(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートベルトおよび車体のいずれか一方に直接的または間接的に取り付けられ、前記シートベルトおよび前記車体のいずれか他方に直接的または間接的に取り付けられたシートベルト固定用タングにラッチすることで前記シートベルトの先端部を前記車体に固定するシートベルト固定用バックルにおいて、
前記シートベルト固定用タングのタング側ラッチ部材を前記シートベルト固定用バックル内へ挿入可能なシートベルト固定用タング挿入口と、
前記シートベルト固定用タング挿入口を通して前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材が移動する移動平面と直交またはほぼ直交する方向の軸まわりに少なくとも前記タング側ラッチ部材とラッチ不能な非ラッチ位置および前記タング側ラッチ部材とラッチ可能なラッチ位置との間で回転可能に配設されたほぼ円柱状のバックル側ラッチ部材と、
前記タング側ラッチ部材の前記シートベルト固定用バックル内への非挿入状態では、前記バックル側ラッチ部材を回転不能にして前記非ラッチ位置に保持するとともに、前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材により前記タング側ラッチ部材の移動平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動されることで前記バックル側ラッチ部材を回転可能にするラッチ部材回転制御部材と、
前記バックル側ラッチ部材の回転可能状態で前記タング側ラッチ部材の移動平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動して前記バックル側ラッチ部材を押圧して前記非ラッチ位置から前記ラッチ位置へ回転させるラッチ部材作動部材と、
を有することを特徴とするシートベルト固定用バックル。
前記ラッチ部材作動部材は前記タング側ラッチ部材の前記シートベルト固定用バックル内への非挿入状態では前記バックル側ラッチ部材から離間して前記バックル側ラッチ部材を押圧しないとともに、前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材により前記ラッチ部材回転制御部材が移動されたとき前記バックル側ラッチ部材に当接して前記バックル側ラッチ部材を押圧することを特徴とする請求項1に記載のシートベルト固定用バックル。
前記ラッチ部材回転制御部材は、前記タング側ラッチ部材の前記シートベルト固定用バックル内への非挿入状態では前記ラッチ部材作動部材を前記第1ラッチガイド部に当接させないとともに、前記タング側ラッチ部材により移動されたとき前記ラッチ部材作動部材を前記第1ラッチガイド部に当接させることを特徴とする請求項4に記載のシートベルト固定用バックル。
前記バックル側ラッチ部材、前記ラッチ部材回転制御部材、前記ラッチ部材作動部材、前記第1ベース、および前記第2ベースを少なくとも収容するとともに前記シートベルト固定用タング挿入口が設けられるカバーを有し、
前記シートベルト固定用タングが前記シートベルト固定用バックルにラッチされないときは前記カバーから外部に突出するとともに、前記シートベルト固定用タングが前記シートベルト固定用バックルにラッチされたときは前記カバー内に引き込むラッチ検出部を有することを特徴とする請求項3ないし4のいずれか1に記載のシートベルト固定用バックル。
乗員を拘束可能なシートベルトと、前記シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、前記タングが挿入係合されるバックルと、前記シートベルトおよび車体のいずれか一方に直接的または間接的に取り付けられたシートベルト固定用バックルと、前記シートベルトおよび前記車体のいずれか他方に直接的または間接的に取り付けられかつ前記シートベルト固定用バックルにラッチ可能なシートベルト固定用タングとを少なくとも備えたシートベルト装置において、
前記シートベルト固定用バックルは、請求項1ないし8のいずれか1に記載のシートベルト固定用バックルであることを特徴とするシートベルト装置。
前記タング側ラッチ部材は前記シートベルト固定用バックル内への挿入量を所定量に規制するタング挿入規制部を有することを特徴とする請求項9に記載のシートベルト装置。
前記タング挿入規制部は、前記タング側ラッチ部材が裏表逆に誤って挿入されるのを防止するタング側ラッチ部材誤挿入防止部でもあることを特徴とする請求項10に記載のシートベルト装置。
前記タング側ラッチ部材は、前記タング側ラッチ部材が裏表逆に誤って挿入されるのを防止するタング側ラッチ部材誤挿入防止部を有することを特徴とする請求項9に記載のシートベルト装置。
前記シートベルト固定用バックルは、前記シートベルト固定用タング挿入口に設けられてタング側ラッチ部材誤挿入防止部の通過を許可するタング側ラッチ部材誤挿入防止部通過許可部を有することを特徴とする請求項11または12に記載のシートベルト装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の第1実施例のシートベルト装置では、バックル側ラッチ部材およびタング側ラッチ部材がいずれも平板状に形成されていることから、シートベルト固定用バックルの厚さが比較的薄くなるものの、バックル側ラッチ部材およびタング側ラッチ部材の各厚さ部分どうしのラッチとなるため、バックル側ラッチ部材とタング側ラッチ部材とが安定して堅固にラッチすることは難しいという問題がある。
【0008】
一方、特許文献1に記載の第2実施例のシートベルト装置では、バックル側ラッチ部が円柱状に形成されていることから、バックル側ラッチ部材とタング側ラッチ部材とのラッチが安定して堅固となるものの、ねじりばねがバックル側ラッチ部材の軸方向に延設されるため、シートベルト固定用バックルの厚さが比較的厚くなってしまう。また、ねじりばねの付勢力でバックル側ラッチ部材を回転させるため、バックル側ラッチ部材をスムーズに回転させることは難しいという問題がある。しかも、バックル側ラッチ部材とタング側ラッチ部材との非ラッチ状態でも、バックル側ラッチ部材がねじりばねにより回転方向に常時かつ直接付勢されるため、バックル側ラッチ部材およびねじりばねの組付けが容易でないという問題もある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シートベルト固定用タングと安定かつ堅固にラッチ可能にしつつ、厚さをより薄くすることができるシートベルト固定用バックルおよびこれを備えるシートベルト装置を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、バックル側ラッチ部材をスムーズに回転可能にしつつ、バックル側ラッチ部材の組付けを容易に行うことのできるシートベルト固定用バックルおよびこれを備えるシートベルト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の課題を解決するために、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、シートベルトおよび車体のいずれか一方に直接的または間接的に取り付けられ、前記シートベルトおよび前記車体のいずれか他方に直接的または間接的に取り付けられたシートベルト固定用タングにラッチすることで前記シートベルトの先端部を前記車体に固定するシートベルト固定用バックルにおいて、前記シートベルト固定用タングのタング側ラッチ部材を前記シートベルト固定用バックル内へ挿入可能なシートベルト固定用タング挿入口と、前記シートベルト固定用タング挿入口を通して前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材が移動する移動平面と直交またはほぼ直交する方向の軸まわりに少なくとも前記タング側ラッチ部材とラッチ不能な非ラッチ位置および前記タング側ラッチ部材とラッチ可能なラッチ位置との間で回転可能に配設されたほぼ円柱状のバックル側ラッチ部材と、前記タング側ラッチ部材の前記シートベルト固定用バックル内への非挿入状態では、前記バックル側ラッチ部材を回転不能にして前記非ラッチ位置に保持するとともに、前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材により前記タング側ラッチ部材の移動平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動されることで前記バックル側ラッチ部材を回転可能にするラッチ部材回転制御部材と、前記バックル側ラッチ部材の回転可能状態で前記タング側ラッチ部材の移動平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動して前記
