特許第5722679号(P5722679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722679ワイヤレス給電装置、ワイヤレス受電装置およびワイヤレス給電システム、ワイヤレス給電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722679
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電装置、ワイヤレス受電装置およびワイヤレス給電システム、ワイヤレス給電方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
   H02J17/00 X
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-68846(P2011-68846)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2011-211895(P2011-211895A)
(43)【公開日】2011年10月20日
【審査請求日】2013年11月14日
(31)【優先権主張番号】61/318,202
(32)【優先日】2010年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/069,075
(32)【優先日】2011年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】古川 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】圓道 祐樹
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−261104(JP,A)
【文献】 特開2008−053768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置から送出される電力信号を受信するワイヤレス受電装置であって、
前記電力信号は、ある送信側コードに応じた波形を有する変調信号を用いて周波数変調または位相変調された電界、磁界、電磁界のいずれかを含んでおり、
前記ワイヤレス受電装置は、
前記電力信号を受信するための受信コイルと、
前記受信コイルとともに共振回路を形成する共振用キャパシタと、
前記給電装置で使用された送信側コードに対応すべき受信側コードから導かれる波形にしたがって前記共振回路のインピーダンスを変化させ、前記共振回路を前記電力信号と共振させる制御部と、
を備えることを特徴とするワイヤレス受電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記送信側コードに対応した前記受信側コードをあらかじめ保持していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス受電装置。
【請求項3】
前記給電装置は、前記送信側コードに対応した前記受信側コードを前記電力信号とともに送出し、
前記制御部は、前記給電装置から前記受信側コードを受信し、受信したコードにもとづいて前記共振回路のインピーダンスを変化させることを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス受電装置。
【請求項4】
第1伝送チャンネルを介して、キーコードを受信する第1受信部と、
第2伝送チャンネルを介して、前記キーコードに応じて暗号化された暗号化受信側コードを受信する第2受信部と、
前記第1受信部にて受信した前記キーコードを用いて、前記第2受信部にて受信した前記暗号化受信側コードを復号し、前記受信側コードを生成するデコーダと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス受電装置。
【請求項5】
前記第1伝送チャンネルは、インターネット網であり、
前記第2伝送チャンネルは、放送網であることを特徴とする請求項4に記載のワイヤレス受電装置。
【請求項6】
放送波によりブロードキャストされる前記受信側コードを受信する受信部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス受電装置。
【請求項7】
所定のインターネットサイトにアクセスすることにより、前記受信側コードを取得する受信部をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のワイヤレス受電装置。
【請求項8】
前記電力信号はパルス変調されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のワイヤレス受電装置。
【請求項9】
ワイヤレス受電装置に対して電力信号を送出するワイヤレス給電装置であって、
