(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0014】
(第1の実施の形態)
はじめに、本発明に好適な車両用前照灯の基本構成について説明する。
【0015】
図1(a)は、第1の実施の形態に係る車両用前照灯10の正面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のP−P断面図である。車両用前照灯10は、ハウジング12、アウターカバー14、および灯具ユニット16を有する。以下、
図1(b)において矢印Xが向く方向を灯具前方として説明する。また、灯具前方にみて右側を灯具右側、左側を灯具左側という。なお、車両用前照灯10は、車両左前部および右前部にそれぞれに1つずつ設けられる。
図1(a)および
図1(b)は、左右いずれかの車両用前照灯10の構成を示している。
【0016】
ハウジング12は開口を有する箱状に形成される。アウターカバー14は透光性を有する樹脂またはガラスによって椀状に形成される。アウターカバー14は、縁部がハウジング12の開口部に取り付けられる。こうして、ハウジング12とアウターカバー14とによって覆われる領域に灯室が形成される。
【0017】
灯室内には、灯具ユニット16が設けられる。灯具ユニット16は、灯具前方に光を照射するよう灯室内に配置される。灯具ユニット16は、支持プレート18、支持部材20、発光モジュール22、リフレクタ24、シェード26、ヒートシンク28、および冷却ファン30を有する。灯具ユニット16は、車両前方に照射すべきロービーム用配光パターンを形成するロービーム用光源として用いられる。灯具ユニット16の灯具前方には、リフレクタ24によって反射された光が灯具前方に進むための開口部を有するエクステンションリフレクタ34が設けられる。
【0018】
支持プレート18は、コーナー部のうち3か所がエイミングスクリュー32によってハウジング12に固定される。支持部材20は、厚みのある矩形の板状に形成され、一側面が支持プレート18の前面に固定される。光源である発光モジュール22は、主光軸がやや灯具後方に向くよう支持部材20の下面に取り付けられる。支持部材20は、発光モジュール22が発する熱を効率よく回収できるよう、アルミニウムなど熱伝導率が高い材料によって形成される。支持部材20の上面にはヒートシンク28を介して冷却ファン30が取り付けられている。こうして発光モジュール22は、支持部材20およびヒートシンク28を介して冷却ファン30によって冷却され、温度の上昇が抑制されている。
【0019】
リフレクタ24は、支持部材20の下方に位置するよう支持プレート18の前面に取り付けられる。リフレクタ24は、発光モジュール22が発した光を灯具前方に向けて集光する光学部材として機能する。具体的には、リフレクタ24は、発光モジュール22が発する光を灯具前方に反射してロービーム用配光パターンを形成する。
【0020】
シェード26は、板状に形成され、発光モジュール22の近傍に略垂直に配置される。シェード26は、リフレクタ24によって灯具前方に反射される光のうち、エクステンションリフレクタ34で反射してロービーム用配光パターンより上方に向かう光を遮光する。つまり、シェード26は、有効反射面ではないエクステンションリフレクタ34に向かう光の少なくとも一部を遮光する。これにより、非有効反射面であるエクステンションリフレクタ34で反射した光による、車両前方に存在する者へ与えるグレアを抑制することができる。なお、シェード26は、垂直に配置されていなくてもよく、水平、または水平方向に対して傾斜して配置されてもよい。また、シェード26は、発光モジュール22からリフレクタ24に直接向かう光を遮らない位置に配置される。
【0021】
図2は、
図1の視点Rから見た発光モジュール22の図である。発光モジュール22は、複数の発光素子50によって構成される発光素子列52と、基板54とを有する。第1の実施の形態では、発光素子50は4つ設けられており、この4つの発光素子50が基板54に実装されている。なお、発光素子50の数が4つに限定されないことは勿論であり、1つ、または他の数の複数の発光素子50が設けられてもよい。
【0022】
発光素子50は、半導体発光素子(図示せず)および蛍光体(図示せず)を有する。第1の実施の形態では、発光素子50は、白色光を発するよう設けられている。具体的には、半導体発光素子には、主として青色光を発する青色LEDが採用されている。また、蛍光体は、青色光を黄色光に波長変換するものが採用されている。半導体発光素子が発光すると、半導体発光素子が発する青色光と、蛍光体によって波長変換された黄色光とが加法混色され、発光素子50の発光面から白色光が発せられる。このように半導体発光素子および蛍光体は公知であるため、詳細についての説明は省略する。
【0023】
