特許第5722418号(P5722418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722418感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5722418
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月20日
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/029 20060101AFI20150430BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20150430BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20150430BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20150430BHJP
【FI】
   G03F7/029
   G03F7/031
   G03F7/004 501
   G03F7/004 512
   H05K3/28 D
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-249061(P2013-249061)
(22)【出願日】2013年12月2日
【審査請求日】2014年8月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】播磨 英司
(72)【発明者】
【氏名】三谷 毅
(72)【発明者】
【氏名】近藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋一朗
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−114008(JP,A)
【文献】 特開2010−020264(JP,A)
【文献】 特開2011−227343(JP,A)
【文献】 特開2006−293044(JP,A)
【文献】 特開2011−013622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/06;7/075−7/115;
7/16−7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(B)熱硬化性成分が、芳香環を有しない樹脂として、トリグリシジルイソシアヌレートを含有し、
前記(D)光重合開始剤が、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)無機充填物が、酸化チタンを含有する請求項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドである請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
キャリアフィルム上に、請求項1〜のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1〜のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物、または、請求項記載のドライフィルムの樹脂層を光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は感光性樹脂組成物(以下、単に「組成物」とも称する)、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関し、詳しくは、光重合開始剤の改良に係るアルカリ現像型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント配線板は、積層板に貼り合わせた銅箔の不要な部分をエッチングにより除去して回路配線を形成したものであり、電子部品がはんだ付けにより所定の場所に配置されている。このようなプリント配線板においては、必要な部分へのはんだの付着を防止するとともに、回路の導体が露出して酸化や湿気により腐食されることを防止するための保護膜として、回路パターンの形成された基板上の接続孔を除く領域に、ソルダーレジストが形成される。ソルダーレジストは回路基板の永久保護膜としても機能するので、ソルダーレジストには、密着性、電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐溶剤性、耐薬品性などの種々の性能を備えることが要求される。
【0003】
基板上に所望のパターンのソルダーレジストを形成する方法の一つとして、フォトリソグラフィ技術を利用した形成方法が用いられている。例えば、アルカリ現像型の感光性樹脂組成物からなる感光性ソルダーレジストを、パターンマスクを通して露光した後、アルカリ現像することにより、露光部と非露光部とに生じたアルカリ現像液への溶解性の差を利用してパターンを形成することができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、白色顔料を含有しながら、露光に要する光量が抑制され、且つ高い光反射性を有するソルダーレジスト層が形成可能なソルダーレジスト組成物を提供することを目的として、感光性樹脂、白色顔料、波長400nm以上の光で活性化する光重合開始剤、及び蛍光染料を配合したソルダーレジスト組成物が開示されている。特許文献1の実施例では、具体的に、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドと1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとを併用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−227343号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤をソルダーレジストに用いることは知られている。中でも、ビスアシルフォスフィンオキサイドは、特許文献1で使用されている2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイドよりも光硬化性に優れ、ソルダーレジスト用として好適である。しかし、ビスアシルフォスフィンオキサイドは、溶剤に対する溶解性が悪いことから、結果として露光時に充分な光硬化性が得られるものではなかった。
【0007】
本発明の目的は、光重合性開始剤の溶解性の問題を解消して、光硬化性に優れた感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、光重合開始剤として、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤とともに、ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を併用することで、ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤がビスアシルフォスフィンオキサイドの溶解性を向上させて、結果として良好な光硬化性を得ることが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、
前記(D)光重合開始剤が、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の組成物においては、前記(B)熱硬化性成分が、芳香環を有しない樹脂を少なくとも一種含有することが好ましい。また、本発明の組成物においては、前記(C)無機充填物が、酸化チタンを含有することが好ましい。さらに、本発明の組成物において、前記(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを好適に用いることができる。
【0011】
また、本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム上に、上記本発明の感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の硬化物は、上記本発明の感光性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を光照射により硬化して得られることを特徴とするものである。
【0013】
