【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、カルシウム捕捉能及び耐ゲル性を良好に発揮できる重合体やその組成物について鋭意検討を行ったところ、重量平均分子量が所定範囲にあり、かつアクリル酸(塩)由来の構造単位及びマレイン酸(塩)由来の構造単位及びを特定のモル比で含むアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、特定の硫黄原子含有低分子化合物とを含み、かつ当該硫黄原子含有低分子化合物の含有量が所定範囲にある共重合体組成物であると、極めて良好なカルシウム捕捉能及び耐ゲル性を発揮することができ、洗剤組成物等の各種用途に好適なものとなることを見いだした。また、このような共重合体組成物を得る際に、過硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)の存在下、アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)とを含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法を採用すると、優れた物性を有する当該共重合体組成物を好適に得ることができることを見いだした。更に、上記のアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、特定の硫黄原子含有低分子化合物とを含む洗剤組成物が、非常に優れた洗浄能力を有することを見いだした。そして、これらの共重合体組成物や洗剤組成物が、米国や中国、欧州等の非常に高硬度の水の地域においても優れた洗浄能力を発揮できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、硫黄原子含有低分子化合物とを含む共重合体組成物であって、該共重合体は、下記一般式(1)で表される構造単位(I)と、下記一般式(2)で表される構造単位(II)とを含み、該構造単位(I)と構造単位(II)との含有モル比(構造単位(I)/構造単位(II))は、80/20〜95/5であり、該共重合体の重量平均分子量は、2000以上、10000以下であり、該硫黄原子含有低分子化合物は、3−スルホプロピオン酸(塩)を含み、該3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量は、該共重合体組成物の固形分総量100質量%に対し、0.01〜10質量%であるアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物である。
【0008】
【化1】
【0009】
式(1)中、Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。
【0010】
【化2】
【0011】
式(2)中、M
1及びM
2は、同一又は異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。
【0012】
本発明はまた、上記アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物を製造する方法であって、該製造方法は、過硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)の存在下で、アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)とを含む単量体成分を重合する工程を含むアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物の製造方法でもある。
【0013】
本発明は更に、上記アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物を含む洗剤組成物でもある。
【0014】
本発明はそして、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、硫黄原子含有低分子化合物とを含む洗剤組成物であって、該共重合体は、上記一般式(1)で表される構造単位(I)と、上記一般式(2)で表される構造単位(II)とを含み、該構造単位(I)と構造単位(II)との含有モル比(構造単位(I)/構造単位(II))は、80/20〜95/5であり、該共重合体の重量平均分子量は、2000以上、10000以下であり、該硫黄原子含有低分子化合物は、3−スルホプロピオン酸(塩)を含み、該3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量は、該洗剤組成物の固形分総量100質量%に対し、0.0005〜2質量%である洗剤組成物でもある。
以下に本発明を詳述する。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も本発明の好ましい形態である。
【0015】
〔アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物〕
本発明のアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物(以下、「共重合体組成物」とも称す)は、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、硫黄原子含有低分子化合物とを含むが、これら含有成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、必要に応じて、更に、他の成分を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0016】
