特許第5722905号(P5722905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722905高周波シーリング可能なポリマー及びその物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722905
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】高周波シーリング可能なポリマー及びその物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/181 20060101AFI20150507BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20150507BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   C08G63/181
   C08J5/18CFD
   C08L67/02
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-535187(P2012-535187)
(86)(22)【出願日】2010年10月18日
(65)【公表番号】特表2013-508502(P2013-508502A)
(43)【公表日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】US2010002775
(87)【国際公開番号】WO2011049611
(87)【国際公開日】20110428
【審査請求日】2013年10月16日
(31)【優先権主張番号】61/252,891
(32)【優先日】2009年10月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/906,270
(32)【優先日】2010年10月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン ケン シー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー ディアン ムーア
(72)【発明者】
【氏名】ピン ピーター シャン
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−503538(JP,A)
【文献】 特開昭60−253545(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/111058(WO,A1)
【文献】 特開平04−306226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69、C08J5、C08L
C08F6−246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1) 70モル%を上回るテレフタル酸と;
(2) イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された0モル%から30モル%未満の改質用酸とを
含む酸残基部分、並びに
(B)(1) 88〜94モル%のエチレングリコールと;
(2) 1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、イソソルビド、及びこれらの混合物から成る群より選択された6〜12モル%の改質用ジオールとを
含むジオール残基部分
を含む、リアクターグレードのコポリエステルを含むフィルムであって、
該コポリエステルは、最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としており、
該コポリエステルはインヘレント粘度0.6〜0.85dL/gを有し、
該フィルムはRF溶接可能である、フィルムを熱成形することによって第1及び第2のエッジを有する形状にすること、前記第1及び第2のエッジをオーバラップ位置に置き、そして前記第1エッジと第2エッジとを、該オーバラップしたエッジにRFシーリングエネルギーを施すことによってシーリングし合わせることを含む、
製品の製造方法。
【請求項2】
フィルム厚が1〜100ミルである、請求項1に記載の方法
【請求項3】
フィルム厚が5〜30ミルである、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記フィルムが単層構造である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法
【請求項5】
前記フィルムが多層構造である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法
【請求項6】
前記フィルムが、
(A)50〜70重量パーセントの前記リアクターグレードのコポリエステルと、
(B)30〜50重量パーセントのポストコンシューマーリサイクルストリームと
を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法
【請求項7】
前記製品が、バッグ、容器、パッケージ、自動車内装トリムファブリック、救命具、防水シート、テントカバー、医療用捕集バッグ、医療用オストミーバッグ、医療用輸液又は静脈内バッグ、エアマットレス、玩具、食品パッケージ、小売り用製品ブリスターパッケージ、及び管から成る群から選択される、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記改質用ジオールが1,4−シクロヘキサンジメタノールである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大まかに言えば、高周波シーリング能力を有するリアクターグレード(reactor grade)のコポリエステル組成物に関する。より具体的には、本発明は、特定の結晶化度を有するコポリエステル組成物であって、このポリマーから調製されたフィルムが高周波シーリング能力を呈する組成物である。本発明はさらに、リアクターグレードのコポリエステル組成物から調製されたフィルム及び熱成形可能なパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
パッケージング業界において、伝統的に、「クラムシェルブリスターパッケージ」は、一対の熱成形可能なプラスチック層から形成されたプラスチックパッケージを意味する。これらの層間に、パッケージングされるべき物品が保持される。典型的には、ワンピースであり得る層は、共通のエッジに沿ってヒンジ結合され、そしてシーリングされる。よく知られているシーリング技術は例えば加熱、化学的接着剤の使用、及び高周波シーリング(RFシーリング)を含む。「シーリング」、「活性化」、「ボンディング」、「シーミング」、及び「溶接」という用語(及びこれらの変化形)は、本明細書中では相互に置き換え可能に使用される。クラムシェルパーツを有するもの以外にも、パッケージ、例えば二ピースパッケージは、シーリングを必要とすることもある。
