(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フィルタリングは、少なくとも一つのフィルタ係数が前記受信信号の信号対雑音比SNRの関数として表される適応型フィルタによって行われることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の方法。
前記フィルタリングは、前記少なくとも一つのフィルタ係数に基づいてフィルタのループゲインが適応されるフィルタリングであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
現在のn番目のシンボルと前回のシンボルとの間の加重平均角度の変化を計算し、該加重平均角度の変化を周波数に変換することで前記残留周波数誤差を推定するステップを更に含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
推定された予測サブキャリアと受信サブキャリアとの間の乗算の推定角度から位相オフセットを相回転によって除去することを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
有線、無線、及び光システム等のマルチキャリア・デジタル及び/又はアナログ通信システムの主たる欠点のひとつに、周波数及びサンプリング周波数同期における誤差に影響されやすいというものがある。送受信機間に周波数オフセットや周波数不整合が存在すると、受信信号を復調する前の段階で周波数オフセットが生じる。例えば直交周波数分割多重化(OFDM)システムの場合、周波数不整合はキャリア間干渉(ICI)の増大をもたらす。さらに、シンボル受信の度に一定の相回転が生じる。これらの障害により受信機性能が低下する。文献Pollet等による「The BER Performance of OFDM Systems using Non−Synchronised Sampling」、IEEE Global Telecommunications Conference 1994、 253〜257ページによれば、OFDMシンボルのサブキャリア間隔に対して許容される周波数不整合は1%であり、この場合、64QAM(直交振幅変調)での損失は0.5dBにとどまる。一方、QPSK(4相位相変調)の許容誤差は5%で、そのためにサンプリング周波数オフセットの追跡を必要とする。周波数オフセットはさらに受信機におけるDC(直流)オフセットや時刻同期アルゴリズムのパフォーマンスの低下を招く。加えて、信号を受信するチャネルの推定にも劣化が生じる。これは特に、時空間ブロック符号化(STBC)システム、空間分割多重化(SDM)システム、多入力多出力(MIMO)システム等、多数の信号や多数のシンボルを結合してチャネル推定値を取得するシステムで見られる。
【0003】
上述したように、マルチキャリアシステムは送受信機間のサンプリング周波数誤差や周波数不整合に影響されやすい。例えば、OFDMシステムの送受信機間でサンプリング周波数が一致しない場合、サブキャリアの直交性が失われ、ICIが増加する可能性がある。相回転もサブキャリア周波数の上昇(すなわち、外側サブキャリアは内側サブキャリア以上に影響を受ける)と連続したOFDMシンボルの受信数に比例して増加する。こうした障害が増加し続けると、最終的に受信機が受信信号を正確に復号化できなくなるため、サンプリング周波数オフセットの追跡が必要となる。文献Heiskala & Terryによる「OFDM Wireless LANS: theoretical and practical guide」、Chapter 2、SAMS、 2001年12月には、OFDMパケット長が非常に長い場合、サンプリング周波数不整合の存在により、最適時刻同期点が整数サンプリング周期と同じだけ或いはそれ以上に前後に移動することが述べられている。
【0004】
送受信機間の周波数不整合やサンプリング周波数不整合は上記文献中に提案された既存の同期化アルゴリズムによって推定可能である。一例として、送信信号に埋め込まれた周知のトレーニング情報、例えば、プリアンブルとパイロットサブキャリア、または受信信号の分析、或いは受信信号固有の特性、例えば受信信号がOFDM信号の場合はサイクリックプレフィックス等に基づいて周波数不整合を推定できる。
【0005】
しかし、実際の実現例においては、送受信機間のノイズやアナログ減衰成分が推定アルゴリズムに影響するため、通常、推定した周波数オフセットは実際の周波数誤差に一致しない。したがって、推定した周波数誤差と実際の周波数誤差の差分として定義される残留周波数誤差が存在する。受信機の信号対雑音比低減やコンステレーション回転の点から見ると、残留周波数誤差の存在はシステム性能に影響を与える。コンステレーション回転は以下の近似によって残留周波数誤差と関連する。シンボル当りのコンステレーション回転≒360×f
residual×T
s(degrees)、式中、T