なお、発光素子50が白色光を発するものに限定されないことは勿論であり、薄い黄色光や薄い青色光など他の色を発するものであってもよい。また、半導体発光素子は、例えば紫外光など青色以外の他の波長の光を主として発するものであってもよい。
【0024】
第1の実施の形態では、複数の発光素子50の各々は正方形に形成されている。なお、発光素子50の各々は、正方形以外の矩形に形成されていてもよい。複数の発光素子50の各々は、一端縁が隣の発光素子50の一端縁に接した状態で一列に並ぶよう配置され、発光素子列52を構成する。したがって発光素子列52は、細長い矩形の発光面52aを有する一体的な面光源として機能する。なお、発光素子列52に代えて、細長い矩形の発光素子が単一で用いられてもよい。また、発光素子列52の発光面52aは、矩形以外の他の形状に形成されてもよい。また、発光面52aは、平らな面でなくてもよく、後述するように第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2を形成するための縁を有していればよい。
【0025】
発光面52aは細長い矩形に形成されるため、発光面52aは長い2つの直線状の縁と短い2つの直線状の縁の計4つの縁を有する。この4つの縁のうち長い縁である上端縁52bが、ロービーム用配光パターンのカットオフラインの形成に利用される。
【0026】
図3(a)〜
図3(d)は、リフレクタ24の形状を示す図である。具体的には、
図3(a)、
図3(b)、
図3(c)は、それぞれリフレクタ24の斜視図、正面図、上面図である。
図3(d)は、
図3(c)におけるQ−Q断面図である。
【0027】
リフレクタ24は、反射面24aおよび凹部24bを有する。凹部24bは、支持部材20の下方の外形と略同一形状に形成されており、凹部24bが支持部材20の下部に嵌め込まれてリフレクタ24が支持部材20に対し位置決めされる。
【0028】
反射面24aは、ホットゾーン形成部24A、拡散領域形成部24B、24Cを有する。ホットゾーン形成部24Aは、拡散領域形成部24B、24Cの間に配置される。拡散領域形成部24Bは、リフレクタ24を正面に見て、すなわち灯具後方に向かってホットゾーン形成部24Aの右側に配置され、拡散領域形成部24Cは、灯具後方に向かってホットゾーン形成部24Aの左側に配置される。ホットゾーン形成部24Aは、発光モジュール22が発する光を灯具前方に反射して、後述するホットゾーン用配光パターンを形成する。拡散領域形成部24B、24Cは、発光モジュール22が発する光を灯具前方に反射して、後述する拡散配光パターンを形成する。
【0029】
ホットゾーン形成部24Aは、発光モジュール22までの平均距離が拡散領域形成部24B、24Cよりも短くなるよう配置されている。この平均距離は、ホットゾーン形成部24A、拡散領域形成部24B、24Cの各々の表面と発光モジュール22の中心と距離の平均値であり、積分によって算出してもよい。これにより、照度の高いホットゾーンを簡易に形成することができる。
【0030】
ホットゾーン形成部24A、拡散領域形成部24B、24Cの各々は、複数のセグメントを有する。複数のセグメントの各々は滑らかな曲面として形成され、互いに縁で接する隣のセグメントとは段差または折り目を介して接続されている。
【0031】
図4は、灯具ユニット16によって仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを示す図である。ロービーム用配光パターンPLは、非平行に延在することにより互いに角度を持って交わる第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2を有する。第1カットオフラインCL1は、消点から上下方向に伸びる鉛直線(V−V線)よりも右側において、水平線(H−H線)よりもわずかに(0.6度)下方に水平方向に延在する。第2カットオフラインCL2は、第1カットオフラインCL1とV−V線との交点から左に進むほど高くなるよう傾斜して延在する。上述のシェード26は、これら第1カットオフラインおよび第2カットオフラインより上方への光を遮光するよう設けられている。
【0032】
灯具ユニット16は、ロービーム用配光パターンPLを形成する。具体的には、ホットゾーン形成部24Aは、発光モジュール22が発した光を反射して第1カットオフラインおよび第2カットオフラインを含むホットゾーン用配光パターンPAを形成する。拡散領域形成部24B、24Cは、ホットゾーン用配光パターンPAよりも水平方向に長い拡散配光パターンPBを形成する。上述のように、ホットゾーン形成部24Aは、拡散領域形成部24B、24Cの間に配置される。このように光を拡散させる拡散領域形成部24B、24Cを、ホットゾーン形成部24Aの外側に配置することにより、リフレクタ24の形状の複雑化を回避することができる。
【0033】
ロービーム用配光パターンPLは、ホットゾーン用配光パターンPAと拡散配光パターンPBとが重ね合わされて形成される。拡散配光パターンPBは、水平方向に延在するよう形成され、ロービーム用配光パターンPLと同じ水平方向の長さを有する。拡散配光パターンPBは、V−V線より右側の上端縁によって第1カットオフラインCL1を形成する。