上記アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体(以下、「共重合体」とも称す)は、上記一般式(1)で表される構造単位(I)と、上記一般式(2)で表される構造単位(II)とを少なくとも含むものである。
【0017】
上記一般式(1)及び(2)において、M、M
1及びM
2は、同一又は異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表すが、金属原子としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子;カルシウム原子、マグネシウム原子等のアルカリ土類金属原子;鉄等の遷移金属原子;等が例示される。中でも、アルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子が好適であり、より好ましくはアルカリ金属原子であり、更に好ましくはナトリウム原子又はカリウム原子である。また、有機アミン基とは、第1級〜第4級のアミンがカルボキシル基を中和した構造における、第1級〜第4級のアミンに由来する構造部分であり、例えば、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミンに由来する基;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンに由来する基;ジエチレンアミン、ジエチレントリアミン等のポリアミンに由来する基;等が例示される。
なお、上記一般式(1)においてMがアンモニウム基であるとは、−CH
2CH(COONH
4)−で表される構造をいう。
【0018】
上記一般式(1)及び(2)におけるM、M
1及びM
2としては、同一又は異なって、水素原子、ナトリウム原子又はカリウム原子であることが好適である。これにより、上記共重合体及び共重合体組成物を洗剤用途等に使用した場合に、洗浄力の向上効果等がより一層発現される。
【0019】
上記一般式(1)で表される構造単位(I)は、アクリル酸(塩)由来の構造単位とも称する。アクリル酸(塩)とは、アクリル酸及び/又はアクリル酸塩を意味する。
なお、「アクリル酸(塩)由来の構造単位を含む」とは、最終的に得られた共重合体が上記構造単位(I)を含むことを意味し、アクリル酸(塩)を重合させることによって共重合体中に導入されたもののみに限られない。
上記構造単位(I)として好ましくは、重合開始剤の存在下で、アクリル酸(塩)を含む単量体成分を重合することによって形成されたものである。
【0020】
上記一般式(2)で表される構造単位(II)は、マレイン酸(塩)由来の構造単位とも称する。マレイン酸(塩)とは、マレイン酸、及び/又は、マレイン酸塩(両方のカルボキシル基がカルボキシル基の塩である形態と、片方のカルボキシル基のみが塩である形態とを含む)を意味する。
なお、「マレイン酸(塩)由来の構造単位を含む」とは、最終的に得られた共重合体が上記構造単位(II)を含むことを意味し、マレイン酸(塩)を重合させることによって共重合体中に導入されたもののみに限られない。
上記構造単位(II)として好ましくは、重合開始剤の存在下で、マレイン酸(塩)を含む単量体成分を重合することによって形成されたものである。
【0021】
本明細書中、塩(例えば、アクリル酸塩やマレイン酸塩等における塩)とは、金属塩、アンモニウム塩又は有機アミン塩を意味する。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;鉄塩等の遷移金属塩;等が例示される。また、有機アミン塩としては、例えば、メチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;ジエチレンアミン塩、ジエチレントリアミン塩等のポリアミン塩;等が例示される。これらの塩の中でも、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が好適である。より好ましくはアルカリ金属塩であり、更に好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩である。
【0022】
上記共重合体において、上記一般式(1)で表される構造単位(I)と、上記一般式(2)で表される構造単位(II)との含有モル比(構造単位(I)/構造単位(II))は、80/20〜95/5である。すなわち、上記共重合体は、上記構造単位(I)と構造単位(II)とを、モル比(構造単位(I)/構造単位(II))=80/20〜95/5で含む。当該モル比がこの範囲内にあることで、上記共重合体及び共重合体組成物のカルシウム捕捉能及び耐ゲル性が充分なものとなる。上記モル比として好ましくは82/18〜92/8、より好ましくは85/15〜90/10である。
【0023】
上記共重合体はまた、上述した構造単位(I)及び(II)に加えて、その他の単量体に由来する構造単位(「構造単位(III)」とも称す)を1種又は2種以上、更に含んでいてもよい。その他の単量体に由来する構造単位(III)とは、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)以外の単量体(これを「その他の単量体」と称す)に由来する構造単位を意味する。
ここで、「その他の単量体に由来する構造単位を含む」とは、最終的に得られた共重合体が、その他の単量体に由来する構造単位(III)を含むことを意味し、その他の単量体を重合させることによって共重合体中に導入されたもののみに限られない。
上記構造単位(III)として好ましくは、重合開始剤の存在下で、その他の単量体を含む単量体成分を重合することによって形成されたものである。
