合には、0.05μm〜1μmの厚みが好ましい。導電インキ印刷法により導電性シート3・5を形成した場合には、2μm〜200μmの厚みが好ましい。金属箔で導電性シート3・5を形成した場合には、2μm〜100μmの厚みであることが好ましい。
【0044】
また、導電性シート3・5は、液体を通過させる貫通部31・51を有している。貫通部31・51は、円形状の孔により形成されている。貫通部31・51における孔径(直径)は、液体の種類により試験・実験などで適宜決めればよい。また、貫通部31・51の開孔率は、1%〜90%の範囲であれば良いが、用途に合わせて適宜調整することが好ましい。
【0045】
尚、貫通部31・51の孔形状は、円形状の他、長穴形状、楕円形状、三角形や四角形等の多角形状であってもよい。貫通部31・51の孔サイズは、毛細管現象を引き起こす程度に設定されていても良いし、液体の液滴よりも大きなサイズであっても良い。また、貫通部31・51は、各種の形状やサイズの組み合わせであっても良い。例えば、打ち抜き加工により形成された円形状や楕円形状、三角形状、四角形状、五角形状、六角形状などの外径は、0.1〜30mmが好ましい。
【0046】
さらに、貫通部31・51は、スリットであっても良い。スリットの形状としては、直線、−、=、十字、V印であってもよい。スリット長さは、3mm〜5mmが好ましい。スリットの場合でも、毛細管現象により液体の透過を促進することが可能になる。換言すれば、貫通部31・51は、孔及びスリットの少なくとも一つで形成されていれば良い。これにより、導電性シート3・5は、孔及びスリットの1以上の組み合わせにより多様な感度の液体感知シート1とすることが可能になる。
【0047】
具体的に説明すると、液体感知シート1は、
図2に示すように、円形状の貫通部31・51が長手方向及び幅方向のマトリックス状に配置されていても良い。尚、配置は面全体において均等に配置されていることが好ましい。また、液体感知シート1は、
図3に示すように、幅方向の両端部にかけて形成された長穴形状の貫通部31・51が所定間隔をあけて長手方向に配置されていても良い。また、液体感知シート1は、
図4に示すように、長方形状の貫通部31・51が幅方向、長手方向及び傾斜方向からなる格子状に配置されていても良い。この構成によれば、所定形状に切り取る作業が容易になる。また、液体感知シート1は、
図5に示すように、円形状の貫通部31・51とスリット状の貫通部31・51とが交互に配置されていても良い。
【0048】
さらに、液体感知シート1は、
図2〜
図5の組み合わせであっても良いし、孔部分がスリットに置き換えられていても良い。全ての貫通部31・51をスリットとした場合には、ロール等の台部材に形成された複数の刃部を用いて導電性シート3・5をカットすることにより貫通部31・51を形成することができる。これにより、導電性シート3・5を打ち抜いて孔を形成する場合のように、孔部分の打ち抜き屑が残らないため、屑の発生を最小限に抑制することができる。
【0049】
導電性シート3・5は、導電性を有すれば、どのような材質であっても構わないが、アルミや銅等の金属であることが好ましい。導電性シート3・5を形成する金属材料としては、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、及び、亜鉛の何れか、またはこれらの2つ以上を含む合金等であってもよい。
【0050】
また、導電性シート3・5は、金属層であることが好ましい。ここで、金属層とは、金属箔及び金属薄膜を含む概念である。導電性シート3・5が金属層であると、分散配置された接着剤7の隙間の領域が導電性シート3・5の露出面となり、この露出面が平坦状の金属層(導電性シート3・5)になるため、貫通部31・51を除いた部分全体で導電状態の有無を感知することができる。
【0051】
さらに、導電性シート3・5は、金属箔であることが特に好ましい。この場合には、電気抵抗が小さく感知時間を短縮することができる。
【0052】
尚、導電性シート3・5は、圧延加工による金属箔、電解による金属箔(特殊電解銅箔など)に限定されず、真空蒸着、スパッタリング、CVD法、MO(メタルオーガニック)、メッキ、印刷法などにより形成される金属薄膜であっても良い。
【0053】
また、導電性シート3・5は、導電性接着剤により形成されていても良い。この場合には、導電性接着剤の塗布により導電性シート3・5を形成することができるため、液体感知シート1を容易に得ることができる。導電性接着剤しては、導電性粒子と接着性樹脂からなる混合体であり、100〜200℃で加熱圧着可能な接着剤である。導電性粒子は、2〜50μmの平均粒子径を有する金属粉又は低融点金属粉であるとともに、接着性樹脂100重量部に対し10〜400重量部配合されている。
【0054】
また、
図1に示すように、液体感知シート1は、一方の導電性シート3と他方の導電性シート5との貫通部31・51同士が重ならないように配置されている。即ち、一方の導電性シート3の貫通部31が他方の導電性シート5で完全に塞がれると共に、他方の導電性シート5の貫通部51が一方の導電性シート3で完全に塞がれた状態にされている。これにより、例えば、一方の導電性シート3の貫通部31から絶縁シート4に透過した液体が他方の導電性シート5で堰き止められるため、確実に感知する液体感知シート1とすることができる。尚、液体感知シート1は、導電性シート3・5の貫通部31・51同士が一部が重なっていても良い。
