(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記赤色LED素子への電流供給時間と前記青色LED素子への電流供給時間とを前記タイマー回路に設定するための入力部を有する請求項2記載の植物栽培用LEDランプ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。説明は以下の順序で行う。
1.第一実施形態に係る植物栽培用LEDランプ
(1)本体部
(2)駆動回路
(3)制御パターン
(4)入力部・表示部
2.第二実施形態に係る植物栽培用LEDランプ
3.栽培植物
(1)葉菜類
(2)果樹類
(3)穀類
(4)藻類
(5)コケ類など
【0017】
1.第一実施形態に係る植物栽培用LEDランプ
(1)本体部
図1は、本発明の第一実施形態に係る植物栽培用LEDランプAの構成を説明する模式図である。また、
図2は、植物栽培用LEDランプAの回路図である。
【0018】
植物栽培用LEDランプAは、本体部1と、本体部1の端部に備えられた端子2と、を含んで構成されている。端子2は、一般に、本体部1の端部にそれぞれ1つあるいは2つ設けられる。端子2の形状は、種々の口金形状であってよく特に限定されないが、例えば、社団法人日本電球工業会の内部規格であるL型ピン口金(GX16t−5)などを採用できる。
【0019】
本体部1は直管蛍光ランプ形状を有している。本体部1の形状を従来型の直管蛍光ランプ形状とすることで、植物栽培用LEDランプAを、従来型の直管蛍光ランプをとりつけるための直管型蛍光灯器具Dにそのまま取り付けることが可能となる。端子2は、直管型蛍光灯器具Dのソケット10への取り付け時の支持ピンとしても機能する。
【0020】
本体部1は、公知の直管蛍光ランプと同様に、透明あるいは半透明のプラスチック製あるいはガラス製の円筒形状の管体とされる。管体は、単一素材のものであってもよいが、例えば、LED素子からの光の放射方向側(下側)の半体をポリカーボネイトなどのプラスチック製にし、上側半体をアルミニウムなどの金属製にするといったように異なる素材を組み合わせたものであってもよい。
【0021】
本体部1の内部には、赤色LED素子3、青色LED素子4及びこれらを駆動するための回路基板5が配されている。赤色LED素子3及び青色LED素子4は、それぞれ複数が回路基板上にアレイ状に配置されている。
【0022】
直管型蛍光灯器具Dへの取り付け状態において、回路基板5は、直管型蛍光灯器具Dが備えるAC/DCコンバータ(流直流変換器)11に接続される。AC/DCコンバータ11には、交流電源12が接続されている。
図2では、本体部1の片側に2ピン配された端子2を給電端子とし、他端に配された2ピン配された端子2のひとつをアース端子とする場合を示した。アースは、管体の金属に接続される。
【0023】
なお、本発明に係る植物栽培用LEDランプにおいて、結線方式は特に限定されず、片側2ピンの端子間に印加する方式の他、両端1ピンずつの端子間に印加する方式であってもよい。
【0024】
赤色LED素子3としては、波長570〜730nmの光、好適には635〜660nmの波長を中心波長をとする光を発する素子が用いられる。また、青色LED素子4には、波長400〜515nmの光、好適には中心波長を450nmとする光が好適に用いられる。赤色LED素子3及び青色LED素子4は、上記波長を中心波長として所定の波長域を有するものであってよい。波長域としては、例えば青色光であれば、450±30nm、好ましくは450±20nm、さらに好ましくは450±10nmとできる。
【0025】
赤色LED素子3及び青色LED素子4には、赤色LED素子3あるいは青色LED素子のどちらか一方のみを線状あるいは面状に配列した単色ライン光源あるいは単色パネル光源や、1つの赤色LED素子と1つの青色LED素子を組み合わせて実装したSMD(2 Chips Surface Mount Device)を線状に配列したSMDライン光源などを使用できる。
