(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722897
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】焼成用ラック
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20150507BHJP
C04B 35/64 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
F27D3/12 E
C04B35/64 J
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-526489(P2012-526489)
(86)(22)【出願日】2011年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2011066826
(87)【国際公開番号】WO2012014835
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2010-167311(P2010-167311)
(32)【優先日】2010年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人 関根・山本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古宮山 常夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 啓之
(72)【発明者】
【氏名】松本 信宏
【審査官】
蛭田 敦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−311686(JP,A)
【文献】
特開2001−328870(JP,A)
【文献】
特開2003−014378(JP,A)
【文献】
特開平06−001660(JP,A)
【文献】
特開平07−280207(JP,A)
【文献】
特開2005−298311(JP,A)
【文献】
特開2005−082450(JP,A)
【文献】
特開2000−319721(JP,A)
【文献】
特開2002−274946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/12
C04B 35/565
C04B 35/64
C22C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の平板状セッターをセッター保持手段により垂直方向に多段に保持する焼成用ラックであって、該セッター保持手段が、0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiC、再結晶SiC、Si3N4−SiCの何れかの材質からなり、該セッター保持手段は、孔の周辺部に複数の段積み用突起と、これよりも低い位置決め用突起が突設された枠状の平板部材からなり、平板状セッターを保持させた状態で多段に積層され、各平板状セッターをその外周側面の70〜100%を露出させた状態で保持するものであることを特徴とする焼成用ラック。
【請求項2】
セッター保持手段を構成する部材が、Si−SiCからなり、その化学組成はSiC:70〜99wt%、Si:1〜30wt%であり、SiC+Siを100wt%として、さらにAl:0.01〜0.2wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼成用ラック。
【請求項3】
セッター保持手段を構成する部材の算術平均による表面粗さがRa=0.1〜30μmであり、その熱輻射率が、波長8μmで80〜100%、波長12μmで20〜40%、波長19μmで60〜80%であることを特徴とする請求項2に記載の焼成用ラック。
【請求項4】
セッター保持手段を構成する部材の算術平均による表面粗さがRa=0.1〜30μm、弾性率が200〜400GPa、強度が100〜400MPaで、室温における熱伝導率が150〜240W/m・k、気孔率が1%以下であることを特徴とする請求項1に記載の焼成用ラック。
【請求項5】
セッター保持手段を構成する部材が再結晶SiCからなり、その化学組成はSiC:99〜100wt%であり、SiCを100wt%としてさらにAl:0.01〜0.2wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼成用ラック。
【請求項6】
セッター保持手段を構成する部材がSi3N4−SiCからなり、その化学組成はSiC:70〜80wt%、Si3N4:20〜30wt%であり、SiC+Si3N4を100wt%としてさらにAl:0.1〜0.5wt%、Fe:0.1〜0.5wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有することを特徴とする請求項1に記載の焼成用ラック。
【請求項7】
