(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材、(B)熱硬化性成分、(C)アルカリ可溶性樹脂、および、(D)光重合開始剤を含有し、前記(A)有機色材が染料であることを特徴とする硬化性樹脂組成物(但し、フタロシアニンブラックおよびアニリンブラックを含有しない)。
(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材、(C)アルカリ可溶性樹脂、(D)光重合開始剤、および、(E)感光性(メタ)アクリレート化合物を含有し、前記(A)有機色材が染料であることを特徴とする硬化性樹脂組成物(但し、フタロシアニンブラックおよびアニリンブラックを含有しない)。
前記(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材が、フェナジン骨格を有することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物。
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の硬化性樹脂組成物を、基材上に塗布、乾燥させて得られる乾燥塗膜、または、前記硬化性樹脂組成物を、キャリアフィルム上に塗布、乾燥させて得られるドライフィルムが基材にラミネートされてなる塗膜を、硬化させて得られることを特徴とする硬化物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材とともに、(B)熱硬化性成分、または、(E)感光性(メタ)アクリレート化合物を必須成分として含有する点に特徴を有する。
【0019】
(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材、および、(B)熱硬化性成分を必須成分として含有する本発明の第二の実施の態様に係る硬化性樹脂組成物によれば、高い遮光性および熱硬化性と、絶縁性とを得ることができる。また、(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材、および、(E)感光性(メタ)アクリレート化合物を必須成分として含有する本発明の第一の実施の態様に係る硬化性樹脂組成物によれば、高い遮光性および光硬化性と、絶縁性とを得ることができる。
【0020】
すなわち、本発明によれば、樹脂組成物中に、(A)可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のある有機色材(以下、「(A)有機色材」ともいう)を含有させたことで、高濃度に色材を添加しても良好な遮光性および感光性を、沈降等の分散性の問題を生ずることなく実現することが可能となった。本発明の組成物は、特に可視光領域において、OD値が、好ましくは3以上、より好ましくは3〜5、特に好ましくは5〜7である。本発明の硬化性樹脂組成物は、上記配合としたことにより、好適には黒色を呈するものである。
【0021】
[(A)有機色材]
本発明に用いる(A)有機色材としては、可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値のあるものであればよい。(A)有機色材としては、顔料や染料があるが、ここでは天然に存在するもの以外の化学的に合成されたものをいい、有機(合成)染料には、アントラキノン系合成染料、アゾ系合成染料、メチン系合成染料、キノリン系合成染料、ペリレン系合成染料、アジン系合成染料からなる群の公知慣用の有機(合成)染料があるが、特に単独で遮光性に優れているものとして具体的には例えば、フェナジン骨格を有する化合物からなるニグロシンがあげられる。特にCOLOR INDEXのC.I.No.Acid Black 2、Solvent Black 5、Solvent Black 7、Solvent Black 22、Solvent Black 27、Solvent Black 29、Solvent Black 34等があり、特に骨格にクロム、コバルト、ニッケル、銅、鉄などの金属が錯塩化されている金属錯塩染料が着色力や耐熱特性の面から好ましい。有機顔料としては、可視光領域380〜780nmにおいて、380〜500nmに最小吸収値があり、500〜780nmに最大吸収値がある公知慣用の有機顔料などを挙げることができ、中でも光硬化性、着色性および可視光領域の遮蔽性に優れているフタロシアニン系、ジオキサジン系、ペリレン系が好ましい。具体的に例えば、フタロシアニン系であればPigment Blue 15:3、15:4、15:6、ペリレン系であればLumogen Black FK4280、Lumogen Black FK4281、オキサジン系であればPigmentViolet 23、37が好ましく、これらのうちの1種を単独で、または、2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0022】
本発明者は鋭意研究した結果、次の点を見出した。すなわち、有機色材には、顔料や染料があるが、ここでは天然に存在するもの以外の化学的に合成されたものをいい、これらは天然に存在するものに比べて彩度と吸収波長および着色性、組成物としての相溶特性の選択肢が多様にあるため、高OD値の感光性組成物がバランス良くできることを見出した。
【0023】
また、特に、本発明に用いる(A)有機色材であれば、優れた着色力により、少ない添加量で高OD値を達成し、目的とする吸収特性を持ち合わせるため、優れた光硬化性を得られることを見出した。さらに、本発明で用いる(A)有機色材の中でも、特に有機染料は優れた光硬化性と着色性、および分散性のバランスが取れており、遮蔽用硬化性樹脂組成物に適していることを見出した。
【0024】
よって、(A)有機色材のうちでも、少ない添加量で高いOD値を得られる点で、有機染料が好ましい。その中でも、より高いOD値を得られる点で、アニリン・ニトロベンゼンを縮合したフェナジン骨格を有するニグロシン化合物がより好ましい。これは、アニリンもしくはアニリンの塩酸塩とニトロベンゼンに塩酸を加え、銅ないし鉄などの触媒下での脱水、脱アンモニア、酸化・還元縮合反応(Redox Condensation)で得られる黒色縮合混合物であり、縮合される条件により様々なフェナジン骨格を有する化合物からなる多成分体のことをいう。ニグロシンは、反応時間、仕込み原料および仕込比によって、種々の異なる化合物の混合物として生成するものであり、下記化学式(I)または(II)で表されるトリフェナジンオキサジン、下記化学式(III)〜(VI)で表されるフェナジンアジン等のアジン系化合物、およびこれらにアルキル置換基を導入した化合物の混合物と推測されている。
本発明における有機染料の原料となるニグロシンは、COLOR INDEXにC.I.例えば、Acid Black 2、C.I.Solvent Black 5、Solvent Black 7として記載されているような黒色アジン系縮合混合物を用いることができる。この中でも、以下に示す化学構造式を含むSolvent Black 5およびSolvent Black 7の金属錯塩染料がより好ましい。
(Solvent Black 5)
(Solvent Black 7)
【0025】
本発明に用いる(A)有機色材の配合量は、組成物(固形分)中で、0.05〜80質量%が好ましく、0.1〜70質量%がより好ましく、0.5〜50質量%が更に好ましい。(A)有機色材の配合量を上記範囲内とすることで、特に可視光領域において、所望の高いOD値を得ることができる。
【0026】
[(B)熱硬化性成分]
本発明に用いる(B)熱硬化性成分は、組成物に耐熱性を付与するために含有させるものであり、特に好適には、分子中に2個以上の環状エーテル基および環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基と略す)の少なくともいずれか一種を有する(B)熱硬化性成分を用いる。熱硬化性成分を用いると耐熱性だけでなく、下地との密着性が向上することが確認されている。ここで、本発明の第二の実施の態様においては、(B)熱硬化性成分が必須であるが、本発明の第一の実施の態様においても、(B)熱硬化性成分を配合することが好ましく、これにより、光硬化性と熱硬化性とを兼ね備えた硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
このような分子中に2個以上の環状(チオ)エーテル基を有する(B)熱硬化性成分は、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基若しくは環状チオエーテル基のいずれか一方または双方を2個以上有する化合物であり、例えば、分子内に少なくとも2つ以上のエポキシ基を有する化合物、すなわち多官能エポキシ化合物、分子内に少なくとも2つ以上のオキセタニル基を有する化合物、すなわち多官能オキセタン化合物、分子内に2個以上のチオエーテル基を有する化合物、すなわちエピスルフィド樹脂などが挙げられる。