なお、上記構造単位(III)が、例えば、アクリル酸メチルに由来する構造単位である場合、当該構造単位は「−CH
2−CH(COOCH
3)−」で表すことができる。すなわち、その他の単量体に由来する構造単位とは、その他の単量体が有する重合性二重結合が開いた構造(二重結合(C=C)が、単結合(−C−C−)となった構造)に相当する。
【0024】
上記その他の単量体としては特に限定されず、例えば、メタクリル酸、クロトン酸等及びこれらの塩等の、アクリル酸(塩)以外の不飽和モノカルボン酸系単量体;フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等及びこれらの塩等の、マレイン酸(塩)以外の不飽和ジカルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、及びこれらの塩等の不飽和スルホン酸系単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体;等が挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記共重合体において、上述した構造単位(I)及び(II)の合計と、その他の単量体(III)に由来する構造単位との含有モル比(構造単位(I)と構造単位(II)との合計/構造単位(III))は、100/0〜80/20であることが好ましい。すなわち、構造単位(I)、(II)及び(III)の総量を100モル%とすると、構造単位(III)が20モル%以下であることが好ましい。この範囲内であると、上記共重合体及び共重合体組成物によるカルシウム捕捉能及び耐ゲル性をより向上させることができる。上記モル比としてより好ましくは100/0〜85/15、更に好ましくは100/0〜90/10である。
【0026】
上記共重合体はまた、少なくとも1つの主鎖末端にスルホン酸(塩)基を有する(含む)ものであることが好適である。これにより、上記共重合体及び共重合組成物のカルシウム捕捉能及び耐ゲル性がより向上され、高硬度の水の地域においても優れた洗浄力を発揮できるという本発明の作用効果をより一層発揮することが可能になる。
なお、上記共重合体が少なくとも1つの主鎖末端にスルホン酸(塩)基を有することは、例えば、
1HNMR分析により確認することができる。
【0027】
上記スルホン酸(塩)基とは、スルホン酸基及び/又はスルホン酸塩基を意味し、例えば、「−SO
3M」(Mは、水素原子、金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。金属原子及び有機アミン基の好ましい例は、上述したとおりである。)で表すことができる。
【0028】
上記主鎖末端のスルホン酸(塩)基は、例えば、後述する通り、重亜硫酸(塩)の存在下で単量体成分を重合することにより、共重合体の分子中に導入することができる。すなわち、上記共重合体を、重亜硫酸(塩)の存在下で単量体成分を重合することにより得ることが好ましく、これにより、重亜硫酸(塩)の一部が連鎖移動剤として作用し、共重合体分子の主鎖末端にスルホン酸基(−SO
3M)として取り込まれる。重亜硫酸(塩)とは、重亜硫酸及び/又はその塩を意味する。
なお、上記主鎖末端のスルホン酸(塩)基を、重亜硫酸(塩)由来の構造単位とも称す。
【0029】
上記共重合体の重量平均分子量(Mwとも称す)は、2000以上、10000以下である。重量平均分子量が2000〜10000の範囲内にあることにより、上記共重合体及び共重合組成物が良好なカルシウム沈着防止能を発現することができる。重量平均分子量の下限値として好ましくは2500以上、より好ましくは3000以上であり、また、上限値として好ましくは9000以下、より好ましくは8000以下である。
【0030】
上記共重合体はまた、分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnにより求められる値であり、分子量分布とも称す)が、1.5〜10であることが好適である。これにより、カルシウム沈着防止能をより一層向上させることができる。より好ましくは1.5〜5.0、更に好ましくは1.5〜2.7である。
本明細書中、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、後述する実施例に記載の手法により測定することができる。
【0031】
上記共重合体組成物において、上記共重合体の含有割合は、例えば、上記共重合体組成物100質量%に対して、1〜99質量%であることが好適である。
【0032】
上記共重合体組成物はまた、上述した共重合体に加えて、硫黄原子含有低分子化合物も含む。硫黄原子含有低分子化合物は、3−スルホプロピオン酸及び/又はその塩(これを「3−スルホプロピオン酸(塩)」と称す)を含むものである。
上記3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量は、上記共重合体組成物の固形分総量100質量%に対し、0.01〜10質量%である(但し、Na塩型換算)。この範囲内であることにより、上記共重合体組成物によるカルシウム捕捉能と耐ゲル性とを高めることができる。上記3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量の上限値(Na塩型換算)として好ましくは9.5質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8.5質量%以下である。上記3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量の下限値(Na塩型換算)は特に限定されるものではないが、例えば、0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、特に好ましくは2質量%以上、最も好ましくは2.5質量%以上である。
