(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722794
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】コンピュータ補助式ハンドツールの触診アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
A61B 19/00 20060101AFI20150507BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
A61B19/00 502
A61B8/12
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-546272(P2011-546272)
(86)(22)【出願日】2010年1月4日
(65)【公表番号】特表2012-515049(P2012-515049A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】US2010020011
(87)【国際公開番号】WO2010083061
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2012年10月18日
(31)【優先権主張番号】12/354,186
(32)【優先日】2009年1月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500390995
【氏名又は名称】イマージョン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】IMMERSION CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ラムステイン、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッチ、クリストファー、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クルズ−ヘルナンデス、ホワン、マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】グラント、ダニー、エー.
【審査官】
佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−325961(JP,A)
【文献】
特開2005−111654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小侵襲コンピュータ支援式ハンドツールの作動方法であって、
検査対象の組織に接触する前記ハンドツールの移動にかかる時間間隔内に検知される各特徴に関して、前記コンピュータ支援式ハンドツールの第1のセンサから複数の信号を受信して処理するステップと、
前記複数の信号のパワースペクトルを生成するステップと、
前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定するステップと、
前記1又は複数のピークに対し、閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークが存在するかどうかを判定し、前記閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークが存在する場合、前記閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークをピークリストに追加するステップと、
前記ピークリストにあるピークに対して、最大出力を有するピークを検索し、前記最大出力を有するピークの周波数を求め、前記時間間隔内に検知される少なくとも1つの特徴に応答して前記最大出力を有するピークの周波数での動的な触感フィードバックを生成するステップとを含む、方法。
【請求項2】
検査対象の組織に接触する前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度に関して、前記コンピュータ支援式ハンドツール内の第2のセンサから通知を受信し、
前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度を加速度閾値と比較し、
前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度が前記加速度閾値より小さい場合は、前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定するステップを実行することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1又は複数のピークをピークリストに追加するステップにおいて複数のピークが前記ピークリストに追加される場合、前記動的な触感フィードバックを生成するステップにおいて、前記動的な触感フィードバックを所定の周期で作用する周期的触感フィードバックを生成する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定するステップは、最大出力及び周波数を有するピークを特定するステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記複数の信号のパワースペクトルを生成するステップは、