【0028】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、三菱化学社製のエピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、DIC社製のエピクロン840、エピクロン850、エピクロン1050、エピクロン2055、東都化成社製のエポトートYD−011、YD−013、YD−127、YD−128、ダウケミカル社製のD.E.R.317、D.E.R.331、D.E.R.661、D.E.R.664、住友化学工業社製のスミ−エポキシESA−011、ESA−014、ELA−115、ELA−128、旭化成工業社製のA.E.R.330、A.E.R.331、A.E.R.661、A.E.R.664等(いずれも商品名)のビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のエピコートYL903、DIC社製のエピクロン152、エピクロン165、東都化成社製のエポトートYDB−400、YDB−500、ダウケミカル社製のD.E.R.542、住友化学工業社製のスミ−エポキシESB−400、ESB−700、旭化成工業社製のA.E.R.711、A.E.R.714等(いずれも商品名)のブロム化エポキシ樹脂;三菱化学社製のエピコート152、エピコート154、ダウケミカル社製のD.E.N.431、D.E.N.438、DIC社製のエピクロンN−730、エピクロンN−770、エピクロンN−865、東都化成社製のエポトートYDCN−701、YDCN−704、日本化薬社製のEPPN−201、EOCN−1025、EOCN−1020、EOCN−104S、RE−306、住友化学工業社製のスミ−エポキシESCN−195X、ESCN−220、旭化成工業社製のA.E.R.ECN−235、ECN−299等(いずれも商品名)のノボラック型エポキシ樹脂;DIC社製のエピクロン830、三菱化学社製のエピコート807、東都化成社製のエポトートYDF−170、YDF−175、YDF−2004等(いずれも商品名)のビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成社製のエポトートST−2004、ST−2007、ST−3000(商品名)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂;三菱化学社製のエピコート604、東都化成社製のエポトートYH−434、住友化学工業社製のスミ−エポキシELM−120等(いずれも商品名)のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ヒダントイン型エポキシ樹脂;ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021等(いずれも商品名)の脂環式エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−933、ダウケミカル社製のT.E.N.、EPPN−501、EPPN−502等(いずれも商品名)のトリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂;三菱化学社製のYL−6056、YX−4000、YL−6121(いずれも商品名)等のビキシレノール型若しくはビフェノール型エポキシ樹脂またはそれらの混合物;日本化薬社製EBPS−200、旭電化工業社製EPX−30、DIC社製のEXA−1514(商品名)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂;三菱化学社製のエピコート157S(商品名)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;三菱化学社製のエピコートYL−931等(いずれも商品名)のテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂;日産化学工業社製のTEPIC等(いずれも商品名)の複素環式エポキシ樹脂;日本油脂社製のブレンマーDGT等のジグリシジルフタレート樹脂;東都化成社製のZX−1063等のテトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂;新日鉄化学社製のESN−190、ESN−360、DIC社製のHP−4032、EXA−4750、EXA−4700等のナフタレン基含有エポキシ樹脂;DIC社製のHP−7200、HP−7200H等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂;日本油脂社製のCP−50S、CP−50M等のグリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂;さらに、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂;エポキシ変性のポリブタジエンゴム誘導体(例えば、ダイセル化学工業社製PB−3600等)、CTBN変性エポキシ樹脂(例えば、東都化成社製のYR−102、YR−450等)、日本化薬社製のNC3000等のビフェニル骨格含有エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも特にノボラック型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂またはそれらの混合物が好ましい。
【0029】
多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0030】
分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、同様の合成方法を用いて、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置き換えたエピスルフィド樹脂なども用いることができる。
【0031】
(B)熱硬化性成分の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、好適には0.6〜2.8当量、より好適には0.8〜2.5当量となる範囲とする。(B)熱硬化性成分の配合量を上記範囲とすることで、組成物に良好な耐熱性を付与することができる。
【0032】
[(C)アルカリ可溶性樹脂]
本発明の組成物には、樹脂成分として、(C)アルカリ可溶性樹脂を配合することができる。(C)アルカリ可溶樹脂としては、カルボキシル基含有樹脂またはフェノール樹脂を用いることが好ましい。下地との密着性を向上させるだけでなく、特に、カルボキシル基含有樹脂を用いると、現像性の面からより好ましい。
【0033】
カルボキシル基含有樹脂としては、分子中にカルボキシル基を有し、さらにエチレン性不飽和二重結合を有しない(非感光性の)、またはこれを有する(感光性の)、従来公知の各種カルボキシル基含有樹脂を使用することができる。
【0034】
本発明では、特に、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有しない非感光性カルボキシル基含有樹脂が、柔軟性の向上、硬化収縮の低減および密着性の向上の面から好ましい。
【0035】
非感光性カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。
【0036】
(1)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を含有する、ジアルコール化合物、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0037】
(2)ジイソシアネートと、カルボキシル基含有ジアルコール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0038】
(3)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0039】
(4)2官能エポキシ樹脂または2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0040】
(5)エポキシ樹脂またはオキセタン樹脂を開環させ、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0041】
(6)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0042】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を意味する。
【0043】
非感光性カルボキシル基含有樹脂としては、このうち、塩素を含有していないことより、上記(1)、(2)、(6)を用いることが好ましい。その中でも、芳香環を有し、サーマルサイクルに優れることから、硬化収縮と併せ、全ての特性においてバランスの良い上記(6)を用いることが好ましい。
【0044】
また、感光性カルボキシル基含有樹脂の具体例としては、以下のような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)を挙げることができる。なお、カルボキシル基含有樹脂におけるエチレン性不飽和二重結合は、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体由来であることが好ましい。
【0045】
(7)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基を含有する、ジアルコール化合物、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0046】