前記ワイヤレス受電装置との間であらかじめ取り決められた送信側コードに応じた波形を有する変調信号を用いて周波数変調または位相変調された電気信号を生成する変調器と、
前記電気信号を送信コイルから送出し、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を生成する送信部と、
を備え、
前記ワイヤレス受電装置は、
前記電力信号を受信するための受信コイルと、
前記受信コイルとともに共振回路を形成する共振用キャパシタと、
前記給電装置で使用された送信側コードに対応すべき受信側コードから導かれる波形にしたがって前記共振回路のインピーダンスを変化させ、前記共振回路を前記電力信号と共振させる制御部と、
を備えるものであることを特徴とするワイヤレス給電装置。
【請求項10】
請求項9に記載のワイヤレス給電装置と、
請求項1に記載のワイヤレス受電装置と、
を備えることを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項11】
所定の周期で更新される前記送信側コードを生成し、前記送信側コードに対応する受信側コードであって、所定のキーコードにもとづいて暗号化された暗号化受信側コードを生成するとともに、第1伝送チャンネルを介して前記ワイヤレス受電装置に前記キーコードを送信する暗号管理サーバーと、
第2伝送チャンネルを介して前記暗号化受信側コードを前記ワイヤレス受電装置に送信するブロードキャスト局と、
をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項12】
放送波により前記受信側コードを前記ワイヤレス受電装置にブロードキャストするブロードキャスト局をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項13】
インターネットサイトであって、そのサイトにアクセスした前記ワイヤレス受電装置に対して前記受信側コードを配信するインターネットサイトをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項14】
給電装置において、受電装置との間であらかじめ取り決められた送信側コードに応じた波形を有する変調信号を用いて周波数変調または位相変調された電気信号を生成するステップと、
給電装置において、前記電気信号を送信コイルから送出し、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を生成するステップと、
受電装置において、受信コイルを用いて前記電力信号を受信するステップと、
受電装置において、前記送信側コードに対応すべき受信側コードから導かれる波形にしたがって、前記受信コイルおよび共振用キャパシタが形成する共振回路のインピーダンスを変化させ、前記共振回路を前記電力信号と共振させるステップと、
を備えることを特徴とする給電方法。
【請求項15】
所定の周期で更新される前記送信側コードを生成するとともに、前記送信側コードに対応する前記受信側コードであって、所定のキーコードにもとづいて暗号化された暗号化受信側コードを生成するステップと、
前記キーコードを第1伝送チャンネルを介して前記受電装置に送信するステップと、
前記暗号化受信側コードを第2伝送チャンネルを介して前記受電装置に送信するステップと、
前記受電装置において、前記キーコードを用いて前記暗号化受信側コードを復号し、前記受信側コードを生成するステップと、
をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載の給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末やノート型コンピュータなどの電子機器、あるいは電気自動車に対する給電技術として、ワイヤレス(非接触)電力伝送が着目されている。ワイヤレス電力伝送は、主に電磁誘導型、電波受信型、電場・磁場共鳴型、の3つに分類される。
【0003】
電磁誘導型は短距離(数mm以内)において利用され、数百kHz以下の帯域で数百Wの電力を伝送することができる。電力の利用効率は60〜98%程度となっている。
数m以上の比較的長い距離に給電する場合、電波受信型が利用される。電波受信型では、中波〜マイクロ波の帯域で数W以下の電力を伝送することができるが、電力の利用効率は低い。数m程度の中距離を、比較的高い効率で給電する手法として、電場・磁場共鳴型が着目されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A. Karalis, J.D. Joannopoulos, M. Soljacic、「Efficient wireless non-radiative mid-range energy transfer」、ANNALS of PHYSICS Vol. 323, pp.34-48, 2008, Jan.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