さらにまた、本発明のプリント配線板は、上記本発明の硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成としたことにより、光重合性開始剤の溶解性の問題を解消して、光硬化性に優れた感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を実現することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、本発明の感光性樹脂組成物の各成分について説明する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0016】
[(A)カルボキシル基含有樹脂]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)カルボキシル基含有樹脂を含有する。(A)カルボキシル基含有樹脂としては、公知のカルボキシル基を含む樹脂を用いることができる。カルボキシル基の存在により、組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、本発明の組成物を光硬化性にすることや耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有することが好ましいが、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のみを用いることもできる。(A)カルボキシル基含有樹脂は、芳香環を有しても有さなくてもよい。(A)カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、熱や光による劣化を抑制する効果が得られるため、好ましい。
【0017】
本発明の組成物に用いることができるカルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0018】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。このカルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、不飽和カルボン酸および不飽和基含有化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0019】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0020】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。このカルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物および酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0021】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、ジイソシアネート、2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート若しくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の少なくとも1種が芳香環を有すればよい。
【0022】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0023】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0024】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、多官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0025】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有樹脂が芳香環を有する場合、2官能エポキシ樹脂および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0026】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、多官能オキセタン樹脂、ジカルボン酸および2塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0027】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0028】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0029】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p−ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。この感光性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂が芳香環を有する場合、エポキシ化合物、1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物、不飽和基含有モノカルボン酸および多塩基酸無水物の少なくとも1種が芳香環を有していればよい。
【0030】
(13)上記(1)〜(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。この感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂が芳香環を有する場合、分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が芳香環を有していてもよい。
【0031】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0032】
上記カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gの範囲が望ましく、より好ましくは40〜180mgKOH/gの範囲である。20〜200mgKOH/gの範囲であると、塗膜の密着性が得られ、アルカリ現像が容易となり、現像液による露光部の溶解が抑えられ、必要以上にラインが痩せたりせずに、正常なレジストパターンの描画が容易となるため好ましい。
【0033】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000〜150,000の範囲が好ましい。この範囲であると、タックフリー性能が良好であり、露光後の塗膜の耐湿性が良く、現像時に膜減りが生じにくい。また、上記重量平均分子量の範囲であると、解像度が向上し、現像性が良好であり、貯蔵安定性が良くなる。より好ましくは、5,000〜100,000である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0034】
[(B)熱硬化性成分]
本発明の感光性樹脂組成物には、耐熱性を付与するために、(B)熱硬化性成分を含有させる。(B)熱硬化性成分としては、熱硬化性樹脂組成物において熱硬化性成分として使用されるものであれば、公知のものをいずれも使用可能である。(B)熱硬化性成分としては、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、アミノ樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、多官能エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂が使用できる。
【0035】
これらの中でも好ましい熱硬化性成分は、1分子中に複数の環状エーテル基および環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略称する)の少なくともいずれか1種を有する熱硬化性成分である。これら環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、市販されている種類が多く、その構造によって多様な特性を付与することができる。
【0036】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のいずれか一方または2種類の基を複数有する化合物であり、例えば、分子中に複数のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子中に複数のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子中に複数のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0037】
