【文献】
H.MAKABE et al.,‘Anti-inflammatory sesquiterpenes from Curcuma zedoaria’,Natural Product Research,米国,2006年 6月,Vol.20,No.7,p680-685
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該油性成分が、スクワラン、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、オリーブ油、サフラワー油、ヒマシ油、ゴマ油、コメ胚芽油及び水素添加ホホバ油よりなる群から選択される1種又は2種以上の油性基剤;メドウフォーム油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、モノステアリン酸エチレングリコール、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、ポリブテン及びコハク酸ジエトキシエチルよりなる群から選択される1種又は2種以上のエステル類;ミツロウ、カルナウバロウ及びキャンデリラロウよりなる群から選択される1種又は2種以上のロウ類;セタノール、コレステロール、フィトステロール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びベヘニルアルコールよりなる群から選択される1種又は2種以上のアルコールよりなる群から選択される1種又は2種以上である請求項3記載の皮膚外用剤。
該水溶性成分が、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000、1,2−ペンチレングリコール及び1,2−ヘキシレングリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上のグリコール類;トレハロース、グルコース、マルチトール、乳糖及び果糖よりなる群から選択される1種又は2種以上の糖類;ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される1種又は2種以上の界面活性剤よりなる群から選択される1種又は2種以上である請求項3又は4記載の皮膚外用剤。
該高分子が、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、寒天、ヒアルロン酸又はその塩、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、ポリアクリル酸又はその塩、カルボキシビニルポリマー、コラーゲン液、デキストリン、カラギーナン、アルギン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種又は2種以上である請求項3ないし5のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、第1の態様において、1種又2種以上のメラニン生成抑制物質と、油性成分、水溶性成分及び高分子よりなる群から選択される1種又2種以上の皮膚外用剤配合成分とを含む皮膚外用剤を提供する。
本発明のメラニン生成抑制物質は、ゲルマクロン様骨格を有する一群の物質を有効成分とする。本発明で用いるこれらの物質は、上記のように、ガジュツを始めとして、その多くはショウガ科に属する植物に含まれる成分として知られている。また、本発明で用いるメラニン生成抑制物質には、ショウガ科に属する植物から単離される天然成分を水素添加して生成したものも含まれる。
【0011】
本発明の皮膚外用剤に含まれるメラニン生成抑制物質は、下記の実施例に示すように、メラニン生成抑制効果が高いとされているアルブチンに比べて、約400倍の作用、つまりアルブチンの使用量の約1/400の使用量で同等のメラニン生成抑制作用を示す。
【0012】
好ましい形態において、本発明の皮膚外用剤に含まれるメラニン生成抑制物質は、
式(IV):
【化11】
で表されるゼデロン、
式(V):
【化12】
で表されるフラノジエノン、
式(VI):
【化13】
で表されるクルゼレノン、
式(VII):
【化14】
で表される水添ゼデロン、及び
式(VIII):
【化15】
で表される水添フラノジエノン
であり、好ましい物質はゼデロン、フラノジエノン及びクルゼレノンであり、最も好ましくはゼデロンである。
これらのメラニン生成抑制物質は、単独又は組み合わせて本発明の皮膚外用剤に配合することができる。
【0013】
本発明の皮膚外用剤に用いる一群のメラニン生成抑制物質は、ガジュツ(Curcuma zedoaria Roscoe (Zingiberaceae):別名紫ウコン)の根や茎、葉などの各部位又は全草、好ましくはその根茎から各種有機溶媒にて抽出され、活性炭、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤(例えば、三菱化成社製:HP−20)、オクタデシルシリル化シリカゲルやシリカゲルを用いて精製を行うことによって得ることができる。このとき、抽出溶媒としては、水やメタノール、エタノールなどの炭素数1〜4程度の低級アルコール又はそれらの水溶液、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、n−ペンタンやn−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなど直鎖、分岐を問わず各種の飽和、不飽和炭化水素などより選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。そして、これら溶媒を適宜使い分け、例えば、植物からの抽出には非極性溶媒よりは極性溶媒を用いるのが好ましく、その後、極性を低めることにより分画することができる。また、得られた物質を公知の方法に従って水素化することによって、メラニン生成抑制物質の水添物を得ることができる。
【0014】
より詳細には、ゼデロン、フラノジエノン及びクルゼレノンは、
(1)ガジュツ(Curcuma zedoaria)の乾燥物を溶媒に浸漬してガジュツ抽出液を調製し、
(2)ガジュツ抽出液の溶媒を減圧下にて留去し、
(3)生成した結晶分を少量の溶媒で洗浄し、ついで
(4)得られた結晶分を溶媒から再結晶化する
工程を含む製造方法により得ることができる。
【0015】
また、ゼデロンは、
(1)ガジュツの乾燥物を溶媒に浸漬してガジュツ抽出液を調製し、
(2)ガジュツ抽出液の溶媒を減圧下にて留去し、
(3)得られた乾固物を溶媒に溶解して、シリカゲルを充填剤とするカラムクロマトグラフィーによる分画を行い、ついで
(4)画分の溶媒留去物を溶媒から結晶化する
工程を含む製造方法により得ることができる。
【0016】
好ましい形態において、ガジュツ抽出液の調製は、約1:50〜約1:3(容量比)、好ましくは約1:10〜約1:4(容量比)のガジュツ乾燥物:溶媒の浴比で、約10℃ないし抽出溶媒の沸点まで、好ましくは室温ないし溶媒の沸点より約10℃低い温度にて約2時間〜約14日間、好ましくは約7日間、攪拌、ソックスレー抽出又は静置して行う。
【0017】
好ましい形態において、抽出、吸着、液々分配、結晶化、クロマトグラフィーの移動相などの操作に用いる溶媒は、水、メタノール、エタノール、30〜95%(v/v)のメタノール水溶液若しくはエタノール水溶液、ヘキサン又は酢酸エチルであり、これらの溶媒は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0018】
好ましい形態において、クロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
