特許第5722911号(P5722911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5722911偏向面を有する排ガスクリーニングコンポーネントおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722911
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】偏向面を有する排ガスクリーニングコンポーネントおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/28 20060101AFI20150507BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   F01N3/28 301W
   F01N3/24 Q
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-540356(P2012-540356)
(86)(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公表番号】特表2013-512377(P2013-512377A)
(43)【公表日】2013年4月11日
(86)【国際出願番号】EP2010067370
(87)【国際公開番号】WO2011064109
(87)【国際公開日】20110603
【審査請求日】2013年9月10日
(31)【優先権主張番号】102009056183.8
(32)【優先日】2009年11月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500038927
【氏名又は名称】エミテック ゲゼルシヤフト フユア エミツシオンステクノロギー ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100102185
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 繁範
(74)【代理人】
【識別番号】100129399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】ブリュック ロルフ
【審査官】 瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19518536(DE,A1)
【文献】 特開平11−218019(JP,A)
【文献】 特表2007−506893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入側(3)、流出側(4)および所定の流れ方向(6)を有するキャリア構造(2)と、前記流出側(4)と対向して配置される偏向面(5)とを備える排ガスクリーニングコンポーネント(1)を製造する方法であって:
a)前記キャリア構造(2)を提供するステップ;
b)前記キャリア構造(2)を前記所定の流れ方向(6)において前記流入側(3)から前記流出側(4)への排ガスの流れにさらすステップ;
c)前記キャリア構造(2)の前記流出側(4)上の流速(7)の分布を決定するステップ;および、
d)前記流速(7)の分布が均質になるように、前記流出側(4)上の流速(7)の分布に依存して少なくとも1つの背圧エレメント(25)を有する偏向面(5)の形状(8)を構成するステップ;
を少なくとも含む方法。
【請求項2】
ステップd)において、前記偏向面(5)と前記流出側(4)との相互の距離(9)は、高い流速の領域において30mm[ミリメートル]未満に減少する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)において、前記偏向面(5)の前記形状(8)は、流速(7)の分布の形状に関して実質的に鏡像をなすように帯状に構成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)において、前記流れは、前記所定の流れ方向(6)に対してある角度(14)で前記キャリア構造(2)の前記流入側(3)上に少なくとも部分的に斜めに影響を与える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
流入側(3)、流出側(4)および所定の流れ方向(6)を有するキャリア構造(2)と、流出側(4)と対向して配置される偏向面(5)とを備える排ガスクリーニングコンポーネント(1)であって、前記偏向面(5)は、内部に配置される当該偏向面(5)を有する排ガスクリーニングコンポーネント(1)を通過する排ガスフローが0.8を上回る均一性指数を有するように構成され、前記排ガスクリーニングコンポーネント(1)は、主方向(17)を有する流入導管(16)を備え、前記主方向(17)および前記所定の流れ方向(6)は、互いにある角度(14)で配置される、排ガスクリーニングコンポーネント(1)。