【0034】
ホットゾーン用配光パターンPAは、ロービーム用配光パターンPLのうち、照度を高くすべきホットゾーンを含むよう形成される。ホットゾーン用配光パターンPAは、互いに角度を持って交わる第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2を含む。ホットゾーン用配光パターンPAは、水平方向および鉛直方向の双方の長さが拡散配光パターンPBよりも小さく形成される。
【0035】
図5(a)は、ホットゾーン形成部24Aに含まれる各セグメントを模式的に示す図であり、
図5(b)は、ホットゾーン形成部24Aによって仮想鉛直スクリーン上に形成されるホットゾーン用配光パターンPAを示す図である。
図5(a)は、リフレクタ24を正面に見た図、すなわちリフレクタ24を灯具後方に向かって見た図を示している。
図5(b)は、ホットゾーン形成部24Aによって仮想鉛直スクリーンに形成されるホットゾーン用配光パターンPAを灯具前方に向かって見た図を示している。
【0036】
ホットゾーン形成部24Aは、上下方向3列、左右方向2列に分割されることによって形成されたセグメントA1〜A6の6つのセグメントを有する。セグメントA1〜A6の各々は矩形に形成されている。セグメントA1〜A3は、灯具後方に向かって左の列に含まれ、上から下に向かってセグメントA1、A2、A3の順に配置されている。セグメントA4〜A6は、灯具後方に向かって右の列に含まれ、上から下に向かってA4、A5、A6の順に配置されている。
【0037】
ホットゾーン用配光パターンPAは、投影像PA1〜PA6が重畳されることによって形成される。投影像PA1〜PA6の各々は、セグメントA1〜A6の各々による反射光によって形成される。
【0038】
セグメントA1〜A3の各々は、発光面52aが細長い矩形に形成されていることを利用して、水平方向に延在する投影像PA1〜PA3を形成する。具体的には、投影像PA1は、ホットゾーン用配光パターンPAと略同一の水平方向の長さを有する。投影像PA1は、上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。また、投影像PA1は、水平方向における中央部がV−V線より右側に位置するよう形成される。
【0039】
投影像PA2は、投影像PA1よりも短い水平方向の長さを有する。投影像PA2もまた、上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう、かつ水平方向における中央部がV−V線よりわずかに右側に位置するよう形成される。投影像PA3は、投影像PA2よりも短い水平方向の長さを有する。投影像PA3は、上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう、かつ水平方向における中央部がV−V線よりわずかに右側に位置するよう形成される。
【0040】
このように、セグメントA1〜A3は、投影像PA1〜PA3を重畳した配光パターンを形成することにより、上端縁が第1カットオフラインCL1に重なるよう水平方向に延在すると共に、消点に近づくにしたがって照度が増加する配光パターンを形成する。
【0041】
セグメントA4〜A6の各々は、発光面52aが細長い矩形に形成されていることを利用して、第2カットオフラインCL2と略平行に延在する投影像PA4〜PA6を形成する。具体的には、投影像PA4は、上端縁が第2カットオフラインCL2の全長と重なるよう斜めに延在して形成される。このため、投影像PA4は、ホットゾーン用配光パターンPAの約半分の長さを有する。また、投影像PA4は、右端部がV−V線よりわずかに右に位置し、左端部がホットゾーン用配光パターンPAの左端部に位置するよう形成される。
【0042】
投影像PA5は、第2カットオフラインCL2と平行な方向および垂直な方向の双方の長さが投影像PA4よりも短く形成される。投影像PA5もまた、上端縁が第2カットオフラインCL2と重なるよう斜めに延在して形成される。また、投影像PA5は、右端部が消点と投影像PA4の右端部との間に位置し、左端部が投影像PA4の左端部よりも消点寄りに位置するよう形成される。
【0043】
投影像PA6は、第2カットオフラインCL2と平行な方向および垂直な方向の双方の長さが投影像PA5よりも短く形成される。投影像PA6もまた、上端縁が第2カットオフラインCL2と重なるよう斜めに延在して形成される。また、投影像PA6は、右端部が消点と投影像PA5の右端部との間に位置し、左端部が投影像PA5の左端部よりも消点寄りに位置するよう形成される。
【0044】
このように、セグメントA4〜A6は、投影像PA4〜PA6を重畳した配光パターンを形成することにより、上端縁が第2カットオフラインCL2に重なるよう斜めに延在するとともに、消点に近づくにしたがって照度が増加する配光パターンを形成する。
