特許第5722968号(P5722968)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722968
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】廃ウラン触媒の処理方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/30 20060101AFI20150507BHJP
   G21F 9/10 20060101ALI20150507BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20150507BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G21F9/30 561F
   G21F9/10 E
   G21F9/06 G
   G21F9/10 G
   G21F9/12 501C
   G21F9/12 501A
   G21F9/30 571E
【請求項の数】20
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-178115(P2013-178115)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-77781(P2014-77781A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2013年8月29日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0111261
(32)【優先日】2012年10月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】597060645
【氏名又は名称】コリア アトミック エナジー リサーチ インスティテュート
(73)【特許権者】
【識別番号】506094677
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ヌクリア パワー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】キム グァン−ウク
(72)【発明者】
【氏名】イ イル−ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ グン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ムン チェ−クォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ドン−ヨン
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−085566(JP,A)
【文献】 特開2009−288178(JP,A)
【文献】 特開2001−174587(JP,A)
【文献】 特開平05−288896(JP,A)
【文献】 特開平01−015133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/30
G21F 9/06
G21F 9/10
G21F 9/12
G21F 9/28
B09B 1/00−5/00
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解し、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して酸性溶液に浸漬させて溶解する工程(工程1)、
前記工程1で得られた前記アルカリ性溶液に炭酸塩及び過酸化水素を添加してpHを6〜10に調節するか、または前記工程1で得られた前記アルカリ性溶液のpHを4以下に低下させながらMgCl、CaCl、KCl及びNaClからなる群から選択されたいずれか一つを添加して廃ウラン触媒の支持体物質であるSiを沈殿させて、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃ウラン触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液との混合溶液にpHを調節しながら過酸化水素を添加して、廃ウラン触媒の金属物質を沈殿させる工程(工程2)、及び
前記工程2で金属物質が沈殿した後の混合溶液の上澄み液からウランを除去する工程(工程3)を含むことを特徴とする廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項2】
前記廃ウラン触媒が、USb(MはFe、Al、Mo、V、Biの中から選択されたいずれか一つ以上であり、w、x、y、zは酸化物を構成するモル比を示す)をSi支持体が担持した形態であることを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項3】
前記工程1で得られた前記アルカリ性溶液に炭酸塩及び過酸化水素を添加してpHを6〜10に調節することにより廃ウラン触媒の支持体物質であるSiを沈殿させる工程を、反復して行なうことを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項4】
前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃ウラン触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液との混合溶液のpH調節を、pH3〜4に調節することを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項5】
前記酸性溶液が、硝酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸及びリン酸からなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項6】
前記アルカリ性溶液が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化アンモニウムからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項7】
工程1を反復して行なうことを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項8】
前記工程1完了後、溶解されない廃ウラン触媒を熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項9】
