【実施例1】
【0013】
[撹拌装置の概略構成]
図1は本発明の実施例1に係る撹拌装置を示し一部を断面にした概略正面図、
図2は
図1の撹拌装置の概略平面図、
図3は
図1の撹拌装置の概略側面図である。
【0014】
本実施例の撹拌装置1は、例えばカスタードクリームの製造時等に、加熱した原料等の流動性のある被撹拌物に対して撹拌による泡立てや材料の切断微細化を行うものである。この撹拌装置1は、
図1〜
図3のように、加熱容器3と、撹拌部5と、駆動部としての駆動ボックス7が支持フレーム9に支持されている。
【0015】
支持フレーム9は、フロアに対する設置用の脚部11を備えている。脚部11は、例えばロードセル等で構成された重量センサが介設されており、加熱容器3、撹拌部5、駆動ボックス7等を含めた支持フレーム9上の全重量を検出する構成となっている。
【0016】
この重量測定により、加熱容器3内の食材の加熱調理による水分蒸発量等を演算し、撹拌装置1の自動加熱撹拌等を行わせることが可能となっている。
【0017】
加熱容器3は、被撹拌物を投入して加熱する調理釜であり、例えばステンレスや銅等の金属によって形成されている。この加熱容器3は、皿状又は球面状に形成された底部13と、底部13の外周側から一体に立ち上がった略円筒状の側部15とからなっている。
【0018】
加熱容器3の底部13側は、例えば電磁誘導を用いた加熱部17によって加熱が行われるようになっている。加熱部17の出力は、例えば最高5kwに設定されている。
【0019】
ただし、加熱部17は、その出力を仕様に応じて変更することが可能であり、また電磁誘導以外の蒸気、或いは火等を用いるものとすることも可能である。
【0020】
加熱容器3の上部側には、被撹拌物の投入及び排出を可能とする開口が設けられている。
【0021】
加熱容器3上には、撹拌部5が駆動ボックス7を介して支持されている。駆動ボックス7は、内部に駆動用の電動モータ(図示せず)が設けられている。
【0022】
駆動ボックス7の一端側は、支持フレーム9上にヒンジなどによって回動自在に支持されている。これにより、駆動ボックス7及び撹拌部5を
図3の2点差線のように回動させ、撹拌部5を加熱容器3から退避可能としている。
【0023】
駆動ボックス7の他端側は、加熱容器3の上方に配置され、撹拌部5を支持している。
[撹拌部の構成]
図4は、
図1の撹拌装置の撹拌部周辺を示す要部拡大図、
図5は、
図4の撹拌装置の要部拡大側面図である。
【0024】
撹拌部5は、
図4及び
図5のように、回転支持部21と、回転軸23と、撹拌翼25,27とからなっている。
【0025】
回転支持部21は、駆動ボックス7に回転自在に支持された筒状の回転フレーム29を備えている。この回転フレーム29は、駆動ボックス7からの駆動力によって回転駆動される。
【0026】
回転フレーム29への駆動力伝達は、駆動ボックス7内の動力伝達機構(図示せず)を介して行われる。動力伝達機構としては、例えば回転フレーム29と一体に回転する駆動軸及び電動モータの出力軸にスプロケットを設け、両スプロケット間にチェーンを巻回すことで構成できる。
【0027】
回転フレーム29の外周側には、偏心部31が設けられている。偏心部31には、回転軸23の取付軸33が軸周り回転自在に設けられている。取付軸33は、上下方向に対して傾斜配置されている。この取付軸33は、駆動ボックス7からの駆動力によって軸周り回転すると共に回転フレーム29の回転によって公転するようになっている。
【0028】
取付軸33への駆動力伝達は、回転支持部21内の動力伝達機構(図示せず)を介して行われる。動力伝達機構は、例えば遊星ギヤ機構等を用いることができ、回転フレーム29と一体に回転するサンギヤと、このサンギヤに噛み合うと共に取付軸33と一体に回転する遊星ギヤ等によって構成することができる。
【0029】
回転軸23は、取付軸33に取り付けられて全体として傾斜している。この回転軸23は、取付軸33を介して軸周りに自転すると共に軸を移動させるように公転するようになっている。回転軸23の回転は、図示しない制御部による取付軸33の駆動制御に応じて、正転方向と反転方向とで交互に切り替えが行われる。
【0030】
この回転軸23は、基端側軸部35の外周に、筒状の先端側軸部37がスライド自在に設けられている。これにより、回転軸23は、伸縮自在に構成されている。
【0031】