バックル側ラッチ部材を押圧して前記非ラッチ位置から前記ラッチ位置へ回転させるラッチ部材作動部材とを有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、前記ラッチ部材作動部材が前記タング側ラッチ部材の前記シートベルト固定用バックル内への非挿入状態では前記バックル側ラッチ部材から離間して前記バックル側ラッチ部材を押圧しないとともに、前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材により前記ラッチ部材回転制御部材が移動されたとき前記バックル側ラッチ部材に当接して前記バックル側ラッチ部材を押圧することを特徴としている。
【0013】
更に、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、第1ベースおよび第2ベースを有し、前記第1ベースおよび前記第2ベースが、前記シートベルト固定用タング挿入口を通して挿入された前記タング側ラッチ部材が挿入可能な空間が前記第1ベースと前記第2ベースとの間に形成されるように組み付けられ、前記バックル側ラッチ部材が前記タング側
ラッチ部材と前記バックル側ラッチ部材とのラッチ状態で、互いに組み付けられた前記第1ベースおよび前記第2ベースを挟持する第1ラッチガイド部および第2ラッチガイド部を有することを特徴としている。
【0014】
更に、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、前記ラッチ部材作動部材が、前記第1ラッチガイド部に当接して前記第1ラッチガイド部を押圧することで前記
バックル側ラッチ部材を前記非ラッチ位置から前記ラッチ位置へ回転させることを特徴としている。
【0015】
更に、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、前記ラッチ部材回転制御部材が前記タング側ラッチ部材の前記シートベルト固定用バックル内への非挿入状態では前記ラッチ部材作動部材を前記第1ラッチガイド部に当接させないとともに、前記タング側ラッチ部材により移動されたとき前記ラッチ部材作動部材を前記第1ラッチガイド部に当接させることを特徴としている。
【0016】
更に、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、前記バックル側ラッチ部材、前記ラッチ部材回転制御部材、前記ラッチ部材作動部材、前記第1ベース、および前記第2ベースを少なくとも収容するとともに前記シートベルト固定用タング挿入口が設けられるカバーを有し、前記シートベルト固定用タングが前記シートベルト固定用バックルにラッチされないときは前記カバーから外部に突出するとともに、前記シートベルト固定用タングが前記シートベルト固定用バックルにラッチされたときは前記カバー内に引き込むラッチ検出部を有することを特徴としている。
【0017】
更に、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、前記ラッチ検出部は前記ラッチ部材作動部材に設けられることを特徴としている。
更に、本発明に係るシートベルト固定用バックルは、前記シートベルト固定用バックル内へ挿入された前記タング側ラッチ部材を前記シートベルト固定用バックルから脱出させる方向に付勢するイジェクタを有し、前記ラッチ部材回転制御部材が前記イジェクタであることを特徴としている。
【0018】
一方、本発明に係るシートベルト装置は、乗員を拘束可能なシートベルトと、前記シートベルトを巻き取るシートベルトリトラクタと、前記シートベルトに摺動可能に支持されたタングと、前記タングが挿入係合されるバックルと、前記シートベルトおよび車体のいずれか一方に直接的または間接的に取り付けられたシートベルト固定用バックルと、前記シートベルトおよび前記車体のいずれか他方に直接的または間接的に取り付けられかつ前記シートベルト固定用バックルにラッチ可能なシートベルト固定用タングとを少なくとも備えたシートベルト装置において、前記シートベルト固定用バックルは、前述の本発明のシートベルト固定用バックルのいずれか1つであるであることを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係るシートベルト装置は、前記タング側ラッチ部材が前記シートベルト固定用バックル内への挿入量を所定量に規制するタング挿入規制部を有することを特徴としている。
【0020】
更に、本発明に係るシートベルト装置は、前記タング挿入規制部が、前記タング側ラッチ部材が裏表逆に誤って挿入されるのを防止するタング側ラッチ部材誤挿入防止部でもあることを特徴としている。
【0021】
更に、本発明に係るシートベルト装置は、前記タング側ラッチ部材が、前記タング側ラッチ部材が裏表逆に誤って挿入されるのを防止するタング側ラッチ部材誤挿入防止部を有することを特徴としている。
【0022】
更に、本発明に係るシートベルト装置は、前記シートベルト固定用バックルが、前記シートベルト固定用タング挿入口に設けられてタング側ラッチ部材誤挿入防止部の通過を許可するタング側ラッチ部材誤挿入防止部通過許可部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
このように構成された本発明に係るシートベルト固定用バックルによれば、タング側ラッチ部材のシートベルト固定用バックル内への非挿入状態では、
バックル側ラッチ部材がシートベルト固定用バックルのラッチ部材回転制御部材により回転不能にされ非ラッチ位置に保持される。また、タング側ラッチ部材のシートベルト固定用バックル内への挿入状態では、ラッチ部材回転制御部材がタング側ラッチ部材によりこのタング側ラッチ部材の移動平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動されることで、バックル側ラッチ部材が回転可能状態となる。これにより、ラッチ部材作動部材がタング側ラッチ部材の移動平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動してバックル側ラッチ部材を押圧して非ラッチ位置からラッチ位置へタング側ラッチ部材の移動平面と直交する軸またはほぼ直交する軸回りに回転させる。したがって、従来のようにシートベルト固定用バックルの厚さ方向に配設されてバックル側ラッチ部材を回転付勢するねじりばねが設けられないので、シートベルト固定用バックルの厚さを薄くすることが可能となる。また、タング側ラッチ部材がほぼ円柱状のバックル側ラッチ部材でラッチされるので、バックル側ラッチ部材とタング側ラッチ部材とを安定して堅固にラッチすることが可能となる。
【0024】
また、ラッチ部材作動部材がタング側ラッチ部材のシートベルト固定用バックル内への非挿入状態ではバックル側ラッチ部材から離間してバックル側ラッチ部材を押圧しない。これにより、バックル側ラッチ部材の組付け時に、バックル側ラッチ部材がラッチ部材作動部材により付勢されないので、バックル側ラッチ部材の組付けを容易に行うことが可能となる。
【0025】
更に、タング側ラッチ部材のシートベルト固定用バックル内への挿入状態では、互いに組み付けられた第1ベースおよび第2ベースが、バックル側ラッチ部材の第1ラッチガイド部および第2ラッチガイド部により挟持される。これにより、緊急時にシートベルトに通常時より大きな張力が加えられて、第1および第2ベースが拡開しようとしても、第1ラッチガイド部と第2ラッチガイド部とにより、第1および第2ベースの拡開を効果的に阻止することが可能となる。すなわち、バックル側ラッチ部材により、第1および第2ベースの強度を補強することができる。
【0026】
更に、ラッチ検出部が設けられる。このラッチ検出部は、シートベルト固定用タングがシートベルト固定用バックルにラッチされないときはカバーから外部に突出するとともに、シートベルト固定用タングがシートベルト固定用バックルにラッチされたときはカバー内に引き込む。これにより、ラッチ検出部がカバーの外部に突出しているか否かを視認することで、シートベルト固定用タングとシートベルト固定用バックルとのラッチを確認することが可能となる。特に、ラッチ検出部がラッチ部材作動部材に設けられることで、ラッチ検出のための構造を簡略化することができる。
【0027】
