特許第5722941号(P5722941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722941
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】静止誘導機器用鉄心
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/24 20060101AFI20150507BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20150507BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   H01F27/24 L
   H01F27/24 F
   H01F27/24 U
   H01F41/02 B
   H01F41/02 A
【請求項の数】6
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-77616(P2013-77616)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-203915(P2014-203915A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2013年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜村 英二
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
(72)【発明者】
【氏名】増田 剛
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭25−000707(JP,B1)
【文献】 実公昭39−021432(JP,Y1)
【文献】 特開昭55−091109(JP,A)
【文献】 特公昭49−035930(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24−27/26
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの脚および当該脚の両端部にヨーク形成部を有するほぼU字形をなす3個のブロック鉄心を備え、これら3個のブロック鉄心を、前記脚が所定の点を中心としてほぼ120度配置となるように配置した状態で、前記ヨーク形成部同士を突き合わせて構成され、
前記3個のブロック鉄心は、それぞれ前記ヨーク形成部の先端部に切断角度がほぼ60度の部分を有していて、
前記3個のブロック鉄心のうち少なくとも1個のブロック鉄心の前記ヨーク形成部は、当該ヨーク形成部の先端部の切断面全面が他のブロック鉄心のヨーク形成部の手前側の側面を形成する部位を超え、かつ奥側の側面を形成する部位まで延びて露出していることを特徴とする静止誘導機器用鉄心。
【請求項2】
前記3個の各ブロック鉄心における一対の前記ヨーク形成部の先端部の切断面は、当該切断面に対して直交する直線が同一方向となるように向いていることを特徴とする請求項1記載の静止誘導機器用鉄心。
【請求項3】
前記3個のブロック鉄心のうち2個のブロック鉄心における一対の前記ヨーク形成部の先端部の切断面は、当該切断面に対して直交する直線が交差するように向いていることを特徴とする請求項1記載の静止誘導機器用鉄心。
【請求項4】
1つの脚および当該脚の両端部にヨーク形成部を有するほぼU字形をなす3個のブロック鉄心を備え、これら3個のブロック鉄心を、前記脚が所定の点を中心としてほぼ120度配置となるように配置した状態で、前記ヨーク形成部同士を突き合わせて一層分が構成され、
前記脚および前記ヨーク形成部は前記ブロック鉄心を複数層積層して構成され、内側から2層目以降の一つのブロック鉄心のヨーク形成部の一部が、当該一つのブロック鉄心の脚とは異なる他の脚を形成する前層のブロック鉄心のヨーク形成部に重なるようにした、ワンターンラップ接合構造を有し、
積層する各層のブロック鉄心は、それぞれ前記ヨーク形成部の先端部に切断角度がほぼ60度の部分を有していて、
積層する各層の3個のブロック鉄心のうち少なくとも1個のブロック鉄心の前記ヨーク形成部は、当該ヨーク形成部の先端部の切断面全面が他のブロック鉄心のヨーク形成部の手前側の側面を形成する部位を超え、かつ奥側の側面を形成する部位まで延びて露出していることを特徴とする静止誘導機器用鉄心。
【請求項5】
前記各ブロック鉄心における一対の前記ヨーク形成部の先端部の切断面は、当該切断面に対して直交する直線が同一方向となるように向いていることを特徴とする請求項4記載の静止誘導機器用鉄心。
【請求項6】
前記各ブロック鉄心のうち一部のブロック鉄心における一対の前記ヨーク形成部の先端部の切断面は、当該切断面に対して直交する直線が交差するように向いていることを特徴とする請求項4記載の静止誘導機器用鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導機器用鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
3相の静止誘導機器用鉄心、例えば3相の変圧器用鉄心は、短冊形に切断した電磁鋼板を順次積層して構成する積み鉄心と、電磁鋼板を巻きながら周方向に積層して構成される巻鉄心とに大別される。巻鉄心は2つの内コアと一つの外コアを同じ積み方向に配置したエバンス鉄心と、4つの鉄心を横配置して構成した5脚鉄心の2種類がある。このうち特に、図14に示すエバンス鉄心1(特許文献1の図4参照)は、形状が異なる2種類の大きさの鉄心(内コア2と外コア3)で構成するため、U、V、W相のコイルが囲む鉄心がV相とU,W相とでは異なることによって、磁束波形がひずみ、鉄損の悪化をもたらす。さらに、外コア3は、平面的にU相とW相のコイルを磁気的に繋ぐために内コア2よりも、材料的に無駄に長くなっている。この余分な長さの鉄心にも磁束が流れることから、それだけ多く鉄損が発生することになり、省エネの要求が高まった今日では改善する必要がある。
【0003】
一方、特許文献2には、3つの同じ形状の枠状をなす鉄心を三角柱形状に立体的に構成する立体鉄心(以下、デルタ形鉄心と称する)が提案されている。このデルタ形鉄心は、3つのコイルを等配に最近接し、その間を同じ形状の鉄心で繋ぐことで、余分な鉄心部位を極力排除するとともに磁束密度を均一化して、鉄損の低減と材料使用量を減らすことが目的である。
【0004】
しかしながら、デルタ形鉄心は、コイル断面内に脚を高い占積率で納めるために、円筒コイルしか採用できず、また、その中で鉄心の脚を円形断面に形成する必要があるため、電磁鋼板フープを徐々に斜めにスリットしながら(ずらしながら)巻き込む必要がある。前記スリットには高い精度が必要であり、そうでないと占積率は低下する。ただでさえ鉄心の脚を円形断面に形成することが困難である上、前記スリット精度が悪化すると、折角立体鉄心化しても、必要な鉄心断面積を得るためにコイル径を大きく取る必要があり、さらにコイル径を大きくするとコイル間を繋ぐ鉄心(ヨーク)寸法も大きくなることから、鉄損の低減、および材料使用量の低減効果が薄れてくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−136059号公報(図4参照)
【特許文献2】特公昭28−1307号公報(第3図参照)
【特許文献3】実公昭33−2827号公報(第2図、第3図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、地球温暖化防止のため電気機器の省エネルギー化、高効率化が世界規模で求められており、変圧器などの静止誘導機器においても更なる高効率化が希求されている。例えば静止誘導機器の一種である変圧器の損失には、巻線導体に電流を通電することによる負荷損(銅損)と、鉄心を励磁することで生じる無負荷損(鉄損)とがある。鉄損は変圧器を電路に接続しておくと、負荷をかけない状態でも連続して発生することから、より低減することが求められる。
【0007】
前述したように静止誘導機器の鉄心には、積み鉄心と巻鉄心とに大別されるが、後者は電磁鋼板を繋ぎ合わせる箇所が少ない等の理由で、鉄損低減に適した構造である。巻鉄心の一般的な構造に、前述したエバンス鉄心1(図14参照)が挙げられる。図15には、外コアと内コアの磁路長さ比(横軸)に対する鉄損および鉄心重量(縦軸)の変化を示す特性図を示している。この場合、外コアの磁路長さをLo、内コアの磁路長さをLiとし、外コアと内コアの磁路長さ比はLo/Liとする。図15はノーカットリング形状の鉄心に対して実測した結果である。この特性図から明らかなように、磁路長さ比が小さくなるほど鉄損と鉄心重量は減少する。この磁路長さ比が1.0の場合の一例が、前記デルタ形鉄心の構造に当たる。このように同じ鉄心断面と鉄心窓(すなわち、コイルの寸法に対応)であれば、デルタ形鉄心は理想の鉄心構造であると言うことができる。
【0008】
しかしながら、現実のデルタ形鉄心は、コイル断面内の鉄心占積率がエバンス鉄心1ほど高くなく、同じ鉄心断面とするにはコイルを大きくする必要が生じる。この結果、鉄損と鉄心重量は増加することになる。また、鉄心脚の円形断面化には高い寸法精度を必要とすることと、それでもエバンス鉄心1ほど占積率を上げることができないという現状がある。
【0009】