【0055】
また、導電性シート3・5は、厚み及び材質が同一であると共に、貫通部31・51の形状、サイズ及び開孔率が同一構成にされていることが好ましい。これにより、液体感知シート1の何れの面においても同一の感知性能を発揮するため、感知対象となる液体を感知する面に注意して取り付ける作業の必要性を解消することが可能なっている。
【0056】
尚、一方の導電性シート3と他方の導電性シート5は、異なる構成にされていても良い。例えば、
図2〜
図5の組み合わせであっても良い。導電性シート3・5が異なる構成である場合には、導電性シート3・5の面により感知性能を異ならせることができるため、感知対象物である液体の適用対象を拡大することができると共に、2種類の感度を持つ液体感知シート1とすることができる。
【0057】
尚、導電性シート3・5の感知性能を異ならせる場合には、作業員が感知性能を見分けることができるように、導電性シート3・5が色分けや記号表記等で識別可能にされていることが好ましい。また、液体感知シート1は、
図6に示すように、導電性シート3・5の何れか一方に貫通部31・51を有していても良い。即ち、液体感知シート1は、導電性シート3・5の少なくとも一方に貫通部31・51を有していれば良い。
【0058】
導電性シート3・5における貫通部31・51は、液体との接触部の少なくとも一部に、液体に対して界面活性を有する界面活性剤が付着されていても良い。尚、界面活性剤は、絶縁シート4に用いるものと同一のものを用いることができる。この場合には、界面活性剤により液体が貫通部31・51を介して絶縁シート4に到達し易くなるため、僅かな液体であっても絶縁シート4を絶縁状態から導電状態に変化させることが可能になる。また、感知対象の液体の種類に応じて界面活性剤の種類を使い分けることによって、例えば、水、油など感知対象を選択可能な液体感知シート1とすることができる。なお、油の場合は絶縁性であるので、貫通部31・51、絶縁シートにイオン化する溶解部材を付着させておく必要がある。界面活性剤は、導電性シート3・5と絶縁シート4とに付着されていても良いし、何れか一方に付着されていても良い。
【0059】
(接着剤7)
上記のように構成された絶縁シート4と導電性シート3・5とは、接合面全体において分散配置された接着剤7により接合されている。ここで、『接合面全体において分散配置』は、複数の分断された線状、連続した線状、複数の点状を含む概念である。接着剤7は、分散されていていることが好ましい。また、接着剤7は、貫通部31・51を避けて配置されていても良いし、一部が重複して配置されていても良い。
【0060】
接着剤7の種類を詳細に説明すると、無機系接着剤として水ガラスが例示される。天然系接着剤としては、カゼイン接着剤、天然ゴム系、天然ゴムラテックス、デンプン系、膠、及びフィブリンが例示される。また、合成系接着剤としては、溶剤系、水溶系、及びHM系が例示される。
【0061】
具体的には、溶剤系の合成系接着剤としては、アクリル樹脂系、アクリル樹脂系粘着、α−オレフィン系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、シリコーン系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム溶液系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、ニトロセルロース接着剤、変成シリコーン系接着剤、ポリイミド系接着剤、ポリ酢酸ビニル樹脂溶液系接着剤、ポリスチレン樹脂溶剤系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン樹脂系接着剤、ポリビニルブチラール樹脂系接着剤、ポリベンズイミダソール接着剤、ポリメタクリレート樹脂溶液系接着剤が例示される。
【0062】
水溶系の合成系接着剤としては、エーテル系セルロ−ス、アクリル樹脂エマルジョン接着剤、ウレタン樹脂エマルジョン接着剤、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂エマルジョン接着剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、水性高分子−イソシアネート系接着剤、スチレン−ブタジエンゴム系ラテックス接着剤、フェノール樹脂系接着剤、変成シリコーン系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、レゾルシノール系接着剤が例示される。
【0063】
HM系の合成系接着剤としては、エチレン−酢酸ビニル樹脂ホットメルト接着剤、反応性ホットメルト接着剤、ポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤、ポリオレフィン樹脂ホットメルト接着剤が例示される。
【0064】
上記のように例示した接着剤の中ではHM(ホットメルト)系が好ましい。この理由は他の接着剤に比べて溶剤や水などが含まれておらず、硬化した際の量と硬化前の量とが変わらないので、接着剤の量を少なくできるため、パターン通りに塗布できるからである。HM系のエチレン−酢酸ビニル樹脂ホットメルト接着剤やポリアミド樹脂ホットメルト接着剤、ポリウレタン樹脂ホットメルト接着剤などのパターンコートが好ましい。
