特許第5722772号(P5722772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722772
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】基板内に多重注入部を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20150507BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20150507BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01L27/12 B
   H01L21/02 B
   H01L21/265 Q
   H01L21/265 F
【請求項の数】17
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-521501(P2011-521501)
(86)(22)【出願日】2009年7月7日
(65)【公表番号】特表2011-530183(P2011-530183A)
(43)【公表日】2011年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2009058557
(87)【国際公開番号】WO2010015470
(87)【国際公開日】20100211
【審査請求日】2012年6月20日
(31)【優先権主張番号】0855439
(32)【優先日】2008年8月6日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505020307
【氏名又は名称】エス・オー・アイ・テック・シリコン・オン・インスレーター・テクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】トマ・シニャマルシェー
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・デグー
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・マツェン
【審査官】 綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−021597(JP,A)
【文献】 特表2006−527480(JP,A)
【文献】 特表2008−513990(JP,A)
【文献】 特表2006−527478(JP,A)
【文献】 特開平11−121310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/265
H01L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの第1受容基板(12,22,32)上に、基板(2,8,10)から、少なくとも一つの層を転写する方法であって、
a’)原子及び/又はイオンを基板内に注入するステップであって、
a)第1劈開領域を形成するように、イオン又は原子を、基板内の第1深さに注入する第1注入ステップと、
b)少なくとも一つの第2劈開領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の前記第1深さと異なる第2深さに注入する少なくとも一つの第2注入ステップであって、前記第2劈開領域が、前記第1劈開領域と同時に形成される、第2注入ステップと、
を含み、少なくとも2つの劈開領域を備えた注入基板を形成する、ステップと、
b’)前記注入基板と前記第1受容基板(12,22)とを結合するステップと、
c’)前記劈開領域(P1,P2)の一つに沿って前記注入基板を劈開するステップであって、前記第1受容基板から前記注入基板の一部(10’)が分離され、前記注入基板の一部(10’)が、前記劈開領域の少なくとも一つ(P2)を含む、ステップと、
d’)前記第1受容基板から分離された前記注入基板の一部(10’)を、第2受容基板(22)上に結合するステップと、
e’)前記第1受容基板から分離された前記注入基板の一部(10’)を、前記劈開領域(P2)の一つに沿って、劈開するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも第1受容基板(12,22,32)及び第2受容基板上に、基板(2,8,10)から、少なくとも二つの層を転写する方法であって、
A.原子及び/又はイオンを前記基板内に注入するステップであって、
a)第1劈開領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の第1深さに注入する第1注入ステップと、
b)少なくとも一つの第2劈開領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の前記第1深さと異なる第2深さに注入する少なくとも一つの第2注入ステップであって、前記第2劈開領域が、前記第1劈開領域と同時に形成される、第2注入ステップと、
を含み、少なくとも2つの劈開領域を備えた注入基板を形成する、ステップと、
B.前記注入基板と前記第1受容基板(12,22)とを結合し、次に、前記劈開領域(P1,P2)の一つに沿って前記注入基板を劈開するステップであって、前記注入基板を劈開することにより、前記第1受容基板から前記注入基板の一部(10’)が分離され、前記注入基板の一部(10’)が、前記劈開領域の少なくとも一つ(P2)を含む、ステップと、
C.前記第1受容基板から分離された前記注入基板の一部(10’)を、前記第2受容基板(22)上に結合し、次に、前記劈開領域の一つ(P2)に沿って前記第1受容基板から分離された前記注入基板の一部(10’)を劈開するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