前記熱処理が、500〜800℃で行なわれることを特徴とする、請求項8に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項10】
前記工程2の炭酸塩が、炭酸ナトリウム(NaCO)であることを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項11】
前記工程2で沈殿する金属物質が、FeおよびUであることを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項12】
前記工程2完了後、沈殿した金属物質に対して熱処理する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項13】
前記熱処理が、500〜800℃で行なわれることを特徴とする、請求項12に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項14】
前記工程3において、ウランの除去が吸着剤を使用して行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項15】
前記工程3で使用される吸着剤が、活性炭または生物吸着剤であることを特徴とする、請求項14に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項16】
前記生物吸着剤が、ワカメ、コンブ及びホンダワラからなる群から選択されたいずれか一つであることを特徴とする、請求項15に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項17】
記工程3で使用された吸着剤を500〜800℃で燃焼させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項14に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項18】
前記工程3でウランが除去された溶液を電解透析槽に投入して電気分解し、酸性溶液及びアルカリ性溶液を回収する工程(工程4)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項19】
記工程4で回収された酸性溶液及びアルカリ性溶液を前記工程1に再循環させる工程をさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【請求項20】
前記工程4が、陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜が設置されている電解透析槽に、陰極と陽イオン交換膜との間に水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム及び水酸化アンモニウムからなる群から選択されたいずれか一つ以上を投入し、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との間に前記ウランが除去された溶液を投入し、前記陰イオン交換膜と陽極との間に硝酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸及びリン酸からなる群から選択されたいずれか一つ以上を投入して、5〜30Vの電圧をかけて水を電気分解し、酸性溶液及びアルカリ性溶液を回収することを特徴とする、請求項18に記載の廃ウラン触媒の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃ウラン触媒の処理方法に関するもので、より詳細には処分されなければならない廃ウラン触媒の嵩を顕著に減少させることと同時に廃ウラン触媒処理工程で発生する2次廃棄物の発生を最小化することができる廃ウラン触媒の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1970年代以後、合成繊維原料であるアクリロニトリル(CH=CHCN)を生産するために多孔性のシリコン(支持体:SiO)にウラン(U)とアンチモン(Sb)の複合酸化物であるUSbOまたはUSb10を担持したU−SbO/SiO触媒またはUとSb以外に鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)及びビスマス(Bi)などを混合したUSbFeAlMo/SiO触媒が開発された。このようなウラン触媒のUは、U−235が大部分除去されてほとんどU−238のみを有する減損ウランのみを使用する。このようなウラン触媒は、ほぼ2000年まで米国のDu Pont、Union Carbide、日本のSohio等で使用されたが、2000年以後はウランを含有しない非放射性触媒に代替され、国内でも某民間企業で2004年までこのようなウラン触媒を用いてアクリル系合成繊維を生産したが、以後、非放射性触媒を使用している。したがって、非放射性触媒を使用するまでの間に発生した廃ウラン触媒は、韓国内では約7,100ドラム(ドラム缶1缶:200リットル)で、現場に保存保管されていて、国外ではその量が正確に把握されていないが、アクリロニトリルを生産した現場に大量に保存されているものと推定される。
【0003】
国内中低準位放射性廃棄物引渡し規定は、科学技術部告示第205−18によると、放射性廃棄物固形体の場合、アルファ放射能基準値が3,700Bq/g以下で、これは天然ウランの場合のU含量が14.6wt%、減損ウランの場合のU含量が25.2wt%に該当する。このような放射性廃棄物を非放射性廃棄物水準で環境に放出するためには、固体廃棄物内のUが約0.005wt%以下の非常に低いU濃度でなければならない。
【0004】
現在国内で発生した減損ウランを使用した廃ウラン触媒の放射能は今後、慶州地域で運営される放射性廃棄物処理場の引受基準には符合するが、現在の処分費用が200Lドラム缶当り850万ウォン程度であるが、今後の処分費用がドラム缶当りほぼ千万ウォン水準に到達することが予測されていて、廃ウラン触媒の処分のための固化体製造過程で添加物による嵩増加を勘案すると、最終処分される廃棄物はほぼ10,000ドラムに肉薄することが予想され、これは処理費用を除外しても直接処分時の費用が1,000億に肉薄し得る。
【0005】
廃ウラン触媒に使用されたUは、減損ウランであり経済的価値がほとんどないので、廃ウラン触媒からUのみ選択的に完全に放射性廃棄物処理場に処分すると、処分対象廃棄物の減容は理論的に最大約95%程度まで可能であり、ここで分離したUのみの処分費用は50億程度になる。今後建設される国内処理場の効果的な使用と廃ウラン触媒処分費用減少の観点から、2次廃棄物の発生を最小化する方法で廃ウラン触媒からU成分のみを最大限分離して処分費用を最小化する効果的な廃ウラン触媒の減容技術が必要とされている。