カラム:Chemcobond 5-ODS-W(6.0×150(6A))(株式会社ケムコ社)
移動相:75%(v/v)メタノール水溶液
カラム温度:55℃
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
モニター:UV 280nm 吸光度
【0019】
好ましい形態において、ゼデロンは、
(1)ガジュツの根茎乾燥物を酢酸エチルに浸漬して室温下で放置して抽出し、
(2)抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去し、
(3)乾固物を移動相をヘキサンと酢酸エチルの混液(容量比7:3)を用いて、シリカゲルを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(上記分析条件と同じ)に付して波長210nmによる紫外部吸収を指標として分画を行い、
(4)吸収が認められた画分を収集して減圧下にて溶媒を留去し、ついで
(5)留去物をヘキサンを用いて再結晶してゼデロンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0020】
好ましい形態において、フラノジエノンは、
(1)ガジュツの根茎乾燥物をヘキサンで還流して濃縮し、
(2)収集した抽出液を減圧下にて留去した乾固物を少量のヘキサンに溶解し、
(3)シリカカラムに付して、ヘキサン、ヘキサン:酢酸エチル(容量比9:1)、ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)で順次溶出し、
(4)ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)溶出画分を収集し、ついで
(5)少量の75%(v/v)メタノール水溶液に溶解して、ODSカラムに付し、特定の画分を分取してフラノジエノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0021】
好ましい形態において、クルゼレノンは、
(1)ガジュツの根茎乾燥物をヘキサンで還流して濃縮し、
(2)収集した抽出液を減圧下にて留去した乾固物を少量のヘキサンに溶解し、
(3)シリカカラムに付して、ヘキサン、ヘキサン:酢酸エチル(容量比9:1)、ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)で順次溶出し、
(4)ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)溶出画分を収集し、ついで
(5)少量の75%(v/v)メタノール水溶液に溶解して、ODSカラムに付し、特定の画分を分取してクルゼレノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0022】
好ましい形態において、水添ゼデロンは、
(1)上記の製法などにより得られたゼデロンを99.5%(v/v)エタノールに溶解し、
(2)5%Pd−アルミナを加えて水素バックを用いて水添反応を行い、ついで
(3)反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去して水添ゼデロンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0023】
好ましい形態において、水添フラノジエノンは、
(1)上記の製法などにより得られたフラノジエノンを99.5%(v/v)エタノールに溶解し、
(2)5%Pd−アルミナを加えて水素バッグを用いて水添反応を行い、ついで
(3)反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去して水添フラノジエノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0024】
もっとも、本発明の皮膚外用剤に含まれるゼデロン、フラノジエノン及びクルゼレノンは、単一の純粋な成分にまで精製する必要はなく、下記実施例において述べるように、各種の溶媒を用いた抽出、吸着、液々分配、結晶化、クロマトグラフィー分画などの操作によって比較的高濃度の、例えば、60%(w/w)以上、65%以上、70%以上、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、最も好ましくは99.5%以上の純度の成分を含む粗精製物として入手することも可能である。
【0025】
また、これらのゼデロン、フラノジエノン及びクルゼレノンは、本明細書中に記載する方法により得られるもののほか、市販されているものを用いることも可能である。
【0026】
本発明の皮膚外用剤に有効成分として含まれるゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンは、メラニン生成抑制効果が高いとされているアルブチンに比べて、約400倍の作用、つまりアルブチンの使用量の約1/400の使用量で同等のメラニン生成抑制作用を示す(国際特許出願 PCT/JP2009/070535)。
【0027】
本発明の皮膚外用剤には、ゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンを単独又は組み合わせて皮膚外用剤全体に対して約0.000001〜1.0質量%、好ましくは約0.00001〜0.5質量%、最も好ましくは約0.0001〜0.1質量%含ませることができる。皮膚外用剤におけるゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンの量が約0.000001質量%未満の場合は有効な美白効果を発揮することができずまた皮膚外用剤配合成分に起因する使用感を改善することができず、一方約1.0質量%を超えて含ませてもそれ以上の効果を得ることができない。
【0028】
なお、ガジュツからのゼデロンの抽出効率が最もよかった70%(v/v)エタノール水溶液抽出物をHPLC分析した結果(示さず)に基づくと、ガジュツ中にはその乾燥物に対して約0.3%のゼデロンが含まれると考えられる。化粧品原料に用いることができるガジュツ抽出エキスは水抽出物やエタノール抽出物、水/エタノール混液による抽出物である。これらの抽出物においては、原植物乾燥物1kgから少なくとも約25gの抽出乾燥物(ガジュツ乾燥エキス)が得られる。そうすると、化粧料中に配合されるガジュツエキス(乾燥物に換算して)中には約10質量%程度のゼデロンしか含まれない。匂いや着色を考慮するとガジュツエキスの配合量は乾燥物に換算して化粧料中に概ね0.01質量%、多くとも約0.05%質量以下である。従って、これまでの公知である化粧料中のゼデロン含有量は多く見積もっても約0.005質量%程度である。そこで、本発明の美白用の皮膚外用剤においては約0.005質量%以上のゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノン、さらに好ましくは約0.01質量%以上のゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンを配合するのが好ましい。これにより従来の美白化粧料にはない美白効果を発揮し、皮膚外用剤配合成分に起因する使用感を改善することができる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤において、前記したゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンが使用感を改善する皮膚外用剤配合成分には油性成分、水溶性成分及び高分子が含まれる。
