(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722928
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】無線タグ初期化装置及び無線タグ初期化方法
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
G06K7/10 104
G06K7/10 184
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-10091(P2013-10091)
(22)【出願日】2013年1月23日
(65)【公開番号】特開2014-142759(P2014-142759A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保里 房生
【審査官】
村田 充裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−135691(JP,A)
【文献】
特開2005−322030(JP,A)
【文献】
特開2004−078656(JP,A)
【文献】
特開2011−028470(JP,A)
【文献】
特開2010−134524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04B 1/59
H04b 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の距離内にある無線タグを起動させる第1の電力により第1のコマンドを送信し、前記第1の電力により起動した無線タグについて第2のコマンドを受付可能な状態に設定する第1のコマンド送信部と、
前記第1のコマンド送信部によって前記第1のコマンドが送信された後に前記第2のコマンドを送信し、前記第2のコマンドを受付可能な状態に設定された無線タグについて第3のコマンドを受付可能な状態に設定する第2のコマンド送信部と、
前記第2のコマンド送信部によって前記第2のコマンドが送信された後に、前記第1の電力よりも大きい第2の電力により前記第3のコマンドを送信し、前記第3のコマンドを受付可能な状態に設定された無線タグに、前記第3のコマンドに基づいて初期値を書き込む第3のコマンド送信部と、
を備える無線タグ初期化装置。
【請求項2】
前記第3のコマンド送信部は、前記第3のコマンドを送信した後、前記第2の電力を第3の電力まで低下させ、前記初期値が書き込まれた無線タグについて前記初期値の書き込みができない状態に設定する請求項1記載の無線タグ初期化装置。
【請求項3】
前記第2のコマンド送信部は、前記第2のコマンドを受付可能な状態に設定されていない無線タグについて、前記第2のコマンドによって、前記第3のコマンドを受け付けできない状態に設定する請求項1又は2記載の無線タグ初期化装置。
【請求項4】
第1のコマンド送信部が、一定の距離内にある無線タグを起動させる第1の電力により第1のコマンドを送信し、前記第1の電力により起動した無線タグについて第2のコマンドを受付可能な状態に設定する第1のコマンド送信ステップと、
第2のコマンド送信部が、前記第1のコマンド送信ステップで前記第1のコマンドが送信された後に前記第2のコマンドを送信し、前記第2のコマンドを受付可能な状態に設定された無線タグについて第3のコマンドを受付可能な状態に設定する第2のコマンド送信ステップと、
第3のコマンド送信部が、前記第2のコマンド送信ステップで前記第2のコマンドが送信された後に、前記第1の電力よりも大きい第2の電力により前記第3のコマンドを送信し、前記第3のコマンドを受付可能な状態に設定された無線タグに、前記第3のコマンドに基づいて初期値を書き込む第3のコマンド送信ステップと、
を有する無線タグ初期化方法。
【請求項5】
前記第3のコマンド送信ステップは、前記第3のコマンド送信部が、前記第3のコマンドを送信した後、前記第2の電力を第3の電力まで低下させ、前記初期値が書き込まれた無線タグについて前記初期値の書き込みができない状態に設定するステップを有する請求項4記載の無線タグ初期化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線タグ初期化装置及び無線タグ初期化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線タグは電磁気的方法により情報を無線タグ内部に保持する。この無線タグ内部に保持された情報を、リーダライタを用いて読み取ることにより無線タグが識別される。
【0003】
この識別に用いられる情報を無線タグに書き込むことを無線タグの初期化という。
【0004】
無線タグを多数初期化する必要がある場合には無線タグ初期化装置が用いられる。この無線タグ初期化装置は、台紙に指示された複数の無線タグを一つのリーダライタによって連続的に初期化する。従って、初期化する無線タグをどのように特定するかが問題となる。
