特許第5722683号(P5722683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722683
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 9/18 20060101AFI20150507BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   B60L9/18 J
   H02P7/63 Z
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-78709(P2011-78709)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-213306(P2012-213306A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】川地 智洋
(72)【発明者】
【氏名】古川 晶博
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−088222(JP,A)
【文献】 特開2009−158256(JP,A)
【文献】 特開平06−276607(JP,A)
【文献】 特開平06−217596(JP,A)
【文献】 特開平08−331895(JP,A)
【文献】 特開2010−125954(JP,A)
【文献】 特開2005−185006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 9/18
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
該バッテリにインバータを介して電気的に接続され、相互に直列接続された第1巻線と第2巻線とを有し、車輪との駆動連結が常に維持されるように設けられた車両駆動用のモータと、
前記インバータを制御するインバータ制御手段と、
前記モータの通電モードを、第1巻線および第2巻線に通電する低速モードと、第1巻線にのみ通電する高速モードとの間で切り換える通電モード切換手段と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
該回転数検出手段により検出された回転数が所定の閾値未満であるときは低速モードとなるように、且つ、前記回転数検出手段により検出された回転数が前記閾値以上であるときは高速モードとなるように前記通電モード切換手段を制御する切換制御手段と、
運転者により選択されたシフトレンジを検出するレンジ検出手段と、を備え、
前記インバータ制御手段は、前記レンジ検出手段により中立レンジが検出されたときは前記インバータの制御を実行しない車両の制御装置であって、
前記切換制御手段は、
前記通電モード切換手段が高速モードである状態において前記レンジ検出手段により走行レンジから中立レンジへのシフトが検出されたとき、前記回転数検出手段により検出される回転数が前記閾値未満に低下しても、前記通電モード切換手段を高速モードに維持する回生抑制制御
を行うことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
バッテリと、
該バッテリにインバータを介して電気的に接続され、相互に直列接続された第1巻線と第2巻線とを有し、車輪との駆動連結が常に維持されるように設けられた車両駆動用のモータと、
前記インバータを制御するインバータ制御手段と、
前記モータの通電モードを、第1巻線および第2巻線に通電する低速モードと、第1巻線にのみ通電する高速モードとの間で切り換える通電モード切換手段と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
該回転数検出手段により検出された回転数が所定の閾値未満であるときは低速モードとなるように、且つ、前記回転数検出手段により検出された回転数が前記閾値以上であるときは高速モードとなるように前記通電モード切換手段を制御する切換制御手段と、
運転者により選択されたシフトレンジを検出するレンジ検出手段と、を備え、
前記インバータ制御手段は、前記レンジ検出手段により中立レンジが検出されたときは前記インバータの制御を実行しない車両の制御装置であって、
前記レンジ検出手段により走行レンジから中立レンジへのシフトが検出されたとき、前記閾値よりも低い回生抑制制御用の閾値を設定する回生抑制制御用閾値設定手段を更に備え、
前記切換制御手段は、
前記レンジ検出手段により中立レンジが検出され、且つ、前記回転数検出手段により検出された回転数が前記回生抑制制御用の閾値以上であるとき、前記通電モードを前記高速モードにする回生抑制制御
を行うことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項3】
前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段を備え、
前記回生抑制制御用閾値設定手段は、前記バッテリ電圧検出手段により検出された電圧が低いほど前記回生抑制制御用の閾値を小さく設定することを特徴とする請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段を備え、
