(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、放熱用部材には、用途等に応じて、種々の物性に優れることが求められるが、従来の材料ではそのような要望に十分に応えられていないのが実情である。
【0006】
まず、上記したシリコーン樹脂に充填材を配合した樹脂組成物の場合、シリコーン樹脂に由来する低分子量のシロキサンが発生し、このシロキサンが半導体素子等の発熱体に付着して、接点不良の原因となり得る。また、シリコーン樹脂は架橋ゴムであるため、十分な熱可塑性が得られず、リサイクルが困難である。
【0007】
そして、電気・電子分野等で用いられる各種機器用部品は、それ自体が発熱体であるため、安全性の観点から、それらに使用される放熱用部材には高い難燃性が求められる。
【0008】
一方、一部の用途では低硬度の放熱用部材であることが求められる。例えば、各種電気・電子部品等に用いられる各種素子等の発熱体に放熱用部材を密着させるためには、ある程度の荷重を加える必要がある。しかし、素子の中には荷重により変形又は破損しやすいものがある。そこで、素子への密着時の応力を低減するため、低硬度の放熱用部材が必要となる。また、このような素子が装着されている基板では、素子ごとに形状や大きさが異なる場合が多いため、各素子の寸法の違いを埋めるためにも、低硬度の放熱用部材が必要となる。
【0009】
さらに、近年、大型のリチウムイオン電池(LIB)のセルを組み合わせたモジュールが開発されているが、このようなモジュールでは、高容量化・省スペース化が進んでおり、個々のセルの放熱設計が重要になっている。例えば、LIBモジュールに放熱ヒートシンクを組み込んだ製品等も開発されているが、各セルの寸法公差を吸収し、すべてのセルとヒートシンクの間のスペースを埋めるために、低硬度である肉厚な熱伝導性シートが必要となる。
【0010】
しかし、上述した低硬度についても、未だ改良の余地がある。例えば、上記した熱可塑性エラストマーを用いた熱伝導性樹脂組成物や特許文献1の技術等では、低硬度を達成するために、熱伝導性充填材の含有量を減らすことや、プロセスオイル等の軟化剤の配合量を増やすこと等が検討されている。しかし、熱伝導性充填材の含有量を減らすと、熱伝導率が大幅に低下してしまう。また、プロセスオイル等の軟化剤の含有量を増やすことによる効果は限定的である。さらに、プロセスオイル等の軟化剤の含有量を増やすことは、難燃性の低下やシート表面へのオイル成分等の滲み出し(ブリードアウト)が発生しやすくなるため、軟化剤の含有量は制限されてしまう。
【0011】
このように、上記種々の用途に対応するため、放熱用部材等として有用な、熱伝導性と難燃性に優れ、低硬度であり、かつ、ブリードアウトしない樹脂組成物が求められているが、未だ十分ではない。本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであって、熱伝導性と難燃性に優れ、低硬度であり、かつ、ブリードアウトしない樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、共役ジエン単位とビニル芳香族化合物単位を含む特定の共重合体及び/又はその水素添加物と、ゴム用軟化剤と、熱伝導性充填材と、を特定の比率で含有する樹脂組成物とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
(A)共役ジエン単位とビニル芳香族化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水素添加物2〜20質量%、
(B)ゴム用軟化剤2〜20質量%、及び、
(C)熱伝導性充填材70〜95質量%を含み、 前記(A)成分中における前記ビニル芳香族化合物単位の含有量が、20質量%未満であり、
前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比((A)/(B))が、35/65〜60/40である、樹脂組成物。
〔2〕
前記(B)成分に対する前記(A)成分の前記質量比((A)/(B))が、35/65〜45/55である、〔1〕に記載の樹脂組成物。
〔3〕
(D)可塑剤0.01〜2質量%を更に含む、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物。
〔4〕
前記(C)成分が、水酸化アルミニウム又はアルミナである、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔5〕
前記(C)成分中のNa
2O濃度が、0.2質量%以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔6〕
前記(C)成分の平均粒子径が10〜80μmである、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔7〕
前記(C)成分として、(C−I)粒子径が20μm以上である第一の熱伝導性充填材と、(C−II)粒子径が20μm未満である第二の熱伝導性充填材とを含有し、
前記(C−II)成分に対する前記(C−I)成分の質量比((C−I)/(C−II))が、100/1〜100/80である、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔8〕