【0005】
従来の無線タグ初期化装置は、無線タグからの応答波の強さを測定して初期化対象のタグを特定していた。
【0006】
しかし、無線タグの中には受信電力の強さによらず、一定の強さの応答波を出力するものがある。従って、このような種類の無線タグは従来の方法では初期化対象のタグを特定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−134711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、受信電力の強さによらず、一定の強さの応答波を出力する無線タグも連続的に初期化できる無線タグ初期化装置及び無線タグ初期化方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態は、
一定の距離内にある無線タグを起動させる第1の電力により第1のコマンドを送信し、第1の電力により起動した無線タグについて第2のコマンドを受付可能な状態に設定する第1のコマンド送信部と、第1のコマンド送信部によって第1のコマンドが送信された後に第2のコマンドを送信し、第2のコマンドを受付可能な状態に設定された無線タグについて第3のコマンドを受付可能な状態に設定する第2のコマンド送信部と、第2のコマンド送信部によって第2のコマンドが送信された後に、第1の電力よりも大きい第2の電力により第3のコマンドを送信し、第3のコマンドを受付可能な状態に設定された無線タグに、第3のコマンドに基づいて初期値を書き込む第3のコマンド送信部と、を備える無線タグ初期化装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】無線タグとリーダライタとの構成を示すブロック図である。
【
図3】無線タグ初期化装置の初期化動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、無線タグ初期化装置及び無線タグ初期化方法の一実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の無線タグ初期化装置は、初期化対象の無線タグだけが起動し、他の無線タグが起動しない第1の閾値まで給電力を弱め、初期化対象の無線タグのSLフラグを反転させ、Session 0以外によってインベントリラウンドを開始してSLフラグが反転している無線タグだけを応答ステートに遷移させ、初期値の書き込みに十分な第2の閾値まで給電力を上昇させ、無線タグに初期値を書き込むコマンドを送信するリーダライタを備える。
【0013】
図1は、本実施形態の無線タグ初期化装置10の構成を示す図である。
図1に示すように、無線タグ初期化装置10は、CPUを含む主制御部11と、ROM、RAM、フラッシュROM、ハードディスクドライブなどの記憶装置12と、無線タグ110に対して情報を読み書きするリーダライタ120と、を備える。
【0014】
記憶装置12は、後述する初期値、第1の閾値、第2の閾値、及び第3の閾値を格納する。
【0015】
無線タグ初期化装置10の主制御部11及び記憶装置12は後述するリーダライタ制御部126が兼ねていてもよい。
【0016】
無線タグ初期化装置10はリーダライタ120によって台紙20に支持された初期化対象の無線タグ110を初期化し、他の無線タグ110Aは同時には初期化しない。
【0017】
無線タグ初期化装置10はリーダライタ120によって台紙20に指示された無線タグ110、120Aのうち、順次初期化の対象となる無線タグ110を変えて初期化する。
【0018】
図2は、無線タグ110とリーダライタ120との構成を示すブロック図である。
図2に示すように、無線タグ110は、記憶装置であるメモリ111と、メモリ111へのデータの読み書きを行う無線タグ制御部112と、受信した変調電磁波の整流と安定化を行うことにより電源を供給する電源生成部115と、信号を送受信するためのアンテナである無線タグアンテナ116と、無線タグ制御部112から送出されたデータを変調して無線タグアンテナ116に送出する変調部113と、受信した変調電磁波を復調して無線タグ制御部112へ送出する復調部114とを備える。
【0019】
リーダライタ120は、無線タグ110との通信を制御し、接続する各ハードウエアを制御するリーダライタ制御部126と、リーダライタ制御部126から送出された信号を変調する変調部122と、変調された信号を増幅してサーキュレータ131を介してアンテナ121に送出する送信アンプ123と、各アンテナからサーキュレータ131を介して受信した変調電磁波を増幅する受信アンプ124と、受信した変調信号を復調する復調部125と、画像処理装置1の制御部に接続し、データの授受を行うインターフェース130と、を備える。またリーダライタ制御部126は、CPU127及びデータを格納するメモリであるROM128及びRAM129を備える。
【0020】