前記切換制御手段は、前記バッテリ電圧検出手段により検出された電圧が所定電圧未満であるときに前記回生抑制制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段を備え、
前記切換制御手段は、前記バッテリ温度検出手段により検出された温度が所定温度以上であるときに前記回生抑制制御を行うことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用のモータと車輪との駆動連結が常に維持され、減速時に前記モータが発電機として作動することにより減速回生を行う車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気モータを走行駆動源とする電気自動車では、減速回生時において、前記モータが発電機として作動することで発生する回生電力によりバッテリを充電することができるとともに、前記モータが車輪の回転に対する抵抗となることにより該モータを回生ブレーキとして利用することができる。
【0003】
例えば特許文献1に開示されているように、電気自動車の駆動用モータとしては三相モータが一般的に使用され、この三相モータは、バッテリから供給されるとともにインバータにより交流に変換されて供給される電力によって駆動される。なお、減速回生時には、インバータがコンバータとして機能し、モータで発生する回生電力を直流に変換してバッテリへ供給する。
【0004】
電気自動車の走行駆動源として使用される三相モータは、各相において直列接続された第1巻線と第2巻線とを備え、モータの通電モードを、各相の第1巻線のみに通電される高速モードと、各相の第1巻線と第2巻線の両方に通電される低速モードとの間で切り換えるように構成されることがある。
【0005】
つまり、第1巻線のみに通電されると、各相における通電部分全体の巻数が比較的少なくなるため、モータに生じる誘起電圧が比較的低くなる。そのため、バッテリからモータへ電流が流れやすくなり、モータの高速回転が可能になる。一方、第1巻線と第2巻線とに通電されると、各相における通電部分全体の巻数は比較的多くなるため、モータに生じる誘起電圧は比較的高くなる。そのため、バッテリからモータへの電流の流れが抑制されて、モータは比較的低速で回転する。
【0006】
ところで、この種の三相モータを走行駆動源として搭載した電気自動車では、シフトレンジが走行レンジに設定された状態で減速するとき、インバータの制御により、回生ブレーキによる制動力と、モータからバッテリに供給される回生電力とが制御される。
【0007】
一方、運転者が回生ブレーキを作動させたくないときなどは、シフトレンジが中立レンジに設定された状態で車両が減速することがあり、この場合、減速回生を行う必要がないため、通常、インバータによる制御は実行されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−225588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、走行駆動用のモータと車輪とがクラッチを介することなく連結された構成の電気自動車においては、両者の駆動連結は常に維持されるため、中立レンジでの減速時において、インバータによる制御が実行されていなくても、車輪の回転に対する抵抗がモータに発生する。これにより、回生ブレーキによる制動力が発生するとともに、モータで誘起電圧が発生する。
【0010】
そうすると、運転者は、中立レンジを選択しているにも拘わらず回生ブレーキが作動することに違和感を覚える。また、このとき、モータで発生する誘起電圧がバッテリの電圧よりも高ければ、モータからインバータのダイオードを経由してバッテリへ電流が流れることがある。このようにインバータにより制御されない電流がバッテリへ流れることは、インバータ、バッテリ及び周辺部品を保護する観点から好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、走行駆動用のモータと車輪との駆動連結が常に維持される車両において、シフトレンジが中立レンジに設定された状態で減速が行われるときに、予期しない回生ブレーキの作動に対する運転者の違和感を軽減するとともに、インバータ、バッテリ及び周辺部品を効果的に保護することができる車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両の制御装置は、次のように構成したことを特徴とする。
【0013】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、
バッテリと、
該バッテリにインバータを介して電気的に接続され、相互に直列接続された第1巻線と第2巻線とを有し、車輪との駆動連結が常に維持されるように設けられた車両駆動用のモータと、
前記インバータを制御するインバータ制御手段と、
前記モータの通電モードを、第1巻線および第2巻線に通電する低速モードと、第1巻線にのみ通電する高速モードとの間で切り換える通電モード切換手段と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
