(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
数による%として、粉末の粒子の40%超が1.5超のアスペクト比Rを示す、ここで、粒子のアスペクト比は、該粒子の長さLと幅Wとの比L/Wである、請求項1〜5のいずれか1項記載の、溶融された粒子で形成された粉末。
【背景技術】
【0002】
熱間プレス法によって製造された固体酸化物形燃料(SOFC)スタック10の例が、
図1に断面で概略的に示される。セルスタック10は、インターコネクター層16によって分離された第一および第二の基本セル12および14を含む。第一および第二の基本セルは構造が類似しているので、第一の基本セル12のみが記載される。第一の基本セル12は、順次に、アノード18、電解質層20およびカソード22を含む。アノード18は、電解質層20と接触したアノード機能層(AFL)24、およびアノード支持層26で構成される。アノード18は一般に、アノード機能層24をアノード支持層26上に、例えばスクリーン印刷によって、沈着させることから成る方法によって製造される。この段階では、層24および26は、最終のアノード物質の前駆体に基づき得る。焼結による強化が次いで行われる。
【0003】
燃料電池スタックまたは燃料電池スタックの製造のために使用され得る物質が、例えば国際公開第2004/093235号パンフレット、欧州特許第1796191号明細書、米国特許出願公開第2007/0082254号明細書、欧州特許第1598892号明細書または欧州特許第0568281号明細書に記載されている。
【0004】
酸化ニッケル−イットリア安定化ジルコニア(Ni−YSZ)で形成された多孔性サーメットがアノード機能層を製造するために一般的に使用される。
【0005】
溶融によるサーメットの製造法が、特に論文“Structured porous Ni-and Co- YSZ cermets fabricated from directionally solidified eutectic composites”, Journal of the European Ceramic Society,25 (2005), pages 1455/1462および論文“Stability of Channeled Ni-YSZ Cermets Produced from Self-assembled NiO-YSZ Directionally Solidified Eutectics”, J. Am. Ceram.Soc., 88 (2005), pages 3215/3217において研究されている。後者の論文は、固体酸化物形燃料電池スタックアノードの製造のために意図されたNi−YSZサーメットで作られた多孔性プレートを記載している。このサーメットは、規則的なラメラ共融構造を示し、その構造は、レーザー浮遊ゾーン溶融法の使用から生じる。
【0006】
国際公開第2004/112181号パンフレットは、イットリア安定化ジルコニアの電解質粉末としての使用を記載している。
【0007】
あるいは、サーメットは、イットリア安定化ジルコニア粒子とニッケル酸化物粒子またはコバルト酸化物粒子との混合物を焼結し、次いでニッケル酸化物を還元してニッケルを得るまたはコバルト酸化物を還元してコバルトを得ることにより製造され得る。2つの異なる技術にしたがって、イットリア安定化ジルコニア粒子は、それ自体、溶融された粒子または焼結された粒子であり得る。
【0008】
アノード機能層は、
SOFCセルスタックの電気性能に必要な触媒反応を促進するための、高い開放空隙率、
特に「支持された」アノードのための、高い機械的強度
を示さなければならない。
【0009】
これら2つの特性は一般に、反対方向に変化する。
【0010】
したがって、サーメットで作られたアノード機能層に関して、SOFCセルスタックにおける使用のために適する電気伝導特性を保持しながら、サーメットの、特にイットリア安定化ジルコニア骨格の開放空隙率と機械的強度との間の歩み寄りを最適化するための継続した要求が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従う粒子が溶融されることが重要である。これは、焼結された粒子、共沈させた粒子または溶融された粒子の使用が、サーメットの特性を決定するからである。例えば、Al
