(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の固定手段と前記第2の固定手段との少なくとも一方は、前記基台側に設けられ、前記固定子又は前記回転子に設けられた係合部と係合することによって、前記固定子又は前記回転子を固定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかの1項に記載の工作機械。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の工作機械は、工具の向きを水平面内で回転させるモータと工具を回転駆動するモータとを備え、それぞれのモータの取付けや配線も必要となるので、部品点数が多く、機構が複雑となり工作機械全体が大型化したり製造コストも高くなる。組み付け工数の低減や保守の容易さの観点からは、少ない部品点数で装置が構成されることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、工具を回転可能に支持する支持部が前記工具の向きを変更できるように基台に回転可能に取付けられた工作機械であって、部品点数が少ない工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る工作機械は、
工具を回転可能に支持する支持部が
ワークに対する前記工具の向きを変更できるように基台に回転可能に取付けられた工作機械であって、
前記支持部に固定された固定子と、前記工具を回転させる回転子とを有し、前記固定子と前記回転子とが相対的に回転するモータと、
前記回転子を前記基台に対して回転不能に固定する第1の固定手段と、
前記固定子を前記基台に対して回転不能に固定する第2の固定手段と、
を備え、
前記第1の固定手段が前記回転子を固定し、前記第2の固定手段が前記固定子を固定していない場合に
、前記回転子と前記固定子とが相対的に回転
すると、前記固定子
の回転に伴って前記支持部が前記基台に対して回転
し、前記支持部を前記基台に対して所望の回転位置に至らせることができ、
前記第2の固定手段が前記固定子を固定し、前記第1の固定手段が前記回転子を固定していない場合に
、前記回転子と前記固定子とが相対的に回転
すると、前記回転子
の回転に伴って前記工具が回転
して、前記回転位置で固定された前記支持部に支持された前記工具によって前記ワークを加工することができる、
ことを特徴とする。
【0007】
また、前記モータは、前記支持部内に配置され、前記固定子が前記支持部に直接に固定されてもよい。
【0008】
さらに、前記支持部は、前記工具の回転軸が水平となるよう該工具を支持し、鉛直方向回りに回転可能に前記基台に取付けられてもよい。
【0009】
また、前記第1の固定手段と前記第2の固定手段との少なくとも一方は、前記基台側に設けられ、前記固定子又は前記回転子に設けられた係合部と係合することによって、前記固定子又は前記回転子を固定するものでもよい。
【0010】
さらに、前記第1の固定手段と前記第2の固定手段との少なくとも一方は、摩擦力によって、前記固定子又は前記回転子を固定するブレーキでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る工作機械によれば、工具を回転可能に支持する支持部が前記工具の向きを変更できるように基台に回転可能に取付けられた工作機械の部品点数が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、適宜、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る工作機械20を側面から見た様子を模式的に示す図である。実施形態の工作機械20は、被加工物(ワーク)Wを加工する多機能旋盤として構成されている。工作機械20は、図示するように、工作機械20全体の台であるベッドSと、ワークWを保持して回転させるワーク保持部22と、ワークWを加工するための複数の工具を有する工具台30を備える。以下の説明では、鉛直方向を「Y軸方向」といい、ワークの中心線に沿った水平方向を「Z軸方向」といい、Z軸方向に垂直な水平方向を「X軸方向」という。
【0014】
