【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、ペミロラストナトリウム塩の半水和物形(以下に、「本発明の化合物」と呼ばれる)が提供される。本発明の化合物は、別の場合には「ペミロラストナトリウム半水和物」と呼ばれることがある。
【0017】
ペミロラストナトリウム塩、ならびに/あるいはペミロラスト1モル当たり少なくとも約0.3モル、好ましくは少なくとも約0.35モル、より好ましくは少なくとも約0.4モル、および/または約0.7モル以下、好ましくは約0.65モル以下、より好ましくは約0.6モル以下の水(約0.5モルの水など)をこのような水が密接に結合していようと緩く結合していようと(すなわち、結晶水またはその他の形)含有する本発明の化合物もさらに提供される。
【0018】
本発明者らは、本発明の化合物を自然状態において実質的に結晶性である形態で容易に得ることができることを見出した。
【0019】
結晶化度が約98%を超える、例えば約95%を超える形態の本発明の化合物を生成することが可能であるが、「実質的に結晶性」について、本発明者らは、結晶化度が約60%を超える、好ましくは約75%を超える、より好ましくは約80%を超える(約90%など)形態を含める。結晶化度(%)は、粉末X線回折(PXRD)を用いて当業者が決定することができる。固体NMR法、FT-IR法、ラマン分光法、示差走査熱量測定法(DSC)、マイクロカロリメトリー法、および真密度の算出など、他の技法も使用することができる。
【0020】
好ましい本発明の化合物は、2θ値(単位:度)およそ(すなわち、約またはほぼ)26.6の特有の結晶性ピーク(
図1/表2において、およそ26.5である)を含み、好ましくは2θ値(単位:度)およそ(すなわち、約またはほぼ)25.3の別の強い結晶性ピーク(
図1/表2において、およそ25.2である)も含む粉末X線回折パターンで特徴付けることができる。より好ましくは、本発明の化合物は、2θ値(単位:度)およそ(すなわち、約またはほぼ)13.0(
図1/表2において、およそ12.9)、15.3(
図1/表2において、およそ15.2)、18.2(
図1/表2において、およそ18.1)および/または28.4(
図1/表2において、およそ28.3)の追加の強い結晶性ピークを含み; より好ましくは、2θ値(単位:度)およそ(すなわち、約またはほぼ)16.8(
図1/表2において、およそ16.7)、19.2(
図1/表2において、およそ19.1)、および/または27.0(
図1/表2において、およそ26.9)の別の強い結晶性ピークを含み; より好ましくは、2θ値(単位:度)およそ(すなわち、約またはほぼ)14.9および/または29.5の別の強い結晶性ピークを含む、粉末X線回折パターンで特徴付けることができる。
【0021】
好ましい本発明の化合物は、本明細書に添付されている
図5(および/または
図1)に示され、かつ/または下記の表4(および/または表2)にまとめられているものに本質的に一致している粉末X線回折パターンで特徴付けることもできる。当業者は、ペミロラストナトリウム半水和物の形態が他の粉末X線回折パターンと「本質的に」同じ粉末X線回折パターンを示すことをそれぞれのパターン(すなわち、試料の好ましい配向や各機器の設定(例えば、装置のタイプ、標準化、および/または較正)などの実験誤差を考慮して、それぞれのピーク間隔)から同じ結晶形が形成されていること(それぞれ
図5および表4で特徴付けられる形態と
図1および表2で特徴付けられる形態との間ではよくあることである)がその当業者に明らかであったときに理解するであろう。したがって、本明細書で指定されているd値の実験誤差の限界は、最後の小数位で±2ぐらいの範囲とすることができる。
【0022】
本発明の化合物は、好ましくは実質的に結晶学的に純粋である。「実質的に結晶学的に純粋」によって、本発明者らは、PXRD測定によって判断できる範囲で、ペミロラストナトリウムの他の結晶形を約5%未満、より好ましくは約3%未満、特に約1%未満しか含有しないペミロラストナトリウム半水和物の結晶形を含める(半水和物の形それともその他の形かどうか、このような他の結晶形に由来するPXRDピークの存在によって判断される)。
【0023】
本発明者らは、本発明の化合物が、米国特許第4,122,274号に記載されているように調製されたものを含む、ペミロラストナトリウム塩の他の形態と比べると、驚くほど改善された物理的および/または化学的安定性を有することを見出した。
【0024】
本明細書に定義する「安定な」という用語は、化学的安定性および固体状態安定性を包含する。
【0025】
「化学的安定性」によって、本発明者らは、化合物が、単独の固体形、または薬学的に許容される担体、希釈剤、もしくは助剤と混合して提供され得る固体製剤の形で、標準貯蔵条件下で、化学的崩壊または分解をほとんど伴うことなく貯蔵できることを含める。
【0026】
「固体状態安定性」によって、本発明者らは、化合物が、単独の固体形、または薬学的に許容される担体、希釈剤、もしくは助剤と混合して提供され得る固体製剤の形で、標準貯蔵条件下で、固体状態変態(例えば、結晶化、再結晶、結晶性損失(loss of crystallinity)、固体状態相転移、水和、脱水、溶媒和、または脱溶媒和)をほとんど伴うことなく貯蔵できることを含める。
【0027】
「標準貯蔵条件」の例としては、長期間(すなわち、6か月以上)にわたる、温度-80〜+50℃(好ましくは0〜40℃、より好ましくは15〜30℃などの周囲温度)、圧力0.1〜2バール(好ましくは大気圧)、および/または460ルクスのUV/可視光への曝露が挙げられる。このような条件下では、本発明の化合物は、適宜に化学的崩壊/分解または固体状態変態を約15%未満、より好ましくは約10%未満、特に約5%未満しか生じないことがわかり得る。温度および圧力の上記の上限および下限は、標準貯蔵条件の両端点を表すものであり、これら端点のある種の組合せ(例えば、温度50℃と圧力0.1バール)は通常の貯蔵時にはないことを当業者は理解するであろう。
【0028】
「標準貯蔵条件」という用語は、相対湿度5〜95%(好ましくは10〜60%)も包含することができる。しかし、本発明によるいくつかの結晶形の場合、水和および/または脱水による立体配座または結晶構造の変化が、標準温度/圧力における相対湿度の特定の端点への長期曝露の結果として生じる可能性がある。
【0029】
本発明者らは、有利にはペミロラストナトリウム塩の少なくとも部分溶解および/または懸濁に続いて結晶化を経て、本発明の化合物を得ることが可能であることを見出した。
【0030】
この点に関して、有利にはペミロラストとナトリウム含有塩基を反応させ、続いて適切な溶媒系から結晶化を行うことによって、本発明の化合物を得ることができる。前記結晶化に先立って、ペミロラストナトリウムを単離することができる。
【0031】
ナトリウム含有塩基は、ペミロラスト分子のテトラゾール部分からプロトンを除去するのに十分な塩基性である必要がある。したがって、好ましい塩基としては、水酸化ナトリウム、ならびに水素化ナトリウム、ナトリウムアミドおよびナトリウムアルコキシドが挙げられる。記載され得るナトリウムアルコキシドとしては、ナトリウムのC
1〜6アルコキシド、具体的にはC
1〜4アルコキシド、例えばC
1〜3アルコキシド、例えばナトリウムエトキシドまたは例えばナトリウムメトキシドが挙げられる。
【0032】
