(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
バーナにより加熱される熱交換器が前記バーナの燃焼室を形成する筒胴の上部に設けられ、前記筒胴に形成された測温用開口を通して前記燃焼室に臨む状態で設けられた燃焼室温度検出手段と、前記燃焼室温度検出手段の検出情報に基づいて、前記バーナの燃焼異常を検出する異常検出手段とが設けられた燃焼装置の異常検出装置であって、
前記バーナが、火炎を形成するための多数の炎孔を列状に並ぶ状態で形成した炎孔形成部と、各炎孔に混合ガスを供給する混合ガス流路としての混合室とを備えて構成され、
前記混合室が、前記炎孔の並び方向に沿って並ぶ状態で左右一対設けられ、
左右両側の前記混合室夫々のガス導入部から燃料ガス及び一次空気が導入されて混合ガスとなり、左右両側の前記混合室のうちの左側の混合室が、多数の前記炎孔のうちの左側半分の炎孔に混合ガスを供給し、右側の混合室が、多数の前記炎孔のうちの右側半分の炎孔に混合ガスを供給するように構成され、
前記燃焼室温度検出手段が、多数の前記炎孔のうちの前記左側半分の炎孔に対応する箇所と多数の前記炎孔のうちの前記右側半分の炎孔に対応する箇所とに位置するように、前記筒胴の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で複数設けられ、
前記異常検出手段が、前記複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の関係が設定適正関係を外れると、前記バーナの燃焼異常であると判別するように構成され、かつ、前記複数の温度検出値の関係としての、前記複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される温度検出値の夫々についての時間経過に伴う変化率の差が、前記設定適正関係としての設定許容範囲でなくなると、前記バーナの燃焼異常であると判別するように構成され、
前記異常検出手段が、設置後の運転開始時に前記バーナを燃焼させたときの前記燃焼室温度検出手段の温度検出値を基準検出値として予め記憶しておき、その後の前記バーナの燃焼時において、前記燃焼室温度検出手段の温度検出値の前記基準検出値からの変動幅を、時間経過に伴う前記変化率として求めるように構成されている燃焼装置の異常検出装置。
【背景技術】
【0002】
上記燃焼装置の異常検出装置は、例えば、ガス瞬間湯沸器などに用いられるものであり、従来においては、熱電対にて構成された燃焼室温度検出手段が筒胴に形成された測温用開口を通して燃焼室内に臨む状態で筒胴の横幅方向の横一側部位に位置する状態で設けられ、前記異常検出手段が、前記燃焼室温度検出手段にて検出される温度検出値、具体的には熱電対の検出電圧値が予め設定されている判別用閾値を超えると前記バーナの燃焼異常を検出する構成となっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような燃焼装置の異常検出装置は、バーナが不完全燃焼を起してその燃焼に伴って発生する煤等の燃焼生成物が熱交換器に付着堆積すること等により、燃焼室内でのバーナの燃焼排気の流動が悪くなると、燃焼室内から前記測温用開口を通して高温の燃焼排気が燃焼室温度検出手段に流動して高温状態が検出されることになるから、その燃焼室温度検出手段の検出情報に基づいて前記異常検出手段がバーナの燃焼異常を検出することができるようにしたものである。
【0004】
前記熱交換器に煤等の燃焼生成物が付着堆積することについて、説明を加えると、前記バーナは、火炎を形成するための多数の炎孔を列状に並ぶ状態で形成した炎孔形成部と、前記各炎孔に混合ガスを供給する混合ガス流路とを備えて構成され、且つ、前記混合ガス流路は前記炎孔の並び方向に沿って並ぶ状態で左右一対設けられ、左右両側の混合ガス流路のうちの左側の混合ガス流路は多数の炎孔のうちの左側半分の炎孔に混合ガスを供給し、右側の混合ガス流路は多数の炎孔のうちの右側半分の炎孔に混合ガスを供給するようになっている。左右の混合ガス流路における夫々のガス導入部には大きめの開口が形成され、燃料ガスを噴出させるガスノズルがその開口から内奥側に向かうように設けられて、ガスノズルから噴出される状態でガス導入部から前記混合ガス流路形成部の内部に燃料ガスが吹き込まれ、且つ、その燃料ガスの吹き込みに伴うエジェクタ作用によって前記開口の周囲の空気(一次空気)も一緒に吸い込まれるようになっており、燃料ガスと一次空気とが混合ガス流路内を通過しながら混合されて炎孔に供給されるようになっている。
【0005】
