特許第5722412号(P5722412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722412ポリプロピレン樹脂組成物、成形体および積層構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5722412
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】ポリプロピレン樹脂組成物、成形体および積層構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20150430BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20150430BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08L101/00
   B32B27/32 Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-237337(P2013-237337)
(22)【出願日】2013年11月15日
【審査請求日】2013年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104364
【氏名又は名称】出光ライオンコンポジット株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501304803
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・パワーシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲真▼島 一道
(72)【発明者】
【氏名】山本 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】坂口 恭生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 元晴
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝則
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−049058(JP,A)
【文献】 特開2012−180477(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/058914(WO,A1)
【文献】 特開2006−083223(JP,A)
【文献】 特開平11−080457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
101/00−101/14
B32B 27/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)プロピレン単独重合部82質量%以上100質量%以下と、(B)溶解度パラメータが7.0以上9.5以下の樹脂成分0質量%以上18質量%以下と、からなる重合樹脂を含有し、
ロックウェル硬度が85以上であり、曲げ弾性率が1500MPa以上である
ことを特徴とする防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物において、
230℃以下に融解ピーク温度を有する難燃剤を、前記ポリプロピレン樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下含有する
ことを特徴とする防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物において、
300℃以下に1%質量減少ピーク温度を有する難燃剤を、前記ポリプロピレン樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下含有する
ことを特徴とする防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物において、
前記重合樹脂中の前記(A)成分と前記(B)成分との質量比率が、82:18〜95:5の範囲であり、
脆化温度が−15℃以下である
ことを特徴とする防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物を成形してなることを特徴とする防蟻用成形体。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備えることを特徴とする防蟻用積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体および積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂組成物を電線ケーブルや建築材に使用する場合は、白蟻による食害(蟻害)に見舞われるおそれがある。そのため、この樹脂組成物に白蟻の忌避剤成分を添加することなどが行われている。しかしながら、忌避剤成分のブルームなどにより、白蟻に対する忌避性が低下するといった問題がある。
一方、酸素指数20以上かつ硬度(ショアD)60以上のポリプロピレンからなる層を備える難燃防蟻ケーブルが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−174574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の難燃防蟻ケーブルにおいては、白蟻による食害を受けにくい性質(防蟻性)の点で、必ずしも十分なものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、十分な防蟻性を有し、かつこの防蟻性の耐久性が優れているポリプロピレン樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体および積層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決すべく、本発明は、以下のようなポリプロピレン樹脂組成物、成形体および積層構造体を提供するものである。
