(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一及び前記第二のアクチュエータが前記第一及び前記第二の中間リンクを互いに同方向に回転させることによって、前記第二部材が前記第一部材に対して前記直角な二軸のうちの一方の軸の回りを相対的に回転し、
前記第一及び前記第二のアクチュエータが前記第一及び前記第二の中間リンクを互いに反対方向に回転させることによって、前記第二部材が前記第一部材に対して前記直角な二軸のうちの他方の軸の回りを相対的に回転することを特徴とする請求項1に記載のロボットの関節構造。
前記第一及び前記第二の中間リンクの少なくとも一方と前記第一部材との間には、前記第一及び前記第二の中間リンクの前記少なくとも一方が一方向に回転するように付勢するばねが介在されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のロボットの関節構造。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面に基づいて、本発明の第一の実施形態におけるロボットの関節構造を説明する。
図1は、ロボットの関節構造が組み込まれた人間型ロボットの全体構成を示す正面図である。
図2は人間型ロボットの右側面図である。本実施形態において左右は図に示す人間型ロボット側から見た左右である。
【0013】
人間型ロボット10は、胴体部11の下方に設置された二本の脚部12と、胴体部11の上方左右両側面に設置された二本の腕部13と、胴体部11の上方に設置された一個の頭部14とから構成されており、人間に近い動作を可能としている。
【0014】
二本の腕部13は、胴体部11の周囲で自在に移動できるようになっている。各腕部13は肘を境に、肩に近い方の上腕部13cと、手部13aに近い方の下腕部13bと、を備える。下腕部13bの先端には手首関節21を介して手部13aが設置されている。手部13aを利用することで物を掴んだり摘まんだりすることが可能となっている。
【0015】
この人間型ロボット10は、二足歩行ロボットであり、人間のように二本脚でバランスをとりながら歩く。各脚部12は股関節16を介して胴体部11の骨盤に連結されている。股関節16は各脚部12をヨー軸、ピッチ軸、及びロール軸回りに回転させる。ここで、人間型ロボットの進行方向をx軸正方向、ロボットからみて左手方向をy軸正方向、ロボットの上方をz軸方向としたとき、x軸がロール軸、y軸がピッチ軸、z軸がヨー軸である。そして、x軸回りの回転がロール、y軸回りの回転がピッチ、z軸回りの回転がヨーである。
【0016】
股関節16には大腿部17aが連結される。大腿部17aの下には膝関節18が設けられる。膝関節18の下には脛部17bが連結される。脛部17bの下には足首関節19が設けられる。足首関節19の下には歩行路面と接触する足部20が連結される。
【0017】
頭部14および胴体部11には、それぞれにCCDカメラ15が設置されている。このCCDカメラ15によって、人間型ロボット10の周囲の状況を画像データとして収集することが可能となっている。
【0018】
この人間型ロボット10は、遠隔操作可能に構成されたロボットであり、離れた位置にある図示しない操作マニピュレータを操作者が操作することで、操作マニピュレータの動きに応じた動作を人間型ロボット10が実行できるようになっている。したがって、操作者は、インターネット回線等の無線通信手段や人間型ロボット10に設置されたCCDカメラ15等を介して、遠隔地に居ながらにして人間型ロボット10の周囲の状況を把握でき、人間型ロボット10の操作ができるようになっている。
【0019】
図3は、本発明の第一の実施形態のロボットの関節構造が組み込まれたロボットの手首関節の斜視図を示す。この実施形態のロボットの関節構造は、下腕部13bと手部13aとの間の手首関節21に組み込まれる。この実施形態のロボットの関節構造は、第一部材としての下腕部フレーム22、第二部材としての可動フレーム23、下腕部フレーム22と可動フレーム23とを回転可能に連結する自在継手24、第一及び第二のアーム25a,25b、第一及び第二の中間リンク26a,26b、第一及び第二のアクチュエータとしての第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bと、を備ええる。
【0020】
可動フレーム23は下腕部フレーム22に対して直角な二軸の回りを回転可能であり、2自由度を持つ。下腕部フレーム22には、人間の筋肉のように機能する第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが平行に収納される。第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが押し引き動作を行うことによって、可動フレーム23が直角な二軸の回りを回転する。
【0021】
可動フレーム23には手部13aが固定されている。手部13aには複数本の指27a〜27cが設けられている。複数本の指27a〜27cは物を掴んだり摘まんだりすることができるように曲げることが可能となっている。
【0022】
図4は、関節構造の詳細図を示す。
図4(a)は関節構造の側面図を示し、
図4(b)及び
図4(c)は
図3と同方向から見た斜視図を示す。
