(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バルコニーまたはテラスといった建物の外部空間において、すだれを取り付ける構造は、提案されていなかった。また、熱容量のあるオーニングなどは受熱によりそれ自身の温度が気温より高くなり、熱容量の小さい竹などは風がある場合にはそれ自身の温度が気温相当になるが気温より低くなることはない。
【0006】
本発明は、バルコニーまたはテラスといった建物の外部空間において水の気化熱を利用して複数本の棒状部材を並べて配置してなるすだれ状部材を冷却して気温の低下を図るとともに、バルコニーまたはテラスに前記すだれ状部材が取り付けられたすだれ状部材の取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載のすだれ状部材30A〜30Dの取り付け構造に係る発明は、例えば、
図1〜
図10に示すように、
建物100のバルコニー10またはテラス20に、複数の棒状部材30a〜30dを並べて配置してなるすだれ状部材30A〜30Dが取り付けられたすだれ状部材30A〜30Dの取り付け構造であって、
前記棒状部材30a〜30dの少なくとも表面が保水可能な多孔質材で形成されており、
前記バルコニー10またはテラス20に吊り下げ部材40,41,42が設けられ、
この吊り下げ部材40,41,42に前記すだれ状部材30A〜30Dが吊り下げられて
おり、
前記複数の棒状部材30a,30b,30dが上下に向けて配置され、
前記複数の棒状部材30a,30b,30dの各々は、複数の筒体31から構成され、
これら複数の筒体31の内部の孔を挿通部材60a,60b,60dが挿通して、
前記複数の筒体31が縦方向に繋がれ、
前記吊り下げ部材40,42に、前記棒状部材30a,30b,30dの上端から延設している前記挿通部材60a,60b,60dが取り付けられ、
前記棒状部材30a,30b,30dの下端が自由端であり、
前記複数の筒体31の内部の孔は、最下部以外の筒体31の孔が、最下部の筒体31aの孔より大きく設定され、前記最下部の筒体31aの最下部には、前記孔と繋がり前記挿通部材60a,60b,60dを収納し外部から見えなくする凹部31bが設けられている、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記棒状部材30a〜30dの少なくとも表面が保水可能な多孔質材で形成されているので、前記棒状部材30a〜30dに水分を含ませることによりバルコニー10またはテラス20といった建物の外部空間において水の気化熱を利用してすだれ状部材30A〜30Dを冷却して気温の低下を図るとともに、前記バルコニー10またはテラス20に吊り下げ部材40,41,42が設けられているので、吊り下げ部材40,41,42に前記すだれ状部材30A〜30Dが取り付けられたすだれ状部材の取り付け構造を提供することができる。
また、前記棒状部材30a,30b,30dが複数の筒体31を縦方向に有し、前記棒状部材30a,30b,30dの下端が自由端であることにより、風に揺れやすくなる。その結果、隣り合う棒状部材が接触し合うことにより、音を生じさせることができる。
さらに、すだれ状部材30A(30B)の全体について軽量化することができ、さらにまた、最下部の筒体31aの最下部から挿通部材60a,60b,60dを見えなくして体裁をよくすることができる。
【0015】
請求項
2に記載の発明は、例えば、
図1、
図5、
図8、
図10に示すように、
請求項
1に記載のすだれ状部材30A〜30Dの取り付け構造において、
前記バルコニー10上の屋根11の下面またはテラス20上の屋根21の下面にレール50,51が設けられ、
このレール50,51に、前記吊り下げ部材40,41,42が取り付けられている、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項
2に記載の発明によれば、レール50,51に、前記吊り下げ部材40,41,42が取り付けられているため、この吊り下げ部材40,41,42をレール50,51に沿って移動させることにより、複数の棒状部材をレール50,51に沿って移動できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記棒状部材30a〜30dが保水可能な多孔質材で表面が形成されているので、前記棒状部材30a〜30dに水分を含ませることによりバルコニー10またはテラス20といった建物の外部空間において水の気化熱を利用してすだれ状部材30A〜30Dを冷却して気温の低下を図るとともに、前記バルコニー10またはテラス20に吊り下げ部材40,41が設けられているので、吊り下げ部材40,41,42に前記すだれ状部材30A〜30Dが取り付けられたすだれ状部材の取り付け構造を提供することができる。