本発明の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物は、(A)プロピレン単独重合部82質量%以上100質量%以下と、(B)溶解度パラメータが7.0以上9.5以下の樹脂成分0質量%以上18質量%以下と、からなる重合樹脂を含有し、ロックウェル硬度が85以上であり、曲げ弾性率が1500MPa以上であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物においては、230℃以下に融解ピーク温度を有する難燃剤を、前記ポリプロピレン樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下含有していてもよい。
本発明の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物においては、300℃以下に1%質量減少ピーク温度を有する難燃剤を、前記ポリプロピレン樹脂組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下含有していてもよい。
本発明の防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物においては、前記重合樹脂中の前記(A)成分と前記(B)成分との質量比率が、82:18〜95:5の範囲であり、脆化温度が−15℃以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の防蟻用成形体は、前記防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物を成形してなることを特徴とするものである。
本発明の防蟻用積層構造体は、前記防蟻用ポリプロピレン樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、十分な防蟻性を有し、かつこの防蟻性の耐久性が優れているポリプロピレン樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体および積層構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】防蟻性の評価用の試験片を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物(以下、単に「本組成物」ともいう。)は、以下説明する重合樹脂を含有し、ロックウェル硬度が85以上であり、曲げ弾性率が1500MPa以上であるものである。以下、詳細に説明する。
【0012】
本組成物においては、ロックウェル硬度が85以上であることが必要である。ロックウェル硬度が85未満では、白蟻の噛みつきによる食害を受けるので、防蟻性が不十分となる。また、防蟻性と耐衝撃性など他の物性とのバランスの観点から、ロックウェル硬度は86以上、105以下であることが好ましい。なお、ロックウェル硬度は、ASTM D785の記載に準拠する方法で測定できる。
【0013】
本組成物においては、曲げ弾性率が1500MPa以上であることが必要である。曲げ弾性率が1500MPa未満では、白蟻の噛みつきによる食害を受けるので、防蟻性が不十分となる。また、防蟻性と耐衝撃性など他の物性とのバランスの観点から、曲げ弾性率は、1550以上、2000MPa以下であることが好ましい。なお、曲げ弾性率は、ASTM D790の記載に準拠する方法で測定できる。
【0014】
本組成物においては、脆化温度が−15℃以下であることが好ましい。脆化温度が低いほど、耐寒性の優れるものといえる。なお、脆化温度は、JIS C3005の記載に準拠する方法で測定できる。
【0015】
[重合樹脂]
本発明に用いる重合樹脂は、少なくとも(A)プロピレン単独重合部を含む重合樹脂である。この重合樹脂としては、(A)成分のみのプロピレン単独重合体でもよいが、成形性や物性などを本組成物の使用目的に応じて調整できるという観点から、(A)成分以外に、(B)溶解度パラメータが7.0以上9.5以下の樹脂成分を有する重合樹脂であってもよい。
この重合樹脂は、(A)成分を82質量%以上100質量%以下含むことが必要であり、この場合、(B)成分を0質量%以上18量%以下含む。(A)成分の含有量が前記範囲外の場合には、ロックウェル硬度および曲げ弾性率が低下して、白蟻の噛みつきによる食害を受けるので、防蟻性が不十分となる。また、防蟻性と他の物性などのバランスの観点から、重合樹脂中の(A)成分は、82質量%以上95質量%以下であることが好ましく、90質量%以上95質量%以下であることがより好ましい。一方で、重合樹脂中の(B)成分は、5質量%以上18質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
この重合樹脂における(A)成分と(B)成分との混合方法は、特に限定されない。この混合方法としては、例えば、プロピレン重合時に共重合を伴う混合方法であってもよく、溶融混練による混合方法であってもよい。また、この共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0016】