平板状セッターの材質が、0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiCであることを特徴とする請求項1に記載の焼成用ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電子セラミック素子の多段焼成に適した焼成用ラックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に電子セラミック素子は、主原料となるセラミックスの微粉体に焼結助材剤や成形助剤を加えて混合した後、成形により未焼成素子とし、該未焼成素子をセッターと呼ばれるセラミック製の板に載置して焼成炉に装入し、炉内を所定の温度と雰囲気条件に制御しながら焼成して製造される。
【0003】
セッターは複数段に積み重ねて使用されるのが通常であり、複数段重ねられるセッター間に、各々空間を形成する構造として、例えば、
図9に示すように、上面周縁に突起部8を形成したトレーに、平板状セッターを嵌合させたものを積み重ねていく構造(特許文献1)が開示されている。その他、セッター自体の上面周縁に、段積みに耐えうる強度を確保するように形成された周壁部を形成して皿状とし、この皿状セッターを積層する構造も知られている(特許文献2)。
【0004】
しかし、
図9に示すようにトレーにセッターを完全に嵌め込んだ構造では、セッターの外周側面がトレーにより覆われてしまう。しかもセッターを段積みしていく場合、突起部8により炉内ガスの流れが阻害されるうえ、最下段のセッターの下面全面が、炉体と、直接或いはトレーを介して接触し、炉体からの熱伝導の影響を大きく受けるため、各段における均熱化が困難であり、例えば、最下段のセッターで熱処理を施された電子セラミック素子は、上段で熱処理を施された電子セラミック素子に比べて、製品の歩留まりが悪いという問題があった。
【0005】
また、特許文献2のように周囲に皿状セッターを段積みしていく場合、周壁部により炉内ガスの流れが阻害されるうえ、段積みに耐えうる強度を確保するように形成された周壁部がセッター全体に対して占める重量や体積が、エネルギー効率や量産効率の高効率化を妨げているという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−74571号公報
【特許文献2】特開2009−227527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、電子セラミック素子を多段焼成する際のエネルギー効率や量産効率に優れ、かつ、多段焼成における各段の均熱性に優れた焼成用ラックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の焼成用ラックは、複数枚の平板状セッターをセッター保持手段により垂直方向に多段に保持する焼成用ラックであって、該セッター保持手段が、0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiC、再結晶SiC、Si
3N
4−SiCの何れかの材質からなり、該セッター保持手段は、
孔の周辺部に複数の段積み用突起と、これよりも低い位置決め用突起が突設された枠状の平板部材からなり、平板状セッターを保持させた状態で多段に積層され、各平板状セッターをその外周側面の70〜100%を露出させた状態で保持するものであることを特徴とするものである。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
なお、セッター保持手段を構成する部材が0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiCからなる場合には、その化学組成はSiC:70〜99wt%、Si:1〜30wt%であり、SiC+Siを100wt%としてさらにAl:0.01〜0.2wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有するものであることが好ましい。
請求項7に記載のように、平板状セッターの材質もまた0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiCであることが好ましい。
【0013】
またセッター保持手段を構成する部材が再結晶SiCからなる場合には、その化学組成はSiC:99〜100wt%であり、SiCを100wt%としてさらにAl:0.01〜0.2wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有するものであることが好ましい。
【0014】
またセッター保持手段を構成する部材がSi
3N
4−SiCからなる場合には、その化学組成はSiC:70〜80wt%、Si
3N
4:20〜30wt%であり、SiC+Si
3N
4を100wt%としてさらにAl:0.1〜0.5wt%、Fe:0.1〜0.5wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の焼成用ラックは、0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiC、再結晶SiC、Si
3N
4−SiCの何れかの材質からなるセッター保持手段によって、複数枚の平板状セッターを、その外周側面の70〜100%を露出させた状態で保持するものである。これらの材質からなるセッター保持手段は一般的に用いられているアルミナ等に比較して熱輻射率が大きく、しかも平板状セッターの外周側面の70〜100%を露出させているため、平板状セッター上の電子セラミック素子に炉内の雰囲気温度を速やかに伝達することができる。従って多段焼成における各段の均熱性に優れる。
【0016】