一方、特許文献3の第2図および第3図の例には、次のような構成の3相変圧器鉄心が示されている。図16に示すように、それぞれ脚5aおよび当該脚5aの両端部にヨーク形成部5bを備えたほぼU字形をなすブロック鉄心5を3個備えるとともに、高さが低い三角柱状をなす中央継鉄部6を2個備え、3個のブロック鉄心5を、横向きにした状態で各脚5aが所定の点を中心として120度配置となるように配置するとともに、上下のヨーク形成部5bの中央部に中央継鉄部6をそれぞれ配置して、これらを接合した構成となっている。この構成のものでは、平面的に見てY字形をなしており、以下、従来のY形鉄心7と称する。この従来のY形鉄心7は、前記デルタ形鉄心とほぼ同様な効果、すなわち、等しい磁路長を各脚に配分し、余分な鉄心を極力少なくすることができる利点がある。しかも、円形断面コイルだけでなく、角形断面コイルに対しても高い鉄心占積率を維持することができる利点もある。
【0010】
しかしながら、上記従来のY形鉄心7においては、次のような課題もある。3個のブロック鉄心5と、2個の中央継鉄部6を必要としている。3個のブロック鉄心5における上下の各ヨーク形成部5bは、三角形の中央継鉄部6とそれぞれ接合する必要があるが、各接合部8ではギャップができることが避けられない。接合部8でギャップができると、漏れ磁束が発生しやすく、また、励磁電流の劣化や鉄損の増加が発生しやすい。この従来のY形鉄心7においては、一つの脚5aから隣の脚5aへ磁束が流れる際の磁束通路Aに、必ず2箇所の接合部8を通過する必要があるため、前記した不具合が発生しやすい。
【0011】
そこで、従来のY形鉄心の利点を生かしながらも、その従来のY形鉄心の課題である一つの脚から隣の脚へ磁束が流れる際の磁束通路における接合部を極力少なくできて、磁束漏れや鉄損の増加を極力抑えることができる静止誘導機器用鉄心およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態の静止誘導機器用鉄心は、1つの脚および当該脚の両端部にヨーク形成部を有するほぼU字形をなす3個のブロック鉄心を備える。これら3個のブロック鉄心を、前記脚が所定の点を中心としてほぼ120度配置となるように配置した状態で、前記ヨーク形成部同士を突き合わせて構成した。前記3個のブロック鉄心は、それぞれ前記ヨーク形成部の先端部に切断角度がほぼ60度の部分を有していて、前記3個のブロック鉄心のうち少なくとも1個のブロック鉄心の前記ヨーク形成部は、当該ヨーク形成部の先端部の切断面全面が他のブロック鉄心のヨーク形成部の手前側の側面を形成する部位を超え、かつ奥側の側面を形成する部位まで延びて露出している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の静止誘導機器用鉄心を示すもので、(a)は分解斜視図、(b)は組立状態での斜視図
図2】第1実施形態の静止誘導機器用鉄心の固定方法を示す図であり、(a)は固定前の状態での斜視図、(b)は固定状態での斜視図
図3】第2実施形態を示すもので、(a)は3個の枠状鉄心と切断線を示す斜視図、(b)は(a)で切断されたブロック鉄心を3個ずつ組み合わせて構成された2個の静止誘導機器用鉄心の斜視図
図4】第3実施形態を示す図3相当図
図5】(a)は枠鉄心31の切断線S1,S2を示す平面図、(b)は枠鉄心32の切断線S1,S2を示す平面図
図6】第4実施形態を示す図3相当図
図7】第5実施形態を示す図3相当図
図8】第6実施形態を示すもので、(a)は3個の枠状鉄心ユニットと切断線を示す斜視図、(b)は(a)で切断されたブロック鉄心を組み合わせて構成された1個の静止誘導機器用鉄心の斜視図
図9】(a)〜(g)は第6実施形態の静止誘導機器用鉄心を製造する際の製造工程を途中状態から示す斜視図
図10】第7実施形態を示すもので、(a)は3個の枠状鉄心ユニットと切断線を示す斜視図、(b)は(a)で切断されたブロック鉄心を組み合わせて構成された2個の静止誘導機器用鉄心の斜視図
図11】第8実施形態を示す図10相当図
図12】第9実施形態を示す図10相当図
図13】(a)は枠状鉄心ユニット91の切断線S1,S2を示す平面図、(b)は枠状鉄心ユニット92の切断線S1,S2を示す平面図
図14】エバンス鉄心の正面図
図15】磁路長さ比と鉄損および総鉄心重量の関係を示す特性線図
図16】従来のY形鉄心を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、複数の実施形態による静止誘導機器用鉄心を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図1および図2を参照して説明する。図1(a)に示すように第1実施形態の静止誘導機器用鉄心10は、3個のブロック鉄心11を備えている。3個のブロック鉄心11は、それぞれ例えば電磁鋼板から形成されたもので、同じ形状でかつ同じ大きさのものである。具体的には、各ブロック鉄心11は、上下方向に延びる一つの脚11aと、この脚11aの上下両端部から横方向に突出して対向する一対のヨーク形成部11b,11cと、を一体に有していて、横向きのほぼU字形をなしている。脚11aおよびヨーク形成部11b,11cの断面は扁平な矩形状である。各ヨーク形成部11b,11cの先端部には、脚11aの方から見て右角には90度の部分が形成され、左角には150度の部分が形成され、中央部には120度の部分が形成されている。各ブロック鉄心11において、対向する上下の一対のヨーク形成部11b,11cは、同形状に形成されている。これら3個のブロック鉄心11を、図1(b)に示すように各脚11aが所定の点Oを中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部11b,11cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、静止誘導機器用鉄心10が形成されている。各ヨーク形成部11b,11cの先端部同士の突き合わせ部分は、例えば接着剤により接合する。その接合部を符号12で示す。静止誘導機器用鉄心10の3箇所の脚11aには、図示はしないがコイルが巻装される。
【0015】
図2には、前記静止誘導機器用鉄心10の固定方法の一例が示されている。3個のヨーク形成部11b,11cの突き合わせ部分となる中央部は、面積が他の部分より大きく、磁気回路に比較的余裕がある。その中央部の中心(点Oの部分)に孔13(図2(a)参照)をあけ、その孔13に通しボルト14を通し、クランプ15を介して上下のヨーク形成部11b,11cを拘束する(図2(b)参照)。実際には、3箇所の脚11aにはコイルが配置されるため、コイルを含む軸方向には強固に固定することができる。
【0016】
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。ほぼU字形をなす3個のブロック鉄心11を備え、これら3個のブロック鉄心11を、脚11aが点Oを中心としてほぼ120度配置となるように配置した状態で、ヨーク形成部11b,11c同士を突き合わせて構成した。これによれば、従来のY形鉄心と同様に、等しい磁路長を各脚11aに配分し、余分な鉄心を極力少なくすることができる利点がある。しかも、円形断面コイルだけでなく、角形断面コイルに対しても高い鉄心占積率を維持することができる利点もある。運転時、3相の各相に生じた磁束は、他のブロック鉄心11に対してほぼ同等の接合断面積となっていて、磁気抵抗差が小さく、どちらに流れる磁束もバランスよく振り分けられることになる利点もある。
【0017】
そして、本実施形態の静止誘導機器用鉄心10は、次の点で従来のY形鉄心よりも優れている。すなわち、3個のブロック鉄心11は、上下一対のヨーク形成部11b,11cの先端部同士を突き合わせた構成としているので、一つの脚11aから隣の脚11aへ磁束が流れる際の磁束通路A1(図1(b)の矢印参照)には接合部12は1箇所のみである。このため、必ず2箇所の接合部8(図16参照)を通過する必要がある従来のY形鉄心7に比べ、接合部12を極力少なくできて、接合部12部分での磁束漏れや鉄損の増加を極力抑えることができる。しかも、構成部品としては同形状のブロック鉄心11が3個のみであり、3個のブロック鉄心5と2個の中央継鉄部6を必要としていた従来のY形鉄心7に比べて部品点数も少なくでき、製造性も向上できる。
【0018】
(第2実施形態)
次に第2実施形態について図3を参照して説明する。この実施形態においては、図3(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠鉄心21,22,23を用いて、図3(b)に示す2個の静止誘導機器用鉄心20A,20Bを製造する構成となっている。具体的には、3個の枠鉄心21,22,23は、電磁鋼板から形成されたもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち枠鉄心21は、他の枠鉄心22,23に比べて横方向の長さが長く設定されている。残りの2個の枠鉄心22,23は、同じ形状に設定されている。
【0019】
そして、枠鉄心21にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心24A,24Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。具体的には、切断線S1、S2は、ヨーク形成部の手前側の辺にあってヨーク形成部の中央線Cの左側の所定の点を基準として左側の辺から120度の角度で中央線Cを横切っている。切断される2個のブロック鉄心24A,24Bは、それぞれ上下方向に延びる脚24aと、この脚24aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部24b,24cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0020】