(B)成分は、溶解度パラメータが7.0以上9.5以下の樹脂成分であることが必要である。溶解度パラメータが前記範囲外の場合には、(A)成分との相溶性が劣り、(A)成分と(B)成分とを混合することができないため、均一なポリプロピレン樹脂組成物を得ることができない。なお、溶解度パラメータは、Fedorsの方法(Polymer Engineering and Science, vol.14,P152)によって計算することができる。また、実用的には「新版プラスチック配合剤−基礎と応用−(大成社刊)」などの公知の文献に記載されている値を用いることができる。
【0017】
(B)成分としては、特に限定されないが、プロピレンとプロピレン以外のα−オレフィン共重合体、ビニル系樹脂、ジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂(ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン(炭素数3〜12)共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ポリプロピレン系樹脂(プロピレン−α−オレフィン(炭素数4〜12)共重合体など)、(メタ)アクリル系樹脂((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、および(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどからなる群から選択される少なくとも1種以上のモノマーの(共)重合物など)、スチレン系樹脂(ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル酸エステル樹脂、HIPSなど)などが挙げられる。
ジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体など)などが挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック共重合体、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−エチレンブロック共重合体、および、これらを水添した誘導体などが挙げられる。
【0018】
[難燃剤]
本組成物は、難燃性の観点から、前記重合樹脂とともに、難燃剤を含有してもよい。
難燃剤としては、230℃以下に融解ピーク温度を有する難燃剤、および300℃以下に1%質量減少ピーク温度を有する難燃剤が挙げられる。
これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、これらの難燃剤を併用する場合、これらの難燃剤の合計の含有量は、本組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0019】
(230℃以下に融解ピーク温度を有する難燃剤)
230℃以下に融解ピーク温度を有する難燃剤としては、特に限定されないが、テトラブロモビスフェノールAおよびその誘導体、テトラブロモビスフェノールSおよびその誘導体、トリス(ブロモネオペンチル)ホスフェートおよびその誘導体、トリアリルイソシアヌレート−6臭素化物およびその誘導体などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、これらの誘導体は、化合物の一部の分子が置換されたもので、難燃剤としての機能が損なわれないいずれの誘導体を対象とすることができる。なお、融解ピーク温度は、JIS K7121およびK7122に記載に準拠する方法により測定できる。
このような難燃剤を添加することにより、ポリプロピレン樹脂組成物中に、溶融し、取り込まれる。そのため、ポリプロピレン樹脂組成物の機械的物性の低下が生じにくく、更に、防蟻性を損なわなくすることができる。
このような難燃剤の含有量は、本組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。このような難燃剤の含有量が前記下限未満では、難燃性が劣り、電線ケーブルなどに用いた場合、耐トラッキング性に劣り発火が生じるおそれがあり、他方、前記上限を超えると、ペレット造粒時や押出成形体の成形、または二次加工における賦形性に問題が生じ、更に成形性や成形体の機械的物性が低下するおそれがある。
【0020】
(300℃以下に1%質量減少ピーク温度を有する難燃剤)
300℃以下に1%質量減少ピーク温度を有する難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸と、トリアジン誘導体またはジアミン(線状ジアミン、ピペラジンまたはピペラジン環を含むジアミンなど)とからなる2種のリン酸塩化合物をそれぞれ1質量%以上99質量%以下含有してなるリン酸塩混合物およびその誘導体、リン酸エステルおよびその誘導体、金属水酸化物、硫酸メラミン、赤燐、アルコキシイミノ基ヒンダードアミン系化合物およびその誘導体などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ここで、これらの誘導体は、化合物の一部の分子が置換されたもので、難燃剤としての機能が損なわれないいずれの誘導体を対象とすることができる。なお、1%質量減少ピーク温度は、熱量計測装置(TGA)を用いて、試料(難燃剤)を窒素雰囲気中で、20℃/分の昇温速度で昇温し、試料の質量が1%減少した温度を1%質量減少ピーク温度として測定できる。
このような難燃剤の含有量は、本組成物100質量%に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。このような難燃剤の含有量が前記下限未満では、難燃性が劣り、電線ケーブルなどに用いた場合、耐トラッキング性に劣り発火が生じるおそれがあり、他方、前記上限を超えると、ペレット造粒時や押出成形体の成形、または二次加工における賦形性に問題が生じ、更に成形性や成形体の機械的物性が低下するおそれがある。