本明細書中、「Na塩型換算」とは、対象物をナトリウム塩(Na塩)として質量割合を計算することをいい、例えば3−スルホプロピオン酸(塩)であれば、3−スルホプロピオン酸ナトリウムとして質量割合を計算する。
また本明細書中、「固形分」とは、揮発成分を除く全成分、言い換えれば不揮発成分を意味する。
【0033】
上記硫黄原子含有低分子化合物はまた、2−スルホコハク酸及び/又はその塩(これを「2−スルホコハク酸(塩)」と称す)を含むことが好適である。
上記2−スルホコハク酸(塩)の含有量は、上記共重合体組成物の固形分総量100質量%に対し、Na塩型換算で0.01〜4質量%であることが好適である。これにより、上記共重合体組成物によるカルシウム捕捉能と耐ゲル性とをより一層高めることができる。上記2−スルホコハク酸(塩)の含有量の上限値(Na塩型換算)として好ましくは3.5質量%以下である。上記2−スルホコハク酸(塩)の含有量の下限値(Na塩型換算)は特に限定されるものではないが、例えば、1質量%以上が好ましい。
【0034】
上記硫黄原子含有低分子化合物はまた、硫酸塩を含むことが好適である。
上記硫酸塩の含有量は、上記共重合体組成物の固形分総量100質量%に対し、Na塩型換算で0.01〜5質量%であることが好適である。これにより、上記共重合体組成物によるカルシウム捕捉能と耐ゲル性とをより一層高めることができる。上記硫酸塩の含有量の上限値として好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下である。上記硫酸塩の含有量の下限値は特に限定されるものではないが、例えば、1質量%以上が好ましい。
【0035】
上記共重合体組成物はまた、残存単量体やその他の残存原料、上述した成分以外の副生成物等を含んでいてもよい。
上記共重合体組成物中に残存単量体が含まれる場合、当該残存単量体の含有量は、例えば、上記共重合体組成物の固形分総量に対し、0〜1000ppmであることが好適である。より好ましくは500ppm以下である。
また、その他の残存原料や、上述した成分以外の副生成物は、特に言及する場合を除き、極力低減することが好適である。
【0036】
上記共重合体組成物は更に、水等の溶媒(溶剤とも称す)を含んでいてもよい。溶剤を含む場合には、水を含む溶剤であることが好ましい。より好ましくは水である。
上記共重合体組成物における溶剤の含有量は、上記共重合体組成物100質量%に対し、0〜99質量%であることが好適である。
【0037】
〔アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物の製造方法〕
本発明の共重合体組成物は、過硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)の存在下で、アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)とを含む単量体成分を重合する工程を含む製造方法により得ることができる。このような製造方法もまた、本発明の1つである。過硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)との併用下で重合反応を行うことにより、カルシウム捕捉能及び耐ゲル性に極めて優れる上記共重合体組成物を好適に得ることが可能になる。
【0038】
<単量体組成>
上記単量体成分において、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)の使用割合は、モル比(アクリル酸(塩)/マレイン酸(塩))で80/20〜95/5とすることが好適である。この範囲とすることで、上記共重合体及び共重合体組成物によるカルシウム捕捉能及び耐ゲル性を高めることができ、また、高い重合率で重合反応を行うことができ、高効率かつ容易に上記共重合体及び共重合体組成物を得ることが可能になる。より好ましくは82/18〜92/8、更に好ましくは85/15〜90/10である。
【0039】
上記単量体成分はまた、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)に加えて、これらのいずれか又は両方と共重合し得るその他の単量体の1種又は2種以上を更に含むものであってもよい。その他の単量体については上述したとおりである。
上記単量体成分において、アクリル酸(塩)及びマレイン酸(塩)の合計使用量と、その他の単量体の使用量との割合は、モル比(アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)との総量/その他の単量体)で100/0〜80/20とすることが好適である。この範囲とすることで、上記共重合体及び共重合体組成物によるカルシウム捕捉能及び耐ゲル性をより高めることができる。より好ましくは100/0〜85/15、更に好ましくは100/0〜90/10である。
【0040】
<重亜硫酸(塩)等、過硫酸(塩)>
上記単量体成分の重合工程は、過硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)の存在下で行われるが、このような製造方法により得られる共重合体組成物は、好ましくは、アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、過硫酸(塩)に由来する硫黄原子含有低分子化合物と、重亜硫酸(塩)に由来する硫黄原子含有低分子化合物とを含むことになる。