基端側軸部35は、その端部が支持ピン39により取付軸33に相対回転不能に支持されている。先端側軸部37は、基端側軸部35に対して図示しないコイルばね等の付勢部材によって伸延方向に付勢されている。先端側軸部37の端部は、加熱容器3の中心軸に対して変位して配置され、支持アーム41を介して撹拌翼25,27が設けられている。
【0032】
従って、撹拌翼25,27は、回転軸23の軸周りに自転すると共に回転軸23の公転によって加熱容器3内を移動するように公転する。なお、撹拌翼25,27の自転速度は、15〜100rpm程度に設定され、駆動ボックス7の電動モータのインバーター制御によって変速可能となっている。
【0033】
図6は、
図4の支持アームを示し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【0034】
支持アーム41は、
図4〜
図6のように、例えばステンレス等の金属棒からなる。この支持アーム41は、中央部43に対して両端部45,47が交差方向に折り曲げられていると共に回転軸23の自転方向に傾斜設定されている。なお、両端部45,47の傾斜角度は、それぞれ回転軸23の軸心に対して15°程度に設定されている。
【0035】
支持アーム41の中央部43には、支持ボス部49が設けられている。この支持ボス部49を介し、支持アーム41は回転軸23の先端に対しボルト51によって軸支持されている。このため、支持アーム41は、ボルト51を中心に揺動自在となっている。
【0036】
支持アーム41の両端部45,47は、取付ボス部53,55を備えている。この取付ボス部53,55を介して、支持アーム41の両端部45,47には撹拌翼25,27が取り付けられている。
【0037】
撹拌翼25,27は、
図4及び
図5のように、掻取り羽根57a,57bと撹拌羽根59a,59bとを備えている。なお、撹拌翼25,27は、一方(25)に対して他方(27)が大型に形成されているものの、基本構成が共通しているので原則として一方(25)についてのみ説明する。他方の撹拌翼27については、対応する構成部分について同符号或いはaをbに代えた符号を付して重複した説明を省略する。
【0038】
図7及び
図8は、
図4の撹拌翼の掻取り羽根を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。なお、
図7は一方の撹拌翼の掻取り羽根、
図8は他方の撹拌翼の掻取り羽根である。
【0039】
撹拌翼25の掻取り羽根57aは、
図4、
図5及び
図7のように、その回転(自転及び公転)に応じて加熱容器3の底部内面13aに対する被撹拌物の掻取り撹拌を行うものである。この掻取り羽根57aは、例えばフッ素樹脂等からなり、先端側に向けて漸次幅広になる板状体となっている。
【0040】
掻取り羽根57aの先端は、回転軸23による付勢及び支持アーム41の揺動により加熱容器3の底部内面13aに追従して摺接する。この掻取り羽根57aには、撹拌羽根59aに対する取付用の貫通孔61,63が貫通形成されており、撹拌羽根59aを介して支持アーム41の端部45に取り付けられる。
【0041】
他方の撹拌翼27の掻取り羽根57bは、
図4及び
図8のように、一方の掻取り羽根57aに対して大型に形成されている。すなわち、掻取り羽根57bの先端側には、加熱容器3の底部内面13aに沿って延設された延設部65が形成されている。
【0042】
図9及び
図10は、
図4の撹拌翼の撹拌羽根を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。なお、
図9は一方の撹拌翼の撹拌羽根、
図10は他方の撹拌翼の撹拌羽根である。
【0043】
撹拌羽根59aは、
図4、
図5及び
図9のように、その回転(自転及び公転)に応じて被撹拌物に対する泡立て又は材料の切断微細化を行うものである。この撹拌羽根59aは、例えばステンレス等の金属からなり、全体として扇状に形成されている。
【0044】
撹拌羽根59aは、複数の棒状体67がフレーム69内で相互に略平行な格子状に配置されている。棒状体67の隣接間には、被撹拌物を通過させる通過部としてのスリット71が形成されている。なお、撹拌羽根は、複数の棒状体を交差して配置した格子状に形成したり、或いは網目状に形成してもよい。
【0045】
この撹拌羽根59aは、掻取り羽根57aよりも大型に形成され、掻取り羽根57aに対して加熱容器3の側部15及び上部側に突出している。すなわち、掻取り羽根57aは、撹拌羽根59aに対して小型に形成され、泡立て又は材料の切断微細化に必要な回転数であっても、被撹拌物を飛散させるようなことが防止されている。