【0030】
好ましい形態において、油性成分には油性基剤、エステル類、ロウ類及びアルコールが含まれる。
さらに好ましい形態において、油性基剤にはスクワラン、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、ワセリン、オリーブ油、サフラワー油、ヒマシ油、ゴマ油、コメ胚芽油及び水素添加ホホバ油よりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれ;エステル類にはメドウフォーム油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、モノステアリン酸エチレングリコール、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、ポリブテン及びコハク酸ジエトキシエチルよりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれ;ロウ類にはミツロウ、カルナウバロウ及びキャンデリラロウよりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれ;アルコールにはセタノール、コレステロール、フィトステロール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びベヘニルアルコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれる。
【0031】
好ましい形態において、水溶性成分にはグリコール類、糖類及び界面活性剤が含まれる。
さらに好ましい形態において、グリコール類には1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビトール、1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール4000、1,2−ペンチレングリコール及び1,2−ヘキシレングリコールよりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれ;糖類にはトレハロース、グルコース、マルチトール、乳糖及び果糖よりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれ;界面活性剤にはショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びグリセリン脂肪酸エステルよりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれる。
【0032】
好ましい形態において、高分子にはキサンタンガム、ポリビニルピロリドン、寒天、ヒアルロン酸又はその塩、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース、ポリアクリル酸又はその塩、カルボキシビニルポリマー、コラーゲン液(0.3%)、デキストリン、カラギーナン、アルギン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩及びメチルセルロースよりなる群から選択される1種又は2種以上の成分が含まれる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤には、これらの皮膚外用剤配合成分を単独又は組み合わせて皮膚外用剤全体に対して約0.0001〜30.0質量%、好ましくは約0.0005〜20.0質量%、最も好ましくは約0.001〜10.0質量%含ませることができる。皮膚外用剤におけるこれらの成分の量が約0.0001質量%未満の場合又は約30.0質量%を超える場合は、皮膚外用剤の使用感が損なわれる。
【0034】
本発明の皮膚外用剤は、メラニン生成抑制物質、皮膚外用剤配合成分や他の添加成分を用いて自体公知の方法によって調製することができる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤は、通例、前記した本発明のメラニン生成抑制物質及び皮膚外用剤配合成分を各種の化粧料用基剤や外用医薬用基剤などに配合して調製され、例えば、クリーム、乳液、化粧水、パック剤、洗顔料などの基礎化粧料、ファンデーションなどのメーキャップ化粧料、洗髪料、養毛剤、シャンプー、リンスなどの頭髪用化粧料、石鹸、美爪料、オーデコロンなどのその他の化粧料並びに皮膚に適用される医薬部外品及び医療用外用剤などを包含する皮膚外用剤として提供される。
【0036】
化粧料用基剤や外用医薬用基剤としては、例えば、液状、固体状を問わず、油脂やロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、シリコーン油などの油性原料、水、アルコール、多価アルコールなどが含まれる。また、前記化粧料や医療用外用剤などには、前記基剤の他に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、pH調整剤、水溶性高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤(キレート剤)、糖類、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、保湿剤、抗炎症剤、抗菌剤、細胞賦活剤、香料、顔料や色素などの着色剤、防腐剤など、上記した本発明の皮膚外用剤に必須の成分以外の成分を配合することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、化粧料や医療用外用剤などとしての剤型も特に制限されるものではなく、例えば液状やエマルジョン、軟膏、ゾル、ゲル、パウダー、スプレーなどの剤型が例示される。このような化粧料や医療用外用剤として用いることにより、優れた使用感でもって優れた美白効果を発揮することができる。
【0038】
本発明の皮膚外用剤は、特定の皮膚外用剤配合成分に起因する使用感が、天然物から単離された又は合成されたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンを配合することにより改善されるものであって、かかる天然物から単離されるゼデロン、フラノジエノン又はクルゼレノンを含む天然物抽出物を含まない皮膚外用剤である。つまり、ゼデロン、フラノジエノン又はクルゼレノンを含む天然物抽出物を用いることなく、単離又は合成されたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンを有効成分として配合して得られたこの皮膚外用剤は美白用の皮膚外用剤として好ましく用いられる。もっとも、本発明は、単離又は合成されたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン又は水添フラノジエノンをメラニン生成抑制剤として使用することに特徴を有するものであって、単離又は合成されたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン又は水添フラノジエノンのみを人為的に加えた皮膚外用剤、あるいは、ゼデロン、フラノジエノン又はクルゼレノンが含まれる天然物抽出物に加えてさらに単離又は合成されたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン又は水添フラノジエノンを人為的に配合した皮膚外用剤を使用することにより美白作用を発揮させることに技術的特徴を有する。
【0039】