2O
3またはAl
2O
3+TiO
2は、ジルコニアの焼結を改善するために慣用的に使用される焼結助剤である。しかし、それらが、焼結された粒子を製造するために使用され、したがって、後者に組み入れられるとき、それらは、焼結体の製造中にニッケル酸化物および/またはニッケルとの反応を生じる。これは、SOFCセルスタックの電気性能に有害な相を生じる。しかし、本発明者らは、溶融された粒子に組み入れられたこれらの添加物は、これに反して、この用途での改善の源であることを見出した。
【0018】
一般に、焼結された粒子または共沈させた粒子の使用によって得られる特性が、これらの粒子が、溶融された粒子で置き換えられるならば、保持されるかどうかを推測的に決定することはできない。
【0019】
また、本発明に従う粉末の成形および焼結後に得られる生成物が、開放空隙率と二軸曲げ強度との間の良好な歩み寄りを示すために、本発明に従う粒子が最少のアルミナを含むことが重量である。
【0020】
本発明に従う粒子はまた、下記の任意の特徴の1以上を有し得る。
好ましくは、Y
2O
3含量が12.7%超であり、好ましくは13.5%超であり、および/または好ましくは17.8%未満であり、好ましくは16.9%未満である;
好ましくは、Al
2O
3含量が1.7%未満であり、好ましくは1.6%未満であり、好ましくは1.5%未満であり、好ましくは1.4%未満であり、好ましくは1.3%未満であり、好ましくは1.2%未満であり、好ましくは1.1%未満であり、好ましくは1.0%未満であり、好ましくは0.9%未満であり、好ましくは0.8%未満であり、好ましくは0.5%未満であり、さらには0.4%未満であり、および/または好ましくは0.1%超である;
好ましくは、TiO
2含量が0.4%未満であり、好ましくは0.3%未満であり、より好ましくは0.2%未満であり、および/または好ましくは0.01%超であり、好ましくは0.1%超である(ただし、0.6%<Al
2O
3ならば、0.5xAl
2O
3−0.3%≦TiO
2である);
好ましくは、Al
2O
3含量が0.1%〜0.5%であり、かつTiO
2含量が0.1%〜0.2%である;
好ましくは、「他の酸化物」の含量が1.5%未満、好ましくは1%未満、好ましくは0.7%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、さらには0.1%未満であり、電気伝導度および触媒特性がそれによって有利に改善される;
好ましくは、「他の酸化物」が不純物である;
好ましくは、HfO
2含量が2.0%未満、1.8%未満、1.6%未満、さらには1.4%未満である;
好ましくは、シリカが不純物であり、好ましくはその含量が0.5%未満、好ましくは0.4%未満、より好ましくは0.3%未満、好ましくは0.2%未満、好ましくは0.1%未満、さらには0.05%未満であり、電気伝導度および触媒特性がそれによって有利に改善される。
【0021】
1の実施態様では、Al
2O
3含量が0.1%超、0.2%超、0.3%超、0.4%超、さらには0.5%超、0.6%超または0.7%超である。
【0022】
本発明に従うイットリア安定化ジルコニアの溶融された粒子で形成された粉末、すなわち「本発明に従う粉末」はまた、下記の任意の特徴の1以上を含み得る。
粉末の粒子の90パーセントタイル、D
90、が200μm未満、好ましくは180μm未満であり、第一の特定の実施態様では、粉末が下記:
150μm未満、好ましくは130μm未満の90パーセンタイル、D
90、および/または
65μm〜85μmのメジアン径D
50、および/または
30μm超の最小径D
10
を示し、第二の特定の実施態様では、粉末が下記:
75μm未満、好ましくは70μm未満の90パーセンタイル、D
90、および/または
35μm〜50μmのメジアン径D
50、および/または
15μm超、好ましくは20μm超の最小径D
10
を示し、第三の特定の実施態様では、粉末が下記:
40μm未満、好ましくは35μm未満の90パーセンタイル、D
90、および/または
10μm〜25μmのメジアン径D