ワーク保持部22は、ベッドSに固定されたZ軸方向に伸びるレール23と、ベッドSに内蔵されるよう支持された軸受24と、軸受24に軸支されてZ軸方向に伸びるボールねじ25と、ワークWを保持するワーク保持機構26と、ボールねじ25を回転させるワーク移動用モータ29と、を備える。ワーク保持機構26は、レール23と係合するスライダ27や、ボールねじ25と嵌合するナット28を備え、ワークWを保持するチャックとチャックで保持したワークWを回転させるワーク回転用モータとを内蔵する(図示せず)。ワーク保持部22では、ワーク移動用モータ29がボールねじ25を回転させることにより、ボールねじ25と嵌合するナット28が移動し、ワーク保持機構26がレール23に沿ってZ軸方向に移動する。したがって、ワーク保持部22では、ワークWをチャックで保持してワーク回転用モータによって回転させながら、ワークWをZ軸方向に移動させることができる。
【0015】
工具台30は、ベッドSに固定され、ワークWを加工するための複数の工具を備えている。工具台30は、ベッドSに固定された固定台31と、固定台31に取付けられたX軸移動部34と、X軸移動部34に取付けられたY軸移動部40(
図1中、破線で囲まれた部位)とを備える。
【0016】
固定台31は、ベッドSに固定され、X軸方向(ワークWが移動可能な方向と垂直な水平方向)に伸びるレール32と、Z軸方向に貫通する空洞部に取付けられた中空のフランジ33aと、フランジ33aの内面に取付けられたガイドブッシュ33bとを有する。ガイドブッシュ33bは、ワークWの保持や移動を補助するものであり、フランジ33aやガイドブッシュ33bは、加工するワークWに合わせて適宜変更することができる。また、固定台31は、X軸移動部34を移動させるための図示しないX軸移動機構を備えている。X軸移動機構は、例えば上述したワーク保持機構26をZ軸方向に移動させる機構と同様な機構とすることができる。
【0017】
X軸移動部34は、固定台31のレール32に係合するスライダ35と、内蔵された軸受36と、軸受36に軸支されてY軸方向(鉛直方向)に伸びるボールねじ37と、ボールねじ37を回転させるY軸移動用モータ38と、を有する。X軸移動部34は、固定台31に設けられたX軸移動機構(図示せず)によってレール32上をX軸方向に移動する。
【0018】
Y軸移動部40は、X軸移動部34のY軸方向に伸びるボールねじ37と係合するナット41を備え、Y軸移動用モータ38によってボールねじ37が回転されることにより、Y軸方向に移動する。なお、Y軸移動部40は、X軸移動部34に取付けられているから、X軸移動機構によってX軸移動部34がX軸方向に移動することでY軸移動部40やY軸移動部40に備えられた複数の工具もX軸方向に移動する。
図2にY軸移動部40の斜視図を示し、
図3にY軸移動部をZ軸方向(
図1中右側)から見た図を示す。なお、
図2および
図3では、ワーク保持部22は、紙面奥側に位置することになる(図示せず)。Y軸移動部40は、
図2および
図3に示すように、中央にZ軸方向(ワークWが移動する方向)に貫通する空洞が形成された直方体状の基台42に複数の工具が取付けられて構成されている。Y軸移動部40は、X軸移動部34に取付けられた基台42と、基台42の下方に設けられた非駆動工具部44と、先端がX軸方向に(基台42の空洞部側に)向くように非駆動工具部44より上方に設けられた回転工具部46と、水平方向で工具の向きを変更可能なB軸回転工具部50と、を備える。
【0019】
非駆動工具部44は、基台42の下方の左右に設けられた複数の工具保持部にバイトやドリルなどの非駆動工具Tsが保持されて構成される。実施形態では、非駆動工具Tsとして、基台42の一方側(
図2及び
図3中左側)に5つのバイトを取付けることができ、他方側(
図2及び
図3中右側)に3つのバイトと4つのドリルを取付けることができるよう構成されている。複数のバイトは、先端が基台42の空洞部(中央)側に向くように長手方向をX軸方向に沿って配置され、Y軸方向に櫛状に並べられて設けられている。複数のドリルは、先端がワーク保持部22側に向くように長手方向をZ軸方向に沿って配置され、Z軸方向に見て2行2列に並べられて設けられている。
【0020】
回転工具部46は、非駆動工具部44の上方で、
図2及び
