特許第5722775号(P5722775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5722775-電磁波シールドシート 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722775
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】電磁波シールドシート
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
   H05K9/00 W
   H05K9/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-523687(P2011-523687)
(86)(22)【出願日】2010年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2010062359
(87)【国際公開番号】WO2011010697
(87)【国際公開日】20110127
【審査請求日】2013年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2009-172983(P2009-172983)
(32)【優先日】2009年7月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046303
【氏名又は名称】旭化成せんい株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一史
(72)【発明者】
【氏名】鹿田 一鑑
(72)【発明者】
【氏名】小尾 留美名
(72)【発明者】
【氏名】上野 郁雄
【審査官】 遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/083822(WO,A1)
【文献】 実開昭64−002499(JP,U)
【文献】 特開昭61−258500(JP,A)
【文献】 特開2009−158699(JP,A)
【文献】 特開2008−221073(JP,A)
【文献】 特表平09−506741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1層、及び第2層を有する積層不織布からなる電磁波シールドシートであって、該第1層は、繊維径6〜50μmの熱可塑性合成繊維の層であり、該第2層は、繊維径0.1〜5.0μmの極細繊維の層であり、該電磁波シールドシート表面上の該極細繊維の層の露出面積率は、5%以上であり、該電磁波シールドシートの少なくとも片面に金属が付着されており、該積層不織布の厚みは、10〜100μmであり、該積層不織布の引張強力は、20N/3cm以上であり、該積層不織布の金属付着量、2〜50g/mであり、そして該電磁波シールドシートの表面抵抗率は、常用対数値で−2.0〜−0.2Ω/□であることを特徴とする前記電磁波シールドシート。
【請求項2】
繊維径6〜50μmの熱可塑性合成繊維の第3層をさらに有する、請求項1に記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記金属の付着が、無電解メッキ又はスパッタリングによる、請求項1又は2に記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
前記不織布全体に対する前記極細繊維の含有率は、12〜23wt%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項5】
前記積層不織布の嵩密度は、0.3〜0.8g/cmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項6】
前記積層不織布が、カレンダー処理されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁波シールドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド特性が良好で、薄地化が可能な電磁波シールドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化が急速に進み、これらの機器から漏洩する電磁波のデジタル機器への影響が問題となっている。また、従来から、電磁波は電子回路に流れる電気信号に影響を与え誤作動を起こすだけでなく、生体に及ぼす影響も懸念されており、その対策の為、電磁波シールド材の開発がなされている。
【0003】
また、電磁波シールド材は、高い電磁波遮蔽(電磁波シールド特性)を要求されていると同時に、柔軟性、耐屈曲性、薄さ、軽さを有する材料が要望される。
【0004】
これらの要求を満たす材料として、織物や不織布を用いた電磁波シールド材があるが、要求を満たすためには、織物や不織布自身の目付や厚みを増加させ、金属被膜の量を増やさせなければ電磁波シールド特性が低下してしまうといった問題がある。
【0005】
この問題を解決する手段として、以下の特許文献1、特許文献2には、織物同士、不織布同士、又は織物と不織布を積層して電磁波シールド材とすることにより、従来品に比べ金属皮膜形成後の布帛の厚みの増加が少なく、金属皮膜の密着性、及びメッキ加工性を向上させうることが開示されている。しかしながら、この場合、所望の電磁波シールド特性を得るためには、金属被膜成型後の基材厚みが大きくなり、また、金属被膜自体も、厚くなってしまうという問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、金属粒子を含有した樹脂層を布帛の表面にコーティングする技術が開示されている。かかる技術においては、金属薄膜層の密着性を改良する為に樹脂と併せて金属粒子がコーティングされ、得られたシートは、屈曲性に富み、フレキシブルである。したがって、特許文献3に記載された技術は、実際に電磁波シールドシートを使用する際に使いやすいことを目的としていたと思われる。しかしながら、金属が持つ導電性の高さを、樹脂コーティングすることにより、かえって悪くしてしまい、結局電磁波シールド性は高いものではなく、かつ、厚いシートとなっている。