また、これらの材質からなるセッター保持手段は一般的に用いられているアルミナ等に比較して高温条件下における強度が大きく、その分だけ小型軽量化を図ることができる。従って電子セラミック素子を多段焼成する際のエネルギー効率や量産効率に優れる。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
また本発明によれば、セッター保持手段が
孔の周辺部に複数の段積み用突起
と、これよりも低い位置決め用突起が突設された枠状の平板部材からなり、平板状セッターを保持させた状態で多段に積層した構成としたので、セッター保持手段の熱容量を小さくして電子セラミック素子を多段焼成する際のエネルギー効率や量産効率を高めることができる。また、炉内ガスとの接触性に優れ、多段焼成における各段の均熱性に優れる。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の
参考形態の焼成用ラックを示す全体斜視図である。
【
図2】平板状セッターを焼成用ラックに挿入した状態を示す斜視図である。
【
図3】第1の
参考形態の変形例を示す全体斜視図である。
【
図4】本発明のセッター保持手段を構成するSi−SiCの熱輻射率のグラフである。
【
図5】
本発明の実施形態の焼成用ラックを示す全体斜視図である。
【
図6】平板状セッターを焼成用ラックに挿入した状態を示す側面図である。
【
図7】
第2の参考形態の焼成用ラックを示す全体斜視図である。
【
図8】平板状セッターを焼成用ラックに挿入した状態を示す側面図である。
【
図9】従来のセッターを複数段に積み重ねた状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を、参考形態とともに説明する。
(第1の
参考形態)
図1と
図2は本発明の第1の
参考形態を示すものである。本
参考形態の焼成用ラック1は略立方体形状を有し、セッター保持手段は、4隅の垂直辺を構成する4本の角部垂直支柱2と、該4本の角部垂直支柱2(2a、2b、2c、2d)の下端部を支持する略ロ字状の下端支持枠4と、該4本の垂直支柱2の上端部を支持する略ロ字状の上端支持枠3から構成されている。
図1に示すように、該焼成用ラック1は、平板状セッター7を挿入して使用するものである。
【0024】
各角部垂直支柱2の内側面には、該平板状セッター7の挿入方向に対して平行に水平溝部21が形成され、セッター保持機構を構成している。平板状セッター7は、該水平溝部21位置に挿入されて保持される。該水平溝部21は複数形成されており、各水平溝部21に複数の平板状セッター7を保持させることにより、
図2に示すような、多段焼成用焼成治具を構成することができる。このように、ラックに平板状セッターを挿入して多段焼成用焼成治具を構成することにより、従来の各セッター間に突起部で空間を形成しながらセッターを段積みしていく構成に比べて、エネルギー効率や量産効率の高効率化を図ることができる。セッター保持機構の形態は、該水平溝部21に限定されず、その他、角部垂直支柱2の内側面に形成した複数の凹部または凸部、あるいは、平板状セッターを挟んで対面する角部垂直支柱2間に渡した梁等の形状を採用してもよい。
【0025】
本
参考形態の焼成用ラック1は、隣接する角部垂直支柱間(2aと2b間、及び、2cと2d間)に垂直配置された中間垂直支柱5(5aと5b)を、平板状セッター7を挟む対面位置に対で備えている。該一対の中間垂直支柱(5aと5b)は、各々の内側面に複数の水平孔部51を有し、平板状セッター7を挟む対面位置で対をなす水平孔部51間には梁6が渡されている。該梁6の高さは、各水平溝部21に保持される平板状セッター7の中央部を下面から支持するように、配置されている。これにより、セッターをより安定的に保持することができるため、セッターの薄肉化を図ることができる。また、該梁を介して、各段のセッターの中央部への熱伝導が行われるため、角部垂直支柱2からの熱伝導の影響を受けるセッターの縁部との均熱化を図ることができる。ただし、例えば
図3に示すように、中間垂直支柱5を備えない焼成用ラック1とすることもできる。
【0026】
各角部垂直支柱2の内側面に形成された水平溝部21に保持された平板状セッター7の外周側面長さを、例えば
図2に示すように、(L1+L2)×2とすると、本
参考形態では、角部垂直支柱2の幅sと、中間垂直支柱5の幅tによって被覆される外周側面の割合が、{(s+t)×4} / {(L1+L2)×2}×100=5〜30%となり、平板状セッター7の外周側面の70〜95%は、焼成炉内で露出される構造を有している。これにより、各段のセッター全面における良好な炉内ガス流れを確保することができる。
【0027】
また、
図9に示す従来例のように、各セッター間に突起部8で空間を形成しながら、セッターを複数段に段積みしていく場合、最下段のセッターの下面全面が、焼成炉の炉体と、直接或いはトレーを介して接触し、炉体からの熱伝導の影響を大きく受けるため、例えば、最下段のセッターで熱処理を施された電子セラミック素子は、上段で熱処理を施された電子セラミック素子に比べて製品の歩留まりが悪い等、各段における均熱化が困難である問題があったが、本発明では、複数本の角部垂直支柱2および中間垂直支柱5(以下、垂直支柱という)と、該垂直支柱の下端部を支持する下端支持枠4と、該垂直支柱の上端部を支持する上端支持枠3を有し、該セッター保持機構は、該垂直支柱の内側面に形成した複数の水平溝部21からなる構成を採用することにより、最下段のセッターの下部面と炉体との間にも空間が形成され、炉体からの熱伝導の影響を低減することができる。