図4(b)は第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが軸部31a,31bを同方向に引き込んだ状態を示し、
図4(c)は第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが軸部31a,31bを異なった方向に押し引きしている状態を示す。
【0023】
図4(b)に示すように、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが軸部31a,31bを同方向に引き込むと、可動フレーム23がピッチ軸の回りを回転するようになっている。
図4(c)に示すように、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが軸部31a,31bを異なった方向に押し引きすると、可動フレーム23がヨー軸の回りを回転するようになっている。ここでは、
図4(a)に示すように、下腕部フレーム22の長さ方向をx軸正方向、
図4(a)の上方向をy軸正方向、
図4(a)の紙面と直交する方向をz軸方向としていて、x軸をロール軸、y軸をピッチ軸、z軸をヨー軸としている。
図4(b)では可動フレーム23がピッチ軸(自在継手24のピッチ軸部24a)の回りを回転していて、
図4(c)では可動フレーム23がヨー軸(自在継手24のヨー軸部24b)の回りを回転している。
【0024】
下腕部フレーム22は、下腕部13bの長さ方向に伸びる互いに平行な一対の対向プレート22a,22bを備える。対向プレート22a,22bは長さ方向の端部の連結プレートに一体的に結合される。一対の対向プレート22a,22b間には、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが略平行に収容される。
【0025】
可動フレーム23は、手部13aが取り付けられる取付プレート23aと、取付プレート23aに対して直角に折り曲げられ、互いに平行な一対の支持プレート23b,23cと、を備える。
【0026】
下腕部フレーム22の先端には、自在継手24としての十文字状の軸体24が取り付けられる。軸体24は、直角な二軸を構成するピッチ軸部24a及びヨー軸部24bを備える。この実施形態では、ピッチ軸部24a及びヨー軸部24bの軸線が平面内で直交している。ヨー軸部24bは一対の対向プレート22a,22b間に架け渡され、一対の対向プレート22a,22bに回転可能に支持される。ピッチ軸部24aは可動フレーム23の一対の支持プレート23b,23c間に架け渡され、一対の支持プレート23b,23cに回転可能に連結される。下腕部フレーム22に軸体24がヨー軸部24bの回りを回転可能に支持され、軸体24には可動フレーム23がピッチ軸部24aの回りを回転可能に連結されるので、下腕部フレーム22に対して可動フレーム23が直交するピッチ軸部24a及びヨー軸部24bの回りを回転可能となっている。なお、ピッチ軸部24aとヨー軸部24bの軸線は直角を保てればよく、直交せずに離間していてもよい。
【0027】
第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bそれぞれは、円筒状の本体部32a,32bと、本体部32a,32bに対して軸線方向に直線運動する軸部31a,31bと、を備える。第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの構造は同一である。軸部31a,31bは本体部32a,32bの軸線上に配置される。軸部31a,31bの外周面には螺旋状のねじ溝が形成される。本体部32a,32bには、軸部31a,31bのねじ溝に螺合するボールねじナット(図示せず)が収納される。本体部32a,32bには、ボールねじナットが本体部32a,32bに軸線の回りの回転のみが許容された状態で収納される。本体部32a,32bにはさらにボールねじナットを回転させるサーボモータが収納される。サーボモータがボールねじナットを回転させると、ボールねじナットの軸線方向の移動が制限されているので、軸部31a,31bが軸線方向に直線運動する。
【0028】
第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの本体部32a,32bは、下腕部フレーム22に回転可能に支持される。本体部32a,32bは四角形の枠部35a,35b(
図4(a)参照)に嵌められている。四角形の枠部35a,35bは回転軸36a,36b(
図4(a)参照)を備え、下腕部フレーム22に回転可能に支持される。第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの本体部32a,32bは回転軸36a,36bを中心として揺動することが可能となっている。回転軸36a,36bは軸体24のヨー軸部24bと平行である。第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bは上下方向に二つ配列されていて、回転軸36a,36bも上下方向に二つ設けられる。
【0029】
第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bと軸体24との間には、第一及び第二の中間リンク26a,26bが回転可能に設けられる。第一及び第二の中間リンク26a,26bは別々に回転可能である。第一の中間リンク26aは第一の軸線26a1(
