特許第5722385号(P5722385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭コンクリート工業株式会社の特許一覧 ▶ 三山工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5722385-プレキャストコンクリート製格納容器 図000002
  • 特許5722385-プレキャストコンクリート製格納容器 図000003
  • 特許5722385-プレキャストコンクリート製格納容器 図000004
  • 特許5722385-プレキャストコンクリート製格納容器 図000005
  • 特許5722385-プレキャストコンクリート製格納容器 図000006
  • 特許5722385-プレキャストコンクリート製格納容器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722385
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート製格納容器
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20150430BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20150430BHJP
   G21F 1/04 20060101ALI20150430BHJP
   G21F 5/002 20060101ALI20150430BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   G21F9/36 501A
   G21F9/36 501C
   G21F9/36 501H
   G21F9/12 511A
   G21F9/12 501F
   G21F1/04
   G21F5/00 W
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-114595(P2013-114595)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-234996(P2014-234996A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2013年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116769
【氏名又は名称】旭コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592101149
【氏名又は名称】三山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】坂口 周示
(72)【発明者】
【氏名】清水 和久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英三
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3175670(JP,U)
【文献】 特許第4919528(JP,B2)
【文献】 特開2013−076659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/00 − 9/36
B01D 53/34
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に格納空間を有する容器本体と、この格納空間を閉塞する蓋体とを備えたプレキャストコンクリート製格納容器であって、前記格納空間に面し該格納空間内に配された放射性物質とイオン交換可能なゼオライトを含む放射性物質吸着層を備え、
前記放射性物質吸着層が、被格納物と前記容器本体との間に充填されたゼオライトを含む流動性を有する液状物質により形成されるものであるプレキャストコンクリート製格納容器。
【請求項2】
前記容器本体が底版とこの底版の外周部から起立する側版とを備え、前記底版及び前記側版の内面側に前記放射性物質吸着層を設けている請求項1記載のプレキャストコンクリート製格納容器。
【請求項3】