そして、このようなバーナにおいて、前記ガス導入部に蜘蛛の巣が張ったり塵埃が付着したりして、燃料ガスや一次空気の流動を阻害する状態になることがある。そうすると、燃料ガスが噴出されるときの流速が低下してエジェクタ作用が低下することにより一次空気の取り入れ量が減少したり、又、開口から吸い込まれる空気の量が減少して、混合ガスにおける燃料ガスの量に対する燃焼用空気の量が不足してバーナが不完全燃焼を起して煤等の燃焼生成物が発生する。その燃焼生成物は発生箇所から燃焼排ガスの上昇気流により直上に流動して熱交換器に付着するのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来構成においては、燃焼室内において熱交換器に多量の燃焼生成物が付着して排気閉塞が生じている場合には、そのような異常状態であることを検出することは可能であるが、バーナが不完全燃焼を起こして煤等の燃焼生成物が熱交換器に付着し始めていることを早期に検出することができないものであった。
【0008】
説明を加えると、上記従来構成では、前記異常検出手段は燃焼室温度検出手段にて検出される温度検出値が予め設定されている判別用閾値を超えるとバーナの燃焼異常を検出するものであるが、燃焼室温度検出手段にて検出される温度検出値、具体的には検出電圧値が、例えば、バーナの燃焼量の違いや使用環境等の違いにより、燃焼生成物の熱交換器への付着状態が同じであっても異なった値になることがある。
【0009】
例えば、バーナの燃焼量が調整可能範囲の大側に調整されているときは、燃焼排ガスの発生量が多くなり、燃焼生成物の熱交換器への付着が発生していない状態であっても、燃焼室温度検出手段にて少し高めの電圧値が検出されることがある。又、燃焼装置の近くに設けられる換気用の窓を閉めているときは燃焼室からの排気が良好に行われるが、部屋の換気を行うために窓を開けているときは、窓を通して外部から吹き込む風の影響により燃焼室内から前記測温用開口を通して高温の燃焼排気が燃焼室温度検出手段に流動しやすくなり、少し高めの電圧値が検出されることがある。
【0010】
そして、異常を判別するための前記判別用閾値として低めの電圧値を設定して厳しめの判別基準を設定しておくと、上記したような外部環境の違いに起因して、燃焼生成物の熱交換器への付着が発生していない状態であるにもかかわらず、頻繁に異常状態であると誤検出するおそれがあるから、このような誤検出を防止するために、異常を判別するための判別基準として比較的緩めの判別基準が設定されていた。具体的には、前記判別用閾値として比較的高めの電圧値が設定されていた。
【0011】
その結果、熱交換器に対して煤等の燃焼生成物が多量に付着堆積して、燃焼室内から前記測温用開口を通して高温の燃焼排気が燃焼室温度検出手段に多量に流動することにより、検出電圧値が高めの電圧値として設定された判別用閾値を超えると異常状態を判別できるものであるが、バーナが不完全燃焼を起こして煤等の燃焼生成物が熱交換器に付着し始めている初期段階において早期にそのような異常状態であることを検出することが難しいものとなっていた。
【0012】
本発明の目的は、バーナが不完全燃焼を起して燃焼室内の熱交換器に煤等の燃焼生成物が付着し始めているような場合に、極力早くそのような異常状態であることを検出することが可能となる燃焼装置の異常検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る燃焼装置の異常検出装置は、バーナにより加熱される熱交換器が前記バーナの燃焼室を形成する筒胴の上部に設けられ、前記筒胴に形成された測温用開口を通して前記燃焼室に臨む状態で設けられた燃焼室温度検出手段と、前記燃焼室温度検出手段の検出情報に基づいて、前記バーナの燃焼異常を検出する異常検出手段とが設けられたものであって、その第1特徴構成は、
前記バーナが、火炎を形成するための多数の炎孔を列状に並ぶ状態で形成した炎孔形成部と、各炎孔に混合ガスを供給する混合ガス流路としての混合室とを備えて構成され、
前記混合室が、前記炎孔の並び方向に沿って並ぶ状態で左右一対設けられ、
左右両側の前記混合室夫々のガス導入部から燃料ガス及び一次空気が導入されて混合ガスとなり、左右両側の前記混合室のうちの左側の混合室が、多数の前記炎孔のうちの左側半分の炎孔に混合ガスを供給し、右側の混合室が、多数の前記炎孔のうちの右側半分の炎孔に混合ガスを供給するように構成され、
前記燃焼室温度検出手段が、
多数の前記炎孔のうちの前記左側半分の炎孔に対応する箇所と多数の前記炎孔のうちの前記右側半分の炎孔に対応する箇所とに位置するように、前記筒胴の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で複数設けられ、
