特許第5722834号(P5722834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722834
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】入力ペン
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20150507BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
   G06F3/044 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-152780(P2012-152780)
(22)【出願日】2012年7月6日
(65)【公開番号】特開2014-16728(P2014-16728A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(73)【特許権者】
【識別番号】512256292
【氏名又は名称】弘祺國際股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕二郎
(72)【発明者】
【氏名】陳 萱柏
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/096696(WO,A2)
【文献】 登録実用新案第3169005(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0262637(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/002616(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/027401(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/086874(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも検出装置に対する接触面を導電性の材料により形成するとともに該接触面を押圧されて内方へ弾性的に変形する押圧変形部と、内方へ変形した際の前記押圧変形部の内面を受ける受部と、前記押圧変形部と前記受部との間に設けられた空間と、前記押圧変形部及び前記受部の後方側に接続された軸筒と、前記受部を受けるようにして前記軸筒に固定された芯材と、を具備して、検出装置に情報を入力する入力ペンにおいて、
前記受部は、弾性材料からなり、その前端側に、前方へ突出するとともに最前端部まで同じ内外径で連続する円筒状の筒部を有し、
前記芯材は、硬質材料からなり、前端側が前記筒部に対し内側から嵌り合う筒状又は軸状に形成されるとともに、その最前端部を前記筒部の最前端部よりも後方側に配置し、
前記押圧変形部は、内方へ変形した際に、前記筒部の最前端部における外周縁に当接するように設けられていることを特徴とする入力ペン。
【請求項2】
前記空間は、前記押圧変形部の内面と、前記筒部の外周面及び前端面との間に確保されていることを特徴とする請求項1記載の入力ペン。
【請求項3】
前記押圧変形部は、弾性を有する材料からなる弾性部と、該弾性部を覆って前記接触面を形成する導電性繊維部とを具備し、前記軸筒の前端側に、前記導電性繊維部を、軸筒径方向の内側と外側から挟む内側挟持部と外側挟持部とを設け、前記内側挟持部と前記外側挟持部とのうち、その一方又は双方に、多数の凹凸を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の入力ペン。
【請求項4】
前記押圧変形部は、弾性を有する材料からなる弾性部と、該弾性部を覆って前記接触面を形成する導電性繊維部とを具備し、
前記芯材は、前記受部の前記筒部内面を内側から受ける前側筒部と、該前側筒部の後側に接続されるとともに該前側筒部よりも大径の大径筒部と、該大径筒部の後側に接続されるとともに該大径筒部よりも小径の後側筒部とから一体に構成され、