【0028】
なお、焼成用ラック自体が傾いた際にもセッターを安定保持しておく観点から、垂直支柱2、5の下端部および上端部は、各々、下端支持枠4および上端支持枠3に形成された嵌合部と嵌合して固定され、焼成ラック全体を水平な床面に対して30度傾斜させた際、下端支持枠に対する垂直支柱の傾斜角度が2°以下であることが好ましい。傾斜角度が2°以上の場合、使用時の振動が大きくなり、焼成時の炉内搬送に伴う振動で秘被焼成物が損傷する問題が生じる危険性があるが、本発明の前記構成によれば、当該問題を効果的に回避することができる。
【0029】
上記のように、本発明の構成によれば、焼成炉の炉体からの熱伝導の影響が低減され、かつ、良好な空気流れが確保にされるため、各段を構成するセッターへの熱伝達がより均一になり、各段における均熱化を図ることができる。
【0030】
(セッター保持手段の材質)
本発明の焼成用ラックは通常、不活性ガス雰囲気下で、1300〜1450℃程度の高温条件下で使用される。このため本発明においては、セッター保持手段が0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiC、再結晶SiC、Si
3N
4−SiCの何れかの材質から構成される。
【0031】
Si−SiCはSiCの粒子間にSiを含浸させたSi含浸SiCと呼ばれる材質である。その化学組成として、SiCを70〜99wt%、Siを1〜30wt%、更に、微量成分として外配で(SiC+Siを100wt%としてさらに)Alを0.01〜0.2wt%、Feを0.01〜0.2wt%、Caを0.01〜0.2wt%含有することが好ましい。Siの含有率が30wt%を超えると、強度の低下や熱輻射率の低下を招くので好ましくない。
【0032】
また、算術平均による表面粗さがRa=0.1〜30μm、弾性率が200〜400GPa、強度が100〜400MPaで、室温における熱伝導率が150〜240W/m・k、気孔率が1%以下であることが好ましい。このような、化学組成および物性を有する材質とすることにより、焼成用ラック1の軽量化かつ高強度化および長寿命化を図ることができる。
【0033】
このSi−SiCからなるセッター保持手段の熱輻射率は、
図4のグラフ中に実線に示すように、波長8μmで80〜100%、波長12μmで20〜40%、波長19μmで60〜80%であることが好ましい。熱輻射率は、化学組成と表面粗さにより規定することができ、本発明では前記のように、化学組成として、SiCを70〜99wt%、Siを1〜30wt%、更に、微量成分として外配でAlを0.01〜0.2wt%、Feを0.01〜0.2wt%、Caを0.01〜0.2wt%含有する構成を採用し、表面粗さをRa=0.1〜30μm、より好ましくは、Ra=10〜30μmとする構成を採用することにより、当該熱輻射率を実現している。なお、
図4の破線は、化学組成として、従来のセッターの主成分として一般的に使用されるアルミナを採用した場合の熱輻射率である。
図4に示すように、従来のセッターの主成分として一般的に使用されるアルミナに変えてSi−SiCを用いることにより、各構成部材(2、5、3、4)の熱輻射率を高め、炉内における各構成部材(2、5、3、4)からの輻射熱を効果的に利用してエネルギー効率の高い焼成を可能としている。
【0034】
セッター保持手段を構成する各構成部材(2、5、3、4)の表層には、化学組成としてSiO
2を90wt%以上含有する厚さ1〜10μmの被膜を備えることが好ましい。該被膜により、雰囲気ガスによる各構成部材(2、5、3、4)の反応劣化を抑制し、焼成用ラックの長寿命化を図ることができる。
【0035】
上記したSi−SiCの他に、再結晶SiCまたはSi
3N
4−SiCを用いることもできる。再結晶SiCはSiCの粒子間を再結晶操作により融着させて緻密化したもので、その化学組成はSiC:99〜100wt%である。しかしSiCを100wt%としてさらにAl:0.01〜0.2wt%、Fe:0.01〜0.2wt%、Ca:0.10.01〜0.2wt%を微量成分として含有するものである。
【0036】
またSi
3N
4−SiCはSi
3N
4をボンドとするSiCであり、Si−SiCよりも更に高温領域での使用に適する。その化学組成はSiC:70〜80wt%、Si
3N
4:20〜30wt%であり、SiC+Si
3N
4を100wt%としてさらにAl:0.1〜0.5wt%、Fe:0.1〜0.5wt%、Ca:0.01〜0.2wt%を含有するものである。なおこれらの3種類の材質は以下に説明する
実施形態についても同様に採用される。
【0037】
なお、平板状セッター7の材質は特に限定されるものではないが、使用温度に耐えるためにはセッター保持手段と同じ材質であることが好ましく、特に0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiCであることが好ましい。この材質は高温強度が大きいため、セッターの薄肉化を図ることができるからである。平板状セッター7の形状は必ずしも平坦な板とする必要はなく、例えばハニカム状としたり、メッシュ状としたりすることも可能である。これらの形状とすれば平板状セッター7を貫通して炉内ガスが流れるので、より均熱化を図ることができる。なお焼成温度が比較的低温である場合には、チタンなどの耐熱金属製のメッシュを採用することもできる。