50、および/または
3μm超、好ましくは5μm超の最小径D
10
を示し、第四の特定の実施態様では、粉末が下記:
15μm未満、好ましくは10μm未満の90パーセンタイル、D
90、および/または
5μm未満のメジアン径D
50
を示す;
好ましくは、数による%として、粉末の粒子の40%超、好ましくは50%超、好ましくは60%超、より好ましくは70%超が1.5超のアスペクト比Rを示す、ここで、粒子のアスペクト比は、粒子の長さLと幅Wとの比L/Wである;
アスペクト比Rの分布が、
粉末の粒子の90%未満、さらには80%未満が1.5超のアスペクト比Rを示す、および/または
粉末の粒子の10%超、さらには20%超が、および/または60%未満、さらには40%未満が、2超のアスペクト比Rを示す、および/または
粉末の粒子の5%超、さらには10%超が、および/または40%未満、さらには20%未満が、2.5超のアスペクト比Rを示す、および/または
粉末の粒子の2%超、さらには5%超、および/または20%未満、さらには10%未満が3超のアスペクト比Rを示す、
ところのものである、ここで%は数による%である。
【0023】
本発明はまた、本発明に従う粉末の製造法に関する。上記方法は、下記の逐次の工程:
a)工程c)の終わりに、生成物が、本発明に従う粒子の組成に従う組成を示すように適切な供給原料を形成するために、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3および任意的にTiO
2、および/またはこれらの酸化物の1以上の前駆体を提供する粒子状の出発物質を混合すること、
b)溶融された物質が得られるまで上記供給原料を溶融すること、
c)該溶融された物質が完全に固化するまで冷却して、溶融された生成物を得ること、
d)任意的に、特に、溶融された生成物が本発明に従う粉末でない場合には、該溶融された生成物を挽くこと
を含む。
【0024】
本発明はまた、サーメット、すなわち「本発明に従うサーメット」を製造する方法に関する。上記方法は、下記の逐次の工程:
A)本発明に従う粉末ならびにニッケル酸化物またはコバルト酸化物の粒子および/またはこれらの酸化物の1以上の前駆体を含む粒子状の供給原料を準備すること、
B)工程A)で準備された粉末を成形して、プリフォームを形成すること、
C)該プリフォームを焼結すること、
D)上記ニッケル酸化物を還元してニッケルを与える、またはコバルト酸化物を還元してコバルトを与えること、
を含む。
【0025】
工程A)で使用される本発明に従う粉末は、特に、上記工程a)〜d)に従って製造され得る。
【0026】
本発明はまた、本発明に従う粉末を含む供給原料を焼結することにより得られる焼結されたサーメットに関する。
【0027】
好ましくは、本発明に従う焼結されたサーメットは、20%超の、好ましくは25%超の、好ましくは30%超の、好ましくは35%超の総空隙率、好ましくは均一に分布された総空隙率を示す。
【0028】
焼結されたサーメットは、特に、電極の、特にアノードの、特にアノード機能層の全部または一部であり得る。本発明はまた、そのようなアノードおよび、本発明に従う電極、特にアノード、を有する固体酸化物形燃料電離スタックの基本セル、ならびにそのような燃料電池スタックに関する。
【0029】
定義
用語「サーメット」は慣用的に、セラミック相および金属相の両方を含む複合材料を意味する。用語「サーメット前駆体」は、還元条件下で本発明に従うサーメットを生じ得る物質を意味する。サーメット前駆体は一般に、セラミック相および、金属相の前駆体の相、すなわち還元条件下で上記金属相に転化され得るところの相、を含む。
【0030】
生成物は、それが、出発物質の溶融および冷却による固化を用いる方法によって得られるとき、慣用的に「溶融された」と言われる。
【0031】
ZrO
2、Al
2O
3、TiO
2またはY
2O
3前駆体は、溶融およびそれに続く冷却による固化を含む方法によってこれらの酸化物の形成を生じ得る化合物である。
【0032】
用語「粒子の大きさ」は、レーザー粒子サイザーを用いて行われる粒径分布解析によって慣用的に与えられる粒子の大きさを意味すると理解される。レーザー粒子
