(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722379
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】粒状多結晶シリコンおよびその生成
(51)【国際特許分類】
C01B 33/03 20060101AFI20150430BHJP
【FI】
C01B33/03
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-84568(P2013-84568)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2013-234113(P2013-234113A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2013年4月15日
(31)【優先権主張番号】10 2012 207 505.4
(32)【優先日】2012年5月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト・ヘルライン
(72)【発明者】
【氏名】ライナー・ハウスビルト
(72)【発明者】
【氏名】デイーター・バイトハウス
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−273831(JP,A)
【文献】
特開2012−116729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.001から200μmの結晶サイズの放射状針状結晶の集合体を含む緻密なマトリックスを含む、粒状多結晶シリコン。
【請求項2】
10μm未満のサイズ範囲の超微細粒子包有物を含んでいない、請求項1に記載の粒状多結晶シリコン。
【請求項3】
平行に配列された針状結晶を含む表層を含む、請求項1に記載または請求項2に記載の粒状多結晶シリコン。
【請求項4】
緻密なマトリックスおよび表層を含み、マトリックスおよび表層が平行に配列された針状結晶を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒状多結晶シリコン。
【請求項5】
1nmから10μm未満までのサイズ範囲の超微細粒子包有物を含んでいない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粒状多結晶シリコン。
【請求項6】
150μm−10mmの粒子サイズを有する、請求項1から5のいずれかに記載の粒状多結晶シリコン。
【請求項7】
請求項1から6に記載の粒状多結晶シリコンを生成するための方法であって、
a)第1の段階において高純度シリコンの種を用いて、900−970℃の流動床温度および0.7−2.1m/sの気体速度において、トリクロロシランと20−29mol%のトリクロロシラン含量を有する水素とを含む気体混合物から流動床反応器内で粒状シリコンを生成すること、b)少なくとも1つのスクリーンデッキを備えるスクリーンシステム内で得られた粒状シリコンを、少なくとも2つ以上のスクリーン画分に分割し、第1の段階において粉砕システム内で生成された粒状シリコンの中央値より小さい中央値を有する適切なスクリーン画分を粉砕して、100−1500μmのサイズおよび400−900μmの範囲の質量基準中央値を有する種粒子を生じさせること、ならびにc)これらの種粒子を、第2の段階において流動床反応器(1)に供給することを含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
600−8000μmの範囲の粒子サイズ分布および1200−2600μmの範囲の質量基準中央値を有するさらなるスクリーン画分が、流動床反応器(4)に供給され、870−990℃の流動床温度において、トリクロロシランと5.1−10mol%未満のトリクロロシラン含量を有する水素とを含む気体混合物によって表面処理される、方法。
【請求項9】
請求項7に記載または請求項8に記載の方法であって、
100mm超の高さを有する粒状シリコンの固定床(13)が、流動床反応器(1、4)内の反応器の基板上に延在しており、使用されるシリコンが、0.8超の平均真球度を有する、方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の方法であって、
添加システム内のパイプライン(50)および除去システム内のパイプラインが、モノ−またはポリシリコンボード(200)でライニングされており、ただし、窒素ドーピングと共にライニングとパイプラインの間に堆積されたシリコンロッド(201)がシリコンボードに加工されているものとする、方法。
【請求項11】