本発明の化合物の適切な溶媒系からの結晶化は、ペミロラストナトリウム塩を含む溶媒系において過飽和を(例えば、冷却、溶媒蒸発、および/または好適な貧溶媒の添加により)達成することによって実現することができる。結晶化は、ナトリウム塩を加えて、溶液のイオン強度を高めること(NaClまたはNaSO
4など; いわゆる「塩析」)により物質の溶解性を低下させ、かつ/または種結晶を過飽和溶液に加えること(一度利用可能)によって行うこともできる。
【0033】
溶媒系としては、酢酸アルキル(例えば、酢酸エチル、酢酸iso-プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸直鎖状または分枝状C
1〜6アルキル)、低級(例えば、直鎖状または分枝状C
1〜6、好ましくはC
1〜4)アルキルアルコール(例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール)、脂肪族および芳香族炭化水素(例えば、iso-オクタン、n-ヘプタン、およびトルエン)、ジアルキルケトン(例えば、メチルエチルケトン、アセトン、およびメチルiso-ブチルケトン)、ジアルキルエーテル(例えば、ジ-iso-プロピルエーテルおよびtert-ブチルメチルエーテル)、環状エーテル(例えば、テトラヒドロフランおよびジオキサン)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの1つまたは複数の有機溶媒を挙げることができる。上記溶媒のうちのいずれかの混合物を使用することができる。有機溶媒は水を含有していてもよい。
【0034】
結晶形が異なれば、所与の温度での有機溶媒における溶解性が異なることがある。この点に関して、上記または他の溶媒を「貧溶媒」(すなわち、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールなど、本発明の化合物が難溶性であるが、本発明の化合物がより可溶性である別の溶媒(水など)と混和可能である溶媒)として使用することができ、したがって結晶化プロセスを助けることができる。
【0035】
特に好適な溶媒としては、少量の水と混合することができる低級アルキルアルコール(例えば、イソプロパノールなどのC
1〜4アルコール、好ましくはメタノール、またはより好ましくはエタノール)が挙げられる。
【0036】
特に、本発明者らは、有機溶媒(例えば、エタノールなどの低級アルキルアルコール)の存在下、さらに約12%以下(w/w、有機溶媒の割合として)、特に約11%以下、特に約10%以下(例えば、約8%未満、具体的には約5%未満、例えば約3%未満)の水の存在下、ペミロラストナトリウムの部分溶解(平衡および/またはスラリー形成とも呼ばれる)に続いて結晶化を経由して、本発明の化合物を得ることができることを見出した。このような水は、結晶化混合物に加えてもよく、あるいは有機溶媒または結晶化させる対象のペミロラストナトリウムのうちの一方または両方にすでに存在してもよい。この結晶化は、半水和物を形成するためのいくらかの水を系中に存在させる必要があるので、完全に無水の条件下で行うことはできないことを当業者は理解するであろう。部分溶解は、(例えば、飽和溶液を生成するための)完全溶解ではなく、したがってこのプロセスは、標準再結晶を含まないことも、当業者は理解するであろう。このプロセスは、約75℃未満、具体的には約72℃、例えば約70℃の温度で実施されることも好ましい。
【0037】
本発明者らは、本発明の化合物を下記によって得ることができることも見出した。
(a) 約70℃超、例えば約72℃、具体的には約75℃、例えば約80℃以上の水性溶媒(すなわち、純水など、少なくとも約95%(w/w)の水を含む)におけるペミロラストナトリウムの部分溶解(平衡および/またはスラリー形成)に続いて、結晶化。このプロセスは、再結晶ではなく、好ましくは上記の温度で濾過して、生成された結晶を単離することを含む; および
(b) 水性溶媒(すなわち、純水など、少なくとも約95%(w/w)の水を含む)におけるペミロラストナトリウムの完全(例えば、少なくとも約95%)溶解と、その後に続く過剰量の貧溶媒(例えば、エタノール)の添加。このプロセスは、好ましくは高温(例えば、およそ溶媒の沸点)における貧溶媒の添加を含む。エタノールの場合、これは、約75℃など、約70℃(例えば、約72℃)〜約80℃であり、結晶の単離前に、より低い温度(例えば、約20℃などの室温)に冷却する。
【0038】
結晶化させる対象の化合物の溶液(および/または部分溶液)中の濃度、および使用される溶媒系は、結晶化温度および結晶化時間に影響を及ぼす可能性があることを当業者は理解するであろう。
【0039】
当業者によって理解され得るように、得られる結晶形は、結晶化プロセスの動力学と熱力学とに依存する。特定の熱力学条件下(溶媒系、温度、圧力、および本発明の化合物の濃度)で、ある結晶形は、別の結晶形(または、実際には他のいかなる結晶形)より安定であり得る。しかし、他の結晶形が、比較して相対的に低い熱力学的安定性を有することができると、動力学的に好まれる。したがって、さらに、時間、不純物プロファイル、撹拌、種結晶の存在などの動力学的因子も、どの形態が出現するかに影響を及ぼすことがある。したがって、ペミロラストナトリウムの半水和物、および実際には(適切な場合は)ペミロラストナトリウム塩の半水和物形の異なる結晶形を得るために、本明細書に述べられる手順を当業者が適宜適応させることができる。
【0040】
本明細書に記載される結晶形が他の結晶形の非存在下で調製されるようにするために、他の結晶形の核および/または種結晶の非存在下で、所望の結晶形の核および/または種結晶を加えることによって、結晶化を実施することができる。
【0041】
さらに、乾燥温度および乾燥時間は、本発明の化合物の固体状態特性および/または固体状態の形態に影響を及ぼすことがある。例えば、脱水は、低湿度および/または高温および/または減圧で行われることがある。例えば、結晶性半水和物が生成した後、臨界湿度レベルが存在し得る。そのレベル未満で、乾燥が行われることがあり、それによって、結晶水が失われ、無水物への少なくとも部分的な固体状態変態が起こり得る。
【0042】
これにも関わらず、例えば本明細書の以下に記載されるペミロラストナトリウムの高水和物(例えば、七水和物)を脱水することによって、本発明の化合物を生成することもできる。
【0043】
本発明の化合物の調製およびキャラクタリゼーションを本明細書の以下に記載する。本発明の化合物の様々な結晶形のキャラクタリゼーションは、例えば本明細書の以下に記載される粉末X線回折(PXRD)法を用いて容易に行うことができる。
【0044】
本発明の化合物は、当業者に周知である技法、例えばデカンテーション、濾過および/または遠心分離を行って単離することができる。
【0045】
本発明者らは、本明細書に記載される結晶化プロセスを使用することによって、化学的純度の高い本発明の化合物を生成することが可能であることを見出した。
【0046】
本発明の化合物が本明細書に記載されたとおりに結晶化されると、得られた化合物は、ペミロラストの他の塩、および/またはペミロラストナトリウム塩の他の形態に比べて、本明細書の以上に記載された改善された化学的および固体状態安定性、ならびに改善された溶解性および吸湿性プロファイルを有する形態をとる。
【0047】
(医薬品製剤および医学的使用)