前記異常検出手段が、前記複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の関係が設定適正関係を外れると、前記バーナの燃焼異常であると判別するように構成され、かつ、前記複数の温度検出値の関係としての、
前記複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される温度検出値の夫々についての時間経過に伴う変化率の差が、前記設定適正関係としての設定許容範囲でなくなると、前記バーナの燃焼異常であると判別するように構成され、
前記異常検出手段が、設置後の運転開始時に前記バーナを燃焼させたときの前記燃焼室温度検出手段の温度検出値を基準検出値として予め記憶しておき、その後の前記バーナの燃焼時において、前記燃焼室温度検出手段の温度検出値の前記基準検出値からの変動幅を、時間経過に伴う前記変化率として求めるように構成されている点にある。
【0014】
すなわち、前記異常検出手段は、筒胴の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で設けられた複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の関係が設定適正関係を外れるとバーナの燃焼異常であると判別することになる。ここで、前記複数の温度検出値の関係としては、例えば、複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の差分値や複数の温度検出値の時間経過に伴う変化率の差等があり、複数の温度検出値の差分値が、前記設定適正関係としての設定許容範囲でなくなるとバーナの燃焼異常であると判別するようにしたり、複数の温度検出値の時間経過に伴う変化率の差が設定適正関係としての設定許容範囲でなくなるとバーナの燃焼異常であると判別する構成等がある。
【0015】
前記複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値について、夫々の温度検出値そのものの変化量が少なくても、上記したような複数の温度検出値の関係であればそのような変化を検出し易いものにできる。説明を加えると、例えば、バーナの燃焼量や換気用の窓の開閉状態などの燃焼装置の使用状態が変化するようなことがあっても、前記複数の燃焼室温度検出手段は、筒胴の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置されるものであるから、常に同じ条件下で温度検出値を検出することになる。その結果、燃焼装置の使用状態の違いによる計測誤差の発生状況は夫々同じであるから、それら複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の関係から、例えば、一部の箇所で燃焼生成物が付着することにより、いずれかの燃焼室温度検出手段の温度検出値だけが少し変化しても、そのことを精度よく検出することが可能となるのである。
【0016】
そこで、そのような複数の温度検出値の関係が設定適正関係を外れるとバーナの燃焼異常であると判別するが、異常を判別するための判別基準として厳しめの判別基準を設定する、例えば前記設定適正関係としての設定許容範囲を狭い範囲に設定することが可能であるから、燃焼室の横幅方向の一部の領域において煤等の燃焼生成物が付着し始めているような場合に、早期にそのような異常状態を検出することが可能となる。
【0017】
従って、第1特徴構成によれば、バーナが不完全燃焼を起して燃焼室内の熱交換器に対して煤等の燃焼生成物が付着し始めているような場合に、極力早くそのような異常状態であることを検出することが可能となる燃焼装置の異常検出装置を提供できるに至った。
【0023】
また、前記燃焼室の横幅方向の一部の領域においてのみ煤等の燃焼生成物が付着し始めているような場合、バーナの燃焼時間が長くなるほど燃焼生成物の堆積量が増加して閉塞度合いが大となるものであるが、その一部の領域に対応して配備された燃焼室温度検出手段には前記測温用開口を通して燃焼排ガスが流動するので、その温度検出値が時間の経過と共に上昇していくことになる。一方、煤等の燃焼生成物が付着していない他の領域に対応して配備された燃焼室温度検出手段には燃焼排ガスが流動することがないから、時間が経過しても温度検出値が上昇することがない。その結果、複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の時間経過に伴う変化率に差が生じることになる。
【0024】