図4(a)参照)の回りを回転可能であり、第二の中間リンク26bは第二の軸線26b1(
図4(a)参照)の回りを回転可能である。この実施形態では、第一の軸線26a1及び第二の軸線26b1が同一の直線L(
図4(b)参照)上に配置され、第一及び第二の中間リンク26a,26bは共通の直線Lの回りを回転する。第一及び第二の中間リンク26a,26bを回転可能に支持する回転軸は一対の対向プレート22a,22b間に架け渡され、軸体24のヨー軸部24bと平行である。
【0030】
図4(b)に示すように、第一及び第二の中間リンク26a,26bそれぞれは、回転軸に回転可能に支持される基部26a2,26b2と、基部26a2,26b2から二股に分岐するブラケット部26a3,26b3と、ブラケット部26a3,26b3に回転可能に支持される連結軸26a4,26b4と、を備える。基部26a2,26b2は、一対の対向プレート22a,22b間に収納できるように一対の対向プレート22a,22b間の距離の半分の軸線方向長さを持つ。ブラケット部26a3,26b3は、連結軸26a4,26b4を回転可能に支持する。ブラケット部26a3,26b3は、一対の対向プレート22a,22b間の略全長に渡る横幅を有する。第一及び第二の中間リンク26a,26bのなす角度が所定角度、例えば90度以下になるときは、第一の中間リンク26aのブラケット部26a3と第二の中間リンク26bのブラケット部26b3とが当接し、第一の中間リンク26aと第二の中間リンク26bとのなす角度が所定角度以下になるのを制限している。連結軸26a4,26b4には、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの軸部31a,31bの先端が結合される。
【0031】
可動フレーム23と第一の中間リンク26aとの間には第一のアーム25aが架け渡される。第一のアーム25aの長さ方向の両端部にはボールジョイントが設けられ、第一のアーム25aはボールジョイントを介して可動フレーム23及び第一の中間リンク26aの連結軸26a4に連結される。
図5は第一のアーム25aの端部に組み込まれるボールジョイント41の断面図を示す。ボールジョイント41は3自由度の継手であり、例えば内輪41b及び外輪41aを球面接触させた構造の球面軸受から構成される。外輪41aは第一のアーム25aに結合される。内輪41bには可動フレーム23から突出する軸体42が結合される。内輪41bは外輪41aに対して直交する三軸の回りを回転可能である。ボールジョイントとして、例えばリンクボール(THK社製品名)継手を用いることができる。
【0032】
図4(b)に示すように、可動フレーム23と第二の中間リンク26bとの間には第二のアーム25bが架け渡される。第二のアーム25bの長さ方向の両端部には、第一のアーム25aと同一のボールジョイントが設けられる。第二のアーム25bはボールジョイントを介して可動フレーム23及び第二の中間リンク26bの連結軸26b4に連結される。
【0033】
下腕部フレーム22の対向プレート22a,22b間には、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bに隣接して、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bのサーボモータを制御する第一及び第二のドライバ34a,34bが設けられる。第一及び第二のドライバ34a,34bのそれぞれは、サーボモータに電力を供給するPWM(pulse width modulation)インバータ等の電力変換器、サーボモータの出力軸の速度及び位置を検出するセンサ、操作マニピュレータからの指令及びセンサからの情報によって電力変換器を制御する制御器を備える。第一及び第二のドライバ34a,34bは相互に通信し合い、別に制御ボックスが無くても同期した動きが可能となっている。なお、第一及び第二のドライバ34a,34bを統合させた一つのドライバによって二つのサーボモータを制御するようにしてもよい。
【0034】
図4(b)に示すように、第一及び第二のドライバ34a,34bに指令を与え、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが軸部31a,31bを同方向に引き込むようにすると、第一の中間リンク26a及び第二の中間リンク26bが互いに反対方向に回転する。この例では、上側の第一の中間リンク26aが時計方向に回転し、下側の第二の中間リンク26bが反時計方向に回転する。第一及び第二の中間リンク26a,26bが互いに反対方向に回転すると、第一及び第二のアーム25a,25bが引き込まれ、第一及び第二のアーム25a,25bに連結される可動フレーム23がピッチ軸部24aの回りのみを回転する。逆に、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが軸部31a,31bを同方向に押し出すようにすると、可動フレーム23はピッチ軸部24aの回りのみを反対方向に回転する。
【0035】