【0021】
[難燃助剤]
本組成物は、必要に応じて、前記重合樹脂および前記難燃剤とともに、難燃助剤を含有していてもよい。難燃助剤としては、特に限定されないが、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、ポリテトラフルオロエチレン、二酸化珪素、ハイドロタルサイト、重炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化バナジウム、酸化モリブデンおよびその表面処理品、メラミン、メラミンシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、モノペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。これらの難燃助剤の含有量は、本組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。これらの中でも、難燃剤との相乗効果を発現し、樹脂組成物の難燃性を向上するという観点から、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、ポリテトラフルオロエチレン、金属酸化物(酸化亜鉛など)、二酸化珪素が好ましい。
【0022】
[添加剤]
本組成物は、必要に応じて、前記重合樹脂、前記難燃剤および前記難燃助剤とともに、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、結晶核剤、軟化剤、帯電防止剤、金属不活性化剤、抗菌・抗カビ剤、顔料などが挙げられる。
このような添加剤の含有量は、本組成物の特性が損なわれない範囲であれば特に制限はない。
【0023】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、樹脂成分の劣化を促進する紫外線を吸収する成分であり、特に限定されないが、ベンゾフェノン化合物、トリアゾール化合物、ベンゾエート化合物などが挙げられる。
具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどの2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジンなどのトリアリールトリアジン類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(光安定剤)
光安定剤は、樹脂成分の劣化を促進するラジカルを取り込む成分であり、特に限定されないが、N−H型ヒンダードアミン化合物、N−メチル型ヒンダードアミン化合物、N−O−R型ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。
具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカンなどのヒンダードアミン化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
なお、これらの紫外線吸収剤および光安定剤とは、それぞれ単独で用いてもよく、混合して用いてもよいが、樹脂成分の劣化をより防止できるという観点から、混合して用いることが好ましい。
【0026】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、特に限定されないが、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
リン系酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
チオエーテル系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリルなどのジアルキルチオジプロピオネート類;ペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
(滑剤)
滑剤としては、特に限定されないが、脂肪酸アミド系滑剤、脂肪酸エステル系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸金属塩系滑剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂肪族アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
脂肪族エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリル酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、炭素数28〜30の直鎖状で分岐がない飽和モノカルボン酸(以下モンタン酸と略記する)とエチレングリコールのエステル、モンタン酸とグリセリンのエステル、モンタン酸とブチレングリコールのエステル、モンタン酸とトリメチロールエタンのエステル、モンタン酸とトリメチロールプロパンのエステル、モンタン酸とペンタエリスリトールのエステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスクイオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレートなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
脂肪酸系滑剤のうち飽和脂肪酸としては、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸などが挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸およびモンタン酸などが挙げられる。