少なくとも第1受容基板(12,22,32)及び第2受容基板上に、基板(2,8,10)から、少なくとも二つの層を転写する方法であって、
A.原子及び/又はイオンを前記基板内に注入するステップであって、
a)第1劈開領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の第1深さに注入する第1注入ステップと、
b)少なくとも一つの第2劈開領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の前記第1深さと異なる第2深さに注入する少なくとも一つの第2注入ステップであって、前記第2劈開領域が、前記第1劈開領域と同時に形成される、第2注入ステップと、
を含み、少なくとも2つの劈開領域を備えた注入基板を形成する、ステップと、
B.前記注入基板と前記第1受容基板(12,22)とを結合し、次に、前記劈開領域(P1,P2)の一つに沿って前記注入基板を劈開するステップであって、前記注入基板を劈開することにより、前記第1受容基板上に前記注入基板の一部(10’)を残し、前記注入基板の一部(10’)が、前記劈開領域の少なくとも一つ(P1)を含む、ステップと、
C.前記劈開するステップの前又は後に、前記第1受容基板(12,22)と結合された前記注入基板を、前記第2受容基板(32)と結合するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
基板から、少なくとも第1受容基板及び第2受容基板上に、少なくとも2つの層を転写する方法であって、
前記方法が、
A.原子及び/又はイオンを前記基板内に注入するステップであって、
a)第1注入領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の第1深さに注入する第1注入ステップと、
b)少なくとも一つの第2注入領域を形成するように、イオン又は原子を、前記基板内の前記第1深さと異なる第2深さに注入する少なくとも一つの第2注入ステップであって、前記第1及び第2注入領域が、前記基板の同一面を介した注入により形成される、第2注入ステップと、
を含み、これによって、少なくとも2つの注入領域を含む注入基板を形成する、原子及び/又はイオンを前記基板内に注入するステップと、
B.前記注入基板と、第1受容基板と、を結合し、次に、前記注入領域の一つに沿って実施される前記注入基板を劈開するステップであって、前記劈開するステップにより、前記第1受容基板から前記注入基板の第1部分分離され、前記注入基板の第1部分が、前記注入領域の少なくとも一つを含む、前記注入基板を劈開するステップと、
C.前記注入領域の少なくとも一つを含む前記注入基板の前記第1部分と、一つの第2受容基板と、を結合し、次に、前記注入基板の前記第1部分の前記注入領域の一つに沿って劈開するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記ステップCにより、前記第2受容基板から前記注入基板の第2部分分離され、前記注入基板の第2部分が、前記注入領域の少なくとも一つを含み、次に、
D.前記注入領域の少なくとも一つを含む前記第2部分と、第3受容基板と、を結合し、次に、前記注入基板の前記第2部分の前記注入領域の一つに沿って劈開するステップ、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップa)及びb)の注入が、同一基板の同一面を介して実施されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1注入ステップが、第1質量を有する第1型のイオンの注入ステップであり、
前記少なくとも一つの第2注入ステップが、前記第1質量と異なる第2質量を有する第2型のイオンの注入ステップであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1注入ステップが、Hイオンの注入ステップであり、
前記第2注入ステップが、Hイオンの注入ステップであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1注入ステップが、原子の注入ステップであり、
前記第2注入ステップが、イオンの注入ステップであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記原子が、注入機の第1出力エネルギーで注入され、
前記イオンが、同一の前記注入機の第2出力エネルギーで注入されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記原子が、イオンビームの第1部分を中和しすることにより得られ、第1注入エネルギーを受け、前記イオンビームの第2部分が、前記ビームの前記第1部分に関して、加速又は減速され、前記第1注入エネルギーと異なる注入エネルギーを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加速又は減速カラム(210)により注入が行われ、ポンプを用いて真空が実現され、加速又は減速カラム(210)の前で真空度を制御することにより、前記ポンプのパワーを調節することにより、又は前記原子及び/又はイオンを含むガスの量を制御することにより、又は、他には、注入ビーム内に含まれる種の一部をビーム−電荷中和することにより、2つの所望のエネルギーで注入される成分の割合が得られることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記注入が、質量による選別を行わずに実施され、プラズマ中で生成された全ての種が、同時に注入されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記注入が、イオン注入機内における質量による選別を伴って実施されることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記注入が、二重の質量による選別を伴って実施されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