(8)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物と、カルボキシル基含有ジアルコール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0047】
(9)上述の(7)または(8)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0048】
(10)上述の(8)または(9)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。
【0049】
(11)2官能またはそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0050】
(12)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0051】
(13)2官能オキセタン樹脂にアジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル感光性樹脂。
【0052】
(14)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物、すなわちポリフェノール化合物を、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドと反応させて得られるポリアルコール樹脂等の反応生成物に、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に、更に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0053】
(15)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0054】
(16)上述の(7)〜(15)の樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0055】
これら感光性カルボキシル基含有樹脂は、(7)〜(16)として述べた以外のものも使用することができ、1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。特にカルボキシル基含有樹脂の中で芳香環を有している樹脂が、解像性に優れるので好ましい。
【0056】
中でも、カルボキシル基含有樹脂(14)、(15)のような、フェノール化合物を出発原料として合成されるカルボキシル基含有樹脂は、塩素を含有していないことから、絶縁性に優れるため、好適に用いることができる。
【0057】
上述のカルボキシル基含有樹脂は、感光性、非感光性問わず、以下のことが言える。すなわち、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、希アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0058】
また、カルボキシル基含有樹脂の酸価は、40〜200mgKOH/gの範囲が適当であり、より好ましくは45〜120mgKOH/gの範囲である。カルボキシル基含有樹脂の酸価が40mgKOH/g未満であるとアルカリ現像が困難となり、一方、200mgKOH/gを超えると現像液による露光部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、露光部と未露光部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となるので好ましくない。
【0059】
また、上述のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、一般的に2,000〜150,000、さらには5,000〜100,000の範囲にあるものが好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、露光後の塗膜の耐現像性が得られず、また、解像性が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがある。
【0060】
このようなカルボキシル基含有樹脂の配合量は、硬化性樹脂組成物中に、20〜60質量%、好ましくは30〜50質量%の範囲が適当である。カルボキシル基含有樹脂の配合量が20質量%より少ない場合、被膜強度が低下することがあるので好ましくない。一方、60質量%より多い場合、硬化性樹脂組成物の粘性が高くなったり、キャリアフィルムへの塗布性等が低下するので好ましくない。
【0061】
また、本発明においては、アルカリ可溶性樹脂として、感光性カルボキシル基含有樹脂、および、感光性を有しないカルボキシル基含有樹脂のいずれか一方を用いることも、これらを混合して用いることも可能であるが、感光性カルボキシル基含有樹脂と、感光性を有さないカルボキシル基含有樹脂は、混合して用いられることが好ましく、その含有割合は、(感光性カルボキシル基含有樹脂:感光性を有しないカルボキシル基含有樹脂)が、固形分質量基準で、(1:9)〜(9:1)、好ましくは(2:8)〜(8:2)、さらに好ましくは(5:5)〜(7:3)の範囲とされる。この範囲とすることで、特に、露光量の増大を回避しつつ、解像性および密着性の双方において優れた樹脂組成物の硬化物およびこれを有するプリント配線板を得ることが可能となる。
【0062】
感光性カルボキシル基含有樹脂、および、感光性を有しないカルボキシル基含有樹脂は、上述以外のものも使用することができ、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。カルボキシル基含有樹脂の中でも、特に、芳香環を有している樹脂は、屈折率が高く、解像性に優れるので好ましい。
【0063】
フェノール樹脂としては、フェノール性水酸基を有する化合物、例えば、ビフェニル骨格若しくはフェニレン骨格またはその両方の骨格を有する化合物、または、フェノール性水酸基含有化合物、例えば、フェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、メタクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等を用いて合成した、様々な骨格を有するフェノール樹脂を用いてもよい。
【0064】
例えば、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ポリ−p−ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物など公知慣用のフェノール樹脂を用いることができる。
【0065】
これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
かかるフェノール樹脂の市販品としては、HF1H60(明和化成社製)、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2131(大日本印刷社製)、ベスモールCZ−256−A(DIC社製)、シヨウノールBRG−555、シヨウノールBRG−556(昭和電工社製)、CGR−951(丸善石油社製)、または、ポリビニルフェノールのCST70、CST90、S−1P、S−2P(丸善石油社製)等を挙げることができる。これらのフェノール樹脂は、単独で、あるいは2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
【0067】
本発明においては、(C)アルカリ可溶性樹脂として、カルボキシル基含有樹脂およびフェノール樹脂のいずれか一方、または、これらの混合物を用いてもよい。
【0068】
なお、本発明の硬化性樹脂組成物において、(C)アルカリ可溶性樹脂としてエチレン性不飽和基を含まない材料を用いる場合には、分子中に1個以上、好ましくは2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、すなわち、光重合性モノマー・オリゴマー等の光重合性化合物を併用する必要がある。光重合性化合物は、活性エネルギー線照射により、光硬化し、かつ(C)アルカリ可溶性樹脂のアルカリ水溶液への溶解を助長するものである。この他、カルボキシル基含有樹脂を用いる場合にも、光硬化をさらに促進する目的で、光重合性化合物を併用することができる。
【0069】
いずれの場合にも、1種類または複数種類の光重合性化合物を用いることができる。
【0070】
[(D)光重合開始剤]
本発明の組成物には、(D)光重合開始剤を含有させることができる。(D)光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、アシルホスフィンオキシド系、オキシムエーテル系、オキシムエステル系、チタノセン系などの公知慣用の化合物が挙げられる。
【0071】
(D)光重合開始剤としては、以下に示す一般式(I)で表される構造部分を含むオキシムエステル系、一般式(II)で表される構造部分を含むα−アミノアセトフェノン系、一般式(III)で表される構造部分を含むアシルホスフィンオキサイド系、および一般式(IV)で表されるチタノセン系からなる群から選択される1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0072】