【0046】
撹拌羽根59aは、自転時に加熱容器3の側部内面15aに最も近接した状態で、側部内面15aとの間に3mm〜10mm程度のクリアランスを有する。これにより、撹拌羽根59aは、側部内面15aに付着する被撹拌物を流動、撹拌させることができる。
【0047】
従って、撹拌羽根59aは、加熱容器3の底部内面13aに連続する側部内面15aとの間に被撹拌物を流動可能とするクリアランスを有して近接配置された構成となっている。なお、クリアランスの寸法は、任意であり、撹拌羽根59aの回転速度、被撹拌物の流動性・粘性或いは加熱容器3の加熱温度等に応じて適宜設定すればよい。
【0048】
クリアランスは、撹拌羽根59aの公転に応じて、加熱容器3の全周において形成される。従って、撹拌羽根59aは、泡立て撹拌時に、加熱容器3の全周において側部内面15aとの間の被撹拌物を流動させることができる。
【0049】
撹拌羽根59aの端部には、矩形板状の取付部73が一体に設けられている。取付部73は、掻取り羽根57aに重ね合わせられる。この取付部73には、掻取り羽根57aの貫通孔61,63に対応して雌ねじ部75,77が設けられている。雌ねじ部75,77には、掻取り羽根57aの貫通孔61,63を挿通したボルト79が螺合される。
【0050】
従って、撹拌羽根59aの取付部73には、掻取り羽根57aが締結固定される。このため、撹拌羽根59aは、掻取り羽根57aと一体に設けられて回転する構成となっている。
【0051】
取付部73の中央部には、雄ねじ部81が一体に突設されている。雄ねじ部81は、支持アーム41の端部45の取付ボス部53に挿通されて先端にナット83が螺合されている。
【0052】
従って、撹拌羽根59aは、支持アーム41の端部45に締結固定されている。
【0053】
また、取付部73には、円柱状の突出部85が一体に設けられている。突出部85は、支持アーム41の端部45に隣接配置される。
【0054】
他方の撹拌翼27の撹拌羽根59bは、
図4及び
図10のように、その端部87が掻取り羽根59bの延設部65上に突き当てられている。この撹拌羽根59bは、一方側の撹拌羽根59aに対して寝かせて形成されている。
【0055】
このように構成された撹拌翼25,27は、支持アーム41の両端部45,47の傾斜設定に応じ、上下方向に対して全体として回転軸23の自転方向(回転方向)に傾斜している。
【0056】
具体的には、回転軸23の正転方向前方において、加熱容器3の底部内面13aに対して鈍角となるように傾斜している。この傾斜により、撹拌翼25,27の掻取り羽根57a,57bは、その表面が底部内面13aに対して鈍角のすくい角を有する。
[撹拌動作]
図1〜
図5に示す撹拌装置1では、泡立て(ホイップ)又は切断微細化対象の被撹拌物を加熱容器3の上方開口から投入する。このとき、重量センサにより投入材料の投入重量が検出される。
【0057】
材料投入後は、制御部によって加熱容器3を加熱しながら電動モータを駆動制御する。かかる制御により、撹拌翼25,27を所定の周期毎に正転及び反転させつつ、水分蒸発により被撹拌物が目標重量となるまで加熱撹拌する。このとき、被撹拌物の泡立ち又は切断微細化状態等を考慮してもよい。
(正転)
正転時には、掻取り羽根57a,57bによる被撹拌物の掻取り及び撹拌羽根59a,59bによる被撹拌物の泡立て又は切断微細化が行われる。
【0058】
掻取り羽根57a,57bは、その自転によって、加熱容器3の底部内面13aに対し正転方向前方で鈍角のすくい角をなしながら摺動する。これにより、加熱容器3の底部内面13a上の加熱された被撹拌物が、掻取り羽根57a,57bにより掻き取られて掻取り羽根57a,57b側に移動する。
【0059】
この結果、被撹拌物は、加熱容器3の底部13での焦げ付きが防止されながら加熱された部分とその内側の加熱されていない部分とが混合されて加熱撹拌が行われる。なお、掻取り羽根57a,57bは、回転軸23の付勢力及び材料の抵抗によって加熱容器3の底部内面13aに押し付けられるため、確実に掻き取りを行うことができる。
【0060】
このとき、被撹拌物は、加熱容器3の底部内面13aと連続する側部内面15aからは掻取られないが、撹拌羽根59a,59bによる泡立て又は切断微細化の際に流動して焦げ付きが防止される。
【0061】