将来ワイヤレス給電が普及すると、不特定多数のユーザが、ある給電装置から給電を受ける状況が発生しうる。このような状況では、盗電などを防止するために、特定のユーザや機器のみに選択的に給電可能なシステムが必要となる。
【0006】
本発明は係る状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、特定のユーザのみに選択的に給電可能な給電技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、給電装置から送出される、ある送信側コードに応じて周波数変調または位相変調された電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を受信するワイヤレス受電装置に関する。このワイヤレス受電装置は、電力信号を受信するための受信コイルと、受信コイルとともに共振回路を形成する共振用キャパシタと、給電装置で使用された送信側コードと対応すべき受信側コードにもとづいて共振回路のインピーダンスを変化させ、共振回路を電力信号と共振させる制御部と、を備える。
【0008】
給電装置側の送信コイル(アンテナ)と、受電装置側の受信コイルは、結合度が低いトランスを形成しているとみなすことができる。この場合に、受電装置のインピーダンスを共振条件を満たすように制御すると、調相結合トランスの原理によって結合度が増加する。この態様では、受電装置における共振条件は、送信側コードにしたがって時々刻々と変化し、受電装置側において、送信側コードに対応した正しい送信側コードを知り得た場合にのみ、共振条件を満たすことができ、共振回路は大電力を効率的に受信することができる。これにより特定のユーザのみに選択的に給電することができる。
一般的な共振は、複数サイクルにまたがるL−C間のエネルギー授受を意味する場合があるが、本発明では1サイクルのL−C間の完全なエネルギー授受を基本にしている点で特徴的である。また、エネルギーを授受するものはパッシブなインダクタLおよびキャパシタCに限らず、アクティブな回路、たとえばジャイレータ(Gyrator)などを用いてもよい。
【0009】
制御部は、給電装置で使用された送信側コードと対応した受信側コードをあらかじめ保持していてもよい。
【0010】
給電装置は、送信側コードに対応した受信側コードを電力信号とともに送出してもよい。制御部は、給電装置から受信側コード受信し、受信したコードにもとづいて共振回路のインピーダンスを変化させてもよい。
【0011】
電力信号はパルス変調されていてもよい。パルス変調は、パルス周波数変調、パルス密度変調、パルス幅変調などを含む。
【0012】
本発明の別の態様は、ワイヤレス受電装置に対して電力信号を送出するワイヤレス給電装置に関する。このワイヤレス給電装置は、ワイヤレス受電装置との間であらかじめ取り決められた送信側コードに応じて周波数変調または位相変調された電気信号を生成する変調器と、電気信号を送信コイルから送出し、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を生成する送信部と、を備える。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、ワイヤレス給電システムである。このワイヤレス給電システムは、上述のいずれかの態様のワイヤレス給電装置と、上述のいずれかの態様のワイヤレス受電装置と、を備える。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、給電方法である。この方法は、給電装置において、受電装置との間であらかじめ取り決められた送信側コードに応じて周波数変調または位相変調された電気信号を生成するステップと、給電装置において、電気信号を送信コイルから送出し、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む電力信号を生成するステップと、受電装置において、受信コイルを用いて電力信号を受信するステップと、受電装置において、送信側コードに対応すべき受信側コードにもとづいて、受信コイルおよび共振用キャパシタが形成する共振回路のインピーダンスを変化させ、共振回路を電力信号と共振させるステップと、共振回路が受信した信号を、電力保存用キャパシタに保持するステップと、を備える。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のある態様によれば、特定のユーザ、機器のみに選択的に給電できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係るワイヤレス給電システムの構成を示すブロック図である。
図2】ワイヤレス受電装置の具体的な構成例を示す回路図である。
図3】ワイヤレス給電システムの動作を示すタイムチャートである。
