【文献】
The Center for Advanced Research and Technology Aquaponic Teaching Lab,2013年10月16日,URL,https://web.archive.org/web/20131016160209/http://www.jandjaquafarms.com/cart.htm
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている給排水装置には、水位上昇を抑制する水位調整用パイプ(オーバーフロー管)が、サイフォン管とともに設けられている。給水量を適量に調節するためには、水位調整用パイプ(オーバーフロー管)とサイフォン管との位置関係が重要となるが、鉢置パン(容器)の底部にそれぞれが別々に取り付けられているため、位置決めが難しい。
【0005】
また、水位調整用パイプ(オーバーフロー管)とサイフォン管とを1個の止水ゴムに取り付けて位置関係を調整した後に、鉢置パン(容器)の底部へ止水ゴムを取り付ける方法もある。しかし、止水ゴムが経年劣化するため、止水ゴムを交換する毎に水位調整用パイプ(オーバーフロー管)とサイフォン管との位置決めをする必要がある。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、水位上昇を抑制する
オーバーフロー管と水位調整用の
サイフォン管とを個別に位置決めする必要がない排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の栽培装置は、流体が供給される
プランターと、前記
プランターに設けられ、流体を排出して前記
プランター内の水位上昇を抑制するオーバーフロー管と、前記オーバーフロー管内に設けられ、流入口が前記
プランター内かつ前記オーバーフロー管外に位置し、前記流入口から上方に延出した最上部が前記オーバーフロー管の排出口より下方にあり、流出口が前記流入口より下方かつ前記
プランター外に位置するサイフォン管と、を備える
排水装置と、前記オーバーフロー管又は前記サイフォン管から排水される水や養液等の流体を一定時間貯留するための貯留槽と、前記貯留槽から前記プランター内へ流体を供給する供給手段と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、オーバーフロー管で
プランター内の水位の上昇を抑制することができ、サイフォン管によって
プランター内の水位を一定水位以下に調整することができる。ここで、水位調整用のサイフォン管がオーバーフロー管内に設けられているため、個別に位置決めする必要がない。また、それぞれを別々に設ける場合に比べて、省スペースとすることができる。
また、貯留槽や供給手段を設けることにより、植物等の栽培対象物に対して適切に水や養液を供給できる栽培装置とすることができる。
【0012】
請求項2に記載の
栽培装置は、前記オーバーフロー管は前記
プランターの底部を貫通し、前記サイフォン管は前記オーバーフロー管へ挿入され、前記オーバーフロー管の前記排出口に形成された凹部に嵌合されている。
【0013】
上記構成によれば、オーバーフロー管に形成された凹部にサイフォン管を嵌合することによって、サイフォン管とオーバーフロー管とを一体的に設けることができ、両方を同時に位置決めすることができる。
【0015】
上記構成によれば、サイフォン管とオーバーフロー管とを一体成形によって形成するため、成形段階で位置決めすることができる。
【0016】
請求項4に記載の
栽培装置は、前記サイフォン管に接続され、前記サイフォン管の前記流出口の上下位置を可変とする排水流速調整装置を備えている。
【0017】
上記構成によれば、排水流速調整装置によってサイフォン管の流出口の上下位置を変えることができるため、サイフォン管の位置決め後であっても排水の流速を調整することができる。
【0020】
請求項5に記載の栽培装置は、前記オーバーフロー管の外周面には止水部材が嵌合される溝が形成されており、前記オーバーフロー管は止水部材を介して前記プランターの底部に設けられたホルダに取り付けられている。
【0021】
上記構成によれば、オーバーフロー管、及びオーバーフロー管内に設けられたサイフォン管を、止水部材を介してプランターの底部に設けられたホルダに取り付ける。したがって、オーバーフロー管及びサイフォン管を、容易かつ確実にプランター底部に固定して位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、水位上昇を抑制する
オーバーフロー管と水位調整用の
サイフォン管とを個別に位置決めする必要がない排水装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る排水装置の一例について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
(実施形態1)
