(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に,添付された図面を参照して,本提案技術を詳述する。
最初に特許文献2で開示した
図1と
図2の提供に関する理論式誘導を簡単に説明する。売上営業利益π
Oに関するP/Lは表1のように表される。記号法は,各表中の項目の説明に示す。簡単のために,Gには変動費は含まれていないものとする。
【0018】
X=D
X+C+η+G+π
O (1)
但し,η=A
CX(-)−A
CY(+)。ηを棚卸資産・製造間接費配賦額・正味繰越額,又は純繰越製造間接費配賦額と名付ける。
【0019】
売上原価と製造原価における製造間接費Cと製造間接費配賦額A
CX(-),A
CY(+)との関係を
図3に示す。ここに,δ:製造間接費原価差異。
図3より,式(2)と式(3)が成立している。
【0020】
η=A
CX(-)−A
CY(+)
=A
CX−A
CY (2)
δ=A
CY−C (3)
式(1)において,「財務会計において定義される総利益」を売上総利益と名付け,Qと表せば,QはP/L作成に関する会計基準により,次式によって与えられる。
【0021】
Q=X−(D
X+C+η) (4)
「財務会計において定義される営業利益」を売上営業利益と名付け,π
Oと表せば,π
Oは次式によって与えられる。
【0022】
π
O=Q−G (5)
売上製品の全部原価(標準原価)E
Mを式(6)のように定義する。
E
M=D
X+A
CX (6)
標準原価計算においては,製造現場では,「管理会計としての総利益Q
M」は,式(7)として把握され,或る一定値のQ
M,又はQ
M/Xの確保が会社より命じられる。
【0023】
Q
M =X−E
M (7)
E
Mは製造現場(製造直接費部門)から販売現場(販売部門)に伝達される売上原価の概念であり,Q
Mは会社から販売現場へ利益管理目標値として命じられる総利益の概念である。Q
Mの概念が会計学に存在しないので,本発明者は売上総利益Qと区別してQ
Mを「管理総利益」と名付けた。これに基づき,本発明者が開示する理論を「管理総利益理論」と呼ぶことにする。π
MOを式(8)で定義すれば,π
MOは販売部門で把握され,会社より利益管理目標値として命じられる営業利益の概念である。π
MOを「管理営業利益」と名付ける。
【0024】
π
MO=Q
M−G (8)
会社内の各会計部門では表2の関係が成り立っており,結局,(d)の損益集計部門勘定により各部門勘定が集計,統合されて,π
Oが得られる。表2 (a)〜(d)の統合は,式(1)と整合している。
【0025】
【表2】
表2において, (b),(c),(d)の統合表を作り,その統合表の借方,貸方の両列からδとπ
MOを消去してA
CXを両列に加えると,表3の関係を得ることができる。
【0027】
π
O=Q
M+A
CX−F (9)
特許文献1と特許文献2においては,A
CXには第1種の配賦原価,即ち変動費配賦原価A
CXIと第2種の配賦原価,即ち固定費配賦原価がA
CXIIの2種類の配賦原価が存在するものと仮定したので,式(9)は次のように変換される。
【0028】
π
O=Q
M+A
CXI+A
CXII−F (10)
ここで,記号tanα=A
CXI/X(売上製造間接費配賦率)を定義すると,式(9)は次式のように変換される。
【0029】
π
O=Q
M+Xtanα+A
CXII−F (11)
式(11)において,π
O=0とする(Q
M, X)の軌跡を表す限界値としてのQ
MをQ
Mξと表すと,Q
Mξは次式のように表される。
【0030】
Q
Mξ=F− Xtanα−A
CXII (12)
式(12)は次のように変換できる。
(Q
Mξ+A
CXII)/ F+X/(F/tanα)=1 (13)
そして,π
Oは次のように表される。
【0031】
π
O=Q
M−Q
Mξ (14)
式(13)と式(14)を図形で表せば,
図1のようになる。(Q
Mξ, X)の軌跡は
図1における限界管理総利益線(Line-1)である。X(χ)は標準原価計算の場合の損益分岐点売上高である。A
CXII=0とするとき,
図1と等価な従来の45度線損益分岐点図様式の
図2を得る。
図2よりX(χ)=F/ (1−D
X/X)を得る。
【0032】
表3におけるF=η(=A
CX−A
CY)+C+Gの中のA
CXとA
CYは,個々には明らかに変動費である。何故,ηを固定費として取り扱ってよいのだろうか。ここの部分の解釈が発明者とSolomonsとで異なったのである。本発明者は,特許文献2において,直接原価計算における損益分岐点と標準原価計算における損益分岐点は,η=0とした場合に,互いに整合しなければならないこと,及び損益分岐点図は先人の標準原価計算損益分岐点理論と整合しなければならないということで,ηは固定費として扱うべきであると論じたが,その後の研究で,
図4のような関係がA
CXとA
CYとの間で成立していることを発見した。製造間接費配賦基準は会計基準により毎年継続的に一定としなければならないから,
図4において,A
CXとA
CYとは平行になり,ηを固定費原価として取り扱ってよいのである。
【0033】
一方,式(2)と式(3)により,η=A
CX−(δ+C)を得る。Solomons はA
CXを変動費,δを固定費とした。ここでSolomonsは誤ったのである。このように取扱うと,
図1において,F=C+η+G線は斜線になる。ここまでが特許文献1と特許文献2における利益図形の誘導とその後の研究の一部の追加である。
【0034】
これより,特許文献2以後に生じた課題とその解決手段を詳述する。
[1.準備的条件の設定]
図1においては,第1種の配賦原価A
CXIと第2種の配賦原価A
CXIIの2種類の配賦原価が存在するものと仮定した。ところが,A
CXIIを使用すると,Q
Mを与える線,即ち管理総利益率線(Line-2)が平面座標原点を通らない。このことは,利益率に対する一般的な感覚,即ち「利益率線は原点を通る」ことと矛盾する。そこで,利益率線が原点を通る改良を必要としたが,このことは,A
