(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722829
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
G01N27/58 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-132517(P2012-132517)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-257192(P2013-257192A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2014年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】島崎 雄次
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渥美 尚勝
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−105962(JP,U)
【文献】
特開2008−096419(JP,A)
【文献】
特開2008−116355(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01918699(EP,A1)
【文献】
特開2008−175685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/407
G01N 27/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、先端側に被検出ガス中の特定ガス成分を検出するための検出部を有する検出素子と、
前記検出部を自身の先端部から突出させた状態で、前記検出素子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、
前記主体金具の前記先端部に固定され、自身の内部に前記検出部を収容するプロテクタと、
を備えるガスセンサであって、
前記プロテクタは、筒状の第一周壁およびその先端側に接続する第一先端壁を有する大径部と、
前記第一先端壁に連結するとともに、前記大径部から前記軸線方向先端側に突出し、前記第一先端壁に接続する筒状の第二周壁およびその先端側に接続する第二先端壁を有する小径部と、を有し、
前記第一先端壁に形成され、前記軸線方向後端側に向かって窪んだ第一陥没部と、
第一陥没部に設けられ、前記第一周壁の内面に向かってのみ開口した第一開口部と、
前記第二先端壁に設けられ、前記軸線方向後端側に向かって窪んだ第二陥没部と、
前記第二陥没部に形成され、前記検出素子が外部から目視出来ないように前記第二周壁の内面に向かって開口した第二開口部と、
を備え、
前記第一周壁及び前記第二周壁は閉塞されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記第二周壁は円筒形に形成され、
前記検出素子は円柱状に形成され、
当該第二周壁の内径が前記検出素子の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第一開口部は、前記第一周壁に沿って前記第一先端壁に複数等間隔に設けられ、
前記プロテクタを前記軸線に沿ってみたときに、前記第二開口部は、前記第一開口部と当該第一開口部と隣接する他の第一開口部との間に向かって開口していることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記第一陥没部は、前記第一先端壁を内側に押し込むと共に、前記第一開口部以外の部位が前記第一先端壁と連結したドーム形状を有しており、
当該第一陥没部のうち、前記第二周壁側の部位は前記第二周壁の外表面と滑らかに連続して形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記第二陥没部は、前記第二先端壁に二本の平行な切れ目を入れて内側に押し込んだ形状に形成され、
当該二本の平行な切れ目部分が各々第二開口部となっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のガスセンサ。
【請求項6】
前記検出素子は内部に中空部が形成され、
当該中空部には、前記検出素子を加熱するヒータが挿入され、
当該ヒータは、前記検出素子に一箇所で接触し、