遮断弁(60)が使用されており、該遮断弁(60)の粒状シリコンと接触している部品が材料NBRから成る、請求項7から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
印刷可能型太陽電池の製造またはリチウムイオンバッテリー用アノード材料の製造用の請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒状多結晶シリコンの生成のための、オフガスと一緒に流動床反応器から放出されるナノスケール結晶質シリコン粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状多結晶シリコンおよびその生成に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状多結晶シリコンまたは略して粒状ポリシリコンは、シーメンス法で生成されるポリシリコンの代替物である。シーメンス法によるポリシリコンは、円筒形シリコンロッドとして得られ、これは、そのさらなる使用の前に、時間がかかりコストも高い方法で破砕してチップポリと呼ばれているものを得ねばならず、また、再び精製しなければならないこともあるのだが、粒状ポリシリコンならば、バルク材料特性を有しており、たとえば光起電およびエレクトロニクス産業用の単結晶生成のための原材料として直接使用できる。
【0003】
粒状ポリシリコンは、流動床反応器内で生成される。これは、流動床中の気体流によりシリコン粒子を流動化することで達成され、後者は、加熱装置によって高温に加熱される。シリコン含有反応ガスの添加により、熱い粒子表面において熱分解反応が起きる。これにより、シリコン元素がシリコン粒子上に堆積し、個々の粒子の直径が大きくなる。大きくなった粒子を定期的に除去し、比較的小さなシリコン粒子を種粒子(本文献では以降「種」と呼ぶ)として添加することにより、すべての関係利点を伴ったままでのプロセスの連続的実行が可能になる。記述されたシリコン含有反応剤ガスは、シリコン−ハロゲン化合物(たとえばクロロシランまたはブロモシラン)、モノシラン(SiH
4)およびこれらのガスと水素の混合物である。この目的のためのこのような堆積プロセスおよび装置は、たとえば、US4786,477から公知である。
【0004】
上記堆積プロセスから得られた粒状シリコンは、高純度、すなわち、ドーパント(特にホウ素およびリン)、炭素および金属の低含量を特徴としている。
【0005】
US4,883,687では、粒子サイズ分布の観点から規定された粒状シリコン、ホウ素、リンおよび炭素の含量、表面ダスト含量、ならびにそれらの密度およびかさ密度を開示している。
【0006】
US4,851,297では、ドープされた粒状ポリシリコンを、US5,242,671では、低下された水素含量を有した粒状ポリシリコンを記述している。
【0007】
US5,077,028では、低い塩素含量を特徴としている粒状ポリシリコンがクロロシランから堆積される方法を記述している。
【0008】
大規模生成される最近の粒状ポリシリコンは、多孔質構造と、これに起因する2つの深刻に不利な特性とを有する。
【0009】
ガスが細孔中に封入されている。このガスは、溶融の過程において放出されて、粒状ポリシリコンのさらなる処理を乱す。したがって、粒状ポリシリコンのガス含量を低減する試みが行われている。しかしながら、US5,242,671で記述されているように、さらなる加工ステップが必要となり、これにより生成コストが増大し、さらには、該顆粒のさらなる汚染をも引き起こす。
【0010】
粒状ポリシリコンは、特に耐摩滅性ではない。これは、該顆粒の取り扱い、たとえばユーザーへの輸送過程において、微細なシリコンダストが生じることを意味する。このダストは、いくつかの点で乱れをもたらす。
【0011】
シリコンダストは、該顆粒が溶融したときに浮遊してしまうため、粒状ポリシリコンのさらなる処理に乱れをもたらす。
【0012】
シリコンダストにより、パイプライン上に堆積物形成が引き起こされてバルブの閉塞が起きるので、生成プラント内での粒状ポリシリコンの輸送過程に乱れをもたらす。
シリコンダストは、その高比表面積のため潜在的な汚染キャリアである。
摩滅がすでに、粒状ポリシリコンの生成過程における流動床の損失につながる。
【0013】
不利なことに、シリコン含有反応剤ガスとしてのモノシランをベースにした生成の過程において、堆積プロセス中の摩滅に加えて、非晶質シリコンダストが、均一な気体相反応の帰結として直接形成されてしまう。
【0014】
この超微細ダストは、生成物から部分的には除去できるが、これは、不便さ、材料損失、および結果としてのさらなるコストも同様に意味する。
【0015】