図1に示すように、実施形態1の排水装置10は、水位上昇抑制手段としての排出口12と、ポリ塩化ビニル等の樹脂から成る逆U字型の管体14とから構成されている。
【0026】
排出口12は、容器16の側面に形成された貫通孔である。容器16に供給された水や養液等の流体は、排出口12から容器16外へ排出されるため、容器16内の水位の上昇が抑制され、容器16の上端から流体が溢れることがない。
【0027】
管体14は、流入口14Aから最上部(逆U字型の頂点)14Bへと上方に延出し、最上部14Bから流入口14Aより下方に位置する流出口14Cへと延出する、サイフォン現象を生じさせるサイフォン管である。サイフォン管14は、排出口12内を貫通しており、流入口14Aが容器16内に、流出口14Cが容器16外に配置されている。なお、サイフォン管14は、排出口12の内周面に形成された凹部12Aに固定されて位置決めされている。
【0028】
容器16に供給される流体の水位がサイフォン管14の最上部14Bの高さまで到達すると、サイフォンの原理により、容器16内の流体がサイフォン管14を通って容器16外へ排出される。容器16内への流体の供給を停止すると、その後、容器16内の流体は、水位がサイフォン管14の流入口14Aの高さになるまで自動的に排出され続ける。
【0029】
(実施形態2)
実施形態2では、
図2に示すように、排水装置20は、ポリ塩化ビニル等の樹脂から成るオーバーフロー管(水位上昇抑制手段の一例)22と、サイフォン管(管体の一例)24とから構成されている。
【0030】
オーバーフロー管22は中空状の円管又は多角形管であり、サイフォン管24は、実施形態1と同様の逆U字型の中空管である。サイフォン管24は、最上部24Aがオーバーフロー管22の排出口22Aより下方に位置するよう位置決めされており、オーバーフロー管22に接着又は溶接されて固定されている。また、オーバーフロー管22とサイフォン管24は、容器16の底部に形成された貫通孔16Aに嵌合されている。
【0031】
(実施形態3)
実施形態3では、
図3に示すように、排水装置30は、オーバーフロー管(水位上昇抑制手段)32と、実施形態1、2と同様の形状のサイフォン管(管体)34とから構成されている。
【0032】
オーバーフロー管32は容器16側面に沿って配置されており、容器16と一体成形されている。また、容器16側面にオーバーフロー管32の排出口32Aが形成されている。
【0033】
一方、サイフォン管34は、オーバーフロー管32内に挿入されており、排出口32Aの内周面に形成された凹部32Bに固定されて位置決めされている。また、サイフォン管34の流入口34Aは、オーバーフロー管32の排出口32Aから容器16内へ突出するよう配置されている。
【0034】
実施形態1〜3の排水装置10、20、30によると、管体であるサイフォン管14、24、34が、水位上昇抑制手段である排出口12やオーバーフロー管22、32に固定されて位置決めされている。したがって、容器16内に排水装置10、20、30を配置する際に、管体14、24、34と水位上昇抑制手段12、22、32とを個別に位置決めする必要がなく、また、それぞれを別々に設ける場合に比べて、省スペースが可能となる。
【0035】
(実施形態4)
実施形態4では、
図4に示すように、排水装置40は、オーバーフロー管(水位上昇抑制手段)42と、実施形態1〜3と同様の形状のサイフォン管(管体)44とから構成されている。
【0036】
オーバーフロー管42は中空状の円管であり、排出口42Aの周縁部分には、一部が切り欠かれることにより凹部43が形成されている。凹部43の深さ(高さ)寸法はサイフォン管44の直径と略同じか直径より大きく、凹部上端の幅寸法はサイフォン管44の直径より若干小さくされている。また、凹部43の下端形状はサイフォン管44の曲率と同じ曲率とされている。さらに、オーバーフロー管42の下端部分の外周面には、Oリング等の止水部材46が嵌合される溝48が形成されている。
【0037】
サイフォン管44は、オーバーフロー管42に一体的に固定されている。具体的には、サイフォン管はオーバーフロー管42内に挿入され、最上部44Bがオーバーフロー管42の凹部43に圧入嵌合されることにより、オーバーフロー管42に固定されている。このとき、サイフォン管44の流入口44Aは、オーバーフロー管42外へ突出するよう配置されている。
【0038】
実施形態4の排水装置40によると、サイフォン管44をオーバーフロー管42の凹部43に圧入嵌合させることで、サイフォン管44とオーバーフロー管42とを一体的に固定することができる。したがって、接着剤等を用いることなく、容易かつ確実にサイフォン管44とオーバーフロー管42とを位置決めすることができる。また、サイフォン管がオーバーフロー管42内に挿入されているため、省スペースが可能となる。
【0039】
(実施形態5)
実施形態5では、
図5に示すように、排水装置50は、一体成形によって形成された、オーバーフロー管(水位上昇抑制手段)52とサイフォン管(管体)54とから構成されている。
【0040】