なお、過硫酸(塩)に由来する硫黄原子含有低分子化合物としては、硫酸塩が主成分であり、重亜硫酸(塩)に由来する硫黄原子含有低分子化合物としては、3−スルホプロピオン酸(塩)及び2−スルホコハク酸(塩)が主成分である。
これらの硫黄原子含有低分子化合物は、上述した含有割合で上記共重合体組成物中に含まれることが好適である。
【0041】
上記重合工程において、過硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)とは、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
上記過硫酸(塩)は、主として重合開始剤として作用する。過硫酸(塩)としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が好適である。また、過硫酸(塩)とともに、他の重合開始剤の1種又は2種以上を併用してもよい。他の重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、アゾ化合物、有機化酸化物等が挙げられる。
【0042】
上記重亜硫酸(塩)は、主として連鎖移動剤として作用する。なお、重亜硫酸(塩)に加えて、更に他の連鎖移動剤の1種又は2種以上を併用してもよい。
上記重亜硫酸(塩)としては、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩が好適である。
なお本発明では、上記重亜硫酸(塩)に加えて、又は、上記重亜硫酸(塩)に代えて、重亜硫酸(塩)を発生し得る化合物の1種又は2種以上を使用することができる。重亜硫酸(塩)を発生し得る化合物としては、例えば、ピロ亜硫酸(塩)、亜ジチオン酸(塩)、亜硫酸(塩)等が好適である。
上記重亜硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)を発生し得る化合物の中でも、重亜硫酸(塩)が好適である。
【0043】
上記重合工程において、過硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)との使用割合は、質量比(過硫酸(塩)/重亜硫酸(塩))で1/0.5〜1/5であることが好適である。この範囲内にすると、上記共重合体の分子量の増大をより防ぐことができ、また、分子量分布をより狭くすることができる。より好ましくは1/1〜1/4である。
【0044】
また上記重合工程において、過硫酸(塩)と重亜硫酸(塩)との合計の使用量は、上記重合工程に使用される全単量体成分1モルに対して、5〜20gであることが好ましい。この範囲内にすると、上記共重合体の分子量の増大をより防ぐことができ、また、分子量分布をより狭くすることができるうえ、不純物としての硫黄原子含有低分子化合物の生成がより防がれ、得られる共重合体組成物中の硫黄原子含有低分子化合物の含有割合を上述した範囲により制御することが可能になる。より好ましくは10〜15gである。
【0045】
<多価金属イオン>
上記重合工程はまた、重合の促進等を目的として、多価金属イオンの存在下で行ってもよい。多価金属イオンは、1種又は2種以上を使用することができる。
上記多価金属イオンとしては、例えば、鉄イオン(Fe
2+,Fe
3+)、バナジウムイオン(V
2+,V
3+,VO
2+)、銅イオン(Cu
2+)等が好適であり、中でも鉄イオンを少なくとも用いることが好ましい。
【0046】
上記多価金属イオンの供給形態については特に限定されず、例えば、重合反応系内でイオン化する金属及び/又は金属化合物を重合工程で用いることにより、多価金属イオンを重合系で存在させることが好適である。例えば、このような金属及び/又は金属化合物を溶解してなる溶液(好ましくは水溶液又は水性溶液)を重合系に添加することが好ましい。
【0047】
上記重合反応系内でイオン化する金属としては、例えば、鉄、バナジウム、銅等が挙げられる。
【0048】
上記重合反応系内でイオン化する金属化合物としては、例えば、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジウム、硫酸バナジウム、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス((NH
4)
2SO
4・VSO
4・6H
2O)、硫酸アンモニウムバナダス((NH
4)V(SO
4)
2・12H
2O)、酢酸銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、鉄アセチルアセトナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸第一鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の金属酸化物;硫化銅(II)、硫化鉄等の金属硫化物;等が挙げられる。
【0049】
上記重合工程で多価金属イオンを使用する場合、多価金属イオン(上記金属化合物及び/又は金属)の使用総量100質量%のうち80質量%以上を、初期に反応容器に仕込むことが好適である。より好ましくは100質量%、つまり全量を初期に仕込むことである。
【0050】
上記多価金属イオンの使用量は、上記金属化合物及び/又は金属の使用量として、使用する単量体成分の全量を添加した時点における重合反応液の全質量に対し、5〜500ppmであることが好ましい。5ppm以上であると、過硫酸(塩)等の重合開始剤の分解効率をより高めることが可能になる傾向があり、また、500ppm以下であると、着色のおそれがより充分に抑制され、また、添加効果がより充分に発現される。