【請求項6】
前記偏向面(5)は、少なくとも1つの中心を外れたおよび/または複数のへこみ(15)を有する、請求項5に記載の排ガスクリーニングコンポーネント(1)。
【請求項7】
内燃機関(12)および内燃機関(12)の排ガスをクリーニングするための排気システム(13)を有する自動車両(11)であって、前記排気システム(13)は、請求項またはに記載の排ガスクリーニングコンポーネント(1)または請求項1〜のいずれか1項により製造される排ガスクリーニングコンポーネント(1)から成る、自動車両(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、流入方向へ流れる排ガスフローを戻り流れ方向へと偏向させるための偏向面を有する、特にカウンタフローモードで作動するコンパクトな触媒コンバータの、排ガスクリーニングコンポーネントを製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
自動車交通の安定した増加およびこれまでよりも厳しい排ガス基準の結果、内燃機関を有する自動車両にとって、前記エンジンの排ガスが効率的にクリーニングされることは重要である。この目的のために、従来技術は、内燃機関の排ガスが触媒的に活性な表面を通り越して、そして、排ガスの有害物質(例えば窒素酸化物、すす粒子または一酸化炭素)がこの表面に置かれる触媒を用いて無害な物質(例えば窒素、水およびCO)に転換される、排ガスクリーニングシステムを開示する。排ガスの効率的な転換にとって、比較的高い排ガス温度は一般に必要である。内燃機関の排ガスの温度は、排ガスが内燃機関を出た直後が概して最も高い。そのため、ここには、自動車両のエンジン室内のエンジンに近接して、排ガスクリーニングシステムを配置するためのとても好ましい場所がある。しかしながら、エンジンの近くの取付けスペースは、自動車両において一般に非常に制限される。この理由で、従来の排気システムは自動車両の車体下部に概して配置され、ここではかなりのスペースが利用できる。
【0003】
エンジン室内の限られた取付けスペースを排ガスクリーニングシステムのために利用することが可能であるにもかかわらず、例えば特許文献1から公知であるように、同心的な流れを有する特にコンパクトな排ガスクリーニングコンポーネントは開発された。この種の排気システムにおいて、排ガスは、最初に流入領域を通って流れて、それから偏向して、そして少なくとも部分的に戻りフロー領域を通って後ろに流れる。この場合、戻りフロー領域は流入領域の周辺に同心的に配置される。そのため、流入領域と戻りフロー領域との間に効率的な熱交換が起こる。排気システムの触媒コンバータの表面に起こる触媒反応も、ほとんどの場合発熱である。この理由で、排ガスは排気システムにおいて加熱される。そして、後ろに流れる排ガスは流入排ガスよりも一般に熱い。したがって、流入および戻り流れ間の効率的な熱交換を通じて、排気システムの排ガス温度は上昇することができるかまたは高く保たれることができる。その結果、特に効率的な転換は起こる。同時に、排気システムを流入領域、偏向および戻りフロー領域に分割することを通じて、排気システムの特にコンパクトな配置は達成される。その結果、システムはエンジン室内において自動車両の内燃機関の近くに配置されることができる。
【0004】
この種のコンパクトな触媒コンバータ装置では、エンジンの領域において利用できる取付けスペースに適合するために、少なくとも非常に鋭く角度のついたフローガイドが入口で必要とされることが分かっている。この種の排気システムの中の流れはしたがって、通常、均一ではない。そして、そこに設けられる触媒表面の非効率的な利用に繋がる。この理由で、排気システムは、触媒的に活性な表面の均一な通過流れおよび効率的な利用にとって必要であるよりもしばしば大きく寸法取りされなければならない。加えて、触媒的に活性な表面上の触媒材料の非効率的な利用は、この材料が一般に高価な貴金属を含み、そして排ガス処理コンポーネントにおけるこれらの貴金属の量が経費を節約するためにできるだけ少なくなければならないので、不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO 05/001252 A1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここから始まって、従来技術と関連して記載された技術的課題をさらに緩和することは、本発明の目的である。特に、はじめに記載された課題を少なくとも部分的に解決する排ガスクリーニングコンポーネントを製造する特に有利な方法は、提示される。加えて、特に有利な排ガスクリーニングコンポーネントは、提示される。さらに、エンジンの近くに配置される触媒コンバータ装置の高い触媒活性を確実にするために、エンジンと第1の排ガスクリーニングコンポーネントとの間の領域はできるだけ短く、そして、流れ乱流の減少は回避される。特に戻りフロー領域に配置される環状の触媒コンバータの場合、排ガスも、触媒コンバータ装置の端縁部領域を越えてできるだけ一様に流れることは、同様に達成される。