追加のイオンの注入を実施するために、前記ステップa)及び/又はステップb)の前に及び/又は後に、第1又は第2注入深さで、追加のイオンを注入するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1又は第2注入ステップの前記イオン又は原子とは異なるイオン種を追加するために、前記ステップa)及び/又はステップb)の前に及び/又は後に、第1又は第2注入深さで、追加のイオンを注入するステップをさらに含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、SOI型の半導体基板の製造方法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このような方法は、既に知られているが、特に、“Smart Cut(登録商標)”技術の転写(transfer)ステップに対して使用される順序を順守すると同時に、いくつもの基板を同時に製造することは出来ない。
【0003】
特許文献1には、脆化領域を形成することを目的とした、連続的な注入が実行される技術が記載されている。
【0004】
さらに一般的に言えば、場合によってはこの同じ基板から多重の転写を実行することを目的として、単一基板内に、例えば、異なる深さを有する半導体材料から形成された基板内に、複数の注入領域を形成することによる課題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/35674号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Q.Y.Tong著,S.S.Iyer及びA.J.Auberton−Herve編集,“Silicon Wafer Bonding Technology for VLSI and MEMS applications”,2002,INSPEC,London,Chapter 1,1−20ページ
【非特許文献2】B.Aspar及びA.J.Auberton−Herve著,S.S.Iyer及びA.J.Auberton−Herve編集,“Silicon Wafer Bonding Technology for VLSI and MEMS applications”,2002,INSPEC,London,Chapter 3,35−52ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この課題を解決することを目的とするものであり、特に、単一基板の様々な層の連続的な転写を実行することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一に、本発明は、基板内への原子及び/又はイオンの注入方法に関するものであり、:
a)第1注入面又は領域を形成するように、イオン又は原子を、基板内の第1深さに注入する第1注入ステップと、
b)少なくとも一つの第2注入面又は領域を形成するように、イオン又は原子を、基板内の第1深さと異なる第2深さに注入する少なくとも一つの第2注入ステップと、
を含む。
【0009】
さらに、本発明は、少なくとも一つの第1受容基板上に、基板から、少なくとも一つの層を転写する方法に関するものであり、:
a’)上記のような、原子及び/又はイオンを基板内に注入する方法により、少なくとも2つの注入面又は領域を備えた注入基板を形成するステップと、
b’)注入基板と第1受容基板とを組み合わせるステップと、
c’)注入面又は領域の一方に沿って注入基板を劈開する又は破壊するステップと、
を含む。
【0010】
劈開する又は破壊するステップc’)が、第1受容基板に関して、少なくとも一つの注入面又は領域を含む注入基板の一部を切り離すことが可能である。換言すると、少なくとも一つの注入面又は領域を含む注入基板の一部が、第1受容基板から分離される。
【0011】
この方法が、注入基板の前記一部を、第2受容基板上に、転写するステップをさらに含む。
【0012】
次に、切り離されたままの(又は分離された)注入基板の前記一部を、その注入面又は領域の一つに沿って劈開する又は破壊するステップが実施できる。
【0013】
ステップc’)の前に、同様に、第1受容基板と組み合わされた注入基板を、第2受容基板と組み合わせることが可能である。
【0014】
劈開する又は破壊するステップc’)が、n個(n≧1)の注入面又は領域を含む、第1受容基板の一部を第1受容基板上に残すことが可能である。このステップc’)の後に、n個の連続する受容基板と注入基板とのn回の組み合わせが、次に実施されることが可能である。各組立体の、注入基板内に残っている劈開面又は領域の一つに沿った劈開が続き、その結果、受容基板の一つ上に、この注入基板の一部が転写されることが可能である。
【0015】
さらに、本発明は、基板からn個の受容基板上にn個の層を転写する方法に関するものであり、:
a’)上記のような、原子及び/又はイオンを基板内に注入する方法により、少なくとも2つの注入面又は領域を備えた注入基板を形成するステップと、
b’)注入基板の、又は一つ以上の層が既に転写されている初期注入基板から生じた基板の、各々の、n個の受容基板との、n回の連続する組み合わせのステップであって、最後の一つを除く各組立体が、次に、注入面又は領域の一つに沿って劈開又は破壊されるステップと、を含む。
【0016】
本発明は、特に、基板から、少なくとも一つの受容基板及び第2受容基板上に、少なくとも2つの層を転写する方法に関するものであり、
A.原子及び/又はイオンを前記基板に注入するステップであって、
