特許第5722849号(P5722849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722849車両用電力線通信システムおよび受信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722849
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】車両用電力線通信システムおよび受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/00 20060101AFI20150507BHJP
   H02J 17/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H04B5/00 Z
   H02J17/00 B
   H02J17/00 X
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-193092(P2012-193092)
(22)【出願日】2012年9月3日
(65)【公開番号】特開2014-50016(P2014-50016A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 帆
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 友宏
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 佳枝
(72)【発明者】
【氏名】高岡 彰
【審査官】 高野 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−085890(JP,A)
【文献】 特開2004−193010(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/054179(WO,A1)
【文献】 特開平11−120303(JP,A)
【文献】 特開2013−026831(JP,A)
【文献】 特開2013−135379(JP,A)
【文献】 特開2013−165383(JP,A)
【文献】 特開平10−84303(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/011686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00
H02J 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部で芯線が結合してループ状に形成された一対のツイスト線(4)を電力線およびデータ通信線として用い前記一対のツイスト線に高周波信号を出力して電力信号およびデータ変調信号をスレーブに送信するマスタ(2)と、
前記一対のツイスト線の通電電流に応じて当該一対のツイスト線(4)に発生する電磁界を電磁誘導結合して前記一対のツイスト線を通じて電力信号を受信するループ状の第1開口アンテナ(3j)を備え、前記第1開口アンテナは前記一対のツイスト線の複数の撚部間の開口領域に対向した開口領域を備え、当該開口領域を通じて受信した電力信号により動作するスレーブ(3A)と、を備え、
前記スレーブは、前記第1開口アンテナの開口領域を通じて受信した電力信号をモニタする電力モニタ部(3g)と、
前記第1開口アンテナの開口領域を通じて受信した電力信号が前記電力モニタ部により検出されるモニタ電力に基づいて、前記一対のツイスト線を通じて受信される他の動作用電力を用いるか否かを判定する判定部(3a)と、を備えることを特徴とする車両用電力線通信システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記電力モニタ部のモニタ電力が予め定められた閾値電力未満になることを条件として他の動作用電力を用いると判定することを特徴とする請求項1記載の車両用電力線通信システム。
【請求項3】
前記スレーブは、前記一対のツイスト線の通電電流に応じて当該一対のツイスト線に発生する電磁界を電磁誘導結合して前記一対のツイスト線を通じてデータ変調信号を受信するループ状の第2開口アンテナ(3k)を備え、
前記判定部が他の動作用電力を用いると判定したときに、前記第1開口アンテナにより受信される電力信号に代えて、前記第2開口アンテナから受信した信号を前記他の動作用電力として用いるように設定する第1設定部(3a)と、を具備することを特徴とする請求項1または2記載の車両用電力線通信システム。
【請求項4】
前記スレーブは、前記一対のツイスト線の通電電流に応じて当該一対のツイスト線に発生する電磁界を電磁誘導結合して前記一対のツイスト線を通じてデータ変調信号を受信するループ状の第2開口アンテナ(3k)を備え、
前記判定部が他の動作用電力を用いると判定したときに、前記第1開口アンテナにより受信される電力信号に加えて、前記第2開口アンテナから受信した信号を前記他の動作用電力として用いるように設定する第1設定部(3a)と、を具備することを特徴とする請求項1または2記載の車両用電力線通信システム。
【請求項5】