sは例えばOFDMシンボルの周期である。64QAM等の高次変調は特にコンステレーション回転の影響を被りやすい。これはサブキャリアのコンステレーションが最終的に決定境界を越えて回転し、正確な復調がより困難になるからである。パケット長の長い低次変調の場合も残留周波数誤差は重要な意味を持つ。パケット長が長ければコンステレーション回転は漸進し、最終的にサブキャリアコンステレーションは決定境界を越えて回転する。このため、正確な復調がさらに難しくなる。
【0006】
従来技術においては、通常、残留周波数不整合の量(または精度)は採用するアルゴリズムに依存する。文献V. S. Abhayawardhana等による「Residual Frequency Offset Correction for Coherently Modulated OFDM systems in Wireless Communication」、Vehicular Technology Conference、2002.VTC Spring 2002.IEEE 55th、Volume 2、2002年5月6〜9日、777〜781ページは従来技術の一例を挙げている。ここでは、Schmidl and Cox Algorithm(SCA)として知られるアルゴリズムを用いて周波数オフセット推定値を取得した後に、存在する残留周波数誤差を残留周波数補正アルゴリズムを用いて継続的に追跡して補償する。高速フーリエ変換(FFT)演算に続く周波数領域等価器(FEQ)の出力における相変化の速度を追跡することで残留周波数誤差を推定する。しかし、チャネル応答中の特殊な0に起因する低SNRのサブチャネルは残留周波数誤差推定値に重大な影響を及ぼす。そのため、従来技術では閾値を導入し、これを超える大きさを持つサブチャネルを選択する。利用可能な情報を全て用いるわけではないため、選択する閾値のレベルにしたがって性能は低下する。従来技術においてはこの閾値効果がネックになるといえる。
【0007】
M Sliskovicの「Sampling Frequency Offset Estimation and Correction in OFDM systems」、The 8th IEEE International Conference on Electronics、Circuits and Systems、2001.Volume 1、2001年9月2〜5日、437〜440ページが記述する別の方法では、連続したシンボル間の位相差を用いて周波数オフセットを推定する。残留周波数誤差も同じ方法で推定できる。ここで提案された方法では、データシンボルを繰り返し、すべてのサブキャリアにおいて連続した繰返しシンボル間の位相を比較する。この従来技術は、位相差が小さければ(1度未満)、arg或いはarctan関数を例えばα=arg(a+jb)=arctan(b/a)≒b/aまたはsin(2πx)≒2πxといった一次関数で近似できる。近似を用いる際に問題となるのは、角度が大きくなるにつれて近似が悪化することであり、結果的に残留周波数推定の質が低下する。これは不正確な補正値の適用を意味し、角度オーダーの誤差で受信機性能が悪化する64QAMコンステレーションに重大な影響を与える。加えて、チャネルモデル(SNRと遅延拡散)とシステム内の障害(位相雑音、位相と振幅との不均衡、DCオフセット、水晶許容誤差等)の量に依存するため、角度は小さい値に限られず(0度から360度までのどんな角度も取りうる)、したがって、小さな角度での近似は推定値や補正値の精度の低下につながり、受信機の性能をさらに劣化させることになる。従来技術ではさらに、SNRに比例した値で各サブキャリアの位相誤差を重みづけして閾値効果を回避する技術を紹介している。各サブキャリアのSNRはチャネル推定値の2乗H^H^
*で推定できる。しかし、SNRが低ければチャネル推定値の2乗は不正確な値となる。
【0008】
上述の従来技術では、サンプリング周波数オフセットがゼロとされるところで近似を行っている。非対称なサブキャリアを用いるノンフラットフェージングチャネル或いはフラットフェージングチャネルで近似を行うと、位相推定値はサンプリング周波数オフセットを無視することで生じた新たな誤差成分を含むことになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明の特徴及び利点は、以下の説明、図面、及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。しかし、以下の実施形態は単なる例示に過ぎず、図を参照して説明する特定の実施形態において変更できる点に留意されたい。
【0016】