【0045】
ここで、ホットゾーン形成部24Aは、第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2を、発光面52aの同じ上端縁52bの反射像で形成する。近年、LED光源など、平面上の発光面を持つ面発光源の開発が急激に進められている。このような面発光源は縁を有する。このような面発光源の縁を利用してカットオフラインを形成することで、明確なカットオフラインを簡易に形成することが可能となる。
【0046】
さらに、第1の実施の形態では、細長い矩形の発光面52aを有する発光素子列52を光源として利用している。このため、細長い配光パターンを形成するために発光面が発する光を過度に拡散して反射することを回避でき、明確なカットオフラインの形成をより容易なものとしている。
【0047】
さらに、セグメントA1〜A3は、発光面52aにおける上端縁52bの反射像で第1カットオフラインCL1を形成する。セグメントA4〜A6は、発光面52aにおける上端縁52bの反射像で第2カットオフラインを形成する。このように発光面52aの同じ上端縁52bの反射像で、互いに角度を持って延在する第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2を形成することにより、例えば互いに角度をもって延在する2列の発光素子列52の反射像で第1カットオフラインCL1および第2カットオフラインCL2を形成する場合などに比べ、発光素子に要するコストを抑制することができる。
【0048】
また、第1カットオフラインCL1を形成するセグメントA1〜A3と、第2カットオフラインCL2を形成するセグメントA4〜A6とは、隣り合って配置される。これにより、例えばセグメントA1〜A3とセグメントA4〜A6とを離間させた場合に比べ、ホットゾーン形成部24Aの大きさを抑制することができる。
【0049】
なお、セグメントA1〜A3のいずれかが第1カットオフラインCL1を形成し、残りは第1カットオフラインCL1を形成しなくてもよい。また、セグメントA4〜A6のいずれかが第2カットオフラインCL2を形成し、残りは第2カットオフラインCL2を形成しなくてもよい。
【0050】
図6(a)は、拡散領域形成部24Bに含まれる各セグメントを模式的に示す図であり、
図6(b)は、拡散領域形成部24Bによって仮想鉛直スクリーン上に形成される第1拡散配光パターンPB1を示す図である。
図6(a)は、リフレクタ24を正面に見た図、すなわちリフレクタ24を灯具後方に向かって見た図を示している。
図6(b)は、拡散領域形成部24Bの反射光によって仮想鉛直スクリーンに形成される第1拡散配光パターンPB1を灯具前方に向かって見た図を示している。
【0051】
拡散領域形成部24Bは、上下方向2列に分割される。このうち上の列は左右方向に並ぶ2つのセグメントに分割され、下の列は左右方向に並ぶ3つのセグメントに分割される。この結果、拡散領域形成部24Bは5つのセグメントB1〜B5に分割される。セグメントB1、B2の各々は矩形に形成されている。拡散領域形成部24Bの下端縁は円弧状となっているため、セグメントB3〜B5の各々は、矩形の下部が斜めに切り取られた台形状に形成されている。セグメントB1、B2は、拡散領域形成部24Bの上の列に、灯具後方に向かって左から右にセグメントB1、B2の順に配置されている。セグメントB3〜B5は、拡散領域形成部24Bの下の列に、灯具後方に向かって左から右にセグメントB3〜B5の順に配置されている。
【0052】
第1拡散配光パターンPB1は、投影像PB11〜PB15が重畳されることによって形成される。投影像PB11〜PB15の各々は、セグメントB1〜B5の各々による反射光によって形成される。
【0053】
セグメントB1〜B5の各々は、発光面52aが細長い矩形に形成されていることを利用して、水平方向に延在する投影像PB11〜PB15を形成する。具体的には、投影像PB11は、拡散配光パターンPBよりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB11は、灯具前方に向かって右端部が拡散配光パターンPBの右端部に位置し、左端部が拡散配光パターンPBの左端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成される。また、投影像PB11は、上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0054】
投影像PB12は、投影像PB11よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB12は、灯具前方に向かって右端部が拡散配光パターンPBの右端部に位置し、左端部が投影像PB11の左端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0055】