【0007】
他の試みとして、特許文献4や5では、極細繊維を使用し、その繊維表面に金属加工し、比表面積が高いことを利用して、その電磁波シールド性を高めることが開示されている。しかしながら、これらの文献に開示されている繊維シートでは、極細繊維が使用され性能の高いシートとなってはいるものの、極細繊維シートは、シートの強力が弱い為、実用上使用できるものではなかった。すなわち、電磁波シールド性能を高める為には、導電性が高い金属を高分子繊維の上につけることが必要であるが、一般的に高い導電性・密着性を得るためには、湿式法による無電解メッキが使用されるが、この工程では、メッキという電気化学的な反応が、数層にも繰り返され、また乾燥やメッキ浴に晒されることが何回も繰り返される。この為、これらの工程で、布帛自体が、切れてしまったり、布に欠点ができてしまったりして、均一な加工ができなかった。また、金属を蒸着する方法では、真空チャンバーに入れて金属を蒸着する必要があるが、このときに布の強力がもたずに切れたり、布に欠点が生じてしまったりした。また、繊維表面にしっかり固着させる為には、高真空にし、かつ繊維表面を活性化する必要が生じ、これらの工程に耐えうる繊維布帛とはならなかった。
【0008】
このように、今日まで、有効に薄く、高性能の電磁波シールドシートは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−276443号公報
【特許文献2】特開平2−82696号公報
【特許文献3】特開2003−8282号公報
【特許文献4】特開平7−243174号公報
【特許文献5】特開2010−65327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、従来の電磁波シールドシートに比べ、金属皮膜形成後の基材厚みの増加が少なく、少量の金属付着で優れた電磁波シールド性を有する電磁波シールドシートを提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、金属加工工程にも耐えることができ、結果的に、厚みが薄く、屈曲性に富んだ布帛ができ、その電磁波シールド性も高いシートを提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、積層不織布の中層として極細繊維層を特定量配置して緻密性を適正化し、該極細繊維層に金属を優先的に付着させることにより、薄地で、かつ、シールド特性に優れる電磁波シールドシートを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]少なくとも第1層、及び第2層を有する積層不織布からなる電磁波シールドシートであって、該第1層は、繊維径6〜50μmの熱可塑性合成繊維の層であり、該第2層は、繊維径0.1〜5.0μmの極細繊維の層であり、そして該シートの少なくとも片面に金属が付着されていることを特徴とする前記シート。
【0013】
[2]繊維径6〜50μmの熱可塑性合成繊維の第3層をさらに有する、前記[1]に記載の電磁波シールドシート。
【0014】
[3]前記金属の付着が、無電解メッキ又はスパッタリングによる、前記[1]又は[2]に記載の電磁波シールドシート。
【0015】
[4]前記積層不織布の厚みが、10〜100μmである、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の電磁波シールドシート。
【0016】
[5]前記不織布の引張強力が 20N/3cm以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の電磁波シールドシート。
【0017】
[6]前記不織布全体に対する前記極細繊維の含有量は、12〜23wt%である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の電磁波シールドシート。
【0018】
[7]前記積層不織布の嵩密度は、0.3〜0.8g/cmである、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の電磁波シールドシート。
【0019】
[8]前記積層不織布が、カレンダー処理されている、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の電磁波シールドシート。
【0020】
[9]前記シートの表面抵抗率は、常用対数値で−2.0〜−0.2Ω/□である、前記[1]〜[8]のいずれかに記載の電磁波シールドシート。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電磁波シールドシートは、金属皮膜形成後の基材厚みの増加が少なく、中層に極細繊維を配置することにより金属皮膜の密着性を向上させ、かつ、金属付着量を低減させ、少量の金属付着であっても電磁波シールド特性が60dB以上であるという優れたシールド特性を発揮する。また、本発明の電磁波シールドシートは、シートが強いため、より薄く、軽量、かつ高性能の電磁波シールドシートとし、高集積度が進んだ電子機器の中に、高い自由度をもって内装することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第2層に極細繊維の層を有する不織布の平面模式図である。