更に、ラッチ部材回転制御部材がタング側ラッチ部材をシートベルト固定用バックルから脱出させる方向に付勢するイジェクタで構成されることで、シートベルト固定用バックルのラッチのための構造を簡略化することができる。
【0028】
一方、本発明のシートベルト装置によれば、シートベルト固定用タングと安定かつ堅固にラッチ可能にしつつ、厚さをより薄くすることができる本発明のシートベルト固定用バックルを備えているので、シートベルトにより乗員を効果的に拘束可能となるとともに、シートベルト装置の専有スペースが小さくなるので、シートベルト装置が狭い車室内で乗
員に邪魔になることを抑制することが可能となる。
【0029】
また、本発明のシートベルト装置によれば、タング挿入規制部が設けられる。このタング挿入規制部により、タング側ラッチ部材のシートベルト固定用バックル内への挿入量を所定量に規制することが可能となる。したがって、シートベルト固定用バックルとシートベルト固定用タングとのラッチ作業を簡単かつ安定して行うことができる。
【0030】
更に、本発明のシートベルト装置によれば、タング側ラッチ部材誤挿入防止部が設けられる。このタング側ラッチ部材誤挿入防止部により、タング側ラッチ部材が裏表逆に誤って挿入されるのを防止することが可能となる。これにより、シートベルトが捩られて取り付けられることが防止でき、シートベルトによる乗員拘束性を向上することができる。その場合、タング側ラッチ部材誤挿入防止部をタング挿入規制部で構成することで、タング側ラッチ部材誤挿入防止部およびタング挿入規制部の構造を簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明にかかるシートベルト固定用バックルの実施の形態の一例を備えるシートベルト装置を模式的に示す図である。
【0033】
図1に示すように、この例のシートベルト装置は、基本的には従来公知の三点式シートベルト装置と同じである。まず、この例のシートベルト装置の従来公知の構成について簡単に説明する。
図1中、1はシートベルト装置、2は車両シート、3は車両シート2の近傍の車体に配設されたシートベルトリトラクタ、4はシートベルトリトラクタ3に引き出し可能に巻き取られるシートベルト、5はシートベルト4の先端に取り付けられたシートベルト固定用バックル、6はシートベルト固定用バックル5が着脱可能にラッチ可能なシートベルト固定用タング、7はシートベルト固定用タング6が取り付けられるとともに緊急時の初期に作動してシートベルト4に張力を加えるプリテンショナー、8はシートベルトリトラクタ3から引き出されたシートベルト4を乗員のショルダーの方へガイドするベルトガイドアンカー、9はこのベルトガイドアンカー8からガイドされてきたシートベルト4に摺動自在に支持されたタング、10は車体の床あるいは車両シート2に固定されかつタング9が係脱可能に挿入係止されるバックルである。このシートベルト装置1におけるシートベルト4の装着操作および装着解除操作も、基本的には従来公知のシートベルト装置と同じである。
【0034】
シートベルト4の先端は、シートベルト固定用バックル5が車体にプリテンショナー6を介して固定されたシートベルト固定用タング6にラッチ連結されることで車体に固定される。そして、シートベルト4の非装着時では、タング9がバックル10にラッチされず、シートベルト4はその全量(具体的には、シートベルトリトラクタ3がシートベルト4を何らの支障もなく巻取り可能な量)をシートベルトリトラクタ3に巻き取られている。また、シートベルト4の乗員への装着時では、
図1に示すようにシートベルト4はシートベルトリトラクタ3から所定量引き出される。そして、タング9がバックル10に係合されるとともにシートベルト4の弛みが除去されることで、シートベルト4が乗員に装着される。
【0035】
シートベルト4の乗員への装着状態において、車両の通常走行時に車両に加えられる減速度に比べてはるかに大きな減速度が車両に加えられない通常時は、シートベルト4はシートベルトリトラクタ3から通常のベルト引出し速度で自由に引出し可能であるとともに、シートベルト4から手を放すと余分に引き出された分、シートベルトリトラクタ3に巻き取られる。また、シートベルト4の装着状態において、車両衝突等により車両に大きな減速度が加えられる緊急時はシートベルトリトラクタ3がシートベルト4の引出しをロックし、シートベルト4は乗員を拘束する。
【0036】
次に、この例のシートベルト固定用バックルおよびこれを備えたシートベルト装置の従
来公知の構成と異なる構成について説明する。
図2はこの例のシートベルト装置に用いられている本発明のシートベルト固定用バックルおよびシートベルト固定用タングの各実施の形態の一例を示す分解斜視図である。
【0037】
図2に示すように、この例のシートベルト固定用バックル5は、第1ベース11、第2ベース12、バックル側ラッチ部材13、イジェクタ14、イジェクタスプリング15、スライダ16、スライダガイド軸17、スライダスプリング18、第1カバー19、第2カバー20、一対の組付けねじ21、およびシートベルトプロテクタ22を有する。その場合、第1ベース11、第2ベース12、バックル側ラッチ部材13、イジェクタ14、イジェクタスプリング15、スライダ16、スライダガイド軸17、スライダスプリング18、および組付けねじ21は、いずれも金属材により形成される。また、第1カバー19、第2カバー20、およびシートベルトプロテクタ22は、いずれも合成樹脂材により形成される。
【0038】
図3(A)は第1ベースの上面図、
図3(B)は
図3(A)におけるIIIB−IIIB線に沿う断面図、
図3(C)は第1ベースの正面図、
図3(D)は第1ベースの斜視図である。
図3(A)ないし(D)に示すように、第1ベース11は、平板状の基部11aと、基部11aの両側縁に立設された第1および第2側壁11b,11cとを有する。基部11aには、シートベルト4が貫通可能なシートベルト貫通孔11d、バックル側ラッチ部材13が挿通可能なラッチ部材挿通孔11e、イジェクタ14をガイドするイジェクタガイド孔11f、およびイジェクタスプリング15の一端を支持するイジェクタスプリング支持部11gが設けられている。
【0039】
また、第1側壁11bには、
図3(C)において上方に開口する矩形状の第1凹溝11hが設けられているとともに、第1凹溝11hの両側に、第2ベース12が係合固定される第1および第2係合固定部11i,11jが設けられている。更に、第1側壁11bの第1係合固定部11iには、矩形状の第1係合支持溝11kが、シートベルト固定用タング6が挿入する側の端部(
図3(C)において左端部)に位置して設けられている。更に、第1側壁11bには、矩形状の第2係合支持溝11mが
図3(C)において左端を第1凹溝11hに開口されて設けられている。第2係合支持溝11mは第1係合支持溝11kと同じ形状で同じ大きさに形成されている。
【0040】
一方、第2側壁11cには、第1凹溝11hと同じ形状で同じ大きさの第2凹溝11nが設けられているとともに、第2凹溝11nの両側に、それぞれ第1および第2係合固定部11o,11jと同じ形状で同じ大きさに形成されかつ第2ベース12が係合固定される第3および第4係合固定部11o,11pが設けられている。また、第2側壁11cの第3係合固定部11oには、第1係合支持溝11kと同じ形状で同じ大きさの第3係合支持溝11qが、第1係合支持溝11kと同様にしてして設けられている。更に、第2側壁11cには、第2係合支持溝11mと同じ形状で同じ大きさの第4係合支持溝11rが第2係合支持溝11mと同様にしてして設けられている。
【0041】
その場合、第1凹溝11h、第1および第2係合固定部11i,11j、第1係合支持溝11k、および第2係合支持溝11mと、第2凹溝11n、第3および第4係合固定部11o,11p、第3係合支持溝11q、および第4係合支持溝11rは、それぞれ、互いに第1ベース11の幅方向(
図3(A)において上下方向)に対向する位置に配置されている。
【0042】
更に、第1側壁11bには、スライダ16のラッチ検出軸16c(
図8に図示;本発明のラッチ検出部に相当)が摺動可能に貫通するラッチ検出軸貫通孔11sおよびスライダガイド軸17の一端部が嵌合固定される第1固定孔11tが設けられている。また、第2
側壁11cには、スライダガイド軸17の他端部が嵌合固定される第2固定孔11uが設けられている。更に、第1側壁11bには、組付けねじ21がそれぞれ貫通する第1および第2ねじ貫通溝11v,11wが第1および第1側壁11b,11cに隣接して設けられている。
【0043】
図4(A)は第2ベースの上面図、
図4(B)は第2ベースの正面図、