オーバーフロー管52は中空状の四角柱形状であり、オーバーフロー管52の内部には、内部空間をオーバーフロー管52の軸方向に2つに分ける第1仕切り壁56が形成されている。一方の空間は上端及び下端が開口してオーバーフロー管52の流路となっており、また、他方の空間はサイフォン管54の流路となっている。つまり、オーバーフロー管52内にサイフォン管54が設けられている。
【0041】
サイフォン管54には、流路の一部が第2仕切り壁58によって軸方向に仕切られることにより、逆U字型の流路が形成されている。また、流路の一端のオーバーフロー管52の側面には、サイフォン管54の流入口54Aが形成されており、流路の他端には流出口54Bが形成されている。
【0042】
排水装置50は、容器16側面の内周面に沿って配置され、容器16の底部に形成された貫通孔16Aに嵌合されている。このとき、サイフォン管54の流入口54Aは容器16内に、流出口54Bは容器16外に位置している。なお、排水装置50は容器16と一体成形されていてもよい。また、排水装置50は直方体形状でなく、円柱形状等であってもよい。
【0043】
実施形態5の排水装置50によると、オーバーフロー管52の内部空間を第1仕切り壁56で2つに仕切ることによって、一方の空間をサイフォン管54の流路とすることができる。したがって、オーバーフロー管52とサイフォン管54とを容易に一体成形することができる。
【0044】
(実施形態6)
実施形態6では、
図6に示すように、排水装置60は、一体成形によって形成された、オーバーフロー管(水位上昇抑制手段)62とサイフォン管(管体)64とから構成されている。
【0045】
オーバーフロー管62は、ポリ塩化ビニル等の樹脂から成る中空状の円管であり、下端部分の外周面には、Oリング等の止水部材46が嵌合される溝62Aが形成されている。サイフォン管64は逆U字型の中空管であり、オーバーフロー管62内に配置され、流入口64Aがオーバーフロー管62の側面からオーバーフロー管62外へ突出されている。
【0046】
また、サイフォン管64の流出口64Bの周縁部分には、サイフォン管64の軸方向に沿ってスプライン溝が複数形成されている。スプライン溝には、サイフォン管64より一回り外径の大きい排水流速調整管(排水流速調整装置の一例)66が、上下にスライド可能に取り付けられている。
【0047】
サイフォンの原理では、サイフォン管64内を流れる流体の流速は、流入口64Aと流出口64Bの高さ位置の差(水頭差)によって変化する。つまり、水頭差が小さいと流速は遅くなり、水頭差が大きいと流速が速くなる。したがって、排水流速調整管66を上下にスライド移動させて、流出口64Bの高さ位置を変化させることで、サイフォン管64内を流れる流体の流速を調整することができる。
【0048】
なお、サイフォン管64の流出口64Bの周縁部分に雄ねじを形成し、排水流速調整管66の内周面に雌ねじを形成して、サイフォン管64に排水流速調整管66を螺合させることにより、排水流速調整管66を上下にスライド可能に取り付けてもよい。
【0049】
実施形態6の排水装置60によると、オーバーフロー管62とサイフォン管64とを一体成形により形成するため、容器16内に排水装置60を配置する際に、オーバーフロー管62とサイフォン管64とを個別に位置決めする必要がない。また、排水流速調整管66によってサイフォン管64内を流れる流体の流速を調整することができるため、容器16内に排水装置60を配置した後に流体の単位時間当りの排出量を調整することができる。
【0050】
次に、本発明に係る排水装置を配置した栽培装置の一例について
図7を参照して詳細に説明する。なお、
図7では、栽培装置70に実施形態4の排水装置40を配置した例を示したが、栽培装置70には、実施形態1〜6のいずれの排水装置10、20、30、40、50、60が配置されてもよい。
【0051】
図7に示すように、栽培装置70は、上記容器16としてのプランター72と、流体を貯留する貯留槽74と、貯留槽74からプランター72へ流体を供給する供給手段76と、排水装置40と、流体排出管78と、を備えている。
【0052】
プランター72は、天面が開口した箱状の容器である。プランター72内には、底上げされた栽培床80が形成されており、栽培床80には複数の植物82が植えられている。
【0053】
貯留槽74は、天面が開口した又は閉鎖した箱状の容器である。貯留槽74は、プランター72の下方に配置されており、プランター72へ供給する水や養液等の流体、及びプランター72から排水装置40を通して排出された流体を貯留している。
【0054】
供給手段76は、流体供給管84、ポンプ86、制御部88、及び外部から水や養液等の流体を供給する外部供給手段90とから構成されている。
【0055】
流体供給管84は、貯留槽74からプランター72へ流体を供給する中空管であり、プランター72の底面に形成された貫通孔72Aに、上端が接続されている。また、下端は貯留槽74内に配置されたポンプ86に接続されている。ポンプ86は、貯留槽74内の流体を上方に位置するプランター72内へと汲み上げるためのもので、制御部88によって制御されている。