図3中左側に設けられ、複数の回転工具Trと、複数の回転工具Trを駆動する回転工具用モータ47とを備える。回転工具Trは、先端が基台42の中央側を向くように長手方向をX軸方向に沿って配置され、実施形態では、3つの回転工具TrがY軸方向に櫛状に並べられて設けられている。回転工具Trは、自身が回転することでワークWを加工する工具として、例えば、ドリルやタップ,フライスなどを用いることができる。
【0021】
B軸回転工具部50は、非駆動工具部44の上方に設けられ、複数のB軸回転工具Tbを備える。
図4に、B軸回転工具部50周辺の断面図を示す。B軸回転工具部50は、Y軸移動部40の基台42に取付けられたB軸回転部(本実施形態における支持部)52と、B軸回転部52に収容されたインナーモータ54と、B軸回転部52に支持された複数のB軸回転工具Tbと、インナーモータ54からの動力をB軸回転工具Tbに伝達するギヤ機構56と、Y軸移動部40の基台42に支持された固定機構60と、を備える。
【0022】
B軸回転部52は、Y軸移動部40の基台42に軸受42aによってY軸周りに回転可能に取付けられている。B軸回転部52は、基台42に支持されてインナーモータ54を収容するモータ収容部52aと、モータ収容部52aの下側で水平方向に延出するクランク部52bと、クランク部52bの下側で複数のB軸回転工具Tbが取付けられる工具取付部52cを有する。工具取付部52cは、先端の向きが水平方向となるようにB軸回転工具Tbが取付けられ、実施形態では、同じ高さで先端の向きが180度異なるように配置される2つ1組のB軸回転工具TbがY軸方向に櫛状に3組把持できるように構成されている。B軸回転部52には、出力軸55が鉛直方向となるようにインナーモータ54が収容されている。インナーモータ54は、同期電動機や誘導電動機などの周知のモータで構成され、出力軸55に連結されたロータ54aとステータ54bとが相対的に回転することによって、駆動し、動力を出力する。インナーモータ54は、出力軸55がギヤ機構56を介してB軸回転工具Tbに接続されており、ステータ54bがB軸回転部52に直接に連結されている。つまり、インナーモータ54は、ロータ54aや出力軸55が回転することによってB軸回転工具Tbが回転し、ステータ54bが回転することによってB軸回転部52が回転するように設けられている。また、出力軸55の上端には、側面に1箇所の溝を有するフランジ状のロータ側係合部61が取付けられ、B軸回転部52の上端には側面に凹凸が形成された歯車状のステータ側係合部62が取付けられている。
【0023】
ギヤ機構56は、B軸回転部52内に設けられ、インナーモータ54からの動力をB軸回転工具Tbに伝達する。ギヤ機構56は、インナーモータ54の出力軸55の下端に取付けられた傘歯車55aと、B軸回転部52のクランク部52b内に配置された2つの伝達軸57,58と、互いに係合する平歯車をそれぞれ有して3組のB軸回転工具Tbを把持可能に構成された工具把持部59a〜59cとを備える。伝達軸57,58は、軸方向が水平方向となるようにY軸方向に並べて配置される。伝達軸57は、一端に、出力軸55の傘歯車55aと係合する傘歯車57aが設けられ、他端に、平歯車57bが設けられる。伝達軸58は、伝達軸57の平歯車57aと工具把持部59aの平歯車とに係合する平歯車58aが設けられている。インナーモータ54の出力軸55やギヤ機構56の伝達軸57,58,工具把持部59a〜59cは、それぞれ軸受によってB軸回転部52に軸支されている。
【0024】
固定機構60は、インナーモータ54の出力軸55に取付けられたロータ側係合部61と係合可能なロータ固定凸部(第1の固定手段)63と、B軸回転部52に取付けられたステータ側係合部62と係合可能なステータ固定凸部(第2の固定手段)64と、ロータ固定凸部63に油圧を作用させるロータ側油圧機構67と、ステータ固定凸部64に油圧を作用させるステータ側油圧機構(図示せず)とを備える。ロータ固定凸部63とステータ固定凸部64とは、ロータ側係合部61とステータ側係合部62と同じ高さにそれぞれ配置される。
図5に、ロータ固定凸部63とロータ側係合部61をY軸方向(鉛直方向)から見た様子の一例を示し、
図6に、ステータ固定凸部64とステータ側係合部62をY軸方向から見た様子の一例を示す。ロータ固定凸部63は、
図4及び