前記スレーブは、前記第1開口アンテナから受信した電力信号を予め蓄電する第1蓄電装置(3n)と、
前記判定部が他の動作用電力を用いると判定したときに、前記第1蓄電装置に蓄電された電力信号を前記他の動作用電力として用いるように設定する第2設定部(3a)と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載の車両用電力線通信システム。
【請求項6】
前記スレーブは、前記一対のツイスト線の通電電流に応じて当該一対のツイスト線に発生する電磁界を電磁誘導結合して前記一対のツイスト線を通じてデータ変調信号を受信するループ状の第2開口アンテナ(3k)と、前記第2開口アンテナから受信した信号を予め電力信号として蓄電する第2蓄電装置(3o)とを備え、
前記判定部が他の動作用電力を用いると判定したときに、前記第2蓄電装置に蓄電された電力信号を前記他の動作用電力として用いるように設定する第3設定部(3a)と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載の車両用電力線通信システム。
【請求項7】
前記スレーブは、前記一対のツイスト線の通電電流に応じて当該一対のツイスト線に発生する電磁界を電磁誘導結合して前記一対のツイスト線を通じてデータ変調信号を受信するループ状の第2開口アンテナ(3k)と、前記第1および第2開口アンテナ(3j及び3k)から受信した信号を予め電力信号として蓄電する第3蓄電装置(3p)を備え、
前記判定部(3a)が他の動作用電力を用いると判定したときに、前記第3蓄電装置(3p)に蓄電された電力信号を前記他の動作用電力として用いるように設定する第4設定部(3a)と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載の車両用電力線通信システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記電力モニタ部のモニタ電力が変動し予め定められた閾値電力以下になることが所定回数以上繰り返すことを条件として他の動作用電力を用いると判定することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の車両用電力線通信システム。
【請求項9】
前記スレーブは、前記判定部(3a)により他の動作用電力を用いると判定されたときに前記マスタに対し前記スレーブへの供給電力が低いことを応答する応答手段(3a)を備え、
前記マスタは、前記応答手段により供給電力が低いと応答されたときには前記高周波信号の電力信号のキャリア周波数を変更する変更制御手段(2a)を備えることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の車両用電力線通信システム。
【請求項10】
前記スレーブは、前記判定部により他の動作用電力を用いると判定されたときに前記マスタに対し前記スレーブへの供給電力が低いことを応答する応答手段(3a)を備え、
前記マスタは、前記応答手段により供給電力が低いと応答されたときには前記高周波信号の電力信号の出力を上昇させるように出力制御する出力制御手段(2a)を備えることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の車両用電力線通信システム。
【請求項11】
前記スレーブは、前記判定部により他の動作用電力を用いると判定されたときに前記マスタに対し前記スレーブへの供給電力が低いことを応答する応答手段(3a)を備え、
前記マスタは、前記応答手段により供給電力が低いと応答されたときには前記一対のツイスト線との間の整合処理を行う整合制御手段(2a)を備えることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の車両用電力線通信システム。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかに記載のスレーブを備えることを特徴とする受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通信機器が電力線を用いて通信を行う車両用電力線通信システムおよび受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両内に配置された複数のECU(Electronic Control Unit)は、相互に通信を行うことに応じて車両内の各種制御を円滑に行っている。このため、電力線通信(PLC:Power Line Communication)システムの導入が検討されている。この電力線通信システムは、信号を高周波キャリアに重畳して伝送して通信する技術である。このような技術の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1の技術によれば、平行二線路からなる平衡給電線が、ループ状に形成されている結合器に近接して移動体に取り付けられている。これにより、移動体と平衡給電線との間で電磁誘導結合できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−45327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来技術を用いて電磁誘導結合を行い、電力又は信号通信を行うと、電力又は信号を授受する部分(結合部)以外での漏れ磁束が多いことが発明者らにより明らかになっている。また、このような技術を採用しても、例えば伝送路特性、システムの周囲環境等が変化したときなどには、通信品質が低下し高速通信の維持が困難になる。
