特許第5722289号(P5722289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722289加熱シリンダの選択装着が可能な射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722289
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】加熱シリンダの選択装着が可能な射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/62 20060101AFI20150430BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   B29C45/62
   B29C45/76
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-189576(P2012-189576)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-46499(P2014-46499A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2013年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】小末 将吾
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−077223(JP,A)
【文献】 特開2000−108176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、
前記識別手段はボルト検出用センサからなり、該ボルト検出用センサは、前記本体に明けられている加熱シリンダ固定用のボルト孔の幾つかに設けられ、
前記加熱シリンダに明けられている加熱シリンダ固定用のボルト孔は、加熱シリンダの種類によって配置と個数が異なっており、前記加熱シリンダが前記本体に装着されたとき、前記ボルト検出用センサによって検出されるボルトの有無に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、
前記識別手段は複数個の接触検出センサからなり、該接触検出センサは前記本体の前記加熱シリンダが装着される取付面に設けられ、
前記加熱シリンダは、前記取付面に接触する部分の形状が、加熱シリンダの種類によって異なっており、前記接触検出センサによって検出される接触の有無に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、
前記加熱シリンダに巻かれている複数枚のヒータは、前記本体に設けられている電力供給部に所定のソケットを介して接続され、前記ソケットは加熱シリンダの種類によってその形状あるいは個数が異なっており、
前記識別手段は、前記電力供給部に設けられているセンサからなり、該センサによって検出される前記ソケットの形状あるいは個数に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機。
【請求項4】
内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、
前記加熱シリンダに巻かれている複数枚のヒータは、前記本体に設けられている電力供給部から電力が供給されており、
前記識別手段は、前記電力供給部に設けられている電流計からなり、該電流計によって測定される各ヒータの電流に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機。
【請求項5】
内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、
前記加熱シリンダに設けられている複数本の熱電対は、前記本体に設けられている温度測定部に接続されており、
前記識別手段は前記温度測定部からなり、前記測定部に接続されている熱電対の本数、種類、あるいは接続状態に基づいて、加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかの項に記載の射出成形機において、前記コントローラに設定されている複数の成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存している成形条件は、前記加熱シリンダが装着されて前記コントローラに内径あるいは断面積が設定されると、自動的に変換されるようになっていることを特徴とする射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内径の異なる加熱シリンダを適宜選択して装着することができる射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、概略射出装置と型盤装置とからなっている。射出装置は、従来周知のように、加熱シリンダと、この加熱シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュとから構成されている。一方、型盤装置も従来周知であり、固定側金型が取り付けられている固定盤と、可動側金型が取り付けられている可動盤と、可動側金型を固定側金型に対して型開閉する例えばトグル式型締装置とから構成されている。したがってスクリュを回転駆動すると共に、樹脂材料を加熱シリンダに所定量ずつ供給すると、樹脂材料はスクリュの回転による摩擦・剪断作用により生じる熱、加熱シリンダの外周部から加えられる熱等により溶融し、そして加熱シリンダの先端部の計量室へと送られ、スクリュが後退して所定量蓄えられる。このようにして計量された溶融樹脂を、スクリュを軸方向に駆動して型締めされた金型のキャビティに射出・充填し、そして冷却固化を待って可動金型を開くと、所定形状の成形品が得られる。