US7,708,828では、理論上の固体密度の99.9%より大きな密度、ならびに結果としての0.1%未満の細孔分率および150nm未満の表面粗さRaを有する粒子から成る粒状多結晶シリコンを開示している。該粒子は、好ましくは、300ppta未満の、好ましくは100ppta未満のホウ素のドーパント含量を有する。該粒子は、好ましくは、250ppba未満の、好ましくは100ppba未満の炭素含量を有する。該粒子は、好ましくは、50ppbw未満の、好ましくは10ppbw未満の金属Fe、Cr、Ni、Cu、Ti、ZnおよびNaの総含量を有する。
【0016】
本発明の粒状ポリシリコンは、好ましくは、放射加熱された流動床反応器内で生成し得る。
【0017】
本発明の高純度粒状多結晶シリコンは、好ましくは、流動床においてシリコンの種結晶上に反応ガスを堆積することによって生成される。反応ガスは、好ましくは、水素とシリコン含有ガス好ましくはハロシランとの混合物、より好ましくは、水素とトリクロロシラン(TCS)の混合物から成る。堆積は、好ましくは、700℃から1200℃までの反応範囲の流動床の温度において実行される。流動床内に最初に装入された種結晶は、シリコン非含有流動化ガス、好ましくは水素を用いて流動化され、熱放射によって加熱される。熱エネルギーは、平らな放射式加熱器により、流動床の領域にわたって均一に導入される。反応ゾーンでは、CVD反応により、シリコン含有反応ガスがシリコン粒子上にシリコン元素として堆積する。未反応の反応ガス、流動化ガスおよび気体状反応副生成物は、反応器から除去される。堆積されたシリコンを備えた粒子を流動床から定期的に抜き出し、種結晶を添加することにより、該プロセスは、連続的に実行できる。
【0018】
反応区域内の流動床の温度は、好ましくは850℃から1100℃まで、より好ましくは、900℃から1050℃まで、最も好ましくは900℃から970℃までである。
【0019】
反応ガスは、1つまたは複数のノズルによって流動床内に注入できる。
【0020】
流動床を経由する総ガス量に基づいたシリコン含有反応ガスの濃度は、好ましくは10mol%から50mol%まで、より好ましくは15mol%から40mol%までである。反応ガスノズル内のシリコン含有反応ガスの濃度は、反応ガスノズルを経由する総ガス量に基づいて、好ましくは20mol%から65mol%まで、より好ましくは30mol%から65mol%まで、最も好ましくは40mol%から60mol%までである。
【0021】
粒状ポリシリコンの生成の過程では、わずかなダスト形成しか起きない。これ以下のレベルの摩滅は、公知のプロセスにおいて常に材料損失につながる微細ダストの流動床からの放出がほとんどないため、収率の増大につながる。
【0022】
しかしながら、従来技術から公知の粒状ポリシリコンは、特に良好な引上げ特性(溶融特性、リード頻度(lead frequency)、リードタイム)を有さない。リード頻度およびリードタイムの課題についての記述は、たとえば、Wacker Siltronic AGの特許DE10025870A1、段落0004、0016および0018、ならびにDE19847695A1に見出すことができる。
【0023】
この課題の解決策の一部は、はるかに大きな顆粒粒子サイズを有した顆粒を生成することである。大きな顆粒粒子サイズ用の生成プロセスには、流動床反応器中での流動化のために非常に高いガス量が必要となる。底部区域内に固定床ゾーンを有さない流動床では、固体の移動がより大きくなることで、底部区域を介した汚染がはっきりと起きる。
【0024】
高純度粒状ポリシリコンの生成の場合には、高純度種結晶が要求される。
【0025】
(US7,490,785で記述されているような)粉砕して高純度にする空気式ジェットミルは、1250μm超の質量基準中央値(mass−based median value)を有した大きな粒子サイズでは使用できない。
【0026】
これまでの技術的解決策は、ロールクラッシャーの使用であった。JP57067019(Shin Etsu Hondatai)に関するアブストラクトによれば、シリコン種粒子は、粒状シリコンをダブルロールクラッシャー内で破砕し、次いで、スクリーニング操作によって分画することで得られる。
【0027】
その他の元素によるシリコン種粒子の汚染は、シリコン層を備えたロールの表面によって阻止される。しかしながら、ロールとミリング材料との間のシリコン−シリコン材料の対は、ロール上のシリコン層の高い摩耗につながり、その結果、ロールを交換しなければならなくなるまでの機械の耐用年数は、短いものにしかなり得ない。したがって、経済的に成立可能な種の生成は不可能である。
【0028】
ロール摩耗に関する顕著な改善は、DE102004048948で記述されているように、硬い金属表面と適合するロールギャップ幾何形状(matched roll gap geometry)とを有したロールの使用によって提供されるが、これにより、B、C、Zn、Ti、Mg、W、Fe、Co、SbおよびZrによる種の汚染が起きる。