上記多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱化学(株)製のjER828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、日産化学工業(株)製のTEPIC等の複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、柔軟強靭エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、2官能のエポキシ樹脂であることが可撓性の観点から好ましい。特に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が難燃性の観点から好ましい。
【0038】
上記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0039】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有するエピスルフィド樹脂としては、例えば、三菱化学(株)製のYL7000(ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂)や、東都化成(株)製のYSLV−120TEなどが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0040】
上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量は、(A)カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して、好ましくは0.3〜2.5当量、より好ましくは0.5〜2.0当量となる範囲である。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量を、0.3当量以上とすることで、硬化被膜におけるカルボキシル基の残存を防止して、良好な耐熱性や耐アルカリ性、電気絶縁性等を得ることができる。一方、上記配合量を2.5当量以下とすることで、低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することを防止して、硬化被膜の強度等を良好に確保することができる。
【0041】
本発明の組成物において、上記分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分を使用する場合、さらに、熱硬化触媒を含有することが好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール誘導体、ヒドラジン化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくは、密着性付与剤としても機能する化合物を上記熱硬化触媒と併用する。
【0042】
これら熱硬化触媒の配合量は、固形分換算で、熱硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0043】
本発明においては、上記した中でも、(B)熱硬化性成分として、芳香環を有しない樹脂を少なくとも一種含有することが好ましい。熱硬化性成分として使用できる芳香環を有しない樹脂としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が挙げられる。中でも、S−トリアジン骨格面に対して同一方向にエポキシ基が結合した構造をもつβ体のトリグリシジルイソシアヌレートを50重量%以上含有するトリグリシジルイソシアヌレート(例えば、日産化学工業(株)製TEPIC−H,TEPIC−S)が特に好ましい。β体のトリグリシジルイソシアヌレートを50重量%以上含有するトリグリシジルイソシアヌレートは、光硬化によるソルダーレジスト膜のパターニングの段階まで透明であり、その後、熱硬化する際に白濁する傾向がある。よって、本発明の組成物を白色とする場合には、得られるソルダーレジスト膜の白色度をさらに高め、高反射率のものとすることができるため、好ましい。
【0044】
[(C)無機充填物]
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(C)無機充填物を含有する。(C)無機充填物としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、フライアッシュ、脱水汚泥、天然シリカ、合成シリカ、カオリン、クレー、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、焼成タルク、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、燐酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、シリカバルーン、ガラスフレーク、ガラスバルーン、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカ、製鉄スラグ、銅、鉄、酸化鉄、カーボンブラック、センダスト、アルニコ磁石、各種フェライト等の磁性粉、セメント、ガラス粉末、ノイブルグ珪土、珪藻土、三酸化アンチモン、マグネシウムオキシサルフェイト、水和アルミニウム、水和石膏、ミョウバン等が挙げられる。これらの無機充填物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明においては、(C)無機充填物として、シリカ、硫酸バリウムおよび酸化チタンのうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。シリカとしては、溶融シリカが好ましい。また、硫酸バリウムおよび酸化チタンを含有することで、組成物の硬化物を白色とすることができ、高い反射率を得ることが可能となる。酸化チタンは、ルチル型、アナターゼ型、ラムスデライト型のいずれの構造の酸化チタンであってもよい。ラムスデライト型酸化チタンは、ラムスデライト型Li0.5TiOに化学酸化によるリチウム脱離処理が施されることで得られる。ルチル型酸化チタンは、光照射を起因とする変色を起こしにくいので好ましい。
【0046】
このような無機充填物の配合量は、感光性樹脂組成物中の固形分(感光性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合には、有機溶剤を除く成分)に対して、好ましくは5〜80質量%の範囲、より好ましくは10〜70質量%の範囲である。
【0047】
[(D)光重合開始剤]
本発明のアルカリ現像型感光性樹脂組成物は、(D)光重合開始剤を含有する。(D)光重合開始剤としては、光重合開始剤や光ラジカル発生剤として公知の光重合開始剤であればいずれでもよいが、本発明においては、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、および、(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有することが必要である。
【0048】
(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。中でも、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,IRGACURE819)が、入手しやすく実用的である。
【0049】
(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましい。(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤をこの範囲で配合することで、銅上での光硬化性が十分となり、塗膜の硬化性が良好となり、耐薬品性等の塗膜特性が向上し、また、深部硬化性も向上する。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1〜40質量部である。
【0050】
(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン(株)製,IRGACURE184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製,IRGACURE2959)、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製,IRGACURE127)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製,DAROCUR1173)等が挙げられる。
【0051】