各ブロック鉄心24A,24Bは、ヨーク形成部24b,24cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。上側のヨーク形成部24bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部24cの先端部の切断面は、上から見て同じ位置でかつ同じ向きに切断されている。したがって、上側のヨーク形成部24bの先端部の切断面(切断線S1)に対して直交する直線L1と、下側のヨーク形成部24cの先端部の切断面(切断線S2)に対して直交する直線L2とは、同一方向を向いている。
【0021】
また、枠鉄心22にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心25A,25Bを形成する。この場合も、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。具体的には、切断線S1、S2は、ヨーク形成部の手前側の辺にあってヨーク形成部の中央線Cの右側の所定の点を基準として左側の辺から60度の角度で中央線Cを横切っている。切断される2個のブロック鉄心25A,25Bは、それぞれ上下方向に延びる脚25aと、この脚25aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部25b,25cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0022】
各ブロック鉄心25A,25Bも、ヨーク形成部25b,25cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。上側のヨーク形成部25bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部25cの先端部の切断面は、上から見て同じ位置でかつ同じ向きに切断されている。したがって、上側のヨーク形成部25bの先端部の切断面(切断線S1)に対して直交する直線と、下側のヨーク形成部25cの先端部の切断面(切断線S2)に対して直交する直線とは、図示はしないが同一方向を向いている。
【0023】
枠鉄心23も上記枠鉄心22と同様に切断することにより、2個のブロック鉄心26A,26Bを形成する。これら2個のブロック鉄心26A,26Bも、前記ブロック鉄心25A,26Bと同様に形成されていて、それぞれ上下方向に延びる脚26aと、この脚26aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部26b,26cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。4個のブロック鉄心25A,25B,26A,26Bは同一形状である。
【0024】
そして、ブロック鉄心24Aと、ブロック鉄心25Aと、ブロック鉄心26Aを、図3(b)の上側に示すように各脚24a,25a,26aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部24b,24c,25b,25c,26b,26cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心20Aを形成することができる。この場合、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心24Aにおける上下のヨーク形成部24b,24cが、Y字形をなすヨークの中心部を占有した形態となっている。
【0025】
また、ブロック鉄心24Bと、ブロック鉄心25Bと、ブロック鉄心26Bを、図3(b)の下側に示すように各脚24a,25a,26aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部24b,24c,25b,25c,26b,26cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心20Bを形成することができる。この場合も、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心24Bにおける上下のヨーク形成部24b,24cが、Y字形をなすヨークの中心部を占有した形態となっている。なお、図3(b)の上側の静止誘導機器用鉄心20Aと下側の静止誘導機器用鉄心20Bは、例えばブロック鉄心24Aとブロック鉄心24Bの位置を合わせれば、形状は同じである。
【0026】
この実施形態において、図3(b)の例えば上側の静止誘導機器用鉄心20Aにおいては、ヨーク形成部の長さが短い一方のブロック鉄心25Aの脚25aから隣のブロック鉄心26の脚26aへ磁束が流れる際のような一部の磁束通路A2については、接合部12を2箇所通過することになるが、他の磁束通路A1については、接合部12を1箇所通過するのみである。図3(b)の下側の静止誘導機器用鉄心20Bについても同様である。したがって、このような実施形態においても、第1実施形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0027】
この第2実施形態においては、加えて次のような作用効果も得ることができる。すなわち、3個の枠鉄心21,22,23を備え、これら3個の枠鉄心21,22,23をそれぞれヨーク形成部で切断して2個ずつに分割することにより合計6個のブロック鉄心24A,24B,25A,25B,26A,26Bを形成し、これら6個のブロック鉄心のうち3個ずつのブロック鉄心24A〜26Aと24B〜26Bを組み合わせることで2台分の静止誘導機器用鉄心20A,20Bを製造することができる。これによれば、材料の無駄がなく、材料の歩留まりを良くできるという利点がある。
【0028】
しかも、3個の枠鉄心21,22,23において、各枠鉄心21,22,23を切断する場合、ヨーク形成部における上下の切断線S1,S2は上下同じ位置でかつ同じ角度であるため、上下同時に一括して切断することが可能である。
【0029】
(第3実施形態)
次に第3実施形態について図4および図5を参照して説明する。この実施形態においても、図4(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠鉄心31,32,33を用いて、図4(b)に示す2個の静止誘導機器用鉄心30A,30Bを製造する構成となっている。具体的には、3個の枠鉄心31,32,33は、電磁鋼板から構成されたもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち枠鉄心31と枠鉄心32は同じ形状に設定されていて、残りの枠鉄心33に比べて横方向の長さが長く設定されている。
【0030】
そして、枠鉄心31にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心34A,34Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、中央部であるが向きが異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、図5(a)に示すように、上側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側の辺から60度の角度をなし、また、下側の切断線S2(点線)は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側から120度の角度をなしている。この場合、上側の切断線S1と下側の切断線S2とは、中央線Cを挟んで60度ずれている。切断される2個のブロック鉄心34A,34Bは、それぞれ上下方向に延びる脚34aと、この脚34aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部34b,34cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0031】
各ブロック鉄心34A,34Bは、ヨーク形成部34b,34cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。このうち、手前側のブロック鉄心34Aにおいては、上側のヨーク形成部34bが下側のヨーク形成部34cよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部34bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部34cの先端部の切断面は、ほぼ60度異なる方向を向いている。したがって、図5(a)に示すように、上側のヨーク形成部34bの先端部の切断面(切断線S1)に対して直交する直線L1と、下側のヨーク形成部34cの先端部の切断面(切断線S2)に対して直交する直線L2は、交差する方向を向いている。奥側のブロック鉄心34Bにおいては、下側のヨーク形成部34cが上側のヨーク形成部34bよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部34bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部34cの先端部の切断面は、異なる方向を向いている。
【0032】
枠鉄心32においても、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心35A,35Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、中央部であるが向きが異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、図5(b)に示すように、上側のヨーク形成部において、中央線Cと左側の辺とが交差する点において左側の辺から60度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと左側の辺とが交差する点において左側の辺から120度の角度をなしている。この場合も、上側の切断線S1と下側の切断線S2とは、中央線Cを挟んで60度ずれている。切断される2個のブロック鉄心35A,35Bは、それぞれ上下方向に延びる脚35aと、この脚35aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部35b,35cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0033】