【0051】
<重合溶媒>
上記重合工程は、溶媒中で行うことが好適である。溶媒としては水性溶媒を用いることが好ましい。水性溶媒とは、水、又は、水と有機溶剤との混合溶媒を意味する。水性溶媒の中でも、水を80質量%以上、有機溶剤を20質量%以下の割合で含む水性溶媒が好適である。より好ましくは水である。
上記水性溶媒に用いられる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ジエチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。有機溶剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0052】
上記重合工程ではまた、単量体成分、重合開始剤、水性溶媒及び必要に応じて用いられるその他の原材料を、重合終了後の共重合体の理論固形分濃度(重合溶液のうち、不揮発分の濃度を意味する)が、重合溶液100質量%に対して40質量%以上となるような使用量で用いることが好ましい。これにより、上記共重合体の分子量分布をより狭くすることが可能になる。
上記共重合体の理論固形分濃度は、初期仕込み及び滴下により反応器に供給される各原材料の質量により、調節することができる。例えば、アクリル酸や(無水)マレイン酸と、水酸化ナトリウム等の塩基とを、別々に反応器に供給して反応器内で中和を行う場合には、中和により水が生成することも考慮しなければならない。
【0053】
<重合温度>
上記重合反応時の温度(重合温度とも称す)は、25〜150℃とすることが好適である。より好ましくは25〜99℃である。25℃未満の場合、分子量の上昇や不純物の増加を充分に抑制することができないおそれがあり、また、重合時間が長くかかりすぎて生産性をより充分なものとすることができないおそれがある。一方、重合温度が高すぎると、開始剤系として重亜硫酸(塩)を使用する場合に重亜硫酸(塩)が分解して亜硫酸ガスが多量に発生するおそれがあり、そのために、重合後に液相に亜硫酸ガスが溶解して不純物が形成されることを充分に防ぐことができないおそれがある。また、重合中に系外に亜硫酸ガスが排出され回収処理コストがかかるおそれもある他、開始剤系としての重亜硫酸(塩)が亜硫酸ガスとして抜けてしまうため、当該重亜硫酸(塩)の添加に見合うだけの充分な効果が得られず、分子量が下がらなくなる傾向にある。重合温度の下限として更に好ましくは50℃以上、特に好ましくは70℃以上である。また、重合温度の上限として更に好ましくは95℃以下、特に好ましくは90℃以下である。
なお、ここでいう「重合温度」とは、反応系内の反応溶液温度(℃)を意味する。
【0054】
<重合圧力>
上記重合工程において、反応系内の圧力は特に限定されず、常圧下、減圧下、加圧下のいずれの圧力下であってもよい。
【0055】
<各原料の添加方法>
上記重合工程においては、上記単量体成分の一部又は全部を重合開始前に反応容器(反応液)に添加する、すなわち初期仕込みすることも可能である。特に、マレイン酸(塩)は、残存単量体をより低減する観点から、重合開始前に全使用量を反応容器(反応液)に添加することが好適であるが、一部を重合開始後に添加してもよい。また、アクリル酸(塩)は、その一部又は全部を重合開始後に反応容器(反応液)に添加することが好ましい。アクリル酸(塩)の一部又は全部を重合開始後に添加することにより、得られる共重合体の分子量分布をより狭くすることができ、また、上記共重合体組成物によるカルシウム捕捉能及び耐ゲル性をより高めることができる。なお、単量体成分は、単独で添加してもよいし、また、水等の溶剤に溶解したり、他の原料等と混合したりして添加してもよい。
本明細書中、「重合開始前」とは重合開始時点より前を意味し、「重合開始後」とは重合開始時点より後を意味する。「重合開始時点」とは、重合開始剤の一部又は全部と、単量体成分の一部又は全部とが、反応容器(反応液)に添加された時点を意味する。
【0056】
上記重合開始剤は、過硫酸(塩)を含むものが好適であるが、当該重合開始剤の全使用量を反応容器に一括で添加してもよいし、一部又は全部を反応容器に滴下してもよい。好ましくは、重合開始剤の一部又は全部を反応容器に滴下することであり、これにより、重合中に反応系に存在する重合開始剤濃度を制御することができるため、重合体の分子量分布を狭くすること等が可能である。より好ましくは、重合開始剤の使用総量100質量%のうち80質量%以上を、滴下により反応容器に供給することである。更に好ましくは、重合開始剤の使用総量100質量%のうち100質量%、すなわち全量を滴下により反応容器に供給することである。
【0057】
上記重合開始剤の反応容器(反応液)への添加時間(好ましくは滴下時間)は、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(塩)の添加終了時以後まで添加するか、又は、アクリル酸(塩)の添加終了時の前後20分以内に添加を終了させることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸(塩)の添加終了時の前後10分以内に、上記重合開始剤の添加を終了させることである。これにより、得られる共重合体組成物中の単量体の残量がより低減される。
【0058】
上記重合工程においては、上記重合開始剤(好ましくは過硫酸(塩))の反応容器への供給速度(重合開始剤添加速度とも称す)を、重合中に少なくとも一度変化させることが好適である。これにより、3−スルホプロピオン酸(塩)及び2−スルホコハク酸(塩)の生成がより抑制されて、これらの含有割合を上述した範囲により制御することができるため、得られる共重合体組成物のカルシウム捕捉能や耐ゲル性がより高められる。このように上記製造方法が、重合開始剤の一部又は全部を反応容器に添加する工程を含み、かつ該重合開始剤の添加速度を、重合中に少なくとも一度変化させる、という形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