本発明の化合物は、薬理活性を有しているので有用である。したがって、これらは、医薬品として示される。
【0048】
特に、本発明の化合物は、炎症性病態の治療において有用である。
【0049】
炎症性病態は、典型的には、宿主にとって有益であるより有害である効果をもたらす、免疫防御機構の活性化で特徴付けられる。このような病態は、一般に様々な程度の組織の発赤もしくは充血、腫脹、高熱、疼痛、そう痒、細胞の死および組織の破壊、細胞増殖、ならびに/または機能喪失に伴う。記載され得る炎症性病態としては、動脈炎、糖尿病(1型糖尿病、および好ましくは2型糖尿病を含む)、肥満、メタボリックシンドローム、子宮内膜症、アレルギー(アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻炎を含む)、強直性脊椎炎、喘息、アトピー性皮膚炎、ざ瘡、皮膚熱傷、酒さ、脂漏性皮膚炎、皮膚潰瘍、慢性閉塞性肺疾患、接触性皮膚炎、膀胱炎、痛風性関節炎、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)、多発性硬化症、変形性関節症、膵炎、前立腺炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、腱炎、滑液包炎、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、蕁麻疹、血管炎、糖尿病性血管合併症、偏頭痛、アテローム性動脈硬化症およびそれに伴う心血管障害が挙げられる。記載され得る病態としては、アトピー性皮膚炎、子宮内膜症、偏頭痛、喘息、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、さらに詳細にはアテローム性動脈硬化症およびそれに伴う心血管障害が挙げられる。記載され得る他の病態としては、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病および/または糖尿病性血管合併症が挙げられる。
【0050】
「アテローム性動脈硬化症」という用語は、当業者によって、血管、特に動脈壁におけるコレステロール蓄積、泡沫細胞形成、炎症および細胞増殖で特徴付けられる任意の疾患を包含するものと理解される。アテローム性動脈硬化症「に伴う」心血管障害は、大動脈瘤(腹部大動脈瘤および/またはアテローム動脈硬化性大動脈瘤を含む)、動脈硬化症、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患(例えば、狭心症、心筋梗塞、心臓発作など)、冠疾患(心臓病および心疾患を含む、虚血性心疾患など)を包含し、プラークもしくはアテローム破綻および/または不安定性、血管もしくは動脈疾患、虚血性疾患/虚血、ならびに脳卒中(脳血管障害および一過性脳虚血発作を含む)も包含することができる。
【0051】
記載され得る患者群としては、急性冠症候群患者が挙げられる。「急性冠症候群」という用語は、胸痛および/または心電図(ECG)異常に伴うことが多いがこれに限らない任意の心筋虚血の異常状態(abnormal myocardial ischaemic state)を包含すると、当業者によって理解されよう。このような症候群は、心筋梗塞(心臓発作)の最も一般的な症状である。この用語は、「安定狭心症」(すなわち、労作時に発症し、安静時に消失する狭心症)とは対照的に「不安定狭心症」という用語とおおむね同義であることを当業者は理解するであろう。発生するペースがますます悪化する労作性狭心症(「漸増性狭心症」)は同様に、当業者によって「不安定」の定義の範囲内であるとみなされるであろう。
【0052】
本発明の別の態様によれば、炎症性障害、特にアテローム性動脈硬化症および/またはそれに伴う心血管障害、具体的には大動脈瘤の治療方法であって、このような治療を必要とする患者への本発明の化合物の投与を含む方法が提供される。
【0053】
記載され得る他の炎症性病態としては、文献中で様々に「低グレード全身性炎症」、「無症候性全身性炎症」、「慢性低グレード炎症」、「持続性低グレード炎症」、または文脈に応じて、単に「低グレード炎症」もしくは「全身性炎症」とも呼ばれる病態を包含するように理解される全身性低グレード炎症(SLGI)が挙げられる(例えば、Marzら、Circulation、110(2004年)およびNicklasら、CMAJ、172、1199(2005年)を参照のこと)。他の炎症マーカー(例えば、血中サイトカイン、接着分子、および白血球)がSLGIを示すことが知られており、本発明によれば測定および低減され得るが、SLGIは常に、とりわけ血漿C反応性タンパク質(CRP)値を特徴とし、その値は(例えば、他の点では外見上健常でかつ/または非アレルギー/非喘息哺乳類対象において)約10mg/L未満であるが、約7mg/L超、例えば約5mg/L超、好ましくは約3mg/L超、より好ましくは約2mg/L超、特に約1mg/L超、さらに特に約0.9mg/L超である。このような血漿CRP値は、薬理学的に有効量の本発明の化合物を投与することによって低減することができる。
【0054】
したがって、患者における血漿CRP値を(本明細書の以上に記載される値のいずれか1つの値未満に)低減するための本発明の化合物、および本発明の化合物を患者に投与することを含む、患者における血漿CRP値を(本明細書の以上に記載される値のいずれか1つの値未満に)低減する方法もさらに提供される。
【0055】
SLGIは、例えばメタボリックシンドローム、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、インスリン抵抗性症候群、肥満、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、腹部大動脈瘤、および他の心血管イベント)、および一部の癌(例えば、大腸癌)に関連していることが知られている。CRP値の僅かな上昇が、その他の点では外見上健常な対象における疾患の唯一の徴候にもなり得る。
【0056】
CRPの僅かな上昇によって、様々な医学的病態における望ましくない転帰もしくは合併症、または様々な疾患において死に至る可能性も予測することができる。特に、CRPの上昇によって、心血管病的状態および死亡、ならびに/または2型糖尿病の発症を予測することができ、それらの両方のリスクは、本発明によれば、本発明の化合物を使用することによって低減することができる。
【0057】
したがって、患者において心血管病的状態および死亡のリスクを低減(すなわち、予防)し、かつ/または2型糖尿病の発症を低減(すなわち、予防)する方法が提供され、その方法は:
(a) その患者における血漿CRP値を測定すること;
(b) その血漿CRP値が、本明細書の以上に記載される値の1つの値を超える、特に約0.9mg/Lを超えるかどうか決定すること; および
(c) 超えている場合、本発明の化合物をその患者にしばらく適切な投与量で投与して、CRP値を例えば本明細書の以上に記載される関連性のある値まで低減すること
を含む。
【0058】
アメリカ心臓協会(American Heart Association(AHA))および米国疾病管理予防センター(CDC)は、CRPをリスクアセスメントツールとして評価し、1mg/L未満、1〜3mg/L、および3mg/L超の切点を使用して、それぞれ心血管病的状態または死亡を発症する相対リスクのより小さい、平均的な、および大きい対象を特定することを提案した。0.9mg/Lを超える血漿CRPが、心血管イベントのリスク増大の切点としても使用されている(Ridkerら、N. Engl. J. Med., 352, 20(2005年))。