各ブロック鉄心35A,35Bは、ヨーク形成部35b,35cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。このうち、手前側のブロック鉄心35Bにおいては、上側のヨーク形成部35bが下側のヨーク形成部35cよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部35bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部35cの先端部の切断面は、異なる方向を向いている。したがって、図5(b)に示すように、上側のヨーク形成部35bの先端部の切断面(切断線S1)に対して直交する直線L1と、下側のヨーク形成部35cの先端部の切断面(切断線S2)に対して直交する直線L2とは、交差する方向を向いている。
【0034】
奥側のブロック鉄心35Aにおいては、下側のヨーク形成部35cが上側のヨーク形成部35bよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部35bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部35cの先端部の切断面は、ほぼ60度異なる方向を向いている。
【0035】
左側の枠鉄心33においては、第2実施形態における枠鉄心22と同様に切断することにより、2個のブロック鉄心36A,36Bを形成する。これら2個のブロック鉄心36A,36Bも、それぞれ上下方向に延びる脚36aと、この脚36aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部36b,36cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0036】
そして、ブロック鉄心34Aと、ブロック鉄心35Aと、ブロック鉄心36Aを、図4(b)の上側に示すように各脚34a,35a,36aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部34b,34c,35b,35c,36b,36cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心30Aを形成することができる。この場合、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心34Aにおける上側のヨーク形成部34bと、ブロック鉄心35Aにおける下側のヨーク形成部35cが、Y字形をなすヨークの中心部を占有した形態となっている。
【0037】
また、ブロック鉄心34Bと、ブロック鉄心35Bと、ブロック鉄心36Bを、図4(b)の下側に示すように各脚34a,35a,36aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部34b,34c,35b,35c,36b,36cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心30Bを形成することができる。この場合も、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心35Bにおける上側のヨーク形成部35bと、ブロック鉄心34Bにおける下側のヨーク形成部34cが、Y字形をなすヨークの中心部を占有した形態となっている。なおこの場合も、図4(b)の上側の静止誘導機器用鉄心30Aと下側の静止誘導機器用鉄心30Bは、一方を上下反転させ、かつブロック鉄心34Aとブロック鉄心34Bの位置を合わせれば、形状は同じである。
【0038】
この実施形態においても、図4(b)の例えば上側の静止誘導機器用鉄心30Aにおいては、一部の磁束通路A2については接合部12を2箇所通過することになるが、他の
磁束通路A1については接合部12を1箇所通過するのみである。図4(b)の下側の静止誘導機器用鉄心30Bについても同様である。したがって、このような実施形態においても、第2実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0039】
加えて、特にこの実施形態の場合、次のような利点がある。例えば静止誘導機器用鉄心30Aにおける3個のブロック鉄心34A〜36Aのうち、2個のブロック鉄心34Aと35Aは、それぞれのヨーク形成部34b,34cと35b,35cの先端部の切断面の向きが上下でほぼ60度ずれているので、ブロック鉄心34A〜36Aを組み合わせた際に、特にそれら2個のブロック鉄心34Aおよび35Aが横方向にずれ難いという利点がある。
【0040】
(第4実施形態)
次に第4実施形態について図6を参照して説明する。この実施形態においても、図6(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠鉄心41,42,43を用いて、図6(b)に示す2個の静止誘導機器用鉄心40A,40Bを製造する構成となっている。具体的には、3個の枠鉄心41,42,43は、電磁鋼板から構成されたもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち枠鉄心41は、他の2個の枠鉄心42,43に比べて横方向の長さが長く設定され、他の2個の枠鉄心42,43は同じ長さに設定されている。
【0041】
そして、枠鉄心41にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心44A,44Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、向きは同じであるが位置が異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、中央線Cより手前側おいて左側の辺から120度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cより奥側において左側の辺から120度の角度をなしている。切断される2個のブロック鉄心44A,44Bは、それぞれ上下方向に延びる脚44aと、この脚44aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部44b,44cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0042】
各ブロック鉄心44A,44Bは、ヨーク形成部44b,44cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。このうち、奥側のブロック鉄心44Aにおいては、上側のヨーク形成部44bが下側のヨーク形成部44cよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部44bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部44cの先端部の切断面は、同じ方向を向いている。手前側のブロック鉄心44Bにおいては、下側のヨーク形成部44cが上側のヨーク形成部44bよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部44bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部44cの先端部の切断面は、同じ方向を向いている。
【0043】
枠鉄心42においても、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心45A,45Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、向きは同じであるが位置が異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、中央線Cより手前側おいて右側の辺から120度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cより奥側において右側の辺から120度の角度をなしている。切断される2個のブロック鉄心45A,45Bは、それぞれ上下方向に延びる脚45aと、この脚45aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部45b,45cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0044】
各ブロック鉄心45A,45Bは、ヨーク形成部45b,45cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。このうち、手前側のブロック鉄心45Aにおいては、下側のヨーク形成部45cが上側のヨーク形成部45bよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部45bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部45cの先端部の切断面は、同じ方向を向いている。奥側のブロック鉄心45Bにおいては、上側のヨーク形成部45bが下側のヨーク形成部45cよりも長く形成されている。また、上側のヨーク形成部45bの先端部の切断面と、下側のヨーク形成部45cの先端部の切断面は、同じ方向を向いている。