脂肪酸系滑剤のうち不飽和脂肪酸としては、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、エライジン酸(trans−9−オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis−11−オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13−オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13−オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)などが挙げられる。
これらの脂肪酸系滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
脂肪酸金属塩系滑剤としては、前記脂肪酸系滑剤の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩およびアルミニウム塩などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
(結晶核剤)
結晶核剤としては、特に限定されないが、ソルビトール類、リン系核剤、ロジン類、石油樹脂類などが挙げられる。
具体的には、アルキル置換ベンジリデンソルビトールなどのソルビトール類(1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−o−メチルベンジリデン2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)ソルビトールなど)、リン系核剤(リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、有機リン酸塩系複合品など)、安息香酸ナトリウム、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリンクレー、タルク、ロジン類、石油樹脂類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(軟化剤)
軟化剤としては、特に限定されないが、流動パラフィン、鉱物油系軟化剤(プロセスオイル)、非芳香族系ゴム用鉱物油系軟化剤(プロセスオイル)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、特に限定されないが、カチオン系帯電防止剤、アニオン系帯電防止剤、ノニオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの脂肪酸部分エステル類が挙げられる。
具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメソスルフェート、(3−ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ステアロアミドプロピルジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、ステアロアミドプロピルジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムリン酸塩、カチオン性ポリマー、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硝酸エステル塩、リン酸アルキルエステル塩、アルキルホスフェートアミン塩、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエーテルブロックコポリマー、セチルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、特に限定されないが、ヒドラジン系金属不活性化剤、窒素化合物系金属不活性化剤、亜リン酸エステル系金属不活性化剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドラジン系金属不活性化剤としては、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、デカンジカルボン酸ジサリチロイルビドラジド、シュウ酸ビスベンジリデンヒドラジドなどが挙げられる。
窒素化合物系金属不活性化剤としては、N,N’−ビス{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシル]エチル}オキサミド、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4,−トリアゾール、酸アミド系金属不活性化剤、メラミンなどが挙げられる。
亜リン酸エステル系金属不活性化剤としては、トリス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5−t−ブチル)フェニル−5−メチル]ホスファイトなどが挙げられる。
これらの金属不活性化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(抗菌・抗カビ剤)
抗菌・抗カビ剤としては、特に限定されないが、有機化合物系抗菌・抗カビ剤、天然物有機系抗菌・抗カビ剤、無機物系抗菌・抗カビ剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機化合物系抗菌・抗カビ剤としては、チアベンダゾール、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、パラオキシ安息酸メチル、パラオキシ安息酸エチル、パラオキシ安息酸プロピル、N−(フルオロシクロメチルチオ)−フタルイミド、ビス(1−ヒドロキシ−2(IH)ピリジンチオナート−O,S)亜鉛、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、10,10’−オキシビスフェノキシアルシンなどが挙げられる。