図4】ワイヤレス給電システムの別の構成例を示すブロック図である。
図5】ワイヤレス給電システムの別の変形例を示す図である。
図6図6(a)〜(c)は、ワイヤレス受電装置の変形例を示す図である。
図7図7(a)、(b)は、ワイヤレス受電装置の変形例を示す図である。
図8】実施の形態に係るワイヤレス給電システムを示すブロック図である。
図9】第1の変形例に係るワイヤレス給電システムを示すブロック図である。
図10】第2の変形例に係るワイヤレス給電システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0019】
図1は、実施の形態に係るワイヤレス給電システム100の構成を示すブロック図である。ワイヤレス給電システム100は、ワイヤレス給電装置200およびワイヤレス受電装置300を備える。はじめにワイヤレス給電装置200の構成を説明する。
【0020】
ワイヤレス給電装置200は、ワイヤレス受電装置300に対して電力信号を送出する。ワイヤレス給電システム100では、電力信号S1として電波になっていない電磁波の近傍界(電界、磁界、あるいは電磁界)が利用される。
【0021】
ワイヤレス給電装置200は、変調器10および送信コイル16を備える。ワイヤレス給電装置200には、あるコード(送信側コードと称する)CODE1が用意されている。変調器10は、送信側コードCODE1に応じた変調信号を用いて周波数変調もしくは位相変調された電気信号S2を発生する。本実施の形態において電気信号S2はパルス信号である。この場合、変調方式としては、パルス周波数変調、パルス幅変調、パルス密度変調、パルス位置変調などが利用可能である。パルス信号を利用した場合、ハイレベルとローレベルのスイッチングのみで電気信号S2を生成できる。たとえば電気信号S2の周波数は、数百kHz〜数MHzの間で適宜選択される。
【0022】
変調器10は、変調信号発生部12および信号発生器14を備える。たとえば信号発生器14は、ハイレベルまたはローレベルの電圧を発生するドライバである。変調信号発生部12は、送信側コードCODE1にもとづいた変調信号S3を発生し、この変調信号S3に応じて信号発生器14をスイッチングする。この変調信号S3は1/0のビット列である。その結果、信号発生器14からパルス状の電気信号S2を生成する。変調器10として、任意波形発生器を利用してもよい。
【0023】
送信コイル16は、アンテナであって、変調器10が発生した電気信号S2を、電界、磁界、電磁界のいずれかを含む近傍界(電力信号)S1として空間に放射する。
【0024】
以上がワイヤレス給電装置200の構成である。続いてワイヤレス受電装置300の構成を説明する。
ワイヤレス受電装置300は、ワイヤレス給電装置200から送出される、ある送信側コードCODE1に応じて周波数変調または位相変調された電力信号S1を受信する。ワイヤレス受電装置300は、受信コイル20、共振用キャパシタ22、制御部26、整流回路28、電力保存用キャパシタC1を備える。
【0025】
受信コイル20は、送信コイル16と近接した状態で、電力信号S1を受信する。共振用キャパシタ22は、受信コイル20とともにLC共振回路24を形成する。共振回路24は、電力信号S1に応じた電流(電気信号)I1を発生させる。電力保存用キャパシタC1は、共振回路24が発生した電流I1によって充電され、受信した電力信号S1のエネルギーを蓄える。電力保存用キャパシタC1と共振回路24の間には、一般的な整流回路28が設けられる。
【0026】
制御部26は、ある受信側コードCODE2にもとづいて、共振回路24のインピーダンス、言い換えれば共振周波数fr=1/{2π・√(LC)}を変化させる。共振回路24の共振周波数frを可変とするために、共振用キャパシタ22の容量値Cと、受信コイル20のインダクタンス値Lの少なくとも一方は可変に構成される。図1では、共振用キャパシタ22が可変キャパシタであり、制御部26は共振用キャパシタ22の容量値を変化させる。共振周波数frの切りかえは、共振回路24に流れる電流がゼロとなるタイミング、言い換えれば電圧が最大となるタイミングで行うことが望ましい。それにより共振の乱れを好適に抑制することができる。
【0027】
受信コイル20および共振用キャパシタ22を電力信号S1の周波数(送信周波数)に共振させることにより、ワイヤレス給電装置200からワイヤレス受電装置300に、大電力を供給することができる。共振回路24に蓄えられたエネルギー(電力)は、負荷RLに供給される。負荷RLは特に限定されない。
【0028】
