特許第5722805号(P5722805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722805
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】流体試料送り出しシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20150507BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20150507BHJP
   B01J 4/02 20060101ALI20150507BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20150507BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20150507BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20150507BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20150507BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20150507BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20150507BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20150507BHJP
   G01N 30/16 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G01N1/10 B
   G01N35/02 A
   B01J4/02 B
   B01D29/04 510A
   B01D29/04 510D
   B01D29/04 530A
   B01D61/14 500
   B01D71/32
   B01D69/10
   B01D39/16 C
   G01N35/10 D
   G01N35/04 A
   G01N35/10 C
   G01N1/10 N
   G01N30/16 L
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-553095(P2011-553095)
(86)(22)【出願日】2010年3月3日
(65)【公表番号】特表2012-519855(P2012-519855A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】US2010026123
(87)【国際公開番号】WO2010102061
(87)【国際公開日】20100910
【審査請求日】2013年3月1日
(31)【優先権主張番号】12/399,786
(32)【優先日】2009年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】モディック ウォルター ディー
(72)【発明者】
【氏名】マックアダムズ マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マクナリー ローレンス ティー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン トラン ケー
(72)【発明者】
【氏名】ポール クリストファー エー
(72)【発明者】
【氏名】ホーフラー フランク
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 仏国特許発明第02063695(FR,B1)
【文献】 特開2004−333259(JP,A)
【文献】 特開昭63−269037(JP,A)
【文献】 特開昭61−195355(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00955078(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0226792(US,A1)
【文献】 特表2006−515562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00 −1/44
B01D 29/01
B01D 39/16
B01D 61/14
B01D 69/10
B01D 71/32
B01J 4/02
G01N 30/16
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料送り出し装置であって、
流体試料を試料収容バイアルから抜き出す流体試料送り出し装置を有し、前記流体試料送り出し装置は、プランジャニードルを有し、このプランジャニードルは、前記プランジャニードルが前記試料収容バイアルの底部に向かって移動するときに、前記試料収容バイアル内の試料としての流体を加圧することによって試料としての流体を前記試料収容バイアルから押し退けて前記流体試料送り出し装置内に送り込むよう構成され、
回転ハブに取り付けられた片持ちカルーセルであって、試料収容バイアルのアレイを前記回転ハブの半径方向外側の片持ちカルーセルの周囲に沿って回転可能に支持すると共に前記試料収容バイアルのうちの少なくとも1つを前記流体試料送り出し装置の下の試料採取ステーションに位置決めする片持ちカルーセルを有し、
前記プランジャニードルがそれぞれの試料収容バイアル中に挿入されると、前記片持ちカルーセルの周囲の一部分を前記流体試料送り出し装置のすぐ隣りで支持すると共に、前記片持ちカルーセルの残部を支持しないように前記試料採取ステーションの下に配置される支持体を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記支持体は、前記カルーセルの下に位置決めされる、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記支持体は、前記カルーセルの下に位置決めされた耐力ころ軸受である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記プランジャニードルは、カルーセル表面と実質的に直交する方向に負荷を前記カルーセルに及ぼし、前記支持体は、実質的にこれとは逆の方向で前記カルーセルの下に位置決めされている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
更に、前記プランジャニードルをそれぞれの前記試料収容バイアル内に押し込むモータと、