CXIIを廃止することで簡単に解決した。A
CXII=0としたことにより,管理総利益率=Q
M/X=tanβとなり,管理総利益率線(Line-2)は原点を通ることとなったが,このことによる不都合点は何も生じなかった。これより以降の記述は,全てA
CXII=0とした図形を対象とする。
【0035】
これより以降の記述は,全て直接原価計算と対比して論じられる。それで直接原価計算における限界利益図を簡単に紹介する。直接原価計算における限界利益をV
Dと表すと,V
Dは次式で定義される。
【0036】
V
D=X−D
X (15)
直接原価計算における固定費をF
Dと表すと,F
Dは次式で定義される。
F
D=C+G (16)
直接原価計算における限界利益図は,
図5で表される。但し,
図5において,π
Oとは,A
CX(-)=A
CY(+)のときのπ
Oである。
図5を直接原価計算限界利益図,又は「DC限界利益図」と名付ける。
[2.管理総利益図の改良とその利用]
管理総利益率線の始点を原点とした後の研究で,
図2に示す45度線損益分岐点図と
図1との間で,
図6のような関係が成り立っていることを発見した。
図6の下部,即ち管理総利益図を取り出したのが
図7である。本明細書では,
図7を「改良管理総利益図」と呼ぶことにする。
図7とline-2の始点を原点Oとする
図1との違いは,
図7ではFをC+ηとGとに分ける水平線分LDが図の中に存在するのに対し,
図1には水平線分LDに対応する線分が存在しないことである。
図7と式(2)と式(3)から,次式を得る。
【0037】
π
AC=A
CX−(C+η)
=A
CY−C
=δ (17)
π
O=π
MO+π
AC (18)
図3に見る通り,A
CYはCに対応する配賦額である。式(18)により,π
ACは利益の概念であるから,π
ACを「配賦利益」と名付ける。π
MO は管理営業利益であり,
図7により,π
MOはGが固定費のとき,線分H
4Dに比例する利益である。式(17)によると,δ>0のとき,売上営業利益π
Oは,π
MOよりもさらにπ
AC(=δ)だけ大きくなることを示している。
【0038】
従来,標準原価計算における問題点は,ηが存在し,それが当期営業利益π
Oに影響するからと言われている。そして,そのηの影響を排除するために製造間接費を期間原価とみなす(配賦原価としない)直接原価計算が提唱された。しかしながら,そのことはあまり重要なことではない。直接原価計算における
図5において,右の鉛直軸では,V
D=X−D
X値だけが表示されている。標準原価計算における
図7において,右の鉛直軸では,η≠0のときのみならず,η=0のときであっても,π
O はπ
MOとπ
ACとの和からなることが明示されている。即ち,直接原価計算では,π
Oに影響を与える情報量は[V
D−F
D]1個であるのに対し,標準原価計算では,π
Oに影響を与える情報量はπ
MOとπ
ACの2個であって,しかもその2個は互いに独立である。π
ACとπ
MOの意味を考察する。
【0039】
(1) π
MOの意味
図7を参照する。Q
MはQ
M=X−E
M(=D
X+A
CX)で与えられる。販売部門には,原価情報としてE
Mだけが与えられ,これ以外の原価は管理不可能原価である。もし,Gが一般管理費率として与えられないのであれば,販売部門の活動成果は,個々の製品売買契約で得たQ
Mの期末合計値としてのQ
Mをもって事実上定まり,もしGが固定費であれば,販売部門の期末成果は,π
MO=Q
M−Gで評価される。
【0040】
(2) π
ACの意味
一方,製造部門の費用支出を観察する。半製品を含む売上製品の量はE
Mに比例する。従って,E
Mは人と設備の働き(稼動)の量に比例する。ところが,固定費である製造間接費C(主として労力と減価償却費)の支出額は,その稼動量に比例しない。このことがπ
ACの増加(又は減少)となってπ
Oの大きさに大きく影響するのである。例えば,工場の勤務体制を日中1回勤務体制から昼夜2交代勤務体制に変更すると,式(17) よりA
CX− (C+η)が増加してπ
ACが増加する。即ち,π
ACは製造部門の努力成果の指標ともなり得るのである。つまり,π
ACとは,式(17)より製造間接費配賦差異δであるから,δを大きくすることがπ
Oを大きくすることに直結する。このように,
図7においては,π
Oがπ
ACとπ
MOとに分離され,情報量が2個であり,それぞれを対象として利益考察ができる。即ち,「売上営業利益π
Oは,販売部門利益π
MOと製造部門利益π
ACとからなる」ということを
図7が示していることが標準原価計算の第1の重要な利点である。このことは,経営判断において,大きな威力を発揮する。例えば,次のような例である。
【0041】
会社決算が常に黒字である場合には,会社経営に大きな問題は生じない。会社の決算が赤字になったときに,経営者はその原因を知る必要がある。この問題に対する検討資料として,
図7が役立つ。
図8は,事業部門が赤字,即ちπ
Oが負値である場合の原因を検討するために
図7を変形したものである。製造間接費配賦基準は適切に定められているものとする。
図8において,π
AC=NM−DM>0であり,Xは点H
3よりも大きく,製造間接費を回収する売上高の量に問題はない。一方,π
MO=AB−ADであり,大きな赤字であり,π
Oを負値としている。従って,赤字の原因は,売上高が伸びているにも関わらず,販売部門に問題があった(Q
Mが小さすぎた)ことを示している。
【0042】
π
ACに関しては,例えば次のような考察が可能である。π
ACとは,式(17)により実際は製造間接費原価差異δであり,製造間接費配賦基準が適正である限り,π
ACは実際上,操業度差異の結果である。それは又,景気の波の影響を表すのである。π
ACの赤字が大きくなるということは,売上が不足しているか,過剰設備であるということである。会社はπ
ACに関する損益分岐点を指標にして,経営改善するしかないだろう。