【0029】
スクリーン通過物(screen undersize)とロールクラッシャーで粉砕された種との種混合物を使用することにより、汚染の抑制が確実に行われるが、これもやはり、半導体産業におけるGFZ引上げ等のプロセスまたはるつぼ式引上げプロセス用には常に高すぎる。GFZ(粒状フロートゾーン)プロセスは、溶融した顆粒を用いてシリコンの単結晶の生成を提供する。その実施に適したプロセスおよび装置は、たとえば、DE102010006724A1に記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第4,786,477号明細書
【特許文献2】米国特許第4,883,687号明細書
【特許文献3】米国特許第4,851,297号明細書
【特許文献4】米国特許第5,242,671号明細書
【特許文献5】米国特許第5,077,028号明細書
【特許文献6】米国特許第7,708,828号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第10025870号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第19847695号明細書
【特許文献9】米国特許第7,490,785号明細書
【特許文献10】特開昭57−0670419号公報
【特許文献11】独国特許出願公開第102004048948号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第102010006724号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
記述した課題により、本発明の目的が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本目的は、請求項1から9によって達成される。
【0033】
本発明の粒状ポリシリコンは、緻密なマトリックスを含み、好ましくは、10μm未満のサイズ範囲の超微細粒子包有物を含んでいない。
【0034】
より詳細には、粒状ポリシリコンは、ナノメートル範囲の粒子を有さない。
【0035】
従来技術では、シリコンボール中のこれらの超微細粒子が、溶融特性、転位分率、リード頻度(lead frequency)、ライフタイムバリュー、結晶欠陥および引上げ性能の課題につながった。
【0036】
本発明の粒状ポリシリコンは、緻密なマトリックス中に、0.001から200μmまでの結晶サイズの放射状針状結晶集合体を有する。
【0037】
結晶サイズは、好ましくは0.01−4μmである。
【0038】
粒状シリコンの水素含量は、0.01−40ppmwの、好ましくは0.01−35ppmwの、より好ましくは0.01から0.2ppmwまでの範囲である。
【0039】
粒状ポリシリコンの塩化物価は、好ましくは、9から39ppmwまでの、より好ましくは、21から35ppmwまでの、より好ましくは21から30ppmwまでの範囲である。
【0040】
粒状ポリシリコン中の総炭素含量は、0.0015−0.09ppma、好ましくは0.0015−0.02ppma、最も好ましくは、0.0015から0.015ppmaまでである。
【0041】
バルクの粒状ポリシリコン中の炭素含量は、0.0005から0.01ppmaまでの範囲、好ましくは、0.0005から0.005ppmaまでの範囲である。
【0042】
粒状ポリシリコン中のフッ素含量は、0.0005から1ppmaまでの範囲、好ましくは、0.0005から0.2ppmaまでの範囲である。
【0043】
粒状ポリシリコン中のホウ素含量は、0.001−0.09ppba、好ましくは、0.001−0.008ppbaの範囲である。
【0044】
粒状ポリシリコンは、合計で0.001から1.5ppbwまでの範囲、より好ましくは0.03から1.0ppbwまでの範囲になる金属含量のZn、Ti、Mg、Zr、W、Fe、Co、Sbを含む。
【0045】
Zn含量は、0.001から0.4ppbwまでの範囲、より好ましくは0.01から1.0ppbwまでの範囲、より好ましくは0.01から0.1ppbwまでの範囲である。
【0046】
Ti含量は、好ましくは、0.0001から0.5ppbwの範囲である。
【0047】
Mg含量は、好ましくは、0.0001から0.1ppbwまでの範囲である。
【0048】
Zr含量は、好ましくは、0.0001から0.02ppbwまでの範囲である。
【0049】
W含量は、好ましくは、0.0001から0.05ppbwまでの範囲である。
【0050】
Fe含量は、好ましくは0.0001から0.1ppbwまでの範囲、より好ましくは0.0001から0.05ppbwまでの範囲である。
【0051】
Co含量は、好ましくは、0.00001から0.002ppbwまでの範囲である。