図2は、ワイヤレス受電装置300の具体的な構成例を示す回路図である。送信コイル16からは、周波数変調によって1MHzと0.5MHzとでスイッチングする電力信号S1が伝送される。ワイヤレス受電装置300において、共振回路24の共振周波数は2段階で切りかえ可能となっており、共振用キャパシタ22は、複数のキャパシタC2〜C2と、スイッチSW1を有する。キャパシタC2とスイッチSW1は、キャパシタC2と並列な経路に、直列に設けられている。スイッチSW1は、制御部26が生成した制御信号S4に応じてオンオフが切りかえられる。回路図中には、容量値、インダクタンス値を例示している。スイッチSW1がオンのとき、共振周波数frは0.5MHzとなり、スイッチSW1がオフのとき、共振周波数frは1MHzとなる。図2には、直列抵抗成分R3も示されている。
【0029】
以上がワイヤレス受電装置300の構成である。続いてワイヤレス給電システム100の動作を説明する。
【0030】
図3は、ワイヤレス給電システム100の動作を示すタイムチャートである。図3は上から順に、送信コイル16と受信コイル20の結合係数を0.8と仮定した場合の、ワイヤレス給電装置200側の電気信号S2、ワイヤレス受電装置300側の電流波形I1、制御信号S4、およびスイッチSW1の一端の電圧S5のシミュレーション波形を示す。送信側の電気信号S2は、周期1μs(1MHz)と周期2μs(0.5MHz)のパルス信号の繰り返しとなっている。実際には、電気信号S2は送信側コードCODE1に応じて、より複雑に変調されているが、図3では理解の容易のために簡潔化して示している。
【0031】
制御信号S4は、受信側コードCODE2に応じたパルス信号である。図3のタイムチャートは、受信側コードCODE2が送信側コードCODE1に対応している場合を示す。この場合、共振回路24の共振周波数は、電力信号S1の周波数もしくは位相の変調に追従して変化するため、調相結合トランスの効果によって、受信コイル20は電力信号S1を効率よく吸収することができ、電力保存用キャパシタC1に蓄えることができる。
【0032】
もし、受信側コードCODE2が送信側コードCODE1と対応する正しいコードでなければ、共振周波数frを電力信号S1の周波数変化に追従させることができないため、給電効率は低下する。ワイヤレス給電装置200とワイヤレス受電装置300の関係は、変調器と復調器の関係とみなすことができ、受信側コードCODE2は、復調を行うためのキーとなる。
【0033】
正しい受信側コードCODE2は、受電を許可されたワイヤレス受電装置300に対して、システムの管理者があらかじめ発行しておいてもよい。あるいは、給電開始に先立ち、ワイヤレス給電装置200とワイヤレス受電装置300の間でハンドシェイクおよび認証を行い、ワイヤレス給電装置200とワイヤレス受電装置300との間で、同一のコードを共有するように、一方から他方へと通知する構成としてもよい。
【0034】
なおワイヤレス給電システム100における周波数変調の変調度が小さいと、コードが正しくなくても、中心周波数が一致していればある程度の給電(盗電)が可能となってしまい、これは望ましくない。したがって変調度は、コードが正しくないときには、ワイヤレス受電装置300側において十分な電力が得られないような値に設定することが好ましい。
【0035】
以上がワイヤレス給電システム100の動作である。実施の形態に係るワイヤレス給電システム100によれば、電力そのものをコード化し、伝送することができる。そして、本来予定していないワイヤレス受電装置300に対して給電されるのを防止することができ、特定のユーザ、機器のみに選択的に給電を行うことができる。
【0036】
ワイヤレス給電システム100は、給電に対して課金するシステムにおいて有用である。この場合、料金を支払ったユーザに対してのみ、正しい受信側コードCODE2を通知すればよい。あるいは、料金を支払ったユーザのワイヤレス受電装置300に固有の受信側コードCODE2と対応する送信側コードCODE1を用いて電力信号S1を生成してもよい。
【0037】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0038】
図4は、ワイヤレス給電システムの別の構成例を示すブロック図である。ワイヤレス給電装置200は、複数の給電ユニット200〜200を備える。給電ユニット200〜200それぞれの構成は、図1のワイヤレス給電装置200と同様である。
【0039】
給電ユニット200〜200は空間的に異なる位置に配置される。そして、給電ユニット200〜200は異なる周波数の電力信号S1〜S1を送出するように構成される。さらに給電ユニット200〜200は時分割的にアクティブとなる。すなわち、あるタイムスロットでは給電ユニット200が、続くタイムスロットでは別の給電ユニット200がアクティブとなり、時分割的に異なる周波数の電力信号S1が発生する。なお給電ユニットがアクティブとなる順番や周期は、上述の送信側コードCODE1にもとづいている。
【0040】
図4のワイヤレス給電装置200aによれば、図1のワイヤレス給電装置200と同様に、電力をコード化して送信することができる。また、空間的に異なる位置に複数の給電ユニットを配置するため、送信側において、空間的な電力集中を抑制することができる。