押し込み中の前記モータに加わる負荷及び押し込み中における前記プランジャニードルの速度のうちの少なくとも一方又はこれら両方に関連した情報をモニタするモータモニタと、
前記モニタされた情報に基づいて試料送り出し流路中の障害物を検出する誤差検出器と、を有する、請求項1記載の装置。
【請求項6】
更に、それぞれの前記試料収容バイアル内への前記プランジャニードルの挿入度に基づいて試料の抜き出し量を測定する試料送り出し測定手段と、
それぞれの前記試料収容バイアルから抜き出された試料の量に関連した情報を格納する格納手段と、を有する、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記試料収容バイアルは、フィルタキャップを備え、このフィルタキャップは、その下端部に端ぐり部を備え、このフィルタキャップの下端部の端ぐり部内には、フィルタが取り付けられている請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記フィルタは、固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成された第1のフィルタ部材を有し、
前記フィルタは、第2のフィルタ部材を有し、前記第2のフィルタ部材の上流側端部は、前記第1のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されており、
前記フィルタは、第3のフィルタ部材を有し、前記第3のフィルタ部材の上流側端部は、前記第2のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されており、
前記第2のフィルタ部材は、前記第1のフィルタ部材の場合よりも小さな固形物を前記液体試料から濾過により除去するよう構成され、前記第3のフィルタ部材は、前記第2のフィルタ部材の場合よりも大きな固形物を前記液体試料から濾過により除去するよう構成されている、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記第1のフィルタ部材及び/又は前記第3のフィルタ部材は、流れ方向に見て前記第2のフィルタ部材よりも長い、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第1のフィルタ部材及び/又は前記第3のフィルタ部材は、粒径が約30ミクロン〜約200ミクロンの固形物を濾過により除去するよう構成されている、請求項8記載の装置。
【請求項11】
前記第2のフィルタ部材は、粒径が約0.1ミクロン〜約2ミクロンの固形物を濾過により除去するよう構成されている、請求項8記載の装置。
【請求項12】
1つ又は2つ以上の前記フィルタは、フルオロポリマー又はポロゲン(porogen)で作られている、請求項8記載の装置。
【請求項13】
少なくとも前記第1のフィルタ部材及び前記第2のフィルタ部材は、一体構造の状態に作られている、請求項8記載の装置。
【請求項14】
請求項7記載の装置を用いて液体試料を濾過する方法であって、
流体試料を試料収容バイアル内に用意するステップと、
流体試料を流体送り出し装置により試料収容バイアルから抜き出すステップと、
流体試料をフィルタに通して濾過するステップと、を有し、
上記流体送り出し装置は、所定の条件に応答して駆動力を調節するように構成されている、方法。
【請求項15】
請求項8記載の装置を用いて液体試料を濾過する方法であって、
流体試料を試料収容バイアル内に用意するステップと、
流体試料を流体送り出し装置により試料収容バイアルから抜き出すステップと、
液体試料をフィルタに流通させて液体試料が順次、第1のフィルタ部材、第2のフィルタ部材及び第3のフィルタ部材を通って流れるようにするステップと、
濾過済みの流体試料を収集するステップと、
を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、試料をクロマトグラフィーカラムに送り出す流体送り出しシステム及び流体送り出しシステムの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料をクロマトグラフィーカラムに送り出すために多種多様な技術が用いられている。かかる技術は、流体をフィルタに通してシリンジ内に吸い込む中空ニードルを採用している。試料は、しかる後、カラムに送り出される。
【0003】
液体試料を送り出す既存のシステムは、典型的には、微孔質材料又はメンブレンで構成された単一のフィルタを使用している。従来型フィルタの一例がクラッソン等(Classon
et al.)に付与された米国特許第5,567,309号明細書に記載されており、この特許文献は、フィルタキャップを備えたフィルタを示しており、薄いメンブレン(薄膜)がキャップの底部に設けられている開口部を覆っている。薄膜は、フィルタ入れ物内に収容された微孔質要素で作られており、そのポロシティは、0.1〜1ミクロンである。フィルタは、多種多様な薄膜層で作られた多層構成を有する場合がある。フィルタメンブレンは、フィルタを通る高い流量を許容するほど薄い。したがって、クラッソンのシステムは、濾過能力を犠牲にしている。さらに、クラッソンは、薄手のフィルタを利用しているので、このフィルタは、しばしば目詰まり状態になって閉塞状態になりがちであり、それにより、動作停止時間が長くなる。
【0004】
また、複数個の試料収容バイアルから液体試料に効率的に接近するシステムを提供する必要が存在する。従来技術では自動化がなされておらず、ユーザは、バイアルを識別し、システムを制御して識別されたバイアルに接近する必要がある。
【0005】
上述の内容に照らして、上記の欠点及び他の欠点を解決する方法及び装置を提供することが有益である。効率の高い濾過性能を備えたシステムを提供することが望ましい。フィルタのクリーニング及び交換のための動作停止時間を短くしたシステムを提供することが望ましい。
【0006】
流体試料に接近してこれに送り出す効率の高いシステムを提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,567,309号明細書
【発明の概要】
【0008】