【0005】
本発明の目的は、電力線を用いて送信側と受信側の電磁誘導結合を強力にし、通信品質及び高速通信を極力維持できるようにした車両用電力線通信システムおよび受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、マスタは端部で芯線が結合してループ状に形成された一対のツイスト線を電力線およびデータ通信線として用い前記一対のツイスト線に高周波信号を出力して電力信号およびデータ変調信号をスレーブに送信する。第1開口アンテナは一対のツイスト線の通電電流に応じて一対のツイスト線を通じて電力信号を受信する。第1開口アンテナは一対のツイスト線の複数の撚部間の開口領域に対向した開口領域を備え、スレーブは開口領域を通じて受信した電力信号により動作する。
【0007】
スレーブの電力モニタ部は、第1開口アンテナの開口領域を通じて受信した電力信号をモニタし、判定部は当該モニタ電力に基づいて一対のツイスト線から受信される他の動作用電力を用いるか否かを判定する。スレーブの第1開口アンテナは、一対のツイスト線の複数の撚部間の開口領域に対向した開口領域を備えるため、送信側と受信側の電磁誘導結合を強力にできる。しかも、一対のツイスト線を用いて電磁誘導結合しているため漏れ磁束を少なくできる。
【0008】
例えば、給電効率を高めるには急峻でQ値の高い周波数特性を備えた開口アンテナ等を使用すると良い。伝送路特性が変更されるなどシステムの周囲環境等が変化すると、この開口アンテナ等の周波数特性がこの影響を受けやすく当該周波数特性が変化し、マスタからスレーブに提供される電力の不足を招く可能性がある。しかし、たとえスレーブに提供される電力が不足したとしても、電力モニタ部が電力をモニタし、判定部が一対のツイスト線を通じて受信される受信信号に基づく他の動作用電力を用いるか否かを判定する。このため、スレーブが例えば動作用電力不足のときには他の動作用電力を用いて電力線通信を持続でき、通信品質及び高速通信を極力維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態を示すもので、車両に搭載される電力線通信システムを概略的に示す電気的構成図
図2】整合回路の一例を示す電気的構成図
図3】端部で芯線が結合してループ状に形成された一対のツイスト線の構造を模式的に示す斜視図
図4】給電用キャリアとデータ通信用キャリアを重畳したマスタが送信する高周波信号の周波数特性図
図5】(a)はスレーブが受信するデータ通信信号の周波数特性図、(b)はスレーブが受信する給電用キャリアの周波数特性図
図6】予備整流回路または整流回路の電気的構成例(その1)
図7】予備整流回路または整流回路の電気的構成例(その2)
図8】予備整流回路または整流回路の電気的構成例(その3)
図9】マスタの処理動作例を示すフローチャート
図10】スレーブの処理動作例を示すフローチャート
図11】通常モードにおけるスレーブ側の給電経路例を示す説明図
図12】(a)(b)は電力低下の判定例の説明図
図13】給電不足モードにおけるスレーブ側の給電経路例を示す説明図
図14】本発明の第2実施形態を示す図1相当図
図15】本発明の第3実施形態を示す図1相当図
図16】本発明の第4実施形態を示す図1相当図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図13を参照しながら説明する。図1に示す車両用電力線通信システム1は、マスタ(送信装置:マスタ側システム)2と、N個のスレーブ(受信装置:スレーブ側システム)3A…3Zを備える。マスタ2にはバッテリ(図示せず)が接続されている。このマスタ2は、バッテリ(図示せず)の電力に応じて複数のスレーブ3A…3Zに電力線を通じて電力を供給し、複数の各スレーブ3A…3Zがこれらの供給電力に応じて動作する。これらのスレーブ3A…3Zにはそれぞれセンサ又はアクチュエータからなる負荷5A…5Zが接続されている。
【0011】
マスタ2は、通信やその他の機能の制御を行う制御回路2a、高周波電力発生回路2b、変復調回路2c、重畳/分離回路2d、整合回路2eを通信機器本体(マスタ本体)2fに内蔵し、当該マスタ本体2fから送信用アンテナとなる一対のツイスト線4を接続して構成される。制御回路2aは所謂マイクロコンピュータを主として構成される。高周波電力発生回路2bは、所定周波数の高周波信号(搬送波信号)を生成し、電力信号として重畳/分離回路2dに出力する。
【0012】
変復調回路2cは、制御回路2aの制御に応じて通信周波数、変復調方式を切換可能になっており、マスタ2側の通信データを変調しデータ変調信号として重畳/分離回路2dに出力する。重畳/分離回路2dは、これらの電力の搬送波信号およびデータ変調信号をミキシングし整合回路2eに出力する。整合回路2eは、データ変調信号が重畳した電力搬送波信号(電力信号およびデータ変調信号:高周波信号)を一対のツイスト線4に送出する。