【0052】
Sb含量は、好ましくは、0.0001から0.007ppbwまでの範囲である。
【0053】
N
2含量は、1E+18at/cm
3から1E+15at/cm
3までの範囲である。
【0054】
微細ダスト含量は、0.01から10ppmwまでの範囲である。
【0055】
比表面積は、0.1から30cm
2/gまでの範囲、より好ましくは1から25cm
2/gまでの範囲、最も好ましくは1.5から15cm
2/gまでの範囲である。
【0056】
上述した粒状ポリシリコンは、好ましくは表面処理を受け、これにより、その結晶構造が変質される。
【0057】
一実施形態では、この場合のマトリックスは、放射状針状結晶集合体を含み、一方で、表層は、平行に配列された針状結晶を含む。
【0058】
しかしながら、本発明はまた、その中においてマトリックスと表層の両方ともが平行に配列された針状結晶を含む粒状多結晶シリコンにも関する。
【0059】
驚くべきことに、本発明者らは、単結晶を得るためのさらなる処理においては、顆粒サイズと、リードタイム、リード頻度および無変位収率との間に相関関係を見出した。リード頻度は、無変位単結晶を生成するのに必要とされる試行の数を意味すると理解されており、リードタイムは、種結晶が溶融したシリコンと最初に接触してからネック部の細い結晶(thin−neck crystal)の引上げの完了までの時間を意味すると理解されている(DE19847695A1を参照されたい)。はるかに高いライフタイムバリューが、本発明の粒状ポリシリコンによって生成された単結晶については測定される。
【0060】
それは、好ましくは、GFZ(600−4000μm、好ましくは、98質量パーセント超が600−2000μmの範囲で、1200−2600μmの範囲の質量基準中央値)と、るつぼ式引上げプロセス(600−8000μm、好ましくは98質量パーセント超が600−4000μmの範囲で、質量基準中央値が1200−2600μmの範囲)とに使用される。
【0061】
さらに、本発明の粒状ポリシリコンは(上述したように)、低い水素含量を有する。粒状ポリシリコンの熱後処理は要求されない。これは、溶融の過程におけるスパッタリングをはるかに少なくすることにつながる。粒状シリコンは、高温による熱後処理ステップを用いて分注することにより、費用を少なくして生成できる。
【0062】
本発明の粒状ポリシリコンは、好ましくは、表面に薄い酸化物層を有する。酸化物層の厚さは、原子3個分の層より小さくして、より良好な溶融特性、より低い転位分率およびより少ない結晶欠陥をもたらすのが好ましい。
【0063】
さらに、本発明の粒状ポリシリコンは(上述したように)、好ましくは、9−39ppmwの塩素含量を有する。これは、改善された溶融特性につながる。金属不純物は、溶融フェーズ中に放出される。
【0064】
本発明の粒状ポリシリコンの生成の過程においては、気体相は、900と970℃の間の温度範囲内および、20.5−24mol%(飽和:mol(TCS)/mol(TCS+H
2))の水素中TCS含量に設定される。
【0065】
これらの反応条件下では、結晶質シリコンナノ粒子が気体相内に形成され、これらは、反応条件と、0.7−2.1m/s、好ましくは0.8−1.2m/sの範囲の非常に高いレベルに同時に設定された気体速度とが起因して、粒状シリコン中には取り込まれないが、ガス流によって反応器から放出される。
【0066】
反対に、従来技術においては、これらのシリコンナノ粒子が粒状シリコン粒子に取り込まれていて、半導体産業におけるさらなる処理の過程で転位を引き起こす。
【0067】
本発明による方法では、これらの結晶質シリコンナノ粒子は、反応器からオフガスと一緒に放出される。
【0068】
本発明は、
図1−6を参照しながら以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】本方法の実施のための装置の概略を示す図である。
【
図2】パイプラインのライニングおよび検出コーティングの概略を示す図である。
【
図3】粒状多結晶シリコンのマトリックスおよび表層の概略を示す図である。
【
図4】放射状針状結晶集合体を有した顆粒のSEM画像を示す図である。
【
図5】平行に配列された針状結晶の層を有した顆粒のSEM画像を示す図である。
【
図6】A)光沢層なしおよびB)光沢層付きの顆粒のSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
気体相(95)からの除去後、これらの結晶質シリコンナノ粒子(97)は、印刷可能型太陽電池およびリチウムイオンバッテリーの製造に理想的な供給原料として役立つ。
【0071】
固形分非含有オフガス(96)は、従来技術によるガス回収に送られる。
【0072】