【0059】
「病的状態」という用語は、一般に任意の病的状態(diseased state)、障害(disability)、病気(illness)、および/または健康不良(poor health)を包含すると、当業者によって理解されよう。したがって、「心血管」病的状態は、潜在的な(underlying)心血管合併症の結果として示されるような状態を包含するが、その心血管合併症は、それ自体が肥満、メタボリックシンドローム、(例えば、2型)糖尿病など本明細書の以上に記載される他の病態のうちの1つまたは複数の結果であり得る(下記参照)。
【0060】
2型糖尿病は、末梢組織のインスリンに対する応答性低下(インスリン抵抗性)、ならびにインスリン抵抗性および高血糖に直面してインスリン分泌不足として顕在化するβ細胞機能不全で特徴付けられる障害である(例えば、RobbinsおよびCotran、Pathologic Basis of Disease、第8版、Saunders Elsevierを参照のこと)。2型糖尿病の症状としては、慢性疲労、過剰の尿生成、過度の口渇、および水分摂取の増加が挙げられる。糖尿病の現行の世界保健機関(World Health Organisation)診断基準は、(a) 空腹時血漿ブドウ糖値:少なくとも7.0mmol/L、または(b) 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)での血漿グルコース値:少なくとも11.1mmol/Lである。「2型糖尿病の発症を低減する」によって、本発明者らは、先在病態の進展(例えば、悪化)を予防するためのSLGIの治療に加えて、2型糖尿病の発症の予防を含める。
【0061】
本発明者らは、CRPが0.9mg/Lを超える対象において、ペミロラストが血漿トリプターゼ値を同時に低減することはなく、さらに対象において、血漿CRP値と肥満細胞トリプターゼ値の間に相互関係がないことも見出した。
【0062】
したがって、本明細書に記載されるSLGIと特に関係がある使用および方法は、非アレルギー患者におけるまたは非アレルギー患者に関するものであることが好ましい。「非アレルギー」によって、本発明者らは、免疫系のアトピー性障害の外に現れる徴候を(このような治療を受ける時点では)患者が示さないことを意味する。この点に関して、このような患者は、IgEを介した肥満細胞および/または好塩基球の活性化を含む免疫学的応答で特徴付けられるアレルゲンに対する過敏症の徴候を示さないことがある。非アレルギー患者であるかどうかの決定は、例えば既知のアレルゲンに対する応答について(例えば、皮膚を)検査し、またはアレルゲン特異的IgEの有無およびレベルについて血液を分析することによってルーチンで行うことができる。
【0063】
本明細書に記載されるSLGIと特に関係がある使用および方法は、非喘息患者におけるまたは非喘息患者に関するものであることがさらに好ましい。「非喘息」によって、本発明者らは、気管支がその平滑筋細胞の収縮、気道炎症および呼吸困難によって可逆的狭窄を起こしている、両肺の慢性炎症に対する素因の外に現れる徴候を(このような治療を受ける時点では)患者が示さないことを意味する。喘息は、アレルギー性でも、非アレルギー性でもよい。
【0064】
SLGI治療の好ましい使用および方法としては、患者が喫煙者または元喫煙者であり、その対象者は糖尿病および/もしくはメタボリックシンドロームを患い、または肥満度指数が25を超える、使用および方法が挙げられる。
【0065】
記載され得る他の炎症性病態としては、うっ血性心不全、心房細動、高血圧(本態性肺動脈高血圧および/または門脈高圧を含む); 照射、手術、および/または外傷の結果(炎症、線維症、瘢痕、および癒着を含む); 炎症によって引き起こされた線維症、瘢痕、および/または癒着; 癌、骨粗鬆症、サルコイドーシス、過敏性腸症候群、網膜症(糖尿病網膜症を含む)、加齢黄斑変性、腎症(糖尿病性腎症を含む)、糸球体腎炎(IgA腎炎/腎症を含む)が挙げられる。
【0066】
誤解を避けるために、本発明の文脈においては、「治療(treatment)」「療法(therapy)」および「治療法(therapy method)」という用語は、治療的または姑息的処置を必要とする患者の治療的または姑息的処置、ならびにアテローム性動脈硬化症やそれに伴う心血管障害などの炎症性障害の影響を受け易い患者の予防的処置および/または診断を包含する。
【0067】
「患者」は、哺乳類(ヒトを含む)患者を包含する。
【0068】
本発明の化合物は、薬学的に許容される剤形の化合物を含む製剤の形で、好ましくは、局所(locally)投与もしくは全身投与、例えば経口投与、静脈内もしくは動脈内投与(血管内または他の血管周囲装置/剤形(例えば、ステント)によることを含む)、筋肉内投与、皮膚適用、皮下投与、経粘膜(例えば、舌下または頬側)投与、直腸投与、経皮投与、経鼻投与、経肺(例えば、気管または気管支)投与、局所(topically)投与され、または他の何らかの非経口経路で投与される。好ましい送達様式としては、経口(特に)、静脈内、皮膚、または皮下、経鼻、筋肉内、または腹腔内送達が挙げられる。
【0069】
本発明の化合物は一般に、所期の投与経路および標準的製剤慣行を十分に考慮して選択され得る薬学的に許容される助剤、希釈剤、または担体と混合して1つまたは複数の医薬製剤の形で投与されることになる。このような薬学的に許容される担体は、好ましくは無菌、純粋、非発熱性であり、活性化合物に対して化学的に不活性であり、使用条件下で有害な副作用または毒性を示すことがない。このような薬学的に許容される担体は、本発明の化合物の即放性製剤または放出調節製剤をもたらすこともできる。
【0070】
本発明の化合物は、好適な担体、希釈剤、または助剤と混合する前にさらに処理することができる。例えば、結晶形をミルまたはグラインダーでより小さい粒子に粉砕することができる。
【0071】
好適な医薬製剤は市販のものとすることができ、または他には、文献、例えばRemington The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania(1995年)ならびにMartindale - The Complete Drug Reference(第35版)およびその中の引用文献に記載されており、それらの文献すべての中の関連する開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。別の場合では、好適な製剤の調製は、当業者が工夫を凝らすことなくルーチンの技法を用いて実現することができる。
【0072】
製剤中の本発明の化合物の量は、治療対象の病態の重症度および患者、ならびに使用される化合物に依存することになるが、当業者が工夫を凝らすことなく決定することができる。
【0073】
治療対象の障害および患者、ならびに投与経路に応じて、本発明の化合物を、様々な治療上有効量で、それを必要とする患者に投与することができる。
【0074】