そこで、前記異常検出手段が、前記複数の温度検出値の時間経過に伴う変化率の差が設定許容範囲でなくなる、つまり設定許容範囲を超えて大きくなると、バーナの燃焼異常であると判別するのである。そして、このように複数の温度検出値の時間経過に伴う変化率の差を用いるようにすると、複数の燃焼室温度検出手段の個体差に起因した誤差による影響を少なくして精度よくバーナの燃焼異常を判別することが可能となる。
従って、第1特徴構成によれば、複数の燃焼室温度検出手段の個体差に起因した誤差による影響を少なくしながら、異常状態であることを検出することが可能となる燃焼装置の異常検出装置を提供できるに至った。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔第1実施形態〕
本発明に係る燃焼装置の異常検出装置の
参考の実施形態である第1実施形態をガス瞬間湯沸器に適用した場合について図面に基づいて説明する。
このガス瞬間湯沸器は、
図1に示すように、ガス燃焼式のバーナBの燃焼室Rを形成する筒胴1と、その筒胴1の上部に設けられたフィンチューブ型の熱交換器2とを備え、その熱交換器2には、給水路Wiと給湯路Woとが接続されている。前記給水路Wiには、止水弁4、水圧変化に応動して給水量を調整する水ガバナ5、ならびに、熱交換器2への給水量とバイパス路Wbを介して給湯路Woへ分流供給するバイパス水量との比率を調整する分流弁6が介装され、前記給湯路Woには、フレキシブル管7を介して出湯具8が接続されている。前記バーナBに燃料ガスを供給するガス供給路Gには、電磁操作式の遮断弁9、水ガバナ5に連動の連動杆10aの応動に伴って、熱交換器2への通水状態でのみ開く水圧応動弁10、燃料ガスの供給圧を適正圧に保つガスガバナ11、ならびに、燃料ガスの供給量を調整する調整弁12が介装されている。
【0028】
このような構成のガス瞬間湯沸器は、その作動がコントローラCによって以下に説明するようにして制御される構成となっている。
すなわち、押しボタン式の出湯操作具13を押すと、操作マイクロスイッチ14がONし、同時に、出湯操作具13の押し操作に連動して止水弁4が開弁され、水ガバナ5に流入する水圧により水ガバナ5に連動の連動杆10aが水圧応動弁10を開弁する方向に応動して水圧マイクロスイッチ15をONする。操作マイクロスイッチ14と水圧マイクロスイッチ15がONすると、コントローラCは、点火プラグ16による点火処理を実行し且つ遮断弁9のコイル9aに吸着電流を流して遮断弁9を開弁する。そうすると、前記バーナBには、ガス供給路Gから燃料ガスが供給されて、点火プラグ16により点火されて燃焼することになる。その燃焼時においては、筒胴1下方に開口の空気取入口から燃焼用空気が供給され、バーナBからの排ガスが筒胴1内を通流して、上方に開口の排気口から排出される。
【0029】
前記バーナBの近傍には、燃焼炎温度検出手段としてのバーナ用の熱電対17が設けられ、バーナBの燃焼によって、このバーナ用の熱電対17が加熱されると、そのバーナ用の熱電対17の加熱に伴う起電力によって、コントローラCから遮断弁9のコイル9aに吸着電流が流れ続け、遮断弁9の開弁が維持されるようになっている。
【0030】
そして、給水路Wiからの水は、止水弁4や水ガバナ5を通過し、分流弁6によって分流され、その一部が熱交換器2に流入すると同時に、残りがバイパス路Wbを介して給湯路Woに流入し、熱交換器2からの湯に混合されて、適温となった湯が出湯具8から出湯される。この出湯状態において、再び出湯操作具13を押すと、その押し操作に連動して止水弁4が閉弁し、水ガバナ5への水の流入停止に伴って、連動杆10aが水圧応動弁10を閉弁する方向に応動し、水圧応動弁10を閉弁してバーナBへの燃料ガスの供給を断って燃焼を停止させる。このバーナBの燃焼停止に伴ってバーナ用の熱電対17の起電力がなくなり、コントローラCが、遮断弁9のコイル9aへ吸着電流を流すのを停止して遮断弁9も閉弁され、また、バーナBの燃焼中に失火した場合にも、バーナ用の熱電対17の起電力がなくなって遮断弁9が閉弁され、未燃ガスの噴出が防止される。
【0031】
つぎに、バーナBの構成について説明する。
このバーナBは、火炎を形成するための多数の炎孔を列状に並ぶ状態で形成した炎孔形成部21と、各炎孔に混合ガスを供給する混合ガス流路としての混合室20a,20bとを備えて構成され、且つ、前記混合室20a,20bは炎孔の並び方向に沿って並ぶ状態で左右一対設けられ、左右両側の混合室20a,20bのうちの左側の混合室20aは多数の炎孔のうちの左側半分の炎孔に混合ガスを供給し、右側の混合室20bは多数の炎孔のうちの右側半分の炎孔に混合ガスを供給するようになっている。