また、前記棒状部材30a,30b,30dが複数の筒体31を縦方向に有し、前記棒状部材30a,30b,30dの下端が自由端であることにより、風に揺れやすくなる。その結果、隣り合う棒状部材が接触し合うことにより、音を生じさせることができる。
さらに、すだれ状部材30A(30B)の全体について軽量化することができ、さらにまた、最下部の筒体31aの最下部から挿通部材60a,60b,60dを見えなくして体裁をよくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
<実施の形態1>
図1〜
図3において、正面視において建物100のバルコニー10の屋根11の左側と右側に、縦型のすだれ状部材30Aが取り付けられ、正面視において建物100のテラス20の右側に、縦型のすだれ状部材30Bが取り付けられている。すだれ状部材30Aは、上下に向けた複数の棒状部材30aを水平方向に並べて配置してなる縦型のすだれ状部材であり、すだれ状部材30Bは、上下に向けた複数の棒状部材30bを水平方向に並べて配置してなる縦型のすだれ状部材である。すだれ状部材30Aとすだれ状部材30Bにおいて、棒状部材30bが棒状部材30aより長い点で異なり、他の構造については同じである。
【0021】
前記棒状部材30a,30bは多孔質セラミック等の保水可能な多孔質材で表面が形成されている。多孔質セラミックを用いた場合、潅水後1〜2分で表面温度が低下し、夏の晴天時に、気温が潅水前より−5〜−8℃低下した。また、すだれ状部材30A、30Bを流れる水も同様に冷えた冷水となり、すだれ状部材30A、30Bから落下し床面を冷却することもできる。また、この冷水を建物周辺への打ち水として使うことで、打ち水の効果を高めることができる。
【0022】
前記バルコニー10の屋根11の下面およびテラス20の屋根21の下面の各々に、断面略コ字型のレール50がビス止めにより取り付けられ、このレール50に吊り下げ部材40がビス止めにより取り付けられ、この吊り下げ部材40に前記すだれ状部材30A、30Bが吊り下げられている。前記すだれ状部材30A、30Bは、屋外に設置され、10〜15kg/m
2と重いため、レール50と吊り下げ部材40とにアルミまたはステンレス等の錆びにくい金属を採用するのが望ましい。
【0023】
レール50は、アルミ製の断面略コ字型のレールであり、屋根11,21の下面にレール50のレール溝54が下方に向けられて取り付けられ、このレール溝54の両側に、レール50の側壁の下端から内側に延出している帯片50a,50aを有する。レール50は、正面視において建物100のバルコニー10の屋根11の外周部を形成している枠体の左側と右側の各々の下面、および、正面視において建物100のテラス20の屋根21の外周部を形成している枠体の右側の下面に取り付けられている。この枠体および枠体の下面はアルミで形成され、枠体の下面は水平な平面で形成されている。
【0024】
吊り下げ部材40は、アルミ製の断面略コ字型のレールであり、レール50の下に吊り下げ部材40のレール溝44が下方に向けられて取り付けられ、このレール溝44の両側に、レール50の側壁の下端から内側に延出している帯片40a,40aを有する。
【0025】
前記レール50の帯片50a,50aの上面に、ネジ孔を有するプレート45aが載せられて、このプレート45aと前記帯片50aを挟むように吊り下げ部材40が前記帯片50aの下面に配置されている。吊り下げ部材40に設けられた孔からビス45cがプレート45aのネジ孔にねじ込まれ、レール50内のプレート45aと吊り下げ部材40とでレール50の帯片50aを挟んだ状態で、前記レール50に吊り下げ部材40が吊られる。ビス45cがねじ込まれ、プレート45aの下面と帯片50a,50aの上面が当接し、かつ、吊り下げ部材40の上面と帯片50a,50aの下面が当接した状態で、レール50に吊り下げ部材40が固定される。ビス45cをプレート45aの孔から外れない程度に緩めると、固定状態が解除されて吊り下げ部材40とレール50内のプレート45aとをレール50の長手方向に沿って移動できる。なお、プレート45aはレール50の端部から挿入され、ビス45cと吊り下げ部材40との間には座金45bが挿入されている。
【0026】
図6、