図5に示すように、ロータ側係合部61の溝61aに係合する凸部63aを有すると共に基台42の内壁面に接するフランジ部63bを有する。基台42の内壁面とフランジ部63bとにより、基台42内には、係合油圧室65aと離間油圧室65bとの2つの油圧室65a,65bが形成される。油圧室65a,65bは、内部がオイルで満たされ、ロータ側油圧機構67の継手67a,67bが取付けられている。ステータ固定凸部64は、
図4及び
図6に示すように、ステータ側係合部62の歯車面に係合する凸部64aを有すると共に基台42の内壁面に接するフランジ部64bを有する。基台42の内壁面とフランジ部64bとにより、基台42内には、係合油圧室66aと離間油圧室66bとの2つの油圧室66a,66bが形成される。油圧室66a,66bは、内部がオイルで満たされ、それぞれステータ側油圧機構の継手(図示せず)が取付けられている。なお、係合油圧室65a,66aを形成する基台42の内壁面には、ロータ固定凸部63とステータ固定凸部64とがそれぞれ引っ込み過ぎないように(
図5及び
図6中、左側に移動しすぎないように)ストッパ42cが形成されている。ロータ側油圧機構67やステータ側油圧機構は、例えば電動ポンプなどによって油圧を発生させ、発生させた油圧を油圧室65a,65b,66a,66bに作用させるように構成されている。なお、ロータ側油圧機構67やステータ側油圧機構は、工具台30に内蔵されてもよいし、工具台30の外部に設けられてもよい。
【0025】
上述のように構成された固定機構60では、ロータ側油圧機構67から係合油圧室65aに油圧を作用させ、ロータ固定凸部63をロータ側係合部61側に移動させて互いに係合させたり、ロータ側油圧機構67から離間油圧室65bに油圧を作用させ、ロータ固定凸部63をロータ側係合部61から遠ざけて互いの係合を解除させることができ、ステータ側油圧機構から係合油圧室66aに油圧を作用させ、ステータ固定凸部64をステータ側係合部62側に移動させて互いに係合させたり、ステータ側油圧機構から離間油圧室66bに油圧を作用させ、ステータ固定凸部64をステータ側係合部62から遠ざけて互いの係合を解除させることができる。つまり、固定機構60により、インナーモータ54のロータ54aやB軸回転工具Tbを回転不能に固定したり、ステータ54bやB軸回転部52を回転不能に固定することができる。
【0026】
次に、上述のように構成された工作機械20を用いたワークWの加工について説明する。実施形態の工作機械20は、周知のコンピュータなどによって構成される図示しない制御部が工作機械20全体を制御してワークWを加工する。制御部は、例えば出力軸55の回転位置を検出する回転位置検出センサ70からの検出値など、工作機械20全体を制御するのに必要な情報が入力されると共に図示しない入力部を介して操作者からの指示が入力され、入力されたデータと予め記憶されたプログラムに従って、ワーク回転用モータやワーク移動用モータ29,X軸移動機構,Y軸移動用モータ38,回転工具用モータ47,インナーモータ54,固定機構60などを制御して、以下に説明するようにワークWの加工を行う。なお、回転位置検出センサ70は、出力軸55に形成された凹凸パターンを光学的に読み込んで出力軸55の回転位置を検出するロータリーエンコーダや、電磁ピックアップ式、レゾルバなど、種々のセンサを用いることができる。
【0027】
非駆動工具TsによってワークWを加工するときは、Y軸移動用モータ38を動作させて所望の非駆動工具TsがワークWと同じ高さに位置するようにY軸移動部40を移動させる。そして、ワーク回転用モータとワーク移動用モータ29とを動作させてワークWを回転させながらZ軸方向に移動させると共にX軸移動機構を動作させてX軸移動部34をワークWに向けて移動させ、非駆動工具TsをワークWに当接させる。これにより、例えばバイトによってワークWの外面を加工したり、ドリルによってワークWにZ軸方向の孔を形成することができる。
【0028】
回転工具TrによってワークWを加工するときには、Y軸移動用モータ38を動作させて所望の回転工具TrがワークWに合わせた高さに位置するようにY軸移動部40を移動させる。そして、ワーク移動用モータ29を動作させてワークWをZ軸方向に移動させると共に回転工具用モータ47とX軸移動機構を動作させて回転工具Trを回転させながらX軸移動部34をワークWに向けて移動させ、回転工具TrをワークWに当接させる。また、必要に応じてワーク回転用モータを動作させてワークWを回転させたり、Y軸移動用モータ38を動作させて回転工具TrをY軸方向に移動させる。これにより、例えば、ドリルによってワークWにX軸方向の孔を形成したり、フライスによってワークWに溝を形成することができる。