a)第1注入面又は領域を形成するように、イオン又は原子を、基板内の第1深さに注入する第1注入ステップと、
b)少なくとも一つの第2注入面又は領域を形成するように、イオン又は原子を、基板内の第1深さと異なる第2深さに注入する少なくとも一つの第2注入ステップと、
を含み、
これによって、少なくとも2つの注入面又は注入又は領域を含む注入基板を形成する、原子及び/又はイオンを前記基板に注入するステップと、
B.注入基板と、第1受容基板と、を組み合わせ、次に、注入面又は注入領域の一つに沿って実施される注入基板を劈開する又は破壊するステップであって、この劈開する又は破壊するステップにより、少なくとも1つの注入面又は注入領域をさらに含む、注入基板の第1部分が、第1受容基板に関して、又は第1受容基板に対して、切り離される(前記第1部分が、前記第1受容基板から分離される)、注入基板を劈開する又は破壊するステップと、

C.少なくとも一つの注入面又は領域をさらに含む注入基板の前記第1部分と、少なくとも一つの第2受容基板と、を組み合わせ、次に、注入基板のこの第1部分の注入面又は注入領域の一つに沿って劈開する又は破壊するステップと、
を含む。
【0017】
ステップCにより、第2受容基板に関して又は第2受容基板に対して、注入基板の第2部分が切り離され、第2部分が、少なくとも一つの注入面を含み(前記第2部分が、前記第2受容基板から分離される)、次に、
D.少なくとも一つの注入面又は注入領域をさらに含む前記第2部分と、第3受容基板と、を組み合わせ、次に、注入基板のこの第2部分の注入面又は注入領域の一つに沿って劈開するステップ、を含む。
【0018】
本発明による方法によって得られた例示的な構造が、先に準備された代替形態の全てを含む、一つ以上のSiO/Si構造又は単にSiである。
【0019】
同様に、複数のSOI基板が、単一基板から形成されることが可能であり、複数の脆化面又は脆化領域が、複数の受容基板上に転写することにより、形成される。
【0020】
対象となる本発明の特徴にかかわらず、基板の材料内で、複数の劈開面又は劈開領域が、同時に、又は連続的に形成される。2つの注入面又は注入領域が、この基板の単一面を介して形成されることが可能である。
【0021】
第1注入ステップが、例えばHイオンである、第1質量を有する、第1型のイオンの注入ステップであることが可能であり、少なくとも一つの第2注入ステップが、例えばHである、第1質量と異なる第2質量を有する、第2型のイオンの注入ステップであることが可能である。
【0022】
この2つの型のイオンが、:
イオン注入機内において二重の質量による選別(double mass sorting)を行うことにより;
又は、他には、ソースの質量による選別を行わずに、得られることが可能であり、この場合、好ましくは、単純化されたイオン注入機が使用され、種の質量による選別を行わない。この場合、プラズマ中に存在する全ての種が、同時に注入されることになる。
【0023】
代替形態によると、第1及び第2注入ステップが、各々、イオンの注入ステップであることが可能である。第1型のイオンの第1イオン注入ステップが、注入機の第1出力エネルギーで実施され、;第2型のイオンの第2イオン注入ステップが、同じ注入機による第1出力エネルギーと異なる第2エネルギーで実施される。
【0024】
第2型イオンのイオンの荷電状態とは異なる、第1型イオンのイオンの第1荷電状態により、第2型イオンのイオンの注入とは異なる深さに、第1型イオンのイオンが、注入されることが可能となる。
【0025】
他の代替形態によると、種の一つが原子であり、他方がイオンである。イオンビームの第1部分を中和させ、この結果第1注入エネルギーを受けることにより、原子を得ることが可能であり、イオンビームの第2部分が、ビームの第1部分に関して、加速又は減速され、この結果、第1注入エネルギーと異なる注入エネルギーを有する。
【0026】
さらに一般的に言えば、種を2つの深さに同時に注入するために、ビーム中和現象(又は、エネルギー汚染のもの)が、使用されることが可能である。この現象は、曲げ磁石と加速カラムとの間のビームの一部の中和によるものである。従って、中和された部分が、加速されず(又は減速されず)、この結果、抽出エネルギーで注入されることになる。加速カラムの前で、ビームの中和の割合を制御することにより、同時に2つの注入、抽出エネルギーに対応する深さの第1の注入と、抽出エネルギーと加速エネルギーとの合計に対応する他の深さの第2の注入と、を実施することが可能である。中和されたビームの割合が、様々な方法で:真空度によって、及び/又はガスを導入することによって及び/又は電子ビームを用いた中和を用いて、制御されることが可能である。
【0027】
想定される実施形態にかかわらず、加速又は減速カラムの前に、真空度を制御することにより、ポンプのパワーを調節することにより、制御された量のガスを導入することにより、又は、他には、注入ビーム内に含まれる種の一部のビーム−荷電中和により、2つの所望のエネルギー(抽出エネルギー)で注入された成分のドーズ量又は割合が、制御されることが可能である。
【0028】
適用される実施形態にかかわらず、ステップa)及び/又はステップb)の前に及び/又は後に、追加のイオンが、第1又は第2注入深さに注入されることが可能である。従って、第1又は第2注入ステップのイオン又は原子とは異なるイオンの種を追加する、又は追加のイオンを投入することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】二重−注入基板を示すものである。
図2A】本発明に従う方法の例示的な実施形態を示すものである。
図2B】本発明に従う方法の例示的な実施形態を示すものである。
図3A】第1層を転写することを目的とした、本発明に従う方法の2つのステップを示すものである。
図3B】第1層を転写することを目的とした、本発明に従う方法の2つのステップを示すものである。