図4(C)は第2ベースの下面図である。
図4(A)ないし(C)に示すように、第2ベース12は平板状に形成されており、シートベルト4が貫通可能なシートベルト貫通孔12a、バックル側ラッチ部材13が挿通可能なラッチ部材挿通孔12b、イジェクタ14をガイドするイジェクタガイド孔12c、イジェクタスプリング15の一端を支持するイジェクタスプリング支持部12d、第1ベース11の第1および第2係合固定部11i,11jに嵌合される細長い矩形状の第1および第2嵌合孔12e,12f、第1ベース11の第3および第4係合固定部11o,11pに嵌合される細長い矩形状の第3および第4嵌合孔12g,12h、および組付けねじ21がそれぞれ貫通する第1および第2ねじ貫通孔12i,12jが設けられている。
【0044】
そして、第2ベース12の第1ないし第4嵌合孔12e,12f,12g,12hがそれぞれ第1ベース11の第1ないし第4係合固定部11i,11j,11o,11pに嵌合された後、第2ベース12が第1ベース11に対してシートベルト固定用タング6の挿入方向(
図3(A)において右方)へ移動されることで、第2ベース12の第1ないし第4嵌合孔12e,12f,12g,12hにそれぞれ
図4(A)において左側に隣接する第1ないし第4係合部12k,12m,12n,12oが、それぞれ第1ベース11の対応する第1ないし第4係合支持溝11k,11m,11q,11rに嵌合されて係合される。その場合、この状態で組付けねじ21がそれぞれ第2ベース12の第1および第2ねじ貫通孔12iおよび第1ベース11の第1および第2ねじ貫通溝11v,11wに貫通されることで、第1ベース11に対する第2ベース12の実質的な相対移動が阻止される。これにより、第2ベース12の第1ないし第4係合部12k,12m,12n,12oが、それぞれ第1ベース11の第1ないし第4係合支持溝11k,11m,11q,11rから抜け出ることが阻止され、第2ベース12は第1ベース11に強固に組み付けられる。
【0045】
第2ベース12が第1ベース11に組み付けられた状態では、
図5(A)に示すように第1ベース11と第2ベース12との間に、横断面矩形状の空間Sが形成される。また、第1ベース11のシートベルト貫通孔11dと第2ベース12のシートベルト貫通孔12aが整合し、また第1ベース11のラッチ部材挿通孔11eと第2ベース12のラッチ部材挿通孔12bが整合し、更に第1ベース11のイジェクタガイド孔11fと第2ベース12のイジェクタガイド孔12cが実質的に整合し、更に第1ベース11のイジェクタスプリング支持部11gと第2ベース12のイジェクタスプリング支持部12dが整合する。
【0046】
図6(A)はバックル側ラッチ部材の正面図、
図6(B)はバックル側ラッチ部材の上面図、
図6(C)はバックル側ラッチ部材の下面図、
図6(D)はバックル側ラッチ部材の右側面図である。
図6(A)ないし(D)に示すように、バックル側ラッチ部材13はほぼ円柱状に形成されるとともに、第1および第2ベース11,12に、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内で移動する移動平面と直交する方向に設定されるバックル側ラッチ部材13の回転中心軸α回りに非ラッチ位置(
図12に示す位置)とラッチ位置(
図16(A)に示す位置)との間で回転可能に支持される。このバックル側ラッチ部材13は、中央部に位置する円柱状のバックル側ラッチ部13a、バックル側ラッチ部13aの一端(
図6(A)において上端)に形成された細長い直方体状の第1ラッチガイド部13b、バックル側ラッチ部13aの他端(
図6(A)におい
て下端)に形成された円板状の第2ラッチガイド部13cを有する。
【0047】
バックル側ラッチ部13aの円曲面の側面には、互いに平行またはほぼ平行な一対の平面で形成されたシートベルト固定用タング通過許可溝13d(本発明のシートベルト固定用タング通過許可部に相当)が第1ラッチガイド部13bの長手方向に沿って延設されている。シートベルト固定用タング通過許可溝13dの厚さ(
図6(D)において左右方向の長さ)はバックル側ラッチ部13aの円の直径よりかなり小さく設定されている。また、第1ラッチガイド部13bは、その長さがバックル側ラッチ部13aの円の直径より大きく設定されている。更に、第2ラッチガイド部13cの下面には、直線状のラッチ解除用溝13eが形成されている。そして、バックル側ラッチ部13aの中心軸と第2ラッチガイド部13cの中心とが一致されているとともに、第1ラッチガイド部13bの中心がラッチ部13aの中心軸から若干オフセットされている。その場合、バックル側ラッチ部13aの中心軸とバックル側ラッチ部材13の回転中心軸αとが一致されている。したがって、バックル側ラッチ部材13の重心Gはバックル側ラッチ部材13の回転中心軸αにきわめて近接した位置となっている。
【0048】
第1および第2ベース11の各ラッチ部材挿通孔11e,12bの形状は
図6(B)に示す第1ラッチガイド部13bとバックル側ラッチ部13aからなる平面形状と相似でかつ若干この平面形状より大きな形状とされている。その場合、各ラッチ部材挿通孔11e,12bの円弧部の直径が第1ラッチガイド部13bの長さより小さく設定されている。したがって、第1ラッチガイド部13bおよびバックル側ラッチ部13aは各ラッチ部材挿通孔11e,12bを貫通可能とされているとともに、第1ラッチガイド部13bは各ラッチ部材挿通孔11e,12bを貫通した後、バックル側ラッチ部材13が回転することで各ラッチ部材挿通孔11e,12bを通過不能となるようにされている。また、第2ラッチガイド部13cは、その円の直径が第1および第2ベース11の各ラッチ部材挿通孔11e,12bより大きく設定されて、各ラッチ部材挿通孔11e,12bを貫通不能とされている。
【0049】
そして、バックル側ラッチ部材13は互いに組み付けられた第1および第2ベース11,12に、第1ラッチガイド部13bとバックル側ラッチ部13aからなる平面形状が各ラッチ部材挿通孔11e,12bの形状に整合された状態で、第1ラッチガイド部13bおよびバックル側ラッチ部13aが第1ベース11の外側から第1ベース11のラッチ部材挿通孔11eおよび第2ベース12のラッチ部材挿通孔12bを貫通させ、その後ラッチ部材14を回転することで、
図5(A)に示すように第1および第2ベース11,12に対して相対回転可能に組み付けられる。その場合、第1ラッチガイド部13bは第2ベース12の外側(
図5(A)において第2ベース12の上側)に位置するとともに、第2ラッチガイド部13cは第1ベース11の外側(
図5(A)において第1ベース11の下側)に位置する。また、少なくともシートベルト固定用タング通過許可溝13dが形成されているバックル側ラッチ部13aの部分は、第1および第2ベース11,12の間の空間S内に位置する。そして、第1ラッチガイド部13bとバックル側ラッチ部13aからなる平面形状が各ラッチ部材挿通孔11e,12bの形状に整合されないかぎり、バックル側ラッチ部材13は第1および第2ベース11,12から取り外し不能となる。
【0050】
図7(A)はイジェクタの正面図、
図7(B)はイジェクタの上面図、
図7(C)はイジェクタの右側面図である。
イジェクタ14は本発明のラッチ部材回転制御部材を構成する。
図7(A)ないし(C)に示すように、このイジェクタ14は、直方体状のイジェクタ本体部14aと、イジェクタ本体部14aの
図7(A)において上方に配設されるラッチ部材・スライダ制御部14bと、イジェクタ本体部14aとラッチ部材・スライダ制御部14bとの間に配設される一対の第1および第2イジェクタガイド面14c,14dとを有している。また、イジ
ェクタ本体部14aはシートベルト固定用タング6が当接するシートベルト固定用タング当接面14eを有している。
【0051】
このイジェクタ本体部14aは、第1ベース11のイジェクタガイド孔11fおよび第2ベース12のイジェクタガイド孔12cの大幅部に配置されている。また、第1および第2イジェクタガイド面14c,14dは第2ベース12のイジェクタガイド孔12cの小幅部に配置され、イジェクタガイド孔12cの小幅部の両側縁部にイジェクタガイド孔12cの長手方向に摺動可能に嵌合される。
【0052】
そして、イジェクタ14は、そのイジェクタ本体部14aがイジェクタガイド孔11fおよびイジェクタガイド孔12cの大幅部にガイドされるとともに第1および第2イジェクタガイド面14c,14dが第2ベース12のイジェクタガイド孔12cの小幅部の両側縁部にガイドながら、シートベルト固定用タング6の挿入、脱出方向に移動可能に設けられる。また、イジェクタ14は、第1および第2イジェクタガイド面14c,14dが第2ベース12のイジェクタガイド孔12cの小幅部の両側縁部に嵌合されることで、第2ベース12に直交する方向(