[3. SC限界利益図の誘導とその利用]
実務会計において,しばらくの間,
図7を使った利益管理を続けたが,上述の通り,
図7はπ
MOとπ
ACとを分離することによって得られる経営情報を提供するという大きな利点を有するにも関わらず,社内で
図7を積極的に利益図を利用しようという動きは少なかった。会計社員は直接原価計算の教育を受けており,45度線損益分岐点図と限界利益図を知っている。
図7で重要な数値は,tanβ=Q
M/XとF=η+C+Gとtanα=A
CX/Xであり,tanαは,製造間接費配賦基準が事前に定まっているので,事業部門の中では,ほぼ定数である。本発明者は利益管理の中で,固定費Fの管理と利益獲得能力成果を表すtanβの管理の重要性を強調したが,会計社員は
図7が学校教育の中で教えられていないので,本発明者が固定費であると主張するFの線が水平線とはならずに,何故斜線となるのかを感覚的に理解できず,
図7に対する拒否反応が強いのである。そこで,Fを水平線として表す標準原価計算・利益図理論の構築が必要となった。
【0043】
さらに研究を続けた結果,
図7と等価となる
図9を発見した。次の手順で
図7を
図9に変形する。
図7における斜めの線分ENがEMの位置,即ち水平となるようにBNをA
CXだけ上方に移動させる。そうすると
図9が得られる。その結果,
図7上の点Nと点Bは
図9上の点N’と点B’に移る。
図9より,AB’=QM +A
CXであるから,式(9)より,線分B’N’の長さ=π
Oである。なお,
図9において,線分ENと線分OBを実線としてもよいが,図形は複雑になる。
図7と
図2が組み合わされて
図6となっているように,
図9と
図2を組み合わせて,一つの図形としてもよい。
【0044】
図9は,直接原価計算の場合の限界利益図とまったく同じ形をしている。直接原価計算における限界利益V
Dは式(15)で定義されている。そこで,標準原価計算における
図9において,次式によって次の記号V
Sを定義し,V
DとV
Sが如何なる関係にあるか調べる。
【0045】
V
S=Q
M+A
CX (19)
式(19)は,式(6)と式(7)により次のように変形できる。V
S=A
CX+Q
M=A
CX+(X−D
X−A
CX)=X−D
Xなので,V
S=V
Dである。従って,
図9で表される標準原価計算と
図5で表される直接原価計算との違いは,標準原価計算ではF=C+η+Gであるのに対し,直接原価計算ではF=C+Gであることであり,η=0のとき,両原価計算の利益図は一致する。従って,標準原価計算利益図を示す
図9は,DC限界利益図を包含している。
図9を標準原価計算限界利益図,又は「SC限界利益図」と名付ける。
【0046】
図9と
図5の違いは,
図9にはFの中にηが存在するのに対し,
図5には存在しない(η=0)ことである。実は,ηの存在こそがジョナサン・N・ハリスにより指摘された「標準原価計算では,次期棚折資産が増加(減少)することによって,当期営業利益が増加(減少)する」という原因だったのである。このことは, A
CX(-)=0と仮定し,A
CY(+)を増加させていくと,X中に含まれる原価としてのA
CXが減少し,π
Oが増加していくことから分かる。
【0047】
図9と
図5の外形は似ているが,内容は異なっており,会計における存在意義は大きく違う。例えば,歩合制度に見られる通り,売上高X=X
1において,賃金報酬=0.1X
1であるとすれば,X=2X
1となったときに,賃金報酬=0.2X
1であるとする考えは,普通の人間の自然な考え方である。しかしながら,実際の売上営業利益の増減の仕方はそうではない。
図9に示す通り,標準原価計算に従うと,π
Oはtanβ(=Q
M/X
1)の比率で増減するのではなくて,「π
Oはtanα+tanβの比率で増減する。そして,tanα(=A
CX/X)は,事業部門別,又は類似製品に対して,ほぼ定数であり,tanβは販売部門の利益獲得能力,又はその成果によって定まる。」Xの増加に伴うπ
MOの実際の増減の仕方はこのようなものであるという情報を伝えているということが
図9によって示される標準原価計算利益図の第2の重要な利点である。
図5に示す直接原価計算においては,V
DとF
Dの差額のみが与えられている。これでは,
図9が示す理論的背景を深く理解している人を除けば,
図5によって売上営業利益の増減の仕方を知ることは難しいであろう。
【0048】
会社と顧客との間の売買取引は,会社一律の売上営業利益率を保って自動的になされるわけではなく,他社製品との競争の中で,顧客と販売部門社員(以下,販売部門という)との間で,個々に条件が異なる取引交渉の結果として,売上製品1取引(=価格×数量)当たりでなされる。そのため,利益管理とは,製品品質が或る一定水準以上を保つ限り,販売管理である。前述の通り,販売部門にとっての売上原価とは標準原価であるから,販売管理とは,結局は管理総利益管理である。従って,販売部門は,1取引当たりの管理営業利益を念頭においた売買契約可否に対する意志決定を常にせまられている。
【0049】
販売部門は,製造部門より製品1単位当たりの標準原価が与えられている。この場合において,一般管理費(以下,常に販売費を含む)が固定費であると,製品販売額と売上原価の間で売上営業利益率の把握が難しい。そのため,販売部門は固定費である一般管理費を変動費扱いとした1取引当たりの販売額Xと売上営業利益π
Oとの関係を示す図形が欲しい。そのような図形が無いと,販売部門は,売上高増大にのみ関心が向き,A
CXは増やしても,それ以上にπ
MOを減少させ,結果としてπ
Oを減少させてしまうのである。このような要望に対しては,
図9が役立つ。製造間接費配賦率tanα=A
CX/Xは,会社の個々の事業部(又は同一種類の製品)において,ほぼ定数である。管理総利益率tanβ=Q
M/Xは,個々の取引金額に応じた販売部門の意志決定で決まる。後は,会社は一般管理費率を定数として与えて,売上営業利益率π
O/Xの確保を利益管理目標値とすればよい。
【0050】