【0045】
左側の枠鉄心43にあって、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心46A,46Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。切断される2個のブロック鉄心46A,46Bは、それぞれ上下方向に延びる脚46aと、この脚46aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部46b,46cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心46A,46Bも、ヨーク形成部46b,46cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。
【0046】
そして、ブロック鉄心44Aと、ブロック鉄心45Aと、ブロック鉄心46Aを、図6(b)の上側に示すように各脚44a,45a,46aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部44b,44c,45b,45c,46b,46cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心40Aを形成することができる。この場合、ヨーク形成部の長さが最も長いブロック鉄心44Aにおける上側のヨーク形成部44bは、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心45Aにおける上側のヨーク形成部45bの一側面を形成する部位まで延びている。また、ブロック鉄心45Aにおける下側のヨーク形成部45cは、下側のヨークの中心部を占有した形態となっている。
【0047】
また、ブロック鉄心44Bと、ブロック鉄心45Bと、ブロック鉄心46Bを、図6(b)の下側に示すように各脚44a,45a,46aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部44b,44c,45b,45c,46b,46cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心40Bを形成することができる。この場合も、ヨーク形成部の長さが最も長いブロック鉄心44Bにおける下側のヨーク形成部44cは、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心45Bにおける下側のヨーク形成部45cの一側面を形成する部位まで延びている。また、ブロック鉄心45Bにおける上側のヨーク形成部45bは、上側のヨークの中心部を占有した形態となっている。なおこの場合も、図6(b)の上側の静止誘導機器用鉄心40Aと下側の静止誘導機器用鉄心40Bは、一方を上下反転させ、かつブロック鉄心44Aとブロック鉄心44Bの位置を合わせれば、形状は同じである。
【0048】
この実施形態においても、図6(b)の例えば上側の静止誘導機器用鉄心40Aにおいては、一部の磁束通路A2については接合部12を2箇所通過することになるが、他の磁束通路A1については接合部12を1箇所通過するのみである。図6(b)の下側の静止誘導機器用鉄心40Bについても同様である。したがって、このような実施形態においても、第2実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0049】
また、この実施形態においては、特に次のような利点がある。例えば図6(b)の上側の静止誘導機器用鉄心40Aにおいて、ブロック鉄心44Aの上側のヨーク形成部44bは、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心45Aにおける上側のヨーク形成部45bの一側面を形成する部位まで延びている。このため、ブロック鉄心45Aの上側のヨーク形成部45bの先端部の切断面、およびブロック鉄心46Aの上側のヨーク形成部46bの先端部の切断面は、ともにブロック鉄心44の上側の長いヨーク形成部44bの側面に接合している。切断面は微小な欠けや損傷が生じやすく、切断面同士を接合するとそれらの間にギャップが発生しやすい。接合部にギャップが発生すると、前述したように磁束漏れや鉄損が増加しやすい。この点、本実施形態によれば、ヨーク形成部45bおよび46bの先端部の切断面を、ヨーク形成部44bの側面に接合する構成とすることで、接合部12で発生するギャップを極力少なくでき、接合部12での磁束漏れや鉄損の増加を極力抑えることが可能になる利点がある。図5(b)の下側の静止誘導機器用鉄心40Bにおいても同様である。
【0050】
(第5実施形態)
次に第5実施形態について図7を参照して説明する。この実施形態においても、図7(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠鉄心51,52,53を用いて、図7(b)に示す2個の静止誘導機器用鉄心50A,50Bを製造する構成となっている。この第5実施形態は、第3実施形態と第4実施形態とを合わせたような形態となっている。具体的には、3個の枠鉄心51,52,53は、電磁鋼板から構成されたもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち枠鉄心51は、他の枠鉄心52,53に比べて横方向の長さが長く設定され、中央の枠鉄心52は左の枠鉄心53よりも長く設定されている。
【0051】
そして、枠鉄心51にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心54A,54Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、中央部であるが向きが異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側の辺から60度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側から120度の角度をなしている。この場合、上側の切断線S1と下側の切断線S2とは、中央線Cを挟んで60度ずれている。切断される2個のブロック鉄心54A,54Bは、それぞれ上下方向に延びる脚54aと、この脚54aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部54b,54cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0052】
中央の枠鉄心52においては、第4実施形態における枠鉄心43と同様に切断することにより、2個のブロック鉄心55A,55Bを形成する。これら2個のブロック鉄心55A,55Bも、それぞれ上下方向に延びる脚55aと、この脚55aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部55b,55cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。
【0053】
左側の枠鉄心53においては、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心56A,56Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、中央部であるが向きが異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側の辺から120度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側から60度の角度をなしている。上側の切断線S1と下側の切断線S2とは、中央線Cを挟んで60度ずれている。切断される2個のブロック鉄心56A,56Bは、それぞれ上下方向に延びる脚56aと、この脚56aの上下両端部から横方向に延びて上下に対向する一対のヨーク形成部56b,56cとを一体に有し、横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心56A,56Bも、ヨーク形成部56b,56cの先端部に切断角度が60度の部分を有している。
【0054】
そして、ブロック鉄心54Aと、ブロック鉄心55Aと、ブロック鉄心56Aを、図7(b)の上側に示すように各脚54a,55a,56aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部54b,54c,55b,55c,56b,56cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心50Aを形成することができる。この場合、ヨーク形成部の長さが最も長いブロック鉄心54Aにおける上側のヨーク形成部54bは、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心56Aにおける上側のヨーク形成部56bの一側面を形成する部位まで延びている。また、ブロック鉄心54Aにおける下側のヨーク形成部54cは、下側のヨークの中心部を占有した形態となっている。
【0055】