天然物有機系抗菌・抗カビ剤としては、イソチオシアン酸アリルなどが挙げられる。
無機物系抗菌・抗カビ剤としては、銀を担持したシリカゲル、銀を担持したゼオライト、銀イオンを担持したヒドロキシアパタイト、銀イオンを担持した水ガラス、銀イオンを担持したリン酸ジルコニウム、銀イオンを担持したポリリン酸アンモニウム、銀および銅イオンを担持したゼオライト、亜鉛を担持したゼオライトなどが挙げられる。
これらの抗菌・抗カビ剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(顔料)
顔料としては、特に限定されないが、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。
無機顔料としては、酸化チタン、ベンガラ、アルミナホワイト、黄色酸化鉄、カドミウムレッド、朱、黄鉛、モリブデートオレンジ、石膏、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、鉛白、群青、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、エメラルドグリーン、紺青、カーボンブラック、アルミニウム粉、亜鉛粉などが挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、酸性染料レーキ、塩基性染料レーキ、縮合多環顔料などが挙げられる。
これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
[混練・成形]
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、各原料を溶融混練し、ペレタイザーにてペレットとして調製される。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、得られたペレットを原料として、成形体や積層構造体とすることができる。
【0040】
[成形体]
本発明の成形体は、前記本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形してなるものである。
この成形体は、例えば、ペレットとされたポリプロピレン樹脂組成物を、所定の形状に成形することで製造できる。
ここで、成形方法としては、特に限定されないが、異形押出成形、シート押出成形などが挙げられる。
本発明の成形体は、前記本発明のポリプロピレン樹脂組成物を成形してなるものであり、十分な防蟻性を有し、かつこの防蟻性の耐久性が優れているものである。そのため、本発明の成形体は、建築ボードなどの建築材などとして好適に用いることができる。なお、本発明の成形体の用途は、これに限定されない。
【0041】
[積層構造体]
本発明の積層構造体は、前記本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備えるものである。
この積層構造体は、例えば、ペレットとされたポリプロピレン樹脂組成物を、ケーブル状に成形し、予め成形された基体の表面に積層させたり、ポリプロピレン樹脂組成物を他の樹脂と共押出しすることで製造できる。
ここで、成形方法としては、前記本発明の成形体の場合の同様の方法が挙げられる。
また、本発明の積層構造体においては、難燃性を有する樹脂組成物からなる層を少なくとも1層備えることが好ましい。なお、この層は、難燃性を付与したポリプロピレン樹脂組成物からなる層であってもよい。
本発明の積層構造体は、前記本発明のポリプロピレン樹脂組成物をからなる層を少なくとも1層備えるものであり、十分な防蟻性を有し、かつこの防蟻性の耐久性が優れているものである。そのため、本発明の積層構造体は、電線ケーブルなどとして好適に用いることができる。なお、本発明の積層構造体の用途は、これに限定されない。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いるポリプロピレン樹脂を下記表1に示す。
また、これらのポリプロピレン樹脂中に含まれる(A)成分以外の樹脂成分((B)成分)を以下に示す。
((B)成分)
プロピレンとエチレンの共重合体(溶解度パラメータ:7.9〜8.1)
【0043】
【表1】
【0044】
実施例および比較例にて用いる難燃剤を下記表2および表3に示す。また、実施例および比較例にて用いる難燃助剤を以下に示す。なお、難燃剤における融解ピーク温度および1%質量減少ピーク温度は、以下に示す方法により測定し、測定値を表2および表3に示す。
(難燃助剤)
難燃助剤:三酸化アンチモン
(融解ピーク温度)
JIS K7121およびK7122の記載に準じた方法で測定する。すなわち、示差走査熱量計(DSC)を用いて、難燃剤を窒素雰囲気中で、10℃/分の昇温速度で昇温してDSC曲線を作成した。得られたDSC曲線における融解ピークの頂点を融解ピーク温度とした。
(1%質量減少ピーク温度)
熱量計測装置(TGA)を用いて、難燃剤を窒素雰囲気中で、20℃/分の昇温速度で昇温し、難燃剤の質量が1%減少した温度を1%質量減少ピーク温度とした。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
[実施例1〜2および比較例1〜3]
上記に示した原料を下記表4に示す割合で配合し、シリンダー温度を260℃に設定したスクリュー口径45mmの二軸押出機を用いて溶融混練し、ダイスから吐出されたストランドを冷却バスにより冷却し、ペレタイザーにて切断して、ペレット化したポリプロピレン樹脂組成物(ペレット)を調製した。なお、比較例3では、溶融時のシリンダー温度を高めて280℃に設定したが、それでも(A)成分と他の樹脂成分とが分離し、ペレットを造粒することができなかった。