図2】第2層に極細繊維の層を有する不織布の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、少なくとも第1層及び第2層を有する積層不織布からなり、該第1層は、繊維径6〜50μmの熱可塑性合成繊維の層であり、該第2層は、繊維径0.1〜5.0μmの極細繊維の層であることを特徴とするシートであって、そのシートの少なくとも片面に金属が付着されている電磁波シールドシートである。また、本発明の電磁波シールドシートは、前記積層不織布の第2層の上に、第1層を有したサンドイッチ構造の積層不織布からなるシートであることもできる。
【0024】
本発明の電磁波シールドシートの構造的特徴、及びそれにより発揮される効果は、以下の通りである:
(1)本発明のシートは、比較的繊維径の太い熱可塑性合成繊維の層により形成される大きな繊維間隙を、比較的繊維径の微細な極細繊維の層が埋め尽くす構造を有しており、極細繊維層の表面露出性が高い。このため極細繊維層に優先的に、金属を付着させることができ、その結果、金属の付着有効表面積を格段に大きくすることでき、少量の付着で優れたシールド効果を発現することができると考えられる。
(2)本発明のシートは、好ましくは中層が極細繊維層からなる積層不織布の構造を有する。極細繊維層は接着層として作用し、シート全体が緻密化される。その結果、薄地で、可撓性のあるシートが得られると考えられる。
【0025】
本発明の積層不織布の第1層、及び/又は第3層に使用する熱可塑性合成繊維は、使用環境、加工条件により、適宜に決めることができるが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド繊維などのポリアミド系繊維、PPS等の結晶性エンプラであることが好ましい。本発明に使用する繊維は、電磁波シールドシートの基材として用いられるものであり、金属加工の工程、特に湿式のメッキ工程にまで耐え、かつ、金属との密着性を高く保つことができるという観点、又は湿潤時の寸法安定性の観点から、ポリエステル系繊維やPPS繊維がより好ましい。
【0026】
本発明において、積層不織布の第1層、第3層に用いる熱可塑性合成繊維は、繊維径が6〜50μmであり、好ましくは8〜30μm、より好ましくは8〜20μmである。6μm以上であれば、得られるシートの強度が強くなり、結果的に金属加工の工程性がよく、より効率よく電磁波シールドシートが得られる。50μm以下であれば、比較的大きな繊維間隙が得られ、第2層である極細繊維が、シート表面に出やすくなり、より効率よく表面に出た極細繊維に金属加工され、かつ金属の連続層となることから高性能の電磁波シールドシートが得られる。
【0027】
本発明のシートの表面構造において、繊維径の比較的太い熱可塑性合成繊維層は、比較的大きな繊維間隙を有しており、繊維間隙の大きさは、孔径として、30〜10000μmが好ましく、より好ましくは50〜1000μm、さらに好ましくは50〜300μmである。
【0028】
本発明の積層不織布の第2層に使用する極細繊維の素材は、使用環境、加工条件により、適宜に決めることができる。また、積層不織布の第1層、及び/又は第3層に使用する熱可塑性合成繊維と同じものでも、違うものでもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド繊維などのポリアミド系繊維、PPS等の結晶性エンプラであることが好ましい。本発明に使用する極細繊維は、電磁波シールドシートの基材として用いられる積層不織布に使用するものであり、第1層、第3層に使われる樹脂の理由と同様に、また、より強固に金属層が固着されることが必要であるという観点から、ポリエステル系繊維やPPS繊維が好ましい。
【0029】
第2層である極細繊維の層は、このような繊維間隙を埋め尽くす様に配置されている。このような表面構造を有するシート表面に、金属を付着する処理を行うことにより、極細繊維層に優先的に金属が付着することができる。図1は、極細繊維の表面状態を示す平面模式図であり、図2は、断面状態を示す断面模式図である。
【0030】
極細繊維層の表面に占める露出面積率は、20%以上が好ましく、より好ましくは50〜90%であり、さらに好ましくは60〜80%である。露出面積率に応じて、極細繊維層に金属が付着される。この為、金属が連続層となり、より高いシールド効果を発揮できる。
【0031】
例えば、本発明の具体的態様において、上層下層の繊維径が13μmのポリエステル系繊維層の場合、径が120μmの繊維間隙を有しており、その間隙は、繊維径が微細な極細繊維層で完全に埋め尽くされている。
【0032】
第2層を構成する極細繊維の繊維径は、0.1〜5.0μmであり、好ましくは、0.4〜3.0μmである。極細繊維の繊維径が上記範囲である場合、極細繊維層の比表面積が大きくなり、極細繊維間同士の距離が小さくなるため良好な金属被膜層形成が可能である。0.1μm以上では、当該繊維を製造する上で品位の良い繊維・シートとなる。0.1μm未満であると、極細繊維同士が絡まってしまったり、熱溶融する繊維である場合は、融着してしまったりして、シートにした場合、糸だまや、欠点となる可能性もあるため、0.1μm以上が良い。一方、極細繊維が5.0μm以下であれば、比表面積が大きくなり、単位体積・面積あたりの繊維量が多くなることから、金属加工した場合に、より連続的な金属皮膜が形成され、電磁波シールド性が高くなる。また、同じ意味で、繊維同士の距離が狭くなり、より連続的な金属皮膜が形成され、電磁波シールド性が高くなる。
【0033】
積層不織布の厚みは、10μm〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜60μmであり、さらに好ましくは、10〜40μmである。本発明の電磁波シールドシートは、不織布をこのような厚みにすることで、嵩張らず、小さな空間でも設置できるものとなる。10μm以上であれば、積層不織布が強く、金属加工で十分な強力を持ち、効率よく電磁波シールドシートが得られ、一方、100μm以下であれば、より薄くしなやかで使用しやすい。本発明では、布帛の強度を主に司る第1層と、金属加工した際により、大きい比表面積を持つことから、主にシールド性能を司る第2層を有する、すなわち、役割を分化させた積層シートである為、より薄く、しなやかで、高性能の電磁波シールドシートとなる。