【0007】
これらの目的は、請求項1の特徴による方法および請求項5の特徴を有する排ガスクリーニングコンポーネントによって達成される。本発明のさらに有利な構成は、従属的に述べられる請求項において特定される。請求項において個々に特定される特徴は、任意の技術的に適切な方法において組み合わされることができ、記載から説明的な材料で補充されることができる。ここで、本発明のさらなる実施形態は示される。
【0008】
本発明によれば、流入側、流出側および所定の流れ方向を有するキャリア構造と、流出側と対向して配置される偏向面とを備える排ガスクリーニングコンポーネントを製造する方法が提案される。そしてその方法は、以下のステップを少なくとも含む:
a)キャリア構造を提供するステップ;
b)キャリア構造を所定の流れ方向において流入側から流出側への排ガスの流れにさらすステップ;
c)キャリア構造の流出側上の流速の分布を決定するステップ;および、
d)流速の分布が均質になるように、流出側上の流速の分布に依存して少なくとも1つの背圧エレメントを有する偏向面の形状を構成するステップ。
【0009】
本発明による方法は、排ガスクリーニングコンポーネントを通過する排ガスフローが均質にされることができるというような方法で、排ガスクリーニングコンポーネントを設計することを可能にする。この場合、戻りフロー領域は流入領域の同心的周辺に概して配置されることができる。その結果、従来技術から記載されている戻りフロー領域から流入領域への効率的な熱移動は、起こることができる。
【0010】
本発明による方法のステップは、好適な構成に関して以下に詳細に説明される。
【0011】
ステップa)において、排ガスクリーニングコンポーネントのキャリア構造は、通常、流れ方向(自由なまたは妨げられない流出および流出する排ガスの純粋な偏向)においてキャリア構造の背後に配置される排気システムの構成要素なしで設けられる。ステップa)において、したがって、流れ方向においてキャリア構造の前方(キャリア構造の後方に配置される構成要素ではなく)の仕上げられた排気システムに存在するすべての構成要素を含む不完全な排ガスクリーニングコンポーネントは、設けられることができる。
【0012】
ステップb)において、このようにして設けられたキャリア構造は、排ガスフローにさらされる。排ガスクリーニングコンポーネントを製造する方法の文脈において、排ガスクリーニングコンポーネントの次の作動において最もしばしば遭遇する排ガス流れ状態におよび/または通常の排ガス試験に対応する特定の特性(排ガス流量、温度および有害物質の積み込み(loading))を有する排ガスクリーニングフローをここで提供することは、通常、有利である。このようにして、排ガスクリーニングコンポーネントは、この種の特にしばしば発生する排ガスフローに正確に適合することができて、したがって、特に作動において効率的である。
【0013】
設けられる排ガスフローは、例えば、自動車両の特定の運転条件の下で排ガスフローに対応してよい。この種の特定の運転条件は、例えば、車両速度、駆動エンジンの回転速度および/または駆動エンジンのトルクに関して定められてよい。この種の特定の運転条件は、排ガスの特定の特性(排ガス流量、温度および有害物質の積み込み)を一般にともなう。
【0014】
特定の特性を有する1つの排ガスフローだけでなく、複数の異なる排ガスフローがステップb)において設けられることもまた可能である。例えば、自動車両の燃料消費量および有害な放出を決定するための通常の試験で生じるような排ガスフロー状態は、提供されてよい。例えば、ヨーロッパのNEDC(New European Driving Cycle)またはアメリカのFTP(Federal Test Procedure)は、ここで適用されてよい。NEDC試験にとって、自動車両は、ローラー形の試験スタンド上で、シミュレートされた一部の都市交通およびシミュレートされた一部のクロスカントリー交通から成る標準化されたドライブサイクルを実行する。この目的のために、自動車両の転がり抵抗および空気抵抗は、前もって正確に決定される。FTPは、自動車両をともなう真の旅行をシミュレートする。両試験は、この技術分野の専門家に知られている。