【0026】
上記波長域の光を放射するLEDとしては、例えば赤色LEDには、昭和電工株式会社から製品番号HRP−350Fとして販売されているアルミニウム・ガリウム・インジウム・リン系発光ダイオード(ガリウム・リン系基板、赤色波長660nm)などがあり、青色LEDには同社製品番号GM2LR450Gの発光ダイオードなどがある。
【0027】
LED素子は、小型で寿命が長く、材料によって特定の波長で発光して不要な熱放射がないためエネルギー効率が良く、植物に近接照射しても葉焼け等の障害が起こらない。このため、LED素子を光源に用いることで、他の光源に比べて低電力コストかつ省スペースで栽培を行うことが可能となる。
【0028】
LED素子は、原理上、数メガヘルツ(MHz)以上もの高い周波数で点滅駆動が可能である。このため、LED素子を光源に用いることで、赤色光のみで植物を照明するステップと、青色光のみで植物を照明するステップとの切り替えを極めて高速に行うことも可能となる。
【0029】
(2)駆動回路
回路基板5上の赤色LED素子3及び青色LED素子4の駆動回路には、AC/DCコンバータ11から給電端子を介して供給される直流電流を、赤色LED素子3又は青色LED素子4の駆動回路に切り換えて流すスイッチング回路51が配されている。スイッチング回路51は、汎用のLEDドライバーによって構成できる。
【0030】
また、回路基板5上の駆動回路には、スイッチング回路51の駆動回路の切り換え動作を制御するタイマー回路52が配されている。タイマー回路52は、通常使用される1チップマイコンによって構成できる。
【0031】
植物栽培用LEDランプAは、スイッチング回路51及びタイマー回路52によって、赤色LED素子3及び青色LED素子4の駆動回路を切り換えることによって、赤色光と青色光を交互に照射するものであり、執行メソッドを実行可能なものである。すなわち、植物栽培用LEDランプAにおいて、スイッチング回路51及びタイマー回路52は、赤色光のみで植物を照明するステップと、青色光のみで植物を照明するステップと、を一定期間内に別個独立に実行する。次に、スイッチング回路51及びタイマー回路52による制御パターンについて詳しく説明する。
【0032】
(3)制御パターン
スイッチング回路51は、タイマー回路52に設定、保持された赤色LED素子3への電流供給時間と青色LED素子4への電流供給時間とに基づいて、赤色LED素子3及び青色LED素子4の各駆動回路へ電流を切り換えて流し、赤色LED素子3又は青色LED素子4の発光時間を制御する。以下、スイッチング回路51により赤色LED素子3のみが発光されるステップを「赤色光照明ステップ」と、青色LED素子4のみが発光されるステップを「青色光照明ステップ」と称する。
【0033】
タイマー回路52を構成する1チップマイコンには、赤色LED素子3又は青色LED素子4への電流供給時間に加えて、赤色LED素子3又は青色LED素子4の駆動電流の大きさを設定、保持するようにしてもよい。この場合、スイッチング回路51は、設定された電流値に基づいて、赤色LED素子3及び青色LED素子4の各駆動回路へ電流値を変化させ、赤色LED素子3又は青色LED素子4の発光強度をも制御する。
【0034】
図3は、制御パターンを説明する図である。この実施形態は、赤色光照明ステップと青色光照明ステップを交互に連続して行うものである。
【0035】
図中、符号S
1は赤色光照明ステップ、符号S
2は青色光照明ステップを示す。本実施形態では、赤色光照明ステップS
1と青色光照明ステップS
2が交互に連続して行われ、赤色光照明ステップS
1と青色光照明ステップS
2とからなる照射サイクルが繰り返し行われる。
【0036】
このように、植物に対して赤色光と青色光を交互に照射することにより、生長を顕著に促進することができる(試験例参照)。また、徒長を抑制して、収穫量を向上させることも可能である。
【0037】
ここでは、第1回目の照射サイクルC
1において赤色光照明ステップS