【0034】
積層不織布の各層(第1層、第2層、及び/又は第3層)の目付は、各層の比率により、それぞれ、以下に述べる値であることが好ましい。
本発明で第2層をなす極細繊維不織布層の目付は、0.5g/m以上が好ましい。0.5g/m以上であれば、繊維間距離が大きくなりすぎず、加工する金属が間隙に入り込み易く、均一で緻密な連続金属層を形成できる。この意味で、第2層をなす極細繊維不織布層の目付は、より好ましくは1.5g/m以上である。
【0035】
第1層(及び/又は第3層)をなす熱可塑性樹脂からなる不織布層の目付は、5g/m以上が好ましく、7g/m以上がより好ましい。5g/m以上であれば、積層不織布として、十分に均一な繊維間距離を得ることができるため、緻密で均一な連続金属層を形成できる。繊維径に関して述べたように、第2層を作る極細繊維層が、第1層を作る繊維間により均質に配置し、結果として積層不織布として、より均一に極細繊維が分布することとなる。この結果、より均質に分布された極細繊維層を介して、緻密で均一な連続金属層を形成できる。また、5g/m以上であれば、積層不織布として、十分な強度を有し、金属加工工程が安定し、積層不織布層が型崩れすることなく安定して所望のシートを作ることができる。
【0036】
不織布全体に対する極細繊維の含有率は、12〜23wt%であることが好ましく、より好ましくは16〜23wt%である。さらに好ましくは16〜20wt%である。極細繊維が12wt%以上である場合、比表面面積が高く繊維間距離が安定し、一方、23wt%以下である場合、第1層の熱可塑性高分子層の布張力が高く表面の耐毛羽性も良好となる。いずれにしても、必要な厚みや目付を確保することが重要で、その範囲で適宜選ばれるべきである。
【0037】
積層不織布の嵩密度は、0.3〜0.8g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7g/cmであり、さらに好ましくは0.5〜0.7g/cmである。嵩密度が0.3g/cm以上である場合、布強力に優れ、また、繊維同士の距離が離れすぎず、金属加工した際に、金属が連続層となりやすく、より高性能の電磁波シールド性を有する。一方、0.8g/cm以下である場合、軽く、無電解メッキの液浸透性がよく、また不織布素材である本来の意味で、通気性・通液性が残る為に良い。電磁波シールド性のみを求めるならば、フィルムやシートの上に金属層を設けるか、又は金属箔そのものを使用すればよい。
【0038】
不織布は繊維とその間隙である空隙層から構成されるが、空隙層の塊の形状は一般にランダムである。例えば、一般のスパンボンド不織布(繊維径が、15μm〜40μm)の孔径分布を見た場合、平均的な孔径分布は30μmを超える。また、最大孔径は50μmを超えることになる。すなわち、不織布内には概略直径が50μm以上の空隙が含まれることになる。特に、目付けが小さく、厚みが小さい不織布の場合は、数mm以上の大きな孔径を持つ部分も存在する。孔径サイズが大きすぎると、その孔の部分に加工される金属が入り込まず連続金属層を作れず、電磁波の漏れが生じ易くなる。この意味で、本発明では、極細繊維層を持つことで、繊維同士の距離が少なくなり、すなわち、孔径が小さくなり、均一な連続金属層を作りやすくなる。この為、本発明の積層不織布の平均孔径は、0.3μm以上20μm以下がよい。0.3μm以上であれば、加工する金属が入りやすく、高性能の電磁波シールド性を実現できる。20μm以下であれば、繊維間距離が適度で、加工する金属や、無電解メッキに使用する電解液が入り易く、結果的に良好な連続金属層を作ることができ、高性能の電磁波シールド性が実現できる。
【0039】
本発明で、積層不織布の引張強力は、20N/3cm以上が望ましい。20N以上であれば、無電解メッキや、真空蒸着、スパッタリングの工程で、積層シートが切れたり、しわがよったりすることがなく、より効率よく、電磁波シールドシートを作成することができる。
【0040】
積層不織布は、カレンダー処理されていることもより好ましい態様である。積層不織布の中層を構成する極細繊維は、カレンダー処理により接着剤の役割を果たし、積層不織布の層間剥離の発生を防止することから、より強度が高く、寸法安定性がよい積層不織布を得ることができる。積層不織布の引張強力は、25N/3cm以上がより好ましい。
【0041】
本発明では、シートの少なくとも片面に金属が付着されている。2層の積層不織布の場合は、第2層となる極細繊維層側に金属加工されるのが好ましい。
金属の付着方法としては、無電解メッキ、金属蒸着、スパッタリングが好ましい。また、より高性能の電磁波シールドシートとするには、金属層をより均一により多く固着することができる意味で、無電解メッキがより好ましい。本シートは、強度・寸法安定性がよいため、この無電解メッキ工程にも耐えられるため、より高性能の電磁波シールド性を発揮できる。
【0042】
金属被膜層に用いられる金属は、特に限定されない。例えば、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、錫、銀、金、インジウム、クロム、白金、鉄、コバルト、モリブデン、チタン、パラジウム、SUS、ニオブなど、公知のものを用いることができる。金属被膜層としては少なくとも一種の金属を用いることができる。特に、産業上好ましい態様は、材料コストや、工程ロス、及び酸化による導電性の劣化を考慮した場合は、ニッケル、銅、銀、金等が好ましい。
金属付着量の好ましい範囲は2〜50g/mであり、より好ましくは4〜35g/mである。
【0043】
