(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流体通流室として、他の前記流体通流室と連通接続されて、その他の前記流体通流室からの流体が直接流入可能な直接流入用流体通流室が備えられている請求項1に記載の吸収式冷凍機。
前記吸収器に戻す吸収液を冷却用流体にて冷却させる溶液冷却用熱交換器が備えられ、その溶液冷却用熱交換器が前記対向室モジュールにて構成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収式冷凍機。
前記積層体は、前記第1外板と前記第1区画体との間、又は、前記第2区画体と前記第2外板との間に、追加区画体及び追加伝熱板の単位追加体を追加して積層自在に構成され、
前記追加区画体は、前記追加伝熱板を挟んで前記対向室モジュールと対向位置する追加流体通流室を形成自在に構成されている請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収式冷凍機。
請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収式冷凍機において、前記吸収器、前記再生器、前記分離器、及び、前記溶液熱交換器が、前記第1外板、前記第1区画体、前記伝熱板、前記第2区画体、前記第2外板を順に積層してロウ付けにより互いを接着させて製造された前記積層体にて形成されている吸収式冷凍機の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の吸収式冷凍機では、流体通流室を通流する流体が有する熱を、伝熱板を介して対向位置する流体通流室を通流する流体に伝熱させているだけであるので、伝熱性能が低いものとなっていた。そこで、例えば、流体通流室を大きくして伝熱板の伝熱面積を大きくすることによって伝熱量を増加させることが考えられるが、この場合には、流体通流室を大きくすることで、大型化を招くことになる。また、上記特許文献1に記載の吸収式冷凍機では、流体通流室が中空状となっていることから、強度的にも弱いものとなっている。
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、強度の向上を図ることができながら、コンパクトに構成して伝熱性能を向上できる吸収式冷凍機及び吸収式冷凍機の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る吸収式冷凍機の特徴構成は、蒸発器、吸収器、再生器、凝縮器、分離器、溶液熱交換器を備えた吸収式冷凍機において、
第1外板、第1区画体、伝熱板、第2区画体、第2外板を順に積層して積層体が構成され、前記積層体では、前記第1区画体及び前記第2区画体により、前記伝熱板を挟んで対向位置する2つの流体通流室を1組とする対向室モジュールが複数形成され
、前記積層体には、複数の前記流体通流室の夫々に対して流体を流入可能な流入部、及び、複数の前記流体通流室の夫々から流体を排出可能な排出部が備えられ、前記吸収器、前記再生器
、及び、前記溶液熱交換器の夫々が、前記対向室モジュールにて構成されている
と共に、前記吸収器、前記再生器、及び、前記溶液熱交換器の夫々を構成する複数の前記対向室モジュールにおける2つの前記流体通流室内の夫々に伝熱フィンが備えられ、前記分離器が、前記対向室モジュールにて構成されると共に、前記分離器を構成する前記対向室モジュールにおける2つの前記流体通流室の間の前記伝熱板を貫通する状態で中空空間が形成され、前記中空空間に流路形成部材が配設されている点にある。
【0008】
本特徴構成によれば、第1外板、第1区画体、伝熱板、第2区画体、第2外板を順に積層して積層体を形成することにより、伝熱板を挟んで対向位置する2つの流体通流室を1組とする対向室モジュールが2つ以上形成することができる。流入部は、複数の流体通流室の夫々に対して流体を流入可能であるので、各対向室モジュールにおいて、伝熱板を挟んで一方側の流体通流室に流入された流体が有する熱を、伝熱板を介して伝熱板を挟んで他方側の流体通流室に流入された流体に伝熱できる。しかも、複数の対向室モジュールにおける2つの流体通流室内の夫々に伝熱フィンが備えられているので、伝熱板だけではなく、この伝熱フィンをも活用して、各対向室モジュールにおける一方側の流体通流室の流体から他方側の流体通流室の流体への伝熱を行うことができ、伝熱性能を向上することができる。このように、伝熱性能を向上できることから、流体通流室を大きくして伝熱面積を大きくする必要もなく、積層体をコンパクトに構成することができる。さらに、複数の対向室モジュールにおける2つの流体通流室内の夫々に伝熱フィンを備えることで、伝熱板を挟んで対向位置する2つの流体通流室の夫々に伝熱フィンを存在させることができ、その伝熱フィンの存在によって積層体の強度の向上を図ることができる。また、積層体にて形成される流体通流室に複数種の流体を流入させることで、複数種の流体を混合させることもでき、このような流体通流室を吸収器として構成することができる。さらに、