次に、下記実施例に基づいて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の内容に制限されるものではない。なお、特に断らない限り、配合量は質量%を表す。
[実施例1]
【0040】
〔ガジュツからの抽出・分画精製〕
ガジュツからの本発明に係るメラニン生成抑制剤の抽出、精製に当たり、まず
図1に示す方法により分画操作を行い、各画分について美白作用を調べた。美白作用は下記に示すようにメラニンの生成抑制作用を調べることによって行った。なお、ガジュツは新和物産株式会社より入手したものを用いた。
【0041】
300gのガジュツ(Curcuma zedoaria Roscoe (Zingiberaceae))の根茎乾燥物に50%(v/v)エタノール水溶液1800mLを加え、室温で5日間放置した。その後、濾過して1600mLの抽出液を得た。抽出液を減圧濃縮し乾固物7.5gを得た(ガジュツエキス末(A))。その乾固物1gを少量の50%(v/v)エタノール水溶液に溶解した上で分液漏斗へ投入し、更に、水とヘキサン(容量比で1:1)を加えてよく振り混ぜ、静置した。下層の水層を取り出し、上層のヘキサン層を別のフラスコに分取した。取り出した水層を再び分液漏斗に戻し、水層とほぼ同容量のヘキサンを加え、同様の操作をさらに2回繰り返した。次いで、水層を再び、分液漏斗に戻し、水層とほぼ同容量の酢酸エチルを加えて分液操作を行った。上層の酢酸エチル層を集め、取り出した水層を再び分液漏斗に戻し、再び水層とほぼ同容量の酢酸エチルを加え、同様の操作をさらに2回繰り返した。集めたヘキサン層、酢酸エチル層及び残部の水層は減圧下、濃縮を行い、メラニン生成抑制試験の試料とした(試料(A)〜(D))。
【0042】
(メラニン生成抑制試験)
メラニン生成抑制試験として、三次元培養皮膚モデルによる試験とその際に生成されたメラニン量及びタンパク量を指標にした試験を行った。
メラニン生成抑制試験は、市販されている三次元培養皮膚モデル(MEL-300キットAsian donor:クラボウ社)を用いて行った。キットの使用方法に従い、MEL-300皮膚モデルカップを6ウエルプレートの各ウエルにセットし、37℃インキュベーターで温めたキット用維持培地(EPI−100:培地添加時にSCFを最終濃度10ng/mLになるように添加した)を皮膚モデルカップに無菌的に5mLずつ入れた。皮膚モデルカップの内部に直接的に各試料の溶液を100μLずつ加え、皮膚モデルカップの入った6ウエルプレートをインキュベーター(37℃、5%CO
2、加湿状態)に入れ、14日間培養した。2日毎に新しい培地と培地交換を行い、交換の都度、各試料の溶液100μLを皮膚モデルカップに加えた。なお、各試料の溶液の調製には細胞培養用のPBS(−)を用いた。
【0043】
培養後、MEL-300皮膚モデルカップをPBS(−)で3回洗浄後、細胞部分を剥離して1.5mLエッペンドルフチューブに入れ、0.5mLの2mol/L−NaOHを添加し、室温下で一晩放置した。15分間煮沸後、各サンプル250μLを96ウエルプレートに移し、405nmでメラニンを定量した。
【0044】
さらに、上記煮沸後のメラニン定量用サンプル40μLを96ウエルプレートに移し、タンパク定量用のBCA試薬(商品名:タカラバイオ(株)社)200μLを各ウエルに入れて、37℃で30分間インキュベートした後、540nmの吸光度を測定した。
【0045】
また、コントロールとしてPBS(−)と、陽性対照としてアルブチン−PBS(−)溶液(2.0%(w/v))を用いて同様の試験を行い、コントロールを100としたときのメラニン量(相対比)及びタンパク量(相対比)を算出し、メラニン生成抑制度を調べた。その結果を表1に示す。また、そのときの三次元培養皮膚モデルの結果を示す写真を
図2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(TLCによる分画精製)
表1及び
図2の結果から、
図1の(B)に示されるヘキサン抽出画分が最も強いメラニン生成抑制度を示すことが分かった(
図2の(d))。そこで、この画分をさらに分取TLC(分取薄層クロマトグラフィー)を用いて精製を進めた。
【0048】
ヘキサン抽出層から溶媒を留去した後、その濃縮物を少量のヘキサンに溶解し、分取用薄層プレート(シリカゲル60・F254、メルク社、厚さ2mm)にて、ヘキサン及び酢酸エチルの混液(容量比7:3)を展開溶媒として分画を行った。検出は目視及び波長254/366nmのUVランプにより行った。その結果を
図3に示す。
図3に示すように、明確な3つのバンド(S1〜S3)とうっすらと観察された2つのバンド(S5、S7)並びに原点からテーリングした1つのバンド(S8)が観察された。そこで、図に示すように8つのバンド(バンドS1〜バンドS8)に分画した。分画された各バンド部分をかき取って酢酸エチルにて抽出した後、酢酸エチルを留去し、各分画成分を得た。
【0049】
次に上記分画成分について分画状況をTLCにより確認した。各分画濃縮物の少量を再び少量のヘキサンに溶解した後、薄層プレート(シリカゲル60・F254、厚さ0.2mm(メルク社))を用いて上記の展開溶媒による展開を行った。この結果を
図4に示す。左側から順にバンドS1、S2、S3、・・S7、S8のヘキサン溶液をスポットしたレーンを示す。この結果、バンドS2では単一のスポットが検出された(ヨウ素による検出)。
【0050】
(メラニン生成抑制試験)
次に分画された試料についてメラニン生成抑制試験を行った。試験に際し、このTLCの結果に基づいて、バンドS1、S2については各バンドをそれぞれ試料(試料B−1、試料B−2)として用い、バンドS3〜バンドS5、バンドS6〜S8については前記バンドをまとめたものをそれぞれ試料(試料B−3、試料B−4)として用いた。メラニン量及びタンパク量から求めたメラニン生成抑制度の結果を表2に示す。また、参考として、ガジュツエキス末(A)及びヘキサン層の濃縮物(B)についても試験を行った。この結果、単一スポットが得られた試料B−2の画分が最も強いメラニン生成抑制度を示した。また、このときの三次元培養皮膚モデルの結果を示す写真を
図5に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
〔メラニン生成抑制物質の構造決定〕
表2に示すとおり、バンドS2の画分が最も強いメラニン生成抑制度を示し、また紫外部吸収による検出、ヨウ素による検出においても単一のスポットが確認できたので、この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)、赤外吸収分析(IR)、質量分析、
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)及び
13C−NMR(溶媒:CDCl
3)に基づき行った。その結果は次のとおりであり、各分析によるチャートを
図6〜
図10に示す。また、NMRによる帰属を表3に示した。これらの結果から、生成されたメラニン生成抑制物質は、ゼデロンであると同定された。この物質のメラニン生成抑制度は、表2から理解されるように、これまで美白効果があるとされてきたアルブチンと対比して、アルブチン濃度の約1/400の濃度でほぼ同等の効果を示し、その作用はアルブチンの約400倍の強さがあると言える。
【0053】
性状:白色の結晶性固体
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax)281nm
質量分析:246(m/e)
赤外吸収スペクトル(cm
-1):1662,1523,1427,1400,1232,1066,1020,929,881,863.