【0015】
ステップa)およびb)は、特に、キャリア構造の流入挙動および/または通過流挙動を決定するのに役立つ。
【0016】
ステップb)は、排ガスフローをモニタするための信号を測定すると同時に必要な排ガスフローを提供するための手段が利用可能である適切な試験構造において実行されてよい。
【0017】
ステップc)において、キャリア構造の流出側の流速の分布は、決定される。流速の分布は、流出側のどの位置でキャリア構造から現れる排ガスフローがどの速度を有するかを示す領域の関数である。流速のこの種の分布は、例えば、領域の異なる位置で排ガスフローのローカルな流速を測定するかまたは算出することによって決定することができる。これは、例えば、正方形のネットワークセルから成るネットワークのノードに配置されてよい個別の測定点で、通常なされる。測定点は、それから測定格子として組み立てられる。高い測定品質を得るために、測定格子がキャリア構造の横断面に関して対称的に指向される場合、それは有利である。流速の分布の測定品質を向上させるために、測定点の数は増加されてよい。加えて、周囲の測定点に関する流速の勾配は、測定点ごとに考慮されてよい。
【0018】
複数の異なる排ガスフローがステップb)ですでに提供されるときに、ステップc)において、複数のガスフロー分布(異なる積み込み状態で発生する)は決定されることもできる。本発明による方法の継続において、流速の個々に決定される分布(それらの発生する頻度および持続期間にしたがって偏る)を含む流速の平均分布は、これらの流速から決定されることもできる。
【0019】
それから、ステップd)において、キャリア構造からの排ガスの流れを偏らせる偏向面の形状は、流速の分布に依存して構成される。流速の分布は、キャリア構造を通る任意の横断面を通じて、またはキャリア構造の流出側を通じて、概してむらがある。特定の領域において、流速は、他の領域に関して著しく上昇する。キャリア構造の流出側の反対側に位置する偏向面を背圧エレメントに対応して構成することによって、流出側上の流速の均質化は、したがってキャリア構造の部分的に範囲内でも、そして偏向後に、達成されることができる。例えば、キャリア構造と同心的に配置されて、さらなるキャリア構造またはハニカムボディを含む戻りフロー領域は、偏向後に設けられてよい。例えば、キャリア構造の流出側の近くに特に局所的に延びる適切に構成された偏向面は、キャリア構造と偏向面との間の排ガスフローのための背圧エレメントまたはカウンタ圧力エレメントを形成してよい。排ガスがキャリア構造を通って流れるので、この背圧エレメントおよび/またはカウンタ圧力エレメントは、一種のカウンタ圧力クッションを生成して、および/または流れ抵抗はこれにより帯状に増加する。
【0020】
驚くべきことに、カウンタ圧力が偏向面の構成によって帯状に増加する場合、排ガスクリーニングコンポーネントの全体の流れ抵抗にとって有利であることが分かった。このようにして、はじめに言及された課題は、特に、低減されてもよい。
【0021】
偏向面と流出側との間の距離が、高い流速の領域において30mm未満までステップd)において減少している場合、本発明による方法は特に有利である。好ましくは、この距離は、20mm未満にさえ減少する。高い流速の領域は、流速のそのままの分布(すなわち、流出側上の流れに影響する偏向面がないとき)を有するステップc)において決定される高い流速の領域であることが、ここで理解される。偏向面と流出側との間の30mm未満の距離は、流れの重要な再分布を生じさせ偏向面と流出側との間のカウンタ圧力クッションを形成するのに役立つことが分かっている。
【0022】
ステップd)において偏向面の形状が、流速の分布の形状に関して実質的に鏡像をなす(mirror−inverted)ように帯状に構成される場合、方法はまた有利である。これは、特に、偏向面が高い流速の領域においてキャリア構造の流出側に特に近くに接近することを意味する。その一方で、比較的低い流速の領域において偏向面の流出側からの距離はより大きい。偏向面に関しては、流れを均質にする機能に加えて、それがまだ排ガスフローを偏向させる機能を一般に有することも、考慮されなければならない。この理由で、流れを均質にするための偏向面の形状の構成が帯状にのみ実施される場合、それは有利である。流れを均質にするための圧力クッションの形成が必要とされない他の領域において、偏向面の形状の構成は、流れを偏向させる機能によって支配される。
【0023】