【0003】
多くのパッケージング用途では、RF溶接が、パッケージをシーリングするための好ましい技術である。ヒートシーリングとは異なり、RF溶接の性質は、2枚のプラスチックフィルムの界面で温度を最高にする。従って、RF溶接は、コンベンショナルなヒートボンディング法に必要とされる時間の一部でフィルムをボンディングすることができる。第二に、RFシーリングは、感熱性材料、例えば延伸フィルム及び感熱性色素を劣化させる可能性がコンベンショナルなヒートボンディング法よりも低い。第三に、RF溶接を用いると、コンベンショナルなヒートボンディング法と比較して最小限にしか困難を伴わずに、複雑な形状のボンディングが可能である。本明細書において使用される「RF活性」という用語は、材料の急速な加熱を誘導するRF範囲のエネルギーを介して誘電活性化させられやすい材料を意味する。「RFシーリング」及び「RF溶接」は、周波数範囲15〜28MHz及び具体的には概ね約27.12MHzで動作する典型的なシーリング装置によって、RF範囲、すなわち概ね0.1〜300MHzの広周波数範囲の電磁エネルギー又は電磁波を用いて、シーリング可能なポリマーをそれ自体の一部をボンディングする、又は別のRFシーリング可能な材料にボンディングすることを意味する。
【0004】
RFシーリング可能なパッケージのための層は通常、少なくとも一部はポリ塩化ビニル(PVC)から成っている。なぜならば、この材料は容易にRFシーリングされるからである。フレキシブルPVCから製造された製品は、PVCのRFシーリング能力に依存する品目又は物品だけでなく、蒸気又はガス障壁、及びパッケージの柔軟性に関連する品目又は物品も、種々様々な最終用途において長い歴史にわたって利用されている。ハロゲン化ポリマー、例えばPVCの、特に製造中及び廃棄時の環境影響に関する懸念が、ハロゲンなしの代替物を開発しようという試みの火付け役となっている。最近のパッケージング業界では、PCVが他の可能な材料よりも環境にやさしくないと認知されるのに伴って、PVCパッケージング材料の使用から脱却しようとしている。例えば、欧州では破棄物を焼却する傾向があるため、欧州市場は多年にわたってPVCに代わる材料を模索している。1つのこのような代替材料は、ポリエステルの一般的なタイプであるポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0005】
いかなる理論にも縛られたくはないが、PETがPFシールを効果的に形成できないのは、一つにはPETの結晶化度に起因すると考えられる。熱がシール個所の結晶化度を、隣接するPETと比較して増大させると考えられる。PETの比体積は、PETの結晶化度が増大するのに伴って減少し、これにより2つのポリマー表面は、新たに絡み合った界面から引き離されることになり、ボンディング強度を弱くする。その場合、材料を効果的にRFシーリングできないために、熱成形可能なPETプラスチック材料をパッケージングのために提供することは困難である。
【0006】
従って、PVCに取って代わる改善されたRFシーリング可能なパッケージング材料を提供することが必要である。懸念事項に対処しようという取り組みは、オレフィンポリマー、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、スチレン系ブロックコポリマー、例えばスチレン/エチレンブテンスチレン又は(SEBS)、及びエチレンコポリマー、例えばエチレン/オクテン−1又はエチレン/ビニルアセテート(EVA)コポリマーに焦点を当てる傾向がある。オレフィンポリマーは、PVCによって示される多くの物理特性に一致又は近似し、そして同等のコストにおいても一致又は近似する。しかしながら、このようなポリマーから形成されるフィルムの問題は、RFシーリングを容易にするには誘電損率があまりにも低いため、ヒートシーリングの利用を必要とすることである。
【0007】
RFシーリングを可能にする誘電特性を有する種々のハロゲン非含有ポリマーは、例えば熱可塑性ポリウレタン(TPU)、及びグリコール改質ポリエステル(PETG)のようなポリマーを含む。しかしながら、これらのポリマーはPVCよりもコスト高であり、PVCの直接的な代替を経済的に見て魅力のないものにしてしまう。加えて、いくつかの代わりのRF活性ポリマーは、PVCよりも引張り弾性率又は剛性が著しく高く、フレキシブルフィルムパッケージ又はバッグ用途における代替を不適当なものにしてしまう。
【0008】
RF活性であることが知られているコポリアミドは、PVCと比較して物理特性が不十分でありコストが高いという欠点がある。ナイロンとしても知られる数平均分子量(Mn)が高いポリアミドは、PVCと比較して剛性であるとして分類するのに十分に高い引張り弾性率を有しているものの、両方ともシーリングが難しく、また高価である。
【0009】
米国特許第6,855,778号明細書及び同第7,003,930号明細書には、5〜50重量%のグリコール改質ポリエステル(PETG)と50〜95重量%のPETとを有する2種のポリエステルのブレンドが開示されている。これらの特許明細書の教示によれば、このポリエステルブレンドから形成されたフィルム又はパッケージング容器は、PVCと同等のRFシール性を呈する。しかし、PETG中のコモノマーの量は開示されていない。このようなブレンドを形成する際の別の問題は、非晶質PETGの溶融温度が半結晶性PETよりも著しく低いので、これら2種の化合物をそれぞれの乾燥温度で、所定の重量比で押し出し機に添加すると、PETGが凝集し、このことはフィード上の問題、一貫しないブレンド比、そして多くの場合、押し出し機機能の停止を招く。これらの特許明細書によって開示されたブレンドは、出願人の本発明のリアクターグレードのコポリエステルとは区別される。「リアクターグレード(reactor grade)」のコポリエステルという用語は、当業者によって十分に知られ理解されるように、1つ又は2つ以上のリアクター内で、オリゴマーを形成するためのモノマーの反応と、ポリエステルを形成するためのオリゴマーの反応とによって生成された任意のポリエステルを意味するものとする。典型的には、リアクターグレードのコポリエステルは、ジカルボン酸とジオールとのポリエステル化によって調製され、ポリエステルブレンドよりも一貫性の高い特性を提供する。本発明のコポリエステルに関しては、「リアクターグレードのコポリエステル」、「コポリエステル」、及び「コポリエステル組成物」という用語は相互に置き換え可能に使用される。
【0010】
従って、PVCパッケージング材料に取って代わる、RFシーリングを施すことができる、改善された熱成形可能なパッケージング材料が依然として必要である。
【0011】