分離器を構成する対向室モジュールにおける2つの流体通流室の間の伝熱板を貫通する状態で中空空間が形成され、中空空間に流路形成部材を配設する構成を採用することで、積層体にて形成される流体通流室に流入された流体から複数種の流体に分離させることもで
きる。このようにして、積層体を構成するだけで、その積層体における複数の対向室モジュールによって、吸収器、再生器、分離器、及び、溶液熱交換器の夫々を構成することができる。
以上のことから、強度の向上を図ることができながら、コンパクトに構成して伝熱性能を向上できる吸収式冷凍機を実現できるに至った。
【0009】
本発明に係る吸収式冷凍機の更なる特徴構成は、前記流体通流室として、他の前記流体通流室と連通接続されて、その他の前記流体通流室からの流体が直接流入可能な直接流入用流体通流室が備えられている点にある。
【0010】
本特徴構成によれば、他の流体通流室から排出される流体を、積層体の外部に排出されることなく、直接流入用流体通流室に直接流入させることができるので、他の流体通流室にて熱交換を行い、その熱交換を行った流体をそのまま直接流入用流体通流室での熱交換に用いることができる。したがって、1つの流体を異なる流体通流室にて段階的に熱交換させて効率良い熱交換を行うことができ、熱交換の性能向上を図ることができるとともに、他の流体通流室から排出される流体を積層体の外部まで導く流路を省略して、構成の簡素化を図ることもできる。
【0011】
本発明に係る吸収式冷凍機の更なる特徴構成は、前記分離器から流出した冷媒の濃度を高める精留器が備えられ、その精留器が前記対向室モジュールにて構成されている点にある。
【0012】
本特徴構成によれば、積層体により、吸収器、再生器、分離器、及び、溶液熱交換器に加えて、精留器を構成することができる。したがって、積層体を構成するだけで、吸収式冷凍機として必要となる機器をより多く構成することができ、製造工程の簡素化を効果的に図ることができる。例えば、冷媒をアンモニアとし、吸収液を水とした場合に、精留器の濃縮作用により冷媒濃度を高めて凝縮器に冷媒を供給することができ、吸収式冷凍機の作動を適正に行うことができる。
【0013】
本発明に係る吸収式冷凍機の更なる特徴構成は、前記吸収器に戻す吸収液を冷却用流体にて冷却させる溶液冷却用熱交換器が備えられ、その溶液冷却用熱交換器が前記対向室モジュールにて構成されている点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、積層体により、吸収器、再生器、分離器、及び、溶液熱交換器に加えて、溶液冷却用熱交換器を構成することができる。したがって、積層体を製造するだけで、吸収式冷凍機として必要となる機器をより多く構成することができ、製造工程の簡素化を効果的に図ることができる。
【0015】
本発明に係る吸収式冷凍機の更なる特徴構成は、前記積層体は、前記第1外板と前記第1区画体との間、又は、前記第2区画体と前記第2外板との間に、追加区画体及び追加伝熱板の単位追加体を追加して積層自在に構成され、前記追加区画体は、前記追加伝熱板を挟んで前記対向室モジュールと対向位置する追加流体通流室を形成自在に構成されている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、例えば、第1外板と第1区画体との間に単位追加体を追加して積層させて積層体を構成することにより、追加流体通流室を通流させる流体と対向室モジュールにおける一方側の流体通流室を通流する流体とを追加伝熱板を介して熱交換させることができる。よって、追加流体通流室と対向室モジュールにおける一方側の流体通流室とに同一の流体を通流させることにより、熱交換量を増加させることが可能となる。よって、単位追加体を必要に応じて追加して積層させて積層体を構成することにより、求められている能力の変化に柔軟に対応することができる。また、追加流体通流室と対向室モジュールにおける一方側の流体通流室とで異なる流体を通流させることにより、より多種の流体の熱交換を行うこともできる。
【0017】