投影像PB13は、投影像PB12よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB13は、水平方向の中央部がV−V線付近に位置し、左端部が投影像PB12の左端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0056】
投影像PB14は、投影像PB13よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB14は、水平方向の中央部がV−V線付近に位置し、左右の端部が投影像PB13の左右の端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0057】
投影像PB15は、投影像PB14よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB15は、水平方向の中央部がV−V線付近に位置し、左右の端部が投影像PB14の左右の端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0058】
図7(a)は、拡散領域形成部24Cに含まれる各セグメントを模式的に示す図であり、
図7(b)は、拡散領域形成部24Cによって仮想鉛直スクリーン上に形成される第2拡散配光パターンPB2を示す図である。
図7(a)は、リフレクタ24を正面に見た図、すなわちリフレクタ24を灯具後方に向かって見た図を示している。
図7(b)は、拡散領域形成部24Cの反射光によって仮想鉛直スクリーンに形成される第2拡散配光パターンPB2を灯具前方に向かって見た図を示している。
【0059】
拡散領域形成部24Cは、上下方向2列に分割される。このうち上の列は左右方向に並ぶ2つのセグメントに分割され、下の列は左右方向に並ぶ3つのセグメントに分割される。この結果、拡散領域形成部24Cは5つのセグメントC1〜C5に分割される。セグメントC1、C2の各々は矩形に形成されている。拡散領域形成部24Cの下端縁は円弧状となっているため、セグメントC3〜C5の各々は、矩形の下部が斜めに切り取られた台形状に形成されている。セグメントC1、C2は、拡散領域形成部24Cの上の列に、灯具後方に向かって右から左にセグメントC1、C2の順に配置されている。セグメントC3〜C5は、拡散領域形成部24Cの下の列に、灯具後方に向かって右から左にセグメントC3〜C5の順に配置されている。
【0060】
第2拡散配光パターンPB2は、投影像PB21〜PB25が重畳されることによって形成される。投影像PB21〜PB25の各々は、セグメントC1〜C5の各々による反射光によって形成される。
【0061】
セグメントC1〜C5の各々は、発光面52aが細長い矩形に形成されていることを利用して、水平方向に延在する投影像PB21〜PB25を形成する。具体的には、投影像PB21は、拡散配光パターンPBよりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB21は、灯具前方に向かって左端部が拡散配光パターンPBの左端部に位置し、右端部が拡散配光パターンPBの右端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成される。また、投影像PB21は、上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0062】
投影像PB22は、投影像PB21よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB22は、灯具前方に向かって左端部が拡散配光パターンPBの左端部に位置し、右端部が投影像PB21の右端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0063】
投影像PB23は、投影像PB22よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB23は、水平方向の中央部がV−V線付近に位置し、右端部が投影像PB22の右端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0064】
投影像PB24は、投影像PB23よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB24は、水平方向の中央部がV−V線付近に位置し、左右の端部が投影像PB23の左右の端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0065】
投影像PB25は、投影像PB24よりも短い長さで水平方向に延在するよう形成される。このとき投影像PB25は、水平方向の中央部がV−V線付近に位置し、左右の端部が投影像PB24の左右の端部よりもV−V線寄りに位置するよう形成され、さらに上端縁が第1カットオフラインCL1と重なるよう形成される。