【0029】
B軸回転工具TbによってワークWを加工するときには、固定機構60とインナーモータ54とを動作させてB軸回転部52を所望の角度に合わせる。B軸回転部52の回転は、具体的には、ロータ側油圧機構67から係合油圧室65aに油圧を作用させてロータ固定凸部63とロータ側係合部61とを係合させると共に、ステータ側油圧機構から離間油圧室66bに油圧を作用させてステータ固定凸部64とステータ側係合部62とを遠ざからせ、つまり、インナーモータ54の出力軸55が回転不能に固定されて且つステータ54bやB軸回転部52は回転可能な状態にして、インナーモータ54を駆動する。出力軸55を回転不能に固定した状態でインナーモータ54を駆動することにより、ステータ54bがロータ54aに対して相対的に回転し、ステータ54bが連結されたB軸回転部52がY軸回りに回転する。これにより、B軸回転部52に備えられた複数のB軸回転工具Tbの向きが変更される。B軸回転部52が所望の回転位置に至ったら、ステータ側油圧機構から係合油圧室66aに油圧を作用させてステータ54bやB軸回転部52を回転不能に固定し、ロータ側油圧機構67から離間油圧室65bに油圧を作用させてロータ54aや出力軸55を回転可能な状態にする。
【0030】
そして、ワーク移動用モータ29を動作させてワークWをZ軸方向に移動させると共にインナーモータ54を動作させてB軸回転工具Tbを回転させながら、X軸移動機構やY軸移動用モータ38を動作させてB軸回転工具TbをX軸方向およびY軸方向に移動させ、B軸回転工具TbをワークWに当接させる。ステータ54bを回転不能に固定した状態でインナーモータ54を駆動することにより、ロータ54aがステータ54bに対して回転し、ロータ54aに連結された出力軸55の動力がギヤ機構56を介してB軸回転工具Tbに伝達され、B軸回転工具Tbが回転する。また、必要に応じてワーク回転用モータを動作させてワークWを回転させる。これにより、ワークWに斜めの孔を形成したり、タッピングやエンドミリング,スレッドワーリング加工,ホブ加工などワークWに複雑な加工を施すことができる。
【0031】
以上説明した本発明の実施形態に係る工作機械20では、ステータ54bがB軸回転部52に接続されると共にロータ54aがギヤ機構56を介してB軸回転工具Tbに接続されたインナーモータ54と、ロータ54aとステータ54bとを回転不能に固定する固定機構60とを備えるから、固定機構60によってロータ54aを回転不能に固定した状態でインナーモータ54を駆動することにより、B軸回転部52をY軸回りに回転させることができ、固定機構60によってステータ54bを回転不能に固定した状態でインナーモータ54を駆動することにより、B軸回転工具Tbを回転させることができ、1つのモータによってB軸回転部52の回転とB軸回転工具Tbの回転駆動とを行うことができる。したがって、B軸回転部52の回転とB軸回転工具Tbの回転駆動とにそれぞれモータなどを設けるものに比して、装置の部品点数を少なくすることができ、工作機械全体を小型化したり、工作機械の製造コストを低減することができる。また、インナーモータ54のステータ54bがB軸回転部52に直接に連結されるから、インナーモータ54によってB軸回転部52をダイレクトドライブすることができ、ギヤなどの隙間(バックラッシュ)もないので、B軸回転部52の回転を正確に制御することができる。さらに、インナーモータ54は、B軸回転部52の内部に収容されるので、工作機械全体を小型化することができる。また、スペースに余裕が生じるため、インナーモータ54の出力軸55などを太くすることができ、装置の剛性を高めることができる。
【0032】
上述した工作機械20では、B軸回転部52は、基台42に対してY軸回りに回転するものとしたが、X軸回りやZ軸回りに回転するものでもよい。また、基台42は、B軸回転部52(支持部)がB軸回転工具Tbの向きを変更できるように回転可能に取付けられればよく、その形状や構成は如何なるものでもよい。