しかし、本発明の文脈において、哺乳類、特にヒトに投与される量は、哺乳類における治療効果を合理的な時間枠にわたってもたらすのに十分な量とすべきである。的確な投与量および組成物ならびに最適な送達レジメンの選択は、とりわけ、製剤の薬理学的特性、治療対象の病態の性質および重症度、レシピエントの健康状態および精神的鋭敏さ(mental acuity)、ならびに治療対象の患者の年齢、状態、体重、性別、および応答、疾患の病期/重症度、ならびに患者間の遺伝子の差の影響も受けることになることを当業者は認識するであろう。
【0075】
本発明の化合物は、継続投与または間欠投与することができる(例えば、ボーラス注射による投与)。用量は、投与のタイミングおよび頻度によっても決定され得る。
【0076】
好適な投与量としては、Martindale-The Complete Drug Reference(第35版)およびその中の引用文献などの医学文献に記載されているものが挙げられ、それらの文献すべての中の関連する開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本発明の化合物の(遊離酸として算出された)好適な投与量は、約0.01mg/体重kg〜約1,000mg/体重kgの範囲である。より好ましい範囲は、経口投与の場合、1日ごとに約0.1mg/kg〜約20mg/kgである。
【0077】
しかし、ペミロラストの好適な投与量は当業者に周知である。例えば、(遊離酸として算出された)経口投与量は、1日当たり約0.5mg〜約900mgなど、約0.1mg〜約1.2gの範囲とすることができる。例えば、1日量の範囲の好適な下限は、約1mg、具体的には約2mg、例えば約5mg、具体的には約10mg、より好ましくは約20mgであり、1日量の範囲の好適な上限は、約200mg、例えば約100mg、具体的には約80mg、より好ましくは約60mgである。したがって、経口1日量は、約2mg〜約60(例えば、約50)mg、具体的には約5mg〜約45(例えば、約40)mg、好ましくは約10mg〜約35(例えば約30)mgとすることができる。好適な個々の投与量は、1日当たり約10mg〜約100mg、具体的には約20mg〜約90mg、例えば約30mg〜約80mgとすることができる。好ましい投与量は、1日約40mg〜約80mgの範囲、特に約60mgである。投与量は、1日1回の投与に基づくものとすることができ、または1日2回もしくは3回(好ましくは、2回)の投与量に(例えば、等量)分割し得ることを当業者は理解するであろう。
【0078】
いずれにしても、医師または他の当業者は、個々の患者に最も適した実際の用量をルーチンで決定することができるであろう。上記の用量は、平均的な場合の例である。もちろん、より高いまたはより低い用量範囲が相応である個々の例が存在することがあり、このような場合も、本発明の範囲内である。
【0079】
本発明の化合物は、本明細書に定義する炎症性障害の治療に有用である1つまたは複数の活性成分と組み合わせることもできる。
【0080】
したがって、本発明の別の態様によれば、
(a) 本発明の化合物; および
(b) 炎症性障害の治療に有用である1つもしくは複数の活性成分、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物
を含む配合剤も提供される。
【0081】
このような配合剤は、本発明の化合物を炎症性障害の治療に有用である活性成分と併用投与することを実現し、したがって別個の製剤(それらの製剤の少なくとも1つが本発明の化合物を含み、少なくとも1つがもう一方の活性成分を含む)として提供することができ、あるいは複合成分製剤として提供する(すなわち、製剤化する)ことができる(すなわち、本発明の化合物および別の活性成分を含む単一の製剤として提供することができる)。
【0082】
したがって、
(1) 本発明の化合物; 炎症性障害の治療に有用である活性成分、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物; および薬学的に許容される助剤、希釈剤、または担体を含む医薬製剤(その製剤は、以下に「複合成分製剤」と呼ばれる); ならびに
(2)
成分(A) 本発明の化合物を薬学的に許容される助剤、希釈剤、または担体と混合して含む医薬製剤; および
成分(B) 炎症性障害の治療に有用である活性成分、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を薬学的に許容される助剤、希釈剤、または担体と混合して含む医薬製剤を含み、それらの成分(A)および(B)はそれぞれ、他方と併用投与するのに適した形態で提供されている
パーツキットをさらに提供する。
【0083】
本発明の別の態様によれば、上記で定義されたパーツキットを作製する方法が提供され、その方法は、上記で定義された成分(A)を上記で定義された成分(B)と結合させ、したがって2つの成分を互いに併用投与するのに適したものとする工程を含む。
【0084】
2つの成分を互いに「結合」させることについて、本発明者らは、パーツキットの成分(A)および(B)が、
(i) 別個の製剤として(すなわち、互いに関わりなく)提供され得るものであり、その後一緒にまとめられ、併用療法において互いに併用され; または
(ii) 併用療法において互いに併用されるための「配合パック」の別個の成分として一緒に包装および提供され得るものであることを含める。
【0085】
したがって、
(I) 本明細書に定義する成分(A)および(B)の一方と、
(II) その成分を2つの成分の他方と併用するための指示書
を一緒に含むパーツキットもさらに提供される。
【0086】
本明細書に記載されるパーツキットは、反復投与を実現するために、適切な量/投与量の本発明の化合物を含む1つを超える製剤、および/または適切な量/投与量のもう一方の活性成分/塩/溶媒和物を含む1つを超える製剤を含んでもよい。1つを超える製剤(どちらかの活性化合物を含む)が存在する場合、このような製剤は、どちらかの化合物の投与量、化学組成、および/または物理的形態の点から同じでもよく、または異なってもよい。
【0087】
本明細書に記載されるパーツキットに関して、「併用投与」によって、本発明者らは、本発明の化合物および他の活性成分(またはその塩/溶媒和物)を含む各製剤を、関連する病態の治療の過程において順次に、別々に、かつ/または同時に投与することを含める。
【0088】
したがって、本発明による配合剤に関して、「併用投与」という用語は、配合剤の2成分(本発明の化合物および他の活性成分)を一緒にまたは時間的に十分に接近して投与(場合によっては、反復投与)して、本発明の化合物を含む製剤またはもう一方の活性成分を含む製剤が、同じ治療の過程において他方の成分の非存在下に単独で投与(場合によっては、反復投与)される場合より高い薬効が、関連する病態の治療の過程において患者にもたらされることを包含する。配合剤が特定の病態についてより高い薬効を治療の過程においてもたらすかどうかの決定は、治療または予防対象の病態に依存するが、当業者がルーチンで実現することができる。
【0089】
さらに、本発明によるパーツキットに関連して、「併用」という用語は、2つの製剤のうちのどちらかが、もう一方の成分を投与する前、後、および/または同時に投与(場合によっては、反復投与)され得ることを包含する。本文脈で使用される場合、「同時に投与(administered simultaneously)」および「同時に投与(administered at the same time as)」という用語は、個々の投与量の本発明の化合物および他方の活性成分が、互いに48時間(例えば、24時間)以内に投与されることを包含する。