本発明に係る吸収式冷凍機の製造方法は、上述の本発明に係る吸収式冷凍機の特徴構成の何れかを有するものであり、前記吸収器、前記再生器、前記分離器、及び、前記溶液熱交換器が、前記第1外板、前記第1区画体、前記伝熱板、前記第2区画体、前記第2外板を順に積層してロウ付けにより互いを接着させて製造された前記積層体にて形成されている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、単に、第1外板、第1区画体、伝熱板、第2区画体、第2外板を順に積層してロウ付けするだけで積層体を製造することができ、積層体の製造を容易に行うことができる。よって、吸収式冷凍機として、製造工程の簡素化を有効に図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る熱交換器を用いた排熱利用システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この排熱利用システムは、
図1に示すように、エンジン1の軸出力を、アンモニアである冷媒Aを圧縮する圧縮機2の動力源として利用する圧縮式ヒートポンプ回路X1と、エンジン1の排熱を、アンモニアを吸収可能で且つアンモニアよりも沸点が高い水である吸収剤を再生温度に加熱する再生器3の熱源として利用する吸収式ヒートポンプ回路Y1とを備えて構成されている。そして、圧縮式ヒートポンプ回路X1の冷媒をアンモニアとし、吸収式ヒートポンプ回路Y1の冷媒をアンモニアとし、吸収剤を水としている。
【0021】
圧縮式ヒートポンプ回路X1は、凝縮器4、膨張弁5、蒸発器6、圧縮機2を配置して構成されている。そして、圧縮機2には、エンジン1の軸出力が伝達されており、圧縮機2は、動力源としてエンジン1の軸動力を利用して冷媒を圧縮するように構成されている。
【0022】
蒸発器6にて蒸発した冷媒蒸気A1が、圧縮機2にて圧縮されて高温高圧状態となり、その高温高圧状態の冷媒蒸気A1が、凝縮器4にて伝熱管4a内を流通する冷却水Hに放熱して凝縮する。そして、その凝縮した冷媒液A2が、膨張弁5にて膨張して低温低圧状態となり、その低温低圧状態の冷媒液A2が蒸発器6にて伝熱管6a内に流通する冷熱用水Cから吸熱して蒸発する。このようにして、蒸発器6にて蒸発した冷媒蒸気A1が再度圧縮機2に供給されるという形態で、圧縮式ヒートポンプ回路X1が作動するように構成されている。
【0023】
圧縮式ヒートポンプ回路X1には、凝縮器4から膨張弁5に供給される比較的高温の冷媒液A2により、蒸発器6から圧縮機2に供給される冷媒蒸気A1を加熱する冷媒熱交換器7が設けられている。
【0024】
吸収式ヒートポンプ回路Y1は、凝縮器4及び蒸発器6に加えて、吸収器8、再生器3、分離器9、精留器10、溶液熱交換器11、溶液冷却用熱交換器12を配置して構成されている。
この排熱利用システムでは、圧縮式ヒートポンプ回路X1及び吸収式ヒートポンプ回路Y1の凝縮器4及び蒸発器6が共有されている。
【0025】
蒸発器6には、下方に溜まる冷媒液A2を伝熱管6aに散布する冷媒液循環路6bが設けられている。これにより、蒸発器6における冷媒液A2が、良好に、伝熱管6a内に流通する冷熱用水Cから吸熱して蒸発することができる。この冷媒液循環路6bは必ずしも設けなくてもよい。
そして、蒸発器6を流出した冷媒蒸気A1は、冷媒熱交換器7に供給されて加熱されたのち、圧縮式ヒートポンプ回路X1の圧縮機2と吸収式ヒートポンプ回路Y1の吸収器8とに分配して供給される。
【0026】
吸収器8では、冷媒蒸気A1が吸収剤に吸収されており、冷媒蒸気A1と吸収剤との混合液である吸収液は、吸収器8を流出して再生器3に供給される吸収液K3と吸収器8に戻す吸収液に合流させる吸収液K4とに分配されている。
【0027】
吸収器8を流出して再生器3に供給される吸収液K3は、溶液ポンプ13にて昇圧されて溶液熱交換器11に供給され、溶液熱交換器11において吸収器8に戻す吸収液K5との熱交換により加熱されたのち、再生器3に供給されてエンジン1の排熱を有する加熱用流体Bにて再生温度まで加熱される。
【0028】
再生器3を流出した吸収液K8は、分離器9に供給されて吸収液K8から冷媒蒸気A1が分離され、冷媒蒸気A1が分離された吸収液K9を吸収器8に戻している。また、分離された冷媒蒸気A1が、精留器10に供給されて伝熱管10a内を流通する冷却用流体R(例えば冷却水)により冷却されることで凝縮されて、冷媒濃度が高い冷媒蒸気A1を凝縮器4に供給すると共に、凝縮した吸収液Qを分離器9にて冷媒蒸気A1が分離された吸収液K9に合流させて吸収器8に戻している。精留器10を流出した冷媒蒸気A1は、圧縮機2にて圧縮された冷媒蒸気A1と合流して凝縮器4に供給されている。
【0029】