図4A】第2層を転写することを目的とした、本発明に従う方法の2つのステップを示すものである。
図4B】第2層を転写することを目的とした、本発明に従う方法の2つのステップを示すものである。
図5A】第1層及び第2層を転写することを目的とした、本発明に従う方法のステップを示すものである。
図5B】第2層を転写することを目的とした、本発明に従う方法の2つのステップを示すものである。
図5C】第2層を転写することを目的とした、本発明に従う方法の2つのステップを示すものである。
図6】本発明に従う方法を実行するために、実施されることが可能な例示的な装置を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、基板との用語が使用されるが、その適所において、“ウェハー”との用語が、使用される。
【0031】
本発明は、図6において概略的に示されるビーム−注入装置を用いて実施されることが可能である。
【0032】
注入機は、装置の一部であり、この装置は、通常、イオン源と、イオンを選択的に注入し、ウェハー上に所望のエネルギーを運ぶことが可能なビームラインと、走査システムと、線量測定器を備えたターゲットチャンバーと、を備える。後で、イオン質量による選別を備えない代替形態が開示される。
【0033】
さらに具体的には、ソース−形成部202が、イオン化チャンバーと呼ばれるチャンバーを備える。イオン化された種が、ガス状204でその中に導入される。以下において、水素化源ガスの実施例が提供されるが、他の実施例も可能である。
【0034】
このソースが、また、チャンバー内に導入されるガスのプラズマを生成する手段206を備える。例えば、バーナス(Bernas)−型ソースの場合、これは、強い電流が流れ、この結果、電子放射を生成するフィラメント(カソード)である。後者が、ガス原子に衝突し、これによって、これらをイオン化し、プラズマを形成する。
【0035】
同様に、ソース202が、プラズマを閉じ込めることが可能な磁場を形成する手段を備え、これによって、イオン化効率を高める。
【0036】
イオン化チャンバーの出力部に、イオンを抽出することが可能な(数10kVのオーダーの)電場を形成するための手段が備えられる。
【0037】
次に、イオンビームを偏向させる磁気的手段210(通常、電磁石)によって、質量による選別が実行される。偏向の曲率半径Rが、イオンの特性によって決まる:
R=M.V/q.B
ここで、Mは、イオン質量であり、Vは、その速度であり、qは、その電荷であり、Bは、印加される磁場である。
【0038】
このステップが、入射ビーム中に存在するイオン化種の優れた選択度を確保し、単一イオン及び単一エネルギーの分離を可能にする。
【0039】
この結果、精製され、イオンビームが、注入機の加速カラムを通過する。これによって標準的な注入機上において約170kVから250kVに達することが可能な加速電圧が生成される。
【0040】
ターゲット2に衝突する前に、一組の四重極レンズのような焦点調節手段212によって、イオンビーム4が焦点調節される。参照符号213が、偏向板を示す。
【0041】
質量による選別を備えない注入機の場合は、同じものが、ソースと、抽出手段と、加速カラムと、を備える。プラズマ中に含まれる全イオンが、直接的に抽出され、この結果、ターゲット(基板)に衝突することが可能である。次に、全イオンが、同じ初期エネルギーを有するが、そのイオン化の程度が互いに異なるので、これらが、異なる深さに注入されるようになる。
【0042】
すべての場合において、試料のある表面上に均一な注入を行うことを可能にする走査手段が、装置(静電気的手段、機械的又は混合型手段)に応じて決まる3つの異なる型であることが可能である。
【0043】
第1のケースにおいて、注入された全表面を走査するように、ビームが連続的に同じように偏向させるDC電圧に曝される。
【0044】
第2のケース(機械的走査)において、機械的手段によって、例えば、ドラムに取り付けられ;ビームが固定されたまま維持されることによって、プレートが、移動及び/又は回転するように動かされることが可能である。
【0045】
第3の解決策は、プレート上における静電気的走査ビーム移動の要素と、機械的手段によるプレートの移動の他の要素と、に関連する複合的な移動であることが可能である。
【0046】
第2及び第3の解決策は、多重−プレート処理を可能にするという利点を有する。実際には、第1及び第3の解決策は、単一−プレート処理に使用される。
【0047】
ターゲットチャンバー214が、真空の筐体であり、その一表面にわたって注入される基板2と、基板−ホルダー(図面には示さない)とが、配置される。チャンバーが、ファラデーケージを備え、これによって、受け取ったイオンの数に比例するプレート上の総電流Iを測定することが可能となり、注入ドーズ量Dを制御することが可能となる:
【数1】
ここで、qは、素電荷であり、Sは、基板の注入された表面である。電流−測定手段による電流の測定から、注入ドーズ量が推測されることが可能である。
【0048】
イオン注入とは、材料を、使用される装置に応じた数キロエレクトロンボルト(keV)から数メガエレクトロンボルト(MeV)まで変化するエネルギーで加速された所望の種のイオンと衝突させることである。基板内へのイオンの侵入が、ターゲットである原子と衝突することにより、そのエネルギーを失い、これによって、後者を移動させ、その経路にそって欠陥を形成する。この経路の終端部において、入射イオンが、マトリックス部(浸入型又は置換型)上で固定化される。この結果、イオン注入が、基板内における、イオンの分布、形成された欠陥及びイオンが占有する部分によって特徴付けられる。
【0049】
符号216が、想定される制御ガス吸入口、又は加速部210内に侵入する前に生成されたビームのイオンを中和する手段、又は、場合によって磁気手段208の出力における減速カラムを示す。