別の目標は、本発明のコポリエステルを含むフィルム又はシートから製作された物品の廃棄時の環境影響を軽減することである。埋め立て地に廃棄される物品に対しては、使用される材料ができる限り少ないことが望ましい。消費者使用後の物品を熱可塑性再処理して他の有用な物品にすることによってリサイクルし得るコポリエステルを使用することにより、さらなる利点が実現される。このように、ソフトドリンク又は水の容器のPETと同様の、認知された環境上の利点をもたらし、すなわち申し分なくリサイクルすることができ、費用効果があり、そしてPVCと同等のRFシーリング能力を提供する、RFシーリング可能なパッケージング用コポリエステルを製造する方法を提供することがさらに必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの、そしてその他のニーズは、RFシーリング可能且つヒートシーリング可能な本発明のコポリエステル、及びこれらのコポリエステルから形成されたパッケージング材料によって解決される。本発明は、PETの環境上の利点及びその他の利点を、PVCと同等のシーリング上の利点とともに提供する。より具体的には、本発明の第1の態様は、リアクターグレードのコポリエステルを含むRF溶接可能又はヒートシール可能なフィルムに加工するのに適したコポリエステル組成物であって、(A)(1)約70モル%を上回るテレフタル酸残基部分と;(2)イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを含む酸残基部分、並びに(B)(1)約75〜約95モル%のエチレングリコールと;(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含むジオール残基部分を含み、最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される組成物の結晶化度が少なくとも1.5分〜30分である、コポリエステル組成物である。
【0013】
或いは、ジオール残基部分は、(1)約75〜約96モル%のエチレングリコールと;(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びこれらの混合物から成る群より選択された約4〜約25モル%の改質用ジオールを含む。
【0014】
本発明の別の態様は、(A)(1)約70モル%を上回るテレフタル酸と;(2)イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを含む酸残基部分、(B)(1)約75〜約95モル%のエチレングリコールと;(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含むジオール残基部分、並びに(C)分岐剤を含むリアクターグレードのコポリエステルであって、この組成物は最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が少なくとも1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としている、リアクターグレードのコポリエステルに関する。
【0015】
別の態様は、(A)25〜99.9重量パーセントの上記リアクターグレードのコポリエステルのうちのいずれかと、(B)0.1〜75重量パーセントのポストコンシューマーリサイクルストリーム(post-consumer recycle stream)とを含む、リアクターグレードのコポリエステルブレンドに関する。
【0016】
別の態様は、(A)25〜75重量パーセントの上記リアクターグレードのコポリエステルのうちのいずれかと、(B)25〜75重量パーセントのポストコンシューマーリサイクルストリームとを含む、リアクターグレードのコポリエステルブレンドに関する。
【0017】
別の態様は、上記リアクターグレードのコポリエステルブレンドのうちのいずれかを含むフィルムに関する。別の態様は、フィルムが多層構造を有する、上記リアクターグレードのコポリエステルブレンドのうちのいずれかを含むフィルムに関する。
【0018】
別の態様は、上記リアクターグレードのコポリエステルブレンドのうちのいずれかを含む製品に関する。
【0019】
別の態様は、(A)(1)約70モル%を上回るテレフタル酸と;(2)イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを含む酸残基部分、並びに(B)(1)約75〜約95モル%のエチレングリコールと;(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、イソソルビド、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含むジオール残基部分を含むリアクターグレードのコポリエステルであって、当該コポリエステルは最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が少なくとも1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としている、リアクターグレードのコポリエステルに関する。
【0020】
別の態様は、(A)(1)約70モル%を上回るテレフタル酸と;(2)イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを含む酸残基部分、並びに(B)(1)約75〜約96モル%のエチレングリコールと;(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、イソソルビド、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含むジオール残基部分を含む、リアクターグレードのコポリエステルを含むフィルムであって、当該コポリエステルは最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が少なくとも1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としており、そしてこのフィルムはRF溶接可能又はヒートシーリング可能である、リアクターグレードのコポリエステルを含むフィルムに関する。
【0021】
別の態様は、(A)(1)約70モル%を上回るテレフタル酸と;(2)イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを含む酸残基部分、(B)(1)約75〜約95モル%のエチレングリコールと;(2) 1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、イソソルビド、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含むジオール残基部分、並びに(C)分岐剤を含むリアクターグレードのコポリエステルであって、最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定されるこのコポリエステルの結晶化度が少なくとも1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としている、リアクターグレードのコポリエステルに関する。