図5(A)において上下方向)に支持される。
【0053】
更に、イジェクタ14は、第1および第2ベース11,12のイジェクタスプリング支持部11g,12dとの間に縮設されたイジェクタスプリング15の付勢力で常時シートベルト固定用タング6が脱出する方向に常時付勢される。
【0054】
ラッチ部材・スライダ制御部14bは、第2ベース12の外方(
図5(A)において、第2ベース12の上方)に配置されている。このラッチ部材・スライダ制御部14bはシートベルト固定用タング6の挿入、脱出方向(
図7(B)において上下方向)に所定角度(図示例では、約45度)傾斜したスライダ制御部14fとイジェクタ14の移動方向に延設されるラッチ部材回転制止部14gとを有している。
【0055】
図8(A)はスライダの正面図、
図8(B)はスライダの上面図、
図8(C)はスライダの右側面である。
スライダ16は本発明のラッチ部材作動部材を構成する。
図8(A)ないし(C)に示すように、このスライダ16は、スライダ本体16aと、被制御面16bと、円柱のラッチ検出軸16cと、スライダスプリング支持部16dと、スライダガイド軸貫通孔16eと、ラッチ部材押圧部16fと、ラッチ部材回転抑止部16gとを有している。スライダ本体16aは、両端が第1ベース11の第1および第2側壁11b,11cの第1および第2固定孔11t,11uに嵌合固定されて第1および第2側壁11b,11c間に架設されたスライダガイド軸17に移動可能に支持されている。その場合、スライダガイド軸17は、シートベルト固定用バックル5に対するシートベルト固定用タング6の挿入、脱出方向と直交する方向またはほぼ直交する方向に設けられる。したがって、スライダガイド軸17はスライダガイド軸17に沿って移動可能に支持されている。その場合、スライダガイド軸17は、シートベルト固定用タング6がシートベルト固定用バックル5に対して挿入、脱出する際に移動する平面と平行またはほぼ平行な平面に沿うようにして設けられる。したがって、スライダ16は、スライダガイド軸17が配設される平面と平行またはほぼ平行な平面に沿うようにして移動する。
【0056】
被制御面16bはスライダ16にイジェクタ14のスライダ制御部14fと同じかまたはほぼ同じ傾斜角で設けられかつイジェクタ14のスライダ制御部14fに当接可能とされている。シートベルト固定用バックル5がシートベルト固定用タング6にラッチしていない状態では、スライダ16の被制御面16bがイジェクタ14のスライダ制御部14fに当接することで、スライダ16のラッチ部材押圧部16fがバックル側ラッチ部材13
の第1ラッチガイド部13bに当接しないようにされている。これにより、シートベルト固定用バックル5のシートベルト固定用タング6への
非ラッチ状態では、スライダスプリングの付勢力がバックル側ラッチ部材13に加えられないようにされている。また、ラッチ検出軸16cは第1ベース11のラッチ検出軸貫通孔11sを摺動可能に貫通するようになっている。
【0057】
更に、スライダスプリング支持部16dは、第1ベース11の第1側壁11bとの間に縮設されたスライダスプリング
18を支持して、スライダスプリング
18の付勢力で常時付勢される。このスライダスプリング
18も、シートベルト固定用タング6が移動する平面と平行またはほぼ平行な平面に沿うようにして設けられる。したがって、スライダ16はスライダスプリング
18により、シートベルト固定用タング6が移動する平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って付勢される。
【0058】
図9(A)は第1および第2カバーの正面図、
図9(B)は第1および第2カバーの下面図、
図9(C)は第1および第2カバーの左側面、
図9(D)はラッチ部材を回転させるためのラッチ部材回転用工具を示す正面図、
図9(E)はラッチ部材回転用工具の下面図、
図9(F)はスライダを移動させるためのスライダ移動用工具を示す正面図、
図9(G)はスライダ移動用工具の下面図である。なお、
図9(A)ないし(C)は第1および第2カバーを合わした状態で示している。
【0059】
図9(A)ないし(C)に示すように、第1および第2カバー19,20はいずれも合成樹脂で形成されている。第1カバー19には、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチを解除するためのラッチ解除用孔19aが設けられている。その場合、ラッチ解除用孔19aはバックル側ラッチ部材13のラッチ解除用溝13eに対向する位置に配置される。したがって、バックル側ラッチ部材13のラッチ解除用溝13eはラッチ解除用孔19aを通して視認可能となっている。そして、バックル側ラッチ部材13が回転可能な状態において、
図9(D)および(E)に示すラッチ部材回転用工具23の溝係合部23aがラッチ解除用孔19aを通してラッチ解除用溝13eに係合された後、ラッチ部材回転用工具23が回転されることで、バックル側ラッチ部材13が回転するようになってる。
【0060】
また、第1カバー19の
図9(A)および(B)において左端には、
図9(C)に示すようにシートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内に挿入可能にするためのほぼ矩形状のシートベルト固定用タング挿入口19bが設けられている。更に、このシートベルト固定用タング挿入口19bの長手方向に沿う一側縁の中心には、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内に挿入する際にタング側ラッチ部材6bをガイドするタング側ラッチ部ガイド部19cが設けられている。更に、シートベルト固定用タング挿入口19bの長手方向に沿う他側縁の中心には、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bが正規の状態でシートベルト固定用タング挿入口19bに挿入されるとき、タング側ラッチ部材6bに設けられたタング挿入規制部6g(後述する
図10(A)ないし(C)に図示;本発明のタング側ラッチ部材誤挿入防止部に相当)がシートベルト固定用タング挿入口19bを通過するのを許可する横断面円弧状のタング挿入規制部通過許可溝19d(本発明のタング側ラッチ部材誤挿入防止部通過許可部に相当)が設けられている。更に、第1カバー19のシートベルト固定用タング挿入口19bと反対側の端部には、薄肉部19eが設けられているとともに、この薄肉部19eにはシートベルト貫通孔19fが設けられている。更に、
図2に示すように第1カバー19の内側には、組付けねじ21が螺合可能な雌ねじ部19g,19hが設けられている。
【0061】
一方、第2カバー20には、
図9(A)に示すようにバックル側ラッチ部材13をラッチ状態に保持する位置にあるスライダ16を移動可能にするための細長い直線状のスライ
ダ移動用孔20aが設けられている。その場合、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチ状態でスライダ16の端部がスライダ移動用孔20aを通して視認可能となっている。そして、
図9(F)および(G)に示すスライダ移動用工具24のスライダ押圧部24aがスライダ移動用孔20aを通してスライダ16の端部に当接された後、スライダ移動用工具24がスライダ16を押圧することで、スライダ16が非作動位置の方へ移動するようになってる。
【0062】
また、第2カバー20には、組付けねじ21が貫通する組付けねじ取付孔20bが設けられている。更に、第2カバー20の一端部には、薄肉部20cが設けられているとともに、この薄肉部20cにはシートベルト貫通孔20dが設けられている。その場合、シートベルト固定用バックル5が組み立てられた状態では、第1および第2ベース11,12、第1および第2カバー19,20の各シートベルト貫通孔11d,12a,19f.20dは、少なくとも部分的に整合するようになっている。そして、第1および第2カバー19,20の各薄肉部19e,20cにより、
図5(A)に二点鎖線で示すようにシートベルト4が両シートベルト貫通孔19f,20dに挿通されて曲げ返されたとき、このシートベルト4の曲げ返し部の厚さが、組み合わされた第1および第2カバー19,20の厚さより小さいかまたはほぼ同じになるようにされている。これにより、シートベルト4とシートベルト固定用バックル5との連結部が嵩張らなくコンパクトになり、シートベルト4に連結されたシートベルト固定用バックル5の取扱い性が良好になる。