図10を例にして,このことを説明する。計画売上高=X
0(X>X
0),計画一般管理費=G
0と表す。
図10において,tanθ
0 =G
0/X
0,tanθ=G/Xと表す。tanθ
0>tanθであるとき,Δπ
0O=(tanθ
0−tanθ)X>0と表される。一般管理費率としてtanθ
0を使う限りは,真のπ
OはΔπ
0Oだけ小さく算定されてπ
0Oとなるので,決算時のπ
Oを得るためには,π
0OにΔπ
0Oを加算しなければならない。さらには,事業部門に割り当てられる一般管理費が売上高に必ずしも比例させない場合には,計画時に定めた各事業部門の売上高比率も決算時では変わるので,事業部門に割り当てられた一般管理費率も違ってくる。これらの差異を全て修正することは面倒な操作なので,
図10において,X=X
0,G=G
0とした計画利益図を作り,その図を参考図として意志決定し,実施利益図においては,事業部門毎の実施一般管理費Gを水平線として与える方がよい。実施P/Lが計画P/Lよりも大きく変わりそうなときには,利益計画を新しく作り変える方が容易である。このような方法で,販売部門は売上高Xと売上営業利益π
Oを自主的に管理することができる。
[4. 標準原価計算における直接費原価差異の図形処理]
標準原価計算においては,直接費の計上に当たり,実際原価D
Xの代わりに標準原価A
DXを使うことが多い。そのとき,微小ながらも配賦原価差異が生じるがその取り扱い方法を提供する必要がある。例えば,製造直接費中の実際賃金(労務賃金など)W
Xを変動標準原価A
WXとして原価計算する場合を説明する。W
Xは,他の実際製造直接費D
X’と分離されているものとすると,表2(a)と表3は,表4と表5のように変換される。すなわち,表中でD
X=D
X’+A
WXとし,Δ
W(標準原価賃金・原価差異)をCに加算する補正値として取り扱えばよい。実際経営においては,季節要因や,景気変動による受注減のために,労務賃金を直接費の中で吸収しきれず,休職,職場待機費用が生じる場合がある。このような費用対象に対しては,Δ
Wの取り扱いとは別に,例えば雇用維持費用という名称を与えて,製造間接費の中の独立した費用項目としてもよい。実務計算におけるP/Lでは,本明細書における記号表示法に示すようなきれいな形で勘定を整理できないことがある。そのような場合に対しても,表4と表5の方法を採用すればよい。
【0052】
【表5】
表5において,Δ
Wを変動費実際原価と変動費標準原価との差,即ち原価差異の代表記号として用いれば,F=η+C+G+Δ
Wである。しかしながら,Δ
Wは小さな値であるから,決算時を除き,期中においては,Δ
W=0として仮定して利益管理を行ってもπ
Oに大きな誤差は生じない。労務賃金を変動費扱いにしたのは,製造原価計算の慣例に従っただけであり,例えば公営事業に当たっては,事実上,労務賃金は固定費扱いとすべきであろう。その場合には,労務賃金は製造間接費扱いとなり,借方に実際賃金W
Xが貸方に標準原価賃金A
WXが置かれる。
[5. 数値計算例と新しい損益分岐点公式]
本発明の数値計算例と新しい損益分岐点公式を例題を用いて説明する。新しい標準原価計算・損益分岐点公式を提示する。P/L会計システムにおいて,
図9により次式が成立している。
【0053】
π
O =A
CX+ Q
M−F
=(tanα+ tanβ)X−F (20)
ここに,tanα=A
CX/X。損益分岐点売上高とは,π
O=0とするXであるから標準原価計算・損益分岐点売上高をX(χ)と表すとき,次式を得る。
【0054】
X(χ)=F/(tanα+ tanβ) (21)
図6において,次式が成立していることを容易に確かめることができる。ここに,tanγ=D
X/X(変動費率)。
【0055】
tanα+ tanβ+ tanγ=1 (22)
従って,さらに次式も得る。
X(χ)=F/(1−tanγ) (23)
直接原価計算の損益分岐点公式は,X(χ)=(C+G)/(1−tanγ)であるから,式(21)と式(23)は,直接原価計算と標準原価計算の両方を含む一般的な損益分岐点公式であることが分かる。
【0056】
期中の利益管理表を表6と表7に示す。表においては,A
CX(-)=10とA
CY(+)=15を誇張した値としている。
【0058】
【表7】
η=A
CX(-)−A
CY(+)=10−15=−5,F=η+C+G=−5+125+70=190,tanα=A
CX/X=110/1,000, tanβ=Q
M/X=130/1,000,tanγ=760/1,000,tanα+tanβ=240/1,000;
X(χ)=F/(tanα+tanβ)=190/(240/1,000)=792,X(χ)=F/(1−tanγ)=190/(1−760/1,000)=792;π
O =(tanα+tanβ)(X−X(χ))=(240/1,000)(1,000−792)=50。
[6. その他]
図7や
図9は,簡単のために売上営業利益P/Lに対する利益図(損益分岐点図)となっているが,式(9)のFに例えば支払利子や法人税,特別損益を考慮すれば,売上営業利益図の代わりに税引前当期利益図が得られることは明らかであり,本発明は後者の利益図の作成方法を含む。
【0059】
P/Lの作成には,ηが露に現れず,図形描画にはηを必要とすることが理解され難いが,このことを説明するために,数値関係では表3と等価な表8を示す。表8は,表3で借方に置かれているηを貸方に移しただけのものである。表3は,
図9を表す勘定関係であり,表8は,Q
Mが仮に定義されているものとして,通常のP/L作成で行われている勘定関係である。表8を表す利益図は,
図9において,Fの値をC+Gと置き換え,V
Sの値をQ
M+A
CYと置き換えたものとなる。
【0060】
【表8】
表8において,Cをマイナス記号を付けて貸方に移項し,式(17)によりA
CY−C=δと置けば,数値関係では表3と等価な表9を得る。このときの利益図は,
図9において,A
CXをδと,FをGと置き換えたものとなる。
【0061】