【0022】
別の態様では、リアクターグレードのコポリエステルはさらに分岐剤を含む。
【0023】
本明細書中に使用される「残基」という用語は、その部分が化学種から実際に得られるか否かとは無関係に、特定の反応スキーム又は後続の調製又は化学生成物における化学種の結果としての生成物である部分を意味する。例えば、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、ポリエステルを調製するためにエチレングリコールを使用するか否かとは無関係に、ポリエステル中の1つ又は2つ以上の−OCH2CH2O−反復単位を意味する。本明細書中に使用される「テレフタル酸」という用語は、テレフタル酸自体及びその残基、並びに、関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物を含む任意のテレフタル酸誘導体、もしくはこれらの混合物、又はポリエステルを形成するためのジオールとの反応プロセスにおいて有用なその残基を含むものとする。本明細書中に使用される「酸残基」という用語は、「二酸残基」という用語と同義である。
【0024】
本発明の第2の態様は、本発明のコポリエステル組成物のうちのいずれかから形成された少なくとも1つの層を含むRF溶接可能又は熱溶接可能なフィルムである。フィルムは単層又は多層構造であってよい。多層構造は、本発明のコポリエステル組成物に対して規定された最小結晶化ハーフタイム範囲外の結晶化度を有する1つ又は2つ以上の内層を含んでよい。このような多層構造はさらに、適合化させるつなぎ層(compatibilizing tie layer)を含んでいてよいが、しかしRF溶接可能又は熱溶接可能な層は、本発明のコポリエステル組成物から形成される。
【0025】
本発明の第3の態様は、RFシーリング可能又はヒートシーリング可能なコポリエステルを含む製品及びこの製品の製造方法である。製品は、本発明の第2の態様のフィルムを熱成形することによって、オーバラップ位置に配置されるように適合された第1及び第2のエッジを有する形状にし、そして第1エッジと第2エッジとを、オーバラップしたエッジにRFシーリングエネルギーを施すことによってシールし合わせることによって調製される。好適な製品の一例としては、バッグ、容器、パッケージ、自動車内装トリムファブリック及び部品、救命具、防水シート、及びテントカバーが挙げられる。他の好適な用途は、これらのいくつかは前述のもののうちのより具体的な例であるが、例えば医療用又は泌尿器用捕集バッグ、医療用オストミーバッグ、医療用輸液又は静脈内バッグ、膨張可能な装置、例えばエアマットレス、救命具、食品パッケージ、小売り用製品ブリスターパッケージ、小児用物品、玩具、テント及び防水シートのための強化積層体、屋根膜及びジオテキスタイル、及び文房具用途、例えばバインダーカバーを含む。本発明のフィルムを提供するRFシーリング可能又はヒートシーリング可能なコポリエステル組成物は、RF活性の外層を有する管を形成するように押し出すこともできる。このような管は、完成した状態のRF溶接されたポリオレフィンフィルム構造、例えば医療用捕集バッグを提供するために、RF溶接可能又は熱溶接可能なフィルムと併せて容易に使用することができる。当業者であれば、RFシーリング可能又はヒートシーリング可能であり、柔軟性であり、単層又は多層であるフィルム構造を利用することができる事実上いずれの装置又は用途をも含むように、この一例として挙げたリストの範囲を容易に拡大することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のリアクターグレードコポリエステル組成物は、熱成形可能であり、そしてRFシーリング可能なパッケージング材料を形成することができ、特定の材料、例えばPVCのシーリング上の利点を可能にし、しかもこの場合、典型的にはPVCに付随する環境上の欠点を伴うことはない。具体的に言えば、リアクターグレードコポリエステル組成物は、(A)(1)約70モル%を上回るテレフタル酸と;(2)イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを含む酸残基部分、並びに(B)(1)約75〜約95モル%のエチレングリコールと;(2)1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含むジオール残基部分を含む、コポリエステルである。最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定されるコポリエステル組成物の結晶化度が1.5〜30分であることが本発明にとって重要である。当業者には明らかなように、酸分の上記モル比は、構成部分(A)のモルパーセンテージの和を基準として100モルパーセントであり、また、ジオール分のモル比は、構成部分(B)のモルパーセンテージの和を基準として100モルパーセントである。
【0027】
別の態様の場合、本発明のリアクターグレードコポリエステル組成物の酸残基部分は、約80モル%を上回るテレフタル酸であるか、又は約90モル%を上回るテレフタル酸である。
【0028】
コポリエステルのジオール構成部分(B)は、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを含む。別の態様では、改質用ジオールの量は、約6〜約20モル%、又は約6〜約12モル%である。望ましくは、改質用ジオールは、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、及びジエチレングリコールから選択され、CHDMが好ましい。
【0029】
改質用の酸及びジオールのコモノマーの量は、結果として生じるコポリエステルの最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)が1.5〜30分であることを条件として、上述の範囲内で独立して調節することができる。さらに、本明細書中で指定された範囲がその間の全ての数値範囲を含むこと、そしてこのような範囲は便宜上本明細書中には明示的に記載されていないことは明らかであり、このことは本明細書の一部である。
【0030】
本発明のコポリエステルは、米国特許第4,256,861号明細書、同第4,539,390号明細書、及び同第2,901,466号明細書に詳細に記載されている溶融相重縮合又は固体重縮合の手順を用いて容易に調製される。上記明細書の開示内容は参照することにより本明細書中に組み込まれる。コポリエステルはバッチ法又は連続法によって形成することができ、これらの方法は直接縮合又はエステル交換による調製を含む。
【0031】