【0003】
ところで金型は成形する成形品毎に製作されており、キャビティの形状や容量、ランナの容量等は金型毎に異なっている。また樹脂の種類も成形品毎に異なっている。従って、所望の品質の成形品を得るには、射出圧力、射出速度、溶融樹脂温度、射出段数、各射出段数毎のスクリュ位置、等の射出条件を適切に調整する必要がある。このような調整、いわゆる成形条件出しをするには、射出成形機において繰り返し条件を変更して成形を繰り返す必要があり、労力を要する作業になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−108176号公報
【0005】
特許文献1には、従来の射出成形機における成形条件のデータと異なる種類のデータを設定して成形条件出しをする射出成形機が記載されている。すなわち特許文献1に記載の射出成形機においては、従来の射出成形機において設定していた2個のデータであるスクリュ位置とスクリュ速度の代わりに、それぞれ樹脂充填量と単位時間当たりの樹脂充填量を設定するようにしている。そもそもスクリュ位置とスクリュ速度は、樹脂の射出量と、単位時間当たりの射出量を調整するためのデータであるが、これらは加熱シリンダの内径によって変わる。加熱シリンダの断面積が変化するからである。そうすると従来の射出成形機における成形条件出しは、加熱シリンダの断面積を意識して成形条件のデータを調整する必要がある。また所定の内径の加熱シリンダによって成形条件出しを行ったとしても、内径の異なる加熱シリンダに交換するとこれらのデータを変更する必要が生じる。特許文献1に記載の射出成形機においては、成形条件のデータとして樹脂充填量と単位時間当たりの樹脂充填量とを設定すればよく、コントローラは予め設定されている加熱シリンダの内径あるいは断面積から、これらのデータを変換して内部的にスクリュ位置とスクリュ速度とを得、射出成形機を制御している。従って、オペレータは成形条件出しにおいて加熱シリンダの断面積を意識する必要がないし、内径の異なる加熱シリンダを交換しても成形条件のデータを変更する必要がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の射出成形機は、成形条件のデータとして樹脂充填量と単位時間当たりの樹脂充填量とを設定するようになっているので、成形条件出しの際には加熱シリンダの内径あるいは断面積を意識する必要がないし、一旦成形条件出しが完了したら内径の異なる加熱シリンダを交換しても、データを変更する必要がない。従って成形条件出しが容易にでき優れている。しかしながら問題点も見受けられる。具体的には、予めオペレータが操作して加熱シリンダの内径あるいは断面積をコントローラに設定しておかなければならない点があげられる。この設定を忘れたり間違っていると、内径や断面積が正しく設定されないことになり、結果的に樹脂充填量と単位時間当たりの樹脂充填量が変化して、射出装置や金型を傷める恐れがある。この問題は、内径の異なる加熱シリンダを適宜選定して取り付けることができる射出成形機の場合に生じやすい。つまり、加熱シリンダの交換だけをして、加熱シリンダの内径や断面積の設定をし忘れてしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記したような問題点を解決した、射出成形機を提供することを目的としており、具体的には、内径の異なる加熱シリンダを適宜選択して装着することができる射出成形機において、加熱シリンダの内径や断面積をオペレータが格別に設定する必要がなく、従って設定忘れや誤設定によって射出装置や金型を傷める恐れがない射出成形機を提供することを目的としている。また、成形条件出しが完了した後に加熱シリンダを交換する場合には、成形条件のデータをオペレータが変更する必要がない射出成形機を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機を対象とし、射出成形機の本体に、加熱シリンダの種類を認識する認識手段を設ける。射出成形機のコントローラには所定のテーブルを設け、テーブルには装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積を格納しておく。識別手段によって装着された加熱シリンダの種類が認識されたら、このテーブルから該当する加熱シリンダの内径あるいは断面積を読み出して、コントローラに設定する。また、設定された内径あるいは断面積に応じて、既に設定されている成形条件を自動的に変換するように構成する。
【0009】