1から手順を開始する場合を例に説明したが、各照射サイクルにおいて赤色光照明ステップS
1及び青色光照明ステップS
2のいずれを先に行うかは任意である。
【0038】
上述した制御パターンにおいて、一つの照射サイクルの時間は、最長で栽培全期間である。また、最短の時間は、本発明の効果が奏される限りにおいて任意に設定できる。一つの照射サイクルは、例えば時間(hr)を時間長の単位とするものであってよく、さらにより長い時間長単位(例えば日(day))あるいはより短い時間長単位(例えば分(minutes))とするものであってもよい。
【0039】
例えば、一つの照射サイクルを一日とする場合、赤色光照明ステップS
1を12時間、青色光照明ステップS
2を12時間とすることができる。また、例えば、一日に照射サイクルを4回繰り返す場合、一つの照射サイクルは6時間となり、赤色光照明ステップS
1を3時間、青色光照明ステップS
2を3時間とすることができる。
【0040】
一つの照射サイクルの時間は、第N回目の照射サイクルC
Nと第M回目(MはNと異なる1以上の整数)の照射サイクルC
Mとで変化させてもよい。例えば、照射サイクルC
Nを12時間とし、続く照射サイクルC
N+1を6時間とすることもできる。
【0041】
また、一つの照射サイクル内における赤色光照明ステップS
1と青色光照明ステップSの時間比は、任意であってよい。例えば、上述の第一の制御パターンにおいて、一つの照射サイクルを一日とする場合、「赤色光照明ステップS
1・青色光照明ステップS
2」を「12時間・12時間(1:1)」、「16時間・8時間(2:1)」、「21時間・3時間(7:1)」などのように任意に設定し得る。
【0042】
赤色光照明ステップS
1及び青色光照明ステップS
2における赤色光及び青色光の光量(強度)は、特に限定されないが、例えば光合成光量子束密度(Photosynthetic Photon Flux Density:PPFD)でそれぞれ1〜1000μmol/m
2s、好ましくは10〜500μmol/m
2s、特に好ましくは50〜250μmol/m
2s程度とされる。
【0043】
また、上記各ステップにおける赤色光及び青色光の光量(強度)比は、例えば「赤:青」あるいは「青:赤」で1:1、2:1、4:1、10:1、20:1などのように任意に設定され得る。
【0044】
また、赤色光及び青色光の光量は上記範囲内で変化させてもよく、例えば第N回目(Nは1以上の整数)の照射サイクルC
Nにおいて光量が変化してもよい。また、第N回目の照射サイクルC
Nと第M回目(MはNと異なる1以上の整数)の照射サイクルC
Mとで光量を上記範囲内で変化させてもよい。
【0045】
(4)入力部・表示部
植物栽培用LEDランプAは、タイマー回路52を構成する1チップマイコンに、赤色LED素子3又は青色LED素子4への電流供給時間及び電流値を設定し記憶させるための入力部6を備える。
【0046】
入力部6は、可変抵抗によるアナログ信号変換スイッチとする場合、本体部1の上側半体にスライドスイッチとして設けることができる。また、デジタル入力を行う場合には、入力部6は、押しボタンなどによって構成してもよい。あるいは、入力部6は、赤外線受光部として、赤外線リモコンを用いて電流供給時間及び電流値を入力できるようにしてもよい。
【0047】
植物栽培用LEDランプAでは、入力部6によって、タイマー回路52を構成する1チップマイコンに所望の電流供給時間及び電流値を設定することにより、スイッチング回路51に上述の制御パターンを実行させて、執行メソッドによる植物栽培を行うことが可能である。
【0048】
また、植物栽培用LEDランプAには、必要に応じて、電流供給時間及び電流値の設定値を確認するための表示部7を設けることが好ましい。表示部7は、アナログ又はデジタル式の時計や、LEDインジケーターなどであってよい。なお、本発明に係る植物栽培用LEDランプにおいて、色LED素子3又は青色LED素子4の電流供給時間及び電流値の設定は、各ランプに制御線を配線して有線で、あるいは無線で、複数のランプのスイッチング回路51を一括して制御することも可能である。