【表9】
しかしながら,本発明者は,表8と表9を表す利益図の使用は推奨しない。何故なら,表3と表8と表9は数値関係では等価であるが,三つの表で借方は固定費を表し,貸方は変動費を表すので利益図の形が違い,表8と表9を表す利益図による損益分岐点売上高は式(22)と式(23)を満たさないからである。しかしながら,表8や表9を表す利益図も本発明の中に含まれる。
【0062】
本発明者は,特許文献1,特許文献2,及び本明細書を通じ,歴史的な先人の文献を参考にしながら,非常に難解な理論式の誘導と複雑な図形変形を経て,標準原価計算の下での損益分岐点図である
図2,
図7,
図9と損益分岐点公式を得た。そして,その結果としての利益図形と損益分岐点公式は非常に簡単なものであり,直接原価計算における利益図形と損益分岐点公式を包含するものであった。簡明な結果を得た現時点から眺めれば,それら利益図と損益分岐点公式の意味をもう少し簡単に説明できる。式(1)より,π
O=X− (D
X+C+η+G) である。π
Oは次のように変形できる。π
O=[X−(D
X+A
CX)−G]+[A
CX−(C+η)]=[Q
M−G]+[A
CX-(C+η)]=π
MO+π
AC。この式を図形で表せば
図7となる。π
Oは次のようにも変形できる。π
O=[X−(D
X+A
CX)]+A
CX−(C+η+G)=[Q
M+A
CX]−F。この式を図形で表せば
図9となる。π
Oを0とするXを求めれば,それが損益分岐点売上高となる。本発明者が提供した作図法のキーポイントは,ηを固定費扱いとしてよい,即ちFの中に入れてもよいことを発見したことであった。
[実施例1]
損益分岐点図は,本来P/L(会計期間全体に対する損益計算)に対する利益図である。しかしながら,管理会計は,月次で損益計算を実施(各月毎の累加損益計算)できなければ意味がない。そのためには,本発明による利益図を時系列・利益管理図としても利用したい。時系列・利益管理図が最後にP/Lと一致するようになればよい。文章では簡単なことだが,現実においては,前月に予想した売上高Xの増分と管理総利益Q
Mの増分は,経済環境の変化と契約見込みから最終契約に至る契約条件変更でゆれ動き,実現値と予想値は一致しない。実際の固定費Fの出費確定は,会計帳簿の出帳後(1,2ケ月後)になり,予算管理当月までの出費は予想値を使用するしかない。しかも,固定費Fといえども,経営者の判断による変動費であるから(変動費としなければ,利益管理する意味が無い),予想F値自体がゆれ動く。この利益管理を成功させるためには,利益管理部門を含む会社全体の各組織の協力体制を作り,利益管理部門では,大胆な推測により迅速なる利益管理表データを作成し,
図7や
図9による利益図をLAN(Local Area Network)などを通じて,社内各組織に開示することが必要である。
【0063】
その処理を次に説明する。この会社は個別製品受注産業であるものとし,売買契約から製品の完成引渡し,売上計上までには,5,6ヶ月かかるものとする。売上計上は,検収基準とする。期首には,計画P/Lが策定されているものとする。実施条件が計画条件と大きく変わる場合は,計画P/Lを作り直すものとする。時系列・利益管理表を単に利益管理表と呼ぶ。i月中の利益管理表のデータ集計確定日を「i月」と呼ぶ。i月毎の利益管理表の表現には2種類ある。利益管理表1:期中のi月に使用する固定費F(=η+C+G)のデータには年間計画固定費を採用し,売上高Xと管理総利益Q
Mには,現在,売上計上済み,及び契約して製作中の年度内完成時売上を管理表データとする。この表によれば,i月の次月以降に新規受注が0で進めば,P/Lでは幾らの赤字になり,計画営業利益を得るためには,さらに管理総利益Q
Mを上げ得る新規受注が幾ら必要であるという指示がなされる。利益管理表2:i月のXとQ
Mデータには,前述のデータに対するi月までの進行基準割合(およその適当な推定値でよい)を採用し,Fに対しては,i月の確定値が出帳されているのであればその値を使い,出帳されていないのであれば,前月までの確定累計[F
i-1]に計画P/Lにより推定されるi月分の(F
i)を加算した値F
iをデータとする。この利益管理表では,現時点での経営状況が把握される。
【0064】
表10は,利益管理表2を説明する。事業部門は幾つあってもよいが,表ではA事業部門とB事業部門があり,その合計としての会社全体があるものとする。製造間接費部門は幾つあってもよいが,表では機材損料部門-1と共通費部門-2の2部門があるものとする。B事業部門のデータ記入は省略する。データの処理は,会社全体に対するデータ分のみの処理を説明する。i月で売上確定している(製品を売上計上した)累計売上高を [X]
i(1行)と表し,i月の現在売上未計上分(即ち,棚卸資産)の進行基準売上の累計売上高(表中では未確定と表している)を(X)
i(6行)と表す。[X]
iと(X)
iとの合計をX
i (11行,表中では予想売上高と呼んでいる)と表す。
【0065】
表10において,11行から23行までの処理は,通常のP/Lを求める処理と同じである。但し,通常のP/Lでは,[15]行と[16]行は表示されていない。それは,従来のP/L作成理論では,12行の全部原価E
Mを露な形として定義していないからである。さらに,11行から23行までの処理にはηが現れていない。この理由は,表3と表8の違いで説明済みである。[24],[25] ,[26]行の各数値が得られれば,これらの数値と表10中の数値を使って,
図7と
図9を描けることは明らかである。
【0066】
【表10】
表10におけるデータの演算式を表11に示す。適用式は明細書中の対応する数式番号を示している。
【0067】
【表11】
利益管理部門と会社全体の組織部門との間の利益管理表データの受け渡しと,利益管理表及びSC限界利益図の社内コンピュータ情報ネットワークを通じての開示処理を
図11に示す。