なお、上記供給速度を重合中に少なくとも一度変化させる場合、重合初期の重合開始剤添加速度(例えば、重合開始時点から30分以内の平均速度)を、それ以外の時間帯における重合開始剤添加速度より大きく(速く)設定することがより好ましい。すなわち重合初期の重合開始剤の添加速度は、それ以外の時間帯における重合開始剤の添加速度よりも大きい形態は、本発明の好ましい形態の1つである。これにより、カルシウム捕捉能及び耐ゲル性をより好適なものとすることができる。より好ましくは、重合初期の重合開始剤添加速度(例えば、重合開始時点から30分以内の平均速度)を、それ以外の時間帯における重合開始剤添加速度の1.1〜10倍の速度に設定することであり、更に好ましくは1.2〜5倍の速度に設定することであり、特に好ましくは1.25〜4.5倍の速度に設定することであり、最も好ましくは1.3〜4倍の速度に設定することである。
【0059】
上記重亜硫酸(塩)は、全使用量を反応容器(反応液)に一括で添加してもよいし、重合開始後にその一部又は全部を反応容器に滴下してもよい。好ましくは、重亜硫酸(塩)の一部又は全部を重合開始後に反応容器に添加することである。より好ましくは、重亜硫酸(塩)の使用総量100質量%のうち80質量%以上を、滴下により反応容器に供給することであり、これにより、重亜硫酸(塩)が重合反応により有効に利用され、初期の段階で重亜硫酸(塩)が分解されるおそれを充分に低減することができる。更に好ましくは、使用総量100質量%のうち100質量%、すなわち全量を滴下により反応容器に供給することである。
【0060】
上記重亜硫酸(塩)の反応容器(反応液)への添加時間は特に限定されないが、例えば、アクリル酸(塩)の添加終了時以後まで添加するか、又は、アクリル酸(塩)の添加終了時の前後20分以内に添加を終了させることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸(塩)の添加終了時の前後10分以内に、重亜硫酸(塩)の添加を終了させることである。これにより、得られる共重合体組成物のカルシウム捕捉能及び耐ゲル性をより高めることができる。
【0061】
上記重合工程において、上述した各成分等を重合中に滴下する場合、その滴下時間としては特に限定されないが、例えば、各成分について40分〜420分とすることが好適である。より好ましくは60分〜360分である。
なお、各成分によって、滴下時間が異なっていてもよい。また、各成分の滴下速度は、特に上記で言及した場合を除き、特に限定されるものではない。例えば、滴下の開始から終了を通じて滴下速度は一定であってもよく、必要に応じて滴下速度を変化させてもよい。
【0062】
<重合中の中和度>
上記重合工程はまた、酸性条件下で行うことが好適である。酸性条件下で重合反応を行うことによって、重合反応系の溶液(好ましくは水溶液)の粘度上昇が充分に抑制され、低分子量の上記共重合体を良好に製造することが可能になる。しかも、従来よりも高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるため、製造効率をより大幅に上昇させることが可能になる。また、酸性条件下で重合反応を行うことで、高濃度かつ一段で重合を行うことができるため、従来の製造方法では場合によっては必要であった濃縮工程を省略することも可能である。それゆえ、上記共重合体(及び共重合体組成物)の生産性がより一層大幅に向上され、製造コストの上昇をより抑制することができる。
【0063】
上記酸性条件下で重合反応を行う形態においては、重合開始時点の中和度(すなわち、初期仕込み時の中和度)、及び/又は、単量体成分滴下終了時点の中和度を、0〜40%とすることが好ましい。中和度がこの範囲内にあると、3−スルホプロピオン酸(塩)及び2−スルホコハク酸(塩)の生成がより抑制されて、得られる共重合体組成物中のこれらの含有割合を上述した範囲により制御することができ、得られる共重合体組成物のカルシウム捕捉能や耐ゲル性がより高められる。上記中和度としてより好ましくは0〜35%、更に好ましくは0〜33%、特に好ましくは0〜30%である。また、上記の観点から、重合開始時点の中和度(初期仕込み時の中和度)と、単量体成分滴下終了時点の中和度との両方を、上記の範囲にすることが最も好適である。
ここで、「重合開始時点」とは、上述した通りである。
また「中和度」とは、反応器(反応液)に含まれる単量体成分中のカルボキシル基100モル%に対する、塩型のカルボキシル基(中和されているカルボキシル基)の割合(モル%)を意味する。例えば、重合開始時点で、重合釜(反応容器)に含まれる反応液に、マレイン酸1モルと水酸化ナトリウム1モルとが仕込まれている場合、重合開始時点の中和度は50%ということになる。
上記重合工程ではまた、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6となるように調整することが好適である。
【0064】
<重合工程以外の製造工程>
上記共重合体組成物の製造方法は、上述した重合工程に加えて、その他の工程を1又は2以上含んでいてもよい。例えば、重合工程で得られた共重合体が酸型又は部分中和型である場合等には、必要に応じて中和工程を含んでもよい。また、必要に応じて、重合工程で製造された共重合体組成物に他の成分を添加する混合工程;含有成分の一部を除去したり低減させたりする精製工程;共重合体組成物の溶媒量を増減する希釈工程や濃縮・乾燥工程;等を含んでいてもよい。