該回転数検出手段により検出された回転数が所定の閾値未満であるときは低速モードとなるように、且つ、前記回転数検出手段により検出された回転数が前記閾値以上であるときは高速モードとなるように前記通電モード切換手段を制御する切換制御手段と、
運転者により選択されたシフトレンジを検出するレンジ検出手段と、を備え、
該インバータ制御手段は、前記レンジ検出手段により中立レンジが検出されたときは前記インバータの制御を実行しない車両の制御装置であって、
前記切換制御手段は、
前記通電モード切換手段が高速モードである状態において前記レンジ検出手段により走行レンジから中立レンジへのシフトが検出されたとき、前記回転数検出手段により検出される回転数が前記閾値未満に低下しても、前記通電モード切換手段を高速モードに維持する回生抑制制御
を行うことを特徴とする。
【0015】
さらに、請求項に記載の発明は
バッテリと、
該バッテリにインバータを介して電気的に接続され、相互に直列接続された第1巻線と第2巻線とを有し、車輪との駆動連結が常に維持されるように設けられた車両駆動用のモータと、
前記インバータを制御するインバータ制御手段と、
前記モータの通電モードを、第1巻線および第2巻線に通電する低速モードと、第1巻線にのみ通電する高速モードとの間で切り換える通電モード切換手段と、
前記モータの回転数を検出する回転数検出手段と、
該回転数検出手段により検出された回転数が所定の閾値未満であるときは低速モードとなるように、且つ、前記回転数検出手段により検出された回転数が前記閾値以上であるときは高速モードとなるように前記通電モード切換手段を制御する切換制御手段と、
運転者により選択されたシフトレンジを検出するレンジ検出手段と、を備え、
前記インバータ制御手段は、前記レンジ検出手段により中立レンジが検出されたときは前記インバータの制御を実行しない車両の制御装置であって、
前記レンジ検出手段により走行レンジから中立レンジへのシフトが検出されたとき、前記閾値よりも低い回生抑制制御用の閾値を設定する回生抑制制御用閾値設定手段を更に備え、
前記切換制御手段は、
前記レンジ検出手段により中立レンジが検出され、且つ、前記回転数検出手段により検出された回転数が前記回生抑制制御用の閾値以上であるとき、前記通電モードを前記高速モードにする回生抑制制御
を行うことを特徴とする。
【0016】
また、請求項に記載の発明は、前記請求項に記載の発明において、
前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段を備え、
前記回生抑制制御用閾値設定手段は、前記バッテリ電圧検出手段により検出された電圧が低いほど前記回生抑制制御用の閾値を小さく設定することを特徴とする。
【0017】
さらに、請求項に記載の発明は、前記請求項1から請求項のいずれか1項に記載の発明において、
前記バッテリの電圧を検出するバッテリ電圧検出手段を備え、
前記切換制御手段は、前記バッテリ電圧検出手段により検出された電圧が所定電圧未満であるときに前記回生抑制制御を行うことを特徴とする。
【0018】
なお、請求項が請求項に従属する場合において、請求項に記載された「バッテリ電圧検出手段」と、請求項に記載された「バッテリ電圧検出手段」とは同一のものである。
【0019】
さらにまた、請求項に記載の発明は、前記請求項1から請求項のいずれか1項に記載の発明において、
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出手段を備え、
前記切換制御手段は、前記バッテリ温度検出手段により検出された温度が所定温度以上であるときに前記回生抑制制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願の請求項1の発明によれば、シフトレンジが中立レンジであるとき、車両駆動用モータの通電モードが高速モードとされることで、該モータにおいて直列接続された第1巻線および第2巻線のうち第1巻線のみに通電されて、該モータの通電部分全体の巻数が比較的少なくなるため、減速の際、該モータでの誘起電圧、ひいては、モータからバッテリへ向かう電流の流れが抑制される。これにより、中立レンジでの減速時において、車輪の回転に対するモータの抵抗、ひいては回生ブレーキによる制動力が抑制されるため、予期しない回生ブレーキの作動に対する運転者の違和感を軽減することができる。また、このとき、インバータで制御されることなくモータからバッテリへ向かう電流の流れが抑制されることで、インバータ、バッテリ及び周辺部品を効果的に保護することができる。
【0021】
本願の請求項の発明によれば、通電モード切換手段が高速モードである状態においてシフトレンジが走行レンジから中立レンジへ切り換えられた場合、この切り換え後にモータの回転数が低下して閾値未満となっても、通電モード切換手段は高速モードに維持されるため、モータに生じる誘起電圧が上昇することを防止でき、これにより、モータからバッテリへの電力回生と、回生制動力とを引き続き抑制することができる。
【0022】