JIS K6253−3に準拠してデュロメータタイプAを用いて測定された硬度が、60未満である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含み、かつ、厚さが0.5〜10mmである、シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱伝導性と難燃性に優れ、低硬度であり、かつ、ブリードアウトしない樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0016】
本実施形態の樹脂組成物は、
(A)共役ジエン単位とビニル芳香族化合物単位とを含み共重合体及び/又はその水素添加物2〜20質量%、
(B)ゴム用軟化剤2〜20質量%、及び
(C)熱伝導性充填材70〜95質量%を含み、
前記(A)成分中における前記ビニル芳香族化合物単位の含有量が、20質量%未満であり、
前記(B)成分に対する前記(A)成分の質量比((A)/(B))が、35/65〜60/40である、樹脂組成物である。本実施形態の樹脂組成物は、上記(A)成分を用い、これに対して(B)成分を特定の割合で配合することにより、(C)成分である熱伝導性充填材の含有量を低下させることなく、低硬度を達成することができる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物では、(C)成分を高濃度で含有することができるため、熱伝導性と難燃性を高いレベルで両立させることができる。また、(A)成分を用いることで、(B)成分等のブリードアウトも抑制することができる。
【0017】
(A)成分は、共役ジエン単位とビニル芳香族化合物単位とを含む共重合体及び/又はその水素添加物である。そして、(A)成分中におけるビニル芳香族化合物単位の含有量は20質量%未満である。(A)成分としては、このような構成を有するものであれば、特に限定されず、共役ジエンとビニル芳香族化合物とを共重合して得られる共重合体等を使用することができる。
【0018】
(A)成分としては、特に、スチレン系熱可塑性エラストマー及びその水素添加物が好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマー及びその水素添加物としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエンランダム共重合体及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは、上記したスチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加物であり、更に好ましくは、水添スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体である。
【0019】
共役ジエンとしては、一対の共役二重結合(共役するように結合した2つの二重結合)を有するジオレフィンが挙げられる。共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、汎用性等の観点から、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)が好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ビニル芳香族化合物としては、ビニル基と芳香環とを有する化合物が挙げられる。ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(A)成分中の、ビニル芳香族化合物単位の含有量は、20質量%未満であり、好ましくは15質量%以下である。(A)成分である共重合体(或いはその水素添加物)では、通常、ビニル芳香族化合物単位の重合体ブロックはハードセグメントとして、共役ジエン単位の重合体ブロックはソフトセグメントとして、夫々存在する。(A)成分である共重合体は、そのガラス転移温度以下ではハードセグメントが物理的架橋点として作用することでゴム的性質を示す。一方、ソフトセグメントはフィラーの取り込みに重要な役割を果たし、共重合体中におけるソフトセグメントの占有率が高い、すなわちビニル芳香族化合物単位の含有量の少ない場合では、フィラー含有量の増加に対して共重合体の硬度が上昇しにくいことが想定される。よって、上記の範囲であれば、熱伝導性充填材の含有量が高くても低硬度の熱伝導組成物を得ることができる(但し、本実施形態の作用効果はこれらに限定されない。)。なお、ビニル芳香族化合物単位の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0022】
(A)成分の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは5×10
4〜100×10
4であり、より好ましくは8×10
4〜80×10
4であり、更に好ましくは9×10
4〜30×10
4である。重量平均分子量を5×10
4以上とすることで、靭性が一層向上し、より一層低圧縮永久歪となる。また、重量平均分子量を100×10
4以下とすることで、柔軟性が一層向上する。
【0023】