【0063】
図10(A)はシートベルト固定用タングの平面図、
図10(
B)は
図10(A)におけるXB−XB線に沿う断面図、
図10(C)は右側面図である。
図10(A)ないし(C)に示すように、シートベルト固定用タング6は金属材から形成され、車体に固定されたプリテンショナーに固定される固定部6aとタング側ラッチ部材6bとを有する。固定部6aは有底円筒状に形成されている。また、タング側ラッチ部材6bは固定部6aと一体に平板状にかつほぼ矩形状に形成され、第1
カバー19のシートベルト固定用タング挿入口19bを通して第1および第2ベース11,12の間の空間S内に部分的に挿入可能となっている。
【0064】
このタング側ラッチ部材6bは、ほぼ中央に設けられたほぼ正方形状の孔6cと、この孔6cをタング側ラッチ部材6bの外方に開放する開放通路6dとを有している。正方形状の孔6cの一辺の長さはバックル側ラッチ部13aの円柱部の直径より若干大きく設定されている。また、開放通路6dの幅は、シートベルト固定用タング通過許可溝13dの幅より若干大きくかつバックル側ラッチ部13aの円柱部の直径より小さく設定されている。これにより、バックル側ラッチ部13aのシートベルト固定用タング通過許可溝13dは開放通路6dを通過可能であるが、バックル側ラッチ部13aの円柱部は開放通路6dを通過不能となっている。すなわち、開放通路6dが形成されるタング側ラッチ部材6bの部分は、シートベルト固定用タング6の挿入方向と直交する方向またはほぼ直交する方向に延設されてバックル側ラッチ部13aの円柱部と係合可能な第1および第2タング側ラッチ部6e,6fとされている。
【0065】
更に、タング側ラッチ部材6bには、このタング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内へ挿入される挿入量を所定量に規制するタング挿入規制部6gが設けられている。タング側ラッチ部材6bの挿入量が規制される所定量は、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bがバックル側ラッチ部材13のバックル側ラッチ部13aに安定してラッチするに足る量に規定される。これにより、シートベルト固定用バックル5内へタング側ラッチ部材6bの必要以上の挿入量が規制されるとともに、挿入量が規制されることで作業員によるシートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチ作業を簡単かつ安定して行うことができるようになる。このタング挿入規制部6gは横断面円弧状に形成されかつシートベルト固定用タング6のシートベルト固定用
バックル5内への挿入方向に延設されている。その場合、タング挿入規制部6gの円弧形状はタング挿入規制部通過許可溝19dより若干小さく形成されて、タング挿入規制部6gがタング挿入規制部通過許可溝19dを通過可能となっている。
【0066】
ところで、この例のシートベルト固定用バックル5では、シートベルト固定用バックル5がシートベルト固定用タング6に正常にラッチしたことを目視により確認することができるようにしている。
【0067】
図11はシートベルト固定用バックルとシートベルト固定用タングとの正常ラッチの目視による確認を説明し、
図11(A)はシートベルト固定用バックルとシートベルト固定用タングとの非ラッチ状態を示す斜視図、
図11(B)は
図11(A)におけるXIB−XIB線に沿う断面図、
図11(C)はシートベルト固定用バックルとシートベルト固定用タングとの正常ラッチ状態を示す斜視図、
図11(D)は
図11(C)におけるXID−XID線に沿う断面図である。
【0068】
図11(A)ないし(D)に示すように、第2カバー20にはラッチ検出軸貫通孔20eが設けられている。このラッチ検出軸貫通孔20eには、第1カバー19の第1側壁11bのラッチ検出軸貫通孔11sを貫通したスライダ16のラッチ検出軸16cが摺動可能に貫通可能とされている。
【0069】
そして、
図11(A)および(B)に示すように、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6との非ラッチ状態では、ラッチ検出軸16cがラッチ検出軸貫通孔20eを貫通して第2カバー20の外部に突出するようになっている。したがって、第2カバー20から突出するラッチ検出軸16cが目視されることで、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とがラッチしていないことが確認可能となる。また、
図11(C)および(D)に示すように、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6との正常ラッチ状態では、ラッチ検出軸16cが第2カバー20内に引っ込み、第2カバー20の外部には突出しないようになっている。したがって、第2カバー20内に引っ込んだラッチ検出軸16cが目視されないことで、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とが正常にラッチしていることが確認可能となる
【0070】
次に、このように構成されたこの例のシートベルト固定用バックル5およびシートベルト装置1の作用について説明する。
図12に示すように、シートベルト固定用バックル5がシートベルト固定用タング6にラッチしていない状態では、イジェクタ14が作動位置(
図12に示す左限位置)にある。イジェクタ14の作動位置では、ラッチ部材回転制止部14gが第1ラッチガイド部13bの側面に当接することで、第1ラッチガイド部13bはその長手方向がシートベルト固定用タング6の挿入方向に設定されている。これにより、シートベルト固定用タング通過許可溝13dも同方向に設定されている。また、イジェクタ14の作動位置では、スライダ16の被制御面16bがイジェクタ14のスライダ制御部14fに当接している。これにより、スライダ16は
図12に示す非作動位置(
図12において下限位置)に設定されている。なお、イジェクタ14がスライダ16を非作動位置に設定可能にするために、イジェクタスプリング15およびスライダスプリング18の各付勢力とスライダ制御部14fおよび被制御面16bの各傾斜角が決められている。
【0071】
スライダ16のこの非作動位置では、スライダ16のラッチ部材押圧部16fは第1ラッチガイド部13bに当接していなく第1ラッチガイド部13bから若干離間している。これにより、スライダスプリング18の付勢力は第1ラッチガイド部13bに加えられていない。したがって、バックル側ラッチ部材13は
図12に示す非ラッチ位置にある。ま
た、スライダ16の非作動位置では、
図11(A)および(B)、
図12に示すようにラッチ検出軸16cが第2カバー20から突出しているので、突出したラッチ検出軸16cが目視されて、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とがラッチしていないことが確認される。
【0072】
図5(B)に示すように、シートベルト固定用バックル5はシートベルト固定用タング6にラッチされるために、そのシートベルト固定用タング挿入口19bを通してシートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bに所定の押圧力で嵌入される。このとき、シートベルト固定用バックル5が正規の状態でタング側ラッチ部材6bに嵌入されると、第1カバー19のシートベルト固定用タング挿入口19bのタング挿入規制部通過許可溝19dがシートベルト固定用タング6のタング挿入規制部6gを通過するので、シートベルト固定用バックル5が正規の状態でタング側ラッチ部材6bにスムーズに嵌入される。また、タング側ラッチ部ガイド部19cがタング側ラッチ部材6bの開放通路6dを通過することで、シートベルト固定用バックル5は更に一層スムーズに嵌入される。これにより、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bはシートベルト固定用バックル5内に深く挿入するようになる。
【0073】