ステップb)において、流れが所定の流れ方向に対して少なくとも部分的に傾斜した角度でキャリア構造の流入側に影響を与える(突き当たる、impinge)場合、方法はまた有利である。キャリア構造を通る流れ方向に関して異なる角度を有する複数の部分的な流れは、キャリア構造内に流入してもよい。流れの角度は、例えば、少なくとも10°[度]、好ましくは少なくとも20°[度]、特に好ましくは少なくとも30°[度]でよい。特に、続く偏向面によって均質にされる非対称の流入は、これにより達成される。本発明の好適な応用分野は、ここに存在する。
【0024】
本発明による方法によって製造される排ガスクリーニングコンポーネントに関して、それらが内燃機関のエンジン室において特にスペースをとらない方法で配置されることができることは、通常、必要である。したがって、排ガスフローがこの種の排ガスクリーニングコンポーネントに斜めに(すなわち、ある角度で)入力する場合が、しばしばある。流入が正確にある角度で入る場合、流速のむらのある分布は、一般にキャリア構造の流出側に起こる。これは、本発明による方法を用いる排ガスクリーニングコンポーネントの製造によって、特に効率的にかつ効果的に補償されることができる。
【0025】
本発明の文脈において、流入側、流出側および流れ方向を有するキャリア構造と、流出側と対向して配置される偏向面とを備える排ガスクリーニングコンポーネントであって、偏向面が、内部に配置される偏向面を有する排ガスクリーニングコンポーネントを通過する排ガスフローが0.8を上回る均一性指数を有するように構成される、排ガスクリーニングコンポーネントも提案される。排ガスフローが0.9を上回る均一性指数を有することは、特に好ましい。
【0026】
この種の排ガスクリーニングコンポーネントは、例えば、本発明による方法を用いて製造することができる。均一性指数は、流れ分布の均一性を定める。均一性指数は、流出側を越える流速の分布の積分によって実質的に決定される。そしてそれは、平均流速によって標準化される。均一性指数は、以下の式を用いて流速の分布から決定される。
【0027】
均一性指数を決定するために、領域のローカルの流速
は、多数の測定点(数は指数iに対応する)から決定される。測定点は、領域(例えば、排ガスクリーニングコンポーネントの流出側と平行な通過流れが可能な横断面積)を越えて一様に分布されることが好ましい。例えば、測定点は、各々、正方形のネットワークセルを有する想像上のネットワークのノードでもよい。平均流速
は、流れのこの多数のローカルの流速から算出される。測定点ごとに、ローカルの不均一性指数
は、以下の式を用いてローカルの流速
および平均流速
から決定される。
【0028】
【数1】
【0029】
グローバルな不均一性指数
は、今やローカルの不均一性指数
の平均値としてのすべての測定点にとって算出することができる。均一性指数
は、このグローバルな不均一性指数
から以下の式にしたがって算出される。
【0030】
【数2】
【0031】
1.0の均一性指数は、絶対的に均一な流れ分布に対応する。流速の分布を決定するための上記の特定の方法を用いて、この種の均一性指数が存在するかどうかは調査することができる。均一性指数の存在を決定するために、定義済みの特性を有する排ガスフローが、通常、使われる。これらの特性は、例えば、横断面積当たりの排ガス流量、排ガス温度、および有害物質を有する排ガスの積み込みを含む。
【0032】
均一性指数は、異なる排ガスフローのために決定することもできる。例えば、自動車両(NEDC試験またはFTP試験)の典型的な試験サイクルで生じる異なる排ガスフローは、考慮されてよい。均一性指数が、平均としておよび/または作動時間の所与のパーセンテージ(例えば80%)にとって、定義済みの値の範囲の中に決して位置してはならないという必要性は、それから設定されることができる。
【0033】
偏向面が少なくとも1つの中心を外れたおよび/または複数のへこみを有する場合、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントは特に有利である。「へこみ(dent)」は、流出側と偏向面との間の距離が減少している領域をここで意味する。へこみは、例えば、流出側に向かう偏向面の膨らみおよび/または隆起のように形成されてよい。「中心を外れた」は、へこみがキャリア構造の対向側に同心的に位置されず、中心の外側に好ましくは配置されることをここで意味する。「複数のへこみ」は、複数の別々のおよび/または相互に連結したへこみがあってもよいことを意味する。流速の不規則な分布は、この種のへこみによって特に効果的に補償されることができる。へこみの正確な構成は、本発明による方法の結果でもよい。キャリア構造の流出側の最も近くに位置するへこみの一部は、尖ってなくて、特に、台地、球体または半径を形成することが好ましい。へこみの領域において、偏向面は、キャリア構造の流出側に沿ってその近くに帯状に位置して、その結果、圧力クッション領域が形成されることが好ましい。
【0034】