図4(c)に示すように、第一及び第二のドライバ34a,34bに指令を与え、第一の直動アクチュエータ28aが軸部31aを押し出し、第二の直動アクチュエータ28bが軸部31bを引き込むようにすると、第一及び第二の中間リンク26a,26bが同方向に回転する。この例では、上側の第一の中間リンク26a及び下側の第二の中間リンク26bのいずれもが反時計方向に回転する。第一及び第二の中間リンク26a,26bが反時計方向に回転すると、第一のアーム25aが押し出され、第二のアーム25bが引き込まれる。これにより第一及び第二のアーム25a,25bに連結される可動フレーム23がヨー軸部24bの回りのみを回転する。逆に、第一の直動アクチュエータ28aが軸部31aを引き込み、第二の直動アクチュエータ28bが軸部31bを押し出すようにすると、可動フレーム23がヨー軸部24bの回りのみを反対方向に回転する。
【0036】
なお、
図4(b)及び
図4(c)では、可動フレーム23をピッチ軸部24aの回りにのみ又はヨー軸部24b回りにのみ回転させる例について説明したが、可動フレーム23をピッチ軸部24aの回りに回転させながらヨー軸部24bの回りに回転させることも可能となっている。
【0037】
この第一の実施形態のロボットの関節構造によれば、以下の効果を奏する。可動フレーム23を直角な二軸の回りに回転させるにあたって第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bを同時に作動させている。このため、従来の回転系のサーボモータを組み合わせた関節構造に比べて、力を数倍発生することができる。逆にいえば、必要な力を得るための第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bを小型化することができ、関節構造の小型化が図れる。
【0038】
第一及び第二の中間リンク26a,26bを反対方向に回転させることによって、可動フレーム23をピッチ軸部24aの回りに回転させている。そして、第一及び第二の中間リンク26a,26bを反対対方向に回転させることによって、可動フレーム23をヨー軸部24bの回りに回転させている。第一及び第二の中間リンク26a,26bの回転と可動フレーム23のピッチ軸部24a及びヨー軸部24bの回転との因果関係が理解し易いので、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの制御が容易になる。
【0039】
第一及び第二のアーム25a,25bと第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bとの間には、第一及び第二の中間リンク26a,26bが介在し、可動フレーム23に作用する荷重は一旦第一及び第二の中間リンク26a,26bが受ける。このため、可動フレーム23に作用する荷重が第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの軸部31a,31bに直接的に作用するのを防止でき、軸部31a,31bに軸線方向以外のラジアル荷重、ねじれ、モーメント等の無理な力が作用するのを防止できる。
【0040】
第一及び第二のアーム25a,25bの長さ方向の両端部には、3自由度のボールジョイントが設けられる。このため、可動フレーム23がピッチ軸部24a及びヨー軸部24bの回りを回転しても、可動フレーム23から第一及び第二の中間リンク26a,26bに無理な力がかかるのを防止できる。
【0041】
第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの本体部32a,32bは下腕部フレーム22に回転可能に支持され、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの軸部31a,31bは第一及び第二の中間リンク26a,26bに回転可能に連結されている。このため、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの軸部31a,31bが軸線方向に移動すると、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bが回転軸36a,36bの回りを揺動する。このため、第一及び第二の中間リンク26a,26bが回転しても、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bの軸部31a,31bに軸線方向以外のラジアル荷重、ねじれ、モーメント等の無理な力が作用するのを防止できる。
【0042】
第一の中間リンク26aと第二の中間リンク26bとのなす角度が所定角度のとき、第一の中間リンク26aと第二の中間リンク26bとが互いに当接する。第一の中間リンク26aと第二の中間リンク26bとをストッパとして機能させることで、第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bに供給する電力が切れても、可動フレーム23の回転角度を一定に保つことができる。
【0043】
下腕部フレーム22に第一及び第二の直動アクチュエータ28a,28bを制御する第一及び第二のドライバ34a,34bを設けることで、第一及び第二のアクチュエータ28a,28bの同期した動作が容易になる。また、配線を省略すること可能になる。
【0044】
自在継手としての軸体24が平面内で直交するピッチ軸部24a及びヨー軸部24bを備えるので、可動フレーム23を下腕部フレーム22に対して直交する二軸の回りを回転させることが可能になる。ただし、ピッチ軸部24aとヨー軸部24bとは直角であればよく、平面内で直交せずに離間していてもよい。