【0090】
本明細書に定義される炎症性障害の治療に有用である活性成分としては、トロンボキサンA2アンタゴニスト、P2Y
12アンタゴニスト、PPARγアゴニスト、アンジオテンシンIIの生成および/または作用を抑制する化合物、他の血小板凝集抑制薬、ならびにより好ましくはスタチンが挙げられる。
【0091】
「トロンボキサンA2アンタゴニスト」という用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験で、(i) トロンボキサンTP受容体の遮断、(ii) 酵素トロンボキサンシンターゼの抑制、または(iii) 血小板シクロオキシゲナーゼ-1の(例えば、選択的)抑制、それによる例えば血小板凝集の抑制のうちの1つまたは複数によって、トロンボキサンA2の効果を実験に基づいて決定することができる程度に抑制することができる化合物であればいずれも包含する。
【0092】
好ましいトロンボキサンA2アンタゴニストとしては、アスピリン/アセチルサリチル酸、より好ましくはエグアレン、特にオザグレル、さらに特にピコタミド、およびテルトロバン、特にセラトロダスト、さらに特にラマトロバンが挙げられる。
【0093】
「P2Y
12アンタゴニスト」という用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験で、ADPの血小板受容体P2Y
12との結合を実験に基づいて決定することができる程度に(例えば、選択的に)抑制し、それによって血小板凝集を抑制することができる化合物であればいずれも包含する。
【0094】
好ましいP2Y
12アンタゴニストとしては、プラスグレル、チカグレロル、特にクロピドグレルが挙げられる。
【0095】
「PPARγ」アゴニストという用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験で、実験に基づいて決定することができる程度にペルオキシソーム増殖剤活性化受容体γと結合し、かつ/またはその機能に影響を及ぼすことができる化合物であればいずれも包含する。
【0096】
したがって、好ましいPPARγアゴニストとしては、リボグリタゾン、ナベグリタザル、バラグリタゾン、またはより好ましくはロシグリタゾン、特にピオグリタゾンを含む、チアゾリジンジオンと総称される化合物が挙げられる。記載され得る他のPPARγアゴニストとしては、チグリタザル(chiglitazar)、エタロシブ、ファルグリタザル、ロベグリタゾン(lobeglitazone)、ネトグリタゾン、ソデルグリタザル、ならびに次の医薬品開発コード(developmental drug code)によって文献に定義されているもの:THR-0921(Theracos Inc.)、またはより好ましくはAVE-0847およびAVE-0897(両方ともSanofi-Aventis)、CLX-0921(Calyx Therapeutics)、CS-7017(Daiichi Sankyo Co Ltd)、DRF-11605(Dr Reddy's Laboratories Ltd)、GFT-505(Genfit SA)
、GSK-376501(GlaxoSmithKline plc)、INT-131(Amgen Inc; InteKrin Therapeutics)、(LBM-642; セボグリタザル; Novartis AG)、ONO-5129(Ono Pharmaceutical Co Ltd)、(PLX-204; インデグリタザル; Plexxikon Inc)、およびSDX-101が挙げられる。
【0097】
「アンジオテンシンIIの生成および/または作用を抑制する化合物」という用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験で、アンジオテンシンIIの生成および/または作用を実験に基づいて決定することができる程度に(例えば、選択的に)抑制することができる化合物であればいずれも包含し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)、およびレニン阻害物質を包含すると理解されよう。
【0098】
「アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害物質」という用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験で、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換を実験に基づいて決定することができる程度に(例えば、選択的に)抑制することができる化合物であればいずれも包含する。
【0099】
記載され得るACE阻害物質としては、アラセプリル、ベナゼプリル、カプトプリル、セロナプリル、シラザプリル、デラプリル、エナラプリル、ホシノプリル、ゲモパトリラト、グリコプリル(glycopril)、イドラプリル、イレパトリル(ilepatril)、イミダプリル、リベンザプリル、リシノプリル、ミクロギニン-FR1、ミキサンプリル、モエキシプリル、モエキシプリラート、モベルチプリル、オマパトリラト、プレンチル(Prentyl)、ペリンドプリル、キナプリル、ラミプリル、サンパトリラット、スピラプリル、シネコル(Synecor)、テモカプリル、トランドラプリル、ウチバプリル、ゾフェノプリルおよびザビシプリラトが挙げられる。より好ましいACE阻害物質としては、ベナゼプリル、シラザプリル、イレパトリル、イミダプリル、モエキシプリル、スピラプリル、テモカプリル、およびゾフェノプリル、より好ましくはホシノプリルおよびトランドラプリル、さらに特にエナラプリル、リシノプリル、およびキナプリル、特にカプトプリル、ペリンドプリル、およびラミプリルが挙げられる。
【0100】
「アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)」は、「アンジオテンシンII AT1受容体アンタゴニスト」という用語とおおむね同義であると当業者が理解するものであり、したがってインビトロおよび/またはインビボ試験で、アンジオテンシンII AT1受容体の活性化を実験に基づいて決定することができる程度に(例えば、選択的に)遮断することができる物質であればいずれも包含する。
【0101】
記載され得るARBとしては、アジルサルタン、アジルサルタンメドキソミル、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、アンジオカイン(angiokine)であるDival、エリサルタン、エリサルタンカリウム(elisartan potassium)、エプロサルタン、エンブサルタン、フィマサルタン(fimasartan)、フォンサルタン(fonsartan)、イルベサルタン、ロサルタン、ミルファサルタン、オルメサルタン、ポミサルタン、プラトサルタン、リピサルタン、サプリサルタン、サララシン、タソサルタン、テルミサルタン、バルサルタン、およびゾラサルタンが挙げられる。より好ましいARBとしては、アジルサルタン、エプロサルタン、フィマサルタン(fimasartan)、およびプラトサルタン、より好ましくはテルミサルタン、さらに特にイルベサルタン、およびオルメサルタン、特にカンデサルタン、ロサルタン、およびバルサルタンが挙げられる。
【0102】