本発明は、OFDM(直交周波数分割多重化)に基づいたデータ通信システム等のマルチキャリア通信システムに関連した一般的な状況において説明される。例えば、WLAN(無線ローカルエリアネットワーク)システム、IEEE802.11(アメリカ電気電子通信学会)システム、WiFi(Wireless Fidelity)システム、WiMAX(Worldwide Interoperability For Microwave Access)システム、ADSL(非対称デジタル加入者線)システム、その他いかなるシステムでもOFDMに基づくものであれば本発明を適用してもよい。
【0017】
図1は、MIMO OFDM受信機の一例を示す簡略化したブロック図であり、本発明の異なる実施形態に関連した機能性を説明するものである。図示のとおり、MIMO受信機は多数の受信機分枝からなり、そのうち2つのみを示す。
図1において、ANT1は第1の受信機分枝のアンテナを表し、ANT N
rxはN番目の受信機分枝のアンテナを表す。Nrxは1以上の整数値をとりうる。
図1において、第1の受信機分枝はさらに、Rfキャリアに変調された信号を混合して複合ベースバンド信号として知られるほぼ0Hzに変調された信号を生成する第1の周波数ミクサ1Aを具備する。複合ベースバンド信号は同相成分と直交成分からなり、アナログ/デジタル変換器(ADC)2Aによってデジタル領域へと変換される。周知のとおり、Rfキャリアに変調された信号からデジタル複合ベースバンド信号を生成する方法は他にも数多く存在し、適切に作業を完了するためにはさらなる構成、例えばフィルタや増幅器等が必要である。次に、デジタル複合ベースバンド信号はサンプルセレクタ(SEL.S)3Aを通過する。サンプルセレクタ3Aは受信信号のサイクリックプレフィックス(CP)を除去し、アドバンス/リタードブロック(ADV./RET.)13からの入力に基づいてサンプルを遅らせる或いは進めるように構成される。サンプルは第2の周波数ミクサ4Aに入力されて送受信機間の周波数不整合が補正された後、FFTに入力される。尚、SEL.S 3Aと第2の周波数ミクサブロック4Aの順番は逆でもよい。サンプルと周波数の補正を経た複合ベースバンド信号はFFTブロック5Aで処理される。FFTブロック5Aは時間領域から周波数領域への変換機能を実現する。
【0018】
N番目の受信機分枝は、第1の周波数ミクサ1Bと、ADC2Bと、サンプルセレクタ(SEL.S)3Bと、第2の周波数ミクサ4Bと、FFTブロック5Bとを具備する。
図1に示すMIMO受信機はさらに、第1の周波数ミクサ1A、1Bで用いる周波数を合成するアナログ周波数合成器(A.F.S)6と、ADC2A、2Bにサンプリングクロックを提供するデジタルクロック(D.CL)7と、D.CL7、A.F.S6及びD.F.S9に基準周波数を提供する水晶発振器(C.O.)8と、第2の周波数ミクサ4A、4Bで用いる周波数を合成するデジタル周波数合成器(D.F.S)9とを具備する。水晶発振器制御部(C.O.C)11はC.O8が出力した基準周波数を調整するためのものである。チャネル推定器(CH.EST)10は送受信機間のチャネル推定値を生成する機能を実施する。時間周波数同期装置(T&F SYNCH)12は受信したパケットの先頭及び送受信機間の周波数オフセットf
estの初期推定を行う機能を実施する。アドバンス/リタードブロック(ADV./RET.)13は、本発明の装置120が生成する時間制御信号(TCS)に基づいてパケット先頭タイミングの初期推定値を前或いは後に移動する。
【0019】
受信機はさらに、公知の送信サブキャリア(TX.SUBC.)16及び/又は再生サブキャリア(REG.SUBC.)15を選択するように構成されたマルチプレクサ14を備える。サブキャリアの再生は、受信したデータサブキャリアに関する情報に基づいて復号化手段20が決定を行い、その情報からデータサブキャリアを再生することで行われる。ブロック100はサブキャリアデマルチプレクサ110を備える。デマルチプレクサ110はFFTブロックから受け取ったサブキャリアを分離するように構成される。サブキャリアは次に、チャネル等化、障害補正、ソフトビットメトリック変換機能、順方向誤り修正(FEC)復号化等を可能にする復号化手段20に送出される。デマルチプレクサ110はさらに、
図2と
図5を用いて後述するように、残留周波数誤差を推定する装置120が必要とする受信サブキャリアを分離するように構成される。ブロック100はさらに、
図1の総周波数推定値f
corrを生成するために設けられた位相角度/周波数変換器130を備える。
図1に示すように、総周波数推定値f
corrはC.O.C11、A.F.S6、D.F.S9への入力として使われ、パケットの先頭でのみ調整されて開ループを形成するか、或いはパケットの受信中に更新されて閉ループを形成できる。f
corrの計算方法については後に詳述する。
【0020】
図2は本発明の第1実施形態による残留周波数誤差を推定する装置120を示す。前述したとおり、サブキャリアデマルチプレクサ110は、残留周波数誤差を推定する装置120が必要とする受信したサブキャリアを分離するように構成される。
図2及び本発明の第1実施形態によれば、残留周波数誤差の推定に必要な受信サブキャリアは、実際の受信ベクトルP