【0033】
上述した工作機械20では、ロータ側油圧機構67やステータ側油圧機構は、それぞれ2つの油圧室65a,65b,66a,66bに選択して油圧を作用させ、ロータ固定凸部63やステータ固定凸部64を移動させるものとしたが、例えば、ロータ固定凸部63やステータ固定凸部64と係合部61,62とを遠ざける又は近づける方向に付勢するバネなどの付勢機構を設け、離間油圧室65b,66bと係合側油圧室65a,66aの一方に油圧を作用させる構成としてもよい。また、固定機構60は、油圧に代えてまたは加えて空圧を用いるなど他の作動流体を用いてもよい。さらに、固定機構60は、作動流体を用いる機構に代えてまたは加えて電磁的な機構によってロータ固定凸部63やステータ固定凸部64を移動させてもよい。
【0034】
上述した工作機械20では、インナーモータ54の出力軸55に取付けられるロータ側係合部61は、側面に1カ所の溝を有するフランジ状のものとしたが、側面が凹凸に形成された歯車状のものでもよい。また、固定機構60は、摩擦力によって出力軸55やB軸回転部52を回転不能に固定するものでもよい。
図7に変形例の工作機械のB軸回転工具部150周辺の断面図を示す。なお、
図7では、固定機構160やステータ側係合部(ブレーキディスク)162を除いて、実施形態の工作機械20と同一の構成とし、重複する説明は省略する。変形例では、ステータ側係合部62に代えて、B軸回転部52の上端にフランジ状のブレーキディスク162が取付けられ、ブレーキディスク162の上下両側にブレーキパッド164が配置される。変形例の固定機構160では、ステータ側油圧機構168から油圧を作用させることにより、ブレーキパッド164がブレーキディスク162を挟み、ブレーキパッド164とブレーキディスク162との摩擦力によってB軸回転部52を回転不能に固定する。この場合、任意の角度でB軸回転部52を固定することができ、B軸回転部52の角度を細かく調整してワークWを加工することができる。
【0035】
上述した工作機械20では、複数の非駆動工具Tsが備えられた非駆動工具部44と、複数の回転工具Trが備えられた回転工具部46と、複数のB軸回転工具Tbが備えられたB軸回転工具部50とを備えるものとしたが、非駆動工具部44や回転工具部46を備えなくてもよく、例えば、円周状に複数の工具が取付けられたタレットなど、他の機構を備えてもよい。
【0036】
実施形態では、B軸回転工具部50は、先端の向きが180度異なる2つ1組のB軸回転工具TbがY方向に櫛状に3組配置できるように構成されるものとしたが、B軸回転工具部50には、回転してワークWを加工するB軸回転工具Tbが設けられればよく、その配置や数などは適宜定めて設計すればよい。
【0037】
実施形態では、ワークWを保持する1つのワーク保持部22を備えるものとしたが、例えば、工具台30のワーク保持部22とは反対側に(
図1中右側に)、ワーク保持部22に対向してワークWを保持するワーク保持部を備えるなど、複数の点でワークWを保持したり、複数のワークWを保持可能な構成としてもよい。なお、この場合、例えば、非駆動工具部44の非駆動工具Tsのドリルなどは、対向するワーク保持部側に先端が向くように配置できる構成としてもよい。
【0038】
上述した工作機械20では、ワーク移動用モータ29とX軸移動機構とY軸移動用モータ38とにより、ワークWをZ軸方向に移動させると共に基台42やB軸回転工具部50をX軸方向(Z軸方向に垂直な水平方向)及びY軸方向(鉛直方向)に移動させるものとしたが、ワークWをX軸方向およびY軸方向に移動させると共に基台42をZ軸方向に移動させる構成としたり、ワークWと基台42との少なくとも一方を3次元で移動できる構成としてもよい。また、工具やワークWを移動させるためのモータなどのアクチュエータを設けずに、手動によってワーク保持機構26や基台42を移動させる構成としてもよい。
【0039】
上述した工作機械20では、ワーク保持部22は、ワーク保持機構26にチャックとワーク回転用モータとが内蔵されるものとしたが、チャックに代えて又は加えてセンタなどでワークWが保持されるものでもよい。
【0040】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。