かくして、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、前記識別手段はボルト検出用センサからなり、該ボルト検出用センサは、前記本体に明けられている加熱シリンダ固定用のボルト孔の幾つかに設けられ、前記加熱シリンダに明けられている加熱シリンダ固定用のボルト孔は、加熱シリンダの種類によって配置と個数が異なっており、前記加熱シリンダが前記本体に装着されたとき、前記ボルト検出用センサによって検出されるボルトの有無に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項2に記載の発明は、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、前記識別手段は複数個の接触検出センサからなり、該接触検出センサは前記本体の前記加熱シリンダが装着される取付面に設けられ、前記加熱シリンダは、前記取付面に接触する部分の形状が、加熱シリンダの種類によって異なっており、前記接触検出センサによって検出される接触の有無に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項3に記載の発明は、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、前記加熱シリンダに巻かれている複数枚のヒータは、前記本体に設けられている電力供給部に所定のソケットを介して接続され、前記ソケットは加熱シリンダの種類によってその形状あるいは個数が異なっており、前記識別手段は、前記電力供給部に設けられているセンサからなり、該センサによって検出される前記ソケットの形状あるいは個数に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項4に記載の発明は、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、前記加熱シリンダに巻かれている複数枚のヒータは、前記本体に設けられている電力供給部から電力が供給されており、前記識別手段は、前記電力供給部に設けられている電流計からなり、該電流計によって測定される各ヒータの電流に基づいて加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機として構成される。
請求項5に記載の発明は、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、前記射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、前記加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、前記加熱シリンダが装着されると、前記識別手段によって前記加熱シリンダの種類が識別され、前記テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されて前記コントローラに設定されるようになっている射出成形機であって、前記加熱シリンダに設けられている複数本の熱電対は、前記本体に設けられている温度測定部に接続されており、前記識別手段は前記温度測定部からなり、前記測定部に接続されている熱電対の本数、種類、あるいは接続状態に基づいて、加熱シリンダの種類が識別されることを特徴とする射出成形機として構成される。
【0010】
そして請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかの項に記載の射出成形機において、前記コントローラに設定されている複数の成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存している成形条件は、前記加熱シリンダが装着されて前記コントローラに内径あるいは断面積が設定されると、自動的に変換されるようになっていることを特徴とする射出成形機として構成される。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明によると、内径の異なる加熱シリンダを選択的に装着して射出成形することができる射出成形機において、射出成形機のコントローラには、装着可能な複数の種類の加熱シリンダに関する内径あるいは断面積が格納されたテーブルが設けられ、加熱シリンダが取り付けられる射出成形機の本体には所定の識別手段が設けられ、加熱シリンダが装着されると、識別手段によって加熱シリンダの種類が認識され、テーブルから該当する内径あるいは断面積が読み出されてコントローラに設定される。従って、加熱シリンダの内径や断面積をオペレータが格別に設定する必要がなく、自動的にコントローラに設定されることになる。そうすると労力がかからないし、設定忘れの恐れもない。そして誤った設定によって射出成形機を運転することがないので、射出装置や金型を傷める恐れがない。また他の発明によると、コントローラに設定されている複数の成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存している成形条件は、加熱シリンダが装着されてコントローラに内径あるいは断面積が設定されると、自動的に変換されるように構成されているので、所定の加熱シリンダを装着して成形条件出しが完了していれば、その後加熱シリンダを他の種類に交換しても、成形条件は自動的に変換されるので、再度成形条件出しをする必要がないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る射出成形機を模式的に示す図で、その(ア)は断面正面図であり、その(イ)は一部を拡大する断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形機の一部を示す図で、その(ア)は射出成形機の本体の加熱シリンダ取付部を、その(イ)〜(エ)は種類の異なるそれぞれの加熱シリンダの取付部を、それぞれ射出ノズルの方から見た側面図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る射出成形機の一部を示す図で、その(ア)は射出成形機の本体の加熱シリンダ取付部を、その(イ)〜(エ)は種類の異なるそれぞれの加熱シリンダの取付部を、それぞれ射出ノズルの方から見た側面図である。