r,irxを含む。式中、i∈{1,2、…、N
sc}はサブキャリアインデックス、r∈{1、2、…、N
rx}は受信機チェーンインデックスを表す。装置120にはさらにチャネル推定ベクトルH^
t,r,iが入力される。式中、t∈{1、2、…、N
tx}は送信機チェーンインデックス、r∈{1、2、…、N
rx}は受信機チェーンインデックス、i∈{1、2、…、N
sc}は不図示のOFDM信号のサブキャリアインデックスを表す。チャネル推定ベクトルH^
t,r,iは
図1に示すチャネル推定器(CH.EST.)10によって判定される。装置120にはさらに基準ベクトルP
t,irefが入力される。基準ベクトルP
t,irefは
図1のマルチプレクサ14によって判定される。本発明の一実施形態によれば、基準ベクトルP
t,irefは、例えば受信機にとって既知の送信パイロットサブキャリア等のあらかじめ定義したサブキャリアでもよい。本発明の他の実施形態によれば、基準ベクトルP
t,irefは受信信号の分析或いは受信OFDM信号固有の特性、例えばサイクリックプレフィックス(CP)に基づいてもよい。したがって本発明は、送信パイロットサブキャリアのみに基づく基準ベクトルの使用に限られない。
【0021】
当業者によく知られるように、残留周波数の誤差や不整合が存在するか否かは、チャネル(SNRと遅延拡散)やシステム内の障害(位相雑音、位相と振幅との不均衡、DCオフセット、水晶許容誤差等)の量といったいくつかの要素に依存するといえる。したがって、実際の受信ベクトルP
r,irxは一般に、残留周波数不整合f
residualと、i番目のサブキャリアインデックスに対するn番目のシンボル時間における実際のチャネルH
t,r,i(n)と、n番目のシンボル時間における基準ベクトルP
t,irefと、i番目のサブキャリアに対するn番目のシンボル時間におけるr番目の受信機分枝に対する加法性白色ガウス雑音(AWGN)に相当するノイズW
r,i(n)との関数として表され、n番目のシンボル時間における実際の受信ベクトルP
r,irxは、以下の式で表される。
【0023】
式(1)において、残留周波数誤差はすべての受信機分枝において同一とする。尚、基準ベクトルP
t,iref(n)は、i番目のサブキャリアインデックスに対するn番目のシンボル時間におけるt番目の送信機分枝で選択されたサブキャリアの1つとみなしてもよい。
【0024】
図2に戻り、本発明の第1実施形態によれば、装置120は、残留周波数誤差を判定する前にサンプリング周波数不整合/オフセット(またはサンプリング位相オフセット)を除去する手段120Aを備える。装置120はまた、受信シンボルの選択サブキャリアに関して、チャネル推定ベクトルH^
t,r,i及び基準ベクトルP
t,irefに基づいて予測ベクトルP
r,iEXPを推定する手段120Bを備える。予測ベクトルは以下の式にしたがって推定する。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、サンプリング周波数オフセット(若しくはサンプリング位相オフセット)は式(2)で表す予測ベクトルP
r,iEXPから除去可能である。他の実施形態によれば、サンプリング周波数オフセットは受信ベクトルP
r,irxから除去可能である。本発明のさらに別の実施形態によれば、サンプリング周波数オフセットは基準ベクトルP
t,irefから除去可能である。本発明のさらに別の実施形態によれば、サンプリング周波数オフセットはチャネル推定ベクトルH^
t,r,iから除去可能である。サンプリング周波数位相不整合を除去する操作は、以下に示す相回転によって行われる。
【0028】
式中、iはサブキャリアインデックス、nは元のチャネル推定値が推定されたときから数えたシンボル数であり、aはf
corr(n)/F
cで与えられる。式中、f
corr(n)
は送受信信号間における周波数不整合の最新推定値であり、F
cは現在のチャネル中心周波数である。式(3)において、さらに、T
sはシンボル周期であり、T
uは信号窓周期である。
図2において、手段120Cはα
i(n)を生成するように構成される。尚、周波数不整合推定値は手段120Cへの入力としても用いられる。
図1では、これを入力f
estとして表す。尚、最初は(すなわち、n=1のとき)値f
corrはf
estである。尚、送受信機の中心周波数とシンボル周波数クロック周波数が同一の基準(水晶)発振器から導出される場合、サンプリング周波数不整合は送受信機間の総周波数推定値を用いて計算できる。これはWLANの規格がIEEE802.11及びIEEE802.16の場合に相当する。この場合、ppm単位でのサンプリング周波数不整合はa=f
corr(n)/F
cで表せる。
【0029】