分離器9を流出した吸収液K9と精留器10から流出した吸収液Qとの混合液である吸収器8に戻す吸収液K5は、液面計14を通過したのち、溶液熱交換器11に供給されて溶液熱交換器11において吸収器8を流出して再生器3に供給される吸収液K3を加熱している。ここで、液面計14については、必ずしも設けなくてもよい。そして、溶液熱交換器11を流出した吸収器8に戻す吸収液K6は、膨張弁15にて減圧されたのち、吸収器8を流出した吸収液K2のうち循環ポンプ16により昇圧された吸収液K4が合流されて溶液冷却用熱交換器12に供給される。溶液冷却用熱交換器12に供給された吸収液K10は、溶液冷却用熱交換器12において冷却用流体R(例えば冷却水)にて冷却されたのち、吸収器8に戻されている。
【0030】
吸収式ヒートポンプ回路Y1のうち、
図1にて点線にて囲む部分の機器及び流路等を、
図2及び
図3に示すように、第1外板17、第1区画体18、伝熱板19、第2区画体20、第2外板21を順に積層した積層体22にて構成している。本発明に係る熱交換器は、この積層体22にて構成されている。
図2は、積層体22の分解斜視図を示しており、
図3は、積層体22を組み付けた状態での斜視図を示している。
【0031】
第1外板17、第1区画体18、伝熱板19、第2区画体20、第2外板21の夫々が、平面視で長方形状に形成されており、その厚みが薄い薄型に形成されている。そして、積層体22は、第1外板17、第1区画体18、伝熱板19、第2区画体20、第2外板21を順に積層してロウ付けにより互いを接着させて製造されている。
積層体22は、例えば、伝熱板19の長手方向(
図2及び
図3中X方向)を積層体22の上下方向とし、且つ、伝熱板19の短手方向(
図2及び
図3中Y方向)を積層体22の左右方向として縦長形状に形成されている。ここで、以下、伝熱板19の長手方向を「積層体22の上下方向」とし、伝熱板19の短手方向を「積層体22の左右方向」として説明する。
【0032】
第1区画体18は、
図4に示すように、伝熱板19と第1外板17との間の空間を複数の空間に区切る枠体にて構成されており、その枠体にて区切られた空間を第1流体通流室25として区画形成している。1つの第1流体通流室25dを除く複数の第1流体通流室25の夫々には、伝熱フィン23が備えられている。
図2では、この伝熱フィン23を省略して図示している。ここで、伝熱フィン23の形状については、各種の形状が適応可能であり、例えば、波形状としたり、フィンピッチを変更させたオフセットフィンとしたり、コルゲートフィンとすることができ、適用箇所によって仕様を変えてもよい。伝熱フィン23の材質は、例えば、銅とすることができる。
【0033】
第2区画体20も、
図5に示すように、第1区画体18と同様に、枠体を備えており、その枠体にて区切られた空間を第2流体通流室26として区画形成している。そして、1つの第2流体通流室26dを除く複数の第2流体通流室26の夫々にも、伝熱フィン23が備えられている。
【0034】
図2に示すように、積層体22において、第1区画体18によって第1外板17と伝熱板19との間に複数の第1流体通流室25a〜25fが伝熱板19に沿う方向で並ぶ形態で区画形成されている。また、積層体22において、第2区画体20によって第2外板21と伝熱板19との間に複数の第1流体通流室25a〜25fと伝熱板19を挟んで対向する位置に第2流体通流室26a〜26fが伝熱板19に沿う方向で並ぶ形態で区画形成されている。第1流体通流室25と第2流体通流室26とは同数備えられており、この実施形態では6つ備えられている。伝熱板19を挟んで対向位置する第1流体通流室25と第2流体通流室26との2つの流体通流室を1組とする対向室モジュール27が伝熱板19に沿う方向で並ぶ形態で複数(例えば6つ)形成されている。ここで、伝熱板19に沿う方向とは、伝熱板19の表面に沿った方向で、例えば、
図2中X方向及びY方向としている。
【0035】
積層体22には、複数の対向室モジュール27における第1流体通流室25及び第2流体通流室26に対して流体を流入可能な流入部28、及び、複数の対向室モジュール27における第1流体通流室25及び第2流体通流室26から流体を排出可能な排出部29が備えられている。流入部28及び排出部29は、流体の流入側箇所及び流体の排出側箇所が積層体22の積層方向において第1外板17の外側に設けられている。流入部28及び排出部29は、第1外板17及び第1区画体18に貫通孔部を形成することにより第1流体通流室25に流体を流入可能及び排出可能に構成されており、第1外板17、第1区画体18、伝熱板19及び第2区画体20の夫々に貫通孔部を形成することにより第2流体通流室26に流体を流入可能及び排出可能に構成されている。
【0036】
