【実施例】
【0032】
以下の実施例は、本発明の複数の実施形態を例示する目的で開示しているものであり、本明細書に示される実施形態及び/又は特許請求の範囲を限定するものではない。特に別段の指定がなければ、パーセントで指定された化合物又は材料は、その化合物又は材料の重量パーセント(wt%)を指す。本明細書では、「選択性」又は「モル選択性」は、供給口で消費された全炭素に対する特定の製品における炭素のパーセントと定義する。
【0033】
実施例1(クロム(VI)プロモータ)
10mLの脱イオン水(以下「DI−H
2O」と称する。)に溶解した10gのCrO
3を用いて、第1の溶液(溶液1)を調製した。次いで、溶液1を500gの硝酸ジルコニウム溶液(20%ZrO
2)と混合した。400mLのDI−H
2Oと250mLのアンモニア水酸化物溶液(30%)を用いて、第2の溶液(溶液2)を調製した。溶液2に溶液1を撹拌しつつ滴下することで移した。混合溶液(溶液1及び溶液2)のpHは、約12から約8.5に低下した。
【0034】
pH値が低下した結果、沈殿が生じた。沈殿物は母液に放置して、約1時間熟成した。後述する実施例2及び3と同様に、沈殿物は、比較的同じ方法で処理される。生成した沈殿物は、洗浄せずに濾過した。濾過ケーキは手で小さく分割し、約4日間周囲温度で乾燥するために放置することで、LOIが約65wt%〜68wt%の範囲に達した。次いで、乾燥された濾過ケーキを挽いて1/8”ダイを用いて押し出して、1/8”押出品材料を得た。押出品を約120℃で約3時間追加乾燥した。その後、押出品を1deg/mで600℃まで昇温して約3時間焼成した。
【0035】
得られた押出品は、約63m
2/gの表面積、約0.22cc/gの細孔容積、及び約134N/cm(3.02lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより解釈され示されるように、通常、ZrO
2の正方相と単斜相の混合物を含んでいた。
【0036】
実施例2(クロム(VI)プロモータ−NH
4OH(塩基性水溶液))
300mLの濃NH
4OH(28〜30%)を、500mLのDI−H
2Oで希釈して、2000mLのタンク反応器に投入した。次いで、反応器を35℃まで予熱した。500gの硝酸ジルコニウム溶液(20wt%ZrO
2)の溶液を35℃に予熱して、勢いよく撹拌しながら、1時間かけて反応器タンクにポンプ注入した。溶液のpHは、約12.5から約8.5まで値が減少した。ゆっくり撹拌しながら1時間熟成した後、沈殿物を濾過した。次いで、得られた濾過ケーキを10gのCrO
3と、約1時間の機械的撹拌により混合した。得られた混合物は、LOIが約65wt%〜70wt%の範囲に達するまで、真空下35℃〜40℃で乾燥した。次いで、乾燥粉を押し出し、5℃/minで110℃まで昇温、12時間保持(滞留)、5℃/minで600℃まで昇温、6時間保持の温度プログラム下で焼成した。得られた押出品の典型的な特性は、137N/cm(3.08lb/mm)の破砕強度、0.21cc/gの細孔容積、及び46m
2/gの表面積であった。XRD分析では、ZrO
2の正方相(d=2.97Å)及び単斜相(d=3.13Å)の混合物であることが示された。
【0037】
実施例3(クロム(VI)プロモータ−NaOH(塩基性水溶液))
この調製には、NH
4OHの代わりにNaOHを用いた。500mLの25wt%のNaOH溶液の全量を35℃まで予熱した。200mLのNaOH溶液と1200mLのDI−H
2Oを、2000mLのタンク反応器に投入した。500gの硝酸ジルコニル溶液(20wt%ZrO
2)の溶液を35℃まで予熱して、勢いよく撹拌しながら、1時間かけてタンク反応器にポンプ注入した。pHが8.5を下回るまで低下したとき、25%NaOH溶液を必要に応じて加えた。ゆっくり撹拌しながら1時間熟成した後、沈殿物を濾過した。濾過ケーキはDI−H
2Oと1:1の容量比で再スラリー化し、濾過前に15分間撹拌した。濾過水の導電率が200μSを下回るまで、同様の手順が繰り返した。それには、通常約4〜8回の濾過ケーキの洗浄が必要であった。次いで、洗浄された濾過ケーキを10gのCrO
3と混合し、64wt%〜70wt%のLOIが達成されるまで70℃で乾燥した。実施例2にて説明したのと同様の手順で、濾過ケーキの押出及び焼成を行った。得られた押出品の典型的な特性は、94N/cm(2.12lb/mm)の破砕強度、0.23cc/gの細孔容積、及び94m