図11においては,データに対して事業部門A,Bの区別を省略している。利益管理部部門では,表10に示すi月のデータを各関連部門から受け取り,各部門間で矛盾が無いようにデータを相互調整して,表10を完成させる。表10の完成に伴い,利益図作成のためのデータが[24],[25] ,[26]行で得られる。これらのデータを使って,作成されたi月の利益管理表と,
図2と
図9の合体図,又は
図2と
図7の合体図がデータベースに入れられ,それらは,LANなどを通じて,社内開示される。
[実施例2]
実施例1で得られる利益図の提供を含むP/L作成と利益管理資料作成業務を会計サービス提供者が行う事業方法であって,その処理を
図12に示す。その事業方法は,コンピュータ情報ネットワークを通じて,既述の利益図が伝達され合っているその会社とその会社のための会計サービス提供者で構成され,さらに,その事業方法は,次のステップからなる。会社が会計データをコンピュータ情報ネットワークを通じて,会計サービス提供者に送り,会計サービス提供者は,会計データを既述のSC限界利益図に変換し,逆の方向で,会計サービス提供者は,これらの利益図を含む会計情報を会社に送り返す。
【0068】
次に,SC限界利益図を提供するための会計システムの一例について説明する。
図13において,利益管理部門,会計法人などに設置されるサーバ100は,インターネットなどのネットワーク200を介して,SC限界利益図の提供を受ける利用者が操作する,少なくとも1台のクライアント300に接続されている。なお,サーバ100は,複数台のコンピュータにより構築されるものであってもよい。
【0069】
サーバ100及びクライアント300は,
図14に示すように,メモリA,CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサB,ハードディスクC,ドライブ装置D及び通信装置Eを有する。メモリA,プロセッサB,ハードディスクC,ドライブ装置D及び通信装置Eは,シリアルATA(AT Attachment)などのバスFにより相互に接続されている。ドライブ装置Dは,例えば,CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory),DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)などのリムーバブルディスクGからデータを読み込む。リムーバブルディスクGに代えて,フラッシュメモリを内蔵したUSB(Universal Serial Bus)メモリなどを使用することもできる。通信装置Eは,サーバ100とネットワーク200,及び,ネットワーク200とクライアント300とを夫々接続する,例えば,NIC(Network Interface Card)などである。
【0070】
サーバ100のプロセッサBは,メモリAに展開された会計プログラムを実行することで,
図15に示すように,製造間接費配賦額算出部110,管理総利益算出部120,管理固定費算出部130,限界利益算出部140,限界利益図生成部150,売上営業利益算出部160及び限界利益図返却部170を夫々実現する。なお,製造間接費配賦額算出部110,管理総利益算出部120,管理固定費算出部130及び限界利益算出部140は,クライアント300から,会計データを含んだSC限界利益図の提供要求があったことを契機として起動する。ここで,会計データは,売上製品に配賦された製造間接費配賦額A
CX,製造品に配賦された製造間接費配賦額A
CY,売上高X,製造直接費D
X,製造間接費C及び一般管理費Gを含む。
【0071】
製造間接費算出部110は,製造間接費配賦額A
CX及び製造間接費配賦額A
CYに基づいて,「η=A
CX−A
CY」という式から,純繰越製造間接費配賦額ηを算出する。管理総利益算出部120は,売上高X及び製造直接費D
Xに基づいて,「Q
M=X−D
X−A
CX」という式から,管理総利益Q
Mを算出する。管理固定費算出部130は,製造間接費配賦額算出部110により算出された純繰越製造間接費配賦額η,製造間接費C及び一般管理費Gに基づいて,「F=C+η+G」という式から,管理固定費Fを算出する。限界利益算出部140は,管理総利益算出部120により算出された管理総利益Q
M及び製造間接費配賦額A
CXに基づいて,「V
S=Q
M+A
CX」という式から,標準原価計算・限界利益(以下「限界利益」という)V
Sを算出する。限界利益図生成部150は,売上高X,管理固定費算出部130により算出された管理固定費F及び限界利益算出部140により算出された限界利益V
Sに基づいて,
図9に示すようなSC限界利益図を生成する。売上営業利益算出部160は,限界利益図生成部150により生成されたSC限界利益図に基づいて,財務会計で定義する売上営業利益π
Oを算出する。限界利益図返送部170は,限界利益図生成部150により生成されたSC限界利益図及び売上営業利益算出部160により算出された売上営業利益π
Oを,SC限界利益図の提供要求を発行したクライアント300に返送する。
【0072】
図16は,サーバ100によるSC限界利益図の提供処理の一例を示す。
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様。)では,製造間接費配賦額算出部110が,式「η=A
CX−A
CY」に,製造間接費配賦額A
CX及び製造間接費配賦額A
CYを代入することで,純繰越製造間接費配賦額ηを算出する。
【0073】
ステップ2では,管理総利益算出部120が,式「Q
M=X−D
X−A
CX」に,売上高X,製造直接費D
X及び製造間接費配賦額A
CXを代入することで,管理総利益Q
Mを算出する。
【0074】
ステップ3では,管理固定費算出部130が,式「F=C+η+G」に,製造間接費C,純繰越製造間接費配賦額η及び一般管理費Gを代入することで,管理固定費Fを算出する。
【0075】
ステップ4では,限界利益算出部140が,式「V
S=Q
M+A
CX」に,管理総利益Q
M及び製造間接費配賦額A
CXを代入することで,限界利益V