また、ブロック鉄心54Bと、ブロック鉄心55Bと、ブロック鉄心56Bを、図7(b)の下側に示すように各脚54a,55a,56aが所定の点を中心として120度配置となるように配置し、各ヨーク形成部54b,54c,55b,55c,56b,56cの先端部同士を突き合わせて接合することにより、1個の静止誘導機器用鉄心50Bを形成することができる。この場合も、ヨーク形成部の長さが最も長いブロック鉄心54Bにおける下側のヨーク形成部54cは、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心56Bにおける下側のヨーク形成部56cの一側面を形成する部位まで延びている。また、ブロック鉄心54Bにおける上側のヨーク形成部54bは、上側のヨークの中心部を占有した形態となっている。なおこの場合も、図7(b)の上側の静止誘導機器用鉄心50Aと下側の静止誘導機器用鉄心50Bは、一方を上下反転させかつブロック鉄心54Aとブロック鉄心54Bの位置を合わせれば、形状は同じである。
【0056】
この実施形態においても、図7(b)の例えば上側の静止誘導機器用鉄心50Aにおいては、一部の磁束通路A2については接合部12を2箇所通過することになるが、他の磁束通路A1については接合部12を1箇所通過するのみである。図7(b)の下側の静止誘導機器用鉄心50Bについても同様である。したがって、このような実施形態においても、第2実施形態と同様な作用効果を得ることができる。また、この第5実施形態においては、第3および第4実施形態と同様な作用効果も得ることができる。
【0057】
(第6実施形態)
次に第6実施形態について図8および図9を参照して説明する。この実施形態においては、図8(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠状鉄心ユニット61,62,63を用いて、図8(b)に示す静止誘導機器用鉄心60を2個製造する構成となっている。具体的には、3個の枠状鉄心ユニット61,62,63は、それぞれ電磁鋼板からなる矩形枠状の枠鉄心を同心状に4層積層して形成したもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち1個の枠状鉄心ユニット61は、他の枠状鉄心ユニット62,63に比べて横方向の長さが長く設定されている。残りの2個の枠鉄心62,63は、同じ形状に設定されている。
【0058】
そして、枠状鉄心ユニット61にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心ユニット64A,64Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、第2実施形態における枠鉄心21の場合と同様、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。切断される2個のブロック鉄心ユニット64A,64Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット64A,64Bは、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。各ブロック鉄心は、符号は付さないが、脚と一対のヨーク形成部を有していて、横向きのほぼU字形をなしている。ここで、ブロック鉄心ユニット64Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に64A1、64A2、64A3、64A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット64Bについても同様である。
【0059】
枠状鉄心ユニット62にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心ユニット65A,65Bを形成する。この場合も、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、第2実施形態における枠鉄心22の場合と同様、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。切断される2個のブロック鉄心ユニット65A,65Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット65A,65Bも、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ブロック鉄心ユニット65Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に65A1、65A2、65A3、65A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット65Bについても同様である。
【0060】
枠状鉄心ユニット63も上記枠状鉄心ユニット62と同様に切断することにより、2個のブロック鉄心ユニット66A,66Bを形成する。切断される2個のブロック鉄心ユニット66A,66Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット66A,66Bも、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ブロック鉄心ユニット66Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に66A1、66A2、66A3、66A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット66Bについても同様である。4個のブロック鉄心ユニット65A,65B,66A,66Bは同一形状である。
【0061】
そして、本実施形態においては、ブロック鉄心ユニット64Aと、ブロック鉄心ユニット65Aと、ブロック鉄心ユニット66Aを用いて、図8(b)の静止誘導機器用鉄心60を1個製造することができる。この製造工程について、図9を参照して説明する。
【0062】
まず、3個のブロック鉄心64A1,65A1,66A1を用いて、第2実施形態の静止誘導機器用鉄心20Aと同様な形態の鉄心の1層目を形成する。次に、3個のブロック鉄心64A2,65A2,66A2を用いて、1層目の上に2層目を形成する。このとき、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心64A2の位置を、例えば上から見て時計回り方向に一つずつずらしていく。具体的には、1層目においては、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心64A1が、図9(a)において右側に配置されていたとする。同図9(a)は2層目まで積層された状態が示されている。2層目においては、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心64A2は、手前側に配置されている。したがって、2層目のブロック鉄心64A2の上下のヨーク形成部の先端部側は、前層である1層目のブロック鉄心64A1の上下のヨーク形成部の先端部側に重なるように配置されている。このような接合構造をワンターンラップ接合構造という。
【0063】
3層目においては、(b)に示すように、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心64A3は、時計回り方向に一つずらして奥側に配置する。このときも、3層目のブロック鉄心64A3の上下のヨーク形成部の先端部側は、前層である2層目のブロック鉄心64A2の上下のヨーク形成部の先端部側に重なるように配置される。この後、(c)、(d)に示すように、ブロック鉄心65A3および66A3を、右側および手前側に配置する。これで、3層目が完了する。
【0064】
4層目においては、(e)に示すように、まずブロック鉄心65A4を奥側に配置する。次に、(f)に示すように、ヨーク形成部の長さが長いブロック鉄心64A4を右側に配置する。このときも、4層目のブロック鉄心64A4の上下のヨーク形成部の先端部側は、前層である3層目のブロック鉄心64A3の上下のヨーク形成部の先端部側に重なるように配置される。この後、(g)に示すように、ブロック鉄心66A4を、手前側に配置する。これで、4層目が完了する。以上により、1個の静止誘導機器用鉄心60が完成する。
【0065】
また、ブロック鉄心ユニット64Bと、ブロック鉄心ユニット65Bと、ブロック鉄心ユニット66Bを用いて、上記と同様に積層することで、図8(b)の静止誘導機器用鉄心60をもう1個製造することができる。
【0066】
このような実施形態においては、ブロック鉄心を複数層、この場合4層積層して構成され、内側から2層目以降の一つのブロック鉄心64A2〜4のヨーク形成部の一部が、当該ブロック鉄心の脚とは異なる隣の脚を構成する前層のブロック鉄心64A1〜3のヨーク形成部に重なるようにした、ワンターンラップ接合構造を有する構成としている。ヨークを磁束が流れる場合、横方向での接合部のみでは漏れ磁束や鉄損の損失が増加しやすいという課題がある。この点、本実施形態においては、ワンターンラップ接合構造を採用しているので、ヨークを流れる磁束は、ラップ部分では積層方向に流れやすくなり、漏れ磁束や鉄損の損失を一層低減することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態においては、矩形枠状の枠鉄心を同心状に複数層積層した枠状鉄心ユニット61,62,63を3個備え、これら3個の枠状鉄心ユニット61〜63をそれぞれヨーク形成部で切断して2個ずつに分割することにより合計6個のブロック鉄心ユニット64A,64B,65A,65B,66A,66Bを形成し、これら6個のブロック鉄心ユニットのうち3個ずつのブロック鉄心ユニット64A,65A,66Aと64B,65B,66Bを用いて組み合わせることで2台分の静止誘導機器用鉄心60を製造する構成とした。これによれば、材料の無駄がなく、材料の歩留まりを良くできるという利点がある。また、枠鉄心を形成するための型枠を少なくできる利点もある。
【0068】
(第7実施形態)