【0050】
イオン注入技術が、3つの大きな利点を有する:
−材料中に注入されたイオンの局部的な垂直分布が、イオンビームのエネルギーによって容易に制御される、
−生成されるイオンの総量が、試料の表面上における荷電粒子の吸入量と関連する電流によって容易に測定されることが可能である、
−最後に、材料中の種の制限的な溶解度を越え、必ずしも拡散されることが可能であるとは限らない種を導入することが可能である。
【0051】
本明細書において、脆化又は劈開又は破壊との語句は、同じように考えられる。本発明によると、例えば、シリコン、又はGe又はGaN等の半導体材料、又はIII−V、III−VI族の半導体材料から形成された基板中のいくつかの異なる深さにおいて、いくつかの脆化又は劈開面又劈開領域(又は、脆化面又は脆化領域)が形成される。基板が、SiO/Si型のハイブリッド基板であることも可能である。以下において、また、“脆化面”又は“劈開面”又は“劣化面”との語句は、同じように理解され、“脆化領域”(又は“脆化ゾーン”)又は“劈開領域”(又は“劈開ゾーン”)又は“劣化領域”(又は“劣化ゾーン”)を意味することも可能である。
【0052】
図1が、基板2中の2つの異なる深さに2つの脆化面P1及びP2を備えたこのような構造の実施例を示す。
【0053】
複数の脆化面又は領域が、単一の注入ステップで、基板中の様々な深さに同時に注入することにより形成されることが可能である。あるいは、基板中の2つ以上の深さに2つ以上の劈開面又は領域を画定するために、2つ以上の連続するステップが、実行されることが可能である。
【0054】
この実施形態にかかわりなく、2つの(n>1,各々)異なる深さでの(基板の一面から測定される)2つの(n>1,各々)劈開面の形成が、後に、単一の基板2からの2つの(n、各々)層転写の実行を可能にする。
【0055】
第1実施形態によると、プラズマの生成及び抽出の後、同じエネルギーのガス−生成イオンが、二重の質量−選別システムにさらされ、又は、分解能が低く、両方の種が通りぬけることを可能にする磁石が使用される。質量によって選別しないことも可能である。
【0056】
水素源ガスの場合、例えば、単一の初期エネルギーに対して、選別され、材料中に注入されるのは、H及びHイオンである。このようにして、上記において説明したような、イオンと基板材料との間の相互作用のメカニズムにより、Hイオンが、Rの深さに、ドーズ量Dで注入されるとともに、Hイオンが、Rの半分に等しいRの深さに、ドーズ量Dで注入される。各ドーズ量D及びDが、H/Hイオンの割合に関連する。H及びHイオンの割合が、例えば、Hイオンの形成を促進する水である成分を、プラズマに追加することにより制御されることが可能である。
【0057】
及びHのような2つのイオン種を注入する場合、図1に示されるような、2つの劈開面P1及びP2が形成される。
【0058】
半導体材料から形成され基板上に誘電層を有する型の基板の場合、例えば、図2Aが、ビーム4による二重注入の略図を示し、図2Bが、この二重−注入ステップの結果を示す。符号6及び8が、各々、例えばSiOの誘電層及び例えばシリコンから形成された半導体材料から形成された基板を示す。
【0059】
この2つの面P1及びP2が、それらの間に定義されたアスペクト比(H及びHイオンの場合、比が2に近い)を有する深さで形成されることが可能である。
【0060】
例えば水素である一つの成分を、2つの異なる深さに同時に注入するための他の解決策は、後段(post)−加速又は後段−減速がある場合の全ての注入機に存在するエネルギー汚染現象を使用することである。この現象は、通常、プロセスに害を及ぼす。これは、質量−選別磁石208と注入機の加速又は減速カラム210との間のビームの一部の中和が原因である(図6)。従って、ビームの中和された部分が、抽出エネルギーで注入され、一方、残りの部分が、所望の最終エネルギー(=注入エネルギー±加速又は減速エネルギー)で注入される。例えば、50keVの抽出及び50keVの後段−加速を含む、100keVの全体的なエネルギーが、2つのエネルギーである50keV及び100keVに対応する2つの注入面を生じる。この型の方法により、互いに無関係な2つの深さに、P1及びP2のような2つの注入面を形成することが可能となり、標準的な商用の注入機で実施することが可能である。
【0061】
及びHを注入する場合、2つの注入面P1及びP2の各々のドーズ量が、ソース中のプラズマの組成によって制御される。水素源ガスの場合、この制御が、(例えば、ソースのパラメータを好ましい種に変えることにより)ソースを最適化するか、又は他の成分をソースに制御下で追加するか、のいずれかによって、H及びHの各々の電流(又はドーズ量)を制御することにより行われ、この他の成分をソースに制御下で追加することは、ある種を他の種の上に生成することが好ましい。例えば、水の追加が、Hの生成を促進する。
【0062】
あるイオンを中和する場合、各注入面のドーズ量が、中和それ自体によって制御される。
【0063】
ビームの一部を中和するための操作が、機械内の真空度による影響を受ける。従って、(任意に、先の方法の一つと組み合わされ)、加速又は減速カラムの前に、例えば、図6における磁気手段208の出力と加速カラム210との間の矢印216によって示されたレベルで、バルブを用いて制御された量のガスを導入するか、又はポンプのパワーを調節することによって、真空度を制御することにより、n(例えば、n=2)の様々な所望の深さに注入されるイオンの割合を制御することも可能である。
【0064】
例えば、磁石208と加速カラム210との間に印加される、負電荷ビーム(デバイスの“電子シャワー”型)を印加することによりビームの一部を中和することも可能である。このようにして、各注入面における各ドーズ量にわたって、同様に制御が行われる。
【0065】