2/gの表面積であった。XRD分析では、ZrO
2の正方相(d=2.97Å)及び単斜相(d=3.13Å)の混合物であることが示された。
【0038】
実施例4(硝酸クロム(III)プロモータ)
55gの硝酸クロム(III)溶液(9.6wt%のCr)を、500gの硝酸ジルコニル溶液(20wt%のZrO
2)と混合した。実施例2と同様の沈殿及び洗浄手順を適用した。洗浄後、実施例3にて説明したのと同様の、乾燥、押出、及び焼成手順を適用した。得られた押出品の典型的な特性は、111N/cm(2.49lb/mm)の破砕強度、0.33cc/gの細孔容積、及び136m
2/gの表面積であった。XRD分析では、ZrO
2の正方相(d=2.97Å)及び単斜相(d=3.13Å)の混合物であることが示された。
【0039】
実施例5(リンプロモータ)
125gの硝酸ジルコニル溶液(ZrO
2として約20%のZrを有する)にDI−H
2Oを追加して、総質量が400gになるまで希釈した。その後、希釈された硝酸ジルコニル溶液を撹拌しながら12gの85%H
3PO
4を滴下して加え、Zr/Pの初期モル比を2:1に等しくした。ゲルの生成が観察された。混合溶液は、周囲温度でさらに30分間連続的に撹拌した。その後、6.5〜7.5の範囲の値となるpHで全てのゲルが生成するまで、NH
3H
2Oを滴下して加えた。
【0040】
さらなる量(約100mL)のDI−H
2Oを、周囲温度で約12時間かけて連続的に撹拌しながら加え、ゲルの生成を分散させた。生成された沈殿物は、洗浄せずに濾過した。濾過ケーキは手で小さく分割し、約4日間周囲温度で空気中にて乾燥するために放置した。次いで、乾燥された濾過ケーキを挽いて押出した。押出品を約120℃で約3時間追加乾燥した。その後、押出品を1deg/mで600℃まで昇温して約3時間焼成した。
【0041】
得られた押出品は、約19m
2/gの表面積、約0.19cc/gの細孔容積、及び約85N/cm(1.9lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより解釈され示されるように、通常、ZrO
2の非晶相を含んでいた。
【0042】
実施例6(リンプロモータ)
250gの硝酸ジルコニル溶液を用いて、約4:1のZr/Pの初期モル比を得たことを除いて、上記の実施例5において提供されている手順を活用した。得られた押出品は、約20.9m
2/gの表面積、約0.19cc/gの細孔容積、及び約76N/cm(1.7lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより示されるように、通常、ZrO
2の非晶相を含んでいた。
【0043】
実施例7(タングステンプロモータ)
25gのH
2WO
4(タングステン酸)を、200mLの30%アンモニア水酸化物と200mLのDI−H
2Oの混合溶液に溶解させることで、第1の溶液(溶液1)を調製した。250gの硝酸ジルコニル溶液(20%ZrO
2)を調製した(溶液2)。溶液1と溶液2の両方とも約30℃に予熱した。そして、溶液2を溶液1に滴下して加え、ジルコニル塩の沈殿を促進させた。沈殿物は、約30℃で約1時間、母液中で熟成させた。その後、上記の実施例5において述べられた処理手順と同じ方法で、沈殿物を処理した。
【0044】
得られた押出品は、約40.6m
2/gの表面積、約0.168cc/gの細孔容積、及び約125N/cm(2.81lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより示されるように、通常、ZrO
2の非晶相を含んでいた。
【0045】
実施例8(モリブデンプロモータ)
実施例4において提供されている調製及び手順と実質的に同じ方法で、ジルコニウム/モリブデン(Zr/Mo)の押出材料を調製することができる。Mo源を与える出発材料は、(NH
4)
2MoO
2xH
2Oとすることができる。
【0046】
実施例9(ポリ酸/プロモータ材料選択の効果)
上述した実施例に加えて、上で提供されている実施例と同じように更なる実験を行った。そこでは、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウム塩基の当初モル比(目標)が約4:1である1以上の支持体を調製した。表1は、このような実験及び実施例からのデータを提供している。調製された押出品は、それぞれ、ジルコニウム/リン支持体、ジルコニウム/タングステン支持体、及びジルコニウム/クロム支持体を含む。ジルコニウム/クロム支持体及びジルコニウム/タングステン支持体のデータは、比較的高い破砕強度と表面積値により有用な支持体が得られていることを示している。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例10(クロム(VI)プロモータ−8:1初期モル比)