そして、第1流体通流室25及び第2流体通流室26に対する流体の流入箇所と流体の排出箇所とは積層体22の上下方向で反対側となっており、第1流体通流室25及び第2流体通流室26の夫々における流体の通流方向は、積層体22の上下方向に沿う方向に構成されている。
【0037】
積層体22には、第1〜第6対向室モジュール27a〜27fの6つの対向室モジュール27が形成されている。そして、
図4及び
図5に示すように、第4対向室モジュール27dを除く、第1〜第3及び第5〜第6の5つの対向室モジュール27a〜27c,27e〜27fにおける第1流体通流室25a〜25c,25e〜25f及び第2流体通流室26a〜26c,26e〜26fの夫々に伝熱フィン23が備えられており、伝熱性能の向上を図っているとともに、積層体22の強度の向上を図っている。
【0038】
以下、第1流体通流室25及び第2流体通流室26については、第1〜第6対向室モジュール27a〜27fのどれに属するかに対応して添え字をa〜fの何れかを付記する。例えば、第1対向室モジュール27aに属する第1流体通流室25及び第2流体通流室26は、第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aとする。
【0039】
図2に示すように、吸収器8が第1対向室モジュール27aにて構成されており、溶液熱交換器11が第2対向室モジュール27bにて構成されている。また、再生器3が第3対向室モジュール27cにて構成されており、分離器9が第4対向室モジュール27dにて構成されている。さらに、精留器10が第5対向室モジュール27eにて構成されており、溶液冷却用熱交換器12が第6対向室モジュール27fにて構成されている。
【0040】
第1対向室モジュール27aは、積層体22の上下方向の下方側で且つ積層体22の左右方向の中央部に配置されている。第2対向室モジュール27bは、積層体22の上下方向の下方側で且つ積層体22の左右方向で第1対向室モジュール27aの左側に隣接して配置されている。第3対向室モジュール27cは、積層体22の上下方向で第2対向室モジュール27bに隣接する上方側で且つ積層体22の左右方向で第2対向室モジュール27bと同一位置に配置されている。第4対向室モジュール27dは、積層体22の上下方向で第1対向室モジュール27aに隣接する上方側で且つ積層体22の左右方向で第3対向室モジュール27cに隣接する中央部に配置されている。第5対向室モジュール27eは、積層体22の上下方向で第1対向室モジュール27aに隣接する上方側で且つ積層体22の左右方向で第4対向室モジュール27dに隣接する中央部に配置されている。第6対向室モジュール27fは、積層体22の上下方向の全長に亘って形成されており、積層体22の左右方向で第1対向室モジュール27a及び第5対向室モジュール27eに隣接する右側に配置されている。
【0041】
6つの対向室モジュール27をこのような配置とすることで、積層体22の左右方向に沿って吸収器8と溶液熱交換器11とを隣接して配置させ且つ分離器9と再生器3とを隣接して配置させるとともに、積層体22の上下方向に沿って吸収器8と分離器9とを隣接して配置させ且つ溶液熱交換器11と再生器3とを隣接して配置させている。また、積層体22の左右方向に沿って分離器9と精留器10とを隣接して配置されるとともに、積層体22の上下方向に沿って吸収器8と精留器10とを隣接して配置させている。さらに、溶液冷却用熱交換器12が、積層体22の上下方向の全長に亘って形成されるとともに、積層体22の左右方向に沿って吸収器8及び精留器10に隣接して配置されている。
【0042】
第1流体通流室25及び第2流体通流室26として、他の第1流体通流室25や第2流体通流室26との間で流体が通流しない完全に区画された密閉状の流体通流室を設けるだけではなく、他の第1流体通流室25や第2流体通流室26と連通接続されて、その他の第1流体通流室25や第2流体通流室26からの流体が直接流入可能な直接流入用流体通流室も設けられている。
【0043】
第1流体通流室25については、第5対向室モジュール27eの第1流体通流室25eと第6対向室モジュール27fの第1流体通流室25fとが、積層体22の上下方向において、上端部同士、及び、第1流体通流室25eの下端部と第1流体通流室25fの中間部との2箇所が連通接続されている。これにより、第1流体通流室25eを通流した流体が、積層体22の外部に排出されることなく、第1流体通流室25fに直接流入しており、第1流体通流室25fが直接流入用流体通流室として構成されている。
【0044】