【0049】
2.第二実施形態に係る植物栽培用LEDランプ
図4は、本発明の第二実施形態に係る植物栽培用LEDランプBの構成を説明する模式図である。また、
図5は、植物栽培用LEDランプBの回路図である。
【0050】
植物栽培用LEDランプBは、AC/DCコンバータ11を内蔵し、商用電源直結型又は既設安定器接続型とされている点で、上述したDC入力型の植物栽培用LEDランプAと異なっている。また、植物栽培用LEDランプBは、結線方式が両端1ピンずつの端子間に印加する方式である点で、片側2ピンの端子間に印加する方式の植物栽培用LEDランプAと異なっている。以下、植物栽培用LEDランプBについて、植物栽培用LEDランプAと異なる点を説明する。
【0051】
植物栽培用LEDランプBでは、回路基板5にAC/DCコンバータ(流直流変換器)11が搭載されている。このため、植物栽培用LEDランプBは、既設の安定器Eに取り付けが可能である。安定器Eへの取り付け状態において、回路基板5は、安定器に接続された交流電源12に接続される。
図5では、本体部1の両端に2ピンずつ配された端子2のうち、片側1ピンずつを給電端子とする場合を示した。本体部1の片側の残りの1ピンはアース端子とされ、アースは管体の金属に接続されている。
【0052】
なお、本発明に係る植物栽培用LEDランプにおいて、接続される安定器は既設のものであってよく、安定器の種類は特に限定されず、磁気式スタータ型、磁気式ラピッドスタート型及び電子式などとできる。
【0053】
また、植物栽培用LEDランプBは、回路基板5にAC/DCコンバータを内蔵しているため、安定器のみならず、一般的な商用交流電源に直結することもできる。商用電源への結線方式も、特に限定されず、片側2ピンの端子間に印加する方式、両端1ピンずつの端子間に印加する方式であってよい。
【0054】
物栽培用LEDランプBの本体部1の形状や端子2の形状、赤色LED素子3、青色LED素子4及びスイッチング回路51とタイマー回路52を含むこれら素子の駆動回路の構成、並びにスイッチング回路51に制御パターンは、植物栽培用LEDランプAに同じである。また、入力部6及び表示部7の構成も、植物栽培用LEDランプAと同様である。
【0055】
3.栽培植物
本発明が対象とする栽培植物は、特に限定されることなく、野菜類、いも類、きのこ類、果実類、豆類、穀物類、種実類、藻類、コケ類、観賞用植物類などとできる。また、これらの植物の栽培形態も、特に限定されることなく、水耕栽培、土耕栽培などであってよい。藻類については、液体培地、寒天培地などの培養形態は任意であってよい。
【0056】
(1)葉菜類
葉菜類としては、レタス類、ネギ、ミズナ、サラダナ、シュンギク、パセリ、ミツバ、コマツナ、カラシミズナ、カラシナ、ワサビナ、クレソン、ハクサイ、ツケナ類、チンゲンサイ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ、タマネギ、ニンニク、ラッキョウ、ニラ、アスパラガス、セルリー、ホウレンソウ、セリ、ウド、ミョウガ、フキ、シソ、各種ハーブ等が挙げられる。また、いわゆる「ベービーリーフ」と称され、主として若葉で食されるデトロイト、ロロロッサ、ルッコラ、ピノグリーン、レッドロメイン、チコリー等の葉菜類も挙げられる。
レタス類には、結球性レタス、非結球レタス及び半結球レタスなどが含まれ、例えば、リーフレタス、フリルレタス、ロメイン、グリーンウェーブ、グリーンリーフ、レッドリーフ、フリルアイス(登録商標)、リバーグリーン(登録商標)、フリルリーフ、フリンジグリーン、ノーチップ、モコレタス、サンチュ、チマ・サンチュが挙げられる。
各種ハーブには、例えば、バジル、イタリアンパセリなどが含まれる。
【0057】