一般式(I)中、R
1は、水素原子、フェニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルカノイル基またはベンゾイル基を表わす。R
2は、フェニル基、アルキル基、シクロアルキル基、アルカノイル基またはベンゾイル基を表わす。
【0073】
R
1およびR
2により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
R
1およびR
2により表されるアルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、アルキル鎖中に1個以上の酸素原子を含んでいてもよい。また、1個以上の水酸基で置換されていてもよい。
R
1およびR
2により表されるシクロアルキル基としては、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましい。
R
1およびR
2により表されるアルカノイル基としては、炭素数2〜20のアルカノイル基が好ましい。
R
1およびR
2により表されるベンゾイル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、炭素数が1〜6のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0074】
一般式(II)中、R
3およびR
4は、各々独立に、炭素数1〜12のアルキル基またはアリールアルキル基を表わし、R
5およびR
6は、各々独立に、水素原子、または炭素数1〜6のアルキル基を表わし、あるいは2つが結合して環状アルキルエーテル基を形成していてもよい。
【0075】
一般式(III)中、R
7およびR
8は、各々独立に、炭素数1〜10のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、アリール基またはハロゲン原子、アルキル基若しくはアルコキシ基で置換されたアリール基、または炭素数1〜20のカルボニル基(但し、双方が炭素数1〜20のカルボニル基である場合を除く。)を表わす。
【0076】
一般式(IV)中、R
9およびR
10は、各々独立に、ハロゲン原子、アリール基、ハロゲン化アリール基、複素環含有ハロゲン化アリール基を表わす。
【0077】
一般式(I)で表される構造部分を含むオキシムエステル系光重合開始剤としては、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、下記式(I−1)で表される化合物、2−(アセチルオキシイミノメチル)チオキサンテン−9−オン、および下記一般式(I−2)で表わされる化合物などが挙げられる。
【0078】
一般式(I−2)中、R
11は、一般式(I)におけるR
1と同義であり、R
12およびR
14は、それぞれ独立に、一般式(I)におけるR
2と同義である。R
13は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、ベンゾイル基、炭素数2〜12のアルカノイル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基(アルコキシル基を構成するアルキル基の炭素数が2以上の場合、アルキル基は1個以上の水酸基で置換されていてもよく、アルキル鎖の中間に1個以上の酸素原子を有してもよい)またはフェノキシカルボン基を表す。
【0079】
これらの中でも、上記式(I−2)で表される化合物が好ましい。
【0080】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤は、例えば、ダイレクトイメージング用の露光に対して、本発明の組成物の感度を高くでき、解像性に優れるため好ましい。
【0081】
特に、露光が単独波長のh線(405nm)の場合、オキシムエステル系光重合開始剤は二量体であることが好ましい。
【0082】
二量体のオキシムエステル系光重合開始剤としては、下記一般式(I−3)で表される化合物であることがより好ましい。
【0083】
一般式(I−3)中、R
23は、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基を表す。
R
21、R
22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、ピリジル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基を表す。
Arは、単結合、または、炭素数1〜10のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ピリジレン基、ナフチレン基、アントリレン基、チエニレン基、フリレン基、2,5−ピロール−ジイル基、4,4’−スチルベン−ジイル基、4,2’−スチレン−ジイル基を表す。
nは0〜1の整数を表す。
【0084】
R
23により表されるアルキル基としては、炭素数1〜17のアルキル基が好ましい。
R
23により表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。
R
23により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜17)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1〜8)およびジアルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1〜8)等が挙げられる。
R
23により表されるナフチル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、R
23により表されるフェニル基が有し得る上記置換基と同様の基が挙げられる。
【0085】
R
21およびR
22により表されるアルキル基としては、炭素数1〜17のアルキル基が好ましい。
R
21およびR
22により表されるアルコキシ基としては、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましい。
R
21およびR
22により表されるフェニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜17)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8)、アミノ基、アルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1〜8)およびジアルキルアミノ基(好ましくはアルキル基の炭素数1〜8)等が挙げられる。
R
21およびR
22により表されるナフチル基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、R
21およびR
22により表されるフェニル基が有し得る上記置換基と同様の基が挙げられる。
【0086】
さらに、一般式(I−3)中、R
21、R
23がそれぞれ独立にメチル基またはエチル基であり、R
22がメチル基またはフェニル基であり、Arが単結合かフェニレン基、ナフチレン基またはチエニレン基であり、nが0であることが好ましい。一般式(I−3)で表される化合物のうちでも、下記構造式で示されるものがより好ましい。
【0087】
このようなオキシムエステル系光重合開始剤を使用する場合、露光に対する感度を向上させるため、一般式(II)で表される構造部分を含むα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤などと併用することが好ましい。
【0088】
一般式(II)で表される構造部分を含むα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤としては、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノンなどが挙げられる。
【0089】
一般式(III)で表される構造部分を含むアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0090】
一般式(IV)で表されるチタノセン系光重合開始剤としては、ビス(η
5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムが挙げられる。
【0091】
このような(D)光重合開始剤の配合率は、樹脂成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜100質量部、より好ましくは0.5〜80質量部の割合である。(E)光重合開始剤の配合率が、樹脂成分100質量部に対し0.01質量部未満であると、光硬化性が不足し、塗膜が剥離したり、耐薬品性等の塗膜特性が低下する場合があるので好ましくない。一方、(D)光重合開始剤の配合率が、樹脂成分100質量部に対し100質量部を超えると、(D)光重合開始剤の光吸収により、深部硬化性が低下する場合があるので好ましくない。