以下の調製及び手順は、Zr/Cr押出品材料の代表的かつ限定的な1つのモデルとして提供される。ここでは、最初のモル比は約8:1である。6.4LのDI−H
2Oと4Lの水酸化アンモニウム(28〜30%NH
3)を、加熱ジャケット及び連続混合器を備えた20Lの沈殿タンク中で混合した。結果として生じる溶液を35℃まで加熱した。160gの酸化クロム(VI)(CrO
3)を80mLのDI−H
2Oに溶解させた。次いで、クロム溶液を8000gの硝酸ジルコニル溶液(20%ZrO
2)と混合した。次いで、クロム/ジルコニル溶液を35℃まで加熱して、毎分50mL〜60mLの速度でタンクにポンプ注入した。ジルコニル塩が沈殿する間、水酸化アンモニウムを加えることでpHの最小値を8.5に制御した。ポンプ注入が終了した後、沈殿物を約1時間母液中で熟成させた。
【0049】
その後沈殿物を濾過し、次いで小さく分割して、周囲温度で乾燥するために放置した。材料は、LOIが60%〜68%の範囲になるまで乾燥しておいた。その後、沈殿物を混合し、実験用スクリュー押出機を用いて、(1/8”押出品が得られる1/8”ダイを通して)押し出した。その後、押出品は、110℃で終夜(12時間)乾燥し、次いで、周囲温度から1分あたり5℃で110℃まで昇温、2時間滞留、1分あたり5℃で600℃まで昇温、3時間滞留の温度プログラム下で焼成した。
【0050】
実施例11(モル比の変更)
上記実施例8において提供されている調製及び手順と同じ方法で、当初モル比(目標)の変更を実現することができる。表2は、実施例9で得られたデータとともに、当初モル比がそれぞれ4:1、12:1、及び16:1と異なる他の実施例もデータを示している。
【0051】
【表2】
【0052】
実施例12(比較例−ポリ酸/プロモータ材料なし)
硝酸ジルコニル(20%ZrO
2)の溶液100gを調製し、希NH
3H
2O(15%)溶液200mLに滴下して加えた。これらの溶液を混合することで、pHが約12の値から約10に変化した。このpH値の変化によりジルコニウムの沈殿が促進された。沈殿物は、周囲温度で約12時間、母液中で熟成した。最終的なpH値は、約8.4であった。上記の実施例5において述べられた処理手順と同じ方法で、沈殿物を処理した。得られた押出品は、約22N/cm(0.5lb/mm)の破砕強度を有していた。
【0053】
上記で提供された実施例に基づいて、このような支持体/担体は、グリセロール又は糖アルコールをポリオール又はより少ない炭素若しくは酸素原子を持つアルコール(限定されないが、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、グリセリン、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタンジオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。)へ変換するために、1以上の触媒活性金属とともに用いることができることを想定する。グリセロール又は糖アルコールの変換に用いる典型的な触媒活性原子としては、限定されないが、グループ4(グループIVA)、グループ10(グループVIII)、及びグループ11(グループIB)の金属(例えば、銅、ニッケル、スズ、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウム、コバルト、鉄、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0054】
実施例13(グリセリンをプロピレングリコールへ−Cr活性支持体/Cu触媒)
上記の方法と同一の方法で調製されたZr/Cr支持体又は担体は、特に、グリセリンのプロピレングリコールへの選択的な変換に有用であることを見出した。一実施形態では、Zr/Crの支持体/担体を浸漬又は含浸して、約5%〜30%の範囲の銅(Cu)の導入を実現する。Cu−Zr/Cr触媒は、グリセリンの炭素−酸素結合を開裂させて、グリセリンのプロピレングリコールへの変換を可能にする。下記の表3にまとめられているように、1つのサンプルでは、約15%の銅を導入することで、72%の変換率及び85モル%のプロピレングリコール(PG)選択性を達成する。もう1つのサンプルでは、約10%の銅を導入することで、約42%のグリセリンの変換率及び約82モル%のプロピレングリコール選択性を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