前記時間間隔内にサンプルの高速フーリエ変換(FFT)を計算するステップと、
周波数領域内でサンプルをフィルタリングするステップとを含み、
前記最小侵襲コンピュータ支援式ハンドツールの作動方法は、前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定するステップの後、各ピークが閾値を超えているかどうかを判定するステップを更に含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記1又は複数のピークをピークリストに追加するステップの後、前記ピークリスト内でのピークの数を求めるステップを更に含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1のセンサへの電流サンプルに局所的なピークがあるかどうかを判定し、局所的なピークが検知される場合は、一時的触感フィードバックを与えることを更に含み、
前記一時的触感フィードバックは、複数の非周期時間間隔内に与えられる電圧によって特徴付けられる、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
最大出力を有するピークの周波数を求め、前記触感フィードバックの強度を強く設定し、強い触感フィードバックを与えることを更に含み、
前記強い触感フィードバックは、前記動的な触感フィードバックを所定の周期で作用する周期的触感フィードバックを与える際に供給される電圧を超える電圧によって特徴付けられる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記触感フィードバックは、強度、周波数及び持続期間の少なくとも1つによって特徴付けられる、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記触感フィードバックは、前記検査対象の組織の剛性又は変形の変化レベルに基づいて動的である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1のセンサは、センサアレイを含み、
前記方法は、前記センサアレイによって感知される結節の大きさを求め、前記結節の大きさを示す触感フィードバックを使用者に与えることを更に含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1のセンサは、センサアレイを含み、
前記方法は、前記センサアレイによって血管の位置を検知することを更に含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1のセンサは、センサアレイを含み、
前記方法は、管腔構造の位置を、超音波信号を生成し、前記管腔構造に反射するエコー信号を検知することによって求めることを更に含む、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
最小侵襲組織検査を実施するシステムであって、
コンピュータ支援式ハンドツールであって、検査対象の組織に接触する前記ハンドツールの移動にかかる時間間隔内に検知される各特徴の通知を第1のセンサから複数の信号を受信する手段を含むコンピュータ支援式ハンドツールと、
前記コンピュータ支援式ハンドツールの操作を制御する実行可能命令を含む複数の構成部品を保存するメモリデバイスと、
各特徴を処理し、前記コンピュータ支援式ハンドツールの使用者に与える触感フィードバックを求めるために、前記メモリデバイスに保存される実行可能命令と協働するプロセッサと、
前記時間間隔内に検知される少なくとも1つの特徴、前記プロセッサによって生成される動的な触感フィードバックに応答して触感効果を与える前記コンピュータ支援式ハンドツール内の作動装置とを含み、
前記プロセッサは、
前記複数の信号のパワースペクトルを生成する手段と、
前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定する手段と、
前記1又は複数のピークに対し、閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークが存在するかどうかを判定し、前記閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークが存在する場合、前記閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークをピークリストに追加する手段と、
前記ピークリストにあるピークに対して、最大出力を有するピークを検索し、前記最大出力を有するピークの周波数を求め、前記最大出力を有するピークの周波数での動的な触感フィードバックを生成する手段とを含む、組織検査を実施するシステム。