【0032】
具体的な構成について説明すると、
図2に示すように、前記バーナBは、同じ構造からなる3枚の偏平で細長い板状バーナ18によって構成され、各板状バーナ18は、
図3及び
図4に示すように、上面に、火炎を形成するための多数の炎孔を列状に並ぶ状態で形成した炎孔形成部としての2列にわたる炎孔列21が設けられ、且つ、各炎孔に混合ガスを供給する混合ガス流路としての混合室20a,20bとを備えている。
【0033】
又、左右一対の混合室20a,20bは、左右方向中央部において隔離される構成となっており、各混合室20a,20b夫々の円弧状に開口されたガス導入部19a,19bから燃料ガス及び一次空気が導入されて混合ガスとなり、炎孔並び方向の左側のガス導入部19aから流入した混合ガスは、左側の混合室20a内を通流して炎孔列21の並び方向の左半分から噴出して燃焼され、右側のガス導入部19bから流入した混合ガスは、右側の混合室20b内を通流して炎孔列21の右半分から噴出して燃焼される構成となっており、左側の混合室20aと右側の混合室20bとは互いにガスが流れ込むことがないように構成されている。
【0034】
説明を加えると、左右の混合室20a,20bにおける夫々のガス導入部19a,19bには大きめの開口が形成され、燃料ガスを噴出させるガスノズル24がその開口から内奥側に向かうように設けられて、ガスノズル24から噴出される状態でガス導入部19a,19bから混合室20a,20bの内部に燃料ガスが吹き込まれ、且つ、その燃料ガスの吹き込みに伴うエジェクタ作用によってガス導入部19a,19bの周囲の空気(一次空気)も一緒に吸い込まれるようになっており、燃料ガスと一次空気とが混合ガス流路内を通過しながら混合されて炎孔に供給されるようになっている。
【0035】
前記ガス導入部19a,19bは、
図3及び
図4に示すように、ガスノズル24の外径よりも大径に設けられた開口が形成され、端部から設定距離にわたり内奥側ほど漸次小径となるように形成され、その後は徐々に内径が大きくなるように構成されている。このようにして、一次空気が吸い込まれる部分では、内奥側ほど漸次小径となっているから燃料ガスの吹き込みによるエジェクタ作用が有効に作用し、それよりも内奥側では徐々に内径が大きくなることで燃料ガスと一次空気の混合が良好に行えるようにしている。
【0036】
このような構成からなる3枚の板状バーナ18が、互いに所定間隔を隔てて併設されて、3つの部材からなるバーナホルダ22により固定保持されて、各板状バーナ18の炎孔列21が筒胴1の横幅方向に沿うように配置されている。
そして、バーナホルダ22を利用して、ガス供給路Gに接続のマニホールド23を組み付けることにより、マニホールド23に取り付けられた合計6個のガスノズル24が、各ガス導入部19a,19bに隣接して対向し、各ガスノズル24から燃料ガスが吹き込まれると、その際のエゼクタ作用によって周りの空気も一緒に吸い込まれる。
その後、各混合室20a,20b内で燃料ガスと空気とが混合され、左側の3つのガス導入部19aから供給された混合ガスは、3枚の板状バーナ18の炎孔列21において左半分から噴出されて燃焼し、右側の3つのガス導入部19bから供給された混合ガスは、3枚の板状バーナ18の炎孔列21において右半分から噴出されて燃焼する。
【0037】
つぎに、バーナBの燃焼異常等が起こったときに実行される燃焼停止制御について説明する。
まず、ガス導入部19a,19bから吸入される燃焼用一次空気の量が異常に少なくなったり、その燃焼用一次空気中の酸素濃度が低下して、燃焼炎が長くなったり、燃焼炎が不測に立ち消えたりする等のバーナBの燃焼異常を検出するためのバーナ用の熱電対17が設けられており、熱交換器2への煤等の燃焼生成物の付着等の異常を検出するための燃焼室温度検出手段としての燃焼室用の熱電対25a,25bが筒胴1の外周部の前面側に横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で一対設けられ、それらの各感熱部が、
図1に示すように、筒胴1の前面に形成された測温用開口1aに臨むように筒胴1に取り付けられている。
【0038】
前記煤等の燃焼生成物が付着することについて説明すると、炎孔列の並び方向両端部に備えられた左右のガス導入部19a,19bのうちのいずれか一方のガス導入部やそれに連通する混合室20a,20b内に蜘蛛の巣が張ったり塵埃が付着することがある。その結果、吹き込まれる燃料ガスの流速が低下したり、吸い込まれる一次空気の量が減少して燃焼用空気が不足して混合室20a,20bに連なる炎孔列部分において不完全燃焼を生じることがある。そうすると、煤等の燃焼生成物が発生してその燃焼生成物が上方に流動して熱交換器2に付着することになる。