本願の請求項の発明によれば、シフトレンジが走行レンジから中立レンジに切り換えられたとき、通電モード切り換え用の前記閾値とは別に、該閾値よりも低い回生抑制制御用の閾値が設定される。そして、この回生抑制制御用の閾値に比べてモータの回転数が低いとき、すなわち、低速モードである場合にモータで生じる誘起電圧をバッテリの電圧未満とすることができる程度にモータの回転数が低いとき、高速モードへの不要な切換えが回避されることで、通電モードの切り換え頻度を低減することができる。一方、シフトレンジが中立レンジであり、モータの回転数が回生抑制制御用の閾値以上である場合、通電モードが高速モードにされることで、モータからバッテリへの電力回生と、回生制動力とを抑制することができる。
【0023】
本願の請求項の発明を請求項の発明に適用すれば、バッテリの電圧が低いときほど、すなわちモータからバッテリへ電流が流れやすいときほど、回生抑制制御用の閾値が低く設定されて、これにより回生抑制制御が実行されやすくなるため、モータからバッテリへの電力回生と、回生制動力とを効果的に抑制することができる。
【0024】
本願の請求項の発明によれば、シフトレンジが中立レンジである場合において、バッテリの電圧が所定電圧未満であるとき、すなわち、モータからバッテリへ電流が流れやすいときにのみ通電モードが高速モードにされるため、不要な高速モードへの切換制御を抑制しつつ、バッテリの電圧に応じて、必要なときには高速モードへの切換制御が実行されることで、不要な電力回生と回生ブレーキとを抑制することができる。
【0025】
本願の請求項の発明によれば、シフトレンジが中立レンジである場合において、バッテリの温度が所定温度以上であるとき、すなわち、バッテリの更なる温度上昇を回避する必要があるときに、通電モードが高速モードにされることで回生電力によるバッテリの充電が抑制される。これにより、充電に伴うバッテリ温度上昇によるバッテリ劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の制御装置を搭載した電気自動車の動力伝達系を示す骨子図である。
図2】走行駆動用のモータとバッテリとを接続する電気回路を示す図である。
図3図1に示す電気自動車の制御系を示すブロック図である。
図4】走行中におけるモータの通電モードの切換制御に関して、第1の実施形態に係る制御動作の流れを示すフローチャートである。
図5図4に示す流れで制御されるモータの通電モードの経時的変化の一例を示すタイムチャートである。
図6】走行中におけるモータの通電モードの切換制御に関して、第2の実施形態に係る制御動作の流れを示すフローチャートである。
図7図6に示す流れで制御されるモータの通電モードの経時的変化の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る車両の制御装置は、図1に示す動力伝達系2を備えた電気自動車1に搭載される。
【0029】
図1に示すように、電気自動車1は、走行駆動源としての電気モータ4を備え、このモータ4の出力軸6と減速機8の入力軸10とが同軸上に配置されて相互に連結されている。減速機8の出力軸14は、入力軸10に平行に配置されており、入力軸10に設けられた駆動ギヤ12と、該駆動ギヤ12よりも大径であるとともに出力軸14に設けられた従動ギヤ16とが噛合されている。これにより、減速機8は、入力軸10の回転を減速して出力軸14に伝達するようになっている。
【0030】
また、減速機8の出力軸14には出力ギヤ18が設けられており、この出力ギヤ18は、該出力ギヤ18よりも大径である差動装置20の入力ギヤ22に噛合されている。これにより、減速機8の出力軸14の回転は、さらに減速されて差動装置20に入力された後、この差動装置20から左右に延びる車軸32,34を介して駆動輪36,38に伝達されるようになっている。
【0031】
このように、動力伝達系2では、モータ4と駆動輪36,38とがクラッチを介することなく駆動連結されているため、この駆動連結が常に維持されるようになっている。
【0032】
図2に示すように、モータ4は、交流電流により駆動される三相モータであり、各相において、相互に直列接続された第1巻線61と第2巻線62とを有する。
【0033】
モータ4、具体的に、該モータ4の各相の第1巻線61は、インバータ44を介してバッテリ42に電気的に接続されている。
【0034】
インバータ44は複数の半導体素子、具体的には、例えばIGBT等の複数のスイッチング素子46と、例えばダイオード等の複数の整流素子48とを備えている。このインバータ44により、バッテリ42からモータ4への供給電力は直流から交流に変換され、モータ4からバッテリ42への回生電力は交流から直流に変換される。インバータ44の制御は、後述のコントロールユニット40により実行される。
【0035】
モータ4には通電モード切換ユニット50が接続されており、この通電モード切換ユニット50により、モータ4の通電モードは、第1巻線61と第2巻線62とに通電する低速モードと、第1巻線61にのみ通電する高速モードとの間で切り換えられる。かかる通電モード切換ユニット50による通電モードの切り替え動作は、後述のコントロールユニット40により制御される。
【0036】
通電モード切換ユニット50は、第1巻線61と第2巻線62との間の部分においてモータ4の各相に接続された高速側通電部52と、第2巻線62における第1巻線61とは反対側の端部においてモータ4の各相に接続された低速側通電部54とを有する。これらの各通電部52,54は半導体素子、具体的には、例えばIGBT等の複数のスイッチング素子55,57と、例えばダイオード等の複数の整流素子56,58とを相毎に有する。