サイザーは、例えば、Partica LA-950(Horiba製)であり得る。
【0033】
10(D
10)、50(D
50)および90(D
90)パーセンタイルまたは「センタイル」は、粉末の粒子の大きさの累積粒径分布曲線上のそれぞれ10重量%、50重量%および90重量%に対応する粒子の大きさであり、粒子の大きさは、増加する順によって分類される。例えば、粉末の粒子の10重量%は、D
10より小さいサイズを有し、粒子の90重量%は、D
10より大きいサイズを有する。パーセンタイルは、レーザー粒子サイザーを使用して得られる粒径分布を使用して決定され得る。
【0034】
用語「粉末の最少サイズ」は、当該粉末の10(D
10)パーセンタイルを意味する。
【0035】
用語「粉末の中央サイズ」は、当該粉末の50(D
50)パーセンタイルを意味する。
【0036】
用語「不純物」は、故意でなく不可避的に出発物質とともに導入されるまたはこれらの成分との反応から生じる不可避の成分を意味すると理解される。不純物は、必要な成分でなく、単に許容される成分である。例えば、ナトリウムおよび他のアルカリ金属、鉄、バナジウムならびにクロムの酸化物、ナイトライド、オキシナイトライド、カーバイド、オキシカーバイド、カルボナイトライドおよびそれらの金属の群の一部を形成する化合物は、それらの存在が望ましくないならば、不純物である。
【0037】
「ZrO
2」、「酸化ジルコニウム」および「ジルコニア」は同義である。「ZrO
2」、「酸化ジルコニウム」または「ジルコニア」が参照されるとき、(ZrO
2+HfO
2)を理解するための良好な根拠がある。これは、ZrO
2から化学的に分離不可であり同様の特性を示すHfO
2の少量がいつも、一般的に2%未満の含量でジルコニア源に天然に存在するからでる。言い換えると、「ZrO
2+HfO
2」は、ZrO
2およびジルコニア源に天然に存在する痕跡量のHfO
2を意味する。
【0038】
用語「Co」および「Ni」は、コバルト金属およびニッケル金属を意味すると理解される。
【0039】
用語「アスペクト比」Rは、粒子の最も大きい見かけの寸法または「長さ」Lと最も小さい見かけの寸法または「幅」Wとの比を意味する。粒子の長さおよび幅は慣用的に、下記方法によって測定される。粉末の粒子の代表的サンプルを抜き出した後、これらの粒子が、部分的に樹脂に埋め込まれ、磨かれた表面としての観察を可能にし得るポリッシングに付される。アスペクト比の測定は、これらの磨かれた表面の画像を使用して行われる。これらの画像は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、二次電子において、10kVの加速電圧およびx100の倍率(これは、使用されたSEM上において1μm/ピクセルを表わす)を用いて得られる。これらの画像は好ましくは、続いてアスペクト比の決定を容易にするために、粒子ができるだけ十分分離されている領域で得られる。最も大きい見かけ寸法(長さLと言う)および最も小さい寸法(Wと言う)が、各画像の各粒子について測定される。好ましくは、これらの寸法が、画像処理ソフトウエア、例えばNoesisによって販売されるVisilog、を使用して測定される。アスペクト比R=L/Wが各粒子について計算される。粉末のアスペクト比の分布が次いで、行われたアスペクト比Rの測定が一緒にされて決定され得る。
【0040】
特に断らない限り、本発明に従う粒子の酸化物の含量は全て、酸化物に基づいて表わされる重量%である。
【0041】
本発明の他の特徴および利点は、以下の記載を読みながら、そして添付の図を検討することにより、より明らかになるであろう。ここで、
図1は、本発明に従う固体酸化物形燃料電池(SOFC)スタックの横断面を模式的に表わす。
【0042】
本発明に従う粉末は、工程a)〜d)を含む一般的方法にしたがって製造され得る。
【0043】
工程a)では、工程c)またはd)の結果として、上述した任意の特徴の1以上を任意的に示す本発明に従う粉末を上記方法が与えるために、供給原料が調整される。
【0044】
供給原料に酸化ジルコニウムとは別個に酸化イットリウムが添加され得る。また、酸化イットリウムでドープされた酸化ジルコニウムを供給原料に添加することが可能である。