前記プロテクタを前記軸線に沿ってみたときに、前記軸線から前記ヒータと前記検出素子との接触箇所へ向かう方向は、前記軸線から前記第一開口部と当該第一開口部に隣接する他の第一開口部との間に向かう方向と同じ方向になることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記軸線から前記ヒータと前記検出素子との接触箇所へ向かう方向は、前記軸線から前記第二開口部へ向かう方向とずれていることを特徴とする請求項6に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出ガス中に晒される検出素子を被水から保護するプロテクタを備えたガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの排気ガス中の特定成分を検出する酸素センサやNOXセンサ、HCセンサ等のガスセンサが知られている。ガスセンサとして代表的な酸素センサは、ジルコニア等のセラミックスからなる固体電解質体を有底筒状に形成し、その表面上に、固体電解質体を挟む一対の電極を形成した検出素子を備える。ガスセンサの使用時に、固体電解質体の外側面上に形成される検出電極は、排気ガス中に晒され、内側面上に形成される基準電極は、基準となるガス(通常は大気)中に晒される。検出素子は、固体電解質体に隔てられた2つの雰囲気間、すなわち排気ガスと基準ガスとの間における酸素分圧の差に応じ、両電極間に生ずる起電力によって、排気ガス中の酸素の検出を行う。
【0003】
このような検出素子は温度が低いと活性化しないため、検出素子の近傍には、検出素子加熱用のヒータが設けられている。ヒータとしては、アルミナ等の絶縁性セラミック基体中に、タングステン、モリブデン等の高融点金属からなる発熱抵抗体を埋設したものが広く用いられている。ヒータは、検出素子の筒孔内に挿入して使用されるため、丸棒状に形成され、発熱抵抗体は、ヒータの先端側に埋設される。また、発熱抵抗体に通電するための電極パッドは、ヒータの後端側の外表面上に露出されて配置される。電極パッドには、通電のための接続端子が接合されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、検出素子が高温となった場合に、排気ガスに含まれる水分(水滴)が検出素子に付着(被水)すると、検出素子が熱衝撃を受け、クラックや割れが生ずる虞がある。そこで、ガスセンサには検出素子を覆うプロテクタが装着され、検出素子が被水から保護されている。例えば、特許文献1及び2に記載のガスセンサでは、プロテクタは、検出素子を覆う内側プロテクタと、当該内側プロテクタを覆う外側プロテクタの二重構造となっている。外側プロテクタには、排気ガスを内部に導入する外側導入孔が形成され、内側プロテクタには、外側プロテクタ内に入った排気ガスを検出素子が露出するガス検出室に導入する内側導入孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−230930号公報
【特許文献2】特開2008−96419号公報
【特許文献3】特開2008−175685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載のガスセンサでは、プロテクタが外側プロテクタと内側プロテクタとの二重構造となっており、構造が複雑であり、組み立ての工数も多くなっていた。また、プロテクタのコストも高くなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、一重構造のプロテクタで、二重構造のプロテクタ同様に耐被水性を確保できるガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、軸線方向に延び、先端側に被検出ガス中の特定ガス成分を検出するための検出部を有する検出素子と、前記検出部を自身の先端部から突出させた状態で、前記検出素子の径方向周囲を取り囲んで保持する主体金具と、前記主体金具の前記先端部に固定され、自身の内部に前記検出部を収容するプロテクタと、を備えるガスセンサであって、前記プロテクタは、筒状の第一周壁およびその先端側に接続する第一先端壁を有する大径部と、前記第一先端壁に連結するとともに、前記大径部から前記軸線方向先端側に突出し、前記第一先端壁に接続する筒状の第二周壁およびその先端側に接続する第二先端壁を有する小径部と、を有し、前記第一先端壁に形成され、前記軸線方向後端側に向かっ
て窪んだ第一陥没部と、第一陥没部に設けられ、前記第一周壁の内面に向かってのみ開口した第一開口部と、前記第二先端壁に設けられ、前記軸線方向後端側に向かっ
て窪んだ第二陥没部と、前記第二陥没部に形成され、前記検出素子が外部から目視出来ないように前記第二周壁の内面に向かって開口した第二開口部と、を備え、前記第一周壁及び前記第二周壁は閉塞されていることを特徴とするガスセンサが提供される。
【0009】