図4】本発明の第3の実施の形態に係る射出成形機の一部を示す図で、その(ア)〜(ウ)は種類の異なるそれぞれの加熱シリンダと、加熱シリンダに巻かれているヒータと、ヒータへ電力を供給する電力供給部とを模式的に示す正面図である。
図5】本発明の第4の実施の形態に係る射出成形機の一部を示す図で、その(ア)〜(ウ)は種類の異なるそれぞれの加熱シリンダと、加熱シリンダに巻かれているヒータと、ヒータへ電力を供給する電力供給部とを模式的に示す正面図である。
図6】本発明の第5の実施の形態に係る射出成形機の一部を示す図で、その(ア)〜(ウ)は種類の異なるそれぞれの加熱シリンダと、加熱シリンダに設けられている熱電対からなる温度センサと、該熱電対が接続される温度測定部とを模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る射出成形機1も、従来周知のように構成されており、射出装置2、型盤装置、これらの装置を制御するコントローラ、等から構成されている。図1の(ア)には射出装置2の一部のみ示されている。射出装置2は、加熱シリンダ4と、この加熱シリンダ4内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ6と、加熱シリンダ4が装着される射出装置本体7とから構成されている。射出装置本体7はスクリュ6を駆動する駆動部も備えているが、図1には射出装置本体7の筐体の一部のみ示されている。本発明は、内径の異なる複数の種類の加熱シリンダを選択的に装着できる射出成形機を対象としており、第1の実施の形態においては、射出装置本体7と加熱シリンダ4の取付部に特徴があり、これについて後で詳しく説明する。本実施の形態においても、加熱シリンダ4の先端には射出ノズル8が設けられている。そして加熱シリンダ4と射出ノズル8の外周面には複数枚のバンドヒータ10、10、…が巻かれており、加熱シリンダ4と射出ノズル8を加熱できるようになっている。
【0014】
本実施の形態においては、型盤装置は色々な種類の型締装置を採用することができ、例えばトグル式の型締装置を採用することができる。トグル式型締装置は周知であるので説明しないが、トグル機構によって型開閉、および型締めができるようになっている。本実施の形態においても、射出装置2、型締装置、そして他の装置は、コントローラに接続されており、コントローラからこれらの各装置を制御できるようになっている。
【0015】
第1の実施の形態における、射出装置本体7と加熱シリンダ4の取付部について説明する。射出装置本体7と加熱シリンダ4は、図1の(ア)(イ)に示されているようにボルト12、12、…によって固定されるようになっており、射出装置本体7にも加熱シリンダ4にも所定のフランジ部が形成され、このフランジ部にボルト12、12、…を差し込むボルト孔が明けられている。ただし、射出装置本体7のフランジ部に明けられているボルト孔は雌ネジが形成されてボルト12が螺合するようになっているのに対し、加熱シリンダ4側のボルト孔には雌ネジは形成されていない。射出装置本体7側のボルト孔は貫通しており、ボルト12を締めると、ボルト12の先端が所定の長さだけ背面側に突き出るようになっている。
【0016】
射出装置本体7の取付部を、射出ノズル8の方から見た状態が、図2の(ア)に示されている。射出装置本体7には、スクリュ6の後端部が挿入される開口部13が明けられ、この開口部13と同心円状にかつ等間隔で、第1〜10のボルト孔14a、14b、…、14jが明けられている。これらのボルト孔14a、14b、…、14jのうち、第4のボルト孔14dと、第7のボルト孔14gには、図1の(イ)に示されているように、背面側にボルト検出用センサ16、16が設けられている。本実施の形態においてはボルト検出用センサ16、16はリミットスイッチから構成され、ボルト孔にボルト12が螺合しているときボルト先端がリミットスイッチを押してボルト12が検出されるようになっている。ボルト検出用センサ16としてリミットスイッチの代わりに光センサや他のセンサから構成することもできる。ボルト検出用センサ16、16はコントローラに接続されており、第4のボルト孔14dと第7のボルト孔14gにおけるボルト12、12の有無がコントローラに通知されるようになっている。後で説明するように、このボルト12、12の有無によって加熱シリンダ4の種類を識別でき、第1の実施の形態においてはボルト検出用センサ16、16が識別手段になっている。
【0017】