実施例14(ソルビトールをプロレングリコールへ−Cr活性支持体/Ni−Sn触媒)
上記の方法と同一の方法で調製されたZr/Cr支持体又は担体は、特に、ソルビトールの、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びグリセリンへの選択的な変換に有用であることを見出した。一実施形態では、Zr/Cr支持体又は担体を共浸漬又は共含浸して、10%〜30%の範囲のニッケル(Ni)と、100万分の300〜5000部(ppm)の範囲のスズ(Sn)プロモータの導入を実現する。Zr/Cr支持体上のニッケル触媒/スズプロモータは、ソルビトールの炭素−炭素及び炭素−酸素結合の両方を開裂させて、ソルビトールの、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びグリセリン、さらにはメタノール、エタノール、プロパノール、及びブタンジオールのような他の微量化合物への変換を可能にする。下記の表4にまとめられているように、1つのサンプルでは、10%のニッケル及び300ppmのスズを目標導入値としている。試験は、固定床反応器にて実施した。導入後は、触媒を、GSHV1000/hr、100%H
2、500℃、及び周囲圧力の条件下で8時間還元した。還元後、ソルビトール/NaOHのモル比10:1からなる25wt%のソルビトール供給物を、120bar、210℃、LSHV=1/hr、及びH
2/ソルビトールモル比が10:1の条件下、反応器を通してポンプ注入した。この導入の組合せにより、プロピレングリコール36.6モル%、エチレングリコール14.7モル%、及びグリセリン20.9モル%の選択性を有する70.6%の変換率を実現する。もう1つのサンプルでは、10%のニッケル及び700ppmのスズを目標導入値により、75.8%の変換率、並びにプロピレングリコール27.5モル%、エチレングリコール12.4モル%、及びグリセリン20.7モル%の選択性を実現する。
【0057】
【表4】
【0058】
実施例15(ソルビトールをプロレングリコールへ−Cr活性支持体/Ni−Cu触媒)
Zr及びCr(VI)(上記の実施例10を参照)の共沈殿により調製された押出品を、含浸法によって10%のNi及び1%のCuに導入した。焼成後、触媒を管状反応器に投入して、ガス空間速度(Gaseous Space Hourly Velocity)(GSHV)1000/hr、100%H
2、180℃、及び周囲圧力の条件下で15時間還元した。還元後、ソルビトール/NaOHのモル比10:1からなる25wt%のソルビトール供給物を、120bar、210℃、液空間速度(Liquid Space Hourly Velocity)(LSHV)=2/hrの条件下、反応器を通してポンプ注入した。試験は、これらの条件の下、350時間実施した。平均71%のソルビトール変換率が達成された。3つの主要な製品(エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン)の選択性は、それぞれ、13モル%、27.8モル%、及び37.8モル%であった。
【0059】
実施形態及び特許請求の範囲は、ここで説明された構成要素の構造及び変形の詳細への適用において制限するものではないことを理解すべきである。それどころか、ここでの説明は、想定される実施形態の実施例を提供しているものの、特許請求の範囲は、本明細書に開示及び/又は指摘されている特定の実施形態や好ましい実施形態に限定されることはない。本明細書において開示される実施形態及び特許請求の範囲は、さらに、他の実施形態とすることができ、上記の特徴の様々な結合又は副結合を含む様々な方法で実践され、実行されるが、特定の結合又は副結合の状態で明確には開示されていないかもしれない。したがって、当業者は、実施形態及び特許請求の範囲が基礎となる概念が、他の組成、構造、方法、及びシステムを設計する基礎として容易に利用できると認めるであろう。加えて、本明細書において使用される語法及び用語は説明のためであって、特許請求の範囲を限定することと考えてはならないことを理解すべきである。