なお、(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的には、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
【0024】
(A)成分として水添共重合体を含む場合、水添前共重合体中の共役ジエンに基づく二重結合の水素添加率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは75%以上であり、更に好ましくは85%以上である。水素添加率を上記範囲とすることにより、熱劣化による柔軟性、強度及び伸び等の低下を一層抑制できるため、一層良好な耐熱性を示す。
【0025】
共役ジエンに基づく二重結合の水素添加率とは、水添前共重合体に含まれていた共役ジエンの二重結合に対する、水添共重合体の水素添加された二重結合の割合をいう。なお、水添共重合体の水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定することができる。
【0026】
(B)成分は、ゴム用軟化剤である。(B)成分としては、一般にゴムの軟化、増容、加工性向上に用いられる、鉱物油系ゴム用軟化剤や合成系ゴム用軟化剤等が挙げられる。
【0027】
鉱物油系ゴム用軟化剤としては、例えば、プロセスオイル、エクステンダーオイルが挙げられる。これらの具体例としては、芳香環を有する化合物、ナフテン環を有する化合物及びパラフィン鎖を有する化合物からなる群より選ばれるいずれか2種を含む混合物が挙げられる。
【0028】
合成系ゴム用軟化剤としては、例えば、シリコーン系オイル、フッ素系オイル等が挙げられる。(B)成分の好適な具体例としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。これらの中でも、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルが好ましく、パラフィン系オイルがより好ましい。パラフィン系オイルの中でも、芳香族成分の少ないオイルが更に好ましい。
【0029】
パラフィン系オイルの40℃における動粘度は、好ましくは100mm
2/sec以上であり、より好ましくは100〜10000mm
2/secであり、更に好ましくは200〜5000mm
2/secである。動粘度は、一定容量のオイルが,一定温度条件下で粘度計(例えば、キャノン−フェンスケ型粘度計)の毛細管を自然流下するに要した時間(sec:絶対粘度)を測定し、その絶対粘度を試料密度で除することによって、算出することができる。
【0030】
パラフィン系オイルとしては、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、日本油脂社製「NAソルベント」、出光興産社製「ダイアナ プロセスオイルPW−90」、「ダイアナ プロセスオイルPW−380」、出光石油化学社製「IP−ソルベント2835」、三光化学工業社製「ネオチオゾール」等が挙げられる。
【0031】
(B)成分の引火点は、好ましくは170〜300℃である。引火点は、例えばクリーブランド開放法引火点試験器を用い、その試料カップに規定量の試料を満たして昇温させ、規定の温度間隔で、試験炎を試料カップの上を通過させ、試料の蒸気に引火させ、その炎が液面上を伝播する際の試料の最低温度を測定することにより求められる。これにより、樹脂組成物の難燃性を向上させることができる。
【0032】
(B)成分の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000である。重量平均分子量は、GPCによって測定することができる。(B)成分の重量平均分子量を上記範囲にすることにより、低揮発性であり、かつ十分な軟化効果を得ることができる。
【0033】
(C)成分は、熱伝導性充填材である。熱伝導性充填材とは、高熱伝導率を有する無機又は金属を主成分とする、粒子状、粉末状物質のことであり、組成物の内部に熱の通り道となる熱伝導路を形成することにより、熱伝導率を高めるために配合される物質である。(C)成分の具体例としては、金属窒化物、金属酸化物、金属水酸化物等の金属化合物が挙げられる。本実施形態の効果が得られる範囲内であれば、金属化合物は、それらの原料等に由来する不純物成分を微量含んでいてもよい。
【0034】
金属窒化物としては、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化スズが挙げられる。
【0035】
(B)成分としては、好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナであり、より好ましくは水酸化アルミニウム、アルミナである。これらの中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を用いることで、熱伝導性だけでなく、難燃性も一層向上させることができる。また、アルミナを用いることで、フィラー含有量が少ない場合であっても、効率よく低硬度化を達成できる。アルミナは、熱伝導性が高く、その含有量が比較的少量であっても、樹脂組成物として高い熱伝導性を付与できる傾向にある(但し、本実施形態の作用効果はこれらに限定されない)。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(C)成分は、適宜、前処理を行ってもよい。例えば、上記した金属化合物を、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸等によって前処理して、表面改質を施したものであってもよい。