【0092】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、上述した化合物以外の光重合開始剤や、光開始助剤および増感剤を使用することができ、例えば、ベンゾイン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、キサントン化合物、および、3級アミン化合物等を挙げることができる。
【0093】
ベンゾイン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテ
ル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルである。アセトフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンである。アントラキノン化合物の具体例を挙げると、例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンである。チオキサントン化合物の具体例を挙げると、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンである。ケタール化合物の具体例を挙げると、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールである。ベンゾフェノン化合物の具体例を挙げると、例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−エチルジフェニルスルフィド、4−ベンゾイル−4’−プロピルジフェニルスルフィドである。
【0094】
3級アミン化合物の具体例を挙げると、例えば、エタノールアミン化合物、ジアルキル
アミノベンゼン構造を有する化合物、例えば、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン
(日本曹達社製ニッソキュアーMABP)、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン(
保土ヶ谷化学社製EAB)などのジアルキルアミノベンゾフェノン、7−(ジエチルアミ
ノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン(7−(ジエチルアミノ)−4−
メチルクマリン)等のジアルキルアミノ基含有クマリン化合物、4−ジメチルアミノ安息
香酸エチル(日本化薬社製カヤキュアーEPA)、2−ジメチルアミノ安息香酸エチル(
インターナショナルバイオ−シンセエティックス社製Quantacure DMB)、
4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル(インターナショナルバイオ−シン
セエティックス社製Quantacure BEA)、p−ジメチルアミノ安息香酸イソ
アミルエチルエステル(日本化薬社製カヤキュアーDMBI)、4−ジメチルアミノ安息
香酸2−エチルヘキシル(Van Dyk社製Esolol 507)、4,4’−ジエ
チルアミノベンゾフェノン(保土ヶ谷化学社製EAB)である。
【0095】
3級アミン化合物としては、ジアルキルアミノベンゼン構造を有する化合物が好ましく
、中でも、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、最大吸収波長が350〜410nm
にあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物が特に好ましい。ジアルキルアミノベンゾ
フェノン化合物としては、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが、毒性も低く好ま
しい。最大吸収波長が350〜410nmにあるジアルキルアミノ基含有クマリン化合物
は、最大吸収波長が紫外線領域にあるため、着色剤を用い、着色剤自体の色を反映した着色膜を提供することが可能となる。特に、7−(ジエチルアミノ)−4−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンが、波長400〜410nmのレーザー光に対して優れた増感効果を示すことから好ましい。
【0096】
[(E)感光性(メタ)アクリレート化合物]
本発明に用いる(E)感光性(メタ)アクリレート化合物は、活性エネルギー線照射により光硬化して、樹脂成分を、アルカリ水溶液に不溶化し、または、不溶化を助けるものである。このような化合物としては、慣用公知のポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カーボネート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどが使用でき、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシアルキルアクリレート類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコールのジアクリレート類;N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレートなどのアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの多価アルコールまたはこれらのエチレオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、若しくはε−カプロラクトン付加物などの多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、およびこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物などの多価アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの多価アクリレート類;上記に限らず、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール、水酸基末端ポリブタジエン、ポリエステルポリオールなどのポリオールを直接アクリレート化、もしくは、ジイソシアネートを介してウレタンアクリレート化したアクリレート類およびメラミンアクリレート、ナノシリカ変性アクリレートやイソシアネートアクリレート等の機能性アクリレート、および、上記アクリレートに対応する各メタクリレート類の少なくともいずれか一種などが挙げられる。
【0097】
また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂に、アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート樹脂や、さらにそのエポキシアクリレート樹脂の水酸基に、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのヒドロキシアクリレートとイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートのハーフウレタン化合物を反応させたエポキシウレタンアクリレート化合物などが、挙げられる。このようなエポキシアクリレート系樹脂は、指触乾燥性を低下させることなく、光硬化性を向上させることができる。
【0098】
(E)感光性(メタ)アクリレート化合物の配合量は、樹脂成分100質量部に対し、好適には1〜150質量部、より好適には5〜120質量部の割合である。(E)感光性(メタ)アクリレート化合物の配合量を上記範囲内とすることで、良好な光硬化性を得ることができ、好ましい。
【0099】
[他の色材]
本発明の組成物は、さらに色調調整等のため、(A)有機色材に加えて、(A)有機色材以外の公知慣用の色材を使用することができ、有機顔料、無機顔料、有機染料、天然染料、その他色素のいずれでもよい。具体的には例えば、黒色着色剤、赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、緑色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤、白色着色剤等が挙げられる。中でも、黒色着色剤、青色着色剤、青味のある緑色着色剤および紫色着色剤が、OD値を高くするために好ましい。
【0100】
(黒色着色剤)
黒色着色剤としては、C.I.Pigment black 6、7、9、18等のカーボンブラック系の顔料、C.I.Pigment black 8、10等の黒鉛系の顔料、C.I.Pigment black 11、12、27,Pigment Brown 35等の酸化鉄系の顔料;例えば、戸田工業社製 KN−370の酸化鉄、三菱マテリアル社製 13M−Tのチタンブラック、C.I.Pigment black 20等のアンスラキノン系の顔料、C.I.Pigment black 13、25、29等の酸化コバルト系の顔料、C.I.Pigment black 15、28等の酸化銅系の顔料、C.I.Pigment black 14、26等のマンガン系の顔料、C.I.Pigment black 23等の酸化アンチモン系の顔料、C.I.Pigment black 30等の酸化ニッケル系の顔料、C.I.Pigment black 31、32、BASFジャパン社製Lumogen Black FK4280のペリレン系の顔料((A)有機色材に該当するものを除く)、Pigment Black 1のアニリン系の顔料および硫化モリブデンや硫化ビスマスも好適な顔料として例示できる。これらの顔料は、単独で、または、適宜組み合わせて使用される。特に好ましいのは、チタンブラック、四三酸化コバルトであり、これらは絶縁性、光硬化性を維持しつつ、沈降や色相に影響が無い範囲で添加することで耐熱性を向上し得る。