【0065】
また、接着剤7は、導電性接着剤を用いることができる。接着剤7に導電性接着剤を用いた場合には、接着剤7自体に導電性を持たせることができるため、液体感知シート1の感知性能を向上させることができる。導電性接着剤は、等方導電性接着剤及び異方導電性接着剤の何れを用いても良い。
【0066】
(保護シート2・6)
導電性シート3・5における絶縁シート4とは反対側の面には、保護シート2・6がそれぞれ配置されている。これらの保護シート2・6は、導電性シート3・5が直接外部に露出しないようにカバーすることによって、液体感知シート1を衝撃や擦れによる外力からの保護および液体感知シートの強度アップや絶縁機能を持たしている。保護シート2・6は、導電性シート3・5の貫通部31・51に重複する通過孔21・61を有している。通過孔21・61は、貫通部31・51に重複する形状やサイズであれば良い。また、通過孔21・61には、上述の界面活性剤や、液体に溶解してイオン化する溶解部材が付着されていても良い。
【0067】
保護シート2・6は、紙や不織布で形成されていても良いし、エポキシ系、ポリエステル系、アクリル系、フェノール系、及びウレタン系などの樹脂、またはこれらの混合物により形成されていても良い。尚、保護シート2・6の厚みは5μm〜200μmであるが、特に限定される必要はなく適宜設定可能である。また、保護シート2・6がPETフィルムで形成されていた場合には、PETフィルムの表面に親水性処理がなされていることが望ましい。親水性処理は、親水性樹脂コートやコロナ処理、プラズマ処理などである。
【0068】
保護シート2・6と導電性シート3・5とは、接着剤8により接着されている。接着剤8は、上述の接着剤7と同一の材質であっても良いし、異なる材質であっても良い。また、接着剤8は、分散配置されていても良いし、保護シート2・6と導電性シート3・5との接合面全部に配置されていても良い。尚、保護シート2・6に導電性ペーストを塗布することにより導電性シート3・5を形成した場合には、接着剤8を省略することができる。
【0069】
(液体感知シート1の製造方法)
上記の構成において、液体感知シート1の製造方法を説明する。尚、製造方法の説明中の数値は例示であり、適宜変更可能である。先ず、12μmのPET(Polyethylene terephthalate)フィルムや紙、不織布が絶縁シート4として準備される。尚、PETフィルムの場合には、透液構造を有するように、複数の孔やスリットが均等に分散するように加工される。
【0070】
また、6μmの銅箔や9μmのアルミニウム箔が導電性シート3・5として準備されると共に、12μmのPETフィルムや紙、不織布が保護シート2・6として準備される。そして、導電性シート3・5上に接着剤8を介して保護シート2・6が接合される。この後、一体化された導電性シート3・5及び保護シート2・6に対して穴明け加工やスリット加工が行われることによって、貫通部31・51及び通過孔21・61が形成される。
【0071】
次に、穴明け加工やスリット加工された保護シート2・6付きの導電性シート3・5の面に、接着剤7が均等に分散して塗布される。接着剤7の塗布された面が上述の絶縁シート4に当接するように、保護シート2・6付きの導電性シート3・5が絶縁シート4に積層される。尚、絶縁シート4と導電性シート3・5との積層は、絶縁シート4の両面に対して同時のタイミングで行われても良いし、異なるタイミングで行われても良い。また、接着剤7は、絶縁シート4に塗布されてもよい。この後、保護シート2・6と導電性シート3・5と絶縁シート4との積層部材が加熱され、接着剤7が硬化されることによって、
図1の液体感知シート1が製造される。
【0072】
上記の製造方法は、保護シート2・6、導電性シート3・5、及び絶縁シート4を所定寸法に分割することによりバッチ単位で行われても良いし、長尺の帯状物とすることにより連続的に行われても良い。また、上記の製造方法は、薄い液体感知シート1の製造が可能であり、液体感知シート1のどの位置をカットしてもセンサーとして使用できる、即ち、高収率で製造できるという利点がある。
【0073】
(液体感知シート1の適用例)
上記のようにして製造された液体感知シート1は、漏液の感知対象となる機器や箇所に巻回や載置されることで設置される。この際、設置場所の形状やサイズに最適となるように鋏、カッタ、抜型等で切断される。最適な形状やサイズにされると、導電性シート3・5が電極端子として電流計等の計測装置に接続される。即ち、液体感知シート1が漏液センサーとして使用される。
【0074】
感知対象において漏液が起こると、液体が液体感知シート1の表面に付着する。液体は、通過孔21・61及び貫通部31・51を通過して絶縁シート4の一方面に到達し、絶縁シート4の透液構造により絶縁シート4内部に浸透する。そして、絶縁シート4の他方面に液体が到達すると、絶縁シート4が導電性を発揮し、導電性シート3・5間が絶縁状態から導電状態に切り替わる。この結果、計測装置が電気抵抗の変化を検出することによって、漏液の発生が検出されることになる。
【0075】
(液体感知シート1の変形例)