前記容器本体の上面と前記蓋体の下面との間に伸び能力を有する接着剤を用いて形成された接着部を備えている請求項1又は2記載のプレキャストコンクリート製格納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性汚染物質を格納しておくためのプレキャストコンクリート製格納容器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所を保有している日本では、地震や津波等何らかの原因により原子力発電所の事故が発生し、その周辺地域の放射能汚染が発生する重大な問題が発生しうる。その際に、汚染廃棄物の保管方法が大きな課題として挙げられる。特に、がれき処理や土壌の除染を行う際に発生する放射性物質を含む汚染土壌その他の汚染物質(以下、放射性汚染物質と称する)の保管方法が問題となる。ここで、各種放射性汚染物質を格納しておくための容器として、コンクリート製で箱状をなし内部に格納空間を有する容器本体と、この格納空間を被覆可能な蓋体とを備えた格納容器が広く知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような格納容器は、3年程度の期間、保管しておくための仮置場を対象とし、この仮置場に一時的に保管するための容器として開発されていることが多い。
【0003】
しかし、放射性汚染物質の保管期間は明確でないので、放射性汚染物質を格納しておくための格納容器としては、保管施設周辺が生活圏となる住民が安全にかつ安心して生活できるように、前記仮置場や、一定の期間保管する中間貯蔵施設だけでなく、永久的に保管しておくための最終処分場まで対応可能なものが必要となる。そのためには、不測の事態を考慮して永久的に容器外へ放射性汚染物質を流出させないようにすることが必要である。不測の事態としては、内部に放射性汚染物質を収納した袋体が何らかの要因で破損することにより放射性物質が該袋体の内部から容器内に流出し、その状態で該容器に長期保管による経年劣化等何らかの要因でひび割れ等の破損が発生することにより、破損箇所から放射性物質が容器外にさらに流出することが考えられる。このような放射性物質の流出を防ぐための手段としては、容器本体の内面に樹脂等により形成した防水層を設けること等が従来考えられているが、長期保管を行う場合は防水層自体も経年劣化により破損することがあり、この破損箇所から放射性物質が容器外に流出することがなお発生し得る。そのため、放射性物質の漏出をより確実に防ぐことができるコンクリート製容器が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−46190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上の点に着目し、放射性物質の外部への流出を防止又は抑制することができるコンクリート製格納容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決すべく、本発明に係るプレキャストコンクリート製格納容器は、以下に述べるような構成を有する。すなわち本発明に係るプレキャストコンクリート製格納容器は、内部に格納空間を有する容器本体と、この格納空間を閉塞する蓋体とを備えたプレキャストコンクリート製格納容器であって、前記格納空間に面し該格納空間内に配された放射性物質とイオン交換可能なゼオライトを含む放射性物質吸着層を備え、前記放射性物質吸着層が、被格納物と前記容器本体との間に充填されたゼオライトを含む流動性を有する液状物質により形成されるものである。
【0007】
このようなものであれば、被格納物に含まれるセシウム等の放射性物質が放射性物質吸着層に含まれるゼオライトとイオン交換を行うことによりこのゼオライトに吸着されるので、放射性物質の容器外への漏出をより確実に防止又は抑制することができる。
【0008】
このようなプレキャストコンクリート製格納容器を容易に実現するための容器本体の構成として、底版とこの底版の外周部から起立する側版とを備え、前記底版及び前記側版の内面側に前記放射性物質吸着層を設けているものが挙げられる。
【0011】
このような格納容器に格納した放射性物質の漏出をさらに確実に防止又は抑制するための構成として、前記容器本体の上面と前記蓋体の下面との間に伸び能力を有する接着剤を用いて形成された接着部を備えているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射性物質の外部への流出を防止又は抑制することができるコンクリート製格納容器、及びこのようなコンクリート製格納容器に用いられるパネルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に関連したプレキャストコンクリート製格納容器を示す全体斜視図。
図2】同プレキャストコンクリート製格納容器を示す正面図。
図3】同プレキャストコンクリート製格納容器の容器本体を示す平面図。
図4図3におけるA−A断面図。
図5】本発明の一実施形態のプレキャストコンクリート製格納容器を示す断面図。
図6】本発明に関連したゼオライトパネルの一使用態様を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面を参照しつつ以下に示す。
【0015】
図1図4に示すプレキャストコンクリート製格納容器1は内部に格納空間Sを有する容器本体2と、この格納空間Sを閉塞する蓋体3と、前記容器本体2の上面と前記蓋体3の下面との間に伸び能力を有する接着剤を用いて形成された接着部4とを備える。そして、前記格納空間Sに面し該格納空間S内に配された放射性物質とイオン交換可能なゼオライトを含む放射性物質吸着層であるゼオライトパネル5を有している。