本発明の第1実施形態によれば、サンプリング周波数オフセットの除去後、式(1)で表される受信ベクトルと式(2)で表される推定された予測ベクトルを用いて、n番目のOFDMシンボルに生じた相回転の量を示す複素数を規定するドット積を算出する。ドット積は以下の式(5)を用いて推定する。
【0031】
式中、*は複素共役演算子である。
図2において、手段120Dは式(4)で表されるドット積を算出するように構成される。
【0032】
本発明の第1実施形態によれば、残留周波数誤差推定値は式(4)で表されるドット積に基づいて決まる。まず、手段120Eがドット積D(n)の角度θ(n)を推定する。尚、ドット積は実際のチャネルと推定されたチャネルを含む項HH^
*により、サブキャリア位相推定値を重みづけする。その後、手段120Fにおいて、前回の累積位相角度θ
acc(n−1)をドット積の角度θ(n)から減算することで角度変化Δθ
err(n)を計算する。角度変化に基づいて残留周波数推定値を決定する。角度変化Δθerr(n)は以下の式(5)によって計算する。
【0034】
本実施形態によれば、r番目の受信機分枝の残留周波数誤差推定値はΔθ
err,r(n)=2πnf^
residual,rで与えられる。
【0035】
図1の受信系がN
rx(N
rx≧2)個の受信機分枝を有する場合、残留周波数推定値は個々の残留周波数推定値を平均することで改善できる。すなわち、
【0037】
本発明の一実施形態によれば、残留周波数誤差f
residualは角度変化Δθ
err(n)を周波数に変換することで推定できる。したがって、装置120から出力される角度変化は
図1に示す位相角度/周波数変換器130の入力としてもよい。
【0038】
図3A及び3Bは、角度変化Δθ
err(n)及び周波数推定値f
estを入力とし、総周波数推定値f
corr=f
est+f
residualを出力する位相角度/周波数変換器130の2つの例を示す。
図3Aの変換器は開ループ角度/周波数変換器を表し、f
corrは装置120内での次の反復で使用されるのみであるのに対し、
図3Bの変換器は閉ループ角度/周波数変換器であり、f
corrは装置120内での次の反復で使用されると同時に、デジタル周波数合成器9、アナログ周波数合成器6、或いは水晶発振器制御部11による周波数オフセットの調整に使用される。
【0039】
図2に戻って、装置120にはさらに、受信信号の特性を示す別の入力が与えられる。本発明の一実施形態によれば、受信信号特性CHAR(Rx)は受信信号の信号対雑音比(SNR)である。本発明の他の実施形態によれば、CHAR(Rx)はチャネルの遅延拡散、例えばコンステレーションの大きさなどのサブキャリアコンステレーション、或いはその他の受信信号特性であってよい。
【0040】
本発明の第1実施形態によれば、装置120はまた、CHAR(Rx)によって適用可能なループフィルタ120Gを有するフィードバックシステムを具備する。ループフィルタ120Gを含むこのフィードバックシステムは、残留周波数不整合の推定値を改善するのに用いてもよい。残留周波数不整合の推定値はさらに総周波数推定値、及び/又は初期周波数推定値、及び/又は
図1に示す受信機の水晶発振器8、及び/又はデジタル周波数合成器9、及び/又はアナログ周波数合成器6、或いは他の手段の調整に用いられる。
【0041】
本発明の第1実施形態によれば、適応型ループフィルタ120GはSNR等の受信信号特性CHAR(Rx)のほかに、手段120Fからの角度変化Δθ
err(n)をも入力として有する。ループフィルタ120Gは角度変化にフィルタ処理を施して出力する。尚、SNRが低い場合、残留周波数誤差推定値からノイズを除去する効果を持つループフィルタ120Gは、1より小さいループゲインを有する減衰システムを構成する。一方、SNRが高い場合、ループゲインを1に設定できるため、大幅に減衰したシステムが構成される。本発明の適応型ループフィルタ120Gとしては、FIR(有限インパルス応答)型、IIR(無限インパルス応答)型、或いはその他好適な適応型ループフィルタ型のローパスフィルタを使用できる。
【0042】
図2に戻り、手段120Hは、手段120Cが生成した相回転量α
i(n)を受信し、θ
corr,i(n)を出力するように構成される。本発明によれば、θ
corr,i(n)は現在のシンボルnの期間における全てのデータサブキャリアに適用される位相補正値を示す。θ
corr,i(n)はフィルタ処理を経た角度変化Δθ
err(n)とサンプリング周波数不整合が存在することで生じた位相との和として算出される。この操作はそれぞれのサブキャリアに対して行われる。手段120Hはさらに、時間制御信号(TCS)を生成し、
図1に示す受信機のアドバンス/リタードブロック13に送出するように構成される。
【0043】
本発明の第1実施形態において説明したように、装置120によって推定された残留周波数誤差を周波数推定値f
estに加算して総周波数補正値f
corrを生成する。この補正値は、
図1に示した受信機のような受信機内蔵型の装置120に適用できる。補正値は以下のようにして受信機に適用される。