本実施形態において、接着剤7を用いて導電性シート3・5と絶縁シート4とを接合する場合について説明したが、これに限定されるものではない。具体的に説明すると、
図7に示すように、液体感知シート101は、液体により導電性を発揮する透液構造の絶縁シート4と、絶縁シート4の両面に接合された導電性接着剤からなる導電性シート3・5とを備えており、導電性シート3・5の少なくとも一方が、液体を通過させる貫通部31・51を有した構成にされていても良い。
【0076】
上記の構成によれば、導電性接着剤からなる導電性シート3・5と絶縁シート4とを面全体で接合することができるため、所望のサイズや形状に切り取っても、同一の感知性能及び接合強度を有した液体感知シート101として用いることができる。即ち、従来のようにシートの周縁部を接着剤で接合した構成の場合には、サイズや形状が限定されるが、上記の構成によれば、サイズや形状を任意に変更できるため、適用対象の自由度が高い液体感知シート101とすることができる。さらに、導電性シート3・5自体で絶縁シート4に接着することができるため、
図1の接着剤7を用いた接着が不要になることから簡単な構成の液体感知シート101を容易に得ることができる。
【0077】
ここで、導電性シート3・5の導電性接着剤としては、等方導電性接着剤が好ましいが、異方導電性接着剤でもよい。等方導電性接着剤は、導電性シート3・5の厚み方向および幅方向、長手方向からなる三次元の全方向に電気的な導電状態が確保される。導電性接着剤は、接着剤に導電性フィラーが添加されて形成される。難燃性が要求される場合は更に難燃剤を添加する。
【0078】
液体感知シート1の導電性シート3・5に導電性接着剤を適用する場合、導電性シート3・5の厚みの下限は、5μmであり、10μmが好ましい。また、厚みの上限は、100μmであり、50μmが好ましい。
【0079】
導電性接着剤に含まれる接着剤は、接着性樹脂として、ポリスチレン系、酢酸ビニル系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、ゴム系、アクリル系などの熱可塑性樹脂や、フェノール系、エポキシ系、ウレタン系、メラミン系、アルキッド系などの熱硬化性樹脂で構成されている。尚、接着剤は、上記樹脂の単体でも混合体でもよい。また、接着剤は、粘着性付与剤をさらに含んでいてもよい。粘着性付与剤としては、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂などのタッキファイヤーが挙げられる。
【0080】
導電性接着剤に添加される導電性フィラーは、金属材料により一部または全部が形成されている。例えば、導電性フィラーは、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コート銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、アトマイズ法、カルボニル法などにより作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。さらに、導電性接着剤には、1以上の種類の導電性フィラーが混合されて添加されてもよい。尚、導電性フィラーは、AgコートCu粉、またはAgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の安定した導電性粒子を得ることができるからである。
【0081】
導電性フィラーは、接着性樹脂に対して、10wt%〜400wt%の範囲で添加される。また、導電性フィラーの平均粒径は、2μm〜50μmの範囲が好ましいが、導電性シート3・5の厚みによって最適な値を選択すればよい。金属フィラーの形状は、球状、針状、繊維状、フレーク状、樹脂状のいずれであってもよい。
【0082】
難燃剤としては、環境上の問題からノンハロゲン系難燃剤が好ましく、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン等の窒素系難燃剤や水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物、又は、燐酸エステル、赤リン等のリン系難燃剤等が挙げられるが、耐熱性が要求される場合には、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0083】
以上の詳細な説明では、本発明をより容易に理解できるように、特徴的部分を中心に説明したが、本発明は、以上の詳細な説明に記載する実施形態に限定されず、その他の実施形態にも適用することができ、その適用範囲は可能な限り広く解釈されるべきである。
【0084】
また、本明細書において用いた用語及び語法は、本発明を的確に説明するために用いたものであり、本発明の解釈を制限するために用いたものではない。また、当業者であれば、本明細書に記載された発明の概念から、本発明の概念に含まれる他の構成、システム、方法等を推考することは容易であると思われる。従って、請求の範囲の記載は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で均等な構成を含むものであるとみなされるべきである。また、本発明の目的及び本発明の効果を充分に理解するために、すでに開示されている文献等を充分に参酌することが望まれる。