手短に述べると、典型的な手順は少なくとも2つの区別可能な段階を含む。すなわち、エステル交換又はエステル化として知られている第1段階は、0.5〜8時間にわたって150℃〜250℃、又は1〜4時間にわたって180℃〜240℃の温度の不活性雰囲気下で実施される。グリコールは、これらの反応性及び採用される具体的な試験条件に応じて、通常の場合、酸官能性モノマーの総モル当たり1.05〜2.5のモル過剰で使用される。重縮合と呼ばれる第2段階は、0.1〜6時間、又は0.25〜2時間にわたって230℃〜350℃、又は265℃〜325℃、又は270℃〜300℃の温度で、減圧下で行われる。反応混合物の十分な熱移動及び表面更新を保証するために、攪拌条件又は適宜の反応条件が両段階において用いられる。両段階の反応は、適宜の触媒、特に当業者によく知られた触媒、例えばアルコキシチタニウム化合物、アルカリ金属水酸化物及びアルコレート、有機カルボン酸の塩、アルキル錫化合物、金属酸化物、及びこれらの組み合わせによって促進される。
【0032】
リアクターグレードコポリエステル組成物は、シート形成ダイに直接に供給されるか、又はペレット化されてよい。次いでペレットに、所望の最終用途に応じて固体重合を施してよい。固体重合は当業者によく知られたプロセスである。例えば、米国特許第4,064,112号明細書(参照することにより本明細書中に組み込まれる)には、典型的な固体プロセスが記載されている。このプロセスにおいて、溶融相重合によって調製された非晶質前駆体ペレットを、これらの溶融温度を10℃〜100℃下回る温度で先ず結晶化し(結晶化相)、次いで、IVを増大させるために真空又は乾燥窒素の存在において、十分に長い時間、例えば2〜40時間にわたってこれらの溶融温度を少なくとも10℃下回る温度でさらに保持する(固体相)。これらの高い温度は、重合が比較的迅速且つ経済的な速度で進行するのを可能にするために必要とされる。これらの高い温度では、非晶質ペレットは軟化し、融合して高粘度塊になる。対照的に結晶性ペレットは、これらの温度ではくっつき合わない。従って固体重合は、結晶化ペレットにおいてのみ行うことができる。
【0033】
一般に、モールディンググレードのペレットを生成する場合には、バッチ法又は連続法が用いられる。バッチ法では、上記二段階プロセスに従って加熱された大型容器にペレットを加える。ペレットを均一に加熱し、そして初期結晶化中にペレットが容器壁にくっつくのを防止するために、容器を連続的に回転させる。連続法では、ペレットは先ず重力によって結晶化ユニット内に落下し、次いで、IVを形成する加熱された大型容器を重力によって貫流する。経済上の理由から商業的な作業にとっては連続法が好ましい。通常、本発明によるコポリエステル組成物を有する固体ペレットにおいて、規則的又は不規則的な形状の粒子を使用してよい。粒子は種々の形状及びサイズ、例えば球体、立方体、不規則形状、円柱形、及び概ね偏平な形状を有していてよい。
【0034】
固体重合プロセス中には、インヘレント粘度(inherent viscosity)の速度が時間とともに遅くなることがしばしば観察される。従って、得ることができる最大IVは、前駆体材料の初期IVによって制限されることがある。このような理由から、本発明において記載されたコポリエステルのIVは0.4〜0.9dL/g、又は0.6〜0.85dL/g、又は0.65〜0.8dL/gであることが望ましい。本発明のコポリエステルのインヘレント粘度は、25℃で測定して濃度0.5g/100mlの60/40(wt/wt)フェノール/テトラクロロエタン中で割り出される。
【0035】
本発明のリアクターグレードコポリエステル組成物はさらに、最終生成物に機能的特質を付与するが、しかしRFシール性を著しく損なうことのない1種又は2種以上のコンベンショナルな添加剤を含んでよい。このような添加剤の一例としては、抗酸化剤、分岐剤、プロセス安定剤、紫外線(UV)安定剤、粘着付与剤、難燃剤、無機充填剤、殺生物剤、及び顔料が挙げられる。
【0036】
本発明との関連において有用な分岐剤は、ポリエステルの酸単位部分内、又はグリコール単位部分に分岐を提供する物質であってよく、或いは分岐剤はハイブリッドであってもよい。このような分岐剤の一例は、ヒドロキシル、カルボキシル、無水カルボン酸、及びこれらの混合物から選択された少なくとも3つの官能基を含む化合物である。例としては、トリ−又はテトラカルボン酸及びこれらの対応無水物、例えばトリメシン酸、ピロメリット酸、及びその低級アルキルエステルなど、及びテトロール、例えばペンタエリトリトールが挙げられる。また、トリオール、例えばトリメチロールプロパン又はジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシジカルボン酸及び誘導体、例えばジメチルヒドロキシテレフタレート、及びこれに類するものも本発明との関連において有用である。トリメリット酸又は無水トリメリット酸が好ましい分岐剤である。
【0037】
これらの分岐剤はポリエステルに、ポリエステルの調製中又は調製後に直接に添加してよく、又は米国特許第5,654,347号明細書及び同第5,696,176号明細書に記載されているような濃縮物の形態でポリエステルとブレンドしてもよい。分岐剤は、ポリエステル組成物の総重量を基準として0.05〜1.5重量パーセントの量で使用してよい。
【0038】
本発明の別の態様は、本発明のリアクターグレードコポリエステルを含むRF溶接可能なフィルム構造である。本発明のフィルム又はシートは、所与の要件に役立ついかなるゲージを有していてもよいが、しかし典型的には1〜100ミル(25〜2500マイクロメートル)、又は5〜30ミル(125〜750マイクロメートル)の範囲に含まれる。このようなフィルムを製作するために、任意のコンベンショナルなフィルム形成法を用いてよい。形成法の一例としては、環状押し出しインフレートフィルム法、スロットダイカスト押し出しフィルム法、及びフィルム又は基体上への1つ又は2つ以上の層の押し出し被覆が挙げられる。
【0039】
本発明のフィルムは、単層フィルムであってよく、或いは多層フィルム構造の1つ又は2つ以上の層として機能することもできる。RF活性コポリエステルは、RFに対して非活性又は弱活性のポリマー層とともに同時押し出しすることができ、或いは、集成することにより多層複合体を形成することもできる。RF活性層をRF非活性層と一緒に同時押し出しフィルム構造に組み込むことにより、望ましいことに、フィルム全体がRF溶接されるのが可能になる。本発明のフィルム構造は「AB」又は「ABA」と表すことができ、「A」層はRF活性フィルムであり、そして「B」層はRF非活性ポリマーである。当業者には容易に明らかであるように、これらの構造は種々様々な予測し得る構造を例示したものにすぎない。
【0040】
加えて、本発明のRF活性コポリエステル組成物を加工して、押し出しプロフィール形状、例えば管にすることもできる。例えば複合部分、例えば医療用捕集バッグを製作するために、フィルム又は他の基体に、RF溶接可能な単層管状構造又は同時押し出し多層管状構造をボンディングすることができる。
【0041】