【0044】
−送信機周波数に合わせて受信機周波数を上げるかまたは下げることで水晶発振器8を調整し、これにより補正値をソースに適用する。
【0045】
−送信機周波数に合わせて受信機周波数が上がるかまたは下がるように、デジタル周波数合成器9及び/又はアナログ周波数合成器6を調整する。
【0047】
図4は、上述した本発明の第1実施形態による残留周波数誤差を推定する方法の主要なステップを示すフローチャートである。
【0048】
ステップ(1)で、チャネル推定ベクトルと受信ベクトルに基づいて予測ベクトルを推定する。
【0049】
ステップ(2)で、相回転によりサンプリング周波数不整合を除去する。
【0050】
ステップ(3)で、推定された予測ベクトルと受信ベクトルのドット積を推定/計算する。
【0051】
ステップ(4)で、得られた積の角度を推定する。
【0052】
ステップ(5)で、前回のシンボルの累積位相からの角度変化を計算する。
【0053】
ステップ(5A)で、受信信号のSNRの関数として表されるフィルタ係数を少なくともひとつ含む適応型フィルタによって角度変化をフィルタリングする。
【0054】
ステップ(6)で、前回のシンボルからの角度変化に基づいて残留周波数誤差の推定値を決定する。
【0055】
図5は、本発明の第2実施形態による残留周波数誤差を推定する装置120を示す。本発明の第2実施形態の装置120は、
図1に示すチャネル推定器(CH.EST.)10によって決定されたチャネル推定値H^
t,r,i(n)と
図1に示すマルチプレクサ14によって決定された基準サブキャリアC
t,iref(n)とに基づいて予測サブキャリアC
r,iEXP(n)を生成/推定する手段140Aを備える。予測サブキャリアC
r,iEXP(n)は以下の式にしたがって推定できる。
【0057】
前述の実施形態と同様に、基準サブキャリアは、例えば受信機にとって既知の送信パイロットサブキャリアであってもよく、受信信号の受信サブキャリア分析或いはその他の受信サブキャリア固有の特性に基づいてもよい。
【0058】
図5に示すように、装置120にはさらに実際に受信したサブキャリアC
r,irx(n)が入力される。受信サブキャリアC
r,irx(n)は基準サブキャリアC
t,iref(n)と、残留周波数不整合f
residualと、実際のチャネルH
t,r,i(n)と、i番目のサブキャリアに対するn番目のシンボル時間でのr番目の受信機分枝における加法性白色ガウス雑音(AWGN)として定義されるノイズW
r,i(n)との関数として表される。受信サブキャリアは以下の式で表される。
【0060】
式(8)において、残留周波数誤差fresidualはすべての受信機分枝において同一とする。
【0061】
本発明の第2実施形態によれば、装置120はさらに、手段140Aによって生成された推定予測サブキャリアC
r,iEXP(n)を入力し、式(8)で表される受信サブキャリアを複素平面上で乗算する手段140Bを備える。手段140Bが出力する積C
i(n)は以下の式で表される。
【0063】
尚、式(9)において、r個の受信機分枝に対する加算も行われる。値C
i(n)はサブキャリア1つあたりの複素数を規定し、各々がn番目のOFDMシンボル内の特定のサブキャリアiに生じた相回転の量を含む。
【0064】
式(7)と式(8)とを式(9)に代入すると、C
i(n)は以下のようになる。
【0066】
式中、ノイズ項N
i(n)はW
r,i(n)の関数として以下のように表される。
【0068】
本発明の第2実施形態によれば、残留周波数誤差の推定値はC
i(n)に基づいて判定される。残留周波数誤差を推定するために、装置120は、C
i(n)を入力し、各サブキャリアのC
i(n)の角度の推定値及びC
i(n)の大きさの推定値の両方を出力する手段140Cを備える。手段140Cは、サブキャリアiに関するC
i(n)の大きさを以下の式によって推定する。
【0070】
手段140Cはまた、サブキャリアiに関するC
i(n)の角度を以下の式によって推定する。
【0072】
尚、C
i(n)の角度と大きさを推定する手段140Cは、0度から360度までのどんな角度も取りうる精度を持つ。したがって、本発明は小さな角度に限られない。本発明によれば、手段140Cは例えば、CORDIC(Coordinate Rotation Digital Computer)アルゴリズムまたはハードウェア乗算器、テーブル参照法及びべき級数展開法、或いはその他C
i(n)の角度と大きさを決定するのに適したいかなる方法でも実現可能である。
【0073】
本発明の第2実施形態によれば、各サブキャリアについて、累積位相オフセットとサンプリング周波数不整合の存在によって生じた位相オフセットとを手段140Cの出力、すなわち推定された角度Δθ
i(n)から除去することで、各サブキャリアに関する後続のシンボル間の角度変化Δθ