上記の場合、典型的には、Hイオンのドーズ量が、4.1016cm−2から1.1017cm−2の間にまで低下する。H種の場合、これらが、2つに分離され、この結果、典型的には、Hイオンのドーズ量が、2.1016cm−2から5.1016cm−2の間にまで低下する。
【0066】
最初に劈開部が生じる面を上手く制御するために、混合的な注入操作の後又は前に、追加のイオン(H若しくはH又はHe若しくはHe2+)を注入することが可能である。換言すると、一旦、面P1及びP2が画定され時点で、これらの面一方又は両方のレベルにおける劈開運動を(特に、ドーズ量を制御することにより)修正することが可能であり、この修正は、P1及び/又はP2面のレベルにおいて、他の種を追加する又は追加のイオンを入れるために、他の注入(単一の又は多重の)を実行することによって行われる。さらに、水素の注入が望ましくない場合には、ソースガスを変更することが可能である。
【0067】
他の方法によると、同様に、第1群のイオン(例えば、He)及び第2群のイオン(例えば、H)の混合的な注入を実施することが可能である。初期エネルギーを操作することにより、2つの形成された面が、所望の正確なオフセットで、要求通りに配置される。2つの型のイオンが、単一の劈開面上に又は単一の劈開面の周囲に共存することが望ましい場合、2つの種を厳密に重ね合わせないが、一方を他方よりもわずかに深く注入することによりそれらをわずかに分離させることが有利である。これを達成するために、ここで再び、様々な種のドーズ量及びエネルギーが、操作される。任意の型の種が、これらの多重注入ステップに適しうる。
【0068】
他の代替形態によると、劈開面が、いくつかの連続的な(もはや同時ではない)注入ステップによって画定されることが可能である。
【0069】
さらに他の代替形態によると、注入システムレベルで質量によって2つの種を選別するというよりは、質量による選別を行わずに、単一ガス源のイオン化操作を実行することが可能である。水素源の場合、同様に、この解決策が、(数ある中でも)H又はHイオンの同時に生成する。この結果、プラズマ中で生成された全イオン種が、同時に注入される。注入機が、イオンの質量による選別を実施する上記の代替形態のそれらとの違いに注目すべきである。ここで実行される注入機において、プラズマ中に含まれる全イオンが、直接的に抽出され、従って、ターゲット(基板)と衝突することが可能である。全イオンが単一の初期エネルギーを有するが、その質量が異なるため、これらが、異なる深さに注入されることになる。
【0070】
上述の代替形態において、2つの劈開運動の一方が、第3の種を注入することによって調節される場合、その範囲が、先に既に示したそれらよりも極めて広いものであることが可能である。典型的には、H/Heの組の場合、各々の、全体のドーズ量が:
− 2.1016から5.1016イオンHcm−2
− 2.1016から5.1016イオンHecm−2
の間である。
【0071】
以下において、ある基板が、付着接触によって、特に、結合によって又は分子結合によって組み込まれる。これらの技術が、特に、非特許文献1において説明されている。特に、組み込まれた2つの表面の一方又は両方上に堆積された、例えば、樹脂層、又はポリマー層、又は任意の他の接着層である中間層によって、結合が確保されることが可能である。
【0072】
このような組み立ての前に、高いエネルギー結合に有利に働くように、一つ以上の化学的及び/又は機械的処理(例えば、研磨)、及び/又は洗浄及び/又はプラズマ処理及び/又はオゾン処理ステップ等の、接着された表面を準備するステップが実行されることが可能である。
【0073】
次に、結合表面を強固にすることを目的として、熱処理が行われることが可能である。その基板の特性に応じて、熱処理が、200℃から1200℃の間で、数十分から数時間の間、例えば、10分又は30分から3時間又は5時間又は10時間の間、実行されることが可能である。
【0074】
本明細書において、Smart−Cut(登録商標)プロセスが、同様に言及される。これが、例えば、非特許文献2において説明されている。
【0075】
上記の注入操作の後で、次に、任意の他の操作、特に、面P1,P2のいずれかに沿って劈開することにより、第1膜の転写を開始することが可能である。
【0076】
第1受容基板12と組み合わされるように、この表面の特性を適応させるために、自由表面6’(図2B)の状態が、予め修正されることが可能である(粗さ、平坦性、親水性等)。これらの特性を改善するために、表面層を堆積することも可能である。しかしながら、後でのみ劈開が生じるべき面P1及びP2のレベルにおける劈開が過度に進むことを制限するために、低温で(例えば、典型的には60分未満である短い期間で、少なくとも<500℃)これらの全処理を実行することが好ましい。
【0077】
図3Aは、図2Bにおいて得られたものと同様な型の基板10の組立体を示し、例えばSiから形成された第1受容基板12を備える。
【0078】
次に、注入基板内で最も浅く、従って、受容基板12と組み合わされた表面6’に最も近い面P1に沿って、劈開が生じる。上記技術に従い、特に、SmartCut(登録商標)技術(図3B)に従い、この劈開が生じる。この結果、面P1に沿って、膜16が、初期基板から分離される。注入された各イオンに対する注入エネルギー及び注入ドーズ量に基づき、面P2に沿って劈開又は破壊することなく、面P1に沿った破壊又は分離又は劈開を可能にする熱処理を実行することが可能である。
【0079】
次に、少なくとも面P2、又は(最初は、受容基板12と組み合わされた表面6’から、P1よりも離れている)複数の脆化面を含む初期基板10の残りの10’が、第2受容基板22とともに結合される又は組み合わされることを目的として、既に上記において説明した代替形態の一つに従って再び準備される。
【0080】