【0013】
制御回路2aは、整合回路2eに制御線を接続し、これにより整合回路2eのインピーダンス整合状態を調整制御可能になっている。また、制御回路2aは変復調回路2cに制御線を接続し、これにより、変復調回路2cのデータ変復調方式、データ通信周波数を制御可能になっている。
【0014】
図2(a)〜図2(d)は、整合回路2eの回路構成例を示している。整合回路2eは、トランス2gと当該トランス2gの一次側または/および二次側に直列または並列接続された可変容量コンデンサ2hを具備する。この整合回路2eはインピーダンス整合できれば他の回路接続形態を用いても良い。
【0015】
図3は一対のツイスト線4の構造(主に最遠端部の構造)を斜視図により示す。ツイスト線4は、車両内に設置され、マスタ本体2fの出力端子から最遠部まで所定長だけ延伸して構成される。
【0016】
図1及び図3に示すように、一対のツイスト線4はケーブル芯線の最遠端部(端部)が結合したループ状に形成されている。本願明細書内の説明では、このような端部が結合した特殊形状のツイストケーブルによる通信線を一対のツイスト線4または略してツイスト線4と定義して説明する。
【0017】
ツイスト線4は、図1に示すようにマスタ2のマスタ本体2fから撚り対線としてスレーブ3A…3Zの近傍まで延設されている。ツイスト線4は、例えばシールドが施されていないUTP(アンシールドツイステッドペア)のツイストペアケーブルであり、マスタ2による信号送信時においては、その高周波信号による通電電流で発生した隣接する撚り目(撚部に相当)4A、4B、…間の磁束が隣同士で反転し互いに打ち消しあうため、外部にノイズを出力しにくい。また、マスタ2の信号受信時においては、一対のツイスト線4は、外来電波に応じた磁束鎖交領域が少ないため、外部からの到来電波の影響を受けにくい。したがって、ノイズ発生抑制および外来ノイズ除去には好適な態様となっている。
【0018】
図1に示すように、スレーブ3A…3Zは、それぞれ、制御回路(判定部)3a、変復調回路3c、給電整合回路3d、通信整合回路(整合部)3e、整流回路3f、電力モニタ回路(電力モニタ部)3g、予備整流回路3h、セレクタ3iを内蔵している。給電整合回路3dには電力受信用の開口アンテナ3jが第1開口アンテナ相当で接続されており、通信整合回路3eにはデータ受信用の開口アンテナ3kが第2開口アンテナ相当で接続されている。
【0019】
ツイスト線4は、多数の撚り目4A…のうち、一部の撚り目4Aおよび4B間の開口領域がスレーブ3Aの開口アンテナ3jの開口領域に対向して配置されている。また、一部の撚り目4Cおよび4D間の開口領域がスレーブ3Aの開口アンテナ3kの開口領域に対向して配置されている。
【0020】
また、図1に示すように、スレーブ3B…3Zのそれぞれの開口アンテナ3jも同様に、撚り目4E−4F間、…、4I−4J間の開口領域に対向して配置されている。スレーブ3B…3Zのそれぞれの開口アンテナ3kも同様に、撚り目4G−4H間,…,4K−4L間の開口領域に対向して配置されている。この図1においては、ツイスト線4の撚り目4A、4B、…、4K、4Lの配置位置を概略的に示すため、ツイスト線4の開口領域(ツイスト線4の撚り目4A−4B間、4E−4F間、…、4I−4J間)と開口アンテナ3jの開口領域とをx方向のみ一致させて図示している。
【0021】
同様に、ツイスト線4の開口領域(ツイスト線4の撚り目4C−4D間、4G−4H間、…、4K−4L間)と開口アンテナ3kの開口領域とをx方向のみ一致させて図示している。しかし、これらは実際にはy方向にも一致しており(図3参照)、開口領域が2重に重なるように設置されている。
【0022】
したがって、ツイスト線4の各撚り目(4A、4B、…、4G、4H、…、4K、4L)間の開口領域で発生する電磁界が、スレーブ3A…3Zの各開口アンテナ3j、3kとの間で強力に電磁誘導結合する。各スレーブ3A…3Zの各開口アンテナ3j、3kは、ツイスト線4の撚り目4A−4B間、4C−4D間、…、4K−4L間の開口領域に生じる電磁界によって電力およびデータ変調信号を非接触で強力に受電、受信できる。
【0023】
図1及び図3に示したように、スレーブ3A…3Zの開口アンテナ3j、3kは円形などのループ状に成形されており、前述のツイスト線4に発生する電磁界を電磁誘導結合により受信する。したがって、スレーブ3A…3Zは、マスタ2のマスタ本体2fが送信した電力信号、データ変調信号について、それぞれ、開口アンテナ3j、3kを通じて受信できる。
【0024】
図2(e)〜図2(f)は、受信側の給電整合回路3dの等価回路の一例を示している。給電整合回路3dは、開口アンテナ3jに並列または直列に固定容量コンデンサ3lを接続して高周波の電力信号の伝送周波数帯(例えば13.56MHz帯)に整合するマッチング回路である。この固定容量コンデンサ3lに代えて可変容量コンデンサを用いても良い。
【0025】
図2(g)〜図2(h)は、受信側の通信整合回路3eの等価回路の一例を示している。通信整合回路3eは、開口アンテナ3kに並列または直列に可変容量コンデンサ3mを接続したマッチング回路である。通信整合回路3eは、制御回路3aの制御に応じて可変容量コンデンサ3mの容量値を変化させ、前述の給電周波数帯よりも高い所定周波数帯(数十MHz帯)にインピーダンスマッチングする。