一方ワイヤレス受電装置300においては、正しい受信側コードCODE2を知っていれば、ワイヤレス受電装置300の受信コイル20と、複数の給電ユニット200〜200それぞれの送信コイル16との間で、調相結合トランスの原理により結合係数が高い状態を実現することができ、エネルギーを効率的に吸収することができる。この場合、各周波数のエネルギー漏れは最小となるであろう。
【0041】
図5は、ワイヤレス給電システムの別の変形例を示す図である。ワイヤレス給電装置200とワイヤレス受電装置300の間には、伝送経路202が設けられる。伝送経路202は、ワイヤレス給電装置200が発生した電力信号S1を空間的に分岐、分散して伝送する。このワイヤレス給電システム100bによれば、エネルギー集中を負荷端(ワイヤレス受電装置300)の近傍に制限することができる。
【0042】
図6(a)〜(c)は、ワイヤレス受電装置300の変形例を示す図である。
図6(a)において、共振用キャパシタ22aは、容量値がバイナリで重み付けされたキャパシタ8C、4C、2C、Cおよびそれらに対応するスイッチSW〜SWを含む容量セルとして構成される。図6(a)の共振用キャパシタ22aによれば、共振周波数frを多段階(たとえば16段階)で切りかえることが可能となる。
【0043】
図6(b)において共振用キャパシタ22は、アンプ30とキャパシタCの組み合わせで構成される。アンプ30は、利得−Aの反転アンプであり、キャパシタCは、アンプ30のフィードバック経路に設けられる。共振用キャパシタ22bの実効的な容量値C’は、ミラー効果によって、C’=C×(1+A)となる。したがって、アンプ30の利得を変化させることにより、共振用キャパシタ22bの実効的な容量を切りかえることができる。アンプ30の構成は特に限定されないが、たとえばR−2Rネットワークを用いた負帰還係数の制御や、スイッチドキャパシタによる制御が利用できる。
【0044】
図6(c)は、受信コイル20のインダクタンス値を可変とする変形例である。図6(c)において、受信コイル20は、複数のコイルL3〜L3、複数のスイッチSW2〜SW2を備える。コイルおよびスイッチの個数は、インダクタンス値の切りかえ段数に応じて決めればよい。また、コイルL3〜L3は、単一のコイルに複数のタップを設けることで形成してもよいし、別々のコイルを接続して構成してもよい。
【0045】
図1図2では、受信コイル20の両端から電力を取り出す構成を説明したが本発明はそれに限定されない。図7(a)、(b)は、ワイヤレス受電装置の変形例を示す図である。図7(a)のワイヤレス受電装置300aは、共振回路24とは独立して、受信コイル20と密に結合された電力取り出し用の補助コイル21を備える。この構成では、補助コイル21によって共振回路24に蓄えられたエネルギーが取り出され、整流回路28および電力保存用キャパシタC1へと供給される。
【0046】
図7(b)のワイヤレス受電装置300bにおいて、受信コイル20にはタップTP
が設けられている。この構成では受信コイル20のタップから共振回路24に蓄えられたエネルギーが取り出され、整流回路28および電力保存用キャパシタC1へ供給される。
【0047】
実施の形態では、電気信号S2がパルス信号である場合を説明したが、正弦波(三角関数波)であってもよい。この場合、直交変調器や一般的な周波数変調器、位相変調器を利用することができる。また電気信号S2に対する変調方式は、周波数変調には限定されず、位相変調などを用いてもよい。
【0048】
続いて、ワイヤレス受電装置300に、正しい受信側コードCODE2を配信するための技術を説明する。図8は、実施の形態に係るワイヤレス給電システム100aを示すブロック図である。
【0049】
ワイヤレス給電システム100aは、ワイヤレス給電装置200、ワイヤレス受電装置300aに加えて、暗号管理サーバー400、第1ネットワーク網(第1伝送チャンネル)402、ブロードキャスト局404、第2ネットワーク網(第2伝送チャンネル)406を備える。
【0050】
暗号管理サーバー400とワイヤレス給電システム100の間、暗号管理サーバー400とワイヤレス給電装置200の間はそれぞれ、第1ネットワーク網402を介して接続されている。本実施の形態では、第1ネットワーク網402はインターネット網である。
【0051】
暗号管理サーバー400は、ワイヤレス給電システム100に対して送信側コードCODE1を送信する。暗号管理サーバー400は、送信側コードCODE1を定期的に更新する。更新の周期は、悪意の利用者が、送信側コードCODE1を解読するのに要する時間よりも短いことが好ましい。
【0052】