この第2受容基板22と組み合わされるように、この表面の特性を適応させるために、残存部10’(面P2を含む)の自由表面の状態が、予め修正されることが可能である(粗さ、平坦性、親水性等)。これらの特性を改善するために、表面層を堆積することも可能である。しかしながら、後でのみ劈開が生じるべき面P2のレベルにおける劈開が過度に進むことを制限するために、低温で(例えば、典型的には60分未満である短い期間で、少なくとも<500℃)これらの全処理を実行することが好ましい。
【0081】
図4Aは、残存部10’と第2受容基板22とが組み合わされた状態を示す。今回は、好ましくは、受容基板22が、電気絶縁層24を備える。この層の一部が、残存部10’上に形成されることが可能である。
【0082】
この組み合わせ操作の後で、劈開が、面P2に沿って開始し、これにより、第2部10’を、初期基板から分離することが可能となる(図4B)。
【0083】
この結果、膜26が、面P2に沿って、初期基板から分離され、膜が、層24を介して第2基板22と共に組み合わされて残り、符号20’によって示された組立体を形成する。
【0084】
一つ以上の他の劈開面が、いまだ残存部10’’内に存在している場合、第3受容基板を用いた他の組み合わせ操作が実施されることが可能である。この組み合わせ操作の後で、脆化面に沿って、又は、残存部の脆化面の一つに沿って、劈開が再び開始され、これにより、初期基板のさらに他の部分を分離することが可能となる。
【0085】
全体で、n個の脆化面が形成された初期基板10の場合、n回(又はn’、0<n’<n)の劈開及び従って形成することが可能なn個(又はn’、n’<n)の受容基板上にn回(又はn’、n’<n)の転写が行われる。
【0086】
2つの脆化面P1及びP2の示された実施例において、SiO層6及びシリコン基板8:
−第1シリコン−オン−インシュレーター(SOI)型の基板20が、Si基板12に対して得られる、
−SiO層24が、Si基板22に対して得られ、この結果、第2シリコン−オン−インシュレーター(SOI)型の構造が生じる(基板8もSiから形成されるため、層26が、Siから形成される)。
【0087】
結果として、多数の種を注入するステップが、複数のほぼ同一なSOI基板を得ることを可能にし、又は、さらに一般的に言えば、個々の薄層の複数回にわたる転写において、各々が、他の個々の薄層が転写されるそれとは、異なる基板上に転写される。
【0088】
今述べた操作が、他の順番で実行されることが可能である。従って、図5Aに示されるように、図3Aの構造で開始され、注入基板内で最も浅く、従って第1受容基板12と組み合わされる表面6’に最も近い面P1に沿った第1劈開部の代わりに、注入基板内で最も深く、従って受容基板12と組み合わされる表面6’から最も遠い面P2に沿って、第1の劈開部が形成される。P1に沿って劈開することなく、P2に沿って劈開することが可能となるように、注入ドーズ量及び注入エネルギーパラメーターが、選択される。
【0089】
この結果、図5Aの構造体30が得られ、受容基板と組み合わされた部分が、劈開面P1を含む。
【0090】
上記において既に開示した代替形態の一つに従い、第2受容基板32と結合される又は組み合わされることを目的として、次に、受容基板12を備えた組立体から生じるこの新たな構造体30が、再び準備されることが可能である。
【0091】
基板32と組み合わされるように、この表面の特性を適応させるために、構造体30の表面状態が、予め修正されることが可能である(粗さ、平坦性、親水性等)。これらの特性を改善するために、表面層を堆積することも可能である。しかしながら、後でのみ劈開が生じるべき面P1のレベルにおける劈開が過度に進むことを制限するために、低温で(例えば、典型的には60分未満である短い期間で、少なくとも<500℃)これらの全処理を実行することが好ましい。
【0092】
図5Bは、構造体30と、この基板32と、が組み合わされた状態を示す。好ましくは、第2受容基板32が、電気絶縁層34を備える。後者が、基板30上に部分的に形成されてもよい。
【0093】
この第2の組み合わせ操作の後で、劈開が、面P1に沿って開始され、これにより、第1部分20’及び第2部分40’を分離することが可能となり、各々が、転写層26’、26’’を含む(図5C)。
【0094】
この結果、膜26’が、面P1に沿って初期基板から分離される。
【0095】
一つ以上の他の劈開面が、部分20’、40’の一方にいまだ存在している場合、第3の受容基板を用いた他の組み合わせ操作が、実行されることが可能である。この組み合わせ操作の次に、これらの劈開面の一つに沿って劈開するステップが続くことが可能である。
【0096】
ここで再び、全体で、n個の脆化面が形成された基板10の場合、n回(又はn’、n’<n)の劈開及び従って実行されることが可能なn個(又はn’、n’<n)の様々な受容基板上にn回(又はn’、n’<n)の転写が行われる。
【0097】
Si基板32、SiO層34、初期シリコン基板8(従って、膜26又は薄いシリコン層)、SiO層6の場合、2つのシリコン−オン−インシュレーター(SOI)型の構造20’,40(図5C)が、P1に沿った劈開によって得られる。
【0098】
上記の組み合わせ方法が、任意の基板2(図1)及び任意の順序の任意の数の脆化面を用いて実行されることが可能である。従って、図3A及び3Bに関連して説明された方法と、図5Aから5Cに関連して説明された穂法を組み合わせた方法を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0099】
2 基板
4 イオンビーム
6 SiO
6’ 表面
8 基板
10 基板
10’ 残存部
12 受容基板
16 膜
20 基板
30 構造体
P1,P2 脆化面
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6