【0026】
図4はマスタ2側の整合回路2eの伝達特性を示しており、図5(a)および図5(b)は、それぞれ、スレーブ3A…3Z側の通信整合回路3e、給電整合回路3dの伝達特性を示す。これらの図5(a)および図5(b)に示すように、給電用の周波数帯域(例えば13.56MHz帯)とデータ通信用の周波数帯域(数十MHz帯)に分けることで、より適切な帯域幅、伝達特性を備えた整合回路2e、給電整合回路3d、通信整合回路3eを構成できる。
【0027】
なお、データ通信速度が比較的高いため、給電用周波数帯域(13.56MHz帯)よりも高い帯域にデータ通信周波数帯域を設けた形態を示すが、データ通信速度が遅ければ給電用周波数帯域よりも低い周波数帯域にデータ通信用周波数帯域を設けても良い。
【0028】
図1に説明を戻すと、給電整合回路3dは、給電用の周波数領域に制御されているため電力用の高周波信号(電力交流信号)を高効率で受信できる。すると給電整合回路3dはこの電力交流信号を整流回路3fに出力する。
【0029】
整流回路3fは、電力交流信号を整流及び平滑化して直流電力とし当該直流電力を電力モニタ回路3g、セレクタ3iに出力すると共に、当該セレクタ3iを通じて制御回路3aに直流電力を供給し、さらに負荷5Aにも直流電力を供給する。電力モニタ回路3gは、整流回路3fが出力する直流電力の大きさを検出し、このモニタ電力データを制御回路3aに出力する。
【0030】
他方、変復調回路3cは、通常、整流回路3fからセレクタ3iを通じて供給された電力によって動作する。この変復調回路3cは、通信整合回路3eによりデータ通信用の所定周波数帯にマッチングされた開口アンテナ3kを通じてデータ変調信号を受信する。変復調回路3cは、制御回路3aにより制御された通信周波数、変復調方式を用いてデータ変調信号を復調し、当該復調されたデータに応じて負荷5Aを動作させる。制御回路3aは変復調回路3cの通信周波数、変復調方式を制御する。これによりマスタ2から各スレーブ3A…3Zに通信データを送信できる。
【0031】
逆に、スレーブ3A…3Zからマスタ2にデータ送信するときには、スレーブ3A…3Zの制御回路3aは、変復調回路3cによりデータを変調し、通信整合回路3eを通じて変調信号を開口アンテナ3kに出力し、開口アンテナ3kは電波信号として出力する。これにより各スレーブ3A…3Zは応答信号を良好に送信できる。また、各スレーブ3A…3Zが開口アンテナ3kから応答信号を送信すると、マスタ2はツイスト線4の撚り目(4C−4D、4G−4H、…、4K−4L)間の開口領域を通じて当該応答信号を非接触で受信できる。
【0032】
本実施形態では、スレーブ3A…3Z側において、開口アンテナ3jから整流回路3fを通じて給電する給電経路とは別に、開口アンテナ3kから予備整流回路3hを通じて給電する給電経路を設けている。すなわち、開口アンテナ3kはデータ通信用の周波数帯に整合されているが、本実施形態では非常時に備え、データ通信周波数帯の信号を使用し電力信号とする給電経路を設けている。
【0033】
給電用の周波数帯域はデータ通信用の周波数帯域に比較して狭く、各整合回路2e、3dや開口アンテナ4、3jを急峻な周波数特性に対応させる必要がある。このとき、マスタ側の整合回路2e、スレーブ側の給電整合回路3dを最良の特性に合わせ込んだとしても、例えば設置環境の変化等に伴い、給電周波数における開口アンテナ4、3j、整合回路2eおよび給電整合回路3dによる周波数の整合特性は影響を受けやすい。このような時に備え、データ通信周波数帯の信号を電力信号とする給電経路を設けている。
【0034】
図6図8は、予備整流回路3hの回路構成例を示すが、図6に示す予備整流回路3hは、低周波カット用コンデンサC1、及び整流ダイオードD1、D2並びに平滑コンデンサC2を備えて構成されるもので通信周波数帯の信号を直流電圧に変換して出力する。データ通信信号の振幅は給電信号の振幅よりも低くなる傾向があるため、予備整流回路3hで用いる整流ダイオードD1、D2の順方向電圧Vfを、整流回路3fで用いる整流ダイオードの順方向電圧Vfより低くすると良い。
【0035】
図7に示す予備整流回路3hは、トランスT1に低周波カット用コンデンサC3、整流ダイオードD3,D4及び平滑コンデンサC4を備えて構成されるもので、前述と同様に通信周波数帯の信号を直流電圧に変換して出力する。トランスT1の一次側巻線(一次側インダクタンスL1)と二次側巻線(二次側インダクタンスL2)の巻数比は、2次側が1次側より大きく予め調整されており、トランスT1は通信周波数の入力信号inを変圧できる。そしてその後、整流ダイオードD3、D4及び平滑コンデンサC4によって直流電圧に変換する。この場合、図6に示す回路構成に比較して電力変換効率を良好にできる。
【0036】
図8に示す予備整流回路3hは、トランスT2に低周波カット用コンデンサC5、整流ダイオードD5,D6及び平滑コンデンサC6を備えるが、ここまでは図7の回路構成と同様の構成となる。この図8に示す予備整流回路3hは、この他にも、トランスT2の二次側巻線(二次側のインダクタンスL4)と並列にコンデンサC7を接続して自励式の共振回路が構成されている。また、この自励共振回路には抵抗R1が直列接続され、この抵抗R1に通電する共振電圧をゲート(制御端子)に駆動信号として入力するNMOSトランジスタM1を備えている。