本発明においては、積層不織布の繊維の構造により左右される為一概に規定はされないが、金属の20wt%以上が極細繊維に付着されていることが好ましく、より好ましくは30〜90wt%であり、より好ましくは50〜90wt%である。金属の20wt%以上が極細繊維に付着している場合、連続した金属層を形成し易くなる為、シールド特性が向上する。
【0044】
本発明の電磁波シールドシートの表面抵抗率は、積層不織布の繊維同士の交絡の程度や、布帛の表面に固着される金属種、及び量により異なるが、より確実なシールド性能を得るために表面抵抗率の常用対数値で、−2.0〜−0.2Ω/□の範囲が好ましく、より好ましくは−1.8〜−0.6Ω/□、さらに好ましくは−1.8〜−0.8Ω/□、最も好ましくは−1.8〜−1.0Ω/□である。不織布構造が適度で、金属被膜均一形成が良好な場合、表面抵抗率の常用対数値は、−0.2Ω/□以下を示し、良好な電磁波シールド性を有す。一方、表面抵抗率の常用対数値が−0.2Ω/□を超えると金属被膜が均一でなく、高い電磁波シールド性を得られ難い。
【0045】
本発明の電磁波シールドシートは、電磁波シールド特性が43dB以上であることが好ましく、より好ましくは53dB以上であり、さらに好ましくは60dB以上、最も好ましくは70dB以上である。電磁波シールドとしては、一般的にシールド特性が43dB 以上であると実用化レベルにあるといわれており、この値をクリアすることで実用上使用可能な用途が広がる。いずれにせよ、この値は、積層不織布の構造・厚みや、加工する金属種や量により異なる。本発明は、これらの高性能の電磁波シールド性を得ており、さらに薄く・軽く、フレキシブルな素材であることを特徴とする。
【0046】
本発明の電磁波シールドシートは、極細繊維不織布層と不織布層の積層不織布からなる。極細繊維不織布層と不織布層を積層する方法は、不織布層、極細繊維不織布層とも熱可塑性樹脂からなるため、熱エンボスで一体化する方法が、不織布の引張強度と曲げ柔軟性を維持し、耐熱安定性を維持することができるため好ましい。好ましいのは、スパンボンド不織布層、メルトブロウン不織布層、スパンボンド不織布層を順次製造し、積層してエンボスロール又は熱プレスロールで圧着する方法である。すなわち、熱可塑性合成樹脂を用いて少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層をコンベア上に紡糸し、その上に熱可塑性合成樹脂を用いてメルトブロウン法で、繊維径0.1〜5μmの極細繊維不織布層を少なくとも1層以上吹き付ける。その後、エンボスロール又はフラットロールを用いて圧着することにより一体化する方法が好ましい。更に、熱圧着前にメルトブロウン不織布の上に熱可塑性合成樹脂を用いた熱可塑性合成長繊維不織布を少なくとも1層以上積層し、次いで、エンボスロール又はフラットロールを用いて圧着することにより一体化する方法がより好ましい。
【0047】
上記の製造方法を用いると、熱可塑性合成長繊維不織布層の上に、メルトブロウン法による極細繊維不織布層が直接吹き付けられるので、メルトブロウン法による極細繊維を熱可塑性合成長繊維不織布層内に侵入させることができ、熱可塑性合成長繊維不織布層の繊維間隙を埋めることができる。
【0048】
このようにすれば、メルトブロウン法により極細繊維が熱可塑性合成長繊維不織布内に侵入して固定されるため、積層不織布の構造自体の強度が向上するだけでなく、極細繊維不織布層の外力による移動が生じにくくなるので層間剥離し難くなる。また、不織布層内の空隙の塊を極細繊維層により均一化することができるため、金属被膜が均一に形成されることになる。これらの積層不織布を得る方法は、国際公開第2004/94136号パンフレットや、PCT/JP2010/057624(特願2009−111448)に開示されているので、これを参考に、本願に最適な積層不織布を得ることができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。また本発明の電磁波シールドシートの各種物性及び特性は、下記方法に従って測定した。
【0050】
(1)目付け(g/m):サンプル24cm×33cmの重量を1mに換算した。
【0051】
(2)厚み(μm):JIS L−1906に規定の方法に従い、幅1m当たり10箇所の厚みを測定し、その平均値を求めた。荷重は9.8kPaで行った。
(3)平均繊維径(μm):電子顕微鏡で500倍の拡大写真をとり、10本の平均値で求めた。
【0052】
(4)不織布の引張強力(N/3cm):幅方向1mにつき5ヶ所から幅30mm、長さ約250mmの試験片を採り、把握間隔100mm、引張速度300mm/minで引張強力及び破断伸度を測定し、その平均値を求めた。
【0053】
(5)開孔径分布
PMI社のパームポロメーター(型式:CFP−1200AEX)を用いた。測定には浸液にPMI社製のシルウィックを用い、試料を浸液に浸して充分に脱気し、測定した。本測定装置は、フィルターを、あらかじめ表面張力が既知の液体に浸し、フィルターの全ての細孔を液体の膜で覆った状態からフィルターに圧力をかけ、液膜の破壊される圧力と液体の表面張力から計算された細孔の孔径を測定する。計算には下記の数式(3)を用いる。
d=C・γ/P 数式(3)
式中、d(単位:μm)はフィルターの孔径、γ(単位:mN/m)は液体の表面張力、P(単位:Pa)はその孔径の液膜が破壊される圧力、Cは定数である。
数式(3)より、液体に浸したフィルターにかける圧力Pを低圧から高圧に連続的に変化させた場合の流量(濡れ流量)を測定すると、初期の圧力は最も大きな細孔の液膜でも破壊されないので、流量は0である。圧力を上げていくと、最も大きな細孔の液膜が破壊され、流量が発生する(バブルポイント)。さらに圧力を上げていくと、各圧力に応じて流量は増加し、最も小さな細孔の液膜が破壊され、乾いた状態の流量(乾き流量)と一致する。本測定装置では、ある圧力における濡れ流量を、同圧力での乾き流量で割った値を累積フィルター流量(単位:%)と呼ぶ。累積フィルター流量が50%となる圧力で破壊される液膜の孔径を、平均流量孔径と呼ぶ。本発明での最大孔径は、累積フィルター流量が50%の−2σの範囲、すなわち、累積フィルター流量が2.3%となる圧力で破壊される液膜の孔径とした。