一方、シートベルト固定用バックル5がその裏表を逆にされて、つまり、第1カバー19のシートベルト固定用タング挿入口19bのタング挿入規制部通過許可溝19dがシートベルト固定用タング6のタング挿入規制部6gと対向しない反対側にされてシートベルト固定用タング挿入口19bを通して誤ってタング側ラッチ部材6bに嵌入されると、タング挿入規制部6g側にタング挿入規制部通過許可溝19dが存在しないので、シートベルト固定用バックル5のシートベルト固定用タング挿入口19bがタング側ラッチ部材6bのタング挿入規制部6gの先端6hに当接し、シートベルト固定用バックル5はタング側ラッチ部材6bにそれ以上深く嵌入されない。つまり、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bはシートベルト固定用バックル5内のラッチ位置まで挿入することが不能となる。これにより、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とが誤ってラッチすることが阻止され、シートベルトが捩れて車体に取り付けられることが防止される。
【0074】
シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内に挿入すると、バックル側ラッチ部13aのシートベルト固定用タング通過許可溝13dがシートベルト固定用タング6の開放通路6d内に位置するようになる。したがって、タング側ラッチ部材6bはバックル側ラッチ部13aを通過しながらシートベルト固定用バックル5内に挿入する。
【0075】
シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bが更にシートベルト固定用バックル5内に挿入すると、タング側ラッチ部材6bの先端がイジェクタ14のシートベルト固定用タング当接面14eに当接してイジェクタ14を押圧する。すると、
図13に示すように、イジェクタ14がタング側ラッチ部材6bの移動とともに同方向(
図13において右方)へ移動する。これにより、ラッチ部材回転制止部14gも同方向に移動するが、ラッチ部材回転制止部14gはまだ第1ラッチガイド部13bの側面に当接している。
【0076】
また、イジェクタ14の移動で、イジェクタ14のスライダ制御部14fがスライダ16の被制御面16bから離間する。すると、スライダ16がスライダスプリング18の付勢力で
図13において上方へ移動し、スライダ16のラッチ部材押圧部16fが、ラッチ部材回転制止部14gが当接する反対側の第1ラッチガイド部13bの側面の一端部側に当接する。これにより、スライダスプリング18の付勢力が
スライダ16を介して第1ラッチガイド部13bに加えられる。
つまり、スライダ16が第1ラッチガイド部13bを押圧する。しかし、ラッチ部材回転制止部14gが第1ラッチガイド部13bの側面に当接しているため、第1ラッチガイド部13bはスライダスプリング18の付勢力を加えられる
ことでスライダ16により押圧されても回転しない。したがって、バックル側ラッチ部材13は
図12に示すシートベルト固定用バックル5の非ラッチ状態での姿勢が保持される。
【0077】
タング側ラッチ部材6bが更にシートベルト固定用バックル5内に挿入すると、イジェクタ14も同方向に移動するので、
図14(A)に示すように(削除)イジェクタ14のラッチ部材回転制止部14gが第1ラッチガイド部13bの側面から離間寸前となる。つまり、バックル側ラッチ部材13がラッチ作動開始直前となる。このときには、
図14(B)に示すようにバックル側ラッチ部材13のバックル側ラッチ部13aの全体がタング側ラッチ部材6bの孔6c内に位置するようになる。また、バックル側ラッチ部13aのシートベルト固定用タング通過許可溝13dは、その長手方向がタング側ラッチ部材6bの挿入方向と同じ方向またはほぼ同じ方向に設定されている。
【0078】
そして、タング側ラッチ部材6bのシートベルト固定用バックル5内への更なる挿入により、
図14(A)に示すようにラッチ部材回転制止部14gが第1ラッチガイド部13bの側面から離間すると、スライダスプリング18の付勢力により
スライダ16が第1ラッチガイド部13bを押圧しているので、第1ラッチガイド部13bが
図14(A)において反時計回りに回転する。つまり、バックル側ラッチ部材13がタング側ラッチ部材6bの移動平面と直交する軸またはほぼ直交する軸回りに同方向に回転する。このとき、バックル側ラッチ部材13は第1および第2ベース11,12にほぼ回転のみ可能に支持されるので直線移動することなく、スムーズに効率よく回転する。
【0079】
タング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内へ更に挿入すると、
図15(A)に示すようにシートベルト固定用タング6のタング挿入規制部6gの先端6hが第2ベース12のシートベルト固定用タング挿入口側端(
図15(A)において、左端)12pに当接する。これにより、タング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5内へそれ以上挿入しなく、シートベルト固定用タング6のフルストローク位置となる。また、シートベルト固定用タング6のフルストローク位置では、スライダ16の移動が図示しないストッパにより停止し、スライダ16は最大限移動した
図15(A)に示す作動位置となる。
【0080】
図15(A)に示すように、スライダ16の作動位置では、バックル側ラッチ部材13の第1ラッチガイド部13bは回転時の慣性力でスライダ16のラッチ部材回転抑止部16gに当接する位置まで回転し、第1ラッチガイド部13bはこの回転位置に保持される。第1ラッチガイド部13bは、この回転位置ではその長手方向がスライダ16の移動方向に対して若干傾斜した状態となっている。したがって、
図15(B)に示すようにシートベルト固定用タング通過許可溝13dも同様にスライダ16の移動方向に対して若干傾斜した状態となっている。
【0081】
シートベルト固定用タング6がフルストロークした後、シートベルト固定用タング6へのラッチのためのシートベルト固定用バックル5の押圧力が解除されると、イジェクタスプリング15の付勢力でイジェクタ14がシートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bをシートベルト固定用バックル5から脱出する方向に押圧する。すると、タング側ラッチ部材6bは同方向に移動する。このとき、前述のようにシートベルト固定用タング通過許可溝13dが傾斜しているため、タング側ラッチ部材6bのこの移動でタング側ラッチ部材6bの一方の第1タング側ラッチ部6eがシートベルト固定用タング通過許可溝13dの側面に当接する。これにより、第1タング側ラッチ部6eがシートベルト固定用タング通過許可溝13dを押圧してバックル側ラッチ部材13を
図15(A)および(B)において時計回りに回転させる。
【0082】
バックル側ラッチ部材13のこの回転により、
図16(B)に示すようにシートベルト固定用タング通過許可溝13dの側面が他方の第2タング側ラッチ部6fにも当接する。
これにより、バックル側ラッチ部材13の回転が停止し、シートベルト固定用タング通過許可溝13dの側面が第1および第2タング側ラッチ部6e,6fのいずれにも当接した状態となる。すなわち、バックル側ラッチ部材13はラッチ位置となる。このシートベルト固定用タング通過許可溝13dの状態では、シートベルト固定用タング通過許可溝13dの側面はスライダ16の移動方向に対して平行またはほぼ平行となる。したがって、
図16(A)に示すように第1ラッチガイド部13bもその長手方向がスライダ16の移動方向に対して平行またはほぼ平行となる。このように、第1ラッチガイド部13bの長手方向がスライダ16の移動方向に対して平行またはほぼ平行となることで、互いに組み合わされた第1および第2ベース11,12が第1ラッチガイド部13bと第2ラッチガイド部13cとの間に挟持される。また、スライダ16が第1ラッチガイド部13bに極めて隣接した位置となる。これにより、バックル側ラッチ部材13が
図16(A)に示すラッチ位置にある状態では、バックル側ラッチ部材13が回転しようとしたとき第1ラッチガイド部13bがスライダ16に当接する。したがって、バックル側ラッチ部材13がラッチ位置から回転するのをスライダ16によって阻止(ロック)される。しかも、バックル側ラッチ部材13の重心Gがバックル側ラッチ部材13の回転中心軸αにきわめて近接した位置にあるため、バックル側ラッチ部材13に非ラッチ位置の方への外力が加えられたとき、この外力によるバックル側ラッチ部材13の回転トルクは小さい。これにより、バックル側ラッチ部材13に非ラッチ位置の方への外力が加えられても、バックル側ラッチ部材13が非ラッチ位置の方へ回転するのが効果的に抑制される。したがって、バックル側ラッチ部材13はラッチ位置にあるとき、不意に回転することは阻止される。