概要を説明すると、本発明の種々の観点は、流体試料送り出し装置用の濾過装置であって、この濾過装置は、固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成された第1のフィルタ部材と、第2のフィルタ部材とを有し、第2のフィルタ部材の上流側端部は、第1のフィルタ部材の下流側端部に流体結合され、濾過装置は、第3のフィルタ部材を更に有し、第3のフィルタ部材の上流側端部は、第2のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されていることを特徴とする濾過装置にある。第2のフィルタ部材は、第1のフィルタ部材の場合よりも比較的小さな固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成され、第3のフィルタ部材は、第2のフィルタ部材の場合よりも比較的大きな固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成されている。
【0009】
種々の実施形態では、第1のフィルタ部材及び/又は第3のフィルタ部材は、流れ方向に見て第2のフィルタ部材よりも長い。第1のフィルタ部材及び/又は第3のフィルタ部材は、粒径が約30ミクロン〜約200ミクロンの固形物を濾過により除去するよう構成されているのが良い。第2のフィルタ部材は、粒径が約0.1ミクロン〜約2ミクロンの固形物を濾過により除去するよう構成されているのが良い。
【0010】
種々の実施形態では、1つ又は2つ以上のフィルタ部材は、フルオロポリマー又はポロゲン(porogen)で作られている。種々の実施形態では、少なくとも第1のフィルタ部材及び第2のフィルタ部材は、一体構造の状態に作られている。
本発明の種々の観点は、試料収容容器であって、液体試料を収容するサンプル収容バイアルと、試料収容バイアル内に摺動可能に設けられたプランジャとを有する試料収容容器にある。プランジャは、フィルタ又は濾過装置を有し、試料は、試料が抜き出されているときにフィルタを通って送り出される。
【0011】
本発明の種々の観点は、液体試料を濾過する方法であって、濾過装置を用意するステップと、液体試料を濾過装置の上流側端部中に導入するステップと、液体試料を濾過装置に流通させて液体試料が順次、第1のフィルタ部材、第2のフィルタ部材及び第3のフィルタ部材を通って流れるようにするステップとを有することを特徴とする方法にある。濾過装置への流通中、固形物が液体試料から濾過により除去される。
【0012】
本発明の種々の観点は、試料送り出し装置であって、試料送り出し装置は、流体試料を試料収容バイアルから抜き出す流体試料送り出し装置を有し、液体試料送り出し装置は、試料としての流体をバイアルから押し退けて流体試料送り出し装置内に送り込むよう構成されたプランジャニードルを有し、試料送り出し装置は、片持ちカルーセルであって、試料収容バイアルのアレイをカルーセルの周囲に沿って回転可能に支持すると共に試料収容バイアルのうちの少なくとも1つを流体試料送り出し装置の下に位置決めする片持ちカルーセルを更に有し、流体試料送り出し装置がそれぞれのバイアル中に挿入されると、カルーセルを流体試料送り出し装置のすぐ隣りで支持する支持体を有することを特徴とする装置にある。
【0013】
種々の実施形態では、支持体は、カルーセルの下に位置決めされる。支持体は、カルーセルの下に位置決めされた耐力ころ軸受であるのが良い。プランジャニードルは、カルーセル表面と実質的に直交する方向に負荷をカルーセルに及ぼすのが良く、支持体は、実質的にこれとは逆の方向でカルーセルの下に位置決めされるのが良い。
【0014】
本発明の種々の観点は、試料送り出し装置であって、試料送り出し装置は、複数個の試料収容バイアルと、複数個の試料収容バイアルのうちの1つの中に挿入可能であって、流体試料をそれぞれのバイアルから抜き出すプランジャを含む流体試料送り出し装置とを有し、流体試料の抜き出し量は、それぞれのバイアル内におけるプランジャの挿入深さに対応しており、試料送り出し装置は、それぞれのバイアル内へのプランジャの挿入度に基づいて試料の抜き出し量を測定する試料送り出し測定手段と、それぞれのバイアルから抜き出された試料の量に関連した情報を格納する格納手段とを更に有することを特徴とする装置にある。
【0015】
種々の実施形態では、本発明の方法は、流体試料送り出し装置を用意するステップと、複数個の試料収容バイアルの容積に関連した情報を格納するステップと、流体を複数個の試料収容バイアルのうちの1つから抜き出すステップと、試料を抜き出したそれぞれの収容バイアルに関する容積情報を更新するステップとを有することを特徴とする。
【0016】
種々の実施形態では、この方法は、試料の必要量を求めるステップと、試料の必要量及び格納された情報に基づいて複数個の試料収容バイアルから一試料収容バイアルを選択するステップとを更に有する。
【0017】
流体試料送り出し装置は、プランジャをそれぞれのバイアル内に押し込むモータと、押し込み中のモータに加わる負荷及び押し込み中におけるプランジャの速度のうちの少なくとも一方又はこれら両方に関連した情報をモニタするモータモニタと、モニタされた情報に基づいて試料送り出し流路中の障害物を検出する誤差検出器とを更に有するのが良い。
【0018】
本発明の種々の観点は、流体送り出し装置を用いて液体試料を連続的に濾過する方法であって、この方法は、流体試料を試料収容バイアル内に用意するステップと、流体試料を流体送り出し装置により試料収容バイアルから抜き出すステップと、流体試料を濾過装置に通して濾過するステップと、濾過済みの流体試料を収集するステップとを有することを特徴とする方法にある。流体送り出し装置は、オプションとして、試料収容バイアル内で往復動し、それにより流体試料を流体送り出し装置の流体通路内に送り込むよう構成されたプランジャニードルと、駆動力をプランジャニードルに及ぼすモータと、流体通路内に位置決めされた濾過装置とを有し、濾過装置は、固体廃棄物を流体試料から濾過により除去するよう構成されている。流体送り出し装置は、所定の条件に応答してモータ駆動力を調節するよう構成されているのが良い。
【0019】
種々の実施形態では、モータは、ステップモータであり、所定の条件は、モータの滑りに基づいている。種々の実施形態では、モータは、ステップモータであり、所定の条件は、ニードル速度に基づいている。
【0020】
種々の実施形態では、濾過装置は、固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成された第1のフィルタ部材と、第2のフィルタ部材とを有し、第2のフィルタ部材の上流側端部は、第1のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されており、濾過装置は、第3のフィルタ部材を有し、第3のフィルタ部材の上流側端部は、第2のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されている。第2のフィルタ部材は、第1のフィルタ部材の場合よりも比較的小さな固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成され、第3のフィルタ部材は、第2のフィルタ部材の場合よりも比較的大きな固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成されている。