【0101】
(赤色着色剤)
赤色着色剤としては、モノアゾ系、ジズアゾ系、アゾレーキ系、ベンズイミダゾロン系、ペリレン系、ジケトピロロピロール系、縮合アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系などがあり、具体的には、下記のようなカラーインデックス番号が付されているものを挙げることができる。
【0102】
モノアゾ系:Pigment Red 1,2,3,4,5,6,8,9,12,14,15,16,17,21,22,23,31,32,112,114,146,147,151,170,184,187,188,193,210,245,253,258,266,267,268,269;
ジスアゾ系:Pigment Red 37,38,41;
モノアゾレーキ系:Pigment Red 48:1,48:2,48:3,48:4,49:1,49:2,50:1,52:1,52:2,53:1,53:2,57:1,58:4,63:1,63:2,64:1,68;
ベンズイミダゾロン系:Pigment Red 171,175,176,185,208;
ぺリレン系:Solvent Red 135,179,Pigment Red 123,149,166,178,179,190,194,224;
ジケトピロロピロール系:Pigment Red 254,255,264,270,272;
縮合アゾ系:Pigment Red 144,166,214,220,221,242;
アントラキノン系:Pigment Red 168,177,216,Solvent Red 149,150,52,207;
キナクリドン系:Pigment Red 122,202,206,207,209
【0103】
(青色着色剤)
青色着色剤としては、フタロシアニン系((A)有機色材に該当するものを除く)、アントラキノン系、ジオキサジン系((A)有機色材に該当するものを除く)、コバルト系等の、顔料系はピグメント(Pigment)、染料系はソルベント(Solvent)に分類されている化合物などがあり、具体的には、下記のようなカラーインデックス番号が付されているものを挙げることができる。また、これら以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物((A)有機色材に該当するものを除く)も使用することができる。
【0104】
顔料系:Pigment Blue 15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,60;
染料系:Solvent Blue 35,45,63,67,68,70,83,87,94,97,104,122,136
【0105】
(黄色着色剤)
黄色着色剤としては、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アントラキノン系等があり、具体的には以下の着色剤が挙げられる。
【0106】
モノアゾ系:Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,9,10,12,61,62,62:1,65,73,74,75,97,100,101,104,105,111,116,167,168,169,182,183;
ジスアゾ系:Pigment Yellow 12,13,14,16,17,55,63,81,83,87,126,127,152,170,172,174,176,188,198;
縮合アゾ系:Pigment Yellow 93,94,95,128,155,166,180;
ベンズイミダゾロン系:Pigment Yellow 120,151,154,156,175,181;
イソインドリノン系:Pigment Yellow 109,110,139,179,185;
アントラキノン系:Solvent Yellow 163,Pigment Yellow 24,108,193,147,199,202;
【0107】
(緑色着色剤)
緑色着色剤としては、フタロシアニン系((A)有機色材に該当するものを除く)、アントラキノン系があり、具体的には、Pigment Green 7,36,Solvent Green 3,5,20,28等を使用することができる。上記以外にも金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物も使用することができる。
【0108】
(紫色着色剤)
紫色着色剤としては、具体的には、Pigment Violet 19,29,32,36,38,42;Solvent Violet 13,36;Pigment Black 1、Pigment Black 7、Pigment Brown 25等が挙げられる。
【0109】
(オレンジ色着色剤)
オレンジ色着色剤としては、具体的には、Pigment Orange 1,5,13,14,16,17,24,34,36,38,40,43,46,49,51,61,63,64,71,73等が挙げられる。
【0110】
(茶色着色剤)
茶色着色剤としては、具体的には、Pigment brown23,25等が挙げられる。
【0111】
(白色着色剤)
白色着色剤としては、Pigment white 4に示される酸化亜鉛、Pigment white 6に示される酸化チタン、Pigment white 7に示される硫化亜鉛が挙げられ、着色力と無毒性の点から特に酸化チタンが好ましく、例えば、富士チタン工業社製 TR−600、TR−700、TR−750、TR−840、石原産業社製 R−550、R−580、R−630、R−820、CR−50、CR−60、CR−90、チタン工業社製 KR−270、KR−310、KR−380等のルチル型酸化チタン、富士チタン工業社製 TA−100、TA−200、TA−300、TA−500、石原産業社製 A100、A220、チタン工業社製 KA−15、KA−20、KA−35、KA−90等のアナターゼ型酸化チタンが挙げられる。白色着色剤は少量、例えば、組成物中に0.1〜3質量%となるよう添加すれば隠蔽性を高める効果が期待できる場合がある。
【0112】
(A)有機色材以外の色材としては、上記のうちの少なくともいずれか1種以上を用いることができるが、黒色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤および紫色着色剤のうちの少なくともいずれか1種を含むことが好ましく、これにより、高いOD値を成し得ながら微妙な色相感を調整するメリットが得られる。また、中でも、500〜900nm、特に500〜800nmに最大吸収波長を有し、380〜500nmの吸収がそれより低いものを含むことがOD値や光硬化性に影響がないため好ましい。上記のうち、(A)有機色材以外の色材として、具体的に例えば、チタンブラック、四三酸化コバルト、または、黒色を呈する合成無機顔料のものを含むことが好ましく、これにより、OD値や光硬化性を維持しつつ耐熱性を向上させることができる。
【0113】
(A)有機色材以外の色材の配合量は、本発明に用いる(A)有機色材との比率で、(A):(A)以外の色材が99:1〜10:90の範囲が好ましく、99:1〜30:70の範囲がより好ましく、99:1〜50:50の範囲がさらに好ましく、99:1〜51:49の範囲が特に好ましい。(A)有機色材以外の色材の配合量を上記範囲内とすることで、特にOD値と光硬化性および耐光性において、バランスの良い硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0114】
[近赤外線吸収剤]
本発明の組成物には、さらに色素、特に500〜1000nmに吸収極大を有する色素、すなわち、近赤外線吸収剤を使用することができる。より高いOD値、遮蔽性を要求されるタッチパネル部材において有用である。近赤外線吸収剤としては、好適には、最大吸収波長が800〜1000nmであるものを用いる。色素としては、金属錯体色素および縮合多環系色素を用いることができ、具体的には例えば、フタロシアニン系色素、ポリフィリン系色素、シアニン系色素、クアテリレン系色素、スクアリリウム系色素、ナフタロシアニン系色素、ニッケル錯体色素、銅イオン系色素、複素環系化合物等が挙げられる。この中でも、複素環系化合物、クアテリン系色素が好ましい。製品としては、SDO−C8、SDO−C33(以上、有本化学工業社製)、Lumogen IR 765、Lumogen IR 788(以上、BASFジャパン社製)等が挙げられる。また、上記波長範囲内に吸収極大があり、かつ、光を効率的に吸収し増感作用を持つ金属錯体を持つ色素が好ましい。これらの1種または2種以上を使用することができる。上記色素を含む場合、その含有率としては、組成物(固形分)中で、0.001〜50質量%が好ましく、0.005〜30質量%がより好ましく、0.005〜20質量%が更に好ましい。近赤外線吸収剤を(A)有機色材と併用することで、特に可視光領域において、所望の高いOD値を得ることができる。また、要求される可視波長部分の吸収をより高くすることができる。