【請求項15】
検査対象の組織に接触する前記ハンドツールの加速度の信号を受信する前記コンピュータ支援式ハンドツール内の第2のセンサと、
前記ハンドツールの加速度を加速度閾値と比較する構成要素と、
前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度が前記加速度閾値より小さい場合は、前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定する手段を作用する構成要素とを更に含む、請求項14に記載の組織検査を実施するシステム。
【請求項16】
前記作動装置は、前記1又は複数のピークをピークリストに追加する手段において複数のピークが前記ピークリストに追加される場合、前記動的な触感フィードバックを生成する手段において、前記動的な触感フィードバックを所定の周期で作用する周期的触感フィードバックを生成する、請求項14又は15に記載の組織検査を実施するシステム。
【請求項17】
命令が処理装置によって実行されると、コンピュータ支援式ハンドツールの操作を制御するためのコンピュータ可読媒体であって、
検査対象の組織に接触する前記ハンドツールの移動時に、時間間隔内に検知される各特徴に関して、前記コンピュータ支援式ハンドツールの第1のセンサから複数の信号を受信して処理する命令と、
前記複数の信号のパワースペクトルを生成する命令と、
前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定する命令と、
前記1又は複数のピークに対し、閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークが存在するかどうかを判定し、前記閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークが存在する場合、前記閾値を超えるピーク値を有する前記1又は複数のピークをピークリストに追加する命令と、
前記ピークリストにあるピークに対して、最大出力を有するピークを検索し、前記最大出力を有するピークの周波数を求め、前記最大出力を有するピークの周波数での動的な触感フィードバックを生成する命令と、
前記動的な触感フィードバックに応答して、作動装置によって触感効果を与える命令とを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項18】
検査対象の組織に接触する前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度に関して、前記コンピュータ支援式ハンドツール内の第2のセンサから通知を受信するプログラム命令と、
前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度を加速度閾値と比較するプログラム命令と、
前記コンピュータ支援式ハンドツールの加速度が前記加速度閾値より小さい場合は、前記パワースペクトルの1又は複数のピークを特定するプログラム命令を実行するプログラム命令とを更に含む、請求項17に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記1又は複数のピークをピークリストに追加するプログラム命令によって複数のピークが前記ピークリストに追加される場合、前記動的な触感フィードバックを生成するステップにおいて、前記動的な触感フィードバックを所定の周期で作用する周期的触感フィードバックが生成される、請求項17又は18に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記第1のセンサへの電流サンプルに局所的なピークがあるかどうかを判定するプログラム命令と、
局所的なピークが検知される場合は、一時的触感フィードバックを与えるプログラム命令とを更に含み、
前記一時的触感フィードバックは、複数の非周期時間間隔内に与えられる作動装置の電圧によって特徴付けられる、請求項17から19のいずれかに記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
最大出力を有するピークの周波数を求めるプログラム命令と、
前記触感フィードバックの強度を強く設定するプログラム命令と、
強い触感フィードバックを与えるプログラム命令とを更に含み、
前記強い触感フィードバックは、前記動的な触感フィードバックを所定の周期で作用する周期的触感フィードバックを与える際に供給される作動装置の電圧を超える作動装置の電圧によって特徴付けられる、請求項17から20のいずれかに記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2007年12月13日に出願し、本願と同一の譲受人による米国特許出願第11/955,563号(発明の名称「Minimally Invasive Surgical Tools with Haptic Feedback」)に関する。この特許出願明細書は、参照によって本願明細書に引用されるものとする。
【0002】