【0021】
本発明の流体送り出しシステム及び方法は、本明細書に組み込まれてその一部をなす添付の図面及び以下に記載する発明を実施するための形態の項から明らかであり又はこれらに詳細に記載された他の特徴及び他の利点を有し、添付の図面と発明を実施するための形態の項は、一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の流体試料送り出しシステムの斜視図であり、頂部の蓋が取り外された状態のシステムの内部を示す図である。
図1B図1Aのシステムの試料送り出し組立体及び試料採取ステーションの拡大詳細図であり、カルーセル上のサンプル収容バイアルに係合したニードルを示す図である。
図1C図1Aのシステムの試料送り出し組立体及び試料採取ステーションの一部分の概略拡大図であり、本発明に従ってニードルの運動をモニタし、流体送り出しを制御するセンサ又は検出装置を示す図である。
図2図2Aは、図1Bの試料送り出しニードル及び試料収容バイアルの中央断面図であって試料収容バイアルの上方に位置したニードルを示す図、図2Bは、図1Bの試料送り出しニードル及び試料収容バイアルの中央断面図であって試料収容バイアル内に配置されていて、流体を抜き出しているニードルを示す図、図2Cは、図2Bのニードルの拡大詳細図であって本発明のフィルタに係合したニードルを示す図である。
図3図3Aは、図1及び図2の斜視図、図3Bは、図3Aのフィルタの長手方向の側面図、図3Cは、図3Aのフィルタの分解組立て図である。
図4A図4Aは、図1Aの流体試料送り出しシステムの中央断面図であって動作中、カルーセル支持体により支持されたカルーセルを示す図である。
図4B図4Bは、図4Aの流体送り出し組立体及びサンプル収容バイアルカルーセルの一部分の拡大詳細図である。
図5図1Aのシステムの動作を示す流れ図であり、試料への接近及び試料収容バイアルからの送り出し状態を示す図である。
図6図1Aの装置の動作を示す流れ図であり、流体試料送り出しプロセス中におけるモータ速度の調節の仕方を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の種々の実施形態を詳細に説明するが、これら実施形態の実施例が添付の図面に示されている。本発明の種々の実施形態と関連して説明するが、これら実施形態は、本発明をこれら実施形態に限定するものではないことは理解されよう。これとは異なり、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲に含まれ得る変形例、改造例及び均等例を含むものである。
【0024】
今、図面を参照し(図中、同一のコンポーネントは、種々の図全体を通じて同一の参照符号で示されている)、注目する図1及び図2は、全体が参照符号30で示された試料流体送り出しシステムを示している。種々の点において、システム30は、カリフォルニア州サニーベール所在のダイオネックス・コーポレイション(Dionex Corporation)により製造されると共に市販されているAS40 Autosamplerに類似している。
【0025】
システム30は、全体を参照符号32で示された流体送り出し組立体を有している。流体送り出し組立体は、ニードルアクチュエータ組立体35により作動されるニードル33及び流体通路を有している。アクチュエータ組立体は、モータ37、ロボットアーム39及びドアライブトレーン又は駆動組立体40を有している。このシステムは、流体がそれぞれのバイアル44から抜き出されてフィルタ又は濾過装置42を通ってニードル組立体内に流入し、流体は、このニードル組立体からクロマトグラフィーカラム又は他のコンポーネントに送り出されるよう構成されている。ニードル組立体は、従来型ニードル及びシリンジを含むのが良い。システム30を主として液体クロマトグラフィシステムに関して説明するが、このシステムは、他の用途向きに構成できることは理解されよう。
【0026】
このシステムは、液体試料46を収容するよう構成された複数個の試料収容バイアル44を有している。種々の実施形態では、各バイアル44は、試料カルーセル49に設けられたバイアルスロット47のバイアル受け口と嵌合するよう構成されている。カルーセルは、各バイアルを流体試料送り出し組立体の配設場所に対応した試料採取ステーション51に位置合わせする。流体送り出し組立体32は、バイアルをカルーセルに載せた状態でニードルの下に案内する軌道を備えたカルーセル案内装置53を有している。種々の実施形態では、案内装置は、ニードル33の作動中、バイアルを定位置にロックするよう構成されている。
【0027】
試料採取ステーション51は、オプションとして、試料を貫通するフィルタを有する。システムは、他のステーション、例えば流体試料送り出し組立体をすすぎ洗いすると共に/或いは空の試料収容バイアルをすすぎ洗いするすすぎ洗いステーション及び混合ステーションを更に有するのが良い。
【0028】
例示のシステムは、流体が試料収容バイアルから能動的に押し退けられることを意味する負圧押し退け(negative displacement )型の取り出しシステムである。しかしながら、本発明の種々の観点によるシステムは、ポンプ及び他の従来型手段を用いて流体を抜き出すよう構成できることは理解されよう。
【0029】
試料収容バイアル44及びニードル33は、種々の点において、マー(Mar)に付与された米国特許第4,644,807号明細書(以下、「第´807号特許明細書」という)のものとほぼ同じであり、この米国特許を全ての目的に関して参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。ニードルは、流体を抜き出しているとき、試料収容バイアルに密着するよう構成されている。「ニードル」及び「プランジャニードル」という用語は、本明細書において互いに区別なく用いられる。
【0030】
図2図4を参照すると、試料収容バイアル44の各々を密閉するために複数個のフィルタキャップ54が設けられている。キャップは、バイアルを密閉して試料を外部環境への暴露から保護する。キャップの種々の観点は、従来の負圧押し退け型試料取り出しシステム、例えば、第´807号特許明細書に開示された試料取り出しシステムの観点とほぼ同じである。キャップは、ニードルにより押し下げられるときにプランジャとして働くよう構成されている。キャップは、試料をフィルタからニードルに差し向けるためにキャップの頂部に結合するよう構成されたフルイディックチューブを有する。例示のキャップは、フィルタの上方に位置していて、ニードルと嵌合する小さな孔を有している。