すなわち、撹拌羽根59a,59bは、その自転によって被撹拌物をスリット71を介して通過させる。このとき、被撹拌物には、撹拌羽根59a,59bの棒状体67により剪断力が付与され、撹拌による泡立て又は切断微細化が行われる。
【0062】
同時に、撹拌羽根59a,59bは、加熱容器3の側部内面15a近傍を3〜10mmのクリアランスで高速で通過し、側部内面15a上の被撹拌物を流動させる。加熱容器3の側部15は、底部13に対して加熱が相対的に弱いので、かかる効果で焦げ付きが発生することはない。
【0063】
こうして撹拌翼25,27は、正転動作が行われ、この正転動作が公転によって加熱容器3内の全体で行われる。
(反転)
反転時には、掻取り羽根57a,57bによる被撹拌物の押し付け及び撹拌羽根59a,59bによる被撹拌物の泡立て又は切断微細化が行われる。
【0064】
掻取り羽根57a,57bは、上記正転時のすくい角設定により、反転時に回転方向前方にある被撹拌物を加熱容器3の底部内面13aに押し付ける働きをする。すなわち、掻取り羽根57a,57bは、被撹拌物を加熱容器3の底部内面13a側に向けて案内流動する。
【0065】
このとき、掻取り羽根57a,57bは、底部内面13a側に流動した被撹拌物から底部内面13a側に対して離れる方向の浮上力を受ける。これに応じ、回転軸23が収縮動作を行い、掻取り羽根57a,57bが底部内面13aから浮くことになる。
【0066】
この浮きにより、被撹拌物を底部内面13aに押し付けることができる。このため、ダマ等の固まりを掻取り羽根と底部内面の間に挟んで潰すことが出来る。
【0067】
この反転の際にも、正転時と同様にして、撹拌羽根59a,59bが被撹拌物を泡立て及び切断微細化すると共に側部内面15aに対して流動させ焦げ付きが防止される。
【0068】
このように、本実施例の撹拌装置1では、撹拌翼25,27の撹拌羽根59a,59bによって泡立て及び切断微細化を行うことができながら、掻取り羽根57a,57bによる加熱容器3の底部13での被撹拌物の掻取りと撹拌羽根59a,59bによる加熱容器3の側部15での被撹拌物の流動との協働によって焦げ付きをも確実に防止することができる。
[実験結果]
本実施例の撹拌装置1によってカスタードクリームを製造する場合の実験結果について説明する。
【0069】
被撹拌物であるカスタードクリーム(以下、単に「カスタード」と称する)の原料としては、牛乳6000g、加糖卵黄1725g、グラニュー糖1058g、薄力粉391g、コーンスターチ46g、水飴74g、バニラエッセンス適量を用いた。
【0070】
カスタード製造の際は、まず、別容器(ボール)に加糖卵黄及びグラニュー糖を入れ、両者を白色化するまで混合した。
【0071】
次いで、篩にかけた薄力粉及びコーンスターチを入れて均一に混合した。
【0072】
上記操作と並行して、加熱容器3内に牛乳を入れ加熱し85℃まで昇温した。この牛乳の一部を前述の混合物に加えて更に混合した。
【0073】
次いで、前述の混合物を篩にかけた後に加熱容器3内に入れ、残りの牛乳と合せ、加熱容器3を加熱しながら撹拌翼25,27を回転させて加熱撹拌を20分程度行った。このとき、加熱部17の出力を70%程度の一定とし、撹拌翼25,27の回転速度を原料が加熱容器3からこぼれない範囲で速くした。
【0074】
加熱撹拌の終了直前には、撹拌翼25,27の回転速度を遅くして品温を上昇させた。これは、撹拌翼25,27の回転速度を遅くしないと品温が上昇しないからである。なお、品温を上昇させるのは、衛生上の要求に応じるためである。
【0075】
加熱撹拌後は、バニラエッセンスを加えてカスタードの製造を完了した。
【0076】
こうして本実施例の撹拌装置1によって製造されたカスタードは、滑らかなクリームであったのに加え、加熱部17の出力を70%程度の一定としたにも拘わらず焦げ付きの発生も全くなかった。
【0077】
このように、本実施例の撹拌装置1では、撹拌翼25,27の撹拌羽根59a,59bの材料の切断微細化作用によって滑らかなカスタードを製造することができながら、掻取り羽根57a,57bによる加熱容器3の底部13での原料の掻取りと撹拌羽根59a,59bによる側部15での原料の流動との協働によって焦げ付きをも防止でることが確認できた。
【0078】
ここで、単に掻取り羽根57a,57bと撹拌羽根59a,59bとを一体に設けるだけでは、焦げ付きの観点から品温上昇のために撹拌翼25,27の回転速度を落とすことはできない。