【0039】
さらに、筒胴1の外周近傍の温度が異常高温になることに基づいて溶断する筒胴用温度ヒューズ26と、ガスノズル24の近傍の温度が異常高温になることに基づいて溶断するノズル近傍用温度ヒューズ27も設けられている。前記筒胴用温度ヒューズ26は、筒胴1の外周部の背面側近傍に配置され、ノズル近傍用温度ヒューズ27は、ガスノズル24の下方近傍に位置するように配置されている。
【0040】
前記バーナ用の熱電対17及び一対の燃焼室用の熱電対25a,25bは、
図5に示すように、コントローラCの入力端子に夫々各別に電気的に接続されて、各熱電対17、25a,25bの出力値がコントローラCに入力される構成となっている。
【0041】
そして、コントローラCは、バーナBの燃焼異常を検出する異常検出手段としても機能し、上述したバーナ用の熱電対17及び燃焼室用の熱電対25a,25bによる起電力の検出情報などに基づいて燃焼異常を検出するように構成されている。
つまり、ガス導入部19a,19bから吸入される燃焼用一次空気の量が異常に少なくなったり、その燃焼用一次空気中の酸素濃度が異常に低下すると、バーナBは不完全燃焼を起こして燃焼炎が長くなったり、燃焼炎が不測に立ち消えたりすることにより、
図6に示すように、燃焼炎温度を検出するバーナ用の熱電対17の起電力V1が低下する。そこで、コントローラCは、バーナ用の熱電対17の起電力V1が予め設定されているバーナ用異常検出値Vst1を下回ると、異常状態であると判別して、遮断弁9を閉弁してバーナBへの燃料ガス供給を断ってバーナBの燃焼を停止させるように構成されている。
【0042】
さらに、バーナBが不完全燃焼を起して熱交換器2に燃焼排ガス中の煤等の燃焼生成物が付着堆積すると、測温用開口1aから高温の排ガスが流出して、
図7に示すように、燃焼室用の熱電対25a,25bの起電力V2a,V2bが大きくなる。そこで、コントローラCは、それらのいずれかの起電力V2a,V2bが燃焼室異常検出値Vst2を超えると、異常状態であると判別して、遮断弁9を閉弁してバーナBの燃焼を停止させるように構成されている。尚、バーナBが正常に燃焼している状態では燃焼室用の熱電対25a,25bの起電力V2a,V2bは約10mV程度であり、前記燃焼室異常検出値Vst2は、一酸化炭素濃度(以下、CO濃度という)が数百ppm(例えば、300ppm)程度の状態に対応する電圧値(例えば、18.5mV)が設定されている。
【0043】
そして、このガス瞬間湯沸器では、上記したような各熱電対の起電力に対する閾値判別に加えて、バーナBが不完全燃焼を起して煤等の燃焼生成物が熱交換器2に付着し始めていることを極力早く検出することが可能な異常検出用の構成を備えている。
すなわち、前記コントローラCが、左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々にて検出される一対の温度検出値の関係が設定適正関係を外れると、バーナBの燃焼異常であると判別するように構成されている。具体的には、コントローラCが、一対の温度検出値の関係としての左右の燃焼室用の熱電対25a,25b夫々の起電力の差分値が前記設定適正関係としての設定許容範囲でなくなると、つまり、前記起電力の差分値が設定許容範囲の上限である設定許容値ΔVstを越えると、バーナBの燃焼異常であると判別するように構成されている。従って、この実施形態では、前記設定許容範囲は、起電力の差分値が設定許容値ΔVst以下である範囲に対応する。
【0044】
説明を加えると、左右一対のガス導入部19a,19bや混合室20a,20bの一方に蜘蛛の巣が張るなどして、バーナBの一部において不完全燃焼が発生して熱交換器2に煤等の燃焼生成物が付着し始めると、その燃焼生成物が付着する領域に対応する燃焼室用の熱電対25a(又は25b)に対して測温用開口1aを通して燃焼排ガスが流動して温度検出値が上昇するが、煤等の燃焼生成物が付着していない領域に対応する燃焼室用の熱電対25b(又は25a)には、燃焼排ガスが流動しないので温度検出値は上昇しないことになる。
【0045】
そこで、コントローラCは、左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々の起電力の差分値が設定許容値ΔVst(例えば、2mV)を越えると、バーナBが燃焼異常を起こしているものと判別し、遮断弁9を閉弁してバーナBの燃焼を停止させるように構成されている。このように左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々の起電力の差分値に対する設定許容値ΔVstとして小さめの値(2mV)が設定され、判別用の基準が厳しくなるようにしており、