本発明の顆粒を生成するための方法は、100から1000mmまでの範囲、好ましくは100から500mmまでの範囲、より好ましくは120から140mmまでの範囲の高さを有する固定床用として注目に値する。
【0073】
固定床は、底板より先に100nm、好ましくは120mm超突出した、底部ガスノズル(流動化ガスノズル)(10)または底部ガス分配器によって実現されている。
【0074】
この固定床区域内では、反応器の壁面上加熱装置(wall heating)がなく、固定床区域は、壁面上加熱装置より下に10mm超、好ましくは50mm超である。
【0075】
底板より先に突出したノズルを有さない代替の固定床、たとえば大型のシリコンボールまたは大型のシリコン細片は、汚染および装置部品の破損なしで工業的に充填するのが不可能であるため、不利であることが見出された。
【0076】
汚染を回避するためには、種の調量による固定床の充填が特に有利であることが見出された。
【0077】
高い生成物の品質のためには、固定床材料の特に高い表面純度が決定的に重大である。したがって、本発明による方法から生成された顆粒、または表面がエッチングされた高純度シリコンが使用される。
【0078】
装置部品および反応器の壁を損傷させないようにするためには、10mm未満、好ましくは6mm未満の質量ベース最大直径を有する固定床材料が、特に有利であることが見出された。
【0079】
固定床の表面汚染を最小化するためには、0.8超の平均真球度が好ましく、0.9超がより好ましく、0.96超が最も好ましい。
【0080】
良好な引上げ性能を実現するためには、1つの種粒子画分のみから成る種が特に有利であることが見出された。
【0081】
粒状シリコンの引上げ性能は、種粒子の結晶サイズおよび結晶型が気体相から堆積したシリコンと同一だった場合には特に良好であることが見出された。
【0082】
驚くべきことに、粒状シリコンの結晶型は、種結晶の結晶型に影響されることが見出された。
【0083】
これらの種結晶の生成の過程においては、複合ライニングが用いられる。
【0084】
複合ライニングは、高純度モノ−またはポリシリコンから製造されたシリコンボードと、高度に解析学的に検出可能な窒素ドーピングと共に堆積された真下のポリシリコン層とから成る。
【0085】
種および生成物の汚染の恒常的な排除を可能にするために、本発明による方法は、パイプラインとシリコンライニングの間の検出コーティングを特徴としている。
【0086】
さらに、生成物の品質の解析学的モニタリングを定期的に行う。
【0087】
特に適した検出材料は、窒素ドーピングと共に堆積されたシリコンであることが見出された。
【0088】
しかしながら、良好な解析学的可測性を有し、生成物の品質を損なわないその他の材料の組合せもまたあり得る。特に適しているのは、硬質金属、たとえばタングステンおよび炭化タングステン、ステンレス鋼合金またはセラミックス、たとえばジルコニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムである。炭化タングステンは、非常に特に適している。
【0089】
窒素ならば、種および生成物の表面上のわずかな痕跡でも、SIMS測定によって良好に検出でき、同時に、さらなる処理における生成物の品質への副作用が最も小さい。
【0090】
生成物と接触しているバルブの部品は、NBR(ニトリル−ブタジエンゴム)から製造されている。
【0091】
さらに、スクリーン分離用の篩目開き(screen separation cut)は、500μmから750μm超まで上げられている。
【0092】
スクリーン分離用の篩目開きは、好ましくは、スクリーン通過物用には750と1500μmの間の範囲である。
【0093】
スクリーン分離用の篩目開きは、スクリーン通過物の量が種の生成に十分であるように選択される。
【0094】
続いて、スクリーン対象粒子(中程度のスクリーン画分)ではなくスクリーン通過物が、空気式ジェットミル内で粉砕される。
【0095】
空気式ジェットミルは、高純度材料、好ましくはシリコンでライニングされている。
【0096】
適切な粉砕プロセスについてのより詳細な記述は、US7,490,785に見出すことができる。
【0097】
この処置により、B、C、Zn、Ti、Mg、W、Fe、Co、SbおよびZrによる種粒子の汚染を阻止できる。
【0098】
不純物のごくわずかな痕跡もまた、増大されたガス量と、意図的に高く保持されている400℃超、好ましくは600℃超の反応器頂部温度とによって表面から取り除かれる。
【0099】
反応器頂部温度は、ガス量の選択、流動床温度、反応器の絶縁材の選択、および反応器チューブの長さによって確立できる。
【0100】
本発明の種生成のさらなる利点は、種が単一粒子画分のみから成ることである。
【0101】