このように過硫酸(塩)及び重亜硫酸(塩)の存在下で、アクリル酸(塩)とマレイン酸(塩)とを含む単量体成分を重合する工程を必須とし、その他の工程を任意で含んでもよい形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0065】
〔共重合体(組成物)の用途〕
本発明の共重合体組成物(及び共重合体)は、例えば、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー等として用いることができる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用及び自動車用等、様々な用途の洗剤に添加されて使用することができる。上記共重合体組成物は、このような洗剤ビルダー等の水溶性ポリマー用途に特に好適に使用することができる。これらの用途の中でも、洗剤組成物に配合されて用いられることが好適である。すなわち、上記アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体組成物を含む洗剤組成物もまた、本発明の1つである。このような洗剤組成物は、上述したアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体を含むことにより、極めて良好なカルシウム捕捉能及び耐ゲル性を発揮することができるため、米国や中国、欧州等の非常に高硬度の水の地域においても優れた洗浄能力を発揮することができる。
【0066】
上記共重合体組成物はまた、後述する方法で求められるカルシウム捕捉能値が、220mgCaCO
3/g以上であることが好ましい。これにより、高硬度水においてもより一層優れた洗浄能力を発現することができる。より好ましくは230mgCaCO
3/g以上、更に好ましくは240mgCaCO
3/g以上、特に好ましくは250mgCaCO
3/g以上、最も好ましくは260mgCaCO
3/g以上である。
【0067】
上記共重合体組成物は更に、後述する方法で求められるゲル化度が、0.05未満であることが好適である。これにより、高硬度水においてもより一層優れた洗浄能力を発現することができ、洗剤の添加剤としてより好適に用いることができる。より好ましくは0.04未満である。
【0068】
<洗剤組成物>
上記洗剤組成物は、上述したアクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体を含むが、更に界面活性剤を含むものであることが好適である。これにより、より優れた洗浄能力を発揮できる。界面活性剤は、必要に応じ1種又は2種以上を使用することができる。
上記洗剤組成物において、上記共重合体の含有割合は、洗剤組成物の固形分総量100質量%に対し、0.1〜20質量%であることが好適である。より好ましくは0.5〜15質量%である。また、上記界面活性剤の含有割合は、洗剤組成物の固形分総量100質量%に対し、5〜99.8995質量%であることが好適である。より好ましくは5〜90質量%、更に好ましくは5〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。
【0069】
上記界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤のいずれも使用可能である。
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル硫酸塩、アルキル又はアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩等が挙げられる。
上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシ型又はスルホベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
上記カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0070】
上記洗剤組成物には、必要に応じて、酵素、アルカリビルダー、キレートビルダー、再付着防止剤、蛍光剤、漂白剤、香料等の洗剤組成物に常用される成分を1種又は2種以上配合することもできる。
【0071】
上記洗剤組成物に含まれる3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量は、該洗剤組成物の固形分総量100質量%に対し、Na塩型換算で0.0005〜2質量%であることが好適である。これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量(Na塩型換算)として好ましくは1.9質量%以下、より好ましくは1.8質量%以下、更に好ましくは1.7質量%以下である。上記3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量の下限値(Na塩型換算)は特に限定されるものではないが、例えば、0.001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上である。
なお、上記アクリル酸(塩)−マレイン酸(塩)系共重合体と、硫黄原子含有低分子化合物とを含む洗剤組成物であって、該硫黄原子含有低分子化合物は3−スルホプロピオン酸(塩)を含み、該3−スルホプロピオン酸(塩)の含有量が、該洗剤組成物の固形分総量100質量%に対し、0.0005〜2質量%である洗剤組成物もまた、本発明の1つである。このような洗剤組成物は、上述した本発明の共重合体組成物を用いることにより得ることができる。