「レニン阻害物質」という用語は、インビトロおよび/またはインビボ試験で、レニン-アンジオテンシン系におけるレニンの機能を実験に基づいて決定することができる程度に(例えば、選択的に)遮断することができる物質であればいずれも包含すると、当業者によって理解されよう。
【0103】
記載され得るレニン阻害物質としては、シクロチアゾマイシン、アリスキレン、シプロキレン、ジテキレン、エナルキレン、レミキレン、テルラキレン、およびザンキレンが挙げられる。好ましいレニン阻害物質としては、アリスキレンが挙げられる。
【0104】
アンジオテンシンIIの生成および/または作用を抑制する化合物としては、次の医薬品開発コードによって文献に定義されているものも挙げられる:100240、606A、A-65317、A-68064、A-74273、A-81282、A-81988、A-82186、AB-47、BIBR-363、BIBS-222、BIBS-39、BILA-2157BS、BL-2040、BMS-180560、BMS-181688、BMS-182657、BMS-183920、BMS-184698、BRL-36378、CGP-38560、CGP-38560a、CGP-42112-A、CGP-42112、CGP-421132-B、CGP-48369、CGP-49870、CGP-55128A、CGP-56346A、CGS-26670、CGS-26582、CGS-27025、CGS-28106、CGS-30440、CHF-1521、CI-996、CL-329167、CL-331049、CL-332877、CP-191166、CP-71362、CV-11194、CV-11974、DMP-581、DMP-811、DU-1777、DuP-167、DuP-532、E-4030、E-4177、EC-33、EK-112、EMD-56133、EMD-58265、EMD-66684、ER-32897、ER-32935、ER-32945、ES-1005、ES-305、ES-
8891、EXP-408、EXP-597、EXP-6803、EXP-7711、EXP-929、EXP-970、FPL-66564、GA-0050、GA-0056、GA-0113、FK-739、FK-906、GR-137977、GR-70982、GW-660511、Hoe-720、ICI-219623、ICI-D-6888、ICI-D-8731、JT-2724、KR-30988、KRH-594、KRI-1314、KT3-866、KW-3433、L-158809、L-158978、L-159093、L-159689、L-159874、L-159894、L-159913、L-161177、L-161290、L-161816、L-162223、L-162234、L-162313、L-162389、L-162393、L-162441、L-162537、L-162620、L-163007、L-163017、L-163579、L-163958、L-363564、L-746072、LCY-018、LR-B-057、LY-285434、LY-301875、LY-315996、MDL-102353、MDL-27088、MDL-27467A、ME-3221、MK-8141、MK-996、PD-123177、PD-123319、PD-132002、PD-134672、PS-433540、RB-106、RS-66252、RU-64276、RU-65868、RWJ-38970、RWJ-46458、RWJ-47639、RXP-407、S-2864、S-5590、SB-203220、SC-50560、SC-51316、SC-51895、SC-52458、SC-54629、SC-565254、Sch-47896、Sch-54470、SK-1080、SKF-107328、SL-910102、SQ-30774、SQ-31844、SQ-33800、SR-43845、TA-606、TH-142177、U-97018、UK-63831、UK-77568、UK-79942、UP-275-22、WAY-121604、WAY-126227、VNP-489、XH-148、XR-510、YM-21095、YM-26365、YM-31472、YM-358、およびZD-7155。
【0105】
記載され得る他の血小板凝集抑制薬としては、アスピリン/アセチルサリチル酸の一酸化窒素供与性誘導体(例えば、NCX-4016、NicOx S.A.)、またはより好ましくはアナグレリド、アルガトロバン、ベラプロスト、カングレロール、シロスタゾール、ジピリダモール、リマプロスト、パログレリル、プロカインアミド、サルポグレラート(例えば、サルポグレラート塩酸塩)、チクロピジン、チロフィバンおよびトリフルサール、ならびに次の医薬品開発コードによって文献に定義されているものが挙げられる:DA-697b(国際公開第2007/032498号を参照のこと; Daiichi Seiyaku Co Ltd)、DG-041(deCODE Genetics Inc)、K-134(CAS RN 189362-06-9)、PL-2200(CAS RN 50-78-2)、PRT-60128(Portola Pharmaceuticals Inc)、SH-529(イロプロスト/β-シクロデキストリンクラスレート; Bayer Schering Pharma AG)、およびYY-280(チクロピジンとEGb-761(タナミン(tanamin); イチョウエキス; Yuyu Inc.)の併用療法)。
【0106】
「スタチン」という用語は、HMG-CoA還元酵素の阻害物質であればいずれも包含し、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、グレンバスタチン、セリバスタチン、プラバスタチン、メバスタチン、ベルバスタチン、ダルバスタチン、およびアトルバスタチンが含まれる。
【0107】
記載され得る他のスタチンとしては、アシテマート、ベンフルオレクス、クレスチン(Clestin)、コレストロン、ジヒドロメビノリン、メグルトール、ラウソノール、および次のコード名の化合物が挙げられる:ATI-16000、BAY-10-2987、BAY-x-2678、BB-476、BIO-002、BIO-003、BIO-2、BMS-180431、CP-83101、DMP-565、FR-901512、GR-95030、HBS-107、KS-01-019、L-659699、L-669262、NR-300、P-882222、PTX-023595、RP 61969、S-2468、SC-32561、sc-45355、SDZ-265859、SQ-33600、U-20685、およびNCX-6550(ニトロプラバスタチン)やNCX-6560(ニトロアトルバスタチン)などのNO-増強性/放出性スタチン。
【0108】
より好ましいスタチンとしては、ピタバスタチン(例えば、Livalo(登録商標)、Pitava(登録商標))、フルバスタチン(例えば、Lescol(登録商標))、シンバスタチン(例えば、Zocor(登録商標)、Lipex(登録商標))、ロバスタチン(例えば、Mevacor(登録商標)、Altocor(登録商標))、ロスバスタチン(例えば、Crestor(登録商標))、プラバスタチン(例えば、Pravachol(登録商標)、Selektine(登録商標)、Lipostat(登録商標))、およびアトルバスタチン(例えば、Lipitor(登録商標)、Torvast(登録商標))が挙げられる。特に好ましいスタチンとしては、ピタバスタチン、より好ましくはシンバスタチン、さらに特にアトルバスタチン、特にロスバスタチンが挙げられる。