この構成のガスセンサでは、プロテクタは、大径部及び大径部から先端側に突出する小径部を有する一重構造である。これにより、従来のような二重構造を有するプロテクタに対して構造が簡易であり、組み立ての工数も削減できると共に、コストも低くすることができる。また、このプロテクタは、第一周壁及び第二周壁には開口部がなく、第一先端壁に設けた第一陥没部や、第二先端壁に設けた第二陥没部に、それぞれ第一開口部、第二開口部が設けられている。つまり、取付対象体内を通過する被検出ガスの流れの方向に沿ってプロテクタの開口がなく、被検出ガスの流れの方向に交わる方向に開口がある。このため、被測定ガスが取付対象体内を流れる流れ方向を変えることなく検出素子に到達することがなく、水滴が検出素子に付着することを抑制できる。そして、第一開口部は、第一周壁の内面に向かってのみ開口するように、第一陥没部に設けられているので、第一開口部から水滴が浸入した場合でも、水滴が第一周壁の内面に付着し、検出素子に水滴が付着することを抑制できる。他方、第二開口部は、検出素子が外部から目視出来ないように第二周壁の内面に向かって開口するように、第二陥没部に設けられているので、第二開口部から水滴が浸入した場合でも、水滴が第二周壁の内面に付着し、検出素子に水滴が付着することを抑制できる。
【0010】
また、前記第二周壁は円筒形に形成され、前記検出素子は円柱状に形成され、当該第二周壁の内径が前記検出素子の外
径よりも大きくしてもよい。この場合には、第一先端壁に形成される第一陥没部及び第一開口部は、検出素子よりも外側に配置されるので、第一開口部から浸入した水滴が検出素子に付着することをさらに抑制できる。
【0011】
また、前記第一開口部は、前記第一周壁に沿って前記第一先端壁に複数等間隔に設けられ、前記プロテクタを前記軸線に沿ってみたときに、前記第二開口部は、前記第一開口部と当該第一開口部と隣接する他の第一開口部との間に向かって開口しているようにしてもよい。この場合には、第一開口部と第二開口部とが同じ方向に開口していないので、ガスセンサを取付対象体に配置した際に、被検出ガスの上流側に第一開口部及び第二開口部が並んで配置されることがなく、プロテクタ内への水滴が浸入しにくくなる。
【0012】
また、前記第一陥没部は、前記第一先端壁を内側に押し込むと共に、前記第一開口部以外の部位が前記第一先端壁と連結したドーム形状を有しており、当該第一陥没部のうち、前記第二周壁側の部位は前記第二周壁の外表面と滑らかに連続して形成されているようにしてもよい。この場合には、第二周壁にぶつかった被検出ガスが第一先端壁に到達した際に、第一陥没部を容易に通過し、第一開口部からプロテクタ内に被測定ガスガスが流れ込み易い。
【0013】
また、前記第二陥没部は、前記第二先端壁に二本の平行な切れ目を入れて内側に押し込んだ形状に形成され、当該二本の平行な切れ目部分が各々第二開口部となっているようにしてもよい。このような構成をとることで、第二開口部から水滴が浸入した場合でも、水滴が第二周壁の内面に付着し、検出素子に水滴が付着することを抑制できる。
【0014】
また、前記検出素子は内部に中空部が形成され、当該中空部には、前記検出素子を加熱するヒータが挿入され、当該ヒータは、前記検出素子に一箇所で接触し、前記プロテクタを前記軸線に沿ってみたときに、前記軸線から前記ヒータと前記検出素子との接触箇所へ向かう方向は、前記軸線から前記第一開口部と当該第一開口部に隣接する他の第一開口部との間に向かう方向と同じ方向になるようにしてもよい。この場合には、温度の高くなるヒータが接触する検出素子の接触部位と第一開口部とが対向しないので、第一開口部から浸入した水滴の一部が検出素子に到達したとしても、検出素子にクラックや割れが生じることを抑制できる。
【0015】
また、前記軸線から前記ヒータと前記検出素子との接触箇所へ向かう方向は、前記軸線から前記第二開口部へ向かう方向とずれているようにしてもよい。この場合には、温度の高くなるヒータが接触する検出素子の接触部位と第二開口部とが対向しないので、第二開口部から浸入した水滴の一部が検出素子に到達したとしても、検出素子にクラックや割れが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】ガスセンサ1のプロテクタ4の底面図である。
【
図4】
図2と同方向から見たプロテクタ4の縦断面図である。
【
図5】排気ガスの流れる方向Dとガスセンサ1の取り付けの回転角度を示すプロテクタ4の底面図である。
【
図6】排気ガスの流れる方向Eとガスセンサ1の取り付けの回転角度を示すプロテクタ4の底面図である。
【