【0054】
(6)露出面積率(%):不織布の表面のSEM写真を撮り、方眼紙に拡大印刷し、極細繊維が不織布表面に出ている割合を方眼紙の重量から求めた。
【0055】
(7)嵩密度(g/cm3):不織布目付け(g/m2)を不織布厚み(μm)で割り返した値を嵩密度(g/cm3)とした。
【0056】
(8)通気抵抗(kPa・s/m):カトーテック株式会社製KES−F8−AP1通気抵抗試験機を用いて、通気度4cm3/cm2・sにおける差圧より、通気抵抗(kPa・s/m)を測定した。
【0057】
(9)金属付着量(g/m2):金属付着加工の加工後の目付から、加工前の原反目付を引いた値とした。
【0058】
(10)金属加工厚み(μm):金属被覆された不織布の断面の電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、金属加工された層の厚みを測定した(n=20点とり、その平均値とした)。
【0059】
(11)金属付着の(濃淡の)外観:金属被膜形成状態を目で観察し以下のように評価した:
A:均一に金属被膜が形成されている
B:一部金属被膜が不均一で、場所により斑がある
C:金属被膜が不均一である
【0060】
(12)加工性(の評価)
連続的に工程を通したときに、その加工性を以下の評価基準で判定した:
A:非常に良好
B:ほぼ良好
C:不良
とし、不良の場合は、その原因を実施例中に記した。
【0061】
(13)金属の固着しやすさのモデル試験(金属の密着性)
得られた試料に粘着テープを貼付し、その後、テープを剥がし、その固着状態を見て、以下の評価基準で判定した:
A:剥がしても、金属がテープ面に映らなかった
B:金属がテープ面に映った
C:金属 及び、繊維くずが、テープ面に映った
【0062】
(14)電磁波シールド特性(dB):KEC法により、100Mz及び1GHzにおける電界シールド特性dB(近傍界シールド特性)を評価した。
【0063】
(15)表面抵抗率(Ω/□):ASPプローブを用いたJIS−K7194に順ずる方法で測定をした。表面抵抗率は、金属加工された面を(蒸着等による場合は蒸着面を)測定し、n=9の平均値として、常用対数値で示した。
【0064】
[積層不織布、金属めっき製造例]
汎用的なポリエチレンテレフタレートをスパンボンド法により、紡糸温度300℃でフィラメントの長繊維群を移動捕集面に向けて押し出し、紡糸速度3500m/分で紡糸し、コロナ帯電で3μC/g程度帯電させて充分に開繊させて、平均繊径16μmフィラメントからなる5cm変動率15%以下の均一性を有する未結合長繊維ウェブを、目付12.5g/mで、捕集ネット面上に、調製した(不織布層A)。
一方、ポリエチレンテレフタレート(溶融粘度ηsp/c 0.50)を、紡糸温度300℃、加熱エア温度320℃、吐出エア1000Nm/hr/mの条件下で、メルトブロウン法にて紡糸して、平均繊維径1.6μmの極細繊維を、目付5g/mのランダムウェブとして上記形成の長繊維ウェブに向けて直に噴出させた(極細繊維層B)。この際のメルトブロウンノズルから長繊維ウェブ上面までの距離は、100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引を0.2kPa、風速約7m/secに設定した。次いで、該積層ウェブをフラットとフラットロールの間に通して熱圧着させ、積層不織布を得た。
【0065】
更に熱圧着前にポリエチレンテレフタレートの長繊維ウェブを、最初に調製した不織布層(不織布層A)と同様にして開繊し、直にA/B/Aからなる三層積層ウェブを調製した。
次いで該積層ウェブをフラットとフラットロールの間に通して熱圧着させ、積層不織布を得た。
【0066】
上記の積層不織布を、塩化パラジウム0.3g/L、塩化第一銅30g/L、36%塩酸300ml/L、を含む水溶液に2分間できるように浸漬し、積層不織布の繊維表面を洗浄した。続いて、酸濃度0.1Nのホウ弗化水素酸に40℃で5分間の間保持できるよう浸漬し、その後水洗した。次に硫酸銅7.5g/L、37%ホルマリン30ml/L、ロッシェル塩85g/Lから成る無電解銅メッキ液に40℃で5分間浸漬後、水洗いした。続いて、スルファミン酸ニッケル300g/L、ホウ酸30g/L、塩化ニッケル15g/L、PH3.7の電気ニッケルメッキ液に35℃、10分間、電流密度5A/dm2で浸漬し、ニッケルを積層させた後水洗いして、電磁波シールドシートを得た。得られたシートはいずれも1mWの布帛であり、連続的に各工程の液に浸漬、水洗、乾燥を、実施して、連続巻物のシートを得た。
【0067】
[実施例1]
上記の方法で得られたポリエステル繊維の積層不織布の第1層、第2層、第3層の繊維径、目付けの基材構成を、以下の表1に示す。上記製造例において得られた電磁波シールドシートは、金属密着性がよく、金属加工後の厚み増加も3μmと少なく、かつ、高いシールド特性を示した。評価結果を同じく以下の表1に示す。得られた電磁波シールドシートは、金属加工後の厚みが30μmと非常に薄く高いシールド特性(65dB)を示した。
【0068】
[実施例2]
実施例1と同様に得たポリエステル繊維の積層不織布を、スパッタリング法により加工し、電磁波シールドシートを得た。スパッタリングは、真空蒸着装置と、熱源としてのニラコ製スタンダートボード(型式:SF−106 タングステン)とを用いて実施した。真空度5×10-5torrで、印加電圧5V、蒸着時間180秒を基本条件とした。