err,i(n)を生成する。装置120の手段140Eはサンプリング周波数不整合の存在によって生じた位相オフセットを除去するように構成される。相回転の量は手段140Dによって生成される。前述の式(3)で表される相回転量をここに再度記しておく。
【0075】
式中、iはサブキャリアインデックス、nは元のチャネル推定値が推定されたときから数えたシンボル数であり、aはf
corr(n)/F
cで与えられる。式中、f
corr(n)は送受信信号間における周波数不整合の最新推定値であり、F
cは現在のチャネル中心周波数である。式(13)において、さらに、T
sはシンボル周期であり、T
uは信号窓周期である。
図5において、手段140Eはサンプリング周波数不整合の存在によって生じた位相オフセットを除去するように構成される。
【0076】
尚、累積位相オフセット及び送受信機間のサンプリング周波数オフセットは推定角度θ
i(n)から減算することで除去できる。または、予測サブキャリアを回転させるか、実際の受信サブキャリアを回転させるか、サブキャリアチャネル推定値を回転させるか、或いは基準サブキャリアを回転させることでいずれのオフセットも除去できる。
【0077】
本発明の第2実施形態によれば、
図5の装置120はさらに、各サブキャリアの後続のシンボル間の角度変化の加重平均値Δθ
err(n)を以下の式にしたがって算出する手
段140Fを備える。
【0079】
式中、各サブキャリア及び全ての受信機分枝に関するC
i(n)の大きさU
i(n)は前述の式(11)で表される。前回のシンボルからの加重平均角度の変化を計算し、前述の本発明の第1の実施形態と同様に、残留周波数誤差の推定値は以下の式にしたがって得られる。
【0081】
さらに、
図3A及び3Bに示す前述した位相角度/周波数変換器のいずれか1つを用いてΔθ
err(n)を周波数に変換することで残留周波数誤差を推定できる。次に、総周波数推定値をf
corr=f
est+f
residualにしたがって判定するために、
図1の時間周波数同期装置12によって生成された周波数推定値f
estに推定した残留周波数誤差f
residualを加算する。前述の本発明の第1の実施形態と同様に、残留周波数誤差はさらに初期周波数推定値、及び/又は受信機の水晶発振器8、及び/又はデジタル周波数合成器9、及び/又はアナログ周波数合成器6、或いは他の手段の調整に用いてもよい。
【0082】
図5に戻って、装置120にはさらに、受信信号の特性を示す別の入力が与えられる。本発明の一実施形態によれば、受信信号特性CHAR(Rx)は信号対雑音比(SNR)である。本発明の他の実施形態によれば、CHAR(Rx)はチャネルの遅延拡散、例えばコンステレーションの大きさなどのサブキャリアコンステレーション、或いはその他の受信信号特性であってもよい。前述の本発明の第1実施形態と同様に、装置120はまた、CHAR(Rx)によって適用されるループフィルタ140Gを有するフィードバックシステムを具備する。ループフィルタ140Gを含むこのフィードバックシステムは、残留周波数不整合の推定値を改善するのに用いてもよい。残留周波数不整合の推定値はさらに総周波数推定値、及び/又は初期周波数推定値、及び/又は受信機の水晶発振器8、及び/又はデジタル周波数合成器9、及び/又はアナログ周波数合成器6、或いは他の手段の調整に用いられる。こうして、本発明の第2実施形態において説明したように、装置120によって推定された残留周波数誤差を周波数推定値に加算して総周波数補正値f
corrを生成する。この補正値は、
図1に示した受信機のような受信機内蔵型の装置120に適用できる。ここでもまた、補正値は以下のようにして受信機に適用される。
【0083】
−送信機周波数に合わせて受信機周波数を上げるかまたは下げることで水晶発振器8を調整し、これにより補正値をソースに適用する。
【0084】
−送信機周波数に合わせて受信機周波数が上がるかまたは下がるように、デジタル周波数合成器9及び/又はアナログ周波数合成器6を調整する。
【0086】
本発明の第2実施形態によれば、適応型ループフィルタ140GはSNR等の受信信号特性と連続したシンボル間の加重平均角度の変化、すなわちΔθ
err(n)とを入力し、角度変化にフィルタ処理を施して出力する。SNRが低い場合、角度推定値の変化からノイズを除去する効果を持つループフィルタ140Gは、1より小さいループゲインを有する減衰システムを構成する。一方、SNRが高い場合、ループゲインを1に設定できるため、大幅に減衰したシステムが構成される。
【0087】
本発明の第2実施形態によれば、フィルタ処理を経た角度変化は累積されて、各サブキャリアについてサンプリング周波数不整合の存在によって生じた位相に加算される。これにより手段140Hによって生成された位相補正値θ
corr,i(n)を得て、現在のシンボルの期間における全てのデータサブキャリアに適用する。手段140Hはさらに、時間制御信号(TCS)を生成し、