図7】排気ガスの流れる方向Fとガスセンサ1の取り付けの回転角度を示すプロテクタ4の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化したガスセンサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、
図1、
図2を参照し、検出素子6を備えるガスセンサ1の構造について説明する。
図1に示すガスセンサ1は自動車等の内燃機関のエンジンから排出される排気ガスの排気管(図示外)に取り付けられて使用されるものである。以下では、ガスセンサ1の軸線O方向において、排気管内に挿入される検出素子6の先端に向かう側(閉じている側であり図中下側)を先端側又は下側とし、これと反対方向に向かう側(図中上側)を後端側又は上側として説明する。
【0018】
図2に示すガスセンサ1は、排気管内を流通する排気ガス中の酸素濃度を検出するためのセンサである。ガスセンサ1は、細長で先が閉じられた筒状の検出素子6を主体金具5で取り囲んで保持した構造を有する。
【0019】
検出素子6は、ジルコニアを主成分とし、軸線O方向に延びる有底筒状に形成した固体電解質体61を有し、固体電解質体61の軸線O方向略中央の位置には、径方向外側に向かって突出する鍔状のフランジ部65が設けられている。フランジ部65よりも先端側の先端部64は、先端へ向けて徐々に縮径し、先端部分が球面状に閉じている。従って、検出素子6の内部には、中空部としての筒孔69が形成されている。先端部64の外表面には、PtまたはPt合金からなる多孔質状の検出電極62が形成されている。また、固体電解質体61の筒孔69の内表面にも同様に、PtまたはPt合金からなる多孔質状の基準電極63が形成されている。すなわち、検出電極62と基準電極63とは、先端部64において固体電解質体61を挟んで対向する。この部分が検出素子6において、酸素濃度の検出を行う検出部として機能する。ガスセンサ1が自動車の排気管(図示外)に取り付けられたとき、先端部64は排気管内を流通する排気ガス中に晒される。そして、検出電極62は多孔質状のスピネルの保護層(図示外)に覆われ、排気ガスによる被毒から保護されている。
【0020】
図2に示すように、検出素子6の検出電極62は、検出素子6の後端部66に外嵌めされる接続端子75を介し、図示外の外部回路(例えば自動車の電子制御装置(ECU))との電気的な接続を行うリード線18に接続される。同様に、検出素子6の基準電極63は、検出素子6の筒孔69内に挿入される接続端子70を介し、他のリード線18に接続されている。また、検出素子6の筒孔69内には固体電解質体61を加熱して活性化させるための棒状のヒータ7が挿入されている。ヒータ7は、内部に設けられた発熱抵抗体(図示外)への通電のため自身の後端に露出する電極に接合された一対の電極端子74を介し、外部回路と電気的な接続を行う一対のリード線19(
図2では一方のリード線19のみを示す。)に接続されている。尚、ヒータ7は検出素子6の内面と接触箇所68で接触している。
【0021】
検出素子6は、ガスセンサ1を排気管(図示外)に取り付けるための金具である筒状の主体金具5に保持される。具体的に、主体金具5は、筒孔55内の先端側に設けた段部59と、後端に設けた加締部57との間に、アルミナからなる支持部材13、滑石粉末からなる充填部材15、およびアルミナ製のスリーブ16を、パッキン37、38、39を介して支持する。そして、検出素子6のフランジ部65を、支持部材13と充填部材15との間に挟むことによって、筒孔55内に検出素子6を保持するとともに、充填部材15によって、筒孔55内の気密性を確保する。
【0022】
主体金具5は、外周に、ガスセンサ1を排気管に取り付けるためのねじ山が形成された雄ねじ部52を有する。雄ねじ部52の先端側には、後述するプロテクタ4を取り付ける先端取付部56が形成されている。雄ねじ部52の後端側には、排気管への取り付けの際に使用される工具が係合される工具係合部53が設けられている。工具係合部53と雄ねじ部52との間には、排気管の取付部を介したガス抜けを防止するための環状のガスケット11が嵌挿されている。工具係合部53の後端側には、後述する外筒3と取り付ける後端取付部58が形成されている。後端取付部58の後端側に、上記の加締部57が設けられている。
【0023】
検出素子6の後端部66は、主体金具5の後端(加締部57)から突出され、後端取付部58に溶接された外筒3に覆われる。外筒3は、SUS304等のステンレス鋼を軸線O方向に沿って延びる筒状に形成し、さらに略中央より先端側(
図2において下側)を、後端側よりも大径に形成したものである。外筒3内には、上記の検出素子6の後端部66、セパレータ8、グロメット9等が配置される。
【0024】