図7に示すように、前記複数の棒状部材30a(30b)の各々は、上下に向けて配置され、複数の筒体31が縦方向に挿通部材60a(60b)で繋がれている筒状の棒状部材30a(30b)であり、前記筒状の棒状部材30a(30b)の内部の孔を挿通部材60a(60b)が挿通し、前記吊り下げ部材40に、前記筒状の棒状部材30a(30b)の上端部から延設している前記挿通部材60a(60b)が取り付けられている。前記棒状部材30a(30b)の下端は自由端である。前記挿通部材60a(60b)として、ステンレスワイヤー、てぐす等を用いることができる。
【0027】
また、前記吊り下げ部材40に設けられた孔に、前記挿通部材60a(60b)が挿通され、前記吊り下げ部材40の孔から突出した前記挿通部材60a(60b)の上端部に前記吊り下げ部材40の孔より大きな結び目を設け若しくは前記上端部を金具でかしめることで前記吊り下げ部材40の孔から抜けないようにして取り付けられ、棒状部材30a(30b)が吊り下げられている。棒状部材30a(30b)の最下部の筒体31aには、前記挿通部材60a(60b)の径より大きな孔が設けられていて、前記挿通部材60a(60b)の下端部に前記筒体31aの孔より大きな結び目を設け若しくは前記上端部
と同様に金具でかしめることで前記筒体31aの孔から抜けないようにして取り付けられている。筒体31aの最下部には、前記孔と繋がる凹部31bが設けられ、この凹部31bに前記挿通部材60a(60b)の結び目が収納され、この結び目が外部から見えないようになっている。他の複数の筒体31の孔は、最下部の筒体31aの孔より大きく設定されている。これにより、すだれ状部材30A(30B)の全体について軽量化することができる。
【0028】
本実施の形態によれば、前記棒状部材30a,30bは保水可能な多孔質材で表面が形成されているので、前記棒状部材30a,30bに水分を含ませることによりバルコニー10およびテラス20といった建物の外部空間において水の気化熱を利用してすだれ状部材30A,30Bを冷却して気温の低下を図るとともに、前記バルコニー10およびテラス20に吊り下げ部材40が設けられているので、吊り下げ部材40にバルコニー10およびテラス20に前記すだれ状部材30A,30Bが取り付けられたすだれ状部材の取り付け構造を提供することができる。
【0029】
また、前記複数の棒状部材30a,30bの各々が筒状であるため、棒状部材30a,30bの表面積が広がることにより棒状部材30a,30b全体において吸水率が向上して、保水力を高めることができる。また、前記複数の棒状部材30a,30bの各々が筒状であるため、棒状部材30a,30b内部を挿通部材が挿通することにより、棒状部材30a〜30dから延設している挿通部材を吊り下げ部材に取り付けることが可能になる。
【0030】
また、前記棒状部材30a,30bが複数の筒体31を縦方向に有し、前記棒状部材30a,30bの下端が自由端であることにより、風に揺れやすくなる。その結果、隣り合う棒状部材が接触し合うことにより、音を生じさせることができる。
【0031】
また、レール50に、前記吊り下げ部材40が固定状態を解除可能に取り付けられているため、固定状態を解除して複数の棒状部材をレール50に沿って移動できる。
【0032】
<
参考例>
上記実施の形態1においては、縦型のすだれ状部材30A、30Bについて説明した。
本
参考例においては、横型のすだれ状部材30Cの取り付け構造について説明する。
なお、上記実施の形態1において説明した部材と同じ部材には、同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
図8、
図9において、建物100のバルコニー10の屋根11に、縦型のすだれ状部材30Aの代わりに、横型のすだれ状部材30Cが取り付けられている例について説明する。すだれ状部材30Cは、水平方向に向けた複数の棒状部材30aを上下に並べて配置してなる横型のすだれ状部材である。なお、横型のすだれ状部材30Cをテラス20の屋根21の下面に取り付けることも可能である。前記すだれ状部材30Cは、屋外に設置され、10〜15kg/m
2と重いため、レール50と吊り下げ部材41とにアルミまたはステンレス等の錆びにくい金属を採用するのが望ましい。
【0034】
前記棒状部材30cは多孔質セラミック等の保水可能な多孔質材で表面が形成されている。多孔質セラミックを用いた場合、潅水後1〜2分で表面温度が低下し、夏の晴天時に、気温が潅水前より−5〜−8℃低下した。また、すだれ状部材30Cを流れる水も同様に冷えた冷水となり、すだれ状部材30Cから落下し床面を冷却することもできる。
【0035】
前記バルコニー10の屋根11の下面に、アルミ製のレール50がビス止めにより取り付けられ、このレール50に、吊り金具41bが取り付けられ、この吊り金具41bにカナビラ41aが取り付けられている。吊り金具41bとカナビラ41aとが、吊り下げ部材41に相当する。この吊り下げ部材41に前記すだれ状部材30Cが吊り下げられている。