上記のへこみの提供が、キャリア構造を出た後の排ガスフローに所望の影響を与える特徴があるので、この特徴は、個々に用いられてもよい(例えば、所望の不均一流れ分布の場合)。この理由で、この(異なる)目的のために特に設計された排ガスクリーニングコンポーネントもまたここで提案される。そして、そのコンポーネントは、流入側、流出側および流れ方向を有するキャリア構造と、流出側と対向して配置される偏向面とを備え、偏向面は、少なくとも1つの中心を外れたおよび/または複数のへこみを有する。この場合、中心を外れたおよび/または複数のへこみは、(任意の)所望の流れプロファイルが前記へこみの存在下で正確に(のみ)決められるというような方法で構成される。随意に、はじめに記載された方法は、異なる目的に適合してもよい。そのため、ステップd)において、実際の「影響する」または「所定の流れ分布で確立する」は「均質化」の代わりを果たす。さらに、本明細書に記載されたすべての手段および措置は、適切に組み合わされてよい。
【0035】
特に、キャリア構造に対する排ガスの流入導管が組み込みエレメントではなくて、そのため特に、流入導管の中へおよび/または流入導管の壁から隔てて突き出る付加的なフローガイド面が内部に設けられないことは、この場合も提供される。この種のフローガイド面は、付加的な取付けスペース(特に複数の流入導管が設けられる場合)を必要とする。および/または、第1のキャリア構造の触媒効果が減少してもよい排ガスの層流を引き起こしてよい。この種の付加的なフローガイド面はまた、触媒コンバータ装置の昇温位相において排ガスから熱を正確に抽出することができて、したがってキャリア本体の着火温度の達成まで時間を延長することができる熱容量を構成する。エンジンの近くに配置されるキャリア本体の高い触媒活性を確実にするために、内燃機関と第1のキャリア本体との間の領域ができるだけ短いこと、および流れの乱流の減少が回避されることは、したがって達成されることができる。
【0036】
加えて、排ガスが排ガスクリーニングコンポーネントの戻りフロー領域(第1のキャリア構造と同心的に配置される)内に流入するにつれて排ガスができるだけ均一に分布されるというような方法で、偏向面は構成されなければならない。それの上流(すなわち、先に流れにさらされる領域)に位置するキャリア構造の流れを均質にする機能に加えて、偏向面はしたがって、流れがその後通過する下流の戻りフロー領域に向けて、および/または環状の(触媒的に活性の)ハニカムボディに向けて、排ガスを一様に偏向させる機能を付加的に有する。この場合、0.8を上回る均一性指数は、戻りフロー領域においても達成されることが特に好ましい。
【0037】
排ガスクリーニングコンポーネントが主方向を有する流入導管を備える場合、そして、主方向とキャリア構造の所定の流れ方向とが互いにある角度に配置される場合、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントはまた有利である。この種の流入導管で、流速の不均等な分布は、一般にキャリア構造の流出側に起こる。この理由で、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントは、キャリア構造の流れ方向に対してある角度で配置される主方向を有する流入導管の場合に特に有利である。
【0038】
内燃機関および内燃機関の排ガスをクリーニングするための排気システムを有し、排気システムは、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントを有するか、または本発明による方法を用いて製造される排ガスクリーニングコンポーネントを有する自動車両もまた本発明にしたがう。
【0039】
本発明による方法に関して記載された効果および特色は、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントに対して類似して移転可能である。同じことは本発明による排ガスクリーニングコンポーネントに関して記載された特別な効果および構成にあてはまる。そしてそれは、本発明による方法に対して類似して移転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明および関連した技術分野は、図を参照して以下にさらに詳細に説明される。図は特に好ましい例示的実施形態を示すが、本発明はそれに限定されない。図および特に示される寸法の関係は模式的なだけであるとも指摘されなければならない。
図1図1は、流速の分布を有するキャリア構造を示す。
図2図2は、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントの第1の実施形態を示す。