図1に示す受信機のアドバンス/リタードブロック13に送出するように構成される。本発明の一実施形態によれば、フィルタ処理を経て累積した角度変化は加重平均角度から減算できる。別の実施形態によれば、フィルタ処理を経て累積した角度変化は推定した予測サブキャリアと受信サブキャリアの間の角度から減算できる。さらに別の実施形態によれば、フィルタ処理を経て累積した角度変化は、受信サブキャリア、推定した予測ベクトル、基準サブキャリア、或いはチャネル推定ベクトルから相回転によって除去できる。
【0088】
図6は、上述した本発明の第2実施形態による残留周波数誤差を推定する方法の主要なステップを示すフローチャートである。
【0089】
ステップ(1)で、基準サブキャリアとサブキャリアのチャネル推定値に基づいて予測サブキャリアを推定する。
【0090】
ステップ(2)で、各サブキャリアについて、複素平面上で推定された予測サブキャリアに受信サブキャリアを乗算する。
【0091】
ステップ(3)で、ステップ2で行われた乗算の角度と大きさを推定する。
【0092】
ステップ(4)で、サンプリング周波数不整合によって生じた位相オフセットを除去する。
【0093】
ステップ(5)で、推定された角度の加重平均値を算出する。
【0094】
ステップ(6)で、前回のシンボルからの加重平均角度の変化を計算する。
【0095】
ステップ(6A)で、受信信号の特性、例えば受信信号のSNRの関数として表されるフィルタ係数を少なくとも1つ含む適応型フィルタによって加重平均角度変化をフィルタリングする。
【0096】
ステップ(7)で、加重平均角度変化に基づいて残留周波数誤差を推定する。
【0097】
図7は、従来技術の解決方法にしたがった、固定ループゲイン1(四角)とチャネル推定値の二乗に基づいた
【0099】
の加重関数と、を用いた装置によって得られたパケット誤り率(PER)性能と、固定ループゲイン1(三角)或いは0.5(丸)と実際のチャネル及び推定されたチャネルに基づいた
【0101】
の加重関数と、を用いた本発明の第2実施形態による装置120によって得られたPER性能との比較を示す図である。SNRの全範囲についてシステム性能を観測するために、3種類の符号化率R1/2、R3/4、R5/6による3種類の異なる変調方法QPSK、16QAM、及び64QAMを用いた。
図7から分かるとおり、SNRが低く、ループゲインが0.5の場合、従来例(四角)のPER=3%に対して、本発明の第2実施形態による装置(丸)は1dBの改善を示す。さらに
図7から分かるとおり、SNRが大きい(例えば、SNR>20dB)場合、固定ループゲイン0.5の本発明の第2実施形態による装置(丸)は、従来例より低い性能を示す。しかしながら、本発明の実施形態では適応型ループフィルタを用いることから、CHAR(Rx)で示す受信信号特性であるSNRが例えば20dBより大きい場合、ループゲインを1まで増加させることができる。
【0102】
さらに、上述の本発明の実施形態による残留周波数誤差推定では、閾値に基づくサブキャリア情報の廃棄を行わず、すなわち閾値効果が存在せず、代わりに実際のチャネル及び推定したチャネルに比例した値HH^
*でサブキャリアを重みづけする。加えて、本発明は、ノンフラットフェージングチャネル及びフラットフェージングチャネル双方におけるサンプリング周波数不整合を考慮に入れる。本発明のさらに別の利点として、小さな位相或いは角度に限られない。すなわち、従来技術の解決方法のように小さな角度のみならず、0度から360度までのどんな角度も取りうる角度位相推定精度が得られるので、精度を改善することができる。
【0103】
当業者に理解されるとおり、本発明の異なる実施形態は多くの方法によって実現されうる。装置120は、例えばデジタル回路を用いたハードウェアにおいて、或いは信号処理回路におけるソフトウェアとして実現できる。また、装置120は
図3A及び3Bに示す位相角度/周波数変換器を含んでもよい。さらに、装置120は、任意の数の送受信アンテナを有することが可能な
図1に示す受信機等のMIMO OFDM受信機において実現できる。また、SISO OFDM受信機またはWLAN(無線ローカルエリアネットワーク)システム、IEEE802.11(アメリカ電気電子通信学会)システム、WiFi(Wireless Fidelity)システム、WiMAX(Worldwide Interoperability For Microwave Access)システム、有線ADSL、DVB、HDTV、デジタル音声放送(DAB)、統合デジタル放送サービス、ATM LAN用のマジックWAND、無線PAN(MB−OFDM)、3GPP&3GPP2、ロングタームエボリューション、ターボ3G、光OFDM,その他いかなるシステムでもOFDMに基づくものであれば装置120を実現できる。
【0104】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。