検出素子6の後端部66よりも軸線O方向の後端側には、絶縁性セラミックスからなる筒状のセパレータ8が配置されている。セパレータ8は、検出素子6の接続端子70,75、およびヒータ7の電極端子74が互いに接触しないように、それぞれ独立に内部に収容する。また、接続端子70,75や電極端子74と内周面との隙間を介し、セパレータ8の先端側と後端側との間で大気連通が可能となっている。外筒3のセパレータ8が配置された部分の外周が加締められ、セパレータ8は、保持金具85を介して外筒3内に保持される。
【0025】
セパレータ8の後端側にはフッ素系ゴムからなるグロメット9が配置されている。グロメット9は、外筒3の後端側の開口に嵌められて、開口付近の外周が加締められることにより、外筒3に保持されている。グロメット9には、外筒3内に大気を導入するための連通孔91が形成されている。連通孔91内には、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成された薄膜状のフィルタ部材87およびその留め金具88が挿入されており、水滴等の進入が防止されている。また、セパレータ8内で接続端子70,75に接続されるリード線18、および電極端子74に接続されるリード線19が、グロメット9を介して外部に引き出されている。
【0026】
検出素子6の先端部64の検出部は、主体金具5の先端取付部56から突出され、先端取付部56に溶接されるプロテクタ4に覆われる。プロテクタ4は、排気管内に突き出される検出素子6の検出部を、排気ガス中に含まれる水滴や異物等の衝突から保護する。このプロテクタ4は開口部を有する一重構造から成る。
【0027】
以下、
図1〜
図4を参照して、プロテクタ4の構造の詳細について説明する。プロテクタ4は、円筒形の大径部40と、当該大径部40より外
径の小さい円筒形の小径部45とから構成される。従って、プロテクタ4は、大径部40と小径部45と二段構造となっている。大径部40は、円筒形の第一周壁41およびその先端側に接続する第一先端壁42を有する。小径部45は、第一先端壁42に連結するとともに、大径部40から軸線O方向先端側に突出し、第一先端壁42に接続する円筒形の第二周壁43およびその先端側に接続する第二先端壁44を有する。尚、第二周壁43の内径は、検出素子6の先端部64の外
径より大きく形成されている。また、第一周壁41及び第二周壁43は、開口部が無く閉塞している。
【0028】
第一先端壁42には、軸線O方向後端側に向かって陥没した第一陥没部46と、第一陥没部46に設けられ、第一周壁41の内面に向かってのみ開口した第一開口部47が形成されている。当該第一開口部47からは、プロテクタ4の内部に排気ガスが導入される。第一陥没部46及び第一開口部47は、第一周壁41に沿って第一先端壁42に複数等間隔に設けられている。本実施の形態では一例として6個、等間隔に設けられている。
【0029】
第一陥没部46は、第一先端壁42を内側(検出素子6の先端部64側)に押し込むと共に、第一開口部47以外の部位が第一先端壁42と連結したドーム形状を有している。
図4に示すように、当該第一陥没部46のうち、第二周壁43側の部位は当該第二周壁43の外表面と滑らかに連続して形成されている。従って、第二周壁43にぶつかった排気ガスが第一先端壁42に到達した際に、
図4に示す矢印Aのように排気ガスが滑らかにプロテクタ4内に流れ込み易い。
【0030】
また、第二先端壁44には、軸線O方向後端側に向かっ
て窪んだ第二陥没部48と、当該第二陥没部48に形成され、検出素子6(
図2参照)が外部から目視出来ないように第二周壁43の内面に向かって開口した第二開口部49とが形成されている。第二開口部49は、内部に入り込んだ水滴や排気ガスを排出するための排出口である。
図3に示すように、第二陥没部48は、第二先端壁44に二本の平行な切れ目を入れて内側に押し込んだ形状に形成され、当該二本の平行な切れ目部分が各々第二開口部49,49となっている。
図3に示すように、プロテクタ4を軸線O(
図2参照)に沿って見たときに、第二開口部49は、第一開口部47と当該第一開口部47と隣接する他の第一開口部47との間に向かって開口している。
【0031】
また、
図5に示すように、プロテクタ4を軸線O(
図2参照)に沿って見たときに、前記軸線Oからヒータ7(
図2参照)と検出素子6との接触箇所68へ向かう方向(
図5の矢印B)は、当該軸線Oから第一開口部47と当該第一開口部47に隣接する他の第一開口部47との間に向かう方向(
図5の矢印B)と同じ方向になっている。また、軸線Oからヒータ7(
図2参照)と検出素子6との接触箇所68へ向かう方向(
図5の矢印B)は、当該軸線Oから第二開口部49へ向かう方向(