得られた電磁波シールドシートは、積層不織布に使われている極細繊維により金属の裏抜けがなく、繊維表面に均一な金属被膜を形成することができた。評価結果を以下の表1に示す。
【0069】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で、紡口径、及び、紡糸温度、紡糸速度、吸引力、風速を変化させ、ポリエステル繊維の1m幅の積層不織布を得た。得られた不織布の性状を、以下の表1に示す。また、実施例1と同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果は同じく以下の表1に示す。
【0070】
[実施例4]
実施例3と同じ不織布を用い、無電解メッキの処理時間を短くし、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表1に示す。
【0071】
[実施例5]
実施例3と同じ不織布を用い、無電解メッキの処理時間を長くし、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表1に示す。
【0072】
[実施例6〜実施例9、参考例10
実施例3と同様の条件で、不織布の目付けと厚みを変化させた積層不織布を得た。得られた不織布の性状を以下の表1に示す。また、実施例1と同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表1に示す。
【0073】
[実施例11、12]
実施例3と同様の条件で、スパンボンド不織布を得、その後、メルトブロウン不織布の紡口径、及び、紡糸温度、紡糸速度、吸引力、風速を変化させ、メルトブロウン不織布の繊維径を変化させ、その他は実施例3と同様にし、積層不織布を得た。得られた不織布の性状を以下の表1と表2に示す。また、実施例1と同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表1と表2に示す。
【0074】
[実施例13、14]
メルトブロウン不織布は実施例3と同様にし、スパンボンド不織布の紡口径、及び、紡糸温度、紡糸速度を変化させ、スパンボンド不織布の繊維径を変化させ、その他は実施例3と同様にし、積層不織布を得た。得られた不織布の性状を以下の表2に示す。また、実施例1と同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表2に示す。
【0075】
[実施例15、16]
熱可塑性樹脂をPPS(ポリプラスチック社製フォートロン)とした。不織布を作る条件は、以下とした。第1層:樹脂の溶融粘度(70g/10分、測定条件:荷重5kg、315.6℃)、紡糸温度:320℃、紡糸速度:(実施例15:8000m/分、実施例16:7500m/分)、第2層:樹脂の溶融粘度(670g/10分、測定条件:荷重5kg、315.6℃)、紡糸温度:340℃、加熱空気温度:390℃、加熱空気量:(実施例15;1000Nm/hr/m、実施例16:1200Nm/hr/m)、又フラットロールによる熱接着条件は、線圧260N/cm、ロール温度は上/下=170℃/170℃、カレンダー条件は、線圧350N/cm、ロール温度は上/下=235℃/235℃。積層不織布を作る条件及びその性能を、それぞれ、以下の表2に示す。その他の条件は、実施例1と同様にし、積層不織布を得た。得られた不織布の性状を同じく以下の表2に示す。また、実施例1と同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表2に示す。
【0076】
[実施例17、18]
実施例3と同様の不織布の作成方法で、第3層を重ねず、他の方法は、実施例3と同様にし、2層タイプの積層不織布を得た(実施例17)。得られた不織布の性状を以下の表2に示す。また、実施例1と同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表2に示す。
同様に、実施例11と同様の不織布の作製方法で、第3層を重ねず、他の方法は、実施例11と同様にし、2層タイプの積層不織布を得た(実施例18)。得られた不織布の性状を以下の表2に示す。また、実施例1を同様に、無電解メッキ方法で、金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表2に示す。
【0077】
[実施例19〜21]
実施例3と同じポリエステル繊維の1m幅の積層不織布に、実施例2と同様のスパッタリング方法で、銀を金属加工し電磁波シールドシートとした。その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表2に示す。また、スパッタリング時間を調整し、表2に示した金属加工量とし、電磁波シールドシートと、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表2に示す。
【0078】
[実施例22]
実施例3と同じポリエステル繊維の1m幅の積層不織布に、実施例2と同様のスパッタリング方法で、アルミニウムを金属加工し電磁波シールドシートとした。以下の表2に示す金属加工量とし、電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を同じく以下の表2に示す。
【0079】
[実施例23]
実施例17と同じ2層タイプの積層不織布に、実施例2と同様のスパッタリング方法で、銀を金属加工し電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
[比較例1]
ポリエステル繊維のサーマルボンド単層不織布(厚み85μm、嵩密度0.23g/cm3)を実施例1と同様に処理し電磁波シールドシート(金属付着量8g/m2、表面抵抗率-0.66Ω/□)を得た。加工性は、加工品の厚みが厚く、シートが硬い為、途中で皺が多発した。又、金属加工後の厚みが90μmになり、小型化された電子機器に使用するには不適切であった。評価結果を以下の表3に示す。