本発明によればまた、上述した特性を有した高純度粒状シリコンの生成も可能であり、これは、結晶構造の変質を伴う表面処理をさらに受ける。
【0102】
この表層は、先述したように、顆粒反応器内で生成され、1−15mol%、好ましくは5.1−10mol%未満、最も好ましくは5.1−6.9mol%の水素中TCS含量を有している。
【0103】
上記プロセスステップは、コーティング反応器内に用いられる流動床温度が、堆積反応器の堆積温度(900−970℃)から+/−30℃未満異なることを特徴とする。
【0104】
本発明の粒状多結晶シリコンの生成について、以下で詳細に説明する。
【0105】
第1のプロセス段階では、粒状シリコンが、900−970℃の流動床温度(11)において、20−29mol%、好ましくは20.5−24mol%の水素中TCS含量を有する気体混合物と一緒に、流動床反応器(1)内に堆積される。気体混合物は、流動化ガス、好ましくは水素(10)と、反応ガス、より好ましくは水素中のTCS(9)とから構成されている。
【0106】
これにより、150−10000μmの範囲の粒子サイズ分布(12)を有し、好ましくは98質量パーセントが600−4000μmの範囲で、質量ベース中央値(x50,3)が1200−2600μmの範囲の粒状シリコンが生じ、その粒子マトリックス全体は、均一な結晶サイズ、結晶形状および純度を有するシリコンから成る。
【0107】
マトリックス全体中の結晶配列は、放射状針状結晶集合体を有する。
【0108】
さらに、マトリックス全体が、シリコンナノ粒子包有物を全く含有していない。
【0109】
第2のプロセス段階では、少なくとも1つのスクリーンデッキを有したスクリーンシステム2内で、この粒状シリコンが少なくとも2つ以上のスクリーン画分に分割される。
【0110】
最小スクリーン画分(スクリーン通過物、SU)が続いて粉砕システム3内で粉砕されて、100から1500μmまでの範囲のサイズと400−900μmの範囲の質量基準中央値とを有する種粒子が生じ、第1のプロセス段階に種結晶として送られる。
【0111】
1200−2600μmの範囲の質量基準中央値と共に、600−8000μmの範囲の粒子サイズ分布を有するスクリーン画分は、続いて好ましくは詰め込み(90)される。
【0112】
それは、好ましくは、GFZ(600−4000μm、好ましくは98質量パーセント超が600−2000μmの範囲で、質量基準中央値が1200−2600μmの範囲)と、るつぼ式引上げプロセス(600−8000μm、好ましくは98質量パーセント超が600−4000μmの範囲で、質量基準中央値が1200−2600μmの範囲)とに使用される。
【0113】
本発明によれば、それは、900−970℃の流動床温度において5.1−6.9mol%の水素中TCS含量を有する気体混合物により、さらなる流動床反応器(4)内で表面処理することができる。
【0114】
流動床反応器(4)内で粒子表面上に堆積された層は、平行に配列された針状結晶を該層が含むことを特徴とする。
【0115】
結晶形状の最適化により、表面処理された粒状シリコン(91)の引上げ性能をわずかに改善できるようになるが、相当なコストになってしまう。
【0116】
上記表層はまた、気体相堆積または摩滅された材料からの、10μm未満の区域の超微細粒子を全く含まないことも特徴とする。これらの超微細粒子は、引上げ性能における不利につながる。
【0117】
上記表層はまた、その表面への不純物の付着能力が良好というほどでないことも特徴とする。
【0118】
流動床反応器(1)と流動床反応器(4)は両方とも、100mm超、好ましくは120mm超の高さを有する粒状シリコンの固定床(13)が反応器の底板上に延在することを特徴とする。
【0119】
固定床は、底板より先に100mm超、好ましくは120mm超突出した、底部ガスノズル(流動化ガスノズル)(10)または底部ガス分配器によって実現されている。
【0120】
この固定床区域においては、反応器の壁面上加熱装置がなく、固定床区域は、壁面上加熱装置より下に10mm超である。
【0121】
汚染を阻止するために、固定床の充填が、種の調量(50)によって実行される。
【0122】
高い生成物の品質のためには、固定床材料の特に高い表面純度が決定的に重大である。
【0123】
したがって、本発明に依拠した方法による粒状材料、または表面がエッチングされた高純度シリコンが使用される。後者は、たとえば、シーメンス法または従来技術による粒状プロセスからの微粉に由来する。
【0124】
装置部品または反応器の壁を損傷させないようにするために、使用される固定床材料は、10mm未満の質量ベース最大直径を有するシリコンである。
【0125】
固定床の表面汚染を最小化するために、使用されるシリコンについては0.8超の平均真球度が好ましく、0.9超がより好ましく、0.96超が最も好ましい.