図8に示すように、左右の燃焼室用の熱電対25a,25b夫々の起電力に対する個別の閾値判別により異常状態を判別する場合(
図7参照)に比べて、異常発生してからの経過時間が短い早い段階で異常状態を判別することができるようになっている。
【0046】
ところで、上記したように前記設定許容値ΔVstとして小さめの値が設定されているが、左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの個体差により温度検出値の初期値に差異があると精度よく判別を行うことができないから、コントローラCは、ガス瞬間湯沸し器が設置された後の運転開始時、つまり、煤等の燃焼生成物が付着していない状態においてバーナBを燃焼させて設定時間(数秒〜数十秒程度)経過したときの左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々の起電力を初期値として予め記憶しておき、その後の検出値はその初期値により補正するようにしており、精度よく早期に燃焼異常を判別することができるようになっている。
【0047】
また、筒胴1内の雰囲気温度が異常高温になると筒胴用温度ヒューズ26が溶断し、又、ガスノズル24近傍の温度が異常高温になるとノズル近傍用温度ヒューズ27が溶断するが、このように筒胴用温度ヒューズ26が溶断したり、ノズル近傍用温度ヒューズ27が溶断したりすると、コントローラCが、遮断弁9を閉弁してバーナBの燃焼を停止させるようになっている。
【0048】
以下、本出願人による実験結果について説明する。
この実験結果について説明すると、左右一対のガス導入部19a,19bのうちの右側のガス導入部19bに、
図9に示すように、蜘蛛の巣等の外物の変わりに通流経路を狭くさせるための閉塞用の擬似体gt(図中の斜線部)を装着した状態でバーナBを燃焼させて、時間経過に伴う左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの起電力V2a,V2bの検出値を逐次計測した。又、それに併せて、燃焼排ガス中に含まれるCO濃度を逐次計測した。
【0049】
図10のラインL1が右側の燃焼室用の熱電対25bの起電力V2bの検出値を示し、ラインL2が左側の燃焼室用の熱電対25aの起電力V2aの検出値を示している。又、ラインL3がCO濃度の検出値を示している。
この実験結果によれば、煤等の燃焼生成物が発生していると想定される右側の燃焼室用の熱電対25bの起電力V2bが上記したような燃焼室異常検出値Vst2(例えば、18.5mV)を超えるのは、バーナBの燃焼時間が約6時間経過した時点であった。
これに対して、右側の燃焼室用の熱電対25bの起電力V2bと左側の燃焼室用の熱電対25aの起電力V2aとの差分値が前記設定許容値ΔVst(2mV)を越えるのは、バーナBの燃焼時間が約3時間経過した時点であった。
このようにバーナBが不完全燃焼を起して煤等の燃焼生成物が熱交換器2に付着し始めていることを極力早く検出することが可能であることが確認できた。
【0050】
ところで、
図10から、燃焼時間が約3時間に達した頃に、CO濃度は初期値と同程度であるにもかかわらず、前記設定許容値ΔVstを越える程度に左右の燃焼室用の熱電対25bの起電力V2の検出値に差が生じ始めていることが判るが、この理由について実験の経過と共に以下に説明する。
【0051】
すなわち、上記したように閉塞用の擬似体gtを装着すると、バーナBは不完全燃焼となり煤等の燃焼生成物が発生するが、一酸化炭素の発生は百ppm〜百数十ppm程度であるような燃焼状態が点火直後から継続している。その後、バーナBの燃焼の継続により煤等の燃焼生成物が熱交換器2に付着堆積していくが、熱交換器2への燃焼生成物の付着堆積量が少ない状態では、一酸化炭素の発生には殆ど影響せずCO濃度は初期値と同程度であった。つまり、熱交換器2への燃焼生成物の付着堆積量が少ない状態では燃焼用空気の供給が不足するほどの影響は受けていないと考えられる。そして、バーナBの燃焼が継続して熱交換器2への燃焼生成物の堆積量の増加に伴って、左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの起電力V2a,V2bの差が大きくなり、それと共にCO濃度が増加し始めることが確認できた。
【0052】