第2流体通流室26については、第2対向室モジュール27bの第2流体通流室26bの左上端部と第3対向室モジュール27cの第2流体通流室26cの左下端部とが連通されている。これにより、第2流体通流室26bを通流した流体が、積層体22の外部に排出されることなく、第2流体通流室26cに直接流入しており、第2流体通流室26cが直接流入用流体通流室として構成されている。同様に、第2流体通流室26a、及び、第2流体通流室26dも、直接流入用流体通流室として構成されている。
【0045】
以下、
図2に基づいて、吸収器8、溶液熱交換器11、再生器3、分離器9、精留器10、溶液冷却用熱交換器12の夫々の機器について説明する。
【0046】
〔吸収器〕
第1対向室モジュール27aでは、蒸発器6を流出した冷媒蒸気A1及び溶液冷却用熱交換器12を流出した吸収液K1を、第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aに通流させている。これにより、第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aが、冷媒蒸気A1と吸収剤とを混合させる混合用流体通流室として構成されており、冷媒蒸気A1と吸収剤とを混合させる吸収器8が第1対向室モジュール27aにて構成されている。
【0047】
第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aに流入される冷媒蒸気A1は、第1流入部28aにより第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aの左上端部に流入されている。第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aに流入される吸収液K1は、第6対向室モジュール27fの第2流体通流室26fと第2流体通流室26aとの連通により、積層体22の外部に排出されることなく、第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aの右上端部に直接流入されている。これにより、溶液冷却用熱交換器12から吸収器8に吸収液K1を直接流入可能に構成されている。
【0048】
そして、第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aを通流した吸収液K2は、第1流体通流室25a及び第2流体通流室26aの右下端部から第1排出部29aにより積層体22の外部に排出されている。そして、吸収器8を流出した吸収液K2は、
図3に示すように、第1排出部29aに連通接続された第1外部流路30により、溶液ポンプ13に供給する吸収液K3と循環ポンプ16に供給する吸収液K4とに分配されている。
【0049】
〔溶液熱交換器〕
第2対向室モジュール27bでは、分離器9を流出した吸収液K9に精留器10を流出した吸収液Qが合流された吸収液K5を第1流体通流室25bに通流させ、且つ、吸収器8を流出した吸収液K3を第2流体通流室26bに通流させている。これにより、吸収液K5にて吸収液K3を加熱する溶液熱交換器11が、第2対向室モジュール27bにて構成されている。
【0050】
第1流体通流室25bに流入される吸収液K5は、第2流入部28bにより第1流体通流室25bの左上端部に流入されている。第1流体通流室25bを通流した吸収液K6は、第1流体通流室25bの右下端部から第2排出部29bにより積層体22の外部に排出されている。そして、その吸収液K6は、
図3に示すように、第2排出部29bに連通接続された第2外部流路31により、膨張弁15(
図3では省略)を通過させたのち第1外部流路30において循環ポンプ16の下流側の流路に合流されている。
第2流体通流室26bに流入される吸収液K3は、
図3に示すように、吸収器8を流出したのち第1外部流路30にて溶液ポンプ13に分配供給されたものであり、溶液ポンプ13で昇圧されたのち、
図2に示すように、第3流入部28cにて第2流体通流室26bの右下端部に流入されている。
【0051】
第2対向室モジュール27bでは、第1流体通流室25b及び第2流体通流室26bの夫々が、上下方向に沿って流体を通流させたのち、上端部又は下端部にて反転して上下方向に沿って流体を通流させる通路形状に形成されている。第1流体通流室25bを通流する吸収液K5の通流方向と第2流体通流室26bを通流する吸収液K3の通流方向とが逆方向に構成されており、良好な熱交換を行うことができる。
【0052】
〔再生器〕
第3対向室モジュール27cでは、エンジン1の排熱を有する加熱用流体Bを第1流体通流室25cに通流させ、且つ、溶液熱交換器11を流出した吸収液K7を第2流体通流室26cに通流させている。これにより、加熱用流体Bにて吸収液K7を加熱して吸収液を再生させる再生器3が、第3対向室モジュール27cにて構成されている。