一般に、本発明の実施形態は、コンピュータ補助式ハンドツールに関し、更に具体的には、最小侵襲手術時に患部の組織検査を実施し、触感フィードバックを与えるためのコンピュータ補助式ハンドツールに関する。
【背景技術】
【0003】
現在の外科診療では、よく見えない血管系を特定するために、外科医が指先を使用する必要がある。最少侵襲処置を実施する状況では、ハンドポートを使用してこれを達成する。ハンドポートは、密閉可能な挿入物であり、外科医が手全体を腹膜に挿入し、組織を手で処理し、触診などを実施する。この方法の重大な欠点は、術後痛を伴い、感染症/合併症を増大させる6〜8cmの切開痕が患者に残ることである。
【0004】
最小侵襲手術(MIS)では、外科医は、細長い器具を使用し、患者の小さい「鍵穴」切開部から組織を処理する。典型的には、MISによって、非最小侵襲手術に比して回復時間が劇的に減少した。MIS器具の主な欠点は、外科医にとって正しく使用するのが難しく、器具の遠位端では人体構造を直接感じとる能力を最小限に低下させてしまうことである。手術器具の遠位端で集められた情報を視覚表示したり、複雑な形状変形表示を利用したりすることによって、その問題に対処してきたものもある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態では、コンピュータ支援式ハンドツールを用いて最小侵襲組織検査を実施するための方法が提供される。コンピュータ支援式ハンドツールは、移動して検査対象の組織に接触する。検査対象の組織に接触するハンドツールの移動にかかる時間間隔内に検知される各特徴に関して、コンピュータ支援式ハンドツールの第1のセンサから通知を受信する。その時間間隔内に検知された各特徴は処理され、使用者に与える触感フィードバック(たとえば触知効果)が求められる。触感フィードバックは、既定時間間隔内に検知されるピークの数に少なくとも反応する作動装置によって、生成され、使用者に与えられる。
【0006】
いくつかの実施形態では、検査対象の組織に接触するコンピュータ支援式ハンドツールの加速度に関して、コンピュータ支援式ハンドツール内の第2のセンサから通知を受信する。コンピュータ支援式ハンドツールの加速度は、加速度閾値と比較される。ハンドツールの加速度が加速度閾値より小さい場合は、パワースペクトルの一部にみられるピーク数が求められる。
【0007】
典型的な実施形態のこのような利点ならびに態様及び他の利点ならびに態様が、添付の図面を参照して以下に詳細に記載する実施形態から明らかとなり、更に容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】典型的な実施形態における、センサアレイを有する手術用ハンドツールを示す図である。
【
図1B】典型的な実施形態における、触診アルゴリズムを展開できるコンピュータ支援式触感システムを示す図である。
【
図2】典型的な実施形態における、触診アルゴリズムの状態機械遷移図である。
【
図3】典型的な実施形態における、状態S1(器具移動中)の処理ロジックを示す図である。
【
図4】典型的な実施形態における、状態S2(ピークを確認)の処理ロジックを示す図である。
【
図5】典型的な実施形態における、状態S3(周期的効果を作用)の処理ロジックを示す図である。
【
図6】典型的な実施形態における、状態S4(一時的効果を作用)の処理ロジックを示す図である。
【
図7】典型的な実施形態における、状態S5(強い効果を作用)の処理ロジックを示す図である。
【
図8】典型的な実施形態における、並列処理タイマループを示す図である。
【
図9】典型的な実施形態における、触診アルゴリズムのプリセット操作用グラフィカルユーザインターフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は、典型的な実施形態の可能な教示として記載される。当業者は、説明する実施形態に多くの変更を行っても、依然として有益な結果が得られることを認識するだろう。実施形態の特徴のいくつかを利用せず、実施形態の特徴の他のいくつかを選択しても、説明する実施形態の望ましい便益のいくつかが得られることは明らかであろう。従って、当業者は、記載する実施形態に対して多くの改変及び改作が可能であり、これらの改変及び改作は、ある特定の状況で実に望ましいことがあり、このような改変及び改作が本発明の一部であることを認識するだろう。このため、本発明の範囲は、本願の特許請求の範囲によって定義されることから、以下の記載は、実施形態の原理の例示として提供され、実施形態を限定するものではない。
【0010】
開示する実施形態は、コンピュータ補助式ハンドツール(CAHT)又はロボット手術装置の触診アルゴリズムを含む。触診アルゴリズムは、侵襲手術時に外科医が組織を触診し、手術用ハンドツールを直感的に使用できる方法に基づく。通常のハンドツールは、腹腔鏡グラスパー、鋏、血管内カテーテル、内視鏡及びシングルポートデバイスを含む。CAHTは、更なるセンサ、プロセスリソース、グラフィック表示、触感フィードバック及び聴覚フィードバックなどの電子機能性を高めた通常のハンドツールを含む。センサには、加速度計、接触センサ、圧力センサ及び近接センサを挙げることができるが、これに限定されない。CAHTによれば、外科医が機器端の下、ある程度の量の脂肪の下でさえパルス候補又は腫瘍を容易に確認でき、触知パルス又は触感パルスの方式でフィードバックを与える。他の実施形態では、聴覚フィードバック及びグラフィカルフィードバックも与えることができる。