【0037】
このNMOSトランジスタM1はソースが接地されると共にドレインが一次側巻線(一次側インダクタンスL3)に直列接続されており、これによりNMOSトランジスタM1は共振電圧を一次側に通電フィードバックする構成となっている。トランスT2の二次側巻線とコンデンサC7とは共振しトランジスタM1に正帰還するため自励共振回路により出力電圧を効率良く昇圧できる。整流ダイオードD5及びD6、コンデンサC6が整流、平滑するため、図6又は図7の回路構成より効率良く昇圧直流電圧を生成できる。このような図6図8に示す回路構成を用いて通信周波数の信号を電力信号として用いることができる。なお、これらの図6図8に示す回路構成を整流回路3fに用いても良い。
【0038】
さて、スレーブ3A…3Zの制御回路3aは電力モニタ回路3gにより検出されたモニタ電力データに基づいて給電モードを通常モード、または、給電不足モード(給電調整モード)などの電力モードに切換え、スレーブ3A…3Zは通常モード又は給電不足モードなどの給電モードで動作する。このマスタ2及びスレーブ3A…3Zにおける切換動作を図9及び図10に示す。スレーブ3A…3Zの処理動作は互いに同様であるため、以下ではスレーブ3Aの動作説明を行い、他のスレーブ3B…3Zの動作説明を省略する。
【0039】
図9及び図10に示すように、マスタ2、スレーブ3A共に起動当初は通常モードで起動する(S1,T1)。スレーブ3Aの制御回路3aが初期状態で通常モードに切換えると、スレーブ3A内ではセレクタ3iにより開口アンテナ3jから給電整合回路3d、整流回路3fを通じて給電される。この通常モードのスレーブ3A内における電力の流れを図11に太実線で示す。セレクタ3iは整流回路3fを通じて得られる直流電力を制御回路3a及び変復調回路3cに供給するよう切換える。
【0040】
マスタ2は給電電力を高周波信号として送信するときには、初期周波数F0で給電電力を送信しスレーブ3Aはこの給電電力を受信する(S2,T2)。マスタ2はスレーブ3AからACK応答信号を待機する(S3)。
【0041】
他方、スレーブ3Aは電力モニタ回路3gによりモニタ電力に対応する検出電圧(モニタ電圧)Vmonを検出し、この検出電圧Vmonが所定の閾値電圧Vthを下回ったか否か判定する(T3)。この判定方法は、図12(a)に検出電圧Vmon対時間tの波形を示すように、単に検出電圧Vmonが閾値Vthを下回るタイミングを検出しても良いが、図12(b)に示すように、時間的に変動する交流ノイズが重畳し易いことを考慮に入れれば、閾値電圧(閾値電力相当)Vthに対し、検出電圧Vmonが高電圧側から低電圧側に所定回数(例えば4回)下回るタイミングを検出し、これにより検出電圧Vmonが閾値電圧Vthより下回ったと判定するようにしても良い。
【0042】
さて、図10に戻って、検出電圧Vmonが閾値電圧Vthを下回ると判定されないときには(T3:NO)、通常モードを継続し(T4)、ステップT2に戻り処理を繰り返す。しかし、スレーブ3Aは、電力モニタ回路3gにより検出電圧Vmonが所定の閾値電圧Vthより低いと判定されたときには(T3:TES)、電力不足と判断し(T5)、図11に実線で示す給電経路について、セレクタ3iを切換制御することで図13に実線で示す給電経路に切換える(T6)。
【0043】
すなわち図13に示すように、セレクタ3iは、第2開口アンテナ3kを通じて供給される予備整流回路3h側の給電経路に切換える。すなわち、この予備整流回路3hを通じて供給される電力が制御回路3a及び変復調回路3cに供給されることになる。なお、給電不足モードを示す図13においては、変復調回路3c、制御回路3a、負荷5Aに、予備整流回路3hを通じた給電経路からのみ電力供給している例を示しているが、第1開口アンテナ3j及び給電整合回路3dを通じた給電が低下するのみで給電効率が0%ではない場合などには、予備整流回路3hからの電力供給に加えて、整流回路3f(第1開口アンテナ3j、給電整合回路3d)からの給電電力も合わせて各回路3a、3c及び負荷5Aに電力供給するようにしても良い。この場合、給電効率を高めることができる。
【0044】
その後、図10に示すように、スレーブ3Aの制御回路3aは給電変更要求をマスタ2にACK応答信号に重畳して送信する(T7)。そして、スレーブ3Aは通常モードから給電不足モードに移行する(T8)。
【0045】
マスタ2の制御回路2aは給電変更要求を受信すると(S3:YES)、モードを給電不足モードに変更する(S4)。マスタ2は給電不足モードに移行すると、マスタ2の制御回路2aは給電周波数を初期周波数F0から他の給電周波数に切換制御を行ったり、または、これに代えて又は加えて、整合回路2eの回路の整合調整制御を行う。
【0046】
マスタ2が給電周波数を初期周波数F0から他の給電周波数に切換えるときには、制御回路2aは高周波電力発生回路2bに周波数変更指令を与えることで高周波電力発生回路2bが給電周波数を変更する。この後も、スレーブ3A側では電力モニタ回路3gにより給電電力をモニタするが、この検出電圧Vmonが閾値電圧Vth以上にならないときには(T3:YES)、スレーブ3Aは再度応答信号に給電変更要求を載せて応答することで、マスタ2による給電周波数の変更処理が繰り返される。