【0037】
(C)成分は、熱伝導性等の観点から、その平均粒子径は好ましくは10μm〜80μmであり、より好ましくは20μm〜70μmである。また、(C)成分は、粒子形状であることが好ましい。ここでいう、粒子形状とは、例えば、球形、球が凝集した形状、球が偏平したような形状、不定形破砕形状、不定形破砕物を造粒した形状、孔を有する発泡した形状等のことをいう。特に、粒子形状であり、かつ平均粒子径を上記範囲とすることにより、熱伝導性を効果的に発現させることができる。
【0038】
(C)成分は、(C−I)粒子径が20μm以上である第一の熱伝導性充填材と、(C−II)粒子径が20μm未満である第二の熱伝導性充填材とを含有することが好ましい。これにより、熱伝導性及び難燃性を一層バランスよく向上できる。(C−II)成分に対する(C−I)成分の質量比は、好ましくは100/1〜100/80である。
【0039】
さらに(C)成分の粒度分布が20μm以上と20μm未満の領域にそれぞれ1つ以上の極大値を有することが好ましい。これにより、熱伝導性及び難燃性を一層バランスよく向上できる。
【0040】
粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径である。粒子径は、通常、水又はエタノールに熱伝導性充填材を分散させて測定する。このとき、分散できない場合は、適宜、界面活性剤を使用してもよいし、ホモジナイザーや超音波によって分散させてもよい。分散させる熱伝導性充填材の濃度は通常1%以下である。
【0041】
さらに、(C)成分は、(C−I)成分は、粒子径が25μm以上100μm以下である第一の熱伝導性充填材と、(C−II)成分は、粒子径が5μm以上15μm以下である第二の熱伝導性充填材とを含有することが、熱伝導性の観点からより好ましい。この際、(C)成分の総量に対する、粒子径が25μm以上100μm以下である第一の熱伝導性充填材と、粒子径が5μm以上15μm以下である第二の熱伝導性充填材の総量の割合は、好ましくは30〜100質量%であり、より好ましくは40〜100質量%であり、更に好ましくは60〜100質量%である。
【0042】
さらに(C)成分は、粒子径が30μm以上100μm以下である熱伝導性充填材(C−I)と粒子径が5μm以上20μm以下である熱伝導性充填材(C−II)とからなることが、熱伝導性の観点からより好ましい。ここで(C−II)成分に対する(C−I)成分の質量比((C−I)/(C−II))は、好ましくは100/1〜100/80であり、より好ましくは100/10〜100/80であり、更に好ましくは100/20〜100/80である。(C)成分の総量に対する、粒子径が30μm以上100μm以下である熱伝導性充填材(C−I)と粒子径が5μm以上20μm以下である熱伝導性充填材(C−II)との総量の割合は、好ましくは30〜100質量%であり、より好ましくは40〜100質量%であり、更に好ましくは60〜100質量%である。
【0043】
粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した体積基準の粒子径(μm)に基づき、測定対象サンプル中の粒子を一定の粒子径の範囲ごとに分割し、それぞれの粒子径区間に存在する粒子量を質量%で示したものである。粒度分布の極大値とは、ある粒子径の範囲に存在する粒子量がその範囲に隣接するいずれの範囲よりも大きい範囲のことをいう。粒子径は通常、水又はエタノールに熱伝導性充填材を分散させて測定する。この時、分散できない場合は界面活性剤を使用してもよく、また適宜、ホモジナイザーや超音波によって分散させてもよい。分散させる熱伝導性充填材の濃度は通常1%以下である。具体的には、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0044】
(C)成分中のNa
2O濃度は、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1%質量以下であり、更に好ましくは0.05質量%以下である。なお、Na
2O含有量は、蛍光X線分光法により求めることができる。(C)成分中のNa
2O濃度を上記範囲とすることにより、樹脂組成物の絶縁破壊強度が著しく向上するとともに、難燃性が一層向上する傾向にある。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物は、(D)可塑剤を更に含有することが好ましい。
【0046】