【0066】
このように、拡散領域形成部24Bは、セグメントB1〜B5により、投影像PB11〜PB15を重畳した第1拡散配光パターンPB1を形成する。また、拡散領域形成部24Cは、セグメントC1〜C5により、投影像PB21〜PB25を重畳した第2拡散配光パターンPB2を形成する。したがって、拡散領域形成部24B、24Cは、第1拡散配光パターンPB1と第2拡散配光パターンPB2とを重畳させて、上端縁が第1カットオフラインCL1に重なるよう水平方向に延在するとともに、消点に近づくにしたがって照度が増加する拡散配光パターンPBを形成する。
【0067】
上述した車両用前照灯10を車両に適用しようとする場合、意匠やスペースの関係で、リフレクタ24をそのまま実装することが困難なときがある。そのような場合、リフレクタは、一部が切り欠かれたような形状となり、その有効反射面が左右対称とはならない。
【0068】
図8は、一部が切り欠かれているリフレクタの正面図である。
図8に示すリフレクタ60は、前述のホットゾーン形成部24Aの一部が切り欠かれている。つまり、
図5に示すリフレクタ24と比較して、左右非対称な形状のリフレクタ60は、カットオフラインを形成する反射面の一部がないため、そのままでは遠方視認性が低下してしまう。そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、以下の構成を採用することに想到した。
【0069】
図9(a)は、第1の実施の形態に係るリフレクタを模式的に示した正面図、
図9(b)は、第1の実施の形態に係る光源の傾きを示す上面図、
図9(c)は、
図9(a)のリフレクタにおける第1のカットオフラインを形成する反射部を結んだ線および第2のカットオフラインを形成する反射部を結んだ線を示す図、
図9(d)は、
図9(a)のリフレクタの反射部E〜Hにおける投影像の角度を示す図である。
【0070】
以下の説明では、車両の正面であってリフレクタの光軸方向をX方向、車両の車幅方向をY方向、車両の上下方向をZ方向とする。ここで、リフレクタの光軸とは、例えば、リフレクタの反射光が最も明るい方向ととらえることができる。あるいは、リフレクタの上端縁(
図9(a)に示す上端縁62a)の中心から車両の正面に向かう方向ととらえてもよい。
【0071】
図9(a)に示す車両用前照灯70は、リフレクタ62と、少なくとも一辺が直線状の発光面を有する光源64と、を有する。光源64は、
図9(b)に示すように、Z軸を中心に回転されており、直線状の一辺64bが光軸(X方向)に対して斜めに配置されている。また、光源64は、発光面64aが下方に向くように配置されている。つまり、光源64から下方に向かって出射した光は、リフレクタ62表面の各反射部により車両前方へ向かって反射され、投影像として重畳される。本実施の形態に係るリフレクタ62は、
図9(d)に示すように、反射部E〜Hによって形成される発光面の反射像(投影像)E〜Hの回転角度が異なるように構成されている。
【0072】
つまり、矩形の光源64が車両進行方向に投影された、その投影像の長辺の角度がリフレクタ62上の各点で異なっている。リフレクタ62のY方向が異なる反射部では、光源像が違った角度で反射、投影されるので、投影角度が水平になる位置と水平から所定の角度になる位置を特定することができる。
【0073】
したがって、発光面の反射像の直線状の一辺が、第1カットオフラインと同じ水平方向となるように反射する第1反射部66は、少なくとも、
図9(a)に示す反射部Fと反射部Gとの間の領域に存在することになる。
図9(c)に示すラインL1は、複数の第1反射部66を結んだものである。また、発光面の反射像の直線状の一辺が、第2カットオフラインと同じ水平方向に対して所定の角度(約15度)となるように反射する第2反射部68は、少なくとも、
図9(a)に示す反射部Gと反射部Hとの間の領域に存在することになる。
図9(c)に示すラインL2は、複数の第2反射部68を結んだものである。
【0074】
リフレクタ62は、光源が出射した光を反射して、互いに角度を持つ第1カットオフラインおよび第2カットオフラインを有する配光パターンを形成するとともに、
図9(a)や
図9(c)に示すように、光軸(X方向)を中心に車幅方向(Y方向)の左側の領域の面積と右側の領域の面積とが異なる形状である。また、複数の第1反射部66と複数の第2反射部68は、リフレクタ62を後方に見て有効反射面積が大きい右側の領域に位置している。
【0075】
このように、車両用前照灯70は、第1カットオフラインを形成する複数の第1反射部66および第2カットオフラインを形成する複数の第2反射部68が、リフレクタ62の左側の領域および右側の領域のうち面積の大きい右側領域に位置するように構成されている。そのため、車両用前照灯70は、カットオフライン近傍の光度の低下を抑制でき、遠方視認性の良好な所望の光度のロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0076】