【0115】
[熱硬化触媒]
本発明の硬化性樹脂組成物においては、さらに、熱硬化触媒を含有することが好ましい。熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを挙げることができる。また、市販されているものとしては、例えば、四国化成工業社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。さらに、これらには限られず、エポキシ樹脂やオキセタン化合物の熱硬化触媒、若しくはエポキシ基および/またはオキセタニル基とカルボキシル基の反応を促進するものであれば使用することができ、これらは単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS−トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくは、これら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0116】
熱硬化触媒の配合量は、通常用いられる割合で十分であり、例えば、樹脂成分、または、(B)熱硬化性成分100質量部に対し、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜15.0質量部である。
【0117】
[その他の配合成分]
本発明の組成物には、さらに、硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数などの特性を向上させる目的で、無機充填材を配合することができる。このような無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉などの公知慣用の無機充填剤が使用できる。
【0118】
本発明の組成物には、さらに、必要に応じて、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの公知慣用の重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤およびレベリング剤の少なくとも何れか1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、酸化防止剤、光重合増感剤、光安定剤、分散剤、硬化促進剤、難燃剤、難燃助剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0119】
本発明の組成物は、組成物の調製や粘度調整のために用いられる有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などを使用することができる。これらの有機溶剤は、単独で、または、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0120】
上記配合成分よりなる本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物としても可視光領域380〜780nmにおいて、500〜780nmに最大吸収値があり、380〜500nmに最小吸収値があることが、高OD値を得られる感光性組成物という点より好ましく、また、黒色を呈していることが好ましい。黒色度を示す目安である測色計によるその硬化物のL*値がSCI方式で30以下であることが好ましい。また、a*値が−5〜5、b*値が−5〜5が好ましい。より好ましくは、a*値が−2〜2、b*値が−2〜2である。
【0121】
本発明の硬化性樹脂組成物は、高OD値を有するとともに高い絶縁性を有するものであるので、絶縁膜形成用の材料として有用である。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、遮光用部材としても有用である。さらに、本発明の硬化性樹脂組成物は、高OD値を有するとともに感光性にも優れるものとすることができるので、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで、高品質のディスプレイ用部材を得ることができる。本発明の硬化性樹脂組成物は、その他、印刷インク、インクジェットインク、フォトマスク作製材料、印刷用プルーフ作製材料、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、プラズマディスプレイパネル(PDP)の隔壁、誘電体パターン、電極(導体回路)パターン、電子部品の配線パターン、導電ペースト、導電フィルム、ブラックマトリックス等の遮蔽画像等の作製に用いられ、特に本発明の硬化性樹脂組成物は、カラー液晶表示装置等に用いるカラーフィルターの表示特性向上のために、着色パターンの間隔部、周辺部分、及びTFTの外光側等に遮光画像(ブラックマトリックスを含む。)を設けるためや、タッチパネル用遮光膜に好適に用いることができる。特に好ましくは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、無機ELを備えたEL表示装置、CRT表示装置、タッチパネルを具備した表示装置の周辺部に設けられた黒色の縁(ベゼル形成)や赤、青、緑の着色画素間の格子状やストライプ状の黒色の部分、更に好ましくはTFT遮光のためのドット状や線状の黒色パターン等のブラックマトリックスとして好適に用いられる。
【0122】
本発明の組成物は、キャリアフィルム(支持体)上に塗布、乾燥させて得られるドライフィルムの形態とすることができる。ドライフィルム化に際しては、本発明の組成物を上記有機溶剤により希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等でキャリアフィルム上に均一な厚さに塗布し、通常、50〜130℃の温度で1〜30分間乾燥して、乾燥塗膜とすることができる。塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で0.1〜100μm、好適には0.5〜50μmの範囲で適宜選択される。
【0123】
キャリアフィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等のプラスチックフィルムを用いることが好ましい。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、0.1〜150μmの範囲で適宜選択される。
【0124】
この場合、キャリアフィルム上に塗膜を成膜した後、塗膜の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、塗膜の表面にさらに、剥離可能なカバーフィルムを積層することが好ましい。剥離可能なカバーフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができ、カバーフィルムを剥離する際に、塗膜とカバーフィルムとの接着力が、塗膜とキャリアフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0125】
また、本発明の組成物を上記有機溶剤を用いて塗布方法に適した粘度に調整した後、基材上に、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法、ダイコーター法等の方法により塗布して、約50℃〜90℃の温度で組成物中に含まれる有機溶剤を揮発乾燥(仮乾燥)させることにより、タックフリーの乾燥塗膜を形成することができる。また、本発明の組成物をキャリアフィルム上に塗布し、乾燥させてフィルムとして巻き取ったドライフィルムの場合、これを、ラミネーター等により組成物の塗膜が基材と接触するように基材上に貼り合わせた後、キャリアフィルムを剥がすことにより、基材上に塗膜の層を形成することができる。
【0126】
これらの塗膜を、例えば、活性エネルギー線照射により光硬化させるか、または、100℃〜250℃の温度に加熱して熱硬化させることにより、硬化物を得ることができる。
【0127】
上記基材としては、あらかじめ回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル・シアネートエステル樹脂等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので全てのグレード(FR−4等)の銅張積層板、その他、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0128】
本発明の組成物を塗布した後に行う揮発乾燥は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブンなど、蒸気による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、および、ノズルより支持体に吹き付ける方法を用いて行うことができる。
【0129】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350〜450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接活性エネルギー線を照射し画像を描くダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機の光源としては、最大波長が350〜410nmの範囲にある光を用いているものであればよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20〜1000mJ/cm