Sを算出する。
ステップ5では,限界利益図生成部150が,次のような手順によって,SC限界利益図を生成する。即ち,
図9に示すように,水平軸(横軸)を売上高,鉛直軸(縦軸)を原価又は利益とする平面座標を想定する。そして,座標(0,0)を原点O,座標(X,0)を点A,座標(X,V
S)を点B’として,平面座標に線分AB’及び線分OB’を夫々描く。また,ηを固定費として扱い,座標(0,F)を点E,座標(X,F)を点N’として,平面座標に水平線分EN’を描く。
【0076】
ステップ6では,売上営業利益算出部160が,限界利益図生成部150により生成されたSC限界利益図を利用して,
図9に示すように,線分EN’と線分OB’との交点H
2’を特定し,交点H
2’を標準原価計算P/Lに対する売上営業利益・損益分岐点と決定する。そして,売上営業利益算出部160は,SC限界利益図における線分B’N’を,売上営業利益π
Oとする。
【0077】
ステップ7では,限界利益図返送部170が,SC限界利益図の提供要求を発行したクライアント300に対して,SC限界利益図及び売上営業利益π
Oを返送する。ここで,売上営業利益π
Oは,SC限界利益図中に表すようにしてもよい。
【0078】
このような会計システムによれば,サーバ100は,クライアント300からSC限界利益図の提供要求を受け付けると,会計データとしての製造間接費配賦額A
CX,製造間接費配賦額A
CY,売上高X,製造直接費D
X,製造間接費C及び一般管理費Gから,管理固定費F及び限界利益V
Sを夫々算出する。また,サーバ100は,売上高X,管理固定費F及び限界利益V
SからSC限界利益図を生成すると共に,SC限界利益図から売上営業利益π
Oを算出する。そして,サーバ100は,SC限界利益図の提供要求を発行したクライアント300に対して,ネットワーク200を介してSC限界利益図及び売上営業利益π
Oを返送する。
【0079】
ここで,クライアント300に返送されるSC限界利益図は,限界管理総利益線が水平線として表されているので,利益図の利用を促進することができる。
なお,サーバ100は,SC限界利益図及び売上営業利益π
Oをデータベースに順次蓄積しておき,クライアント300からの要求に応答して,要求に係るSC限界利益図及び売上営業利益π
Oを提供するようにしてもよい。
【0080】
標準原価計算は,η≠0の場合にπ
Oがηの値に影響を受けるということで管理会計には使えないという非難を長い間受けてきた。しかしながら,そのことは些細な問題であり,その本当の理由は,標準原価計算では実務適用可能なCVP利益図が従来,会計学の中に存在しなかったということである。この問題点は,本発明による利益図は直接原価計算利益図を包含するということで解決された。即ち,直接原価計算は,本発明利益図におけるη=0の特別な場合に過ぎないのである。しかしながら,標準原価計算では,η=0の場合でも利益計算の中にA
CXは存在し,π
O中でπ
ACは大きな値を占めている。特に
図8に示すように赤字の場合の原因解析のためには,π
ACは無くてはならないものである。本発明によって,製造間接費を配賦原価とすることによって,製造間接費と配賦原価との差が利益(又は損失)に転化することが数式的に明らかになった。又,管理営業利益と配賦利益を分離してP/Lを観察できることにより,販売部門と製造部門の利益獲得結果を把握できるようになった。これらのことにより,従来,管理会計で邪魔物扱いされていた製造間接費の配賦手法が実は利益の獲得や損失解析のためには大変有効な道具であることが実証された。従って,標準原価計算会計システムは,財務会計においては当然ながら,管理会計においても,将来,標準的な利益管理手法となるであろう。
【0081】
財務会計と管理会計とが一体となった会計システムの構築は従来大変難しかった。その理由は,財務会計部門とそれ以外の事業実施部門との間で,会計用語の定義が違うからである。本発明によって,標準原価計算の下での事業実施部門における利益用語と財務会計部門における利益用語とが厳密な定義により結び付けられ,標準原価計算の下での管理会計と財務会計とが一体化された会計システムの構築が可能となった。従って,もし標準原価計算を採用している会社がコンピュータ情報ネットワークによるCVP利益図の開示を必須条件とし,且つ管理会計と財務会計とが統一化された会計システム,あるいは全ての事業部門,会計部門,経営部門が共通会計用語を使用しながら参加し得る会計システムの構築を望むならば,本発明者による管理総利益理論に基づいた会計システムは,その望みに適い得る唯一の会計システムとなるであろう。そして,この効果は,単に会社の中の利益管理だけに留まらず,経営コンサルタントや会計教育機関の実務に対しても,大きな恩恵を与えることになるだろう。
【0082】
改良管理総利益図とSC限界利益図とが管理会計の道具として世界中で利用されるためには,標準原価計算と直接原価計算との間の違いを正しく説明し,標準原価計算の方が管理会計に対しては有用であることを説明する必要がある。本発明は,標準原価計算におけるそれらの問題点に解決を与え,その利用が財務会計に限られていた標準原価計算の直接原価計算に対する管理会計における優位性を説明する。そのことによって,世界中で圧倒的多数を占める標準原価計算を採用している会社経営者に直接原価計算に勝るとも劣らない管理会計技術を提供し,会計システム提供業者に管理会計と財務会計とが並立する新しい図形理論に基づいた会計システムの構築技術を提供し,会計サービス提供者や会計教育関係者に本理論が示す新しい知見を与えて,会社経営提案業務に役立たせようとするものである。
【0083】
本発明による利益管理に要するデータは,予想売上Xに応じたQ
Mと,A
CX,A
CY,F=η(=A
CX−A