前記導電性繊維部は、前記弾性部を覆うとともに、その後端側が、前記後側筒部に覆い被せられ、前記大径筒部と前記後側筒部の間の角部分に塗布される接着剤により、前記大径筒部の後端面から前記後側筒部の外周面に跨る範囲に接着されていることを特徴とする請求項1又は2記載の入力ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端側部分を接触させて情報を入力する入力ペンに関し、特に、静電容量型位置検出装置用に対し位置情報等を入力するのに好適な入力ペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やタブレットPC等のディスプレイには、静電容量型位置検出装置(タッチパネルと称される場合もある)が多く用いられている。この静電容量型位置検出装置に対する入力操作は、通常、指先によって行われるが、ネイルアート等のために爪先が静電容量型位置検出装置に当接して入力し難かったり、手袋の装着や指先の乾燥等に起因して入力ができなかったりする場合がある。そこで、軸筒の先端側に導電性ゴムを装着してなる入力ペンが用いられている。
【0003】
ところで、前述した従来の静電容量型位置検出装置用の入力ペンでは、導電性ゴムが硬く、タッチ感触を損ねてしまったり、傾けた場合等に接触面積を確保できず良好な反応が得られなかったり等の課題を有する。
そこで、例えば、特許文献1に記載される発明では、静電容量型位置検出装置に接触させるための接触部材(5)を薄肉な半球状に形成し、この接触部材(5)をその後方側から真鍮製の芯体(3)によって支持するとともに接触部材(5)と芯体(3)の先端との間に中空部(5c)を確保して、接触部材(5)の変形性を向上している。
【0004】
しかしながら、前記従来技術によれば、入力ペンにより静電容量型位置検出装置(タッチパネル)を押すタップ操作の際に、操作者が押圧力を強くかけすぎた場合や、強く当てるようにしてタップ操作した場合等に、接触部材(5)が比較的大きく変形し、その変形した接触部材(5)の内面が真鍮製の芯体(3)に強くぶつかり、タップ操作の操作感触を損ねてしまうおそれがある。さらに、接触部材(5)の内面が、真鍮製の芯体(3)にぶつかった際の衝撃により、静電容量型位置検出装置等の機器を損傷させてしまう可能性もある。
また、静電容量型位置検出装置との接触部分にゴムを用いる構造であるため、接触部材(5)を静電容量型位置検出装置に押し付けたままスライドさせるドラッグ操作や、接触部材(5)を静電容量型位置検出装置に接触させてはらうようにして引き離すフリック操作をした場合に、ゴム製の接触部材(5)が滑り難く、操作性が損なわれてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4840891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来事情に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ソフトで良好なタッチ感触を得ること、操作感触を向上すること、静電容量型位置検出装置に対する衝撃を緩和すること等、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための一手段は、少なくとも検出装置に対する接触面を導電性の材料により形成するとともに該接触面を押圧されて内方へ弾性的に変形する押圧変形部と、内方へ変形した際の前記押圧変形部の内面を受ける受部と、前記押圧変形部と前記受部との間に設けられた空間と、前記押圧変形部及び前記受部の後方側に接続された軸筒と、前記受部を受けるようにして前記軸筒に固定された芯材と、を具備して、検出装置に情報を入力する入力ペンにおいて、前記受部は、弾性材料からなり、その前端側に、前方へ突出するとともに最前端部まで同じ内外径で連続する円筒状の筒部を有し、前記芯材は、硬質材料からなり、前端側が前記筒部に対し内側から嵌り合う筒状又は軸状に形成されるとともに、その最前端部を前記筒部の最前端部よりも後方側に配置し、前記押圧変形部は、内方へ変形した際に、前記筒部の最前端部における外周縁に当接するように設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、ソフトで良好なタッチ感触を得ること、操作感触を向上すること、静電容量型位置検出装置に対する衝撃を緩和すること等、本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る入力ペンの一例を示す全体図である。
図2】同入力ペンの要部断面図である。