【0006】
さらに、廃ウラン触媒に含まれている金属または支持体物質であるSiを除去するために使用される酸性溶液またはアルカリ性溶液をそのまま放置する場合、このような酸性溶液またはアルカリ性溶液による2次廃棄物が発生するおそれがある。
【0007】
したがって、酸性溶液とアルカリ性溶液を用いたウラン除去工程後、前記酸性溶液とアルカリ性溶液から溶解金属物質を除去した後、酸性溶液とアルカリ性溶液を再生してウラン除去を通じた減容工程に循環することができる技術が必要である。
【0008】
廃ウラン触媒の減容に関する処理と2次廃棄物の発生を阻止するための従来技術として、特許文献1では廃ウラン触媒の主成分であるSiを溶解するために廃触媒に炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを混合して高温(1,000〜1,600℃)で反応させてケイ酸ナトリウムを作り、前記ケイ酸ナトリウムに水を添加して1〜10atm、10〜200℃の条件で液状ケイ酸ナトリウムを生成した後、液状ケイ酸ナトリウムと溶解しないで残っている固体状の物質を固液分離器で分離する方法を用いているが、ここでは廃ウラン触媒からSi成分のみを分離する方法に対して焦点を合わせただけで、アルカリ炭酸塩溶液にUの一部が共溶解して溶解分離したSiと処理過程で発生する2次廃液にUが混入するという事実を見逃している。
【0009】
そして、このように2次廃液に対する処理方案が提示されないことによって、初期廃ウラン触媒の減容に限界を有するという問題点がある。
また特許文献2には、乾式工程として、減損ウランを含む廃触媒に炭酸アルカリを入れた後、混合した状態で1,000ないし1,600℃の温度で反応させて廃触媒構成成分をアルカリ塩の形態に分解するか、湿式工程として水酸化アルカリを水に溶解させた後、その水溶液に減損ウランを含む廃触媒粉末を均一に混合した後、その混合物を1ないし20atm、10ないし300℃の温度で反応させて廃ウラン触媒の構成成分をアルカリ塩の形態に変化させる方法を採用している。しかし、この方法でも炭酸塩溶液または水酸化アルカリ溶液でSi等の他の成分とともにウランが共溶解して溶解したSi溶液に混入するという事実が見逃されていて、Si沈殿物のウラン汚染とウラン含有廃溶液処理に対する代案が提示されておらず、実質的に廃ウラン触媒の処理に対しては限界がある。
【0010】
また、特許文献3には、廃ウラン触媒を1200ないし1800℃に加温して酸化アンチモン、酸化モリブデンまたはこれらの混合物である揮発性物質を分離冷却して粉末として捕集して、前記揮発性物質が分離除去された残余廃棄物を600ないし1300℃に減温してガラス化剤を添加して、前記残余廃棄物をガラス化させる方法で廃ウラン触媒を処理する方法を提案しているが、廃ウラン触媒の場合、揮発性物質含量が大きくならなくて減容効果が少なく、高温処理と揮発物の新しい捕集による経済的費用が大きいため、実質的に廃ウラン触媒を直接処分するのと比較して処理費用減少効果が明確でないという短所がある。
【0011】
上述したように、今まで難溶解性を有する廃ウラン触媒に対する処理技術の開発状況は微々たる状態であり、上述した特許文献1、2、3を参照してもアルカリ条件で高温、高圧操作による廃触媒の溶解を用いることから操業安全性が低くなるという特徴があった。
【0012】
そのため従来の技術では経済的費用が増加するという問題点があり、上記のような条件でウランがSiと共溶解して発生する2次汚染及び工程で発生する廃液に残留するウラン処理問題を克服し難い状況にあった。
【0013】
このような状況に照らして、2次廃棄物の発生を最小化することができる環境親和性を有しながらも、廃ウラン触媒の嵩及び重量を効果的に減少させることができる技術の開発が切に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0587157号公報
【特許文献2】韓国公開特許公報第10−2011−0007623号公報
【特許文献3】韓国登録特許第10−0926462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ウランの廃触媒処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのために本発明は、廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解し、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して酸性溶液に浸漬させて溶解する工程(工程1)、前記工程1で得られた前記アルカリ性溶液に炭酸塩及び過酸化水素を添加してpHを6〜10に調節し、廃触媒の支持体物質を沈殿させて、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃触媒の支持体物質が沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液との混合溶液にpHを調節しながら過酸化水素を添加して廃触媒の金属物質を沈殿させる工程(工程2)、及び前記工程2で金属物質が沈殿した後の混合溶液上澄み液からウランを除去する工程(工程3)を含む廃ウラン触媒の処理方法を提供する。
【0017】
また本発明は、廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解して、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して前記酸性溶液に浸漬させて溶解する工程(工程1)、前記工程1で得られる前記アルカリ性溶液のpHを4以下に低下させながらMgCl、CaCl、KCl及びNaClからなる群から選択されたいずれか一つを添加して廃触媒の支持体物質を沈殿させ、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃触媒の支持体物質が沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液との混合溶液にpHを調節しながら過酸化水素を添加して廃触媒の金属物質を沈殿させる工程(工程2)、及び、前記工程2で金属物質が沈殿した後の混合溶液上澄み液からウランを除去する工程(工程3)を含む廃ウラン触媒の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、USb(MはFe、Al、Mo、V、Biの中から選択されたいずれか一つ以上であり、w、x、y、zは酸化物を構成するモル比を現わす)をSi支持体に担持した形態である廃ウラン触媒の酸アルカリ溶解過程と溶解されたウランと支持体物質SiからSiのみを選択的に沈殿させる過程を通じて、廃ウラン触媒の減容効率を極大化できるという効果が得られる。