【0054】
【表3】
【0055】
【化16】
【0056】
〔安定性の確認〕
上記方法で得たゼデロン100mgを50%(v/v)エタノール水溶液200mLに溶解した液を高温(60℃)下で、また、この液に0.5mol/L−NaOHを加え終濃度0.125mol/L−NaOHとした液並びに0.5mol/L−HClを加え終濃度0.125mol/L−HClとした液を室温下で、それぞれ保存し、安定性の確認を行った。また、コントロールには同上のエタノール溶液を4℃で保管したものを使用した。安定性は、下記条件による高速液体クロマトグラフィーを行い、ピーク面積による百分率から残存率を求めることにより測定した。なお、アルカリ保存、酸保存したサンプル溶液はそれぞれ中和後に測定を行った。
【0057】
(分析条件)
カラム:Chemcobond 5-ODS-W(6.0×150(6A))(株式会社ケムコ社)
移動相:メタノール
カラム温度:55℃
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
モニター:UV 280nm 吸光度
【0058】
その結果を表4に示した。アルブチンやエラグ酸などフェノール性の化合物はアルカリ域で褐変することはよく知られているが、ゼデロンに変化は認められなかった。また、酸性域では若干の低下が見られるもののアルカリ域及び高温条件下でも安定であることが判明し、ゼデロンは様々な物理的条件の組成物に配合することができ、また、様々な条件下で使用し得ることが明らかになった。
【0059】
【表4】
[実施例2]
【0060】
次に、下記製造法に従い本発明の皮膚外用剤に含まれる一群の物質を調製した。
〔製造例1〕ゼデロン
ガジュツ(Curcuma zedoaria)の根茎乾燥物1kgをヘキサン6Lに浸漬し、室温下で7日間放置して抽出した。その抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去した後、冷暗所で放置した。生成してきた結晶分を分取し、これを少量のヘキサンで洗浄した。更に、得た結晶分をヘキサンで再結晶を行い、ゼデロン300mg(純度約95%)を得た。純度は、上記液体クロマトグラフィーの条件で操作して求めた。実施例1で得られたゼデロンを標準品として用い、検出波長220nmにおけるピーク高さ比からゼデロンの定量を行った(製造例2においても同じ)。
【0061】
〔製造例2〕ゼデロン
ガジュツの根茎乾燥物1kgを酢酸エチル6Lに浸漬し、室温下で4日間放置して抽出した。その抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去した後、移動層をヘキサンと酢酸エチルの混液(容量比7:3)を用いて、シリカゲルを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(上記分析条件と同じ)による精製を行った。分画はフラクションコレクターにより行い、各フラクション毎に測定した波長280nmによる紫外部吸収を指標として分画を行った。吸収が見られた画分の溶媒留去物をヘキサンを用いて再結晶し、白色結晶2200mg(ゼデロン含量2000mg)を得た。
【0062】
〔製造例3〕フラノジエノン
ガジュツの根茎乾燥物350gをヘキサン1750mLで3時間還流した。溶媒を濾別し、濃縮を行った。残渣にヘキサン1750mLを加えて還流し、同操作を繰り返した。集めた抽出液を減圧下にて留去し、3.12gの乾固物を得た。それを少量のヘキサン(約20mL)に溶解し、不溶分を濾過後、シリカカラム(BW300(富士シリシア社)、φ=20mm、h=200mm)に付し、ヘキサン、ヘキサン:酢酸エチル(容量比9:1)、ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)各100mLで順次溶出した。ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)溶出画分を収集し、溶媒を留去して収量0.484gを得た。次いで、それを少量の75%(v/v)メタノール水溶液に溶解し、下記条件のカラムに付した。フラクションコレクターで分取し、それぞれの画分について液体クロマトグラフィーを用いて下記条件で分析を行い、
図11のチャートにある*1にあたる部分ピークのみを持つ画分を集め、溶媒を留去後、0.10g(収率0.028%)の白色の結晶性固体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)、赤外吸収分析(IR)、
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収及び赤外吸収分析によるチャートを
図12及び
図13に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質がフラノジエノンであることが判明した。
【0063】
カラム:Chemcobond 5-ODS-W(6.0×150(6A))(株式会社ケムコ社)
移動相:メタノール:水=75:25(v:v)
カラム温度:55℃
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
検出波長:280nm
【0064】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):なし
赤外吸収スペクトル(cm
-1):1644,1523,1375,1270,1240,1105,1020,931
1H-NMRスペクトル:1.30(3H,s),1.99(3H,s),2.13(3H,s),1.85-2.49(4H,m),3.70(2H,m),5.17(1H,m),5.81(1H,s),7.07(1H,s).