次に第7実施形態について図10を参照して説明する。この実施形態においては、図10(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠状鉄心ユニット71,72,73を用いて、図10(b)に示す2個の静止誘導機器用鉄心70A,70Bを製造する構成となっている。具体的には、3個の枠状鉄心ユニット71,72,73は、それぞれ電磁鋼板からなる矩形枠状の枠鉄心を同心状に4層積層して形成したもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち2個の枠状鉄心ユニット71,72は、残りの1個の枠状鉄心ユニット73に比べて横方向の長さが長く設定されている。
【0069】
そして、中央に位置する枠状鉄心ユニット71にあって、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心ユニット74A,74Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、中央線Cを挟んで向きが60度異なっている。具体的には、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側の辺から120度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側から60度の角度をなしている。切断される2個のブロック鉄心ユニット74A,74Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット74A,74Bは、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ここで、ブロック鉄心ユニット74Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に74A1、74A2、74A3、74A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット74Bについても同様である。
【0070】
左側の枠状鉄心ユニット72においても、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心75A,75Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2とは、中央線Cを挟んで60度ずれている。具体的には、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側の辺から60度の角度をなし、また、下側の切断線S2は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと右側の辺とが交差する点において右側の辺から120度の角度をなしている。切断される2個のブロック鉄心75A,75Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット75A,75Bは、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ここで、ブロック鉄心ユニット75Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に75A1、75A2、75A3、75A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット75Bについても同様である。
【0071】
右側の枠状鉄心ユニット73にあって横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心ユニット76A,76Bを形成する。この場合も、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。切断される2個のブロック鉄心ユニット76A,76Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット76A,76Bも、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ブロック鉄心ユニット76Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に76A1、76A2、76A3、76A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット76Bについても同様である。
【0072】
そして、本実施形態においては、ブロック鉄心ユニット74Aと、ブロック鉄心ユニット75Aと、ブロック鉄心ユニット76Aを用いて、図10(b)の静止誘導機器用鉄心70Aを1個製造することができる。この場合も、第6実施形態と同様にワンターンラップ接合構造により製造する。また、ブロック鉄心ユニット74Bと、ブロック鉄心ユニット75Bと、ブロック鉄心ユニット76Bを用いて、上記と同様に積層することで、図10(b)の静止誘導機器用鉄心70Bを製造することができる。この実施形態においても、前述した第6実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0073】
(第8実施形態)
次に第8実施形態について図11を参照して説明する。この実施形態においては、図11(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠状鉄心ユニット81,82,83を用いて、図10(b)に示す静止誘導機器用鉄心80Aと、当該静止誘導機器用鉄心80Aを上下反転させた形態の静止誘導機器用鉄心(図示はしないが、符号80Bで示す)を製造する構成となっている。具体的には、3個の枠状鉄心ユニット81,82,83は、それぞれ電磁鋼板からなる矩形枠状の枠鉄心を同心状に4層積層して形成したもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち右側の枠状鉄心ユニット81は、他の2個の枠状鉄心ユニット82,83に比べて横方向の長さが長く設定され、他の2個の枠鉄心82,83は同じ長さに設定されている。
【0074】
そして、枠状鉄心ユニット81,82,83は、前記第4実施形態における枠鉄心41,42,43と同様に切断する。具体的には、枠状鉄心ユニット81は、枠鉄心41と同様に切断線S1,S2で切断することにより、2個のブロック鉄心ユニット84A,84Bを形成する。各ブロック鉄心ユニット84A,84Bは、それぞれ横向きU字形のブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ここで、ブロック鉄心ユニット84Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に84A1、84A2、84A3、84A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット84Bについても同様である。
【0075】
また、枠状鉄心ユニット82は、枠鉄心42と同様に切断線S1,S2で切断することにより、2個のブロック鉄心ユニット85A,85Bを形成する。各ブロック鉄心ユニット85A,85Bは、それぞれ横向きU字形のブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ここで、ブロック鉄心ユニット85Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に85A1、85A2、85A3、85A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット85Bについても同様である。
【0076】
枠状鉄心ユニット83は、枠鉄心43と同様に切断線S1,S2で切断することにより、2個のブロック鉄心ユニット86A,86Bを形成する。各ブロック鉄心ユニット86A,86Bは、それぞれ横向きU字形のブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ここで、ブロック鉄心ユニット86Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に86A1、86A2、86A3、86A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット86Bについても同様である。
【0077】
そして、本実施形態においては、ブロック鉄心ユニット84Aと、ブロック鉄心ユニット85Aと、ブロック鉄心ユニット86Aを用いて、図11(b)の静止誘導機器用鉄心70Aを1個製造することができる。この場合も、第6実施形態と同様にワンターンラップ接合構造により製造する。この場合、第4実施形態の静止誘導機器用鉄心40A,40Bと同様に、ブロック鉄心ユニット84Aにおけるブロック鉄心84A1〜84A4の上側のヨーク形成部の長さが長く、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心のヨーク形成部の一側面を形成する部位まで延びている。
【0078】
また、ブロック鉄心ユニット84Bと、ブロック鉄心ユニット85Bと、ブロック鉄心ユニット86Bを用いて、上記と同様に積層することで、静止誘導機器用鉄心80Aと同様な形態の静止誘導機器用鉄心(ここでは図示はしないが、符号を80Bとする)を製造することができる。なお、図示しない静止誘導機器用鉄心80Bは、静止誘導機器用鉄心80Aを上下反転させた形態となる。この実施形態においても、前述した第6実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0079】