【0031】
種々の実施形態では、ニードル33は、バイアルの側壁と流体密係合関係をなしてバイアル44内に摺動可能に設けられている。プランジャは、軸方向に延びる通路を有し、流体は、プランジャが押し下げられ又はバイアルの底部に向かって動かされると、この通路を通って送り出される。流体試料は、プランジャが押し下げられ又はバイアルの底部に向かって動かされているときにバイアル内で加圧される。プランジャがバイアル内の流体を押し退けると、流体試料は、ニードル内に押し込められる。バイアル44及びニードル33は、押し出し、成形又は別の適当なプロセスにより製作されるのが良い。
【0032】
バイアル及びプランジャは、複数個の試料がクロマトグラフィーカラムに送られるべき自動化システムに用いるのに特に適している。バイアルは、カルーセル49に設けられたバイアルスロット47内に設けられるのが良い。各バイアルスロットは、流体送り出し組立体32が配置される場所までカルーセルを回転させることにより試料採取ステーション51まで動かされる。
【0033】
試料がニードル33から抜き出されてバイアル44内に入れられると、液体試料は、フィルタを通って流れて望ましくない固体粒子が除去される。図示の実施形態では、フィルタは、微孔質ポリマーである。フィルタは、粒状物質を試料収容バイアル44から通路を通って送り出された試料から除去し、このフィルタは、ニードル33が休止状態にあるとき、上記に対して実質的に不浸透性である。
【0034】
種々の実施形態では、図2A図2Cを参照すると、フィルタ42は、フィルタキャップ54の下端部のところに設けられた端ぐり部内に設けられている。フィルタ42は、機械的締結具、締り嵌め、化学的結合等によりフィルタキャップ内に配置可能である。
【0035】
フィルタは、配置されると、入口56、出口58及び入口と出口との間の通路を有する。種々の実施形態では、フィルタは、いずれかの方向に配置可能であり、このことは、流体がいずれかの方向に流れることができるということを意味している。
【0036】
フィルタの孔径は、当該技術分野においては一般的に用いられているものとして理解されるべきである。フィルタの平均孔径は、保持されるべき標的固体粒子の粒径の約3倍〜約5倍のオーダーのものであるのが良い。例えば、0.45μm粒子を濾過により除去するのに0.45μmフィルタが設けられるのが良いが、実際の孔径は、これよりも大きいのが良く、それにより幾分かの0.45μm粒子は、フィルタを通って流れることができる。かくして、フィルタの濾過能力は、保持されるべき粒子の粒径及びかかる粒径を保持するフィルタの効率の観点で理解されるべきである。
【0037】
図3A図3Cに示されているように、フィルタ42は、多数の抽出濾過材を収容している。種々の実施形態では、抽出濾過材は、接着剤により互いに結合され又は熱により溶接される。種々の実施形態では、抽出濾過材は、互いに成形される。種々の実施形態では、抽出濾過材は、支持部材、例えばフィルタスクリーンによりハウジング構造体内で互いに圧縮される。
【0038】
例示のフィルタ42は、第1のフィルタ60、第2のフィルタ部材61及び第3のフィルタ部材63を有し、各フィルタ部材は、固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成されている。第2のフィルタ部材の上流側端部は、第1のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されている。同様に、第3のフィルタ部材の上流側端部は、第2のフィルタ部材の下流側端部に流体結合されている。
【0039】
第2のフィルタ部材61は、第1のフィルタ部材60の場合よりも比較的小径の固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成されている。第3のフィルタ部材63は、第2のフィルタ部材の場合よりも比較的大きな固形物を液体試料から濾過により除去するよう構成されている。寸法的に、第2のフィルタ部材は、流れ方向又は軸方向に見て第1及び第2のフィルタ部材よりも短い。第1のフィルタ部材の長さは、L1である。第2のフィルタ部材の長さは、L2である。第3のフィルタ部材の長さは、L3である。かくして、例示のフィルタでは、フィルタ部材は、「長‐短‐長」構成のものである。例示の実施形態では、L2は、0.1mm、L1は、3.18mm、L3は、3.18mmである。
【0040】
種々の実施形態では、第1及び第3のフィルタ部材は、実質的に同一のポロシティを有し、第2のフィルタ部材は、これよりも小さなポロシティを有する。種々の実施形態では、第1のフィルタ部材60及び/又は第3のフィルタ部材63は、粒径が約30ミクロン〜約200ミクロンの固形物を濾過により除去するよう構成されている。種々の実施形態では、第2のフィルタ部材61は、粒径が約0.1ミクロン〜約2ミクロンの固形物を濾過により除去するよう構成されている。種々の実施形態では、第1のフィルタ部材又はメンブレンのポロシティは、第2のフィルタ部材又はメンブレンのポロシティの約10倍である。種々の実施形態では、第1のフィルタ部材又はメンブレンは、第2のフィルタ部材又はメンブレンの場合よりも約10倍の大きさの固体粒子を除去するよう構成されている。
【0041】
例示のフィルタを上流側端部及び下流側端部に関して説明するが、例示のフィルタは、有向性でなくても良く、キャップ内にいずれの方向でも配置できることが理解されよう。「上流側」及び「下流側」という用語は、フィルタをシステム内に設けた後における流体の流れ方向を説明するために便宜的に用いられている。
【0042】
種々の実施形態では、第1のフィルタ部材60は、大きな粒子が第2のフィルタ部材に達する前にこれら大きな粒子を除去するために第2のフィルタ部材61のためのプレ(前置)フィルタとして構成されている。この構成では、目の細かい第2のフィルタは、抽出しなければならない大径粒子の数は少ない。これに対し、第1のフィルタ部材は、大径粒子を抽出するのに有効であり、第2のフィルタ部材は、小径粒子を濾過により除去するのに効率的である。このように、流体は、第1及び第2のフィルタ部材が一般に、これらの有効範囲で粒子を濾過により除去する必要があるのに過ぎないので、迅速にフィルタ42を通って流れる。
【0043】
例示のフィルタ42では、少なくとも第1のフィルタ部材60及び第2のフィルタ部材61は、熱溶接又は他の適当な方法により一体構造の状態に形成されている。種々の実施形態では、第1、第2及び第3のフィルタ部材は、一体構造の状態に形成されている。種々の実施形態では、第1、第2及び第3のフィルタ部材は、一体形成される。
【0044】