【0045】
図6は、本発明の第二の実施形態のロボットの関節構造が組み込まれたロボットの足首関節を示す。この実施形態のロボットの関節構造は人間型ロボット10の足首関節19(
図1参照)に適用されている。この実施形態のロボットの関節構造の基本構造は、上記第一の実施形態のロボットの関節構造と同一であり、第一及び第二のアーム51a,51b、第一及び第二の中間リンク52a,52b、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bを備える。第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bを動作させることによって、脛部リンク54に対して足部フレーム55をピッチ軸及びロール軸の回りに回転させる。
【0046】
脛部リンク54の下端には、自在継手として、ピッチ軸部56a及びロール軸部56bを備える十文字状の軸体56が設けられる。軸体56のピッチ軸部56aは脛部リンク54に回転可能に取り付けられる。軸体56のロール軸部56bは足部フレーム55に回転可能に取り付けられる。足部フレーム55は脛部リンク54に対してピッチ軸部56a及びロール軸部56bの回りに回転可能になっている。
【0047】
脛部リンク54を挟んで図中奥側には第一の直動アクチュエータ53a、第一の中間リンク52a及び第一のアーム51aが配置される。手前側には第二の直動アクチュエータ53b、第二の中間リンク52b及び第二のアーム51bが配置される。
【0048】
第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bは、直方体状の本体部61と、本体部61に対して軸線方向に直線運動する軸部62と、を備える。第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの構造は同一である。本体部61の外形形状は第一の実施形態と異なるが、基本構造は第一の実施形態と同一である。本体部61の内部には、サーボモータ、及びサーボモータによって回転駆動されるボールねじナットが設けられる。軸部62の外周面には螺旋状のねじ溝が形成される。サーボモータがボールねじナットを回転駆動すると、ボールねじナットに螺合する軸部62が軸線方向に直線運動する。
【0049】
第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bは、脛部リンク54にピッチ軸の回りを回転可能に支持される。脛部リンク54には枠状のホルダ63が固定される。枠状のホルダ63には第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの回転軸64が回転可能に嵌められる。第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの回転軸64は同一の直線上に配置される。
【0050】
脛部リンク54の、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの下側には、第一及び第二の中間リンク52a,52bが回転可能に支持される。第一及び第二の中間リンク52a,52bは、ピッチ軸と平行な軸線の回りを回転可能である。第一の中間リンク52aの軸線と第二の中間リンク52bの軸線は同一の直線L上に配置される。第一及び第二の中間リンク52a,52bのそれぞれは、基部68と、基部68から二股状に分岐するブラケット部69と、を備える(
図6(a)参照)。ブラケット部69には連結軸67が回転可能に支持される。連結軸67はピッチ軸に平行である。第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの軸部62の先端は連結軸67に固定されている。
【0051】
第一及び第二の中間リンク52a,52bと足部フレーム55とは第一及び第二のアーム51a,51bを介して連結される。第一及び第二のアーム51a,51bの上端部はボールジョイントを介して第一及び第二の中間リンク52a,52bの連結軸67に連結される。第一及び第二のアーム51a,51bの下端部はボールジョイントを介して足部フレーム55に連結される。第一及び第二のアーム51a,51bと足部フレーム55との連結位置は、軸体56のピッチ軸部56a及びロール軸部56bの軸線からずれた位置になっている。
【0052】
図6(a)に示すように、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bが第一及び第二の中間リンク52a,52bを同方向に回転させると、第一及び第二のアーム51a,51bに連結される足部フレーム55がピッチ軸部56aの回りを回転する。
【0053】
図6(b)に示すように、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bが第一及び第二の中間リンク52a,52bを反対方向に回転させると、第一及び第二のアーム51a,51bに連結される足部フレーム55がロール軸部56bの回りを回転する。
【0054】
図7は、本発明の第三の実施形態のロボットの関節構造の斜視図を示す。この実施形態のロボットの関節構造は人間型ロボット10の股関節16に組み込まれる。
図8はロボットの関節構造の側面図を示す。