【0016】
前記容器本体2は、底版6と、この底版6の外周部から起立する側版7とを備えている。また、これら底版6及び側版7により区画される空間は、放射性物質を含む被収納物を内部に格納可能な前記格納空間Sである。前記側版7の上面のうち前記格納空間S寄りの部位には、上方に突出する突起71が形成されている。この突起71の隅部には、蓋体3側から挿し通したボルトBを螺着するためのインサートナット72を埋設している。また、この突起71から外方に所定距離だけ離間した位置には、後述する接着部4を形成するための接着剤が外方に流失しないようにするためのシール材73を配している。さらに、前記底版6及び側版7の内面すなわち前記格納空間Sに向かう面には、前記ゼオライトパネル5を内部に配するための凹部6a、7aが設けられている。そして、放射性物質を含む被収納物が前記格納空間Sに配された状態で、この容器本体2の上方に前記蓋体3が配され、前記格納空間Sが閉塞されるようにしている。
【0017】
前記蓋体3は、平面視した場合に前記容器本体2と同一の形状をなす。この蓋体3の下面には、前記容器本体2の突起71を内部に収納可能な凹部3aが設けられている。また、この蓋体の四隅部には、前記容器本体2のインサートナット72に螺着させることによりこの蓋体3を容器本体2に締結するためのボルトBを挿し通すためのボルト挿通孔3bを設けている。このボルト挿通孔3bの上部には、前記ボルトBの頭部を収納するための座ぐり部を設けている。そして、この凹部3aの内部に容器本体2の突起71を収納した状態で、この蓋体3と前記容器本体2との間に、接着部4を配して前記格納空間Sを密閉するようにしている。
【0018】
前記接着部4は、前記底版6の突起71の外側面、前記底版6の上面、前記シール材73の内側面及び前記蓋体3の下面により区画される領域に配されており、上述したように伸び能力を有する接着剤を用いて形成されている。
【0019】
しかして前記ゼオライトパネル5は前記底版6及び前記側版7の内面側に形成されている。より具体的には、前記放射性物質吸着層は、前記底版6及び前記側版7の内面に設けた凹部6a、7a内に配されている。また、前記ゼオライトパネル5はFRP等の樹脂製又は金属製の格子枠内に、粒状のゼオライトを充填することにより形成されている。すなわち、このゼオライトパネル5は、比表面積を大きくして吸着効果を高めるべく、粒状のゼオライトの表面が外部に露出したポーラス状に形成されている。また、前記格子枠は、このゼオライトパネル5の外面を形成しているとともに、ゼオライトを内部に充填した状態を保つための枠材として機能している。
【0020】
このプレキャストコンクリート製格納容器1は、以下のような態様で使用される。すなわち、放射性汚染物質、換言すれば放射性物質を含む土壌等の廃棄物を内部に格納した被格納物である袋体Wを格納空間S内に配した状態で、蓋体3の下面の凹部3a内に容器本体2の突起71を収納し、接着部4を介して容器本体2と蓋体3とを接着した後、蓋体3側から固定用ボルトBを挿し通して容器本体2のインサートナット72に固定用ボルトBを螺合させ、蓋体3と容器本体2とを締着する。
【0021】
すなわち図1図4に示す構成によれば、前記袋体Wの内部からセシウム等の放射性物質が漏出した場合、この放射性物質は容器本体2の内面に配したゼオライトパネル5に接することとなる。その際に、前記放射性物質はゼオライトパネル5内部のゼオライトとイオン交換され、ゼオライト内に吸着される。そして、経年劣化等により容器本体2が破損しても、放射性物質はゼオライトパネル5内に吸着された状態であるので、放射性物質の容器外への漏出は、従来のコンクリート製容器と比較してより確実に防止ないし抑制される。
【0022】
また、前記容器本体2が底版6とこの底版6の外周部から起立する側版7とを備え、前記底版6及び前記側版7の内面側に前記ゼオライトパネル5を設けているので、箱形をなす容器本体2を備えたこの種のコンクリート製容器を容易に実現できる。
【0023】
さらに、前記ゼオライトパネル5を放射性物質吸着層として設けているので、容器内に被格納物を格納する作業に先立ち、例えばこの格納容器1を除染の現場に搬入するより以前に、このようなゼオライトパネル5を前記底版6及び前記側版7の内面側に配するようにすることができ、手間の削減を図ることができる。
【0024】
そして、前記容器本体2の上面と前記蓋体3の下面との間に伸び能力を有する接着剤を用いて形成された接着部4を備えているので、固定用ボルトBが腐食した状態で蓋体3が容器本体2に対して相対移動するような作用を受けた場合であっても、接着層が伸びて蓋体3が容器本体2に密着し格納空間Sが密閉されている状態を保つことができるので、格納容器1に格納した放射性物質の漏出をさらに確実に防止又は抑制することができる。
【0025】