(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましい。(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤をこの範囲で配合することで、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の溶解性を向上しつつ、銅上での十分な光硬化性を得ることができ、塗膜の硬化性が良好となって、耐薬品性等の塗膜特性が向上し、また、深部硬化性も向上するとの効果が良好に得られる。より好ましくは、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、1〜40質量部である。
【0052】
(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤と(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤との配合比は、質量比で、1:0.5〜1:5が好ましく、1:1〜1:3がより好ましい。
【0053】
本発明の組成物は、(D)光重合開始剤として、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイドおよび(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤以外の他の公知慣用の含有してもよい。例えば、モノアシルフォスフィンオキサイドとして、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2−メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル等を用いることができる。中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製,DAROCUR TPO)が入手しやすく実用的である。
【0054】
その他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス[2,6−ジフルオロ−3−(2−(1−ピル−1−イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。以上の光重合開始剤は、いずれも1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
他の光重合開始剤の配合量は、固形分換算で、例えば、(A)カルボキシル基含有樹脂100質量部に対して、0.1〜40質量部である。
【0056】
(希釈剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、希釈剤を含有していてもよい。本発明に用いられる希釈剤は、組成物の粘度を調整して作業性を向上させるとともに、架橋密度を上げたり、密着性などを向上するために用いられ、光硬化性モノマーなどの反応性希釈剤や公知慣用の有機溶剤が使用できる。
【0057】
光硬化性モノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノまたはジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコールまたはこれらのエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリジジルエーテルの(メタ)アクリレート類;およびメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0058】
このような光硬化性モノマーの配合率は、カルボキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは5〜70質量部の割合である。上記配合率の範囲では、光硬化性が向上して、パターン形成が容易となり、硬化膜の強度も向上できる。
【0059】
有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
(その他の任意成分)
本発明の組成物には、電子材料の分野において公知慣用の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、熱硬化触媒、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤、消泡剤、レベリング剤、上記以外の充填剤、増粘剤、密着性付与剤、チキソ性付与剤、着色剤、光開始助剤、増感剤等が挙げられる。
【0061】
本発明のドライフィルムは、キャリアフィルム(支持体)上に、本発明の組成物を塗布、乾燥させることにより得られる樹脂層を有する。ドライフィルムの形成は、本発明の組成物を上記有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布する。その後、塗布された組成物を、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥することで、樹脂層を形成することができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で、10〜150μm、好ましくは20〜60μmの範囲で適宜選択される。
【0062】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0063】
キャリアフィルム上に本発明の組成物からなる樹脂層を形成した後、膜の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、膜の表面に、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。カバーフィルムとしては、カバーフィルムを剥離するときに、樹脂層とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0064】
また、本発明の組成物を、例えば、上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整して、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等の方法により塗布した後、約60〜100℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることで、タックフリーの樹脂層を形成することができる。また、上記組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、ラミネーター等により本発明の組成物の層が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、樹脂層を形成できる。
【0065】
上記基材としては、あらかじめ回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートエステル等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0066】
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等(蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触せしめる方法およびノズルより支持体に吹き付ける方式)を用いて行うことができる。
【0067】
本発明の組成物は、例えば、約140〜180℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、密着性、電気特性等の諸特性に優れた硬化塗膜を形成することができる。
【0068】
また、本発明の組成物を塗布し、溶剤を揮発乾燥した後に得られた樹脂層に対し、露光(光照射)を行うことにより、露光部(光照射された部分)が硬化する。具体的には、接触式または非接触方式により、パターンを形成したフォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光、もしくは、レーザーダイレクト露光機により直接パターン露光して、未露光部を希アルカリ水溶液(例えば、0.3〜3wt%炭酸ソーダ水溶液)により現像することにより、レジストパターンが形成される。
【0069】
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のレーザー光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にあるレーザー光を用いていれば、ガスレーザーおよび固体レーザーのいずれでもよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜800mJ/cm、好ましくは20〜600mJ/cmの範囲内とすることができる。
【0070】
上記現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液が使用できる。