【0045】
第一の特定の実施態様では、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3およびTiO
2がそれぞれ、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3およびTiO
2の粉末の形状で供給原料に添加される。
【0046】
第二の特定かつ有利な実施態様では、約66%のZrO
2および33%のSiO
2の分析結果を有する天然のジルコンZrSiO
4砂が使用され、ジルコンの不純物は慣用的にAl
2O
3およびTiO
2の前駆体を含む。望ましい最終の化学組成は、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2および/またはそれらの前駆体で形成される粉末の添加により調整され得る。この特定の実施態様では、溶融が、ジルコンによって導入されるシリカを除去するように、還元条件で、例えば供給原料にコークを添加することにより、行われる。当業者は、その結果として、溶融パラメータをどのように調整するかを知っている。
【0047】
組成は、純粋な酸化物の添加または酸化物の混合物、特にZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3およびTiO
2、の添加により調整され得る。
【0048】
本発明によれば、当業者は、工程c)の結果として本発明に従う粉末の組成を示す生成物を得るように、供給原料の組成を調製する。例えば、当業者は、少量の酸化物、例えばAl
2O
3およびTiO
2、の導入を考慮するために供給原料の組成をどのように適合させるかを知っている。
【0049】
アルミナおよび酸化チタンは、出発物質中の不純物として存在し得るが、製造された粉末の粒子が本発明に従うアルミナの含量および酸化チタンの含量を一貫して示すことを確実にするために出発物質を選択することが勧められる。
【0050】
酸化物ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2およびそれらの前駆体は好ましくは、不純物とともに、供給原料の重量の90%超、95%超、99%超、好ましくは100%を構成する。好ましくは、不純物が、供給原料の酸化物に基づく重量%として、下記のようなものである。
CeO
2<0.5%、好ましくはCeO
2含量が0.3%未満、好ましくは0.1%未満、および/または
Na
2O<0.3%、好ましくはNa
2O含量が0.2%未満、好ましくは0.1%未満、より好ましくは0.05%未満、および/または
Fe
2O
3<0.2%、好ましくはFe
2O
3<0.1%、および/または
CaO<0.2%、好ましくはCaO含量が0.1%未満、より好ましくは0.05%未満、および/または
MgO<0.2%、好ましくはMgO含量が0.1%未満、より好ましくは0.05%未満。
【0051】
不純物はまた、炭素または酸化マンガンを含み得る。
【0052】
工程b)では、特に、誘導炉、プラズマトーチ、アーク炉またはレーザーが使用され得る。好ましくは、アーク炉または誘導炉が使用される。有利には、したがって、工業的やり方で多量の生成物を得ることが可能である。
【0053】
工程b)では、溶融が好ましくは、供給原料がジルコン砂を含まないならば酸化条件下で行われ、供給原料がジルコン砂を含むならば還元条件下で行われる。
【0054】
工程c)は、完全にまたは部分的に、酸化条件下または還元条件下で行われ得る。好ましくは、工程c)が酸化条件下で、好ましくは空気下で行われる。
【0055】
工程d)では、工程c)から得られる溶融された生成物が挽かれ得る。挽かれた生成物の粒径は、その目的に応じて調整される。
【0056】
上記の挽く操作は、種々の型のミル、例えばエアージェットミルまたはロールミル、において行われ得る。長い形の粒子を示す粉末が望ましいときには、ロールミルが好ましくは使用されるであろう。
【0057】
適切ならば、挽かれた粒子が、例えばふるい分けによって、粒径選択操作に付される。
【0058】
本発明はまた、一般的製造法の文脈において上述した工程a)およびb)、およびこの第一の方法のためにそれぞれ外延を示した「a