また、トマト、メロン、キュウリ、イチゴ、カボチャ、スイカ、ナス、ピーマン、オクラ、サヤインゲン、ソラマメ、エンドウ、エダマメ、トウモロコシ等の果菜類、ダイコン、カブ、ゴボウ、ニンジン、ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、ヤマイモ、ショウガ、ワサビ、レンコン等の根菜類なども栽培対象とできる。
【0058】
(2)果樹類
果樹類としては、マンゴー、パイナップル、イチジク、ブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ボイセンベリー、ブドウ、ユスラウメ、クランベリー、ハスカップ、スグリ、フサスグリ、パパイア、パッションフルーツ、ドラゴンフルーツ等が挙げられる。
【0059】
(3)穀類
穀類としては、アマランサス、アワ、エンバク、オオムギ、キビ、コムギ、コメ、モチゴメ、ソバ、トウモロコシ、ハトムギ、ヒエ、ライムギが例示できる。
【0060】
(4)藻類
藻類には、原核生物であるか真核生物であるかを問わず、緑藻類、褐藻類、藍藻類、紅色光合成細菌等の原生動物、水草等の水生の光合成能を有する生物などが広く含まれる。藻類として、具体的には、藍藻類、原核緑藻類、紅藻類、灰色藻類、クリプト藻類、渦鞭毛藻類、黄金色藻類、珪藻類、褐藻類、黄緑藻類、ハプト藻類、ラフィド藻類(緑色鞭藻類)、クロララクニオン藻類、ミドリムシ藻類、プラシノ藻類、緑藻類、車軸藻類などが挙げられる。
【0061】
(5)コケ類など
コケ類としては、マゴケ綱に属するコケ類が含まれる。例えば、エゾスナゴケ(Racomitrium japonicum)等、いわゆる砂苔と称される、キボウシゴケ目(Grimmiales)ギボウシゴケ科シモフリゴケ属のコケ類が挙げられる。
【0062】
また、観賞用植物類としては、バラ、ミニバラ、リンドウなどに加えて、種々の観葉植物が栽培対象とできる。
【実施例】
【0063】
<試験例1>
本発明に関連して、生育時の光環境の異なる試験群1〜8を用意し、これらを比較することによって、人工光の照射パターンと植物への生長促進効果との相関を検証した。
【0064】
A.材料と方法
(材料)
本試験例では、生育状態の観察対象としてリーフレタス(品種:サマーサージ)を用いた。まず、リーフレタスの種子を6粒、育成ピートバンに等間隔に播種し、蛍光灯下(12時間日長)において発芽させた。播種から発芽までの3日間は、何れの試験群においても、同一の光環境下に置いた。
発芽後、レタスは、光環境の異なる各々の人工気象器内に置き、21日間生育させた。人工気象器の環境は、光照射条件以外、全て同一として、気温25〜27℃、湿度50%とした。
【0065】
(光源)
本試験例の光環境のための光源には、赤色LED(中心波長:660nm、昭和電工製HRP−350F)、赤色LED(中心波長:635nm、昭和電工製HOD−350F)青色LED(中心波長:450nm、昭和電工製GM2LR450G)、白色LED(近紫外405nm励起、京セラ製TOP−V5000K)の、3種類のLED及び蛍光灯を用いた。各LEDの1セットの実装数は、赤色LEDが660nm、635nm共に各240個、青色LEDが240個、白色LEDが128個である。
【0066】
各光源を用いて、表1に示す試験群1〜10の光環境を作った。光源の光量は、光合成光量子束密度(PPFD、μmolm
‐2s
‐1)で、育成ピートバンの中心部において約140μmolm
‐2s
‐1(試験群8のみ約80μmolm
‐2s
‐1)になるように調節した。複数の波長の光を同時に照射、又は交互に照射する場合は、各照射光のPPFDの合計が約140μmolm
‐2s
‐1になるように調整した。試験群1〜10の光環境における光合成光量子束密度(PPFD、μmolm
‐2s
‐1)は、育成ピートバンに入った土壌表面付近の高さにおける、5点の平均値により示した。また、各試験群の光環境、照射光及び照射パターンの詳細については、以下に説明する。
【0067】
【表1】
【0068】
(試験群1)
本試験群では、レタスに、赤色光(660nm)と青色光(450nm)を12時間ずつ交互に照射した。本試験群においては、何れの光も照射しない時間は設けていない。