【0047】
これによりマスタ2からスレーブ3Aに供給される電力が前述条件を満たすように、マスタ2は高周波電力発生回路2bの給電周波数を変更制御する。また、検出電圧Vmon又はこれに対応する受信電力値等をスレーブ3Aからマスタ2に応答信号に載せて送信してフィードバック制御するようにしても良い。
【0048】
マスタ2が整合回路2eの回路整合を行うときには可変容量コンデンサ2hの容量値を変更する。この場合もスレーブ3A側の電力モニタ回路3gによるモニタ電圧Vmonが閾値電圧Vth以上にならないときには回路整合処理を繰り返し行う。仮に整合処理のみでは十分な給電処理を行うことができないときには高周波電力発生回路2bの給電周波数を変更制御すると良い。これにより、マスタ2からスレーブ3A側に十分な電力を給電できる。
【0049】
本実施形態によれば、第1開口アンテナ3jを通じた電力信号が電力モニタ回路3gにより検出され、このモニタ電力に基づいて第2開口アンテナ3kを通じて得られる通信周波数の信号を用いるか否かを判定している。モニタ電圧Vmonが閾値Vthより低いと判定されたときには、予備整流回路3hを通じて第2開口アンテナ3kから得られる信号を直流電力に変換して電力信号として用いている。もしくは、第1開口アンテナ3jから供給される給電用信号を整流した直流電力と、第2開口アンテナ3kを通じて得られる通信信号を整流した直流電力とを合わせて、各回路3a、3c及び負荷5Aに電力を供給している。
【0050】
また、本実施形態においては、制御回路3aは検出電圧Vmonが予め定められた閾値Vth未満になることを条件として他の動作用電力として第2開口アンテナ3kを通じて得られる通信周波数の信号を用いると判定している。よって、例えば、伝送路特性が変更されるなど周囲環境の変化に応じて例えば整合回路2e、給電整合回路3dの周波数整合が変化し、当該開口アンテナ4、3jから十分に電力供給されず、スレーブ3A…3Zがたとえ動作用電力不足に陥ったとしても他の動作用電力を用いて電力線通信を持続でき、通信品質及び高速通信を極力維持できる。
【0051】
また、制御回路3aはモニタ電圧Vmonが低いと判定したときには、マスタ2の制御回路2aに供給電力が低いことを示す給電変更要求を送信し、マスタ2の制御回路2aは、高周波電力発生回路2bの給電用の電力信号の周波数(給電用のキャリア周波数)を変更制御し、又は/及び、整合回路2eの整合状態を変更制御する。このため、マスタ2及びスレーブ3A間の授受電力を向上できる。
【0052】
(第2実施形態)
図14は、本発明の第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、予備整流回路3hに代えて蓄電装置を別途設けているところにある。前述実施形態と同一又は類似部分については同一又は類似符号を付して説明を省略し、以下異なる部分を中心に説明する。
【0053】
図14に示すように、蓄電装置3nが設けられている。この蓄電装置3nは整流回路3fが整流し平滑化した直流電力を蓄電する装置である。この蓄電装置3nは、開口アンテナ3jから電力信号(高周波信号)を受信すると常に充電される。
【0054】
なお、スレーブ3A…3Zの負荷5A…5Zの種類に応じて蓄電装置3nの電気的構成を変更すると良い。例えば、負荷5A…5Zがセンサのときには電力消費量が比較的少なく小型化の要求が強くなる傾向があるため、この場合、当該対応するスレーブ3A…3Zの蓄電装置3nとしては電力を蓄電するためのコンデンサ(例えばμFオーダーのもの)を適用すると良い。
【0055】
また、負荷5A…5Zがアクチュエータの場合には電力消費量が前述のセンサに比較して多くなる傾向があるため、この場合、当該対応するスレーブ3A…3Zの蓄電装置3nとしては比較的大電力を充電可能な二次電池(例えばリチウムイオン電池)を適用すると良い。このような態様を適用すれば負荷5A…5Zに相応した蓄電装置3nを選定できる。
【0056】
以下、マスタ2とスレーブ3Aとの関係で説明する。本実施形態においては、通常モードではセレクタ3iが整流回路3fから制御回路3a及び変復調回路3c並びに負荷5Aに給電するように切換える。この通常モードの間、開口アンテナ3jから整流回路3fを通じて蓄電装置3nにも高周波信号を整流した信号が電力として蓄電される。電力モニタ回路3gにより検出されるモニタ電圧Vmonが閾値Vthを下回ると、制御回路3aは給電不足モードに切換え、セレクタ3iは、蓄電装置3nから制御回路3a及び変復調回路3c、並びに負荷5Aに給電するよう切換える。
よって、本実施形態においても前述実施形態と同様に、蓄電装置3nを他の動作用電力の供給源として用いて電力線通信を持続でき、通信品質及び高速通信を極力維持できる。
【0057】
(第3実施形態)
図15は、本発明の第3実施形態を示すもので、第1実施形態と異なるところは、予備整流回路3hから蓄電装置3oに電力を蓄積しているところにある。予備整流回路3hは通信整合回路3eに接続されている。そして、開口アンテナ3kから通信整合回路3e、予備整流回路3hを通じて蓄電装置3oにデータ通信周波数信号が電力信号として蓄積される。