【0037】
高速モードのとき、高速側通電部52はオン、低速側通電部54はオフにされることで、通電モード切換ユニット50では高速側通電部52にのみ通電されるため、モータ4では第1巻線61にのみ通電される。一方、低速モードのとき、高速側通電部52はオフ、低速側通電部54はオンにされることで、通電モード切換ユニット50では低速側通電部54にのみ通電されるため、モータ4では第1巻線61と第2巻線62とに通電される。
【0038】
そのため、高速モードでは、低速モードに比べて、モータ4の各相における通電部分全体の巻数が少なくなり、モータ4に生じる誘起電圧が低くなるため、バッテリ42からモータ4へ電流が流れやすくなり、モータ4の高速回転が可能になる。これに対して、低速モードでは、モータ4の各相における通電部分全体の巻数が比較的多くなり、モータ4に生じる誘起電圧が比較的高くなるため、バッテリ42からモータ4への電流の流れが抑制されて、モータ4は比較的低速で回転する。
【0039】
図3に示すコントロールユニット40は、インバータ44と通電モード切換ユニット50を制御する。即ち、コントロールユニット40はインバータ制御手段と切換制御手段とを備えている。図3に示すように、コントロールユニット40は、電気自動車1の走行速度を検出する車速センサ70、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセル量センサ72、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサ74、モータ4の回転数を検出するモータ回転数センサ76、運転者により選択されたシフトレンジを検出するレンジセンサ78とから出力される信号を入力可能に設けられている。なお、別の実施形態において、コントロールユニット40は、前記のセンサ70,72,74,76,78に加えて、バッテリ42の電圧を検出するバッテリ電圧センサ80、及び/又は、バッテリ42の温度を検出するバッテリ温度センサ82から出力される信号を入力可能に設けてもよい。
【0040】
コントロールユニット40は、上記のセンサから送られる信号に基づいて演算処理を行い、インバータ44及び通電モード切換ユニット50へ制御信号を出力するようになっている。
【0041】
このコントロールユニット40によりインバータ44が制御されることで、バッテリ42とモータ4との間の電流の流れ、すなわち、バッテリ42からモータ4への供給電力や、モータ4からバッテリ42への回生電力が、運転状態等に応じて制御される。
【0042】
ただし、走行時において、レンジセンサ78により中立レンジ(Nレンジ)が検出されたとき、コントロールユニット40はインバータ44のモータ駆動制御を実行せず、これにより、モータ4を駆動させたり回生ブレーキを作動させたくないという運転者の要求に応えるようになっている。
【0043】
また、コントロールユニット40により通電モード切換ユニット50が制御されることで、モータ4の通電モードは低速モードと高速モードとの間で切り換えられる。具体的に、通電モード切換ユニット50は、モータ回転数センサ76により検出された回転数が所定の閾値n未満でありときは低速モードとなるように、且つ、モータ回転数センサ76により検出された回転数が前記閾値n以上であるときは高速モードとなるように制御される。
【0044】
ただし、モータ4の回転数の検出は、必ずしもモータ回転数センサ76の出力信号に基づいて行う必要はなく、コントロールユニット40からモータ4への制御信号に基づいて行うようにしてもよい。
【0045】
ところで、電気自動車1の動力伝達系2にはクラッチが設けられていないため、モータ4と駆動輪36,38との駆動連結は常に維持される。そのため、Nレンジでの減速時において、インバータ44の制御が実行されていなくても、駆動輪36,38の回転に対する抵抗がモータ4に発生し、これにより、回生ブレーキによる制動力が発生するとともに、モータ4で誘起電圧が発生する。そうすると、運転者は、Nレンジを選択しているにも拘わらず回生ブレーキが作動することに違和感を覚えるとともに、モータ4で発生する誘起電圧がバッテリ42の電圧よりも高ければ、インバータ44により制御されない電流がモータ4からインバータ44の整流素子を経由してバッテリ42へ流れてしまい、このことは、インバータ44、バッテリ42及び周辺部品を保護する観点から好ましくない。
【0046】
この問題に鑑みて、コントロールユニット40は、レンジセンサ78によりNレンジが検出されたとき、減速回生を抑制するためにモータ4の通電モードを高速モードにする回生抑制制御を実行する。この回生抑制制御が実行されて、モータ4の通電モードが高速モードとされると、該モータ4では第1巻線61にのみ通電されて、該モータ4の各相における通電部分全体の巻数が、第1巻線61と第2巻線62の両方に通電される場合に比べて少なくなるため、減速の際、モータ4での誘起電圧、ひいては、モータ4からバッテリ42へ向かう電流の流れが抑制される。モータ4の誘起電圧はモータ速度が同じ状態では電機子巻線(第1巻線61、第2巻線62)の巻数に比例した電圧となる。仮に第1巻線61と第2巻線62が同じ巻数の場合、高速モードの状態ではモータ4の誘起電圧の大きさを低速モードの場合の半分にでき、モータ4の速度制御範囲を拡大することができる。