【0079】
これに対し、本実施例では、上記のように掻取り羽根57a,57bによる底部13の掻取りと撹拌羽根59a,59bによる側部15の流動とを協働させて確実に焦げ付きを防止できるため、撹拌翼25,27の回転速度を落として品温を上昇させることができ、衛生上の要求に確実に応じることができた。
[実施例1の効果]
本実施例の撹拌翼25,27は、加熱容器3の内面に対する被撹拌物の掻取りを行う掻取り羽根57a,57bと、被撹拌物を通過させるスリット71を有し掻取り羽根57a,57bと一体に設けられて回転する泡立て又は切断微細化用の撹拌羽根59a,59bとを備えた。
【0080】
従って、本実施例では、掻取り羽根57a,57bと撹拌羽根59a,59bとを一体に回転させることができ、両者に対する駆動源を単一にすることができる。このため、本実施例では、掻取り羽根57a,57bと撹拌羽根59a,59bとに対する複数の駆動源を不要とし、装置全体の大型化やコスト高等を防止することができる。
【0081】
撹拌羽根59a,59bは、格子状に配置された複数の棒状体67からなり、通過部としてのスリット71が、棒状体67の隣接間に形成されている。
【0082】
このため、撹拌羽根59a,59bは、被撹拌物に対する泡立て又は切断微細化を確実に行うことができる。
【0083】
本実施例の撹拌装置1は、撹拌翼25,27を加熱容器3内に回転自在に支持する回転軸23と、回転軸23を回転駆動する駆動ボックス7とを備えている。
【0084】
従って、本実施例では、掻取り羽根57a,57bと撹拌羽根59a,59bとを一体に回転させて、両者に対する駆動源を単一にした撹拌装置1を実現することができる。
【0085】
また、本実施例の撹拌装置1では、掻取り羽根57a,57bが、加熱容器3の底部内面13aに摺接し、撹拌羽根59a,59bが、加熱容器3の底部内面13aに連続する側部内面15aとの間に、回転によって被撹拌物を流動させるクリアランスを有して近接配置されている。
【0086】
このため、本実施例では、掻取り羽根57a,57bによる底部13の掻取りと撹拌羽根59a,59bによる側部15の流動とを協働させて、被撹拌物の焦げ付きを確実に防止することができる。
【0087】
これにより、本実施例では、撹拌翼25,27の回転速度を落として品温を上昇させても被撹拌物の焦げ付きを防止することができ、被撹拌物の衛生上の要求にも確実に応じることができる。
【0088】
本実施例では、撹拌羽根59a,59bと側部内面15aとのクリアランスDが、3mm〜10mmに設定されている。
【0089】
従って、本実施例では、より確実に被撹拌物を加熱容器3の側部15で流動させることができ、より確実に被撹拌物の焦げ付きを防止することができる。
【0090】
本実施例の撹拌装置1は、回転軸23が、軸方向に伸縮自在に形成され、駆動ボックス7が、回転軸23の回転を正転方向及び反転方向に切替可能であり、撹拌翼25,27の掻取り羽根57a,57bが、正転方向時に加熱容器3の底部内面13aに対して摺接して被撹拌物の掻取りを行うと共に、反転方向時に加熱容器3の底部内面13aに対して回転軸23の収縮により浮上し被撹拌物の押し付けを行う。
【0091】
従って、本実施例の撹拌装置1は、被撹拌物の撹拌翼25,27との供回り等を抑制して撹拌効率の低下を抑制できる。
【0092】
加えて、撹拌装置1では、反転時にダマ等の固まりを掻取り羽根と底部内面の間に挟んで潰すことが出来る。
【0093】
しかも、撹拌装置1では、正転及び反転を行うことによって、加熱撹拌時に掻取り羽根57a,57bの表裏面の双方を使用することができ、掻取り羽根57a,57bへの被撹拌物の付着滞留を抑制することもできる。この結果、撹拌装置1では、材料の切断微細化による製品の滑らかさ等を確保することができる。
[その他]
以上、本発明の実施例1について説明した、本発明はこれに限定されるものではなく、各種の変更が可能である。
【0094】
例えば、撹拌翼25,27は、上下方向に対して回転方向(自転方向)に傾斜配置されていたが、上下方向に沿って配置してもよい。
【0095】
また、回転軸23を、上下方向に沿って配置してもよい。この場合は、撹拌翼の掻取り羽根を、加熱容器3の底部13に沿って大型化すると共に加熱容器3の中心軸周りに自転させればよい。この構成では、撹拌翼の公転及び回転軸の伸縮が不要となり、撹拌装置の構造を簡素化することができる。