【0065】
〔製造例4〕クルゼレノン
また、
図11のチャートにある*2にあたる部分ピークのみを持つ画分を集め、溶媒を留去後、0.07g(収率0.02%)の透明油状液体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)、赤外吸収分析(IR)、
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収及び赤外吸収分析によるチャートを
図14及び
図15に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質がクルゼレノンであることが判明した。
【0066】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):272nm
赤外吸収スペクトル(cm
-1):1675,1562,1427,1257,1070,997
1H−NMRスペクトル:1.222(3H),1.658(3H),2.97(1H,q),2.262(3H),3.166(1H,d),3.249(1H,d),3.104(1H),5.028(1H,d),5.029(1H,d),5.039(1H,d),5.126(1H,d),5.729(1H,d),7.068(1H).
【0067】
〔製造例5〕水添ゼデロン
製造例2で得たゼデロン500mgを99.5%(v/v)エタノール100mLに溶解し、5%Pd−アルミナ100mgを加え、水素バッグを用いて水添反応を行った。反応は室温下にて15時間行った。反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去し、500mgの白色の結晶性固体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)及び
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収分析によるチャートを
図16に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質が水添ゼデロンであることが判明した。
【0068】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):287nm
1H−NMRスペクトル:2.180(3H,m),1.008(3H,d),1.059(3H,d),7.093(1H),1.434(1H,d),1.604(1H,d),1.434(1H,d),1.653(1H,d),1.343(1H,d),1.474(1H,d),2.995(1H,d),2.454(1H,d),1.743(1H,d),1.657(1H,d),2.113(1H,d),1.776(1H,d),4.199(1H,d).
【0069】
〔製造例6〕水添フラノジエノン
製造例3で得たフラノジエノン500mgを99.5%エタノール100mLに溶解し、5%Pd−アルミナ100mgを加え、水素バッグを用いて水添反応を行った。反応は室温下にて15時間行った。反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去し、500mgの白色の結晶性固体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)及び
1H−NMR(溶媒:CDCl
3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収分析によるチャートを
図17に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質が水添フラノジエノンであることが判明した。
【0070】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):なし
1H−NMRスペクトル:2.167(3H,m),0.467(3H,d),0.909(3H,d),6.594(1H),1.440(1H,d),1.579(1H,d),1.400(1H,d),1.779(1H,d),1.601(1H,d),1.366(1H,d),2.808(1H,d),2.676(1H,d),2.212(1H,d),1.884(1H,d),4.774(1H,d),3.665(1H,d).
【0071】
〔ヒト・メラノサイトを用いたメラニン生成抑制試験〕
(ヒト・メラノサイトの培養)
ヒト・メラノサイト(NHEM(Moderately)、クラボウ社)を、Medium254培地(成長因子HMGS−2含有)1000μLを入れた12ウエルプレートに1ウエルあたり2.5×10
4個ずつ播き、翌日、培地に幹細胞増殖因子(SCF、最終濃度10ng/mL)、そして4時間後に被検試料を添加した。それを37℃でインキュベートし、3日後に培地を交換して、SCF(最終濃度10ng/mL)を再添加後、4時間後に被検試料を添加し、37℃にて7日間インキュベートした。その後、以下の方法に従ってメラニン量及びタンパク量を測定した。
【0072】
(メラニンの定量)
ウエル中の培地を取り除き、PBS(−)500μLで細胞を3回洗浄した後にPBS(−)を完全に取り除いた。洗浄した細胞に2mol/L−NaOH 400μLを加えて細胞を溶解し、シェ−カーで30分間振動させて細胞溶解物を調製した。各細胞溶解物を1.5mLエッペンドルフチューブに移して10分間沸騰湯で加熱し、Voltexミキサーで激しく攪拌した。その350μLを96ウエルに移し、405nmで吸光度を測定した。
【0073】
(タンパクの定量)
上記で得た細胞溶解物40μLをBCA溶液200μLと混合して、37℃にて30分間インキュベートした後、540nmで吸光度を測定した。
【0074】
〔製造例1〕及び〔製造例3〕〜〔製造例6〕で得られたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンについて、上述したメラニン及びタンパクの定量を指標としたメラニン生成抑制試験を行った。各成分によるメラニン及びタンパク量を表5に示す。〔製造例1〕及び〔製造例3〕〜〔製造例6〕で得られたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンは、薄層クロマトグラフィーにより単離されたゼデロンとほぼ同程度ないしそれを超えるメラニン生成抑制効果が認められた。
【0075】
【表5】
【0076】
ゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンはすべて、美白効果を持つことで知られているアルブチンと比較して、細胞に対する毒性は弱く、極めて低い濃度で美白効果を示すことが確認された。
【0077】
また、上述した(メラニン生成抑制試験)と同様に、三次元皮膚培養モデルを用いて〔製造例1〕で得られたゼデロンについてメラニン生成抑制試験を行った。その結果を表6及び
図18に示す。〔製造例1〕で得られたゼデロンには、薄層クロマトグラフィーにより単離されたゼデロンとほぼ同程度のメラニン生成抑制効果が認められた。
【0078】
【表6】
【0079】
〔官能評価試験−美白効果〕
(被験者の選定)