本発明によるフィルムはいずれも、コンベンショナルなRFシーラーを使用して、それ自体にシーリング又は溶接することができる。商業的に入手可能なRF溶接機、例えばCallanan Company, Kabar, Alloyd, Thermatron, Weldan, Colpitt, Kiefel Technologies, Radyne及びその他から入手可能なものは典型的には周波数27.12MHzで動作する。使用頻度が低い2種の高周波は13.56MHz及び40.68MHzである。RFシーラーを使用すると、ダイ又は工具は、周囲室温(公称23℃)で動作することができ、或いは、典型的には40℃から100℃までの温度に予熱することができる。温度を僅かに上昇させると、アーキングを排除し、RF活性化を改善し、そしてシーリング時間を短くすることができる。
【0042】
本発明の別の態様によれば、本発明のフィルムを加工して、RFシーリング又はヒートシーリングを施しやすい種々の構造にすることができる。パッケージング材料を形成する過程において、典型的なポリエステル押し出し法を用いて、RFシーリング可能なコポリエステル組成物から、1つ又は2つ以上のシートを押し出す。次いでシートを熱成形することにより、パッケージング材料の所望の形状を作成する。例えばフィルムを折り畳み、それ自体に少なくとも部分的にRFシーリングすることにより、バッグ又はポーチを形成することができる。二枚の同じフィルムが、折り目なしにバッグ又はポーチを容易に形成することもできる。他の好適な製品の一例としては、容器、パッケージ、自動車内装トリムファブリック、救命具、防水シート、テントカバー、医療用捕集バッグ、医療用オストミーバッグ、医療用輸液又は静脈内バッグ、エアマットレス、玩具、救命具、食品パッケージ、小売り用製品ブリスターパッケージ、及び管が挙げられる。
【0043】
本発明のリアクターグレードの熱成形可能な、RFシーリング可能なコポリエステルから成る熱成形可能なプラスチックシートは、調節するとしても僅かな調節を加えるだけで、典型的には例えばPVC材料のために用いられるRFシーリング法においてRFシーリングし合わせることができる。このようなシーリング法の一例の場合、本発明のRF溶接可能なフィルム構造を熱成形することを含む製造法による製品は、熱成形することによって第1及び第2のエッジを有する形状にされる。第1及び第2のエッジは折り曲げられるか、又はオーバラップする位置に置かれる。これらのエッジを、オーバラップしたエッジにRFシーリングエネルギーを施すことによってRF溶接し合わせるか又はRFシーリングし合わせる。
【0044】
ほとんどの用途の場合、十分なRFシーリング又はボンディングは、例において記載された破断エネルギーとは異なる、少なくとも4ポンド/インチ(lb/in)(0.72ニュートン/ミリメートル(N/mm))の付着強度に等しい。医療用捕集バッグ又はドレンポーチの場合、二枚のフィルム間のRF溶接が、フィルム自体の引き裂き強度を超える強度を有することが必要となる。換言すれば、フィルムを引き剥がそうとすると、フィルムの少なくとも一方が裂断することになる。ASTM D−903の180度剥離試験によって試験した、少なくとも4 lb/in(0.72N/mm)というRF溶接付着強度又はシーリング付着強度がこの要件を満たす。膨張式の用途に使用されるもののようにフィルム構造が厚くなればなるほど、より高い溶接強度又はボンディング強度が一般に必要となる。上述のように、フィルムは単層又は多層であってよく、これにより、これらのフィルムから形成された物品も単層又は多層物品となる。
【0045】
下記の具体的な例によって本発明をより詳細に説明する。これらの例は説明のための態様であり、本発明を限定するものではなく、むしろ添付の請求項の範囲及び内容の中に含まれるものと広く解釈されるべきである。
【0046】
下記例において、ポリエステル分野における周知の作業に従って、コポリエステルを調製した。それぞれのコポリエステルに対応するコモノマーの量を、それぞれの例において指定する。次いで、結果としてのコポリエステルを、平均厚18ミルのフィルムに形成した。
【0047】
Perkin-Elmer Model DSC-2示差走査熱量計を使用して、結晶化ハーフタイムを測定する。10.0mgの各試料をアルミニウムパン内に密閉し、320℃/分の速度で290℃まで加熱し、そしてヘリウム雰囲気中で2分間にわたって保持した。次いで、10℃のインターバルで、140℃から200℃までの範囲の等温結晶化温度まで、320℃/分の速度ですぐに冷却した。次いで各温度における結晶化ハーフタイムを、発熱曲線のピークに達するために必要となる時間として割り出す。最小結晶化ハーフタイムは、結晶化速度が最速であった温度におけるものである。
【0048】
試験時には、80psiのプラテン圧力及び180°Fのダイ温度で1秒間の前シーリング時間、3.5秒間のシーリング時間、及び0.1秒間の冷却時間を用いて、Kabar 10kW RFシーラーを使用してフィルムをシーリングすることによって、シールの剥離強度を試験した。ASTM D−1876に従ってT剥離抵抗法を用いて、シーリングされたそれぞれの試料のボンディング強度を測定した。試料を70℃及び50%相対湿度で24時間にわたってコンディショニングした。試料の幅は1インチであり、また試験速度は、Instron引張りテスターを使用して1分間当たり1インチであった。荷重対変位曲線下の面積を計算することにより、インチ−ポンド力(in−lbf)で報告される破断エネルギーを割り出す。
【0049】
下記例において利用されるモノマーの量は、モル%で表されるが、当業者には明らかなようにモノマーは3〜5モル%の二次モノマーを含有してよい。例えば、100モル%のエチレングリコールは、プロセス、リサイクルの利用、及び他のパラメータに応じて、最大5モル%のジエチレングリコール(DEG)を含有してよい。ただしDEGは意図的には添加されない。
【実施例】
【0050】
比較例1
100モル%のテレフタル酸、96.5モル%のエチレングリコール、及び3.5モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.72dL/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は65秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー1.5 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0051】
比較例2
100モル%のテレフタル酸、95.5モル%のエチレングリコール、及び4.5モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.73dL/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は85秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー2.3 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0052】