フィルタの適当な材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PCTE)、ポリエステル(PETE)、ナイロン及び他の化学的且つ/或いは生物学的に適合性のある材料が挙げられるが、これらには限定されない。種々の実施形態では、フィルタは、フルオロポリマーで作られる。種々の実施形態では、フィルタは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の不活性マトリックス内でシリカから形成される。種々の実施形態では、フィルタは、温度応答性ポリマー(TRP)で作られる。種々の実施形態では、フィルタは、濾過プロセスを向上させるようあらかじめ処理される。種々の実施形態では、フィルタは、アルコールであらかじめ処理される。第1、第2及び第3のフィルタ部材は、同種又は異種材料で形成できることは理解されよう。例示の実施形態では、第1のフィルタ部材60及び第3のフィルタ部材63は、ポリエチレンから成り、第2のフィルタ部材61は、ポリプロピレンから成る。フィルタ材料は、1つには用途、例えばサンプルサブジェクト(sample subject)で決まる場合がある。
【0045】
次に、図1A図1C並びに図4A及び図4Bを参照して、バイアル44を試料採取ステーション51に選択的に送り出すカルーセル49について説明する。作動及び使用にあたり、カルーセルは、その周囲に沿ってアレイ状に配置された試料収容バイアルを有し、カルーセルは、回転して選択された試料収容バイアルを試料採取ステーション51に送り出す。種々の実施形態では、カルーセルは円板の形をしており、その中心軸線を中心として回転可能にシステムに取り付けられている。複数個の試料収容バイアルは、カルーセルの周囲に沿って設けられたバイアルスロット内に位置決めされている。各バイアルスロットは、試料を収容バイアルを受け入れてこれを固定するよう構成されている。
【0046】
カルーセル49は、中心軸線に回転可能に取り付けられている。カルーセルは、軸受及びドライブトレーンを介して駆動モータ65に連結されている。駆動モータは、カルーセルの回転を制御する。
【0047】
カルーセルの周囲の一部分は、試料採取ステーション51を通って案内される。試料採取ステーションでは、アーム39は、ニードル33に係合し、これをステーション内のバイアルに向かって駆動する。
【0048】
作動及び使用にあたり、液体試料46は、バイアル44内に収容され、キャップ54は、バイアルを密閉するよう構成されている。キャップは、キャップとバイアルの側壁との間にシールをもたらすよう構成されたスカート67を有している。フィルタ42は、一般に、キャップ及び通路を通る試料の蒸発を阻止する。
【0049】
試料46は、ニードル33及びキャップ54の下向きストロークによりバイアル44から放出される。キャップは、ニードルの先端部68がキャップの受け口内に完全に嵌まり込む(図2Bに最も良く示されている)まで動き始めない。プランジャが動き始めると、試料の上方に位置するバイアル内に捕捉された空気が最初に放出される。試料の放出がいったん始まると、この放出は、試料の所要量が抜き出されるまで又はバイアルが空になるまで続く。
【0050】
例示のバイアル44及びキャップ54は、ニードルを引っ込めると、キャップがバイアル内の最も低い押し退け位置に位置したままであるよう構成されている。かくして、ニードルは、キャップをバイアル内に押し込むが、キャップなしでバイアルから引き出される。キャップは、試料がキャップの下で加圧された状態でバイアル内に位置したままである。一実施形態では、バイアルは、キャップ54とぴったりと嵌合するよう構成された底部を有している。ニードル試料採取先端部を引っ込めると、キャップは、締り嵌めによりバイアルの底部内に保持され、ニードルは、キャップから離れる。種々の実施形態では、バイアル及びキャップは、バイアル内の「デッドスペース」を減少させるよう構成されている。例示のバイアルの底部は、キャップが底部に接触したときに流体の実質的に全てがバイアルから押し退けられるようキャップに対応した形状を有している。
【0051】
上述したように、液体試料46は、ニードルが下向きの力でバイアル内の流体を押し退けると、ニードル通路内に押し込まれる。キャップは、ニードル先端部68によりバイアル内に押し下げられ、このニードル先端部は、キャップの上方部分と係合可能であり、軸方向伸長位置と軸方向引っ込み位置との間で動くことができる。ニードル先端部は、流体密シールを形成するよう受け口70と嵌合するプラグを有する。ニードル先端部は、システムの通路に通じている軸方向に延びる通路を有する。
【0052】
下向きの軸方向力をキャップ54及びバイアル44にプランジャ状作用により提供することにより試料46が抜き出されるので、カルーセル49は、試料採取ステーション51の領域で大きな軸方向荷重を受ける。上述したように、カルーセルの中心軸線は、カルーセルが片持ちされるようハブに回転可能に取り付けられている。
【0053】
カルーセルに加わる荷重としての力に対抗するため、例示のカルーセルは、ニードルがバイアル内に押し込められると、カルーセルを流体試料送り出し組立体32に隣接して支持する支持体72を有する。支持体は、オプションとして、カルーセルの下に位置決めされる。プランジャニードル33は、カルーセル表面と実質的に直交する方向に荷重をカルーセルに加え、支持体は、実質的に逆方向に向いた状態でカルーセルの下に位置決めされる。
【0054】
例示の実施形態では、支持体72は、耐力ころ軸受である。支持体は、上述のことから当業者には理解できるように別の転がり支持体であっても良い。カルーセルハブは、支持体が設けられていない場合、大きなモーメントを受け、この大きなモーメントにより、ハブアクスルが動かなくなる場合がある。支持体は又、片持ちハブの傾動を最小限に抑える。システムがニードル変位深さにより抜き出される試料の量を測定するので、支持体は、ニードルからの圧力に応答したカルーセル及びバイアルの運動によって引き起こされる誤差を最小限に抑える。
【0055】
図1A図1C及び図4Aを参照すると、システム30は、制御システム74を有し、この制御システムは、コンピュータプロセッサ75、I/Oボード(図示せず)及びコンピュータ記憶又は格納装置77を有する。コンピュータプロセスは、システムの作動を制御する。
【0056】
種々の実施形態では、制御システム74は、カルーセル49及び試料採取ステーション51に結合されている。カルーセル駆動モータは、制御システム74からの指令に応答して制御装置によって作動される。例示の実施形態では、制御システムは、ニードル組立体及びニードルモータに連結されたセンサ装置からのデータ信号を受け取る。
【0057】