また暗号管理サーバー400は、所定のキーコードKEY_CODEにもとづき、送信側コードCODE1に対応する受信側コードCODE2を暗号化する。暗号化の方式は特に限定されない。暗号化された受信側コードCODE2を、暗号化受信側コードCODE2_ENCと称する。ブロードキャスト局404は、暗号化受信側コードCODE2_ENCを、第2ネットワーク網406を介してブロードキャストする。当然ながら、暗号化受信側コードCODE2_ENCは、送信側コードCODE1と同じ周期で更新される。第2ネットワーク網406は、たとえばテレビやラジオなどの放送波を利用してもよいし、ワイヤレスLAN(Local Area Network)を利用してもよいし、その他のネットワークを利用してもよい。
【0053】
ワイヤレス受電装置300aは、図1の構成に加えて、第1受信部50、第2受信部52、デコーダ54を備える。第1受信部50は、第1ネットワーク網402を介して、キーコードKEY_CODEを受信する。キーコードKEY_CODEの伝送には、安全なチャンネル、たとえば電子メールを利用してもよい。あるいはワイヤレス受電装置300aのユーザが、インターネット上の所定のホームページにアクセスすることによりキーコードKEY_CODEを取得してもよい。つまりキーコードKEY_CODEは、電力信号S1の受電を許可すべきワイヤレス受電装置300aに対してのみ配信されればよく、配信方法は限定されない。
【0054】
第2受信部52は、第2ネットワーク網406を介してブロードキャストされる暗号化受信側コードCODE2_ENCを受信する。デコーダ54は、キーコードKEY_CODEを用いて暗号化受信側コードCODE2_ENCを復号(デクリプト)し、受信側コードCODE2を生成する。制御部26は、復号された受信側コードCODE2にもとづき共振回路24の共振周波数を制御する。
【0055】
このワイヤレス給電システム100aによれば、送信側コードCODE1を所定の周期で更新しつつ、特定のワイヤレス受電装置300のみに選択的に給電することができる。 さらに図8のワイヤレス給電システム100aでは、電力信号S1を送信側コードCODE1にもとづいて暗号化し、さらに受信側コードCODE2をキーコードKEY_CODEにもとづいて暗号化しているため、システムの堅牢性を高めることができる。
【0056】
図8のワイヤレス給電システム100aにおいて、第1ネットワーク網402を放送網、第2ネットワーク網406をインターネット網としてもよい。
【0057】
図8のワイヤレス給電システム100aでは、2つのネットワーク網402、404を利用するシステムを説明したが、ひとつのネットワーク網のみを用いてもよい。図9は、第1の変形例に係るワイヤレス給電システム100bを示すブロック図である。インターネットサイト401には、最新の受信側コードCODE2がアップロードされる。ワイヤレス受電装置300bのユーザが、そのインターネットサイト401にアクセスすることにより、受信部51に正しい最新の受信側コードCODE2が配信される。
【0058】
このワイヤレス給電システム100bでは、インターネットサイト401にアクセスしているユーザが利用するワイヤレス受電装置300bに対してのみ選択的に給電を行うことができる。ワイヤレス受電装置300bのユーザは、給電のための受信側コードCODE2を取得することをインセンティブとしてインターネットサイト401にアクセスすることになる。インターネットサイト401の管理者は、ワイヤレス給電をインセンティブとして、自らが運営するインターネットサイト401のアクセス数を増加させることができる。
【0059】
図10は、第2の変形例に係るワイヤレス給電システム100cを示すブロック図である。図10のワイヤレス給電システム100cは、図9のワイヤレス給電システム100bのインターネットサイト401に代えて、ブロードキャスト局403を備える。ブロードキャスト局403は、コンテンツと付随して、正しい最新の受信側コードCODE2を配信する。
【0060】
このワイヤレス給電システム100cでは、ブロードキャスト局403からの放送を受信しているユーザが利用するワイヤレス受電装置300cに対してのみ選択的に給電を行うことができる。ワイヤレス受電装置300cのユーザは、給電のための受信側コードCODE2を取得することをインセンティブとして、放送を受信することになる。ブロードキャスト局403の運営者は、ワイヤレス給電をインセンティブとして、自らが運営するブロードキャスト局の視聴者数を増加させることができる。
【0061】
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
100…ワイヤレス給電システム、200…ワイヤレス給電装置、300…ワイヤレス受電装置、10,12…変調器、14…信号発生器、16…送信コイル、20,20…受信コイル、21…補助コイル、22…共振用キャパシタ、24…共振回路、26…制御部、28…整流回路、C1…電力保存用キャパシタ、RL…負荷回路、S1…電力信号、S2…電気信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10