図5の矢印C)とずれている。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態のガスセンサ1では、プロテクタ4は、大径部40及び小径部45を有する一重構造である。これにより、従来のような二重構造を有するプロテクタに対して構造が簡易であり、組み立ての工数も削減できると共に、コストも低くすることができる。また、このプロテクタ4は、第一周壁41及び第二周壁43には、開口部が無く、第一先端壁42に設けた第一陥没部46や、第二先端壁44に設けた第二陥没部48に、それぞれ第一開口部47、第二開口部49が設けられている。つまり、排気ガスの流れの方向(軸線O方向に垂直な径方向)に沿ってプロテクタ4の開口がなく、排気ガスの流れの方向に交わる方向(軸線O方向)に開口がある。このため、排気ガスが流れ方向を変えることなく検出素子6に到達することがなく、水滴が検出素子6に付着することを抑制できる。また、第一開口部47は、第一周壁41の内面に向かってのみ開口するように、第一陥没部46に設けられているので、第一開口部47から水滴が浸入した場合でも、水滴が第一周壁41の内面に付着し、検出素子6の先端部64に水滴が付着することを抑制できる。他方、第二開口部49は、検出素子6が外部から目視出来ないように第二周壁43の内面に向かって開口するように、第二陥没部48に設けられているので、第二開口部49から水滴が浸入した場合でも、水滴が第二周壁43の内面に付着し、検出素子に水滴が付着することを抑制できる。
【0033】
また、第二周壁43は円筒形に形成され、検出素子6は円柱状に形成され、第二周壁43の内径が検出素子6の外
径よりも大きくしている。この場合には、第一先端壁42に形成される第一陥没部46及び第一開口部47は、検出素子6よりも径方向外側に配置されるので、第一開口部47から浸入した水滴が検出素子6に付着することをさらに抑制できる。
【0034】
また、プロテクタ4を軸線O(
図2参照)に沿って見たときに、第二開口部49は、第一開口部47と当該第一開口部47と隣接する他の第一開口部47との間に向かって開口している。この場合には、第一開口部47の開口方向と第二開口部49の開口方向が同方向でなく、ガスセンサを排気管に配置した際に、排気ガスの上流側に第一開口部47及び第二開口部49が並んで配置されることがなく、水滴がプロテクタ4内に入りにくい。
【0035】
例えば、
図5に示す回転角度にガスセンサ1が排気管に固定され、矢印D方向から排気ガスが流れた場合には、矢印D方向側に第一開口部47が設けられているが、第二開口部49は、矢印C方向に向いており、矢印D方向に向かって第一開口部47及び第二開口部49が並んで配置されることがなく、水滴がプロテクタ4内に浸入しにくい。また、
図6又は
図7に示す回転角度にガスセンサ1が排気管に固定され、
図6に示す矢印E方向や
図7に示す矢印F方向から排気ガスが流れた場合においても、
図5と同様に、矢印E、F方向に向かって第一開口部47及び第二開口部49が並んで配置されることがない。
図6においては、矢印E方向側に、第一開口部47及び第二開口部49の両者が配置されていない。また、
図7においては、矢印F方向側に、第二開口部49が配置されるものの、第一開口部47は配置されていない。従って、水滴がプロテクタ4内に浸入しにくい。
【0036】
また、プロテクタ4を軸線O(
図2参照)に沿って見たときに、前記軸線Oからヒータ7(
図2参照)と検出素子6との接触箇所68へ向かう方向(
図5の矢印B)は、第一開口部47と当該第一開口部47と隣接する第一開口部47との間を向いているので、温度の高くなる検出素子6の接触箇所68と第一開口部47とが対向しない。従って、第一開口部47から浸入した水滴の一部が検出素子6に到達したとしても、検出素子6にクラックや割れが生じることを抑制できる。また、プロテクタ4を軸線O(
図2参照)に沿って見たときに、前記軸線Oからヒータ7(
図2参照)と検出素子6との接触箇所68へ向かう方向(
図5の矢印B)と、前記軸線Oから第二開口部49へ向かう方向(
図5の矢印C)とは、同じ方向に向かっておらず、ずれているので、第二開口部49から浸入した水滴の一部が検出素子6に到達したとしても、検出素子6にクラックや割れが生じることを抑制できる。
【0037】
尚、本発明は、上記実施の形態に限られず、各種の変形が可能である。例えば、第一陥没部46及び第一開口部47は、6個に限られず、5個、8個等任意の個数設ければよい。
【符号の説明】
【0038】
1 ガスセンサ
3 外筒
4 プロテクタ
5 主体金具
6 検出素子
7 ヒータ
40 大径部
41 第一周壁
42 第一先端壁
43 第二周壁
44 第二先端壁
45 小径部
46 第一陥没部
47 第一開口部
48 第二陥没部
49 第二開口部