1)」および「b
1)」、ならびに下記工程:
c
1’)溶融された物質を液滴の形状で分散させること、
c
1”)これらの液滴を流体との接触により固化させて溶融粒子を得ること
を含む工程c)を含む第一の特定の製造法に関する。
【0059】
供給原料の組成を単に調整することにより、慣用の分散法、特に吹付け、遠心または噴霧が、溶融された物質から、本発明に従う粒子を、ビーズの形状で製造することを可能にする。
【0060】
第一の特定の製造法はまた、上記に列挙された一般的な製造法の任意の特徴の1を、さらには数個を含み得る。
【0061】
1実施態様では、分散工程c
1’)および固化工程c
1”)が実質的に同時であり、分散のために使用される手段が、溶融された物質の冷却をもたらす。例えば、分散は、溶融された物質を通る吹付けガスによって得られ得、当該ガスの温度が、所望の固化速度に調整される。
【0062】
本発明はまた、一般的製造法に文脈において上述した工程a)、b)およびd)、およびこの第二の特定の製造法のためにそれぞれ外延を示した工程「a
2)」および「b
2)」、ならびに下記工程:
c
2’)当該溶融された物質を型に注入すること、
c
2”)注入された物質を上記型中で、少なくとも部分的に、さらには完全に、固化されたブロックが得られるまで、固化すること
c
2”’)上記ブロックを型から外すこと
を含む工程c)を含む第二の特定の製造法に関する。
【0063】
この特定の製造法はまた、上記に列挙された一般的な製造法の任意の特徴の1つを、さらには数個を含み得る。
【0064】
特定の実施態様では、工程c
2’)において、急速な冷却を可能にする型が使用される。特に、ブロックをシート形状に形成することができる型、好ましくは米国特許第3993119号明細書に記載された型、を使用することが有利である。
【0065】
第一および第二の特定の方法は、多量の生成物を良好な収率で製造することを可能にする工業的方法である。
【0066】
もちろん、上述した方法以外の方法が、本発明に従う粉末を製造するために意図され得る。
【0067】
本発明に従う粉末は、例えば工程A)〜D)を含む方法に従うことによって、本発明に従うサーメット、特にアノードまたはアノード機能層、を製造するために特に使用され得る。
【0068】
工程A)では、供給原料が、供給原料の重量%として、30〜70%の酸化ニッケルNiOまたは酸化コバルトCoO粒子、および/または等量(すなわち同量のNiOまたはCoOを生じる量)の、これらの酸化物の1以上の前駆体を含み得、残りが好ましくはもっぱら本発明に従う粉末である。酸化ニッケルまたは酸化コバルト粒子の粉末の中央サイズD
50は0.3μm〜15μmであり得、さらには3μm〜10μmであり得る。
【0069】
工程B)では、粉末が任意の形状を与えられ得る。特に層の形状を与えられ得る。
【0070】
工程C)では、成形された粉末が、慣用の焼結技術に従って、好ましくは熱間プレスによって、焼結される。
【0071】
工程D)では、還元により、酸化物NiOおよびCoOの少なくとも一部のそれぞれNiおよびCoへの転化を生じる。このために、工程C)で得られるプリフォームが、還元環境に付される。例えば、還元性流体、例えば水素含有ガス、と接触され得る。
【0072】
上記還元性流体は好ましくは、少なくとも4体積%の、好ましくは少なくとも20体積%の、さらには少なくとも50体積%の水素(H
2)を含む。
【0073】
特定の実施態様では、工程C)およびD)が同時である。焼結が次いで、還元環境において行われる。
【0074】
工程D)の結果として、本発明に従う焼結されたサーメットが得られる。
【0075】
本発明に従う焼結されたサーメットは、高い総空隙率(total porosity)を示し得、典型的には20%超および/または70%未満の総空隙率を示し得る。
【実施例】
【0076】
以下の非制限的実施例は、本発明を説明する目的で与えられる。
【0077】
製造されるべき生成物の機能として、ジルコニアの粒子、酸化イットリウムの粒子、アルミナの粒子および酸化チタンの粒子および/またはこれらの酸化物の前駆体の粒子からなる供給原料が調製される。それらは次いで、溶融された物質が得られるように、Heroult型の電気アーク炉で溶融される。