可塑剤としては、樹脂組成物に可塑性を付与できるものであれば、特に限定されない。(D)成分としては、例えば、フタル酸エステル、脂肪族ジカルボン酸エステル、ポリエステル系高分子可塑剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸の金属塩等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは高級脂肪酸である。高級脂肪酸の中でも、より好ましくはミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸であり、更に好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸である。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、(E)フッ素樹脂及び/又はフッ素樹脂変性物を更に含有してもよい。これにより樹脂組成物中にフッ素樹脂及び/又はフッ素樹脂変性物が繊維状(フィブリル)に効率良く分散することにより、フィブリルによる物理的なネットワークが形成され、樹脂組成物の溶融張力を向上できる。その結果、樹脂の加工性の向上し、かつアンチドリッピング性(例えば、燃焼時の火炎滴の滴下抑制。これにより延焼抑制に効果がある。)が付与される(但し、本実施形態の作用効果はこれに限定されない。)。
【0048】
(E)成分としては、フィブリル形成能の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・プロピレン共重合体等のテトラフルオロエチレンポリマーが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0049】
(E)成分の形態としては特に限定されず、目的や用途等を考慮して、適宜好適なものを採用できる。例えば、ファインパウダー状のフッ素樹脂;フッ素樹脂の水性ディスパージョン;アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)やポリメチルメタクリレート(PMMA)等の他の樹脂との粉体状混合物(フッ素樹脂のアクリル変性物)等の形態が挙げられる。
【0050】
フッ素樹脂の水性ディスパージョンとしては、市販品を使用することもできる。好適例としては、三井デュポンフロロケミカル社製「テフロン(登録商標)30J」、ダイキン工業社製「ポリフロンD−1」、「ポリフロンD−2」、「ポリフロンD−2C」、「ポリフロンD−2CE」等が挙げられる。
【0051】
上述したように、(E)成分として、上記したフッ素樹脂とASやPMMA等の他の樹脂との粉体状混合物(アクリル変性物)(以下、「フッ素樹脂変性物」という場合がある。)を好適に使用することができるが、フッ素樹脂変性物としては、特開平09−095583号公報、特開平11−049912号公報、特開2000−143966号公報、特開2000−297189号公報等に記載のものを採用することもできる。なお、上記したフッ素樹脂変性物の態様としては、変性剤を用いて樹脂を変性させたものだけでなく、上記したように他の樹脂との混合物も包含され、限定されない。
【0052】
(E)フッ素樹脂変性物としては、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)のアクリル変性物が好ましい。アクリル変性物は、ポリテトラフルオロエチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを主成分として含んでなるものである。上記アクリル変性物は、例えば平均粒子径0.05〜1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子を分散させた分散液中で、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを70質量%以上含む単量体を重合することにより(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを形成したのち、分散液中の固形分を凝固もしくは噴霧乾燥する方法により得られる。また例えば、平均粒子径0.05〜1.0μmのポリテトラフルオロエチレン粒子を分散させた分散液と、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる構成単位を70質量%以上含む(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー粒子を分散させた分散液とを混合したのち、混合分散液中の固形分を凝固もしくは噴霧乾燥する方法により得られる。フッ素樹脂変性物としては、市販品を使用することもできる。好適例としては、三菱レイヨン社製「メタブレン(商標) A−3800」及び「メタブレン A−3750」等が挙げられる。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物における(A)成分の含有量は、2〜20質量%である。好ましくは2〜15質量%であり、より好ましくは4〜10質量%である。(A)成分の含有量が20質量%を超えると、熱伝導性及び難燃性が不十分となる。また、(A)成分の含有量が2質量%未満であると、成形性が不十分となる。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物における(B)成分の含有量は、2〜20質量%である。好ましくは4〜20質量%であり、より好ましくは6〜14質量%である。(B)成分の含有量が20質量%を超えると、(B)成分のブリードアウトが生じやすくなり、かつ難燃性も不十分となる。また、(B)成分の含有量が2質量%未満であると、十分な低硬度にならない。
【0055】