【0047】
なお、インバータ44、バッテリ42及び周辺部品の保護の観点から、回生抑制制御によりモータ4の通電モードを高速モードとしたとき、モータ4からバッテリ42へ向かう電流の流れを確実に防止することが好ましい。そのため、モータ4は、通電モードが高速モードであるとき、該モータ4に生じる誘起電圧がバッテリ42の電圧よりも常に低くなるように構成されたものであることが好ましい。
【0048】
上記の回生抑制制御が実行されることにより、Nレンジでの減速時において、駆動輪36,38の回転に対するモータ4の抵抗、ひいては回生ブレーキによる制動力が抑制されるため、予期しない回生ブレーキの作動に対する運転者の違和感を軽減することができる。また、このとき、インバータ44で制御されることなくモータ4からバッテリ42へ向かう電流の流れが抑制されることで、インバータ44、バッテリ42及び周辺部品を効果的に保護することができる。
【0049】
以下、電気自動車1の走行中におけるモータ4の通電モードの切換制御について、制御動作の具体例を説明する。
【0050】
[第1の実施形態]
図4は、走行中におけるモータ4の通電モードの切換制御に関して、第1の実施形態に係る制御動作の流れを示すフローチャートである。
【0051】
図4に示す制御動作では、先ず、ステップS1において、コントロールユニット40への入力信号に基づいて、モータ回転数センサ76及びレンジセンサ78の各出力値が読み込まれる。
【0052】
次のステップS2では、ステップS1で読み込まれたレンジセンサ78の出力値に基づき、シフトレンジがNレンジであるか否かが判定される。
【0053】
ステップS2の判定の結果、シフトレンジがNレンジでない場合、すなわち、Dレンジ等の走行レンジである場合、ステップS3〜ステップS5において、モータ4の回転数に応じた通常の切換制御が実行される。具体的に、ステップS3では、ステップS1で読み込まれたモータ回転数センサ76の出力値に基づいてモータ4の回転数が閾値n以上であるか否かが判定される。このステップS3の判定の結果、モータ4の回転数が閾値n以上であれば、モータ4の通電モードが高速モードとなるように(ステップS5)、モータ4の回転数が閾値n未満であれば、モータ4の通電モードが低速モードとなるように(ステップS4)、通電モード切換ユニット50が制御される。
【0054】
一方、ステップS2の判定の結果、シフトレンジがNレンジである場合、インバータ44の制御がオフにされるとともに(ステップS6)、回生抑制制御が実行されて、モータ4の通電モードが高速モードとなるように通電モード切換ユニット50が制御される(ステップS5)。この回生抑制制御(ステップS5)が実行されることにより、Nレンジが選択された状態で自動車1が減速する場合、減速回生が抑制されるため、回生ブレーキが作動することに対する運転者の違和感を軽減することができるとともに、インバータ44で制御されない電流がモータ4からバッテリ42に向かって流れることを抑制して、インバータ44、バッテリ42及び周辺部品を効果的に保護することができる。
【0055】
図5は、図4に示す制御動作を行う場合におけるモータ4の通電モードの経時的変化の一例を示している。
【0056】
図5に示す最初の状態において、自動車1は、Dレンジが選択された状態で低速走行しており、モータ4の通電モードは低速モードであり、インバータ44の制御は実行されている。
【0057】
その後、時間t1経過時において、シフトレンジがNレンジに切り換えられると、インバータ44の制御がオフにされて(図4のステップS6)、回生抑制制御が実行されることによりモータ4の通電モードが高速モードに切り換えられる(図4のステップS5)。この回生抑制制御により、回生ブレーキによる制動力が抑制されつつ、モータ4からバッテリ42への電流の流れが抑制される。
【0058】
続く時間t2経過時において、シフトレンジがDレンジに戻されると、インバータ44の制御が再開されるとともに、回生抑制制御が終了することによりモータ4の通電モードが低速モードに戻される。これにより、モータ4は、通常の制御に従って駆動される。
【0059】
その後、モータ4の回転数が上昇して、時間t3経過時において閾値nに達すると、通常の切換制御により、モータ4の通電モードは高速モードに切り換えられる(図4のステップS5)。
【0060】
続く時間t4経過時においてシフトレンジが再びNレンジに切り換えられると、インバータ44の制御がオフにされるとともに(図4のステップS6)、回生抑制制御によりモータ4の通電モードは高速モードに維持される(図4のステップS5)。
【0061】
その後、モータ4の回転数が低下して、時間t5経過時において閾値nを下回っても、回生抑制制御が実行されることにより、モータ4の通電モードは低速モードに切り換えられることなく、高速モードに維持される(図4のステップS5)。これにより、モータ4からバッテリ42への電力回生と、回生制動力とを引き続き抑制することができる。
【0062】