【0078】
溶融された物質は次いで、細い流れの形状で注入され、次いで、圧縮空気による吹き付けによりビーズとして分散される。
【0079】
ビーズは次いで、ロールミルで挽かれる。
【0080】
こうして得られた粉末は次いで、超音波の適用によってふるい分けされて、実施例1〜14の粉末のための25〜45μmのふるい内画分または実施例15および16の粉末のための25μmふるいを通るサイズのものを選択する。
【0081】
次いで、得られた粉末の各々から、69MPaの圧力で冷間単軸プレス(cold uniaxial pressing)によって、直径28mmおよび厚さ2mmの多孔性ディスクが製造される。こうして得られたディスクは、7MPaの最大圧力が30分間加えられながら、1320℃で、空気下で熱間プレスに付される。
【0082】
多孔性ディスクに関して測定された特性の全て、特に、標準ASTM C1499に従い、D
S=20mm、D
L=9.5mm、0.508mm/分の試験中の速度および0.22に等しいポアソン比を伴って測定される二軸曲げ強度、および浮力法によって測定される総空隙率を下記表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
本発明者らは、超音波の適用によるふるい分けによって得られた25〜45μmのふるい内画分に対応する粉末を成形しそして焼結した後に、
開放空隙率が37.5%以上、好ましくは38%超であり、かつ
標準ASTM C1499に従って測定される二軸曲げ強度が、8MPa以上、好ましくは9MPa超、さらには10MPa超、さらには11MPa超である、
ときに良好な歩み寄りが達成されると考える。
【0085】
実施例は、良好な歩み寄りが、本発明に従う粉末から製造された生成物に関して達成されることを示す。
【0086】
実施例1〜14の粉末
(超音波の適用によるふるい分けによって得られた25〜45μmのふるい内画分に対応する)
実施例2および3の比較は、アルミナの少しの添加の非常に好ましい効果を示す。しかし、0.07%未満のアルミナ含量は、たとえTiO
2含量が0.18%であっても、目的の歩み寄りを達成することができない。
【0087】
実施例3〜5、9および14(実質的に一定のチタン含量)の比較は、アルミナの非常に多い量が好ましくない効果を有することを示す。特に、本発明の範囲外である実施例14は、1.26%のアルミナ含量に関して、目的の歩み寄りを達成するためには、0.15%超のTiO
2含量が必要であることを示す。
【0088】
実施例9および11の比較は、過剰に高いアルミナ含量の好ましくない効果が、酸化チタンの添加によって補われ得ることを示す。しかし、本発明の範囲外である実施例12および11は、それぞれ0.78%および0.68%のアルミナ含量と低いTiO
2値との組み合わせが、目的の歩み寄りを達成できないことを示す。実施例10および11の比較は、アルミナの量が多いならば、酸化チタンの添加が必要であることを確証する。
【0089】
これが、本発明にしたがって、0.6%<Al
2O
3ならば、0.5xAl
2O
3−0.3%≦TiO
2であることの理由である。本発明によれば、アルミナ含量はまた、1.8%以下でなければならない。
【0090】
実施例6、7および8(特に、最後の2つの実施例の比較)はまた、アルミナ含量が0.6%未満であるときの酸化チタンの添加の利点を示す。実施例6および7は特に、それぞれ0.38%および0.47%に等しいアルミナ含量と低いTiO
2値との組み合わせが、目的の歩み寄りを達成できることを示す。
【0091】
本発明の範囲外である実施例13は、0.9%のアルミナ含量に関して、目的の歩み寄りを達成するために、0.056%超のTiO
2含量が必要であることを示す。
【0092】
実施例3〜5は、好ましい実施例である。
【0093】
実施例15および16の粉末
(超音波の適用によるふるい分けによって得られた、25μmのふるいを通るサイズに対応する)
実施例16は、目的の歩み寄りが、この粒子サイズに関しても達成されることを示す。
【0094】
もちろん、記載された実施態様は説明のためのものであり、本発明は、それらの実施態様に限定されない。