また、車両用前照灯の意匠や実装する車両のスペースによって、リフレクタの反射面が光源に対して左右非対称の場合でも、発光面の直線状の一辺が光軸に対して斜めになるように光源を配置することで、遠方視認性を確保できる。つまり、灯具の意匠の自由度を満たしつつ、所望のロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0077】
なお、本実施の形態では、リフレクタ62を後方に見て左側の領域が切り欠かれている(右側の領域の面積が大きい)場合について説明したが、右側の領域が切り欠かれている(左側の領域の面積が大きい)場合についても適用できる。その場合、光源64の回転方向を
図9(b)に示す回転方向Rと反対にすることで対応できる。
【0078】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態に係る車両用前照灯70は、光源の発光面が下方に向くように配置されている。本実施の形態に係る車両用前照灯は、光源の発光面が車幅方向に向くように配置されている点が異なる。
【0079】
図10(a)は、第2の実施の形態に係るリフレクタを模式的に示した正面図、
図10(b)は、第2の実施の形態に係るリフレクタを模式的に示した上面図、
図10(c)は、第2の実施の形態に係るリフレクタを模式的に示した斜視図、
図10(d)は、第2の実施の形態に係る光源の傾きを示す側面図である。
【0080】
図10(a)に示す車両用前照灯80は、リフレクタ72と、少なくとも一辺が直線状の発光面を有する光源74と、を有する。光源74は、
図10(d)に示すように、Y軸を中心に回転されており、直線状の一辺74bが光軸(X方向)に対して斜めに配置されている。また、光源74は、発光面74aが車幅方向(Y方向)の外側に向くように配置されている。つまり、光源74からY方向に向かって出射した光は、リフレクタ72表面の各反射部により車両前方へ向かって反射され、投影像として重畳される。本実施の形態に係るリフレクタ72は、Z方向が異なる反射部によって形成される発光面の反射像(投影像)の回転角度が異なるように構成されている。
【0081】
つまり、矩形の光源74が車両進行方向に投影された、その投影像の長辺の角度がリフレクタ72上の各点で異なっている。リフレクタ72のZ方向が異なる反射部では、光源像が違った角度で反射、投影されるので、投影角度が水平になる位置と水平から所定の角度になる位置を特定することができる。
【0082】
したがって、発光面の反射像の直線状の一辺が、第1カットオフラインと同じ水平方向となるように反射する第1反射部76は、
図10(a)〜
図10(c)に示すラインL1上に位置する。また、発光面の反射像の直線状の一辺が、第2カットオフラインと同じ水平方向に対して所定の角度(約15度)となるように反射する第2反射部78は、
図10(a)〜
図10(c)に示すラインL2上に位置する。
【0083】
リフレクタ72は、光源が出射した光を反射して、互いに角度を持つ第1カットオフラインおよび第2カットオフラインを有する配光パターンを形成するとともに、
図10(a)に示すように、光軸(X方向)を中心に上側の領域の面積と下側の領域の面積とが異なる形状である。また、複数の第1反射部76と複数の第2反射部78は、リフレクタ72を後方に見て有効反射面積が大きい下側の領域に位置している。
【0084】
これにより、車両用前照灯80は、第1カットオフラインを形成する複数の第1反射部76および第2カットオフラインを形成する複数の第2反射部78が、リフレクタ72の上側の領域および下側の領域のうち面積の大きい下側領域に位置する。そのため、車両用前照灯80は、カットオフライン近傍の光度の低下を抑制でき、遠方視認性の良好な所望の光度のロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0085】
また、車両用前照灯の意匠や実装する車両のスペースによって、リフレクタの反射面が光源に対して上下非対称の場合でも、発光面の直線状の一辺が光軸に対して斜めになるように光源を配置することで、遠方視認性を確保できる。つまり、灯具の意匠の自由度を満たしつつ、所望のロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0086】
なお、本実施の形態では、リフレクタ72を後方に見て上側の領域が切り欠かれている(下側の領域の面積が大きい)場合について説明したが、下側の領域が切り欠かれている(上側の領域の面積が大きい)場合についても適用できる。その場合、光源74の回転方向を
図10(d)に示す回転方向Rと反対にすることで対応できる。
【0087】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。