例3
100モル%のテレフタル酸、94モル%のエチレングリコール、及び6モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.71dL/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は163秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー3.2 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0053】
例4
100モル%のテレフタル酸、92モル%のエチレングリコール、及び8モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.72dL/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は200秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー4.6 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0054】
例5
100モル%のテレフタル酸、88モル%のエチレングリコール、及び12モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.68dL/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は517秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー4.6 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0055】
比較例6
97モル%のテレフタル酸、3モル%のイソフタル酸、及び100モル%のエチレングリコールを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.71dL/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は約26秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー1.3 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0056】
比較例7
89モル%のテレフタル酸、11モル%のイソフタル酸、及び100モル%のエチレングリコールを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.77L/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は115秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー4.5 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0057】
比較例8
100モル%のテレフタル酸、69モル%のエチレングリコール、及び31モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。結果としてのポリマーのIVは0.70L/gであった。最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は、あまりにも長すぎて測定できなかった。コポリエステルは、破断エネルギー5.80 in−lbfのRF溶接部を形成した。
【0058】
例9
100モル%のテレフタル酸、80モル%のエチレングリコール、及び20モル%のCHDMを有するコポリエステルを調製した。ポリマーはさらに、ポリエステルの溶融強度を改善するための分岐剤として0.3重量%の無水トリメリット酸(TMA)を含有した。結果としてのポリマーのIVは0.68L/gであり、そして最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)は1644秒であった。コポリエステルは、破断エネルギー4.40 in−lbfのRF溶接部を形成した。分岐剤は、シーリング中の融合分子移動度を遅くすることがあるものの、依然として十分なシーリング強度を提供する。
【0059】
比較例10
31モル%のCHDMを有する5〜50重量%の透明非晶質PETGと、90重量%の半結晶性PETとを有する複数のブレンドを調製した。ポリエステルは、溶融処理前に乾燥させなければならず、さもなければ、高い含湿量に起因して深刻なIV劣化が発生することになる。半結晶性PETは通常300°Fで乾燥させるのに対して、非晶質PETGは典型的には150°で乾燥させる。2種の材料は、押し出し機のホッパー内に供給する前にそれぞれの乾燥温度で混合した。非晶質PETGのペレットは、これらがPETペレットとブレンドされるやいなや素早く凝集し、押し出し機への供給を阻む。
【0060】
熱成形窓
分岐剤、例えばTMAはポリエステルの溶融強度を改善した。加熱炉内のシートのサギング及びウェビングを低減又は最小化することによって、分岐ポリマーの熱成形窓を増大させることができる。例8及び9の例を使用してこのコンセプトを実証した。シート寸法は13インチ×21.5インチ×0.020インチであった。炉の温度を550°Fで一定に保ち、そしてシート温度を赤外線パイロメーターによってモニタリングした。シートが炉内で費やす時間によってシート温度を制御した。多キャビティを有するモールドを使用することによって、各材料の熱成形窓を確立した。下位シート温度は、その部分の良好な細部をまだ提供した最も低いシート温度を記す。上位シート温度は、その部分のウェビングの兆候を示さなかった最も高いシート温度である。熱成形窓は、シートが良好な熱成形部分を生成する温度の範囲を記す。これは、上位シート温度と下位シート温度との差を求めることにより計算される。それぞれの材料に対応する熱成形窓を下記表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示された分岐コポリエステルポリマーの熱成形窓は、非分岐ポリマーのほとんど4倍である。
【0063】
熱シーリング性