【0011】
図1Aは、CAHT10の典型的な実施形態を示す。この実施形態では、CAHT10は、腹腔鏡グラスパーとして表し、患者の腹部の小さい切開部から挿入されるように構成される。CAHT10は、ハンドル12、軸部14及び端部部分16を含む。軸部14は、ハンドル12を端部部分16に接続し、ハンドル12の機械的作用を端部部分16に伝達する。軸部14は、端部部分16から受信した電気信号をハンドル12に伝達する。更に、
図1Aに表すように、端部部分16は、先端部18と、先端部18に形成されたセンサアレイ20とを含む。端部部分16は、あらゆる好適な機能性を有するあらゆる好適な種類の先端部も含んでよい。いくつかの実装では、軸部14は、長さが約20〜30cmであってよく、先端部18は、長さが約10〜15mmであってよい。
【0012】
ハンドル12を操作することによって、使用者は、端部部分16を患部の腹部に挿入することができる。端部部分16が挿入されると、使用者は、ハンドル12を更に操作して先端部18の位置及び方向を制御し、これにより、センサアレイ20を患部の一定の領域に接触させることができる。いくつかの実施形態では、センサアレイ20は、腫瘍又は他の堅い領域などの結節を検知できる剛性センサとして構成することができる。堅い領域に接触するセンサの数を処理することによって、感知される相対的剛性を用いて結節の大きさを求め、使用者に触感効果を与えて結節の大きさを伝達することができる。
【0013】
他の実施形態では、センサアレイ20は血管の位置を検知することができる。血管に接触したセンサは、血管の拍動を検知する。血管に接触しているセンサに対する血管の拍動の揚力作用のため、血管に接触していない隣接のセンサは、組織との接触を失う。更に他の実施形態では、センサアレイ20は、血管、消化管及び気道など、ただし、これに限定されない管腔構造に反射する超音波信号を生成する圧電センサを含むことができる。センサ20によってエコー信号を検知し、管腔構造の位置を求めることができる。超音波放出及びエコー測定法も、腫瘍組織を同定するのに有用でありうる。
【0014】
図1Bは、典型的な実施形態における触診アルゴリズムを展開できるコンピュータ支援式ハンドツール10のシステムブロック図である。コンピュータ支援式ハンドツール10は、機器の加速度を検知して測定する加速度計を含むことが可能な複数のセンサ20と、触診中の組織を機器の先端部が移動する時にパルスを検知する圧力センサアレイとを含む。プロセッサ30は、センサ20から信号を受信し、メモリデバイス40に保存されている命令に基づいて受信信号を処理する。メモリデバイス40に保存されている命令は、触診アルゴリズム44を含む。触診アルゴリズム44の命令実行時に判定されたCAHT10の「状態」に基づき、プロセッサ30は、本願明細書に記載する一時的触感効果、周期的触感効果及び強い触感効果を作用させるCAHTの作動装置60を有してもよい。「触感効果」という単語は、触知効果、触知フィードバック、触覚フィードバック、力フィードバック、振動触知フィードバック、触感手がかり、熱フィードバック、運動感覚フィードバックなどと呼ぶことができ、これらの用語は、他の物理特性(たとえば、剛性、粘性)の表現を含むことに留意する必要がある。
【0015】
作用された触感効果は、その強度、周波数及び持続時間のうちの1つ又は複数を特徴とする。触感効果は、検査対象の組織の剛性又は変形の変化レベルによって動的であってよい。
【0016】
典型的な実施形態では、プロセッサ20は、CAHTに電気接続されるラップトップコンピュータ又はパーソナルコンピュータであってよい。ラップトップコンピュータ又はパーソナルコンピュータは、使用者に触診アルゴリズムの任意の処理ステップを選択できるようにするグラフィカルユーザインターフェース(GUI)50を有してもよい。GUI50は、
図9に示すものと同じようなものであってよい。メモリデバイス40は、触診アルゴリズムの命令を保存できるあらゆる種類のストレージデバイス又はあらゆる種類のコンピュータ可読媒体であってよい。メモリ40は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリなどを含んでよい。
【0017】
他の実施形態では、プロセッサ30は、CAHTの構成要素である特定用途向け集積回路(ASIC)であってよい。このような実施形態では、プロセッサ30に触診アルゴリズム44の命令を組み込むことができる。
【0018】