種々の実施形態では、システム30は、各バイアルから抜き出される試料の量を制御する計量ステージを有する。液体試料の放出量がニードル33及びアーム39の下向き運動に正比例するので、試料の抜き出し量を各下向きストロークで正確に求めることができる。例示のシステムは、ニードルの変位に基づいて試料の抜き出し量を測定する測定装置を有する。測定装置は、制御システムに組み込まれ、ニードルを駆動するモータ37から信号を受け取る。
【0058】
格納装置77は、システム内に装填された試料収容バイアルの各々に関する情報を格納する。システムは、オプションとして、試料収容バイアル又はバイアルスロットに設けられたバーコードを読み取るよう位置決めされたバーコードリーダを有する。バーコード及びリーダは、確認手段として設けられるのが良い。バーコード及びリーダは又、バイアルの自動装填を可能にするよう使用可能である。例えば、バイアルのバーコードは、試料収容バイアル内の試料に関する情報をシステムに提供することができ、その結果、ユーザは、システムの装填時にかかる情報を入力する必要がないようになっている。
【0059】
次に、図5を参照すると、本発明に従って流体送り出しシステムを用いる方法について説明することができる。作動及び使用にあたり、複数個の試料収容バイアル44をシステム30内に装填する。各バイアルは、カルーセル49に設けられたそれぞれのバイアルスロット47内に装填される。選択されたバイアルをカルーセルの回転によって試料採取ステーション51に送り出す。
【0060】
上述したように、バイアルからの試料の抜き出し量をバイアル内におけるニードルの変位深さにより正確に求めることができる。したがって、試料の抜き出し量を測定する試料送り出し測定手段が設けられている。測定手段は、ニードルモータからの信号を受け取る制御システム74又はニードル変位を直接測定する他の適当な測定手段を含むのが良い。
【0061】
システム30の制御システム74及び格納装置77は、各バイアルからの試料抜き出し量に関する情報を格納する。システム30は、複数個のバイアル44の各々に関する記録を備えたデータベースを含み、かかる記録としては、例えば試料流体、試料の量、試料の抽出履歴及びタイムスタンプのような情報が挙げられる。かくして、各試料抜き出し事象に関し、システムは、接近が行なわれたバイアル及び試料の抜き出し量に注目する。各事象後、システムは、試料が抜き出された収容バイアルの各々について容量に関する情報を更新する。このように、システムは、任意所与の時間で入手できる試料の量及び種類を追跡する。ユーザ又は自動化プログラムか特定の試料を必要とする場合、システムは、どのバイアルからその種類の十分な量の試料を得ることができるかを判定することができる。
【0062】
さらに図5を参照すると、試料が必要とされる場合、制御システム74は、ステップS1においてバイアル投入指令を出す。格納装置77に格納されている情報に基づいて、システムは、適当な試料収容バイアルの存在場所を突き止める。
【0063】
ステップS2において、制御システム74は、信号をモータ37に送ってカルーセルが回転するようにし、ついには、選択されたバイアルスロットが試料採取ステーションに位置するようにする。選択されたバイアルスロットが試料採取ステーション51内に位置合わせされると、ステップS3においてバイアル検出信号を出す。選択されたバイアルスロットが空の場合、ステップS10においてエラー信号を出す。エラー信号は、制御システムに送られ、格納システムは、バイアル記録を更新する。
【0064】
ステップS4を参照すると、システム30は、新たなバイアルが存在しているかどうかを判定する。例示のシステムでは、制御システム74は、システム内に装填され、最初に検出されたバイアル全てが満杯状態のバイアルであることを確認する。したがって、システムは、ステップS8において、満杯状態のバイアルに対応した容量でバイアル記録を更新する。ステップS9において、新たなバイアル情報を格納装置77に格納する。
【0065】
ステップS5において、制御システムは、十分な量の試料が利用可能であるかどうかを判定する。バイアルが新品である場合、システムは、満杯状態のバイアル内で利用できる試料よりも多量の試料が必要であるかどうかを判定する。バイアルが既存のバイアルである場合、システムは、バイアルについての試料の量に関する情報を格納装置77から取り出す。次に、システムは、要求した試料の量がバイアル内の量を超えているかどうかを判定する。十分な量の試料が利用可能である場合、システムは、ステップS6に進む。もしそうでない場合、システムは、ステップS10においてエラー信号を出す。
【0066】
システムが上述したように十分な量の試料を収容したバイアルをいったん識別して取り出すと、システムは、ステップS6において投入を実施する。制御システムは、投入指令をニードルモータ37に送る。ニードルモータは、ロボットアーム39を駆動し、ニードル33をバイアルの方へ往復動させる。
【0067】
上述した押し退け作用により流体がバイアルから抜き出され、システムは、バイアル内のニードル先端部68の変位距離に基づいて流体の抜き出し量を記録する。ステップS7において、システムは、初期容量及び試料の抜き出し量に基づいてバイアルの新たな容量を記録する。
【0068】
流体の抜き出し後、制御システムは、ステップ11において投入完了指令を出す。次に、システムは、新たな投入指令をいつでも受け取る状態にある。
【0069】
一構成例では、システムにはあらかじめバイアルが装填されており、このシステムは、作動開始前にバイアルの各々に関する情報を集める。この場合、システムは、作動の開始時にバイアルを探す必要がない。
【0070】
次に、図1C及び図6を参照して、試料採取ステーション51、特にニードル33の作動について説明する。種々の実施形態では、ニードル33を駆動するモータ37は、ステップモータである。ステップモータ駆動装置及び中継器は、ステップモータを作動させる。試料をバイアルから抜き出すために、ニードルは、キャップ54に向かって軸方向に往復動する。ニードル先端部及びキャップは、指定された量の試料をバイアルから押し退ける。
【0071】
上述したように、システム30は、各試料収容バイアル44内にどれほど多くの試料が収容されているか及びどのような種類の試料が収容されているかを追跡することができる。かくして、システムは、バイアル内へのニードル33の押し込み時にモータ37がどのように作動すべきかを推定することができる。これら原理に基づいて、例示のシステムは、この推定モータ性能からの偏差に基づいてフィルタ42内の障害を検出する。
【0072】