時間t6経過時において、シフトレンジがDレンジに切り換えられると、インバータ44の制御が再開されるとともに、回生抑制制御が終了することでモータ4の通電モードが低速モードに切り換えられて、モータ4は、通常の制御に従って駆動される。
【0063】
[第2の実施形態]
図6は、走行中におけるモータ4の通電モードの切換制御に関して、第2の実施形態に係る制御動作の流れを示すフローチャートである。
【0064】
図6に示す制御動作では、先ず、ステップS11において、コントロールユニット40への入力信号に基づいて、モータ回転数センサ76、レンジセンサ78及びバッテリ電圧センサ80の各出力値が読み込まれる。
【0065】
次のステップS12では、ステップS11で読み込まれたレンジセンサ78の出力値に基づき、シフトレンジがNレンジであるか否かが判定される。
【0066】
ステップS12の判定の結果、シフトレンジがNレンジでない場合、すなわち、Dレンジ等の走行レンジである場合、ステップS13〜ステップS16において、モータ4の回転数に応じた通常の切換制御が実行される。具体的に、ステップS13では、モータ4の通電モードの切換制御に用いる閾値nとして第1の閾値n1が設定される。この第1の閾値n1は予め決められた固定値であってもよいし、運転状態等に応じて変更される値であってもよい。次のステップS14では、ステップS11で読み込まれたモータ回転数センサ76の出力値に基づいてモータ4の回転数が閾値n、すなわち第1の閾値n1以上であるか否かが判定される。このステップS14の判定の結果、モータ4の回転数が閾値n(第1の閾値n1)以上であれば、モータ4の通電モードが高速モードとなるように(ステップS15)、モータ4の回転数が閾値n未満であれば、モータ4の通電モードが低速モードとなるように(ステップS16)、通電モード切換ユニット50が制御される。
【0067】
一方、ステップS12の判定の結果、シフトレンジがNレンジである場合、インバータ44の制御がオフにされるとともに(ステップS17)、第2の実施形態では、更なる所定条件を満たした場合に限り、回生抑制制御が実行される。
【0068】
具体的に、第2の実施形態では、第1の閾値n1(ステップS13参照)よりも低い第2の閾値n2が回生抑制制御用の閾値として設定され(ステップS18〜ステップS20)、モータ4の回転数が第2の閾値n2以上である場合のみ、回生抑制制御が実行されてモータ4の通電モードが高速モードとされる。したがって、第2の実施形態によれば、モータ4の回転数が第2の閾値n2未満であるとき、すなわち、モータ4の回転数が、低速モードであってもモータ4で生じる誘起電圧がバッテリ42の電圧よりも十分に低くなる程度に低いとき、高速モードへの不要な切換えが回避されるため、通電モードの切換頻度を低減することができる。
【0069】
第2の閾値n2の設定について具体的に説明すると、先ず、ステップS18において、バッテリ42の電圧に基づいて第2の閾値n2が算出される。このとき、第2の閾値n2は、バッテリ電圧センサ80により検出された電圧が低いほど小さくなるように算出される。これにより、バッテリ42の電圧が低く、モータ4からバッテリ42へ電流が流れやすいときほど、第2の閾値n2が小さくなるように算出されて、これにより回生抑制制御が実行されやすくなる。したがって、バッテリ42の電圧に応じて、モータ4の通電モードの切換頻度の抑制と、減速回生の抑制との均衡を図ることができる。
【0070】
続くステップS19では、ステップS18で算出された第2の閾値n2が第1の閾値n1よりも低いか否か、すなわち、第2の閾値n2が回生抑制制御用の閾値として適切な値であるか否かが判定される。
【0071】
ステップS19の判定の結果、第2の閾値n2が第1の閾値n1以上である場合、第2の閾値n2は回生抑制制御用の閾値として不適当であるため、通電モード切換制御用の閾値nは第1の閾値n1に設定され(ステップS13)、回生抑制制御が実行されることなく、通常の切換制御が実行される(ステップS14〜ステップS16)。
【0072】
一方、ステップS19の判定の結果、第2の閾値n2が第1の閾値n1未満である場合、第2の閾値n2は回生抑制制御用の閾値として適当な値であるため、通電モード切換制御用の閾値nが第2の閾値n2に設定されて(ステップS20)、モータ4の回転数が第2の閾値n2以上であるか否かが判定された後(ステップS14)、この判定結果により、モータ4の回転数が第2の閾値n2以上であるときのみ、回生抑制制御が実行されてモータ4の通電モードが高速モードとされる(ステップS15)。
【0073】
このように、第2の実施形態では、バッテリ42の電圧に応じて、不要な回生抑制制御を省略することで、モータ4の通電モードの切換頻度を抑制しつつ、必要なときは回生抑制制御を実行することで、第1の実施形態と同様、モータ4からバッテリ42への電力回生と、回生制動力とを抑制することができる。
【0074】
図7は、図6に示す制御動作を行う場合におけるモータ4の通電モードの経時的変化の一例を示している。
【0075】
図7に示す最初の状態において、自動車1は、Dレンジが選択された状態で低速走行しており、通電モード切換制御用の閾値nは第1の閾値n1に設定されている。また、モータ4の通電モードは低速モードであり、インバータ44の制御は実行されている。