ところで、上述したような燃焼室R内における横幅方向の一部の領域において煤等の燃焼生成物が付着している状態というのは、バーナBの炎孔列21のうち燃焼室Rの横幅方向の一部の炎孔において不完全燃焼が発生していることが原因であると考えられるので、このようなバーナBの前記横幅方向の一部の炎孔における不完全燃焼を検出するために、バーナBの燃焼炎の温度を直接検出する上記バーナ用の熱電対17を複数設ける構成とすることも考えられるが、バーナBに形成される複数の炎孔での不完全燃焼を的確に検出するためには、バーナ用の熱電対17を多数設ける必要があり、熱電対の個数が多くなって部品点数が多く構造が大幅に複雑になる。
【0053】
これに対して、バーナBの燃焼排ガスが流動する燃焼室R内においては、バーナBの不完全燃焼に伴って発生する煤等の燃焼生成物は燃焼排ガスの上昇気流による流動に伴って前記横幅方向に拡散していくことになるから、バーナBの不完全燃焼の発生箇所が狭いものであっても、煤等の燃焼生成物の付着堆積は比較的広い領域にわたって拡がった状態で生じるので、燃焼室用の熱電対25a,25bは、バーナBの不完全燃焼を的確に検出するためにバーナ用の熱電対17のように個数を多くして大幅に構造を複雑化しなくても煤等の燃焼生成物が付着し始めていることを検出することが可能となるのである。
【0054】
〔第2実施形態〕
以下、本願発明の
実施形態である第2実施形態を説明する。
この第2実施形態では、コントローラによる異常判別の仕方が異なるが、その他の構成は第1実施形態と同じであるから、異なる構成についてのみ説明し、同一の構成については説明は省略する。
【0055】
すなわち、この実施形態では、前記異常検出手段としてのコントローラCが、前記複数の燃焼室温度検出手段の夫々にて検出される複数の温度検出値の関係として、それらの複数の温度検出値の時間経過に伴う変化率の差が、前記設定適正関係としての設定許容範囲でなくなると、前記バーナの燃焼異常であると判別するように構成されている。
【0056】
具体的には、コントローラCは、ガス瞬間湯沸し器が設置された後の運転開始時、つまり、煤等の燃焼生成物が付着していない状態においてバーナBを燃焼させたときの左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々の起電力を基準検出値(V0a,V0b)として予め記憶しておき(
図11参照)、その後のバーナBの燃焼時において、時間経過に伴って設定単位時間毎に左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々の起電力を検出し、前記基準検出値からの変動幅ΔV2a,ΔV2b(時間経過に伴う変化率に相当)を求め、左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの夫々の変動幅の差を逐次算出する。
【0057】
そして、コントローラCは、前記温度検出値の時間経過に伴う変化率としての前記変動幅の差(ΔV2a−ΔV2b)が設定許容範囲でなくなる、つまり、前記変動幅の差(ΔV2a−ΔV2b)が予め設定している設定許容値ΔVstを越えると、バーナBの燃焼異常であると判別して(
図11参照)、遮断弁9を閉弁してバーナBの燃焼を停止させる。従って、この実施形態では、前記設定許容範囲は、前記変動幅の差(ΔV2a−ΔV2b)が設定許容値ΔVst以下である範囲に対応する。
【0058】
このように構成すると、左右の燃焼室用の熱電対25a,25bの個体差に起因する検出誤差がある場合であっても、異常状態であるか否かを的確に検出することが可能となる。
【0059】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を説明する。
【0060】
前記燃焼室温度検出手段が左右両側に夫々1個ずつ合計2個設けられる構成に限らず、筒胴の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で3個以上設けられる構成としてもよい。
【0062】
前記燃焼室温度検出手段としての熱電対を筒胴の前面において筒同の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で複数設けられるものに限らず、筒胴の背面において筒同の横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で複数設けるものでもよく、又、筒胴の前面や背面に代えて、筒胴の外周面の前後方向に沿う面における横幅方向に沿って位置を異ならせて分散配置される状態で複数設けるものでもよい。
【0063】
燃焼装置としてガス瞬間湯沸器に限るものではなく、ガスストーブなど、種々の燃焼装置にも適用することができる。