【0069】
本試験群における光環境は、赤色光(660nm)についてはPPFDが平均80.7μmolm
‐2s
‐1であった。青色光(450nm)については、PPFDが平均56.4μmolm
‐2s
‐1であった。
【0070】
(試験群2)
本試験群では、レタスに、赤色光(660nm)と青色光(450nm)を12時間同時に照射し、その後12時間は、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0071】
(試験群3)
本試験群では、レタスに、赤色光(660nm)と青色光(450nm)を24時間同時に照射した。本試験群においては、何れの光も照射しない時間は設けていない。
【0072】
本試験群における光環境は、赤色光(660nm)と青色光(450nm)との合計で、PPFDが平均145.3μmolm
‐2s
‐1であった。なお、試験群2についても同様である。
【0073】
(試験群4)
本試験群では、レタスに、赤色光(635nm)と青色光(450nm)を12時間ずつ交互に照射した。本試験群においては、何れの光も照射しない時間は設けていない。
【0074】
(試験群5)
本試験群では、レタスに、赤色光(635nm)と青色光(450nm)を12時間同時に照射し、その後12時間は、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0075】
(試験群6)
本試験群では、レタスに、赤色光(660nm)のみを12時間照射し、その後12時間、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0076】
本試験群における光環境は、PPFDが平均139.3μmolm
‐2s
‐1であった。
【0077】
(試験群7)
本試験群では、レタスに、赤色光(635nm)のみを12時間照射し、その後12時間、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0078】
本試験群における赤色光(635nm)のPPFDは、試験群6と同程度である。
【0079】
(試験群8)
本試験群では、レタスに、青色光(450nm)のみを12時間照射し、その後12時間、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0080】
本試験群における光環境は、PPFDが平均84.1μmolm
‐2s
‐1であった。
【0081】
(試験群9)
本試験群では、レタスに、白色光(405nm励起)のみを12時間照射し、その後12時間、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0082】
本試験群における光環境は、PPFDが平均142.0μmolm
‐2s
‐1であった。
【0083】
(試験群10)
本試験群では、レタスに、蛍光灯のみを12時間照射し、その後12時間、何れの光も照射しない時間を設け、これを繰り返した。
【0084】
本試験群における光環境は、PPFDが平均139.8μmolm
‐2s
‐1、であった。
【0085】
B.結果
上述の試験群1〜10は、発芽後、異なる光環境下で生育を開始し、7日後(種子の播種10日後)、14日後(播種17日後)、21日後(播種24日後)の各々の時点で、生育状態を観察、測定し、試験群間の比較を行った。
【0086】
(生育7日後)
図6は、異なる光環境下で生育を開始してから7日後の各々の試験群の生育状態を写真で示す。また、表2には、同時点の、各試験群における、茎長(mm)、第1葉長(cm)、本葉数(枚)、葉幅長(cm)の測定結果を示す。各項目の測定値は、同一の育成ピートバン内に播種された、6サンプルの「平均値」又は「最小値−最大値」を記載している。
【0087】
【表2】
【0088】