【0083】
こうして、
図5(C)、
図16(A)および(B)に示すように、第1および第2タング側ラッチ部6e,6fはいずれもバックル側ラッチ部13aにラッチし、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とは正常にラッチした状態となる。これにより、シートベルト4の先端部が車体に固定される。シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6との正常ラッチ状態では、
図11(C)および(D)、
図16(A)に示すようにラッチ検出軸16cが第2カバー20から引っ込んで突出しないので、ラッチ検出軸16cは目視されず、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とが正常にラッチしていることが確認される。
【0084】
シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6との正常ラッチ状態で、緊急時にシートベルト4に通常時より大きな張力が加えられると、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6は互いのラッチ解除する方向に引っ張られる。これにより、第1および第2ベース11,12のタング側ラッチ部材6bが挿入する側には、互いに離間する方向に拡開しようとする力が作用する。しかし、第2ベース12の第1ないし第4係合部12k,12m,12n,12oが、それぞれ第1ベース11の対応する第1ないし第4係合支持溝11k,11m,11q,11rに嵌合されて強固に係合されているので、第1および第2ベース11,12は拡開しようとする力が作用しても拡開することが阻止される。特に、第1および第2ベース11,12が第1ラッチガイド部13bと第2ラッチガイド部13cとの間に挟持されているので、第1および第2ベース11,12の拡開が効果的に阻止される。すなわち、この例のバックル側ラッチ部材13は第1および第2ベース11,12の強度を補強している。
【0085】
互いにラッチされたシートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とがラッチ解除されるためには、前述のようにスライダ移動用工具24のスライダ押圧部24aによりスライダ16が非作動位置の方へ移動されてバックル側ラッチ部材13が回転可能にされた状態で、ラッチ部材回転用工具23によりバックル側ラッチ部材13が回転されてシートベルト固定用タング通過許可
溝13
dが
図14(B)に示すタング側ラッチ部材6bの脱出方向と同じ方向に設定される。その後、イジェクタ14によりタング側ラッチ部材6bがシートベルト固定用バックル5から押し出され、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とがラッチ解除される。このように、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチ解除にあたっては、解除専用の2つのスライダ移動用工具24およびラッチ部材回転用工具23を用いて、シートベルト固定用バックル5の両側からスライダ16を移動させる操作とバックル側ラッチ部材13を回転させる操作の2つの解除操作を同時に行う必要がある。これにより、一般のユーザーはシートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチ解除を容易に行うことができなく、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチ解除操作
はサービスマン等の専門技能者により行われるようにされている。
【0086】
この例のシートベルト固定用バックル5によれば、バックル側ラッチ部材13が、シートベルト固定用タング6のタング側ラッチ部材6bの挿入および脱出方向(つまり、移動方向)の平面と平行またはほぼ平行な平面に沿って移動しかつ回転制御部材であるスライダ16で回転制御される。したがって、従来のようにシートベルト固定用バックル5の厚さ方向に配設されかつバックル側ラッチ部材13を回転付勢するねじりばねが設けられないので、シートベルト固定用バックル5の厚さを薄くすることが可能となる。また、タング側ラッチ部材6bがほぼ円柱状のバックル側ラッチ部材13でラッチされるので、バックル側ラッチ部材13とタング側ラッチ部材6bとを安定して堅固にラッチすることが可能となる。
【0087】
また、タング側ラッチ部材6bのシートベルト固定用バックル5内への非挿入状態では、スライダ16がバックル側ラッチ部材13から離間してバックル側ラッチ部材13を押圧しない。これにより、バックル側ラッチ部材13の組付け時に、バックル側ラッチ部材13がスライダ16により付勢されないので、バックル側ラッチ部材13の組付けを容易に行うことが可能となる。
【0088】
更に、タング側ラッチ部材6bのシートベルト固定用バックル5内への挿入状態では、互いに組み付けられた第1ベース11および第2ベース12が、バックル側ラッチ部材13の第1ラッチガイド部13bおよび第2ラッチガイド部13cにより挟持される。これにより、緊急時にシートベルト4に通常時より大きな張力が加えられて、第1および第2ベース11,12が拡開しようとしても、第1ラッチガイド部13bと第2ラッチガイド部13cとにより、第1および第2ベース11,12の拡開を効果的に阻止することが可能となる。すなわち、バックル側ラッチ部材13により、互いに組み付けられた第1および第2ベース
11,12の強度を補強することができる。
【0089】
更に、ラッチ検出軸16cが設けられる。このラッチ検出軸16cは、シートベルト固定用タング6がシートベルト固定用バックル5にラッチされないときは第1カバー19から外部に突出するとともに、シートベルト固定用タング6がシートベルト固定用バックル5にラッチされたときは第1カバー19内に引き込まれる。これにより、ラッチ検出軸16cが第1カバー19の外部に突出しているか否かを視認することで、シートベルト固定用タング6とシートベルト固定用バックル5とのラッチを確認することが可能となる。特に、ラッチ検出軸16cがスライダ16に設けられることで、ラッチ検出のための構造を簡略化することができる。
【0090】
更に、ラッチ部材回転制止部14gがタング側ラッチ部材6bをシートベルト固定用バックル5から脱出させる方向に付勢するイジェクタ14で構成されることで、シートベルト固定用バックル5のラッチのための構造を簡略化することができる。
【0091】
一方、この例のシートベルト装置1によれば、シートベルト固定用タング6と安定かつ堅固にラッチ可能にしつつ、厚さをより薄くすることができるこの例のシートベルト固定用バックル5を備えているので、シートベルト4により乗員を効果的に拘束可能となると
ともに、シートベルト装置1の専有スペースが小さくなるので、シートベルト装置1
が狭い車室内で乗員に邪魔になることを抑制することが可能となる。
【0092】
また、タング挿入規制部6gが設けられる。このタング挿入規制部6gにより、タング側ラッチ部材6bのシートベルト固定用バックル5内への挿入量を所定量に規制することが可能となる。したがって、シートベルト固定用バックル5とシートベルト固定用タング6とのラッチ作業を簡単かつ安定して行うことができる。
【0093】
更に、タング挿入規制部6gがタング側ラッチ部材誤挿入防止部として構成される。このタング側ラッチ部材誤挿入防止部により、タング側ラッチ部材6bが裏表逆に誤って挿入されるのを防止することが可能となる。これにより、シートベルト4が捩られて取り付けられることが防止でき、シートベルト4による乗員拘束性を向上することができる。しかも、タング側ラッチ部材誤挿入防止部がタング挿入規制部6gで構成されることで、タング側ラッチ部材誤挿入防止部の構造を簡略化することができる。
【0094】
なお、前述の例では、シートベルト固定用バックル5がシートベルト4の先端部に設けられるとともに、シートベルト固定用タング6がプリテンショナー7を介して車体に設けられるものとしているが、シートベルト固定用バックル5をプリテンショナー7を介して車体に設けるとともに、シートベルト固定用タング6をシートベルト4の先端部に設けることもできる。また、シートベルト固定用バックル5およびシートベルト固定用タング6を車体側に設ける場合には、プリテンショナー7を介することなく車体に直接設けることもできる。要するに、本発明のシートベルト固定用バックルは、特許請求の範囲に記載された範囲で、種々の設計変更が可能である。