図2の(イ)〜(エ)には、内径が異なる3種類の加熱シリンダ、すなわち第1〜3の加熱シリンダ4A1、4A2、4A3について、その取付部を射出ノズル8から見た様子が示されている。第1の加熱シリンダ4A1には、図2の(イ)に示されているように、ボルト孔18、18、…が10個明けられている。これらは射出装置本体7の第1〜10のボルト孔14a、14b、…、14jに整合し、ボルト12、12、…を取り付けることができる。一方第2の加熱シリンダ4A2には、図2の(ウ)に示されているように、ボルト孔18、18、…は9個しか明けられていない。すなわち射出装置本体7の第4のボルト孔14dに対応する位置は塞がれている。また第3の加熱シリンダ4A3には、図2の(エ)に示されているように、9個のボルト孔18、18、…が明けられているが、射出装置本体7の第7のボルト孔14gに対応する位置は塞がれている。
【0018】
本実施の形態において、コントローラには、内部の記憶領域に所定のテーブルが設けられ、装着可能な種類の加熱シリンダについて次のデータが書き込まれている。本実施の形態においては、少なくとも第1〜3の加熱シリンダ4A1、4A2、4A3について書き込まれている。
○ 加熱シリンダの種類
加熱シリンダの型番、種類に関するデータ
○ 加熱シリンダの内径あるいは断面積
加熱シリンダの内径、あるいはシリンダの中空部の断面積
【0019】
本実施の形態に係る射出成形機1において、第1の加熱シリンダ4A1を装着すると、第1〜10のボルト孔14a、14b、…、14jにはいずれもボルト12、12、…が螺合することになる。従って、第4、7のボルト孔14d、14gに設けられているボルト検出用センサ16、16はいずれもボルト12、12を検出し、コントローラに通知する。コントローラは第1の加熱シリンダ4A1が装着されたことを認識し、テーブルから第1の加熱シリンダ4A1の内径あるいは断面積を読み取り、内部の制御用のデータとして所定の記憶領域に書き込む。すなわち内径あるいは断面積を設定する。第1の加熱シリンダ4A1の代わりに第2の加熱シリンダ4A2を装着すると、第4のボルト孔14dのボルト検出用センサ16はボルト12を検出せず、第7のボルト孔14gのボルト検出用センサ16はボルト12を検出する。そうするとコントローラは第2の加熱シリンダ4A2が装着されたことを認識する。同様に第3の加熱シリンダ4A3を装着すると、第4のボルト孔14dのボルト検出用センサ16はボルト12を検出するが、第7のボルト孔14gのボルト検出用センサ16はボルト12を検出しない。そうするとコントローラは第3の加熱シリンダ4A3が装着されたことを認識する。認識した加熱シリンダの種類に応じてテーブルから該当の内径あるいは断面積を読み取り、制御用のデータとして所定の記憶領域に書き込む。なお既に成形条件がコントローラに設定されている場合、加熱シリンダの交換によって加熱シリンダの内径あるいは断面積が変更されたら、コントローラは内径あるいは断面積に依存する成形条件については自動的に変換する。自動的に変換する成形条件は、スクリュ位置、スクリュ速度、射出圧力等であり、保圧時間、樹脂温度等の成形条件は加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存していないので変換しない。このような変換によってオペレータは成形条件出しを再度実施する必要がなくなり、加熱シリンダの交換の後も、実質的に同等の品質の成形品を成形できることが保障される。
【0020】
第2の実施の形態に係る射出成形機1Bについて説明する。この実施の形態においても、加熱シリンダ4として図3の(イ)〜(エ)に示されている第1〜3の加熱シリンダ4B1、4B2、4B3から選択的に装着することができる。これらの第1〜3の加熱シリンダ4B1、4B2、4B3は、前実施の形態と相違して、いずれもボルト孔18、18、…の個数は、射出装置本体7のボルト孔14、14、…の個数と同数である。しかしながら射出装置本体7に取り付けられる取付部の形状が相違している。具体的には、第2の加熱シリンダ4B2の取付部は、第1の加熱シリンダ4B1の取付部の左上部分21が切り取られた形状をしており、第3の加熱シリンダ4B3の取付部は、第1の加熱シリンダ4B1の取付部の右上部分22が切り取られた形状をしている。これらの形状の違いによって、第1〜3の加熱シリンダ4B1、4B2、4B3が識別されるようになっている。射出装置本体7の、加熱シリンダ4が取り付けられる取付面には、これらの取付部の形状の違いを検出するためのセンサ、すなわち接触検出センサ23、23が設けられている。第1の加熱シリンダ4B1が装着されると左右の接触検出センサ23、23が接触を検出し、第2の加熱シリンダ4B2が装着されると右の接触検出センサ23のみが接触を検出し、第3の加熱シリンダ4B3が装着されると左の接触検出センサ23のみが接触を検出する。これによってどの加熱シリンダ4B1、4B2、4B3が装着されたのかをコントローラが認識することができる。つまり接触検出センサ23、23は識別手段になっている。コントローラは前実施の形態に係る射出成形機1と同様に、テーブルから該当する加熱シリンダの内径あるいは断面積を読み取って、内部の制御用の記憶領域にコピーする。また成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存する成形条件を変換する。
【0021】