【0038】
(
本発明の実施形態)
図5と
図6は、
本発明の実施形態を示すものである。本実施形態の焼成用ラック1は、セッター保持手段が、周辺部に複数の段積み用突起11を備えた枠状の平板部材10からなるものである。
図5の実施形態では、長方形の平板部材10は左右両側に四角形の孔12を備え、この部分に平板状セッター7が載せられる。平板部材10の一辺の左右両端と対向する辺の中央部には段積み用突起11が突設され、孔12を囲む位置には段積み用突起11よりも低い位置決め用突起13が突設されている。
【0039】
図6はこのセッター保持手段に平板状セッター7を保持させ、多段に積層した状態の側面図であり、平板状セッター7は点線で表示してある。このようにこの実施形態においても、平板状セッター7の外周側面の70%以上は、焼成炉内で露出される。またその材質は熱輻射率の高いSi−SiC、再結晶SiC、Si
3N
4−SiCの何れかであるから、第1の
参考形態と同様に優れた均熱性を確保することができる。また、セッター保持手段に平板状セッター7を保持させた上で段積みすることができるので、第1の
参考形態に比較して取り扱い性に優れる利点がある。
【0040】
(
第2の参考形態)
図7と
図8は、本発明の
第2の参考形態を示すものである。本
参考形態の焼成用ラック1は、セッター保持手段が、複数の段積み用突起15を備え対向配置された一対の直線部材16と、各段積み用突起15の上部凹面17間に掛け渡された梁18とからなるものである。段積み用突起15は山型の突起であり、その下側には凹部19が形成されている。梁18は断面角型の棒状体であり、その両端が段積み用突起15の上部凹面17に嵌め込まれ、その上に平板状セッター7が載せられる。
【0041】
図8はこれらの梁18の上に平板状セッター7を保持させ、多段に積層した状態の側面図であり、平板状セッター7は点線で表示してある。
図8のように下側の凹部19は梁18の上側に嵌め込まれ、積層状態を安定させる。
【0042】
図8に示したように、この
第2の参考形態においては、平板状セッター7の外周側面の約100%を焼成炉内で露出させることができる。またその材質は熱輻射率の高いSi−SiC、再結晶SiC、Si
3N
4−SiCの何れかであるから、第1の
参考形態と同様に優れた均熱性を確保することができる。
第2の参考形態のものも、セッター保持手段に平板状セッター7を保持させた上で段積みすることができるので、
第1の参考形態に比較して取り扱い性に優れる利点がある。
【実施例】
【0043】
【表1】
【0044】
本発明の焼成用ラックに、150mm×150mm×2mmの平板状セッターを挿入して、15段積み構造の焼成治具を構成したもの(実施例1)と、150mm×150mm×5mmのセッターで上面周縁に15mmの突起部を有するものを15段に積み上げて構成したもの(比較例1)を使用して、同一の焼成条件下で、セラミックコンデンサーの焼成(1300℃、10時間)を行った。表1には、各段における製品歩留まりを調べた結果(「製品歩留まり(%)」)、各段を構成するセッターの端部と中央部の温度差を測定した結果(「セッター温度差(℃)」)、最上段のセッター中央部の温度と各段を構成するセッター中央部の温度差(「セッター中央温度差(℃)」を、各々示している。
【0045】
表1に示すように、本発明の焼成用ラックを使用することにより、各段における均熱化を図り、製品歩留まりを向上することができる。
【0046】
【表2】
【0047】
材質の影響を調べるため、表2に示す各成分比で、本発明の請求項1に係る焼成用ラックを構成し(実施例2〜6、比較例2〜4)、150mm×150mm×2mmの平板状セッターを挿入して、15段積み構造の焼成治具を構成した。これを使用して、同一の焼成条件下で、セラミックコンデンサーの焼成(1300℃、10時間)を行った。表2には、実施例2〜6、比較例2〜4に係る焼成用ラックの物性(弾性率、曲げ強度、熱伝導率、気孔率、輻射率)を測定した結果、
中段の製品歩留まり
を調べた結果、焼成用ラック自体の寿命(「多段棚組の寿命(回)」)を、各々示している。
【0048】
表2に示す実施例2、3、4は0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiC、実施例5は再結晶SiC、実施例6はSi
3N
4−SiCであり、比較例2はSi含有率が過剰のSi−SiC、比較例3はアルミナ、比較例4はアルミナーシリカである。表2に示すように、0.01〜30wt%のSiを含有するSi−SiC、再結晶SiC、Si
3N
4−SiCの何れかの材質で請求項1に係る焼成用ラックを構成することにより、製品歩留まりの向上および、焼成用ラックの長寿命化を図ることができる。一方、比較例2〜4の化学組成を有する部材で、本発明の請求項1に係る焼成用ラックを構成した場合、製品歩留まりの悪化とともに、特に棚組み寿命の顕著な低下が観察された。
【符号の説明】
【0049】
1 焼成用ラック
2(2a、2b、2c、2d)角部垂直支柱
21 水平溝部
3 上端支持枠
4 下端支持枠
5(5aと5b)中間垂直支柱
51 水平孔部
6 梁
7 平板状セッター
8 突起部
10 平板部材
11 段積み用突起
12 四角形の孔
13 位置決め用突起
15 段積み用突起
16 直線部材
17 上部凹面
18 梁
19 凹部