【0056】
外部供給手段90は、外部からプランター72内へ流体を供給するためのものであり、制御部88によって制御されている。なお、外部供給手段90はプランター72内ではなく貯留槽74内へ流体を供給するものであってもよい。また、外部供給手段90を設けずに、任意の手段によってプランター72内又は貯留槽74内へ流体を供給してもよい。
【0057】
流体排出管78は、上端部に雌ねじが形成された中空管であり、排水装置40から排水された流体を貯留槽74内へ流入させるためのものである。流体排出管78の上端部には、下端部に雄ねじが形成されたホルダ92が螺合されており、流体排出管78はホルダ92を介して排水装置40及びプランター72と接続されている。
【0058】
ホルダ92は上端部にフランジ92Aが形成された中空管である。ホルダ92は、プランター72の底面に形成された貫通孔72Bに嵌合されており、Oリング94を介してフランジ92Aがプランター72の底面に係止されている。また、ホルダ92の内周面には、Oリング等の止水部材46を介して排水装置40が嵌合されている。
【0059】
排水装置40とホルダ92とが止水部材46を介して接続されているため、排水装置40とホルダ92との間隙から流体が漏れることがなく、排水装置40を容易かつ確実にホルダ92に接続することができる。
【0060】
次に、栽培装置70による流体の循環手順について説明する。まず、外部供給手段90又は任意の手段により貯留槽74内へ水や養液等の流体を供給する。そして、制御部88によってポンプ86を作動させ、流体供給管84を通して貯留槽74内の流体をプランター72内へ供給する。
【0061】
プランター72内の流体の水位が排水装置40のサイフォン管44の最上部44Bの高さに到達すると、サイフォンの原理によりプランター72内の流体がサイフォン管44を通ってプランター72外へ排出され始める。なお、プランター72内への流体の供給量はサイフォン管44からの排出量よりも多いため、プランター72内の水位は上昇を続ける。
【0062】
その後、プランター72内の水位がオーバーフロー管42の排出口42Aの高さに到達すると、流体はオーバーフロー管42を通ってプランター72外へ排出される。したがって、プランター72内の水位の上昇は抑制され、プランター72の上端から流体が溢れることはない。
【0063】
制御部88は図示しないタイマーを備えており、一定時間が経過すると、ポンプ86を停止させてプランター72内への流体の供給を停止させる。流体の供給が停止されると、プランター72内の流体はサイフォン管44を通してプランター72外へ排出され、水位はサイフォン管44の流入口44Aの高さまで下がる。プランター72外へ排出された流体は、流体排出管78を通して貯留槽74内へ流入される。
【0064】
以上の手順により、水や養液等の流体がプランター72内と貯留槽74内とを循環し、自動的にプランター72内の植物82に水や養液等を供給することができる。
【0065】
なお、プランター72内の水位を監視するセンサを設け、制御部88によって、水位がサイフォン管44の流入口44Aの高さまで下がった時点でポンプ86を作動させ、水位がオーバーフロー管42の排出口42Aの高さに到達したらポンプ86を停止させるよう制御を行うようにしてもよい。
【0066】
本発明の栽培装置70では、排水装置40としてオーバーフロー管42と、サイフォン管44とを用いているため、オーバーフロー管42によって最高水位の上昇を抑制しつつ、サイフォン管44によって水位を流入口44Aの高さまで下げることができる。したがって、プランター72内の植物82の根に十分に水や養液等を供給した後、植物82の根の高さより低い位置まで水位を下げることにより、植物の根腐れを防ぐことができる。
【0067】
(他の実施形態)
なお、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において他の種々の実施形態が可能となる。
【0068】
たとえば、実施形態1〜6のサイフォン管14、24、34、44、54、64は逆U字型の管体であったが、サイフォンとして機能すればよいことから、逆V字型等の管体であってもよい。
【0069】
また、栽培装置70では、プランター72の下方に貯留槽74を配置していたが、同様の別のプランターをプランター72と貯留槽74との間に配置し、プランター72から排出された流体が別のプランターへ供給され、その後、別のプランターから貯留槽74へ排出される構造とされていてもよい。
【解決手段】流体が供給される容器72に設けられ、流体を排出して容器72内の水位上昇を抑制する水位上昇抑制手段42と、水位上昇抑制手段42と一体的に設けられ、流入口44Aが容器内に位置し、流入口から上方に延出した最上部44Bが水位上昇抑制手段42の排出口42Aより下方にあり、流出口が流入口44Aより下方かつ容器72外に位置する管体44と、を備える。