【0109】
記載され得る炎症の治療に有用である他の活性成分の薬学的に許容される塩としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。このような塩は、通常の手段、例えば遊離酸または遊離塩基の形の活性成分と1当量または複数当量の適切な酸または塩基の、場合によっては溶媒中または塩が不溶性である媒体中での反応、続いて標準技法(例えば、真空中で凍結乾燥または濾過)を用いた前記溶媒または前記媒体の除去によって生成され得る。塩は、例えば好適なイオン交換樹脂を用いて、塩の形の活性成分の対イオンを別の対イオンと交換することによっても調製され得る。
【0110】
記載され得るピコタミドの塩としては、塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩およびトシル酸塩が挙げられる。記載され得るオザグレル、テルトロバン、エグアレン、およびアスピリンの塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。オザグレルおよびエグアレンの好ましい塩としては、ナトリウム塩が挙げられる。
【0111】
クロピドグレルの好ましい塩としては、重硫酸塩が挙げられるが、記載され得る他の塩および記載され得るチカグレロルの塩としては、塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。記載され得るプラスグレルの好ましい塩としては、塩酸塩が挙げられるが、記載され得る他の塩としては、重硫酸塩、マレイン酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。
【0112】
記載され得るピオグリタゾンの好ましい塩としては、塩酸塩が挙げられるが、記載され得る他の塩としては、重硫酸塩、マレイン酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。記載され得るロシグリタゾンの好ましい塩としては、マレイン酸塩が挙げられるが、記載され得る他の塩としては、塩酸塩、重硫酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。記載され得るリボグリタゾンの塩としては、塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。ナベグリタザルの好ましい塩としては、ナトリウム塩が挙げられるが、記載され得る他の塩としては、リチウム塩およびカリウム塩が挙げられる。記載され得るバラグリタゾンの好ましい塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩が挙げられる。
【0113】
アンジオテンシンIIの生成および/または作用を抑制する化合物の好ましい塩としては、例えば塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、トシル酸塩、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、またはナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。このような塩は、ペリンドプリル、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、イルベサルタン、オルメサルタン、トランドラプリル、テルミサルタン、ベナゼプリル、シラザプリル、モエキシプリル、スピラプリル、エプロサルタン、およびフィマサルタン(fimasartan)を含めて、化合物について、ルーチンの技法を用いて調製され得る。塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、およびトシル酸塩が、ラミプリルやアリスキレンなどの化合物については好ましい。アルカリ土類金属塩、さらに特にアルカリ金属塩が、カンデサルタン、バルサルタン、カプトプリル、ロサルタン、特にホシノプリルなどの化合物については好ましく、それらの好ましい塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、特にナトリウム塩が挙げられる。記載され得るベナゼプリルおよびモエキシプリルの好ましい塩としては、塩酸塩が挙げられるが、記載され得る他の塩としては、重硫酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。記載され得るエプロサルタンの好ましい塩としては、メシル酸塩が挙げられるが、記載され得る他の塩としては、塩酸塩、重硫酸塩、マレイン酸塩、およびトシル酸塩が挙げられる。
【0114】
スタチンの好ましい塩としては、ピタバスタチンカルシウム、フルバスタチンナトリウム、プラバスタチンナトリウム、ロスバスタチンカルシウム、アトルバスタチンカルシウムなどのナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩が挙げられる。
【0115】
炎症の治療に有用である他の活性成分の好適な投与量は、当業者に周知であり、Martindale - The Complete Drug Reference(第35版)およびその中の引用文献などの医学文献中で該当する薬物について列挙されているものが含まれ、それらの文献すべての中の関連する開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
「約」という単語が、本明細書で、例えば量(例えば、値、重量、体積、モル)、温度、結晶化度、崩壊度(degree of degradation)、純度、溶解度、および活性成分の投与量に関連して使用されるときはいつでも、このような変数は近似的なものであり、そういうものとして本明細書に特定される数と±10%、例えば±5%、好ましくは±2%(例えば±1%)異なる可能性があることを理解されたい。
【0117】
本発明の化合物は、取り扱いやすさが改善される形態であり、以前に調製されたペミロラストの形態に比べると改善された化学的および固体状態安定性を有する形態で生成され得るという利点を有する。したがって、化合物は、長期間にわたって貯蔵される場合に安定であり得る。
【0118】
本発明の化合物は、公知および/または市販のペミロラストの形態に比べて改善された溶解性および吸湿性プロファイルも有する。本発明の化合物は、公知および/または市販のペミロラストの形態に比べて改善された味覚プロファイルも有することができる。
【0119】
本発明の化合物は、好収量で、以前に調製されたペミロラストの形態より高純度で、より短時間で、より好都合に、より低コストで調製され得るという利点も有することができる。
【0120】
本発明の化合物は、本明細書の以上に記載される病態の治療において、炎症性障害(アテローム性動脈硬化症およびそれに伴う心血管病態など)またはその他の治療で使用する先行技術において公知の同様な化合物に比べて、医師および/もしくは患者にとってより好都合で、より有効で、より低毒性で、活性範囲がより広く、より強力で、副作用がより少なく、または他の有用な薬理学的特性を有することができるという利点も有することができる。
【0121】
含まれている図面を参照しながら、以下の実施例によって、本発明を説明するが、決して限定するものではない。