第3の実施の形態に係る射出成形機1Cについて説明する。この実施の形態においても、加熱シリンダ4として図4の(ア)〜(ウ)に示されている第1〜3の加熱シリンダ4C1、4C2、4C3から選択的に装着することができる。この実施の形態においても、バンドヒータ10、10、…には射出装置本体7に設けられている電力供給部25からの電力が供給されるようになっているが、電力供給部25には、ソケット26a、26b、26cによって接続されるようになっており、このソケット26a、26b、26cを介して各バンドヒータ10、10、…に電力が供給される。第1〜3の加熱シリンダ4C1、4C2、4C3に巻かれているバンドヒータ10、10、…は、種類あるいは枚数が相違しており、これらのバンドヒータ10、10、…の配線に接続されているのは異なる形状のソケット26a、26b、26cになっている。つまりソケット26a、26b、26cの形状を識別すれば、どの種類の加熱シリンダ4C1、4C2、4C3が装着されているかを識別できるようになっている。本実施の形態においては、電力供給部25にソケット26a、26b、26cの形状を認識するセンサが設けられており、このセンサが識別手段になっている。識別手段によって加熱シリンダ4C1、4C2、4C3の種類を識別したら、コントローラは第1の実施の形態と同様に、テーブルから該当する加熱シリンダの内径あるいは断面積を読み取って、内部の制御用の記憶領域にコピーする。また成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存する成形条件を変換する。
【0022】
第4の実施の形態に係る射出成形機1Dについて説明する。この実施の形態においても、加熱シリンダ4として図5の(ア)〜(ウ)に示されている第1〜3の加熱シリンダ4D1、4D2、4D3から選択的に装着することができる。これらの加熱シリンダ4D1、4D2、4D3の種類の識別は、バンドヒータ10、10、…に流れる電流の違いを検出することによって行う。すなわち射出装置本値7に設けられている電力供給部25には電流計が設けられており、これが識別手段になっている。つまり電力供給部25の電力を供給する各チャンネルCH1、CH2、…のそれぞれには電流計が設けられており、これらの各チャンネルCH1、CH2、…に流れる電流を測定して、第1〜3の加熱シリンダ4D1、4D2、4D3のいずれが装着されているかを識別することができる。加熱シリンダ4D1、4D2、4D3の種類を識別したら、コントローラは第1の実施の形態と同様に、テーブルから該当する加熱シリンダの内径あるいは断面積を読み取って、内部の制御用の記憶領域にコピーする。また成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存する成形条件を変換する。
【0023】
第5の実施の形態に係る射出成形機1Eについて説明する。この実施の形態においても、加熱シリンダ4として図6の(ア)〜(ウ)に示されている第1〜3の加熱シリンダ4E1、4E2、4E3から選択的に装着することができる。この実施の形態においても、従来の射出成形機と同様に、加熱シリンダには複数の温度センサつまり熱電対が設けられている。そしてこれらの熱電対は、射出装置本体7に設けられている温度測定部28に接続されている。この実施の形態においては、各熱電対はコネクタ28a、28b、28cに接続され、このコネクタ28a、28b、28cが、温度測定部28に接続されている。温度測定部28には複数のチャンネルCH1、CH2、…が設けられ、接続されている熱電対の電圧差を検出して温度を測定するようになっているが、温度測定部28は、熱電対が切断されたことを検出する、いわゆるバーンアウト検出もできるようになっている。第1〜3の加熱シリンダ4E1、4E2、4E3は、設けられている熱電対の本数や種類が相違しており、温度測定部28において接続されるチャンネルCH1、CH2、…のパターンが相違する。つまり、チャンネルCH1、CH2、…への接続パターンが分かれば、加熱シリンダを識別できる。この実施の形態においては、バーンアウト検出を利用して、チャンネルCH1、CH2、…への接続パターンを識別し、それによって第1〜3の加熱シリンダ4E1、4E2、4E3を識別するようになっている。なお、コネクタ28a、28b、28cは、複数本の熱電対が接続されるように説明したが、1本の熱電対に1個のコネクタが接続されるようにしてもよい。この場合には、コネクタの形状がユニークになるようにして、チャンネルCH1、CH2、…のそれぞれに接続できるコネクタを特定の種類に限定する。そうすると熱電対の接続ミスを防止することができる。チャンネルCH1、CH2、…への熱電対の接続のパターンから加熱シリンダ4E1、4E2、4E3の種類を識別することができる。コントローラは第1の実施の形態と同様に、テーブルから該当する加熱シリンダの内径あるいは断面積を読み取って、内部の制御用の記憶領域にコピーする。また成形条件のうち、加熱シリンダの内径あるいは断面積に依存する成形条件を変換する。
【符号の説明】
【0024】
1 射出成形機 2 射出装置
4 加熱シリンダ 6 スクリュ
7 射出装置本体 10 バンドヒータ
12 ボルト 14 ボルト孔
16 ボルト検出用センサ 18 ボルト孔
23 接触検出センサ 25 電力供給部
26 ソケット 28 温度測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6