【0058】
以下、マスタ2とスレーブ3Aとの関係で説明する。本実施形態においても第1実施形態と同様に、通常モードではセレクタ3iが整流回路3fから制御回路3a及び変復調回路3c並びに負荷5Aに給電するように切換える。この通常モードの間、予備整流回路3hを通じて開口アンテナ3kで受信したデータ通信周波数の信号が蓄電装置3oに電力信号として蓄電される。電力モニタ回路3gにより検出されるモニタ電圧Vmonが閾値Vthを下回ると、制御回路3aは給電不足モードに切換え、さらに制御回路3aはセレクタ3iにより蓄電装置3oから制御回路3a及び変復調回路3c、並びに負荷5Aに給電するよう切換える。
よって、本実施形態においても前述実施形態と同様に、蓄電装置3nを他の動作用電力の供給源として用いて電力線通信を持続でき、通信品質及び高速通信を極力維持できる。
【0059】
(第4実施形態)
図16は、本発明の第3実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、予備整流回路3hと整流回路3fの双方から蓄電装置3pに電力を蓄積しているところにある。予備整流回路3hは通信整合回路3eに接続されており、開口アンテナ3kから通信整合回路3e及び予備整流回路3hを通じて蓄電装置3pにデータ通信周波数信号を整流した信号が電力信号として蓄積される。他方、整流回路3fは給電整合回路3dに接続されており、開口アンテナ3jから給電整合回路3d及び整流回路3fを通じて蓄電装置3pに給電用の電力信号が蓄積される。
【0060】
本実施形態においても第1又は第2実施形態と同様に、通常モードでは整流回路3fから制御回路3a及び変復調回路3c並びに負荷5Aに給電するように切換えられる。この通常モードの間、予備整流回路3hを通じて、蓄電装置3pにデータ通信周波数の信号を整流した信号が電力信号として蓄積されると共に、整流回路3fを通じて蓄電装置3pに給電用の電力信号が予備的に蓄電される。
【0061】
この後、電力モニタ回路3gにより検出されるモニタ電圧Vmonが閾値Vthを下回ると、制御回路3aは給電不足モードに切換え、さらに制御回路3aはセレクタ3iにより蓄電装置3pから制御回路3a及び変復調回路3c並びに負荷5Aに給電するよう切換える。
よって、本実施形態においても前述実施形態と同様に、蓄電装置3pを他の動作用電力の供給源として用いて電力線通信を持続でき、通信品質及び高速通信を極力維持できる。
【0062】
(他の実施形態)
本発明は前述実施形態に限定されるものではなく例えば以下に示す変形または拡張が可能である。
第4実施形態では、他の動作用電力として、蓄電装置3pに蓄積した電力と、予備整流回路3hを通じて開口アンテナ3kから得られる電力とを切換えて使用する例を示したが、予備整流回路3hを通じて開口アンテナ3kから得られる電力をリアルタイムで使用しつつ蓄電装置3pに予め蓄積した電力を使用するようにしても良い。これにより、蓄電装置3pの蓄積電力及び予備整流回路3hを通じて得られる電力を用いて電力線通信を持続できる。
【0063】
前述実施形態では、スレーブ3A…3Zへの供給電力が低いときにマスタ2による高周波電力発生回路2bの高周波信号の給電周波数(給電用のキャリア周波数)を変更したり、制御回路2aが整合回路2eのマッチングを変更制御したりする実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、制御回路2aが、高周波電力発生回路2bの出力する電力信号の出力を上げるように制御しても良い。
【0064】
ツイスト線4は、多数の撚り目のうち、撚り目4A−4B間、4C−4D間、…、4K−4L間のスレーブ3A…3Zの開口アンテナ3j,3kと対向する領域のみ他の開口領域よりも拡大した構成とされていても良い。すると、ノイズ発生抑制および外来ノイズ除去に好適であると共にツイスト線4および開口アンテナ3j,3k間の電磁誘導結合を強力にできる。
【0065】
ツイスト線4の撚り目4A−4B間、…、4K−4L間の開口領域と開口アンテナ3j,3kの開口領域との対向した対向領域にフェライトなどのコアを挿通して構成しても良い。また、これらの対向する開口領域のみ他の対向していない開口領域よりも大きく構成しても良い。すると各撚り目4A−4B間、…、4K−4L間の開口領域と開口アンテナ3j,3kの開口領域との電磁誘導結合を強力にできる。
【符号の説明】
【0066】
図面中、1は車両用電力線通信システム、2はマスタ、2aは制御回路(変更制御手段、出力制御手段、整合制御手段)、3Aはスレーブ、3aは制御回路(判定部、応答手段、第1設定部、第2設定部、第3設定部、第4設定部)、3gは電力モニタ回路(電力モニタ部)、3jは給電用の開口アンテナ(第1開口アンテナ)、3kはデータ通信用の開口アンテナ(第2開口アンテナ)、3nは蓄電装置(第1蓄電装置)、3oは蓄電装置(第2蓄電装置)、3pは蓄電装置(第3蓄電装置)、4は一対のツイスト線、4A,4Bは撚り目(撚部)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16