図3】同入力ペンを静電容量型位置検出装置に押し付けて変形させた状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態の第一の特徴は、少なくとも検出装置に対する接触面を導電性の材料により形成するとともに該接触面を押圧されて内方へ弾性的に変形する押圧変形部と、内方へ変形した際の前記押圧変形部の内面を受ける受部と、これら押圧変形部及び受部の後方側に接続された軸筒とを具備して、検出装置に情報を入力する入力ペンにおいて、前記受部は、前記押圧変形部の内面を受けて弾性的に変形するように形成されている。
この構成によれば、押圧変形部は、静電容量型位置検出装置に押し付けられると、内方へ弾性変形する。すると、受部が、内方へ変形した際の押圧変形部の内面を受けて弾性的に変形する。よって、変形した押圧変形部が、剛性を有する芯材等に直接当接することがなく、ソフトで良好なタッチ感触を得ることができ、ひいては、タップ操作の際の操作感触を向上するとともに、静電容量型位置検出装置に対する衝撃を緩和することができる。
【0011】
第二の特徴としては、より良好なタッチ感触を得るために、前記受部を、前記押圧変形部よりも硬い弾性材料により形成した。
【0012】
第三の特徴としては、前記押圧変形部と前記受部との間に空間を設け、前記押圧変形部が内方へ変形した際に前記空間が狭まって前記押圧変形部の内面が前記受部に当接するようにした。
この構成によれば、押圧変形部がより変形し易くすくなるため、タッチ感触をより向上できる上、比較的広い接触面積を確保できるので静電容量型位置検出装置を良好に反応させることができる。
【0013】
第四の特徴としては、前記押圧変形部は、弾性を有する材料からなる弾性部と、該弾性部を覆って前記接触面を形成する導電性繊維部とを具備してなる。
この構成によれば、静電容量型位置検出装置に接触しスライドした際の摩擦抵抗を、導電性繊維部により軽減することができ、ひいては、ドラフト操作やフリック操作の際の操作感触及び操作性を著しく向上することができる。
【0014】
また、更に好ましい態様としては、押圧変形部の変形及び弾性的な復元を良好に行うために、前記押圧変形部と前記受部との間の前記空間を外気に連通させる。
【0015】
また、更に好ましい態様としては、前記受部が軸筒側へ沈み込んでしまうようなことを防ぐために、前記軸筒には、前記受部を受けるようにして、硬質材料からなる芯材を固定する。
【0016】
また、更に好ましい態様としては、前記受部の変形を容易に行うために、前記受部を筒状に形成し、その端縁部分によって前記押圧変形部の内面を受けるようにする。
【0017】
また、更に好ましい態様としては、前記受部の変形性を損ねないように、前記芯材は、筒状の前記受部の内面を内側から受ける筒状又は軸状に形成され、その前端部を、前記受部の前端部よりも後方側に配置している。
【0018】
また、更に好ましい態様としては、導電性繊維が容易に外れることのないように、前記軸筒の前端側に、前記導電性繊維を、軸筒径方向の内側と外側から挟む内側挟持部と外側挟持部とを設けた。
【0019】
また、更に好ましい態様としては、導電性繊維の固定をより頑強にするために、前記内側挟持部と前記外側挟持部とのうち、その一方又は双方に、多数の凹凸を形成した。
【0020】
次に、上記形態を具体化した好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
この入力ペン1は、図1及び図2に示すように、軸筒10と、該軸筒10の前端側に設けられて外方から押圧された際に内方へ弾性的に変形する押圧変形部20と、内方へ変形した際の押圧変形部20の内面を受ける受部30と、受部30をその内方側から受ける芯材40と、押圧変形部20及び芯材40を軸筒10の前端側に接続する接続部材50と、軸筒10の後端側に設けられた筆記部60とを具備し、押圧変形部20の外表面を静電容量型位置検出装置の検出面a(図3参照)に接触させる位置情報等を入力する。
なお、本明細書において「前」とは、軸筒10の軸方向において押圧変形部20を有する方向側(図1によれば下側)とし、「後」とは、その逆側(図1によれば上側)とする。
【0022】
軸筒10は、図示例によれば、外周にクリップ部11aを有する第一の軸体11と、第一の軸体11の後端部に回転可能に接続された第二の軸体12とから筒状に形成されている。
第一及び第二の軸体11,12は、それぞれ略円筒状に形成され、第一の軸体11内には、押圧変形部20及び受部30等を支持する構造を有し、第二の軸体12内には、該第二の軸体12の回転によって筆記部60を出没させる構造を有する。