【0053】
第1流体通流室25cに流入される加熱用流体Bは、第4流入部28dにて第1流体通流室25の左上端部に流入されている。第1流体通流室25cを通流した加熱用流体Bは、第1流体通流室25cの左下端部から第3排出部29cにより積層体22の外部に排出されている。
【0054】
第2流体通流室26cに流入される吸収液K7は、第2対向室モジュール27bの第2流体通流室26bとの連通により、第2流体通流室26bから積層体22の外部に排出されることなく第2流体通流室26cの左下端部に直接流入されている。これにより、溶液熱交換器11から再生器3に吸収液K7が直接流入可能に構成されている。また、第2流体通流室26bを通流した吸収液K7は、第2流体通流室26bの左上端部から第2流体通流室26cに直接流入されている。
【0055】
〔分離器〕
第4対向室モジュール27dでは、第1流体通流室25dと第2流体通流室26dとの間が中空空間となっており、その中空空間に流路形成部材32が配置されている。この流路形成部材32は、伝熱板19を加工することで伝熱板19に一体的に形成する、或いは、伝熱板19とは別の部材にて形成することができる。伝熱板19と別の部材にて形成する場合には、第1流体通流室25dと第2流体通流室26dとの間の中空空間に流路形成部材32を配置させて、第1区画体18と第2区画体20とで流路形成部材32を挟み込んでロウ付けするようにしている。
【0056】
第4対向室モジュール27dでは、再生器3を流出した吸収液K8を第1流体通流室25d及び第2流体通流室26dに通流させて、吸収液K8から冷媒蒸気A1を分離させている。これにより、第1流体通流室25d及び第2流体通流室26dが、流入される吸収液を吸収液と冷媒蒸気とに分離して排出させる分離用流体通流室として構成されており、吸収液K8から冷媒蒸気A1を分離させる分離器9が第4対向室モジュール27dにて構成されている。
【0057】
第1流体通流室25d及び第2流体通流室26dに流入される吸収液K8は、第3対向室モジュール27cの第2流体通流室26cと第2流体通流室26dとの連通により、第2流体通流室26cから積層体22の外部に排出されることなく、第1流体通流室25d及び第2流体通流室26dの左上端部に直接流入されている。これにより、再生器3から分離器9に吸収液K8を直接流入可能に構成されている。
【0058】
第1流体通流室25d及び第2流体通流室26dは、上方側から下方側に向けて流体を通流させたのち、その下端部で反転して左右方向に交互に通流させながら下方側から上方側に向けて流体を通流させ、さらに、その上端部で反転して上方側から下方側に向けて流体を通流させる通路形状に形成されている。そして、第1流体通流室25d及び第2流体通流室26dを通流して吸収液K8から冷媒蒸気A1が分離された吸収液K9は、第4排出部29dにて外部に排出されている。
【0059】
〔精留器〕
第5対向室モジュール27eには、冷却用流体R(例えば冷却水)を第1流体通流室25eに流入させ、且つ、分離器9を流出した冷媒蒸気A1を第2流体通流室26eに流入させている。これにより、分離器9から流出した冷媒蒸気A1の濃度を高める精留器10が、第5対向室モジュール27eにて構成されている。
【0060】
第1流体通流室25eに流入させる冷却用流体Rは、第1流体通流室25eではなく、第5流入部28eにて第6対向室モジュール27fの第1流体通流室25fの上端部に流入されている。そして、第1流体通流室25eと第1流体通流室25fとの上端部同士の連通により、第1流体通流室25fから第1流体通流室25eの上端部に流入されている。そして、第1流体通流室25eを通流した冷却用流体Rは、第1流体通流室25eの下端部と第1流体通流室25fの中間部との連通により、第1流体通流室25eから積層体22の外部に排出されることなく、第1流体通流室25fに流入されている。
【0061】
第2流体通流室26eに流入させる冷媒蒸気A1は、第2流体通流室26dとの連通により、第2流体通流室26dから積層体22の外部に排出されることなく、第2流体通流室26eの下端部に流入されている。そして、第2流体通流室26eを通流して濃度が高められた冷媒蒸気A1は、第5排出部29eにて積層体22の外部に排出されたのち、凝縮器4に供給されている。また、第2流体通流室26eを通流して凝縮された吸収液Qは、第2流体通流室26dと第2流体通流室26eとの連通により、第2流体通流室26dに流入して、吸収液K8から冷媒蒸気A1が分離された吸収液K9に合流されて吸収液K5となって第4排出部29dにより積層体22の外部に排出されている。積層体22の外部に排出された吸収液K5は、