種々の実施形態では、ステップモータ37は、駆動中におけるモータの負荷(滑り)バイアル内への駆動中におけるプランジャニードルの速度又はこれら両方に関する情報をモニタするモニタシステム又はセンサに取り付けられている。例示のシステム30は、ステップモータ37及び制御システム74に接続された少なくとも1つの光センサ装置79を有する。センサ装置は、作動中、モータをモニタするよう構成されている。センサ装置は、モータ駆動装置に応答してモータを制御する中継器を有する。光センサ装置は、モータをモニタし、所定のしきい値又は条件が満たされると、エラー信号を発生させる1対の光センサ79aを更に有する。例えば、光センサ装置は、モータに加わる負荷が追加の背圧を生じさせるフィルタ中の部分障害に対応した指定値を超えると、エラー信号を発生させるのが良い。
【0073】
例示の実施形態では、光センサ79は、センサ79aによってモニタされるよう構成されたエンコーダストリップ79bを有する。例示のシステムは、エンコーダストリップは、センサにより光学的に検出されるべき視覚マークのストリップである。しかしながら、理解されるように、本発明に従って他のモニタ技術を採用することができる。ニードルが動くと、センサは、ニードル組立体の運動を追跡するようエンコーダストリップを読み取る。かくして、センサは、ニードルの位置及びニードル運動の速度を求めることができる。モータに送られる制御信号及びセンサからのデータに基づいて、制御システムは、モータの滑りを求めることができる。
【0074】
図6を参照すると、ステップS1′において、制御システム74は、信号をステップモータ駆動装置に送ってニードルをそれぞれのバイアル44に向かって往復動させる。ニードル先端部68は、バイアルのキャップに接触し、キャップを下方に駆動する。ステップS2′において、制御システム及びステップモータ駆動装置は、試料を押し退けるための所望のニードル速度を設定する。
【0075】
ステップS3′において、光センサは、モータ37が滑っているかどうかを検出する。図示の実施形態では、モータは、ステップモータであり、光学装置は、滑りに基づいてモニタに加わる負荷を測定する。滑りは、モータに加わる負荷に対応しており、この負荷は、フィルタ及び試料押し退けプロセスからの背圧に対応している。
【0076】
通路が無視できるほどの障害を有している場合を意味する通常の作動中、光センサは、モータ滑りが許容範囲内にあることを示す信号を制御システムに送る。例示のシステムは、表示灯82又は他の適当な手段を備えた光学ストリップ81を有する。種々の実施形態では、1つの灯は、通常の作動に対応し、別の灯は、以下に説明するように通路の障害に基づいてエラー信号が出されたときに照明される。
【0077】
ステップS4′において、ニードルをバイアル内に押し込み、ついには、指定された量の試料が抜き出されるようにする。しかる後、投入完了信号を発生させる。
【0078】
ステップS3′においてモータ滑りがしきい値を超えている場合、光センサは、通路障害信号を制御システムに送る。モータ滑りが通常の範囲を超えているが、所定の完全障害値を下回っている場合、S6′において、制御システムは、ニードル速度が最小速度を超えているかどうかを判定する。この速度が最小速度を下回っている場合、通路の完全障害を判定する。かくして、モータ滑りが所定のしきい値を超えていると共にニードル速度が最小速度以下に減少している場合、システムは、通路の関連障害を認定する。この場合、システムは、ステップS7′においてエラーメッセージを出す。これに対し、モータ滑りが所定のしきい値を超えると共にニードル速度が最小速度を上回ったままである場合、システムは、通路の部分障害を認定する。部分障害の場合、システムは、ステップS5′においてニードル速度を減少させる。システムがモータ駆動信号に応答してニードルの運動を定期的に検出しない場合、例示のシステムは、詰まりが起こったと判定する。
【0079】
種々の実施形態では、ステップモータ37は、低トルクモード及び高トルクモードを有する。モータは、フィルタ中の検出された部分障害に基づく制御装置からの信号に応答して低トルクモードから高トルクモードに切り替わる。
【0080】
用途及び仕様に関する要件に基づいてモータ滑りしきい値及びニードル速度を調節できることは理解されよう。例えば、場合によっては、システムが長時間にわたって動作するようにすることが望ましい場合がある。というのは、フィルタの交換には動作停止時間が必要だからである。場合によっては、フィルタをすぐに交換することが望ましい場合がある。部分障害及び完全障害は、モータ滑り及びニードル速度の組み合わせに基づいて検出されるが、上述のことから理解されるように障害を種々の他の仕方で検出すると共にモニタできることは理解されよう。
【0081】
システムは、既存のシステムと比べて幾つかの利点を有する。本発明のシステムは、種々の障害を検出すると共に完全障害と部分障害を区別することができる。従来型システムは、設定された間隔でフィルタの交換を必要とするが、本発明のシステムは、実質的に連続した作動を可能にする。例示のシステムは、完全障害が起こった時期を検出することができるので、システムは、作動状態を調節すると共に完全障害で作動を続けることができる。信号灯は、かかる完全障害が起こったとき、ユーザへの視覚表示器としての役目も果たす。
【0082】
さらに、システム30は、部分障害に合わせて調節を行なうことができる。上述したように、障害によって引き起こされるモータに加わる背圧を減少させるためにモニタ速度を減少させるのが良い。システムは、完全障害が判定されるまで作動を続行する。
【0083】
モータ速度を調節することにより、モータ、流体送り出し組立体32及び他のコンポーネントの摩耗及び裂けも又減少し、かくして、部品の寿命が延びる。
【0084】
説明の便宜上且つ添付の特許請求の範囲における正確な定義のため、「上」又は「情報」、「下」又は「下方」、「内側」及び「外側」という用語は、例えば図示の特徴の位置に関して本発明の特徴を説明するために用いられている。
【0085】
例示及び説明の目的で本発明の特定の実施形態の上述の説明を行なった。上述の説明は、網羅的ではなく又は本発明を開示した形態そのものに限定することはなく、上述の教示に照らして多くの改造例及び変形例が可能であることは明らかである。実施形態は、本発明の原理及びその実用的用途を最も良く説明するために選択されると共に説明されており、それにより、他の当業者は、本発明及び種々の実施形態を想定される特定の使用に合った種々の改造を施して最適利用できる。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲の記載及びこれらの均等範囲に基づいて定められる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6