【0036】
図8、
図9に示すように、前記複数の棒状部材30cの各々は、水平方向に向けて配置され、複数の筒体31が水平方向に挿通部材60cで繋がれている筒状の棒状部材30cであり、前記筒状の棒状部材30cの内部を挿通部材60cが挿通している。前記挿通部材60cとして、アルミ製のパイプ等を用いることができる。前記複数の筒体31にパイプを挿通することにより棒状部材30cとすることができる。また、パイプに複数の孔を設けることにより、すだれ状部材30Cを軽量化することができる。
【0037】
前記複数の棒状部材30cが水平に向けて配置され、前記すだれ状部材30Cは、前記複数の棒状部材30cの両端から延設している前記挿通部材60cの両端部をそれぞれ線状材43で上下方向に包むように編むことにより前記複数の挿通部材60cが上下に連結されて構成され、カナビラ41aに、前記線状体43の上部が着脱可能に取り付けられている。カナビラ41aは、環状に形成されており、開閉部41a1を内側に移動させた状態で、カナビラ41aを吊り金具41bから取り外すことができ、また、開閉部41a1を内側に移動させた状態で、線状体43の上部をカナビラ41aから取り外すことで、吊り下げ部材41からすだれ状部材30Cを取り外すことができる。なお、複数の挿通部材60cの両端部に上下方向に孔が開けられ、これらの孔に線状材43が上下方向に挿通されて、前記複数の挿通部材60cが上下に連結されていてもよい。
【0038】
また、前記レール50の帯片50a,50aの上面に、ネジ孔を有するプレート45aが載せられて、このプレート45aと前記帯片50aを挟むように吊り下げ金具41bが前記帯片50aの下面に配置されている。吊り下げ金具41bに設けられた孔からビス45cがプレート45aのネジ孔にねじ込まれ、プレート45aと吊り下げ金具41bとでレール50の帯片50aを挟んだ状態で、前記レール50に吊り下げ金具41bが固定される。ビス45cをプレート45aの孔から外れない程度に緩めると、固定状態が解除されて吊り下げ部材41とプレート45aとをレール50の長手方向に沿って移動できる。なお、プレート45aはレール50の端部から挿入されている。
【0039】
本
参考例によれば、前記棒状部材30cは保水可能な多孔質材で表面が形成されているので、前記棒状部材30cに水分を含ませることによりバルコニー10またはテラス20といった建物の外部空間において水の気化熱を利用してすだれ状部材30Cを冷却して気温の低下を図るとともに、前記バルコニー10に吊り下げ部材41が設けられているので、吊り下げ部材41にバルコニー10に前記すだれ状部材30Cが取り付けられたすだれ状部材の取り付け構造を提供することができる。
【0040】
また、前記線状材43の上部が着脱可能に取り付けられているので、冬季、日射を取得したい時など必要に応じて前記すだれ状部材30Cを取り外すことができる。
【0041】
また、レール50に、前記吊り下げ部材41が固定状態を解除可能に取り付けられているため、固定状態を解除して前記吊り下げ部材41をレール50に沿って移動できる。
(変形例)
次に、
図10を参照して、変形例について以下説明する。
【0042】
上記実施の形態においては、棒状部材30a〜30cが、略平面に沿って並んでいる例について、図示したが、これに限られない。棒状部材の配置に奥行をもたせてもよい。例えば、
図10に示すように、ジグザグに複数の棒状部材30dを並べるようにしてすだれ状部材30Dを吊り下げ部材42に取り付けて、この吊り下げ部材42をレール51に取り付けてもよい。また、千鳥足状に複数の棒状部材30dを並べるようにしてすだれ状部材30Dを吊り下げ部材42に取り付けてもよい。
また、上記実施の形態においては、バルコニー10上の屋根11にすだれ状部材30A〜30Cが取り付けられたすだれ状部材の取り付け構造について説明したが、これに限られない。例えば、建物100の屋根の軒先をバルコニー10の先端まで延設し、バルコニー10上の屋根の軒天にすだれ状部材30A〜30Dを取り付けてもよい。
また、上記実施の形態においては、多孔質セラミック等の保水可能な多孔質材のみを用いた筒体について説明したが、これに限られない。多孔質材より硬い筒型の基材の表面に多孔質材を設けた棒状部材を採用してもよい。
また、
図9においては、吊り下げ部材41に線状材を介して挿通部材60cを取り付けた例について説明したが、これに限られない。吊り下げ部材41のカナビラ41a下部の内周に挿通部材60cの下部が接するように挿通部材60cを配置して、吊り下げ部材41に挿通部材60cを直接取り付けてもよい。
なお、変形例においては、上記実施の形態で説明した部材についての説明を省略する。