以下、(A)成分以外の樹脂成分を示す。
((B)成分)
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(溶解度パラメータ:8.96)
(他の樹脂成分)
Ny66:ナイロン66(溶解度パラメータ:13.6)
【0048】
【表4】
【0049】
<性能評価>
得られたペレットを用い、射出成形機にて、シリンダー温度を210℃、金型温度を50℃の成形条件において、表面硬度用の試験片(大きさ:80mm×80mm、厚み:3.2mm)、および曲げ弾性率用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:3.2mm)を作製した。さらに、プレス成形機にて、ヒーター温度を210℃の成形条件において、防蟻性用の試験片(大きさ:50mm×50mm、厚み:1mm)を作製した。
【0050】
(表面硬度)
上述の方法で作製した表面硬度用の試験片(大きさ:80mm×80mm、厚み:3.2mm)を試料とし、ロックウェル硬度(Rスケール)をASTM D785の記載に準拠する方法により評価した。得られた結果を表5に示す。
(曲げ弾性率)
上述の方法で作製した曲げ弾性率用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:3.2mm)を試料とし、曲げ弾性率をASTM D790の記載に準拠する方法により評価した。得られた結果を表5に示す。
(防蟻性)
上述の方法で作製した防蟻性用の試験片(大きさ:50mm×50mm、厚み:1mm)を試料とし、白蟻の餌木に挟み込み、1か月間、白蟻のコロニーに静置する。そして、静置後の試料について、白蟻による食害(蟻害)の程度を観察し、図1に示すように、試料の全周における幅方向の蟻害長さ(c)(単位:mm)を測定し、その総長と全周長さとの比率である蟻害率(a)=幅方向の蟻害長さの総長/全周長さ200mm(50mm×4辺)(単位:%)を算出した。また、試料の全周における奥行方向の蟻害到達距離(b)(単位:mm)を測定し、その最大値と蟻害率(a)とを乗じた値((a)×(b))を算出した。因みに、幅方向の蟻害長さ(c)を測定するにあたって、蟻害の箇所は次のように認定する。蟻害の箇所は、図1に示すように、試料の厚み方向にわたり蟻害が生じた箇所だけでなく、試料の上側または下側から厚み方向の途中まで蟻害が生じた箇所も含まれる。なお、試料の上側から蟻害が生じた箇所と、試料の下側から蟻害が生じた箇所とが互いに重なる領域(図1におけるハッチング部分)が生じる場合には、これらの箇所の長さの合計からハッチング部分の長さを差し引くことで、蟻害長さ(c)を測定できる。
なお、防蟻性は、現用のナイロン12の試料を基準とし、下記に示す基準値と比較して、評価値((a)×(b))が小さい(防蟻性が優れる)ものを「○」と判定し、評価値((a)×(b))が大きい(防蟻性が劣る)ものを「×」と判定した。得られた結果を表5に示す。

ナイロン12の試料の防蟻性(基準値)
蟻害率(a):8.9%
蟻害到達距離(最大値)(b):1mm
評価値((a)×(b)):8.9
【0051】
【表5】

【0052】
実施例1〜2と、比較例1〜2との結果より、ロックウェル硬度が85以上で、曲げ弾性率が1500MPa以上であり、重合樹脂中の(A)成分および(B)成分の質量比率が所定の範囲内である場合に、防蟻性が発現することが確認された。なお、比較例3は、(A)成分と他の樹脂成分とが分離し造粒することができず、評価を行うことができなかった。
【0053】
[実施例3および比較例4]
上記に示した原料を下記表6に示す割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレットを調製した。
【0054】
【表6】
【0055】
<性能評価>
得られたペレットを用い、実施例1と同様の方法で、表面硬度用の試験片(大きさ:80mm×80mm、厚み:3.2mm)、曲げ弾性率用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:3.2mm)、および防蟻性用の試験片(大きさ:50mm×50mm、厚み:1mm)を作製した。そして、得られた試験片を試料として、表面硬度、曲げ弾性率および防蟻性を評価した。得られた結果を表7に示す。
また、得られたペレットを用い、射出成形機にて、シリンダー温度を210℃、金型温度を50℃の成形条件において、酸素指数用の試験片(大きさ:127mm×6.4mm、厚み:3.2mm)、および垂直燃焼試験用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:0.8mm)を作製した。
【0056】
(難燃性)
上述の方法で作製した酸素指数用の試験片(大きさ:127mm×6.4mm、厚み:3.2mm)を試料とし、酸素指数をJIS K7201の記載に準拠する方法により評価した。また、上述の方法で作製した垂直燃焼試験用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:0.8mm)をUL94垂直燃焼試験に準拠する方法で評価した。得られた結果を表7に示す。
【0057】
【表7】
【0058】
実施例3と、比較例4との結果より、ロックウェル硬度が85以上で、曲げ弾性率が1500MPa以上であり、重合樹脂中の(A)成分および(B)成分の質量比率が所定の範囲内であり、かつ230℃以下に溶解ピーク温度を有する難燃剤を含有する場合に、防蟻性が発現し、かつ、酸素指数が26で、V−2相当の難燃性が発現することが確認された。
【0059】
[実施例4および比較例5]