健常肌を有する男性(20〜50歳)を6名選出した。
【0080】
(試料製剤)
(i)アルブチン溶液(陽性対照;7質量%)
(ii)ゼデロン(2濃度;0.01質量%、0.0025質量%)
(iii)ガジュツエキス末(A)(抽出乾燥物0.05質量%)
(iv)有効成分−非含有
上記の合計5試料を用いて、8質量%の1,3−ブチレングリコール、5質量%のグリセリン、0.3質量%のポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O.)、0.2質量%のパラベン及び残余量の精製水と共に、自体公知の方法によって化粧水を調製し、試料製剤とした。
【0081】
(ヒトへの紫外線照射)
被験者6名の腹部皮膚に、紫外線照射部位(1.5×1.5cm)を設定し、最小紅斑量の1.5倍の中波長領域紫外線(デルマレイM−DMR 80型、東芝医療用品)を照射した。照射日より、試料製剤を1日の朝夜に各1回ずつ4週間毎日の塗布を行った。紫外線照射から4週間後にそれぞれの部分を肉眼判定により、有効成分−非含有製剤(対照)の塗布部と各試料製剤の塗布部の色素沈着の回復度を以下の評価基準により判定した。
【0082】
(判定方法)
照射日より、4週間後に写真撮影及び、写真を評価基準に従い効果の判定を行った。
(評価基準)
【表7】
【0083】
(測定実施方法)
(1)まずはじめに、前回と同じ位置関係(状態)で写真撮影を行う。(前回データを見ながら:1回目の撮影は任意で行う)
(2)専門判定者10名により、効果の判定を行った。
【0084】
(結果)
【表8】
【0085】
表8に示すように、ゼデロンには、美白効果を持つことが知られているアルブチンと比較して、極めて低い濃度で色素沈着の回復が認められ、実際のヒトの日焼け状態にある皮膚に対しても優れた美白効果を示すことが確認された。また、被験者の試料塗布部位においては、紅斑や湿疹などの皮膚刺激反応は認められず、ゼデロンが製剤の形態でも安全性が高いものであることが確認された。
[実施例3]
【0086】
〔官能評価試験−使用感〕
表9に示す処方に従って2質量%の油性成分にゼデロン0、0.005又は0.05質量%を併用した場合の使用感の向上を調べた。評価は20名のパネリストにより行い、以下の基準に従って判定した。その結果を併せて表10〜12に示す。
【0087】
【表9】
*製品名:ニッコールHCO−50(日本サーファクタント工業(株))
成分(A)及び(B)を75℃で均一に溶解し、(D)及び(I)を混合したものに(C)を溶解した水相を撹拌しながら添加した。(F)及び(G)を(E)で溶解したもの、(H)を(I)の一部に溶解したものを加えて試験組成物を調製した。
【0088】
判定基準:
◎:20名中15名以上が良好と評価した。
○:20名中10〜14名が良好と評価した。
△:20名中5〜9名が良好と評価した。
×:20名中4名以下が良好と評価した。
【0089】
【表10】
【0090】
【表11】
【0091】
【表12】
【0092】
表10〜12に示されるように、ゼデロンを配合しない比較例1〜42では十分な効果が得られていないのに対して、ゼデロンを配合した実施例4〜87では油性成分特有のベタツキ感が顕著に改善され、塗布後のなめらかさがある優れた使用感が得られる結果が示された。
【0093】
表13に示す処方に従って水溶性成分にゼデロン0、0.005又は0.05質量%を併用した場合の使用感の向上を調べた。評価は20名のパネリストにより行い、以下の基準に従って判定した。その結果を併せて表14〜16に示す。
【0094】
【表13】
成分(A)に(G)を加えて混合し、順じて(B)を(G)の一部で分散したもの、(D)及び(E)を(C)で溶解したもの、(F)を(G)の一部で溶解したものを加えて試験組成物を調製した。
【0095】
判定基準:
◎:20名中15名以上が良好と評価した。
○:20名中10〜14名が良好と評価した。
△:20名中5〜9名が良好と評価した。
×:20名中4名以下が良好と評価した。
【0096】
【表14】
*製品名:ショートーシュガーエステルS−1670(三菱化学フーズ(株))
**製品名:エマゾールL−120(花王(株))
***製品名:ニッコールPEN−4630(日本サーファクタント工業(株))
****製品名:ニッコールHCO−50(日本サーファクタント工業(株))
****製品名:サンファクト5GMM−Z(太陽化学(株))
【0097】
【表15】
【0098】
【表16】
【0099】
表14〜16に示したように、ゼデロンを配合しない比較例43〜60では十分な効果が得られていないのに対して、ゼデロンを配合した実施例88〜123では水溶性成分特有のベタツキ感が顕著に改善され、なじみ感に優れた使用感が得られる結果が示された。
【0100】
表17に示す処方に従って高分子にゼデロン0、0.005又は0.05質量%を併用した場合の使用感の向上を調べた。評価は20名のパネリストにより行い、以下の基準に従って判定した。その結果を併せて表18〜20に示す。
【0101】
【表17】
*製品名:エマゾールL−120(花王(株))
成分(A)に(B)を加えて分散後、(H)を加える。順じて(C)、(E)及び(F)を(D)で溶解したもの、(G)を(H)の一部で溶解したものを加えて試験組成物を調製した。
【0102】
判定基準:
◎:20名中15名以上が良好と評価した。
○:20名中10〜14名が良好と評価した。
△:20名中5〜9名が良好と評価した。
×:20名中4名以下が良好と評価した。
【0103】
【表18】
*製品名:マリンコラーゲン(フェノキシタイプ0.8%)(片倉チッカリン(株))
【0104】
【表19】
【0105】
【表20】
【0106】
表18〜20に示したように、ゼデロンを配合しない比較例61〜74では十分な効果が得られていないのに対して、ゼデロンを配合した実施例124〜151では高分子特有のベタツキ感が顕著に改善され、きしみ感が改善されて塗布後のなめらかさがある優れた使用感が得られる結果が示された。
[実施例152]
【0107】
以下に、使用感が改善された本発明の皮膚外用剤の処方例を挙げる。
<処方例>
<処方例1>化粧水 (質量%)
ゼデロン 0.005
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.0.)1.5
1,3−ブチレングリコール 3.0
グリセリン 3.0
防腐剤・酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0108】
<処方例2>化粧料クリーム (質量%)
ゼデロン 0.05
ミツロウ 2.0
ステアリルアルコール 5.0
ステアリン酸 8.0
スクワラン 10.0
自己乳化型グリセリルモノステアレート 3.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.0.) 1.0
プロピレングリコール 5.0
水酸化カリウム 0.3
防腐剤・酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0109】
<処方例3>乳液 (質量%)
ゼデロン 0.05
スクワラン 8.0
ワセリン 2.0
ミツロウ 0.5