本発明の或る態様は、RFシーリングだけではなくヒートシーリングにも使用するように意図されている。下記表2に示された3種の試料を使用して、ヒートシール性の改善を例証した。例5及び8のポリエステル、及び例5のポリエステルと、100モル%のテレフタル酸、63モル%のエチレングリコール、及び37モル%のジエチレングリコールを有する、IVが0.72dL/gの別のポリマーとの50/50重量%ブレンドとからフィルムを調製した。Thellarヒートシーラーを使用した。シーリング条件は40psiの圧力、1/2平方インチのシーリング面積、3秒の滞留時間、24ミルのシール厚であった。シーリング温度は200°F〜300°Fであった。シーリング性は、シールを破壊するために200gの力が必要とされるシーリング温度であるヒートシーリング初期温度(HSIT)を使用することによって割り出した。HSITが、許容し得るシーリングサイクル及びシーリング温度範囲に達することができない場合には、その材料はヒートシーリング可能ではない。ポリエステル組成物のHSITが低ければ低いほど、そのポリエステル組成物は通常、エネルギーがより少なく、サイクル時間がより短く、そして半結晶性ポリマーの結晶化度がより低いことに起因して、ヒートシーリングにとってより良好な材料である。3種の試料のHSIT結果を下記表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
リサイクル及びPETとの適合性
押し出し及び熱成形中に生成されたRFシーリング可能なポリエステルシートのリグラインド又はスクラップを回収して再使用することが望ましい。25パーセントのPCR(post-consumer recycle)含有率が持続可能性のための商業的な最小目標である。「PCR含有率」という用語は、ポリエチレンテレフタレート(PET)含有率を意味する。適合性の基準は、結果として得られたブレンドの溶融温度が閾値約235℃を上回ることである。押し出しシートは、単層又は多層構造中に25重量%を上回るポストコンシューマーリサイクル(PCR)含量を組み込んでいてよい。驚くべきことに、例3〜5のポリエステルを、プロセス又は性能を攪乱することなしに、50%を上回るレベルでPETリサイクル流中に導入することができる。PCR流中に添加してよい本発明のコポリエステルの量を、下記表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
本発明を詳細に説明してきたが、ここに開示され記載された本発明の範囲及び思想を逸脱することなしに本発明の種々の態様に変更を加え得ることは当業者に明らかである。従って、本発明の範囲は、例示され記載された特定の態様に限定されるものでなく、むしろ本発明の範囲は、添付の請求項及びこれらの同等物によって定められるものとする。
本開示は以下も包含する。
[1] (A)(1) 約70モル%を上回るテレフタル酸と;
(2) イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを
含む酸残基部分、並びに
(B)(1) 約75〜約95モル%のエチレングリコールと;
(2) 1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、イソソルビド、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを
含むジオール残基部分
を含むリアクターグレードのコポリエステルであって、
当該コポリエステルは、最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が少なくとも1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としている、
リアクターグレードのコポリエステル。
[2] 前記酸残基部分が、約80モル%を上回るテレフタル酸である、上記態様1に記載のコポリエステル。
[3] 前記酸残基部分が、約90モル%を上回るテレフタル酸である、上記態様1に記載のコポリエステル。
[4] 前記ジオール残基部分が、約6〜約20モル%の改質用ジオールを含む、上記態様1から3のいずれか1項に記載のコポリエステル。
[5] 前記ジオール残基部分が、約6〜約12モル%の改質用ジオールを含む、上記態様1から4のいずれか1項に記載のコポリエステル。
[6] 前記改質用ジオール残基が1,4−シクロヘキサンジメタノールである、上記態様4又は5に記載のコポリエステル。
[7] さらに分岐剤を含む、上記態様1から6のいずれか1項に記載のコポリエステル。
[8] (A)(1) 約70モル%を上回るテレフタル酸と;
(2) イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの混合物から成る群より選択された約0〜30モル%の改質用酸とを
含む酸残基部分、並びに
(B)(1) 約75〜約96モル%のエチレングリコールと;
(2) 1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4−テトラメチルシクロブタン−1,3−ジオール、イソソルビド、及びこれらの混合物から成る群より選択された約5〜約25モル%の改質用ジオールとを
含むジオール残基部分
を含む、リアクターグレードのコポリエステルを含むフィルムであって、
当該組成物は、最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が少なくとも1.5〜30分であり、構成部分(A)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントの酸残基部分を基準としており、そして構成部分(B)のモルパーセンテージの和は100モルパーセントのジオール残基部分を基準としており、そして
該フィルムはRF溶接可能又はヒートシーリング可能である、
リアクターグレードのコポリエステルを含むフィルム。
[9] フィルム厚が1〜100ミルである、上記態様8に記載のフィルム。
[10] フィルム厚が5〜30ミルである、上記態様9に記載のフィルム。
[11] 前記フィルムが単層構造である、上記態様8から10のいずれか1項に記載のフィルム。
[12] 前記フィルムが多層構造である、上記態様8から10のいずれか1項に記載のフィルム。
[13] 上記態様8に記載のフィルムを熱成形することによって第1及び第2のエッジを有する形状にすること、前記第1及び第2のエッジをオーバラップ位置に置き、そして前記第1エッジと第2エッジとを、該オーバラップしたエッジにRFシーリングエネルギー又はヒートシーリングを施すことによってシーリングし合わせることを含む、
製品の製造方法。
[14] (A)25〜99.9重量パーセントの上記態様1に記載のコポリエステルと、
(B)0.1〜75重量パーセントのポストコンシューマーリサイクルストリームと
を含む、コポリエステルブレンド。
[15] 上記態様14に記載のブレンドを含むフィルム。
[16] 多層構造を有する上記態様15に記載のフィルム。
[17] 上記態様14に記載のブレンドを含む製品。
[18] 上記態様17に記載のコポリエステルブレンドであって、
(A)25〜75重量パーセントの上記態様1に記載のコポリエステルと、
(B)25〜75重量パーセントのポストコンシューマーリサイクルとを含み、
当該ブレンドは、最小結晶化ハーフタイム(t1/2 min)によって規定される結晶化度が少なくとも1.5〜30分である、
コポリエステルブレンド。