(B)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(B))は、35/65〜60/40である。好ましくは35/65〜50/50であり、より好ましくは35/65〜45/55である。(B)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(B))が35/65よりも小さくなると((A)成分の割合が少なくなる)と、(B)成分のブリードアウトが生じやすくなり、難燃性も低下しやすくなる。また、(B)成分に対する(A)成分の質量比((A)/(B))が60/40よりも大きくなる((A)成分の割合が多くなる)と、十分な低硬度にならない。
【0056】
本実施形態の樹脂組成物における(C)成分の含有量は、70〜95質量%である。好ましくは75〜90質量%であり、より好ましくは75〜85質量%である。(C)成分の含有量が70質量%未満であると、熱伝導性及び難燃性が不十分となる。また、(C)成分の含有量が95質量%を超えると、十分な低硬度にならない。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物における(D)成分の含有量は、好ましくは0.01〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1.5質量%であり、更に好ましくは0.3〜1質量%である。(D)成分の含有量を上記範囲とすることにより、得られる樹脂組成物が十分に低硬度にでき、シート成形性(粘性及びロール付着性)を大幅に改良できる。
【0058】
本実施形態の樹脂組成物における(E)成分の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%であり、更に好ましくは0.3〜1.5質量%である。(D)成分の含有量を上記範囲とすることにより、難燃性、機械的特性及びシート成形性(粘性及びロール付着性)を大幅に改良できる。
【0059】
本実施形態の樹脂組成物について、JIS K6253−3に準拠してデュロメータタイプAを用いて測定された硬度は、好ましくは60未満であり、より好ましくは40未満であり、更に好ましくは30未満である。樹脂組成物の上記硬度を上記範囲とすることにより、当該樹脂組成物から得られるシートを熱伝導シートとして使用する場合に、発熱素子等に対する応力を効果的に低減できるとともに、部品の寸法公差を吸収し、放熱機能を効率よく発現させることができる。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で必要に応じて、粘着性付与剤を更に含有してもよい。粘着性付与剤は、例えば、本実施形態の樹脂組成物をシート状にして使用する場合、電子部品、半導体装置あるいは表示装置と放熱装置を固定するために添加する。粘着性付与剤としては、特に限定されず、従来公知のものを使用できる。具体例としては、ロジン系樹脂、変性ロジン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの粘着性付与材は組成物中全体に含まれていてもよいし、シートの表面層に存在してもよい。
【0061】
本実施形態の樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、架橋剤、上記以外の熱可塑性樹脂及び/又はゴム等といった他の添加剤を更に含有してもよい。
【0062】
酸化防止剤としては、例えば、1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、オクチル化ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0063】
架橋剤としては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0064】
上記以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン等が挙げられる。また、ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0065】
本実施形態の樹脂組成物は、ガラス繊維クロス、有機繊維クロス等の織物と複合化することも好ましい実施態様の1つである。特に、ガラス繊維クロスとの複合化は、本実施形態の樹脂組成物をシートとした場合、薄肉での強度、寸法安定性、難燃性を一層向上できるだけでなく、薄肉のシートとしての提供も可能になるため、シートの熱抵抗値を低減させることができる。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物は、上記した各成分を混練することで製造することができる。混練方法としては、特に限定されず、例えばブレード型混練機(ニーダ、バンバリーミキサ等)、ロール型混練機(2本ロール、3本ロール、ロールミル、テーパーロール等)、スクリュ型混練機(エクストルーダ等)等を使用することができる。これらの中では、加圧ニーダ、バンバリーミキサ、エクストルーダ等を使用することが好ましい。
【0067】