ソルビタンセスキオレエート 0.8
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.0.) 1.2
カルボキシビニルポリマー 0.2
プロピレングリコール 0.5
水酸化カリウム 0.1
エタノール 7.0
防腐剤・酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0110】
<処方例4>美容液 (質量%)
ゼデロン 0.005
ソルビトール 1.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.5
POEモノラウリン酸ソルビタン 0.4
寒天 1.0
ネイティブジェランガム 0.5
トリメチルグリシン 1.0
防腐剤 適 量
pH調整剤 (pH8.0に調整)
精製水 残 部
合 計 100.0
【0111】
<処方例5>化粧水 (質量%)
ゼデロン 0.005
キサンタンガム 0.05
グリセリン 5.0
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.0.)1.5
エタノール 8.0
クエン酸トリエチル 2.0
防腐剤・酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0112】
<処方例6>化粧水 (質量%)
ゼデロン 0.005
トレハロース 0.5
グリセリン 2.0
1,3−ブチレングリコール 7.0
ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.0.)1.5
防腐剤・酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0113】
<処方例7>乳液 (質量%)
ゼデロン 0.010
水添ゼデロン 0.010
スクワラン 8.0
ワセリン 2.0
ミツロウ 0.5
ソルビタンセスキオレエート 0.8
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.0.) 1.2
カルボキシビニルポリマー 0.04
ジグリセリン 3.0
水酸化カリウム 0.1
エタノール 7.0
香料 適 量
防腐剤・酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0114】
<処方例8>乳液 (質量%)
ゼデロン 0.05
フラノジエノン 0.010
スクワラン 6.0
ホホバ油 2.0
ワセリン 2.0
ミツロウ 0.5
ソルビタンセスキオレエート 0.8
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.0.) 1.2
カルボキシビニルポリマー 0.2
1,3−ブチレングリコール 5.0
水酸化カリウム 0.1
香料 適 量
防腐剤・酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0115】
<処方例9>美容液 (質量%)
ゼデロン 0.05
POB(3)POE(8)POP(5)グリセリルエーテル 5.0
スクワラン 6.0
流動パラフィン 2.0
ワセリン 2.0
ミツロウ 0.5
ソルビタンセスキオレエート 0.8
カルボキシビニルポリマー 0.2
グリセリン 1.5
エタノール 7.0
防腐剤 適 量
水酸化カリウム 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0116】
<処方例10>美容液 (質量%)
ゼデロン 0.05
クルゼレロン 0.005
モノステアリン酸グリセリル 0.7
セスキオレイン酸ソルビタン 1.7
ステアリン酸 0.3
セラミド 0.05
スクワラン 3.5
グリチルレチン酸エステル 0.05
ヒドロキシステアリン酸コレステリル 1.0
メドフォーム油 2.0
ホホバ油 3.5
ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/
フィトステアリル/ベヘニル) 1.0
寒天 0.05
ショ糖脂肪酸エステル 0.20
1,3−ブチレングリコール 6.0
グリセリン 4.5
トリメチルグリシン 1.5
シリコン樹脂 0.05
ヒアルロン酸 0.05
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0117】
<処方例11>パック剤 (質量%)
ゼデロン 0.005
酢酸ビニル樹脂エマルジョン 15.0
ポリビニルピロリドン 0.3
ポリビニルアルコール 10.0
ホホバ油 3.0
グリセリン 5.0
酸化チタン 8.0
カオリン 7.0
エタノール 5.0
香料 適 量
防腐剤・酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0118】
<処方例12>軟膏 (質量%)
ゼデロン 0.005
フラノジエノン 0.005
クルゼレノン 0.005
パラジメチルアミノ安息香酸オクチル 4.0
ブチルメトキシベンゾイルメタン 4.0
ベヘニルアルコール 2.0
ステアリルアルコール 17.0
モクロウ 20.0
グリセリンモノステアリン酸エステル 0.3
ワセリン 33.0
香料 適 量
防腐剤・酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0119】
<処方例13>クリームファンデーション (質量%)
ゼデロン 0.05
タルク 5.0
セリサイト 8.0
酸化チタン 5.0
色顔料 適 量
モノイソステアリン酸ポリグリセリル 3.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 1.5
イソノナン酸イソトリデシル 2.0
軽質流動イソパラフィン 2.0
水素添加ホホバ油 2.0
1,3−ブチレングリコール 5.0
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0
【0120】
<処方例14>日焼け止め化粧料 (質量%)
ゼデロン 0.005
水添フラノジエノン 0.010
酸化チタン 10.0
酸化亜鉛 10.0
PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5
ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 1.5
シクロペンタシロキサン 20.0
ジメチコン 10.0
(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー 0.5
セチルジメチコン 0.25
グリチルレチン酸エステル 0.05
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 0.1
メチルグルセス−20 1.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
塩化ナトリウム 適 量
酸化防止剤 適 量
防腐剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0