典型的な実施形態では、センサアレイは、2×7アレイ構造の圧力トランスデューサを含むことができる。各圧力トランスデューサは、触診中の組織に接触できることから、受信したパルスに対して処理される。各トランスデューサは、時間ウィンドウでゼロ以上のパルスを検知することができる。作動装置60は、CAHT10のハンドル12で振動を発生することができる。更に具体的には、作動装置60は、検査対象の組織の剛性又は変形のレベルに基づいて、CAHTの使用者に振動触知力を加える加圧機構を含むことができる。典型的な実施形態に使用可能な作動装置の1つのパラメータは、触感効果の作用時に印加されるピーク電圧である。
【0019】
図2は、典型的な実施形態における触診アルゴリズムの状態機械遷移図を示す。状態機械のさまざまな状態は、(a)状態S1−機器移動中、(b)状態S2−ピークを確認、(c)状態S3−周期的効果を作用、(d)状態S4−一時的効果を作用、(e)状態S5−強い効果を作用、である。状態遷移と、さまざまな状態への遷移条件を、表1に示す。
【0021】
典型的な実施形態に記載する一時的効果、周期的効果及び強い触感効果は、次の通りに実装することができる。
【0022】
(数1)
作用される接触効果=M×sin(2×π×(1/0.04)×t)ただし、0≦t≦0.02秒
【0023】
式中、Mは、作動装置によって供給されるピーク電圧値である。一時的触感効果に関して、典型的な実施形態ではMの値は3〜5をとりうる。一時的触感効果は、t0、t0+0.9秒、t0+0.9+1.1秒などの非周期時間間隔内に作用されうる。周期的触感効果では、Mの値は一時的触感効果の場合と同じ値をとりうるが、t0、t0+T、t0+2T、t0+3T(式中、Tは周期)などの周期で作用されうる。強い周期的触感効果では、Mの値は一時的触感効果や周期的触感効果の場合より大きく(たとえば6〜9)なりうる。強い触感効果は周期的に作用されることになる。
【0024】
図3は、S1 110状態(器具移動時)の処理ロジックを示す。センサ10の加速度計によって測定されるCAHT10の加速度に基づき、状態をS1からS2 120(ピークの確認)に遷移させるか、S1に留める。判定ブロック300では、移動中のCAHT10の加速度を閾値と比較する。たとえば、一次元加速度信号の閾値は、0.1g(ピークトゥーピーク)となりうる。式中、「g」は、重力の標準測定値である。ベクトル加速度信号に関しては、この閾値は、時間t0のベクトルと時間t1のベクトルの角度変化、たとえば、0.1ラジアン/秒となりうる。加速度が閾値より小さい場合は、状態をS2 120に遷移してピークを確認する。CAHT10の加速度が閾値以上の場合、CAHT10は、状態S1 110に留まる。
【0025】
図4は、状態S2 120(ピークを確認)の処理ロジックを示す。論理ブロック400に示すように、センサアレイ20のセンサに対して処理を開始する。センサアレイ20の各センサを処理する。最初に主な処理ロジックを説明し、次に論理ブロック400の任意のパスを説明する。論理ブロック420に示すように、サンプルウィンドウ表示時に検知されるセンサ信号に関して高速フーリエ変換(FFT)を計算する。典型的な実施形態では、サンプルウィンドウの表示を3秒にしてもよい。ウィンドウ表示時間は、数パルスを受信してその周波数を求めるために十分な長さである必要がある。次に、得られた結果を0.5〜3Hzでフィルタリングしてもよい。次に、論理ブロック440に示すように、パワースペクトルのピーク信号を特定する。
【0026】
判定ブロック450では、ピークが、相関する振幅閾値や他のパラメータ値を超えているかどうかを判定する。閾値を超えるピークが存在する場合、論理ブロック460では、これをピークリストに追加する。次に、判定ブロック470で処理を継続する。判定ブロック450でピークが閾値を超えていない場合は、判定ブロック470で処理されずに残っているセンサがあるかどうかを判定する。処理されずに残っているセンサがある場合は、次のセンサを処理するために論理ブロック400に処理を戻す。処理されずに残っているセンサがない場合は、判定ブロック480で処理を継続し、ピークリストの閾値より大きいピークの数を求める。閾値を超えたピークの数が1を超えている場合は、状態をS2 120からS3 130(周期的効果を作用)に遷移させる。閾値を超えたピークの数が1以下の場合は、論理ブロック490に示すようにすべての効果の作用を停止する。状態をS3からS1(機器移動中)に戻す。
【0027】
図4に示す状態S2に対しては、任意のパスがある。センサアレイの電流センサに対しては、CAHT信号処理用の任意のパスによって、判定ブロック410に示すように、センサへの電流サンプルに局所的なピークが存在するかどうかを判定する。
図9に示すように、使用者によって、グラフィカルユーザインターフェースを介し、この任意のパスを選択(「リアルタイムピーク検出」を選択)することができる。局所的なピークがある場合、状態をS2 120からS4 140(一時的触感効果を作用)に遷移させる。局所的なピークが存在しない場合、論理ブロック420で処理を継続する。
【0028】
図5は、状態S3 130(周期的効果の作用)の処理ロジックを示す。論理ブロック500では、最大出力のピークリスト内でピークを検索することによって、この状態に対して処理を開始する。論理ブロック510では、最大出力信号の周波数を求める。次に、論理ブロック530に示すように、最大出力信号の周波数での触感効果を作用する。論理ブロック540に表すように1秒遅延させた後、状態をS3 130からS2 120に遷移させ、同時に得られた生データのチェックを継続する。