無線タグ初期化装置10の初期化動作によって、初期値が無線タグ110のメモリ111に格納される。この初期値は、例えば無線タグ110に貼付されるバーコードが示す値と同じである。
【0021】
図3は、無線タグ初期化装置10の初期化動作を示すフローチャートである。
図3に示すように、ステップ301において、無線タグ初期化装置10は供給電力を第1の閾値まで低下させる。
【0022】
ここで、第1の閾値は、初期化対象の無線タグ110だけが起動し、他の無線タグ110Aは起動しない電力である。この電力であれば、リーダライタ120のアンテナ121に最も近い無線タグ110だけが起動する。
【0023】
この第1の閾値は、リーダライタ120のアンテナ121に最も近い無線タグ110だけが起動する電力を予め実測して求めておき、無線タグ初期化装置10の記憶装置12に格納される。
【0024】
ステップ302において、無線タグ初期化装置10は初期化対象の無線タグ110にselectコマンドを送信して選択する。
【0025】
ステップ303において、無線タグ110はSLフラグを反転させる。
【0026】
無線タグ110はSLフラグとしてA又はBを保持する。例えば、無線タグ110が保持していたSLフラグの初期値がAの場合、無線タグ110はselectコマンドを受信するとSLフラグをBに反転させる。
【0027】
ここで、初期化対象でない無線タグ110Aは、給電力が起動電力に満たないため起動せず、SLフラグの反転が行われない。よって、初期化対象の無線タグ110だけが、SLフラグの反転が行われる。
【0028】
この場合の無線タグ初期化装置10からの給電力は、無線タグ110のフラグを反転させることはできるが、初期値を書き込むには弱すぎる。
【0029】
ステップ304において、無線タグ初期化装置10はQueryコマンドを送信し、Session 0以外のセッションによってインベントリラウンドを開始する。
【0030】
この際、無線タグ初期化装置10はQueryコマンドのパラメータを反転したSLフラグに合わせてQueryコマンドを無線タグ110に送信する。
【0031】
Session 0以外のセッション、すなわちSession 1乃至3においては、無線タグ110は無線タグ110への給電が停止しても所定時間SLフラグの値を保持する。
【0032】
ステップ305において、SLフラグが反転している無線タグ110はQueryコマンドを受信すると、Queryコマンドのパラメータを反転したSLフラグが合っているため応答ステートに遷移し、他の無線タグ110Aはスタンバイステートに遷移する。
【0033】
無線タグ110は応答ステートに遷移するとWriteコマンドの受付が可能となり、他の無線タグ110Aはスタンバイステートに遷移するためWriteコマンドは受け付けなくなる。
【0034】
ステップ306において、無線タグ初期化装置10は給電力を初期値の書き込みが可能な第2の閾値まで上昇させる。
【0035】
ステップ308において、無線タグ初期化装置10はWriteコマンドによって初期値を無線タグ110に書き込む指示を送信する。
【0036】
ステップ309において、無線タグ110は初期値をメモリ111に格納する。
【0037】
すなわち、応答ステートにある無線タグ110だけがこのWriteコマンドを受け付け、初期値をメモリ111に書き込む。スタンバイステートにある他の無線タグ110AはWriteコマンドを受け付けない。
【0038】
ステップ310において、給電力を第3の閾値まで低下させる。この第3の閾値は無線タグ110がSLフラグを反転させる程度に弱い電力である。
【0039】
なお、無線タグ110を移動させることによって給電される電力を弱めてもよい。
【0040】
ステップ311において、無線タグ110は保持していたSLフラグ、先の例ではBをAに反転する。
【0041】
ここで、上述のステップ304からステップ310、すなわち一つのインベントリラウンド内では、無線タグ初期化装置10は給電力を、無線タグ110がSLフラグを再反転させる第3の閾値より強く、初期化対象の無線タグ110だけを起動させる第1の閾値以下の範囲に保つ。
【0042】
以上述べたように、本実施形態の無線タグ初期化装置10は、初期化対象の無線タグ110だけが起動し、他の無線タグ110Aが起動しない第1の閾値まで給電力を弱め、初期化対象の無線タグのSLフラグを反転させ、Session 0以外によってインベントリラウンドを開始してSLフラグが反転している無線タグ110だけを応答ステートに遷移させ、初期値の書き込みに十分な第2の閾値まで給電力を上昇させ、無線タグ110に初期値を書き込むコマンドを送信するリーダライタ120を備える。
【0043】
従って、受信電力の強さによらず、一定の強さの応答波を出力する無線タグも連続的に初期化できるという効果がある。
【0044】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0045】
110:無線タグ
120:リーダライタ