本実施形態の樹脂組成物は、用途に応じてシート状に加工することができる。すなわち、本実施形態の樹脂組成物を含むシートとすることができる。シートの厚さは特に限定されないが、通常、厚さ0.5〜10mmである。本実施形態の樹脂組成物を含むシートの厚さは、好ましくは0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜4mmである。シートの厚さを0.5mm以上とすることで、基板上の各発熱素子の寸法の違いを効率よく埋め、効率的な放熱が可能になる。また、シートの厚さを10mm以下とすることで、熱抵抗値を低く抑えられ、十分な放熱性を発揮することが可能になる。
【0068】
本実施形態の樹脂組成物のシートは単層であっても、多層であってもよい。多層である場合、各層は同一組成であっても、異なっていてもよい。多層シートの全体の厚さは上記の厚さの範囲内であることが好ましい。多層シートの製造方法は多層押出機を用い成形してもよいし、単層シートを作製したのちに積層してもよい。単層シートを積層する際は粘着層を用いて貼り付けてもよいし、粘着層を用いずに重ね合わせたのちに、加熱、加圧等を行うことにより、密着させてもよい。
【0069】
本実施形態の樹脂組成物をシートとする場合、その一方あるいは両方の表面に粘着層を設けてもよい。粘着層の形成は、貼付又は塗布(コーティング)のいずれの方法によってもよい。粘着層の成分は特に限定されないが、例えば、アクリル系粘着剤を含む粘着層とすることができる。さらには、粘着層には、難燃剤等のその他の成分を更に含有してもよい。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物をシート状に加工する方法としては、特に限定されず、例えば、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形等が挙げられる。これらの中でも、連続的に成形でき、かつ巻き取りが容易であるという観点から、押出成形やカレンダー成形が好ましい。
【0071】
本実施形態のシートは、離型フィルム又は転写式粘着フィルムを挟んでロールにして巻き取ることが可能である。シートの大きさについては特に限定されず、用途に応じて、所望の大きさに加工できる。
【0072】
より好ましいシートの製造方法としては、エクストルーダにより各成分を混練しながらTダイに押し出しすることでシートを成形し、離型フィルム又は転写式粘着フィルムとともにシート引取装置によって巻き取る方法が挙げられる。押出条件としては、使用する原材料や成形するシートの幅によって異なるが、押出機の設定温度は80〜190℃、スクリュ回転数は5〜80rpm、L/D比(スクリュの直径(D)に対するスクリュの長さ(L)の比)は20以上であることが好ましい。
【0073】
また、樹脂組成物を溶媒に溶解・分散させ、フィルムや離型紙上に流延し、その後溶媒を揮散させてシートを得る方法や、ガラス繊維クロスや有機繊維クロスに含浸させて、その後溶媒を除去することによりシートを得ることも可能である。
【0074】
本実施形態の樹脂組成物及びシートは、各種電気・電子部品や半導体装置、表示装置、通信装置、動力装置等に使用することができる。具体的には、例えば、コンピュータのCPU、液晶バックライト、プラズマディスプレイパネル、LED素子、有機EL素子、二次電池あるいはその周辺機器、電動機の放熱器、ペルチェ素子、熱電変換素子、温度センサ、コンバータ、トランス、インバータ、(ハイ)パワートランジスタ等が挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
各成分は以下に記載のものを使用した。
【0077】
[原料]
<(A)共役ジエン単位とビニル芳香族化合物単位を含む共重合体及び/又はその水素添加物>
(A−1)(水添スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS))
「セプトン(商標) 2063」、クラレ社製(ビニル芳香族化合物単位の含有量:13質量%)
(A−2)(水添スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS))
「タフテック(商標) H1221」、旭化成ケミカルズ社製(ビニル芳香族化合物単位の含有量:12質量%)
(A−3)(水添スチレン−エチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEEPS))
「ハイブラー(商標) 7311」、クラレ社製(ビニル芳香族化合物単位の含有量:12質量%)
(A−4)(水添スチレン−ブタジエンランダム共重合体)
「S.O.E.(商標) L606」、旭化成ケミカルズ社製(ビニル芳香族化合物単位の含有量:52質量%、水添率99%)
なお、ビニル芳香族化合物単位の含有量は、NMRにて測定した。具体的には、核磁気共鳴装置(NMR、ECA−500:日本電子社製)を使用して、Y.Tanaka,et al.,Rubber Chemistry and Technology 54.685(1981)に記載の方法に準じて水添共重合体を用いて行った。試料は水添共重合体30mgを1gの重クロロホルムに溶解したものを用いた。
【0078】
<(B)ゴム用軟化剤>
(B−1)パラフィン系プロセスオイル
「ダイアナ プロセスオイル(商標) PW−380」、出光興産社製
【0079】
<(C)熱伝導性充填材>
(水酸化アルミニウム)