図8(a)は大腿部リンク64を真っすぐにした状態を示し、
図8(b)は脚部12の足踏み動作を実行するために大腿部リンク64を曲げた状態を示す。股関節フレーム65に対して大腿部リンク64をピッチ軸部66a及びロール軸部66bの回りに回転させることで、脚部12の足踏み動作が可能になる。脚部12の方向転換は股関節フレーム65をヨー軸65aの回りに回転させることで可能になる。
【0055】
図7に示すように、第三の実施形態のロボットの関節構造も、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53b、第一及び第二の中間リンク52a,52b、第一及び第二のアーム51a,51bを備える。
図7の大腿部リンク64を
図6の脛部リンク54と看做し、
図7の股関節フレーム65を
図6の足部フレーム55と看做すと、第三の実施形態のロボットの関節構造は第二の実施形態のロボットの関節構造と略同一である。
図7を上下反転させると、
図6に示すロボットの関節構造に近づくのがわかる。ここでは、重複した説明を避けるために、
図6に示す第二の実施形態のロボットの関節構造と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図8に示すように、この実施形態では、第一及び第二の中間リンク52a,52b(
図8では52bのみを示す)は、共通の軸線Lよりも連結軸67とは反対方向に延設されている。この第一及び第二の中間リンク52a,52bの延設された部分にはばね取付部71が設けられる。第一及び第二の中間リンク52a,52bには、共通の軸線Lを挟んで一方の側に連結軸67が設けられ、他方の側にばね取付部71が設けられる。このばね取付部71にコイルばね72の一端が掛けられる。コイルばね72の他端は大腿部リンク64に固定されたばね支持部73に掛けられる。コイルばね72は引っ張りばねであり、第一及び第二の中間リンク52a,52bが回転しても常に引っ張り力を発生する長さに設定される。
【0057】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bが軸部62を同時に引き込むと、第一及び第二の中間リンク52a,52bが軸線Lの回りを反時計方向に回転し、大腿部リンク64が持ち上がる。大腿部リンク64が持ち上がると、コイルばね72はより大きな引っ張り力を発生し、第一及び第二の中間リンク52a,52bに復元するようなトルクを付与する。このため、
図8(b)の状態から
図8(a)の状態に戻すときに、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bにかかる負荷を低減させ、サーボモータの負荷を軽くすることが可能になる。また、コイルばね72は、
図8(a)に示すように、大腿部リンク64が真っすぐの状態に戻そうとするので、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの電源が切れても、ロボットを
図1に示す直立した状態に安定的に保つことが可能になる。
【0058】
第三の実施形態のロボットの関節構造によれば、第一及び第二の中間リンク52a,52bと大腿部リンク64との間にばねを介在し、自重をキャンセルするので、第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bの負荷が低減し、小さな電力、小さい第一及び第二の直動アクチュエータ53a,53bを使用することが可能になる。
【0059】
本実施形態のような重力キャンセル用のコイルばね72を設ける場合には、大腿部リンク64と股関節フレーム65との間に架け渡すのが一般的である。しかし、大腿部リンク64は股関節フレーム65に対して2自由度を持つ。このため、大腿部リンク64と股関節フレーム65との間にコイルばね72に架け渡すと、コイルばね72が周囲に飛び出したり、他の構造物に当たったりするおそれがある。大腿部リンクと第一及び第二の中間リンク52a,52bとの間にコイルばね72を架け渡すことによって、コイルばね72の収まりもよくなる。
【0060】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。
【0061】
上記実施形態では、本発明のロボットの関節構造を、手首関節、足首関節、股関節に適用した例について説明したが、首関節、肩関節、上体を前傾や後傾させる腰の関節等の他の関節にも適用することができる。
【0062】
本発明は人間型ロボットに限られることはなく、垂直多関節ロボット、水平多関節ロボット等の産業用ロボットに適用することができる。
【0063】
本発明は2自由度の関節構造に限られることはなく、第三の中間リンク、第三のアーム、第三のアクチュエータ等を付加することで、自由度が3以上の関節構造にも適用することができる。
【0064】
第一及び第二のアクチュエータは、第一及び第二の中間リンクを回転させることができれば、上記実施形態の直動アクチュエータに限られることはなく、回転運動を直線運動に変換する種々のものを使用することができる。
【0065】
上記実施形態では、第一及び第二のアーム、第一及び第二の中間リンクの一例について説明したが、これらの形状、構造は上記実施形態に限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。