【0083】
[比較例2]
ポリエステル繊維のサーマルボンド単層不織布(厚み85μm、嵩密度0.23g/cm3)を上記と同様に、スパッタリング法により加工し電磁波シールドシート(金属付着量4g/m2、表面抵抗率-0.32Ω/□)を得た。得られた電磁波シールドシートには、極細繊維の層がないため、金属が裏抜けしてしまい金属被膜の均一形成が困難であった。評価結果を以下の表3に示す。
【0084】
[比較例3]
不織布として、旭化成せんい製のスパンボンド不織布(E05025、目付け25g/m)を用いた。不織布の構成及び性能結果を以下の表3に示す。次に、実施例1と同様の方法で、無電解メッキを行ない金属加工し、電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。加工性は、加工品の厚みが厚く、シートが硬い為、途中で皺が多発した。又、金属加工後の厚みが約120μmになり、小型化された電子機器に使用するには不適切であった。評価結果を同じく以下の表3に示す。
【0085】
[比較例4〜6]
不織布として、実施例3、13と14に用いた積層不織布の内、第1層のみの不織布の目付けで、単層の不織布を、それぞれ、比較例4、5と6で、得た。次に、実施例1と同様の方法で、無電解メッキを行ない金属加工し、電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。加工性は、加工品の厚みが厚く、シートが硬い為、途中で皺が多発した。又、金属加工後の厚みが厚く、小型化された電子機器に使用するには不適切であった。評価結果を以下の表3に示す。
【0086】
[比較例7〜9]
不織布として、実施例3と11に用いた積層不織布の内、第2層の極細不織布のみの目付け違いの単層の不織布を、それぞれ、比較例7と8で、得た。次に、実施例1と同様の方法で、無電解メッキにて金属加工を行なおうとしたが、金属加工時に、不織布が切れたり、収縮してしまい、良好な連続した電磁波シールドシートは得られなかった。しかしながら、ラボ(実験室)で、不織布に張力をかけずに、メッキ時間のみ時間設定を同じにし、20cm×20cmの試作品を得た。これらのシールド性能を以下の表3に示す。
また、実施例7と同じ不織布を、一定長・幅で固定し、熱セットした不織布を得た(比較例9)。次に、実施例1と同様の方法で、無電解メッキにて金属加工を行なおうとしたが、金属加工時に、不織布の収縮はなかったが、不織布が切れ、良好な連続した電磁波シールドシートは得られなかった。しかしながら、ラボで、不織布に張力をかけずに、メッキ時間のみ時間設定を同じにし、20cm×20cmの試作品を得た。これらのシールド性能を以下の表3に示す。
【0087】
[比較例10、11]
不織布として、実施例3と同じ積層不織布を用い、メッキ時間を短くし、所望の金属加工量の金属加工シートを得、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表3に示す。
【0088】
[比較例12]
不織布として、旭化成せんい製のスパンボンド不織布(E05025、目付け25g/m)を用いた。不織布の構成及び性能結果を以下の表3に示す。次に、実施例2と同様の方法で、銀のスパッタリング加工を行ない金属加工し、電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表3に示す。
【0089】
[比較例13]
不織布として、比較例4と同じ単層の不織布を用い、実施例2と同様の方法で、銀のスパッタリング加工を行ない金属加工し、電磁波シールドシートとし、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表3に示す。
【0090】
[比較例14〜16]
不織布として、実施例3と11に用いた積層不織布の内、第2層の極細不織布のみの目付け違いの単層の不織布を、それぞれ比較例14と15で、得た。次に、実施例2と同様の方法で、銀のスパッタリング加工にて金属加工を行なおうとしたが、金属加工時に、不織布が切れたり、収縮してしまい、良好な連続した電磁波シールドシートは得られなかった。しかしながら、ラボで、不織布に張力をかけずに、金属蒸着時間のみ同じにし、20cm×20cmの試作品を得た。これらのシールド性能を以下の表3に示す。
また、実施例7と同じ不織布を、一定長・幅で固定し、熱セットした不織布を得た(比較例16)。次に、実施例2と同様の方法で、銀のスパッタリング加工にて金属加工を行なおうとしたが、不織布の熱収縮はなかったが、加工時に不織布が切れ、良好な連続した電磁波シールドシートは得られなかった。しかしながら、ラボで、不織布に張力をかけずに、メッキ時間のみ時間設定を同じにし、20cm×20cmの試作品を得た。これらのシールド性能を以下の表3に示す。
【0091】
[比較例17、18]
不織布として、実施例3と同じ積層不織布を用い、実施例2と同様の銀によるスパッタリング法により、その時間を調整し、金属加工量の少ない加工シートを得、その性状・電磁波シールド特性を観た。評価結果を以下の表3に示す。
【0092】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の電磁波シールドシートは、金属付着量が少量でも高いシールド効果を発揮する不織布からなる電磁波シールドシートであるため、金属皮膜形成後の基材厚みの増加が少なく、薄地化電磁波シールドシートとして電子機器に好適に用いることができる。また、本発明の電磁波シールドシートでは、シートの厚みが薄いにもかかわらず、より高い電磁波シールド性が得られ、シートはフレキシブルで電子機器等への装着が容易である。また、シート強度が強い為、より高い効率で、金属加工シートが得られることから、低コストで高性能の電磁波シールドシートが提供される。
図1
図2