図3図3は、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントの第2の実施形態を示す。
図4図4は、本発明による排ガスクリーニングコンポーネントを備える自動車両を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、キャリア構造2の流出側4上の流速7の分布がどのように形成されてよいかを示す。この場合、排ガスは、キャリア構造2の流入側3からキャリア構造2の流出側4まで流れ方向6に流れる。キャリア構造2は、例えば、少なくとも1つの少なくとも部分的に構造化された金属箔18から巻かれるか、ロールされるか、または積み重ねられるハニカムボディでよい。しかしながら、それはセラミックハニカムボディでもよい。この種のキャリア構造は、一般に、流入側3から流出側4まで続いて、キャリア構造2を通る流れ方向6を定めるチャネル19を有する。個々のチャネル19間の開口がキャリア構造2の中にあり、その開口を通って排ガスがキャリア構造2の中に再分布されることができること、および流入側3の流速7の分布が流出側4の流速7の分布と異なることは、図面に示されないが、本発明の意味の範囲内で可能である。
【0042】
図2および図3は、本発明による排ガスクリーニングコンポーネント1の2つの異なる実施形態を示す。排ガスクリーニングコンポーネント1は、いずれの場合もハウジング20ならびに流入側3および流出側4を有するキャリア構造2を備える。排ガスは、流れ方向6にキャリア構造2を通過する。排ガスがキャリア構造2に供給されることを可能にする流入導管16は、流入側3に示される。流入導管16は、いずれの場合も、流れ方向6に関して角度14で斜めに配置される主方向17を有する。図2によれば、1本の流入導管16は設けられる。図3によれば、4本の流入導管16は設けられる。図3で示す排ガスクリーニングコンポーネント1は、例えば、複数の排気マニホルドに直接接続してよい。
【0043】
偏向面5は、キャリア構造2の流出側4に対向して設けられる。偏向面5は、特定の構成を有する形状8を有する。形状8は、それが排ガスフローの均質化を生成するというような方法で、少なくとも部分的に構成される。偏向面5の形状8は、例えば、流出側4から現れる排ガスフローに対する背圧エレメント25を形成するへこみ15を有してよい。図2によれば、1つのへこみ15を有する偏向面5は示される。図3は、複数のへこみ15を有する偏向面5を示す。図2および図3において、それぞれの偏向面5による流れの均質化が起こらない場合、あるだろう流速7のそのままの分布は、いずれの場合も破線によって示される。へこみ15の領域において、偏向面5は、流出側4から40mm未満の距離9である。このようにして、へこみ15で流れに局所的に圧力クッションが生成される。この圧力クッションは、さもなければ優勢である流速7の示された分布に反対に作用して、その結果、この分布は均質になる。
【0044】
図2および図3に表される排ガスクリーニングコンポーネント1は、各々、キャリア構造2を有する流入領域23を備える。戻りフロー領域24は、流入領域23の外側に、そして流入領域23の同心的周辺に配置される。偏向面の形状8は、偏向領域5の偏向機能によって部分的にのみ決定される。形状8はまた、流入領域23から戻りフロー領域24への排ガスフローの適切な偏向が遂行されるというような方法で、構成される。さらに、ハニカムボディ21は、戻りフロー領域24内に配置されてよい。偏向面5の本発明による構成はまた、これらのハニカムボディ21内への均一な流入をもたらす。戻りフロー領域24から、排ガスは、出口ダクト22を通って本発明による排ガスクリーニングコンポーネント1を去ることができる。
【0045】
図4は、内燃機関12および本発明による排ガスクリーニングコンポーネントを有する排気システム13を備える自動車両11を示す。
【0046】
本発明による方法および本発明による排ガスクリーニングコンポーネントは、コンパクトな触媒コンバータの特に有利な構成および製造を可能にする。それによって、コンパクトな触媒コンバータは、大きさをさらに減少させることができて、費用対効果をより高めて製造することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1…排ガスクリーニングコンポーネント
2…キャリア構造
3…流入側
4…流出側
5…偏向面
6…流れ方向
7…流速の分布
8…形状
9…距離
10…コーティング
11…自動車両
12…内燃機関
13…排気システム
14…角度
15…へこみ
16…流入導管
17…主方向
18…金属箔
19…チャネル
20…ハウジング
21…ハニカムボディ
22…出口ダクト
23…流入領域
24…戻りフロー領域
25…背圧エレメント
図1
図2
図3
図4