上記に示した原料を下記表8に示す割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレットを調製した。
【0060】
【表8】
【0061】
<性能評価>
得られたペレットを用い、実施例1と同様の方法で、表面硬度用の試験片(大きさ:80mm×80mm、厚み:3.2mm)、曲げ弾性率用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:3.2mm)、防蟻性用の試験片(大きさ:50mm×50mm、厚み:1mm)、および酸素指数用の試験片(大きさ:127mm×6.4mm、厚み:3.2mm)を作製した。そして、得られた試験片を試料として、表面硬度、曲げ弾性率、防蟻性および難燃性(酸素指数のみ)を評価した。得られた結果を表9に示す。
【0062】
【表9】
【0063】
実施例4と、比較例5との結果より、ロックウェル硬度が85以上で、曲げ弾性率が1500MPa以上であり、重合樹脂中の(A)成分および(B)成分の質量比率が所定の範囲内であり、かつ300℃以下に1%質量減少ピーク温度を有する難燃剤を含有する場合に、防蟻性が発現し、かつ、酸素指数が23である難燃性が発現することが確認された。
【0064】
[実施例5および比較例6]
上記に示した原料を下記表10に示す割合で配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレットを調製した。
【0065】
【表10】

【0066】
<性能評価>
得られたペレットを用い、実施例1と同様の方法で、表面硬度用の試験片(大きさ:80mm×80mm、厚み:3.2mm)、曲げ弾性率用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:3.2mm)、防蟻性用の試験片(大きさ:50mm×50mm、厚み:1mm)、酸素指数用の試験片(大きさ:127mm×6.4mm、厚み:3.2mm)および垂直燃焼試験用の試験片(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:0.8mm)を作製した。そして、得られた試験片を試料として、表面硬度、曲げ弾性率、防蟻性および難燃性を評価した。得られた結果を表11に示す。
また、得られたペレットを用い、プレス成形機にて、ヒーター温度を210℃の成形条件において、耐寒性用の試験片(大きさ:38mm×6mm、厚み:2mm)を作製した。
【0067】
(耐寒性)
上述の方法で作製した耐寒性用の試験片(大きさ:38mm×6mm、厚み:2mm)を試料とし、JIS C3005の記載に準拠する方法で脆化温度を測定した。得られた結果を表11に示す。
【0068】
【表11】

【0069】
実施例5と、比較例6との結果より、ロックウェル硬度が85以上で、曲げ弾性率が1500MPa以上であり、重合樹脂中の(A)成分および(B)成分の質量比率が82:18〜95:5の範囲内であり、かつ230℃以下に溶解ピーク温度を有する難燃剤を含有する場合(実施例5)に、防蟻性が発現し、かつ、酸素指数が26で、V−2相当の難燃性が発現し、さらに耐寒性が発現することが確認された。
【0070】
[電線ケーブルでの難燃性評価]
内側から、線状の導体、内部半導体層、絶縁体、外部半導体層、しゃへい(軟鋼線)、おさえテープ、遮水層、難燃ビニル層および最外層の順で積層されてなる電線ケーブル(外径:40mm、22kV CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル))を用いて、実施例3および実施例5で得られたペレットの難燃性を以下のようにして評価した。
まず、実施例3および実施例5で得られたペレットを用い、最外層の厚みが1mmとなるようにして電線ケーブルを作製し、この電線ケーブルを2400mmの長さに切断して、ケーブル難燃性試験用の試験片を作製した。
【0071】
上述の方法で作製したケーブル難燃性試験用の試験片を試料とし、IEEE std.383−1974の記載に準拠する方法により、ケーブルでの難燃性を評価した。得られた結果を表12に示す。なお、ケーブル難燃性試験での評価は、下記の基準が示されている。
消防予報101号「改正火災予防条例準則の運用について(通知)」における難燃レベルの場合:IEEE std.383−1974に記載の難燃性試験で上端まで燃えないこと。
JEC3403−2001の3種ビニルシースの場合:燃焼長が120cm以下であり、かつ残炎時間が1時間程度以内であること。
【0072】
【表12】

【0073】
表12に示す結果からも明らかなように、実施例3および実施例5で得られたペレットを用いた場合、燃焼長はそれぞれ76cmおよび77cmであった。この結果は、消防予報101号難燃レベルを満たしている。また、この結果は、JEC3402およびJEC3403に規定されている現状で最も厳しい3種の難燃レベルのグレードであるIEEE std.383−1974の条件、つまり燃焼長が120cm以下であるという条件も満たしている。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、建築材、電線ケーブルなどの材料として好適に用いることができる。
【要約】      (修正有)
【課題】十分な防蟻性を有し、かつこの防蟻性の耐久性が優れているポリプロピレン樹脂組成物、並びにそれを用いた成形体および積層構造体の提供。
【解決手段】本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、(A)プロピレン単独重合部82質量%以上100質量%以下と、(B)溶解度パラメータが7.0以上9.5以下の樹脂成分0質量%以上18質量%以下と、からなる重合樹脂を含有し、ロックウェル硬度が85以上であり、曲げ弾性率が1500MPa以上であることを特徴とするものである。
【選択図】なし
図1