(C−1)「BW−53」、日本軽金属社製(平均粒子径50μm、粒度分布が極大値を示す粒径範囲62〜68μm、Na
2O含有量0.03質量%)
(C−2)「BW−103」、日本軽金属社製(平均粒子径10μm、粒度分布が極大値を示す粒径範囲13〜14μm、Na
2O含有量0.03質量%)
(アルミナ)
(C−3)「DAW−45」、電気化学工業社製(平均粒子径45μm)
【0080】
<(D)可塑剤>
(高級脂肪酸)
(D−1)ステアリン酸
「ステアリン酸300」 新日本理化社製
【0081】
<(E)アクリル変性PTFE>
(E−1)アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
「メタブレン(商標) A−3800」 三菱レイヨン社製
【0082】
[シートの製造方法]
<混練>
3L小容量加圧型ニーダ(モリヤマ社製「DS3−10MWB−E」)を用いて、140℃で14分間、原料を混練した。その後、プランジャー式ペレタイザ(モリヤマ社製「PR−3600」)を用いて造粒して、樹脂組成物ペレットを得た。
【0083】
<シート成形>
(1)上記<混練>で得た樹脂組成物ペレットを、180℃で加熱したプレス成形機(神藤金属工業所製「SFV−30」)にてプレスし、1mm厚のプレス成形シートを得た。
(2)上記<混練>で得た樹脂組成物ペレットを、110℃に設定された単軸押出機(東洋精機製作所社製、ラボプラストミル型式:50M、スクリュ型式:D2020)及び250mm幅Tダイ(東洋精機製作所社製)を用いて、そのTダイのリップ厚みを1.5mmに調整し、幅約180mm、1.0mm厚のTダイシート成形品を得た。同様にTダイのリップ厚みを2.0mmに調整し、幅約160mm、1.5mm厚のTダイシート成形品を得た。
【0084】
[測定方法]
<粒度分布・粒子径・平均粒子径>
レーザー回折/散乱式粒子径粒度分布測定装置(「マイクロトラックMT3300EX−II」(日機装社製)を用いて、粒子径、粒度分布及び平均粒径を測定した。測定サンプルは、対象粒子を分散液(分散溶媒:水、分散剤:ヘキサメタリン酸ナトリウム(0.2重量%))に添加し、超音波分散(80W、5分)して調製した。溶媒屈折率は1.333、粒子屈折率は1.57とした。また平均粒子径は、上記レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
なお、粒子径20μm以上である成分及び20μm未満である成分の割合は、上記粒度分布における粒子径20μm以上及び20μm未満の部分の積算値を算出することにより求められる。
【0085】
<Na
2O含有量>
蛍光X線分光法により測定した。
【0086】
<熱伝導率>
ASTM(American Society for Testing and Materials) D5470に準拠して、熱伝導率を定常法により測定した。樹脂材料熱抵抗測定装置(日立製作所社製)を用いて、測定温度80℃とし、試験片の厚み1.0mmの条件で測定した。
【0087】
<絶縁破壊強度>
JIS C2110−1に準拠して、23℃、油中、短時間法にて絶縁破壊強度を測定した。試験電極は、Φ25円柱/Φ25円柱であり、試験片の厚みは1.0mmとした。
【0088】
<硬度>
JIS K6253−3に準拠し、デュロメータタイプA(JIS A硬度計、高分子計器社製)を用いて15秒後の測定値を記録した。試験片は6mmの厚みになるように複数枚重ねて測定した。
【0089】
<シートの外観>
上記<シート成形>で得たシートについて(B)成分(オイル成分)の滲み出しに関し、目視で観察して判定した。「シート作製後、23℃、50%RHの条件で48時間静置した時点で、オイルブリードが確認された場合」を「あり」と評価し、「シート作製後、23℃、50%RHの条件で48時間静置した時点でもオイルブリードが確認されなかった場合」を「なし」と評価した。
【0090】
<難燃性>
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)垂直燃焼試験に準拠して測定した。試験片は、長さ130mm、幅13mm、厚みは1.0mmとした。具体的には10秒接炎後、炎を放してから消炎までの燃焼時間を測定。消炎したら、再度10秒接炎し、炎を放してから消炎までの燃焼時間を測定。5本1組で評価(計10回燃焼時間を測定)。10回中の最大燃焼時間、10回の合計燃焼時間、及び燃焼時のドリップ有無を評価した。この結果を以下の基準に基づき、判定した。
・V−0:最大燃焼時間10秒以下、合計燃焼時間50秒以下、ドリップなし
・V−1:最大燃焼時間30秒以下、合計燃焼時間250秒以下、ドリップなし
・V−2:最大燃焼時間30秒以下、合計燃焼時間250秒以下、ドリップあり
・NG:上記条件を満たさないもの
【0091】
[実施例1〜7、比較例1〜7]
実施例1〜7及び比較例1〜7について、表1及び表2に示す配合で樹脂組成物及びシートを作製し、硬度、熱伝導率、絶縁破壊強度、シート表面へのオイル成分(成分(B))の滲み出し、及びシートの難燃性を測定・評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1及び表2から明らかなように、実施例1〜7は、少なくとも熱伝導性に優れ、低硬度であり、ブリードアウトが抑制されたことが確認された。