CY)+C+Gの月次把握だけでよい。特に全部原価の根拠数値は,見積もり段階で既に作成済みである。従って,中小企業においても僅かな労力で利益管理システムを運営することができる。しかしながら,本発明は,むしろ大規模な会社内部情報ネットワークを構築している大企業においてこそ,有効に活用されるべきものである。何故なら,本発明においては,(1) 財務会計と管理会計において使用される会計用語が統一的に定義されていること,(2) 財務会計と管理会計とが理論的に統一的に整合されていること,(3)標準原価計算と直接原価計算とが現在の会計教育の範疇の中で統合されているために,特別な教育を必要としないで,社内のどの部門からも理解され易い。それ故,事業部門や間接部門を含む現場社員から会計部門を含む本社経営者層までが全員参加する会計システをすぐにでも構築でき,社員数が多いほどその恩恵が大きいからである。
【0084】
以上の実施例を含む実施形態に関し,更に以下の技術的思想を開示する。
(イ)全部原価計算としての標準原価計算会計を使用する会計事業方法であって,その標準原価計算会計とは,損益分岐点を与える標準原価計算の下での限界利益図(SC限界利益図)の作図法を含み,投入原価の測定基準として標準原価計算を含む全部原価会計を採用している或る会社とその各事業部門のP/Lがコンピュータ計算によって得られているものであり,それら損益計算書(P/L)に対するSC限界利益図の作図法とは,次のステップからなるものである。
【0085】
その前提として,次のような記号が定義されている。
X=売上高,D
X=製造直接費(実際原価,変動費),C=製造間接費(実際原価,固定費),G=一般管理費(実際原価,固定費), A
CX=当期売上製品に配賦された製造間接費配賦額,A
CY=当期製造品(前期繰越棚卸資産を除き,次期繰越棚卸資産を含む)に配賦された製造間接費配賦額,η=純繰越製造間接費配賦額=A
CX−A
CY,Q
M=管理総利益=X−D
X−A
CX,π
O =財務会計で定義する売上営業利益,F=管理固定費=C+η+G,V
S=標準原価計算・限界利益=Q
M+A
CX
そして,原点を(0,0)(点Oとする)とし,水平軸を売上高,鉛直軸を原価及び利益とする平面座標を設けて,点Aを(X,0)とし,点B’を(X,V
S)とし,線分AB’と線分OB’を描き,さらにηを固定費として扱い,点Eを(0,F) とし,点N’を (X,F)とし,水平線分EN’を描き,線分EN’と線分OB’との交点(点H
2’とする)を特定し,その交点H
2’を当該標準原価計算P/Lに対する売上営業利益・損益分岐点と決定し,線分B’N’= π
Oと決定する。
(ロ)全部原価計算としての標準原価計算会計を使用し,月次に売上営業利益管理を実施しつつ,会計期末にP/Lを得る会計事業方法であって,その標準原価計算会計とは,損益分岐点を与える標準原価計算の下での限界利益図(SC限界利益図)の作図法を含み,投入原価の測定基準として標準原価計算を含む全部原価会計を採用している或る会社とその各事業部門のP/Lがコンピュータ計算によって得られているものであり,それら損益計算書(P/L)に対するSC限界利益図の作図法とは,次のステップからなるものである。
【0086】
その前提として,次のような記号が定義されている。
X=売上高,D
X=製造直接費(実際原価,変動費),C=製造間接費(実際原価,固定費),G=一般管理費(実際原価,固定費),A
CX=当期売上製品に配賦された製造間接費配賦額,A
CY=当期製造品(前期繰越棚卸資産を除き,次期繰越棚卸資産を含む)に配賦された製造間接費配賦額,η=純繰越製造間接費配賦額=A
CX−A
CY,Q
M=管理総利益=X−D
X−A
CX,π
O =財務会計で定義する売上営業利益,F=管理固定費=C+η+G,V
S=標準原価計算・限界利益=Q
M+A
CX
そして,原点を(0,0)(点Oとする)とし,水平軸を売上高,鉛直軸を原価及び利益とする平面座標を設けて,点Aを(X,0)とし,点B’を(X,V
S )とし,線分AB’と線分OB’を描き,さらにηを固定費として扱い,点Eを(0,F) とし,点N’を (X,F)とし,水平線分EN’を描き,線分EN’と線分OB’との交点(点H
2’とする)を特定し,その交点H
2’を当該標準原価計算P/Lに対する売上営業利益・損益分岐点と決定し,線分B’N’= π
Oと決定する。
(ハ)(イ)において請求された全部原価計算としての標準原価計算会計を使用する会計事業方法であって,さらにその事業方法とは,コンピュータ情報ネットワークシステムを通じて,複数の管理会計部門関係者に対して既述の図表を開示するための方法からなり,その事業方法とは次のステップからなる。
【0087】
複数の製造直接費部門,複数の製造間接費部門,販売一般管理費部門,営業外損益部門,特別損益部門,および損益集約部門からなる管理会計制度を有し,それらの全ての会計部門はコンピュータ情報ネットワークシステムによって結ばれており,当該標準原価計算を採用する或る会社に対して,その方法を適用するものであり,その1会社当たりのP/Lを,(イ)におけるSC限界利益図によって表された損益分岐点図に変換し,会計データをこれらの管理会計部門からコンピュータ情報ネットワークを通して,或るサーバーに送り,損益集計部門が計算に必要な会計データをそのサーバーより取り出し,又経営に必要な他のデータを加えて,前段で得られるSC限界利益図,又はそれに加えて45度線損益分岐点図に変換して,それらの図表をサーバーに蓄蔵し,コンピュータ情報ネットワークを通して,各管理会計部門関係者にそれらの図表を提供し,コンピュータ情報ネットワークを使用して,会社関係者に図表情報を開示する。
(ニ)(イ)における全部原価計算としての標準原価計算会計についての或る事業方法であって,その事業方法は,コンピュータ情報ネットワークを通じて,既述の利益図が伝達され合っているその会社とその会社のための会計サービス提供者で構成され,さらに,その事業方法は,次のステップからなる。
【0088】
会社が会計データをコンピュータ情報ネットワークを通じて,会計サービス提供者に送り,会計サービス提供者は,会計データを既述のSC限界利益図や管理総利益図に変換し,逆の方向で,会計サービス提供者は,これらの利益図を含む会計情報を会社に送り返す。