図3に示すように、第4排出部29dに連通接続された第3外部流路33にて液面計14(
図3では省略)を通過させたのち、第3外部流路33に連通接続された第2流入部28bに供給されている。
また、第1流体通流室25eを通流する冷却用流体R(例えば冷却水)の通流方向と第2流体通流室26eを通流する冷媒蒸気A1の通流方向とが逆方向に構成されており、良好な熱交換を行うことができる。
【0062】
〔溶液冷却用熱交換器〕
第6対向室モジュール27fでは、冷却用流体Rを第1流体通流室25fに通流させ、且つ、溶液熱交換器11を流出した吸収液K6と吸収器8から循環ポンプ16にて供給された吸収液K4とが合流された吸収液K10を第2流体通流室26fに通流させている。これにより、冷却用流体Rにて吸収液K10を冷却させる溶液冷却用熱交換器12が、第6対向室モジュール27fにて構成されている。
【0063】
第1流体通流室25fに流入させる冷却用流体Rは、第5流入部28eにて第1流体通流室25fの左上端部に流入されている。そして、上述の如く、第1流体通流室25fに流入された冷却用流体Rは、第1流体通流室25fを通流するとともに、第1流体通流室25eにも流入されている。これにより、精留器10及び溶液冷却用熱交換器12に対して単一の第5流入部28eにより冷却用流体Rを流入可能に構成されている。また、第1流体通流室25fを通流した冷却用流体Rは、第1流体通流室25eからの冷却用流体Rが合流されたのち、第6排出部29fにて第1流体通流室25fの下端部から積層体22の外部に排出されている。
【0064】
第2流体通流室26fに流入させる吸収液K10は、第6流入部28fにて第2流体通流室26fの右下端部に流入されており、第2流体通流室26fを通流した吸収液K1は、第2流体通流室26aとの連通により、積層体22の外部に排出させることなく、第2流体通流室26a及び第1流体通流室25aに直接流入されている。
また、第1流体通流室25fを通流する冷却用流体R(例えば冷却水)の通流方向と第2流体通流室26fを通流する吸収液K10の通流方向とが逆方向に構成されており、良好な熱交換を行うことができる。
【0065】
〔単位追加体〕
上述の積層体22において、図示は省略するが、第1外板17と第1区画体18との間、又は、第2区画体20と第2外板21との間に、追加区画体及び追加伝熱板の単位追加体を追加して積層自在に構成されている。ここで、追加区画体は、第1区画体18や第2区画体20と同様に、複数の空間に区画自在な枠体と区画空間の夫々に配置される伝熱フィンとから構成されている。そして、追加区画体は、追加伝熱板を挟んで対向室モジュール27と対向する位置に流体を通流可能な追加流体通流室を伝熱板19に沿う方向で並ぶ形態で区画形成自在に構成されている。これにより、単位追加体を必要に応じて追加して積層させて積層体を構成することにより、求められている能力に的確に対応することができる。
【0066】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、本発明に係る吸収式冷凍機を排熱利用システムの吸収式冷凍機に適応した例を示したが、各種の吸収式冷凍機に適応することが可能である。
上記実施形態では、蒸発器から流出した冷媒を圧縮機と吸収器とに分配する形式のものを例示したが、例えば、蒸発器から流入した冷媒を圧縮機にて圧縮してから吸収器に流入させる形式のものでもよい。また、上記実施形態では、一段吸収の吸収式冷凍機としているが、二段吸収等、多段の吸収式冷凍機に適応することができる。
【0067】
(2)上記実施形態において、再生器や溶液熱交換器等を対向室モジュールにて構成するに当たり、第1流体通流室と第2流体通流室のどちらにどちらの流体を通流させるかは適宜変更可能であり、
図2に示すものに限られない。
【0068】
(3)上記実施形態では、積層体22の製造方法として、第1外板17、第1区画体18、伝熱板19、第2区画体20、第2外板21を順に積層してロウ付けにより互いを接着させて製造しているが、例えば、第1外板17、第1区画体18、伝熱板19、第2区画体20、第2外板21を順に積層してパッキン等により互いに接合することもできる。このようにパッキン等により接合すると、積層体22を分解して点検作業を行うことが可能となる。
【0069】
(4)上記実施形態では、対
向室モジュール27を6つ形成しているが、対
向室モジュール27の数については少なくとも4つ以上であればよく、対
向室モジュール27の数は適宜変更が可能である。