これら第一及び第二の軸体11,12は、本実施例によれば、導電性の金属材料(例えば、真鍮等)によって形成される。
なお、軸筒10の他例としては、単一の筒状体からなる態様や、3以上の筒状体からなる態様とすることが可能である。
【0023】
押圧変形部20は、弾性を有する材料からなる弾性部21と、該弾性部21の外表面を覆って静電容量型位置検出装置に対する接触面を形成する導電性繊維部22とを具備してなり、軸筒10と同芯状となるように、当該入力ペン1の最前端部に設けられる。
【0024】
弾性部21は、エラストマー等(合成ゴムを含む)の弾性を有する材料から、薄肉な略凸状に形成され、その内面と後述する受部30との間には、空間Sが確保される。
この弾性部21の形状をより詳細に説明すれば、弾性部21の前半部は、内部が中空の半球状に形成され、同弾性部21の後半部は、円筒状に形成される。そして、弾性部21の最後端部の内縁には、後述する受部30を嵌め合せるように拡径された環状の段部21aを有する。
また、この弾性部21の厚み及び硬度は、図3に示すように、押圧変形部20が静電容量型位置検出装置の検出面aに押し付けられた際に、容易に変形し、且つ、押圧変形部20と検出面aとの間に、静電容量型位置検出装置を反応させるための平坦な接触面積を確保するように、適宜に調整されている。
なお、本実施例の入力ペン1では、後述する導電性繊維部22を導電性としているため、弾性部21は導電性材料でなくてもよい。
【0025】
導電性繊維部22は、導電性を有する繊維(又は糸)を織ることによってシート状に形成され、弾性部21を覆うとともに、その後端側が後述する芯材40の後部に止着されている。
この導電性繊維部22を構成する繊維は、例えば、銅やアルミニウム、黄銅等の導電性金属材料や、カーボン、導電性ポリマー等の導電性材料を含む繊維や、前記導電性材料によってコーティングされた繊維とすればよい。
【0026】
受部30は、押圧変形部20(詳細には弾性部21)よりも硬い弾性材料からなり、前側の筒部31と、該筒部後端側の鍔部32とから一体に形成され、押圧変形部20の内面に対し空間Sを介して該押圧変形部20と同芯状に設けられる。
この受部30の材質は、上述した弾性部21の材料と略同等のものであって、且つ弾性部21よりも硬度の大きい弾性材料とすればよい。前記硬度は、内方へ変形した際の弾性部21の内面をソフトに受けてタッチ感触を良好にするように適宜選定される。この受部30も、特に導電性を有する材料でなくとも構わないが、導電性ゴムから形成してもよい。
【0027】
筒部31は、押圧変形部20と略同芯の円筒状に形成され、その前端部と外周面とを、弾性部21内面から離して配置している。
鍔部32は、筒部31よりも外径の大きい円環状に形成され、その外周部を、弾性部21における後端側内面の段部21aに嵌め合せている。また、図示例によれば、この鍔部32の後端面と弾性部21の最後端面とは略面一である。
【0028】
芯材40は、本実施例では導電性金属材料(例えば、真鍮や、銅、アルミニウムや、これらを含む合金等)からなり、受部30の筒部31内面を内側から受ける前側筒部41と、該前側筒部41の後側に接続されるとともに前側筒部41よりも大径の大径筒部42と、該大径筒部42の後側に接続されるとともに大径筒部42よりも小径の後側筒部43とから一体に構成される。
【0029】
前側筒部41は、受部30の筒部31に対し内側から嵌り合う円筒状に形成され、その前端部を、受部30の前端部よりも後方側に配置している。この構成によれば、該前側筒部41の前端側の部分を、図3に示すように、求心方向へ変形した際の筒部31によって容易に弾性変形させることができる。
【0030】
大径筒部42は、その外周面に、所謂ローレット加工により多数の凹凸を有し、この凹凸を、後述する接続部材50との間で導電性繊維部22を挟む内側挟持部42aとしている。この凹凸状の内側挟持部42aによれば、導電性繊維部22との摩擦抵抗を大きくして、導電性繊維部22が容易に抜き取れないようにすることができる。
なお、内側挟持部42aは、図示例によれば、大径筒部42の外径部分の前面に前記多数の凹凸を形成してなるが、他例としては、同外径部分の一部分に凹凸を形成した態様や、同外径部分に雄ネジ状の凹凸を形成した態様等とすることも可能である。
【0031】