2、好ましくは20〜800mJ/cm
2の範囲内とすることができる。
【0130】
また、現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等によることができ、現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類などのアルカリ水溶液が使用できる。
【実施例】
【0131】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記の表1,2中に示す配合に従い、各成分を配合、攪拌して、3本ロールにて分散させて、それぞれ組成物を調製した。なお、表1,2中の配合量は、質量部を示す。
【0132】
[合成例1]
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート700gにオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製、エピクロン(EPICLON) N−695、軟化点95℃、エポキシ当量214、平均官能基数7.6)1070g(グリシジル基数(芳香環総数):5.0モル)、アクリル酸360g(5.0モル)、およびハイドロキノン1.5gを仕込み、100℃に加熱攪拌し、均一溶解した。
【0133】
次いで、トリフェニルホスフィン4.3gを仕込み、110℃に加熱して2時間反応後、さらにトリフェニルホスフィン1.6gを追加し、120℃に昇温してさらに12時間反応を行った。得られた反応液に、芳香族系炭化水素(ソルベッソ150)562g、テトラヒドロ無水フタル酸684g(4.5モル)を仕込み、110℃で4時間反応を行った。さらに、得られた反応液にグリシジルメタクリレート142.0g(1.0モル)を仕込み、115℃で4時間反応を行い、感光性のカルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このようにして得られた樹脂溶液の固形分は65%、固形分の酸価は87mgKOH/gであった。
【0134】
【表1】
*1)合成例1
*2)アクリルオリゴマー(三菱マテリアル社製、MRX−401)
*3)Laromer LR8863(BASFジャパン社製)
*4)HO(三菱レイヨン社製)
*5)N870(DIC社製、変性ノボラックエポキシ樹脂)
*6)1001(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールエポキシ樹脂)
*7)HF−1(明和化成社製、フェノール樹脂)
*8)828(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
*9)NC3000(日本化薬社製、ビフェニル骨格含有エポキシ樹脂)
*10)S.B.7(オリエント化学工業社製 有機染料)
(最大吸収値595nm,最小吸収値408nm)
*11)P.V.37(BASFジャパン社製 有機顔料 CTROMOPHTAL VIOLET D5700)
*12)チタンブラック(三菱マテリアル電子化成社製 合成無機顔料 13M−T)
*13)BYK−LPD20950(ビックケミー・ジャパン社製)
*14)BYK−354(ビックケミー・ジャパン社製)
*15)ポリフローNo.99C(共栄社化学社製、アクリルポリマー系消泡剤)
*16)Lumogen S0795(BASFジャパン社製)
*17)カーボンブラック(無機顔料)
*18)化合物(A)
*19)化合物(B)(2−ベンジルー2−ジメチルアミノー1−(4−モルホリノフェニル)−ブタンー1−オン)
*20)SDO−C33(有本化学工業社製 複素環系化合物)
*21)AEROSIL 380(日本アエロジル社製、親水性フュームドシリカ)
【0135】
【表2】
【0136】
得られた各実施例および比較例の組成物について、以下に従い、評価を行った。その結果を、下記の表3に示す。
【0137】
(OD値(光学濃度))
参考例1および比較例2は、熱風循環式乾燥炉で160℃30分にて、参考例2および比較例3は80W3灯の高圧水銀灯UVコンベア炉で1000mJ/cm
2にて、実施例1〜5および比較例1,4〜6は熱風循環式乾燥炉において80℃で10分乾燥させて乾燥塗膜を形成し、次いで、オーク製作所社製メタルハライドランプを搭載した露光機により感度7段となる露光量で露光した。その後、1wt%Na
2CO
3水溶液によりスプレー圧0.1MPaで1分間現像し、次いで、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃で60分間熱硬化処理を施すことにより、ガラス上に厚み10μmの硬化塗膜を作製し、透過濃度計(X−Rite社 361T)にて測定を行った。この装置は、400〜900nmの全波長を検出し、OD値を算出する。OD値は、透過光量Tから、下記式に基づき算出した。OD値が高いほど、塗膜の遮光性が高く好ましい。組成物はOD3以上になるよう調整した。
OD値=−Log
10(T/100)
【0138】
(表面抵抗値)
各組成物をそれぞれ洗浄したガラス上に、スクリーン印刷で乾燥後10μmとなるように全面塗布し、参考例1および比較例2は熱風循環式乾燥炉で160℃30分にて、参考例2および比較例3は80W3灯の高圧水銀灯UVコンベア炉で1000mJ/cm
2にて、実施例1〜5および比較例1,4〜6は熱風循環式乾燥炉において80℃で10分乾燥させて、それぞれ乾燥塗膜を形成し、次いで、オーク製作所社製メタルハライドランプを搭載した露光機により感度7段となる露光量で露光した。その後、1wt%Na
2CO
3水溶液によりスプレー圧0.1MPaで1分間現像し、次いで、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃で60分間熱硬化処理を施すことにより、硬化塗膜を得た。各実施例および比較例の硬化性樹脂組成物の表面抵抗値を、JIS K6911に準拠して測定した。
【0139】
(外観(光沢度))
各実施例および各比較例の硬化性樹脂組成物を、それぞれ洗浄したガラス上にスクリーン印刷で全面塗布し、熱風循環式乾燥炉において80℃で10分乾燥させて乾燥塗膜を形成し、次いで、オーク製作所社製のメタルハライドランプを搭載した露光機により感度7段となる露光量で露光し、その後、1wt%Na
2CO
3水溶液によりスプレー圧0.1MPaで1分間現像し、当社試験用パターンを得た。次いで、熱風循環式乾燥炉を用いて150℃で60分間熱硬化処理を施すことにより、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜を光沢度計マイクロトリグロス(ビッグガードナー社製)を用いて、入射角60°における光沢度を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:光沢度70°以上、平滑。
△:光沢度40〜60°、若干失沢。
×:光沢度30°未満、マット。
【0140】
(経時安定性(分散安定性))
各実施例および比較例の硬化性樹脂組成物を、20℃で90日間保管して、沈降物の有無を評価した。沈降物が見られなかった分散性良好な場合を○、沈降物が見られないものの凝集が見られた分散性が一部不良な場合を△、容器の底に沈降物が見られた分散性不良な場合を×とした。
【0141】
(感度)
実施例1〜5および比較例1,4〜6の硬化性樹脂組成物を洗浄したガラス上にスクリーン印刷で乾燥後10μmとなるよう全面塗布し、熱風循環式乾燥炉において80℃で10分間乾燥させた。この塗膜上にコダック社製のステップタブレット(21段)を当て、オーク製作所社製メタルハライドランプを搭載した露光機にて300mJ/cm
2の露光量で露光し、1wt%Na
2CO
3水溶液によりスプレー圧0.1MPaで1分間現像した後における残存段数を調べた。残存段数が多いほど、感度が良好であり好ましい。
【0142】
(φ100μmパターニング)
実施例1〜5および比較例1,4〜6の硬化性樹脂組成物を、乾燥塗膜10μmとなるよう洗浄したガラス上に全面塗布し、熱風循環式乾燥炉において80℃で10分間乾燥させた。この塗膜上にφ100μmを開口させるネガフィルムを当て、オーク製作所社製のメタルハライドランプを搭載した露光機により感度7段となる露光量で露光し、1wt%Na
2CO
3水溶液によりスプレー圧0.1MPaで1分間現像した後における開口精度により、評価した。評価基準は以下の通りである。
○:シャープな解像度。
△:シャープではないがネガ寸法のφが得られる。
×:ハレーション、アンダーカットにより解像性が得られない。
【0143】
【表3】
【0144】
上記表中の結果から、各実施例の組成物においては、各比較例と比較して、高いOD値および外観性が得られていることが確かめられた。また、各実施例の組成物においては、表面抵抗値についても良好な性能が得られており、経時による沈降の問題も生じなかった。特に、光硬化性と熱硬化性とを兼ね備える組成物の場合には、良好な感度および良好なパターニング性が得られることも確認された。