固定床は、流動床反応器の比エネルギー要件を断熱によって低下させる。
【0126】
驚くべきことに、粒状シリコン中の金属価、リン価およびホウ素価に関しては、固定床により明白な品質の改善もまた実現された。
【0127】
本方法は、高純度を実現するために、添加システム内のパイプライン(50)および除去システム内のパイプラインが、シーメンス法を用いてまたはFZ式もしくはるつぼ式引上げプロセスによって堆積されたシリコンロッドを製材して製造された、モノ−またはポリシリコンボード(200)でライニングされていることを好ましくは特徴とする。
【0128】
汚染を回避するよう、ライニング内の損傷部位の検出のために、窒素ドーピングと共にさらに堆積されたシリコンロッドがシリコンボードに加工されて、ライニングとパイプライン(201)との間に使用される。
【0129】
別法として、ライニングと装置の壁との間にはその他の検出材料もまたあり得る。
【0130】
それらの検出材料は、高純度で、生成物の品質を低下させず、良好な解析学的可測性を有することを特徴としていなければならない。
【0131】
半導体産業における高純度への要求を実現するため、特定の遮断弁(60)もまた使用される。
【0132】
これらの特定の遮断弁においては、粒状シリコンと接触しているすべての部品が、材料NBRから作製されている。
【0133】
このNBR(ニトリル−ブタジエンゴム)は、特に低い金属含量(たとえば、触媒としての少量のZn)にして製造されている。
【0134】
図3は、粒子内部の放射状針状結晶集合体(302および303)と、平行に配列された針状結晶を有した周囲の薄層(301)とを有する結晶形態の概略を示している。
【0135】
この特有の結晶形態により、著しく、より良好な引上げ性能が実現した。
【0136】
顆粒は、窒素含有シリコンの検出層を有したバルブおよびパイプラインライニングにより、Zn、Zrおよびホウ素を含んでいない。
【0137】
さらに、それら顆粒には、最適化された結晶サイズおよび結晶形態による防汚性表面が起因してMgおよびダストが少ない。
【0138】
Cl含量は、9−39ppmw、より好ましくは21から35ppmwまで、より好ましくは21から30ppmwまでである。
【0139】
結晶形態およびサイズは、表面エッチング(粒状ポリシリコン試料を粉砕し、次いで、二クロム酸カリウム溶液(水1リットル当たり45g)と40%HFとを一緒にして、二クロム酸カリウム溶液対HFの配合比を1:2にして用いて5−10秒間簡単に研磨およびエッチングされた)後の本発明の粒状ポリシリコンの研磨済み区画を5000倍拡大した走査型電子顕微鏡写真から判明する。
【0140】
炭素は、単結晶質試料についてASTM1391−93/2000に対して定量し、ホウ素およびリンは、単結晶質試料についてASTM F1389−00に対して定量し、Sbは、単結晶質試料についてASTM F1630−95に対して定量し、金属(Zn、Ti、Mg、Zr、W、Fe、Co)は、ASTM1724−01と同様にしてICP MSを用いて定量する。微細ダストは、DE2009P00133で記述されているように測定され、塩素測定にはSEMI PV10を用いる。
【0141】
比表面積(Sv)および粒子サイズ(ミニマムコード(minimum chord))は、Retsch Technology製のカムサイザー(Camsizer)(測定原理:ISO13322−2に対して動的画像分析、測定範囲:30μm−30mm、分析方法:粉末および顆粒の乾式測定)によって測定される。
【0142】
窒素は、EAGからAN456に対して、SIMS分析により測定される。
【0143】
水素は、ASTM E1447に対して、ガス融解分析により定量される。
【0144】
BET表面積は、ASTM D1993と同様にして決定される。
【0145】
酸化物層の厚さは、電子エネルギー損失分光法により測定され、酸化物層が十分に厚い場合は、ASTM576に対して、エリプソメーターが用いられる。
【0146】
寿命は、単結晶質試料について、SEMI AUX017に基づいて測定される。
【実施例】
【0147】
プロセス条件を変えて多数の実験を行った。
【0148】
本発明の実施例および比較例は、生成された顆粒に関するすべての重要なプロセスパラメータおよび特性決定データと共に、表1−3に見出すことができる。
【0149】
表1は、結晶形態についての正例1および2(放射状針状結晶集合体)と、結晶形態についての比較例(反例)1(放射状針状および平行な結晶集合体)とを示している。
【0150】
表2は、結晶形態についての正例3(粒子内部の放射状針状結晶集合体および周囲の薄層中の平行に配列された針状結晶)と、結晶形態についての比較例2(粒子内部の放射状針状結晶集合体および周囲の薄層中の平行および放射状に配列された針状結晶)とを示している。
【0151】
表3は、結晶形態についての正例4および比較例3(平行に配列された針状結晶)を示している。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
1 流動床反応器
2 スクリーンシステム
3 粉砕システム
4 流動床反応器
9 水素中のTCS
10 水素
10 底部ガスノズル(流動化ガスノズル)
12 粒子サイズ分布
13 固定床
50 種の調量
50 パイプライン
60 遮断弁
90 詰め込み
91 粒状シリコン
95 気体相
96 固形分非含有オフガス
97 結晶質シリコンナノ粒子
200 モノ−またはポリシリコンボード
201 パイプライン
301 平行に配列された針状結晶を有した周囲の薄層
302および303 粒子内部の放射状針状結晶集合体