また、後側筒部43は、大径筒部42から後方へ突出するようにして設けられる。この後側筒部43には、導電性繊維部22の後端側部分が覆い被せられる。導電性繊維部22の後端側部分は、後側筒部43の最後端部を覆った状態で、大径筒部42の後端面から後側筒部43外周面に跨る範囲に接着される。この際、接着剤44は、大径筒部42と後側筒部43の間の角部分に塗布される。この接着構造によれば、接着剤44を前記角部分に集めて、接着剤44の飛散を防止できる上、接着剤44による接着効果を良好に得ることができる。
【0032】
そして、これら前側筒部41,大径筒部42及び後側筒部43内面の貫通孔40aは、上述した空間Sを軸筒10内の空間へ連通している。この空間は、軸筒内の筆記部出没機構と軸筒10内面との間等を通って、軸筒10後端(図1の上端)等を介して外気に連通されている。
したがって、押圧変形部20が押圧され内方へ変形した際、押圧変形部20内の空間Sの空気は、当該入力ペン1の外部に排出される。このため、押圧変形部20の変形を容易に行うことができる。また、押圧変形部20が元の形に復元する際も、空間Sに外気を取り入れて、その復元を速やかに行うことができる。
【0033】
接続部材50は、軸筒10と略同外径の円筒状の硬質部材であり、軸筒10の前端部に、嵌合や螺合等の接続手段によって接続されている。
この接続部材50の材質は、本実施例によれば、大径筒部42同様に、導電性金属材料(例えば、真鍮や、銅、アルミニウムや、これらを含む合金等)としている。
この接続部材50前側の円筒状の内面は、芯材40外面の内側挟持部42aとの間に導電性繊維部22を挟む外側挟持部50aとして作用する。
また、接続部材50における外側挟持部50aよりも後側の内面は、若干拡径された段部50bとなっており、この段部50bは、導電性繊維部22に覆われた大径筒部42の後端面を受けている。
【0034】
筆記部60は、図示例によれば、ボールペンリフィールのチップである。この筆記部60は、軸筒10内に設けられる出没機構(図示せず)によって、軸筒10の後端から出没する。前記出没機構は、図示例によれば、第一の軸体11に相対する第二の軸体12の回転操作により筆記部60を出没する機構としているが、他例としては、ノック操作により筆記部60を出没する機構等とすることも可能である。
【0035】
次に上記入力ペン1における前部側の構造の組立手順について説明する。
先ず、芯材40の前端側に受部30が装着される。次に、芯材40及び受部30に対し、弾性部21が被せられるようにして環状に圧入される。そして、弾性部21及び前側筒部41を覆うようにして導電性繊維部22が装着される。
導電性繊維部22の後端側は、上述したようにして芯材40の後部側に接着される。この際は、接着剤44は、導電性繊維部22を装着する前に芯材40に塗布してもよいし、導電性繊維部22を装着した後に、導電性繊維部22に染み込ませるようにしてもよい。
次に、外部が導電性繊維部22によって覆われた芯材40を、接続部材50の前端側の内周面に圧入する。
そして、接続部材50を軸筒10の前端側に装着する。なお、接続部材50は、予め軸筒10に装着しておいても構わない。
【0036】
次に、上記構成の入力ペン1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
静電容量型位置検出装置に対するタップ操作や、ドラッグ操作、フリック操作等のために、図3に示すように、押圧変形部20を検出面aに押し付ける、あるいは押し当てると、押圧変形部20は、内部の空間Sを収縮させるようにして内方側へ変形する。この際、空間Sの空気は、芯材40内の貫通孔40a及び軸筒10内の空間を通って軸筒10外へ排出されるため、比較的軽い力で押圧変形部20の変形が促進される。
そして、変形した押圧変形部20は、その内面を、受部30の前端に当接する。受部30は、押圧変形部20を受けて、筒部31の前端側部分を求心方向へ凹ませるよにして容易に変形する。
よって、押圧変形部20を変形させた際、該押圧変形部20の内面は受部30に当接するが、受部30が仮に硬質材料である場合と比較し、その当接の際の違和感が少なく、その当接の際の衝撃も小さい。このため、ソフトで良好なタッチ感触及び操作感触を得ることができる上、静電容量型位置検出装置に対する衝撃を緩和して、静電容量型位置検出装置の損傷の可能性を低減できる。
しかも、押圧変形部20の前端部が繊維(導電性繊維部22)で覆われているため、静電容量型位置検出装置の検出面aに接触しスライドした際の摩擦抵抗を軽減することができ、ひいては、ドラフト操作やフリック操作の際の操作感触及び操作性を著しく向上することができる。