【0076】
その後、時間t1経過時において、シフトレンジがNレンジに切り換えられると、インバータ44の制御がオフにされて(図6のステップS17)、通電モード切換制御用の閾値nが第2の閾値n2に切り換えられるが(図6のステップS20)、モータ4の回転数は第2の閾値n2よりも低いため、回生抑制制御は実行されず、モータ4の通電モードは低速モードに維持される。これにより、不要な回生抑制制御が省略されて、通電モードの切換頻度が低減される。
【0077】
続く時間t2経過時において、シフトレンジはDレンジに戻され、これに伴い、インバータ44の制御が再開されるとともに、通電モード切換制御用の閾値が第1の閾値n1に戻される(図6のステップS13)。
【0078】
その後、モータ4の回転数が上昇して第2の閾値n2を超えるが、第1の閾値n1には達しないため、回生抑制制御は実行されることなく、モータ4の通電モードは低速モードに維持される。これにより、不要な回生抑制制御が回避されて、通電モードの切換頻度を抑制することができる。
【0079】
続く時間t3経過時において、シフトレンジは再びNレンジに切り換えられ、これに伴い、インバータ44の制御が再びオフにされるとともに(図6のステップS17)、通電モード切換制御用の閾値nが再び第2の閾値n2に切り換えられる(図6のステップS20)。このとき、モータ4の回転数は第2の閾値n2よりも高いため、回生抑制制御が実行されてモータ4の通電モードが高速モードに切り換えられる(図6のステップS15)。これにより、モータ4からバッテリ42への電力回生と、回生制動力とを抑制することができる。
【0080】
その後、モータ4の回転数が低下して、時間t4経過時において第2の閾値n2を下回ると、回生抑制制御が終了することによりモータ4の通電モードが低速モードに戻される(図6のステップS16)。これにより、モータ4は、通常の制御に従って駆動される。
【0081】
続く時間t5経過時においてシフトレンジがDレンジに戻されると、インバータ44の制御が再開されるとともに、通電モード切換制御用の閾値nが再び第1の閾値n1に戻される。このとき、モータ4の回転数は第1の閾値n1よりも低く、モータ4の通電モードは元々低速モードとされているため、通電モードの切換えは行われない。
【0082】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0083】
例えば、上述の回生抑制制御を実行するための条件は、第1の実施形態では、シフトレンジがNレンジであることであり、第2の実施形態では、シフトレンジがNレンジであることと、モータ4の回転数が第2の閾値n2以上であることとであるが、本発明の別の実施形態では、上述の実施形態の条件に加えて、バッテリ電圧センサ80により検出されたバッテリ42の電圧が所定電圧未満であることを更なる条件として、回生抑制制御が実行されるようにしてもよい。この場合、バッテリ42の電圧が所定電圧未満であることにより、モータ4からバッテリ42へ電流が流れやすいときにのみ回生抑制制御が実行されるため、不要な回生抑制制御の実行を抑制しつつ、バッテリ42の電圧に応じて、必要なときには回生抑制制御が実行されることで、不要な電力回生と回生ブレーキとを抑制することができる。
【0084】
また、本発明の更に別の実施形態では、上述の実施形態の条件に加えて、バッテリ温度センサ82により検出されたバッテリ42の温度が所定温度以上であることを更なる条件として、回生抑制制御が実行されるようにしてもよい。この場合、バッテリ42の温度が所定温度以上であることにより更なる温度上昇を回避する必要があるときに、回生抑制制御が実行されることで回生電力によるバッテリ42の充電が抑制されるため、充電に伴うバッテリ42の温度上昇を抑制することができる。
【0085】
さらに、上述の実施形態では、モータ4の巻線を第1巻線61と第2巻線62の2つに分割して構成する場合について説明したが、本発明は、モータ4の巻線を3つ以上に分割して構成する場合にも同様に適用できる。
【0086】
さらにまた、本発明は電気自動車に限定されるものではなく、ハイブリッド車においても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上のように、本発明によれば、走行駆動用のモータと車輪との駆動連結が常に維持される車両において、シフトレンジが中立レンジに設定された状態で減速が行われるときに、予期しない回生ブレーキの作動に対する運転者の違和感を軽減するとともに、インバータ、バッテリ及び周辺部品を効果的に保護することが可能となるから、走行駆動用のモータと車輪との駆動連結が常に維持される車両の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0088】
1:電気自動車、4:モータ、36,38:車輪、40:コントロールユニット(切換制御手段、インバータ制御手段)、42:バッテリ、44:インバータ、50:通電モード切換ユニット、61:第1巻線、62:第2巻線、76:モータ回転数センサ、78:レンジセンサ、80:バッテリ電圧センサ、82:バッテリ温度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7