【0071】
本発明の組成物は、プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジストや層間絶縁層等の硬化皮膜の形成に適している。また、本発明の組成物は、白色とすることで、照明器具や携帯端末、パソコン、テレビ等の液晶ディスプレイのバックライト等において、その光源として使用される発光ダイオード(LED)やエレクトロルミネセンス(EL)から発せられる光を反射する反射板に、好適に使用される。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表中に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで分散させ、混練して、それぞれ組成物を調製した。なお、表中の配合量は、質量部を示す。
【0073】
<合成例1(カルボキシル基含有樹脂の調製)>
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管および撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに、メタクリル酸42質量部、メチルメタクリレート43質量部、スチレン35質量部、ベンジルアクリレート35質量部、カルビトールアセテート100質量部、ラウリルメルカプタン0.5質量部およびアゾビスイソブチロニトリル4質量部を加え、窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させて、共重合体溶液(固形分濃度50質量%)を得た。これに、ハイドロキノン0.05質量部、グリシジルメタクリレート23質量部およびジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え、80℃で24時間付加反応を行った後、カルビトールアセテート35質量部を加えて、芳香環を有する共重合樹脂溶液(固形分濃度50質量%)を得た。
【0074】
<感度>
各実施例および比較例の組成物を、パターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃で30分間乾燥させた。この基板上の塗膜にコダック(株)製のステップタブレット(21段)を当て、600mJ/cmの露光量で露光し、1%NaCO水溶液によりスプレー圧2kg/cmで1分間現像した後における残存段数を調べた。
【0075】
<タック(指触乾燥性)>
各実施例および比較例の組成物を、それぞれパターン形成された銅箔基板上にスクリーン印刷で全面塗布し、80℃の熱風循環式乾燥炉で30分間乾燥させ、室温まで放冷した。この基板にPETフィルムを押し当て、その後、PETフィルムを剥がしたときのフィルムの貼り付き状態を評価した。フィルムを剥がすときに、全く抵抗がなく、塗膜に跡が残らない場合を○、フィルムを剥がす時に、僅かに抵抗があり、塗膜に跡が少しついている場合を△、フィルムを剥がす時に、抵抗があり、塗膜にはっきり跡がついている場合を×とした。
【0076】
<反射率>
各実施例および比較例の組成物を、100mm×150mmの大きさで1.6mmの厚さのFR−4銅張り積層板に対し、スクリーン印刷法にて、膜厚40μmとなるように、100メッシュポリエステル(バイアス製)の版を使用してベタ(基板全面)でパターンを印刷した。これらを80℃で30分間に渡って熱風循環式乾燥炉にて乾燥させた。さらにプリント配線板用露光機HMW−680GW(株式会社オーク製作所製)を用いて、30mm角のネガパターンを残すように、900mJ/cmの積算光量で紫外線露光した。その後、30℃で1%の炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、これらをプリント配線板用現像機にて60秒間現像し、続いて150℃で60分間、熱風循環式乾燥炉で熱硬化を行い、特性試験用の試験片を作製した。
【0077】
得られた試験片を、色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング(株)製)で測定して、Y値の値が85以上の場合を○、80以上85未満の場合を△、80未満の場合を×とした。なお、色調が赤または緑のものについては、反射率が要求されないため評価しなかった。
【0078】
<鉛筆硬度>
各試験片に対し、芯の先が平らになるように研がれたBから9Hの鉛筆を、約45°の角度で押し付けて、塗膜の剥がれが生じない鉛筆の硬さを記録した。
【0079】
<はんだ耐熱性>
ロジン系フラックスを塗布した試験片を、あらかじめ260℃に設定したはんだ槽に30秒ずつ3回浸漬し、変性アルコールでフラックスを洗浄した後、目視によるレジスト層の剥がれについて評価した。剥がれがなかった場合を○、若干の剥がれが生じた場合を△、著しい剥がれが生じた場合を×とした。
【0080】
<耐無電解金めっき耐性>
市販品の無電解ニッケルめっき浴および無電解金めっき浴を用いて、ニッケル0.5μm、金0.03μmの条件でめっきを行い、テープピーリングによりレジスト層の剥がれの有無を評価した。剥がれがない場合を○、剥がれが生じた場合を×とした。
【0081】
<色調>
得られた試験片の色調を、目視により評価した。
【0082】
上記の各評価結果を、下記の表中に示す。
【0083】
【表1】
※1)合成例1で得られた芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂
※2)DPM(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)で44質量%に希釈(ダイセル化学工業(株)製)(芳香環を有しないカルボキシル基含有樹脂)
※3)MMA(メチルメタクリレート)/GMA(グリシジルメタクリレート)のグリシジルエーテル部位にアクリル酸をfull付加させた後発生する40%の水酸基にTHPA(テトラヒドロフタル酸無水物)を付加させた樹脂、CA(カルビトールアセテート)で60質量%に希釈(大阪有機化学工業(株)製)(芳香環を有しないカルボキシル基含有樹脂)
※4)日産化学工業(株)製(芳香環を有しない樹脂)
※5)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製(芳香環を有する樹脂)
※6)石原産業(株)製
※7)堺化学工業(株)製
※8)日本アエロジル(株)製 エロジール#R974
※9)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、IRGACURE819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※10)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、IRGACURE184,BASFジャパン(株)製
※11)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、DAROCUR1173,BASFジャパン(株)製
※12)モノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド),BASFジャパン(株)製
※13)Pigment Blue 15:3
※14)Pigment Yellow 147
※15)Pigment Red 264
※16)イミダゾール系化合物、四国化成工業(株)製
※17)ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
※18)芳香族炭化水素(ソルベッソ150)
※19)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、共栄社化学(株)製
【0084】
【表2】
※20)塗膜が形成できず評価できなかった。
【0085】
上記表中の結果から、各実施例の組成物は、光硬化性に優れるとともに、ソルダーレジストとしての諸性能を満足するものであることが確かめられた。
【要約】
【課題】光重合性開始剤の溶解性の問題を解消して、光硬化性に優れた感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)カルボキシル基含有樹脂、(B)熱硬化性成分、(C)無機充填物、および、(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって、(D)光重合開始剤が、(D1)ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤および(D2)ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【選択図】なし