この実施形態においては、加えて次のような利点がある。例えば静止誘導機器用鉄心80Aにおいて、ブロック鉄心ユニット84Aにおける各ブロック鉄心84A1〜84A4の上側のヨーク形成部の長さが長く、先端部の切断面Mが隣のブロック鉄心のヨーク形成部の一側面を形成する部位まで延びている。このため、2層目以降のブロック鉄心84A2〜84A4の上側の各ヨーク形成部は、前層の上側ヨーク形成部とラップする面積(上下方向で重なる面積)を多く確保することができる。これにより、ヨークを通過する磁束のロスを一層少なくでき、また、押え込み力を一層大きくできる利点がある。
【0080】
(第9実施形態)
次に第9実施形態について図12および図13を参照して説明する。この実施形態においては、図12(a)に示す矩形枠状をなす3個の枠状鉄心ユニット91,92,93を用いて、図12(b)の上側に示す静止誘導機器用鉄心90Aと、下側に示す静止誘導機器用鉄心90Bを製造する構成となっている。具体的には、3個の枠状鉄心ユニット91,92,93は、それぞれ電磁鋼板からなる矩形枠状の枠鉄心を同心状に4層積層して形成したもので、高さ寸法は同じに設定されている。このうち2個の枠状鉄心ユニット91,92は、残りの1個の枠状鉄心ユニット93に比べて横方向の長さが長く設定されている。
【0081】
そして、右側に位置する枠状鉄心ユニット91にあって、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心ユニット94A,94Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、位置が異なっているとともに向きがほぼ60度異なっている。具体的には、図13(a)に示すように、下側の切断線S2(点線)は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと左側の辺とが交差する点において左側の辺から120度の角度をなし、また、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、下側の切断線S2と右側の辺とが交差する点において右側から120度の角度をなしている。切断線S1と切断線S2は、向きがほぼ60度ずれている。
【0082】
切断される2個のブロック鉄心ユニット94A,94Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット94A,94Bは、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ブロック鉄心ユニット94Aにおいて、上側のヨーク形成部が下側のヨーク形成部よりも長く形成されている。また、ブロック鉄心ユニット94Bにおいては、下側のヨーク形成部が上側のヨーク形成部よりも長く形成されている。ここで、ブロック鉄心ユニット94Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に94A1、94A2、94A3、94A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット94Bについても同様である。
【0083】
枠鉄心92においても、横方向に延びる上側のヨーク形成部においては切断線S1で、また、下側のヨーク形成部においては切断線S2で切断することにより、2個のブロック鉄心95A,95Bを形成する。この場合、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、位置が異なっているとともに、向きがほぼ60度異なっている。具体的には、図13(b)に示すように、下側の切断線S2(点線)は、下側のヨーク形成部において、中央線Cと左側の辺とが交差する点において左側の辺から120度の角度をなし、また、上側の切断線S1は、上側のヨーク形成部において、下側の切断線S2と右側の辺とが交差する点において右側から120度の角度をなしている。切断線S1と切断線S2は、向きがほぼ60度ずれている。
【0084】
切断される2個のブロック鉄心ユニット95A,95Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット95A,95Bは、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ブロック鉄心ユニット95Aにおいて、下側のヨーク形成部が上側のヨーク形成部よりも長く形成されている。また、ブロック鉄心ユニット95Bにおいては、上側のヨーク形成部が下側のヨーク形成部よりも長く形成されている。ここで、ブロック鉄心ユニット95Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に95A1、95A2、95A3、95A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット95Bについても同様である。
【0085】
枠状鉄心ユニット93は、第6実施形態における枠状鉄心ユニット62と同様に、切断線S1、S2で切断することにより、2個の同じ形状のブロック鉄心ユニット96A,96Bを形成する。この場合も、ヨーク形成部における上側の切断線S1と下側の切断線S2は、上下同じ位置でかつ同じ角度であり、ヨーク形成部の中央線Cを斜めに横切っている。切断される2個のブロック鉄心ユニット96A,96Bは、それぞれ横向きのほぼU字形をなしている。各ブロック鉄心ユニット96A,96Bも、それぞれブロック鉄心を4層積層した形態となっている。ブロック鉄心ユニット96Aにおいて、4層のブロック鉄心を区別する場合、内側の1層目から順に96A1、96A2、96A3、96A4というように表示する。ブロック鉄心ユニット96Bについても同様である。
【0086】
そして、本実施形態においては、ブロック鉄心ユニット94Aと、ブロック鉄心ユニット95Aと、ブロック鉄心ユニット96Aを用いて、図12(b)の上側の静止誘導機器用鉄心90Aを1個製造することができる。この場合も、第6実施形態と同様にワンターンラップ接合構造により製造する。また、ブロック鉄心ユニット94Bと、ブロック鉄心ユニット95Bと、ブロック鉄心ユニット96Bを用いて、上記と同様に積層することで、図11(b)の下側の静止誘導機器用鉄心90Bを製造することができる。この実施形態においても、前述した第8実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
【0087】
(その他の実施形態)
静止誘導機器用鉄心は、変圧器の鉄心に限られず、リアクトルの鉄心にも適用することができる。
【0088】
ブロック鉄心を複数層積層して構成する場合、ブロック鉄心は4層に限られず、2層、3層、あるいは5層以上とすることもできる。
以上のように本実施形態の静止誘導機器用鉄心は、1つの脚および当該脚の両端部にヨーク形成部を有するほぼU字形をなす3個のブロック鉄心を備える。これら3個のブロック鉄心を、前記脚が所定の点を中心としてほぼ120度配置となるように配置した状態で、前記ヨーク形成部同士を突き合わせて構成した。これにより、従来のY形鉄心の利点を生かしながらも、その従来のY形鉄心の課題である一つの脚から隣の脚へ磁束が流れる際の磁束通路における接合部を極力少なくできて、磁束漏れや鉄損の増加を極力抑えることができる。
【0089】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
図面中、10は静止誘導機器用鉄心、11はブロック鉄心、11aは脚、11b,11cはヨーク形成部、12は接合部、20A,20Bは静止誘導機器用鉄心、21,22,23は枠鉄心、24A,24B,25A,25B,26A,26Bはブロック鉄心、24a,25a,26aは脚、24b,24c,25b,25c,26b,26cはヨーク形成部、30A,30Bは静止誘導機器用鉄心、31,32,33は枠鉄心、34A,34B,35A,35B,36A,36Bはブロック鉄心、34a,35a,36aは脚、34b,34c,35b,35c,36b,36cはヨーク形成部、40A,40Bは静止誘導機器用鉄心、41,42,43は枠鉄心、44A,44B,45A,45B,46A,46Bはブロック鉄心、44a,45a,46aは脚、44b,44c,45b,45c,46b,46cはヨーク形成部、50A,50Bは静止誘導機器用鉄心、51,52,53は枠鉄心、54A,54B,55A,55B,56A,56Bはブロック鉄心、54a,55a,56aは脚、54b,54c,55b,55c,56b,56cはヨーク形成部、60は静止誘導機器用鉄心、61,62,63は枠状鉄心ユニット、64A,64B,65A,65B,66A,66Bはブロック鉄心ユニット、64A1〜4,64B1〜4,65A1〜4,65B1〜4,66A1〜4,66B1〜4はブロック鉄心、70A,70Bは静止誘導機器用鉄心、71,72,73は枠状鉄心ユニット、74A,74B,75A,75B,76A,76Bはブロック鉄心ユニット、74A1〜4,74B1〜4,75A1〜4,75B1〜4,76A1〜4,76B1〜4はブロック鉄心、80A,80Bは静止誘導機器用鉄心、81,82,83は枠状鉄心ユニット、84A,84B,85A,85B,86A,86Bはブロック鉄心ユニット、84A1〜4,84B1〜4,85A1〜4,85B1〜4,86A1〜4,86B1〜4はブロック鉄心、90A,90Bは静止誘導機器用鉄心、91,92,93は枠状鉄心ユニット、94A,94B,95A,95B,96A,96Bはブロック鉄心ユニット、94A1〜4,94B1〜4,95A1〜4,95B1〜4,96A1〜4,96B1〜4はブロック鉄心を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16