【0029】
また、
図5に示す状態S3に対しては、任意のパスがある。論理ブロック510で最大出力信号の周波数を求めた後、論理ブロック520に示すように、任意のステップにより、前回の状態がS3(周期的効果を作用)であったかどうかを判定する。前回の状態がS3であった場合、状態をS3 130からS5 150(強い効果を作用)に遷移させる。
【0030】
図6は、状態S4(一時的効果の作用)の処理ロジックを示す。この図は、論理ブロック600に示すように一時的触感効果を作用した後に、状態をS4 140からS2 120(ピークを確認)に遷移させることを単純に表す。
【0031】
図7は、状態S5 150(強い効果を作用)の処理ロジックを示す。この図は、論理ブロック700に示すように強い触感効果を作用した後に、状態をS5 150からS3 130(周期的効果の作用)に遷移させることを単純に表す。
【0032】
状態遷移処理ロジックに関する前述の説明では、「ピーク」という用語を使用して典型的な実施形態を説明した。更に一般には、「特徴」という用語を使用して、複数の実施形態を包含することができる。たとえば、組織では、CAHTの使用者は、パルスのみではなく、組織の堅さも観察している可能性がある。従って、パルス及び堅さは、CAHT10によって感知される特徴として考慮される。
【0033】
図8は、典型的な実施形態における並列処理タイマループを示す。図に示すように、3つのタイマループがある。第1のタイマループは、一実施形態において33Hzで作動しうるセンサループである。センサループでは、状態1にある場合、器具の移動を検知し(状態1)、局所的なピークを検知し(任意のステップが有効の場合)、最大ピークを求めてもよい。状態2では、センサデータを得て、FFTピークを検知し、特定してもよい。第2のタイマループは、一実施形態における100Hzで作動しうるマイクロプロセッサ制御ループである。マイクロプロセッサ制御ループでは、局所的なピーク検出時に最大ピークが検知される場合に、触感効果を開始する。FFTピーク検出時にピークが特定される(状態2)場合は、周期的触感効果をスケジューリングする。第3のタイマループは、一実施形態における10Hzで作動しうるマイクロプロセッサハードウェアループである。このタイマループは、作動装置の操作を制御する。マイクロプロセッサ制御ループで触感効果が開始される場合は、マイクロプロセッサハードウェアループでモデルパラメータを選択し、作動装置によって触感コマンドを実行する。マイクロプロセッサ制御ループで周期的効果がスケジューリングされる場合は、ハードウェアループで作動装置によって、特定の周期で周期的効果を設定し、作用する。3つのタイマループの作動周波数を一例として挙げるが、開示する実施形態を限定しない。
【0034】
図9は、典型的な実施形態における触診アルゴリズムの設定操作用グラフィカルユーザインターフェースである。「リアルタイムピーク検出」ボタンは、リアルタイムでの局所的なピークの検知を可能にする。「FFT状態を無効」ボタンは、
図4に示すピーク検出に対する複雑なパスを無効にする。強い触感効果の作用をソフトウェアにのみ実装することができ、あるいは、効果を有効にしたり、無効にしたりできるように、別個のグラフィカルユーザインターフェースや修正したグラフィカルユーザインターフェースに表示することができる。
【0035】
システム及び方法の実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア又はハードウェアとソフトウェアを組み合わせて実装されるコンピュータプロセスとして説明されている。しかし、当業者であれば、開示する実施形態の触診アルゴリズムは、配布を実施するのに利用される物理信号保持媒体の特定の種類によらず、コンピュータ可読媒体として、さまざまな形態で配布できることを理解するであろうことに留意することが重要である。物理信号保持媒体の実施例には、フラッシュドライブ、ポータブルハードドライブ、ディスケット、CDROMなどの記録可能型媒体が挙げられるが、これに限定されない。
【0036】
本願の特許請求の範囲に記載するすべての手段及び機能要素に対応する構造、材料、動作、均等物は、明確に請求する他の要素と組み合わせて機能を実施するための構造、材料又は動作を含むことが意図される。
【0037】
当業者は、本発明の範囲から逸脱せずに、典型的な実施形態に対して多くの改変が可能であることを理解するだろう。更に、対応する他の特徴を使用せずに、記載する実施形態の特徴のいくつかを使用することが可能である。従って、本発明の範囲は、本願の特許請求の範囲によってのみ定義されることから、典型的な実施形態に関する前述の説明は、本発明の原理を限定するのではなく、説明目的のために記載する。
【符号の説明】
【0038】
10コンピュータ支援式ハンドツール
12ハンドル
14軸部
16端部部分
18先端部
20センサアレイ