【0037】
なお、上記実施例によれば、検出面aに対する摩擦抵抗を軽減するように弾性部21の表面を導電性繊維部22で覆って押圧変形部20を構成したが、この押圧変形部20の他例としては、単層の導電性弾性材料(例えば、導電性ゴム等)からなる態様や、三層以上の適宜材料からなる態様等とすることも可能である。
【0038】
また、上記実施例によれば、弾性部21の全外表面を導電性繊維部22により覆って押圧変形部20を構成したが、この押圧変形部20は、少なくとも静電容量型位置検出装置の検出面aに対する接触面を、導電性を有する材料により形成していればよく、他例としては、弾性部21の一部を導電性繊維部22により覆った態様や、弾性部21の一部を導電性材料により形成した態様等とすることも可能である。
【0039】
また、上記実施例によれば、特に好ましい態様として受部30を押圧変形部20の弾性部21よりも硬い弾性材料から形成したが、この受部30の他例としては、弾性部21と同じ硬さ(硬度)の弾性材料から形成したり、弾性部21よりも軟らかい(硬度の小さい)弾性材料から形成することも可能である。
さらに、受部30の他例としては、コイルスプリングや、板バネによって弾性部21の内面を弾性的に受ける態様とすることも可能である。
【0040】
また、上記実施例によれば、特に好ましい態様として押圧変形部20と受部30との間に空間Sを設けたが、他例としては、空間Sを省いて、押圧変形部20の内面を直接受部30が受ける態様とすることも可能である。
【0041】
また、上記実施例によれば、通常の筆記角度で用いられた場合に受部30が良好に変形するように、受部30の前端側を筒状に形成したが、他例としては、受部30の前端側を弾性部21の内面にならう半球状に形成したり、円柱状や他の形状に形成することも可能である。
【0042】
また、上記実施例によれば、導電性繊維部22の止着強度を向上し且つ製造性も良好な一例として、芯材40外周の内側挟持部42aのみに凹凸を形成したが、他例としては、導電性繊維部22の止着強度をより向上するために接続部材50内面の外側挟持部50aにも凹凸を形成したり、あるいは、製造工数低減等のために内側挟持部42a及び外側挟持部50aの双方の凹凸を省いたり等することも可能である。
【0043】
また、上記実施例では、導電性繊維部22、芯材40、接続部材50及び軸筒10を導電性材料により形成して、導電性繊維部22から軸筒10までの導通性を確保したが、静電容量型位置検出装置を良好に反応させることができるようであれば、導電性繊維部22以外の部位の材質を導電性材料以外の材料から形成することも可能である。
【0044】
また、上記実施例では、導電性繊維部22を十分な耐久性(引張強度や耐摩耗性等を含む)を有する材料とすることで、押圧変形部20については基本的に部品交換不要としているが、他例としては、押圧変形部20等を部品交換可能に構成することも可能である。この場合の一例としては、接続部材50から前側の構成(すなわち、押圧変形部20、受部30、芯材40及び接続部材50)を一体の構成とし、接続部材50を軸筒10の前端に対し、例えば螺合や嵌合等の着脱可能な接続手段によって、接続すればよい。
【0045】
また、上記実施例の入力ペン1は、静電容量型位置検出装置用として構成したが、この入力ペン1を、例えば抵抗膜型の位置検出装置等、静電容量型位置検出装置以外の検出装置に用いることも可能である。さらに、入力ペン1の先端形状、硬度等を適宜に変更して、特に抵抗膜型に対し入力し易くしたり、静電容量型と抵抗膜型の何れに対しても入力し易くしたり等することも可能である。
【0046】
また、上記実施例の入力ペン1では、後部側にボールペン用リフィールを具備したが、他例としては、ボールペン用リフィールに換えて、シャープペンシル用リフィールを具備した態様や、サインペンや万年筆の筆記部を具備した態様、複数のボールペンリフィール及び/又はシャープペンシル用リフィールを具備して多機能筆記具(多色筆記具)とした態様、前記のような何れの筆記部も具備しない態様等することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:入力ペン 10:軸筒
20:押圧変形部 21:弾性部
22:導電性繊維部 30:受部
40:芯材 42a:内側挟持部(凹凸)
50:接続部材 50a:外側挟持部
S:空間
図1
図2
図3