図6及び表2に示されるように、生育7日後において、試験群1の赤色光(660nm)と青色光(450nm)の交互照射下のレタスは、他の試験群に比べ、第1葉長と葉幅長が長いことが示された。
【0089】
(生育14日後)
図7は、異なる光環境下で生育を開始してから14日後の各々の試験群の生育状態を写真で示す。なお、各写真において、育成ピートバンの大きさは同一である。また、表3には、同時点の、各試験群における、茎長(mm)、第1葉長(cm)、本葉数(枚)、葉幅長(cm)の測定結果を示す。各項目の測定値は、表2と同様、6サンプルの「平均値」又は「最小値−最大値」を記載している。
【0090】
【表3】
【0091】
図7及び表3から、生育14日後において、試験群1の赤色光(660nm)と青色光(450nm)の交互照射下のレタスは、他の試験群と比較して、第1葉長が長いという特徴が見られた。また、試験群1の本葉数は、他の試験群と比べ、1、2枚程度多かった。
【0092】
(生育21日後)
図8は、異なる光環境下で生育を開始してから21日後の各々の試験群の生育状態を写真で示す。なお、各写真において、育成ピートバンの大きさは同一である。また、表4は、同時点の各試験群における、地上部新鮮重(g)、地上部乾燥重(g)、本葉数(枚)、茎長(cm)、葉身長(cm)、葉幅長(cm)、葉柄長(cm)について、試験群10(蛍光灯下)の生育結果を100%とした、比較結果を示す。各項目の測定値は、表2と同様、6サンプルの「平均値」を記載している。
【0093】
【表4】
【0094】
表4において、試験群1の赤色光(660nm)と青色光(450nm)の交互照射下のレタスは、地上部新鮮重が、試験群10(蛍光灯下)に比べ2倍以上重くなった。また、試験群4の赤色光(635nm)と青色光(450nm)の交互照射下のレタスも、地上部新鮮重が試験群10と比べ、2倍程度であった。一方、試験群2及び5の赤色光と青色光の同時照射のレタスは、地上部新鮮重が試験群10に比べて重いものの、交互照射を行った試験群1や試験群4には及ばなかった。また、試験群3の赤色光(660nm)と青色光(450nm)24時間同時に照射したレタスの地上部新鮮重は、照射時間が半分である試験群2の重量と同程度であった。この結果から、赤色光と青色光の交互照射は、植物の生長を促進することが示された。
【0095】
試験群1の本葉数は、生育14日後と異なり、21日後の時点では、試験群2や試験群10と同程度であった。これは、試験群1における葉数を増やす生長が、生育14日後から21日後の間で停滞状態に達したためであると考えられる。
試験群1及び試験群4では、葉身長と葉幅長が試験群10に比べ長かった。この傾向は試験群2、3及び5の赤色光と青色光との同時照射条件でのレタスでは認められなかった。一方、試験群2及び試験群5においては、茎長が試験群10に比べ長かった。この結果から、赤色光と青色光の交互照射では、同時照射に比して、茎の徒長を抑止しつつ葉の生長のみを促進できることが示された。
【0096】
表5は、異なる光環境下で生育を開始してから21日後の各々の試験群の、地上部新鮮重(g)及び地上部乾燥重(g)における同化器官(g)及び非同化器官(g)の各々全重量における割合(%)と、乾燥重(g)の新鮮重(g)に対する割合(%)と、を示している。
【0097】
【表5】
【0098】
試験群1における地上部新鮮重及び地上部乾燥重は、試験群2群に比べ、同化器官の割合が高い結果となった。また、試験群4は、試験群5に比べ、同化器官の割合が、地上部新鮮重において高かった。この結果は、表4に示した、試験群1及び試験群4における葉部分の生長促進の結果及び
図8における生育状態の観察結果と一致する。
【0099】
C.まとめ
本試験例の結果から、赤色光と青色光の交互照射は、植物の生長を促進することが示された。また、前記交互照射は葉の生長を促進する一方、茎の徒長は促進しないことが示された。この効果は、赤色光と青色光の同時照射や、いずれか一方の単独照射下においては再現されず、赤色光と青色光の交互照射によってのみ得られることが明らかとなった。