なお、パネル5の構成は以上に述べた形態に限らない。
【0026】
例えば、上述した形態では、前記放射性物質吸着層がゼオライトを含むパネルであるが、このパネルは、以下のように形成されたものであってもよい。すなわち、顆粒状のゼオライト、ファイバー及びセメントペーストを混ぜ合わせて板状に形成したものをゼオライトパネルとしてもよい。この場合、ファイバー及びセメントペーストが請求項中のゼオライト同士を結合させる結合部材としての機能を有する。また、顆粒状のゼオライト及びセメントペーストを混ぜ合わせて板状に形成し、さらに粉末状のゼオライトと水とを混ぜ合わせたゾル状物質を塗布したものをゼオライトパネルとしてもよい。この場合、セメントペーストが請求項中のゼオライト同士を結合させる結合部材としての機能を有する。
【0027】
このようなものであっても、放射性物質を含む被格納物である袋体の内部からセシウム等の放射性物質が漏出した場合、この放射性物質は容器本体の内面に配したゼオライトパネルに接し、その際に前記放射性物質はゼオライトパネル内部のゼオライトとイオン交換され、ゼオライト内に吸着される。従って、放射性物質の容器外への漏出は、従来のコンクリート製容器と比較してより確実に防止ないし抑制される。
【0028】
加えて、上述した形態では、前記放射性物質吸着層であるパネルは、比表面積を大きくして吸着効果を高めるべくポーラス状に形成しているが、ポーラス状でないパネルを採用してもよい。
【0029】
このようなゼオライトを含むパネルは、既設又は新設のコンクリート製構造物により形成された管渠の内面に設けることもできる。すなわち、図6に示すように、コンクリート製構造物であるボックスカルバートX1を複数敷設することにより形成した管渠において、ボックスカルバートX1の底版X6及び側版X7の内面にこのようなゼオライトを含むパネルX5を配することもできる。このようにボックスカルバートX1を複数敷設することにより形成した管渠の内面にゼオライトを含むパネルX5を配すると、管渠内を流れる水に混入した放射性物質をパネルX5中のゼオライトとイオン交換させてパネルX5内のゼオライトに放射性物質を吸着させることができる。従って、放射性汚染物質の一時貯蔵施設や最終処理施設内から排水を行うための管渠、或いは除染現場近辺の水路を形成する管渠を構成するコンクリート製構造物の内面にこのようなパネルX5を配することにより、一時貯蔵施設、最終処理施設又は除染現場近辺からの排水に混入した放射性物質を外部に拡散することを防止又は抑制することができる。なお、図6においてはボックスカルバートX1を地下に埋設して形成した暗渠を示しているが、上方に開口したコンクリート製構造物を複数敷設することにより形成した開渠を構成するコンクリート製構造物の内面にこのようなパネルX5を配してももちろんよい。また、ボックスカルバートに限らず、ヒューム管等、管渠を形成可能な他のコンクリート製構造物の内面にこのようなパネルを配してももちろんよい。
【0030】
さらに、前記放射性物質吸着層を、被格納物と前記容器本体との間に充填されたゼオライトを含む流動性を有する液状物質により構成してもよい。すなわち、図5に示す格納容器A1を用いて、以下のように構成してもよい。換言すれば、粉末状のゼオライトと水とを練り混ぜて流動性を有する液状物質を作り、放射性物質を含む被格納物である袋体Wを格納空間Sに格納した状態で、この液状物質を、被格納物Wと容器本体A2との間に充填して放射性物質吸着層A5を形成するようにしてもよい。ここで、前記格納容器A1は、上述した実施形態における格納容器1と略同様の構成を有する。すなわち、この格納容器A1は、内部に格納空間Sを有する容器本体A2と、この格納空間Sを閉塞する蓋体A3と、前記容器本体A2の上面と前記蓋体A3の下面との間に伸び能力を有する接着剤を用いて形成された図示しない接着部とを備えている。さらに、容器本体A2は、底版A6と、この底版A6の外周部から起立する側版A7とを備え、これら底版A6及び側版A7により区画される空間が前記格納空間Sである。本実施形態によれば、放射性物質が袋体の外部に漏れた場合であっても放射性物質は容器本体に達する前に放射性物質吸着層に接し、放射性物質吸着層のゼオライトと放射性物質とがイオン交換するので、放射性物質は放射性物質吸着層に吸着される。従って、このような構成であっても、放射性物質の外部への漏出を防止又は抑制することができる。
【0031】
そして、上述した実施形態では、容器本体は直方体状又は立方体状をなしているが、容器本体の形状は、これ以外に、円筒状、六角柱状、球状、半球状等、任意に設定してよい。
【0032】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0033】
A1…格納容器
A2…容器本体
A3…蓋体
A5…放射性物質吸着層
S…格納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6