【0019】
また本発明によれば、廃ウラン触媒の溶解とウランの分離及び除去に使用された酸性溶液とアルカリ性溶液に電解透析工程を用いて2次廃棄物の発生を最小化することにより、環境親和性の廃ウラン触媒処理工程を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】CO2−及びOH溶液システムでpHによって計算されたUの溶解度を示したグラフである。
図2】本発明でpHによって測定されたSiの溶解度を示したグラフである。
図3】pHによるFeの溶解度を示したグラフである。
図4】pHによるAlの溶解度を示したグラフである。
図5】pHによるSbの溶解度を示したグラフである。
図6】pHによるMoの溶解度を示したグラフである。
図7】pHによるVの溶解度を示したグラフである。
図8】pHによるBiの溶解度を示したグラフである。
図9】本発明の廃ウラン触媒の処理過程を示した流れ図である。
図10】本発明の酸アルカリ反復溶解の概念を模式的に示した図である。
図11】本発明の酸アルカリ反復溶解時の廃ウラン触媒の減容を模式的に示した図である。
図12】本発明の一実施例によってU−Fe沈殿物の熱分解による重量の減量測定結果を示したグラフである。
図13】本発明でウランが除去された酸アルカリ溶液から酸性溶液とアルカリ性溶液を回収するために電解透析槽を使用することを示した図である。
図14】廃ウラン触媒原試料と本発明で酸アルカリ反復溶解過程で溶解されない廃ウラン触媒の熱分解による重量変化を示したグラフである。
図15】廃ウラン触媒の初期熱処理または未熱処理後、酸アルカリ反復溶解過程で現われる廃ウラン触媒の重量変化を示したグラフである。
図16】本発明の一実施例による廃ウラン触媒に対して初期未熱処理後、異なる濃度変化による廃ウラン触媒の重量変化を示したグラフである。
図17】本発明の一実施例によって酸アルカリ反復溶解過程で現われる金属イオン及び支持体物質の重量変化を示したグラフである。
図18】本発明で生物吸着剤の一種であるコンブを使用してUを吸着させ、燃焼した場合の吸着剤の重量変化を示したグラフである。
図19】本発明の電解透析過程で酸性、アルカリ性溶液とウランが除去された溶液の濃度変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解し、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して酸性溶液に浸漬させて溶解する工程(工程1)、前記工程1で得られた前記アルカリ性溶液に炭酸塩及び過酸化水素を添加してpHを6〜10に調節し、廃触媒の支持体物質であるSiを沈殿させて、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃触媒の支持体物質Siが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液との混合溶液にpHを調節しながら過酸化水素を添加して廃触媒の金属物質を沈殿させる工程(工程2)、及び前記工程2で金属物質が沈殿した後の混合溶液上澄み液からウランを除去する工程(工程3)を含む廃ウラン触媒の処理方法を提供する。
【0022】
また本発明は、廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解し、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して前記酸性溶液に浸漬させて溶解する工程(工程1)、前記工程1で得られる前記アルカリ性溶液のpHを4以下に低下させながらMgCl、CaCl、KCl及びNaClからなる群から選択されたいずれか一つを添加して廃触媒の支持体物質であるSiを沈殿させ、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃触媒の支持体物質が沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液との混合溶液にpHを調節しながら過酸化水素を添加して廃触媒の金属物質を沈殿させる工程(工程2)、及び、前記工程2で金属物質が沈殿した後の混合溶液上澄み液からウランを除去する工程(工程3)を含む廃ウラン触媒の処理方法を一緒に提供する。
【0023】
本発明では、基本的に廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解し、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して前記酸性溶液に浸漬させて溶解する方法を使用する。したがって、廃ウラン触媒に含まれている各種金属と支持体物質がどのような溶解特性を示すのか、分かっていなければならない。
【0024】
U酸化物は、通常高温、強酸で、UO2+イオン状態で溶解され得るが、触媒の50%以上を占める多孔性Si支持体の気孔内部に分布するウラン複合酸化物は、支持体のSiに取り囲まれていて、このような酸溶液を含む廃ウラン触媒内のウランは、効果的な溶解ができない。そして、ウラン複合酸化物の支持体のSiは、酸で非常に低い溶解性を見せるが強アルカリ性溶液では高い溶解性を見せる。したがって、Si、U、Sb、Fe、Al、Mo、Bi、Vの複合酸化物で構成された廃ウラン触媒を効果的に溶解してウラン複合酸化物からU成分のみを分離するためには、廃ウラン触媒を構成する主要成分の溶液化学的特性を把握する必要がある。
【0025】
図1は、各種ウラン化合物種が同時に存在する場合、総ウラン溶解度を計算する地球化学コードであるMurgramによってCO2−及びOH溶液システムでpHによって計算されたUの溶解度を示したグラフである。図1を参照して、Uの溶解特性を説明すると下記のようになる。
【0026】
Uは、高温加熱された強酸ではUO2+形態に溶解し、ここで溶解度が1M以上であるが、溶液のpHが増加するにつれてUO2+は加水分解作用によってUO(OH)2+の形態に変化し、溶解度が急激に低くなってpH7程度では10−8Mまで低くなる。しかし、pHが7以上に増加すると、溶解度が徐々に増加してpH13以上では溶解度が約10−3M程度に再び上昇する。しかし、pH中性以上で存在する炭酸塩溶液では、UO2+はウラン炭酸塩錯(UO(CO4−)イオンを形成して溶解度が約0.08M程度に上昇するが、pH13以上の炭酸塩溶液ではUの溶解度は再び減少する。pH9〜12の炭酸塩溶液に過酸化水素(H)が存在する場合、Uは過酸化水素がない炭酸溶液で形成されるUO(CO4−錯体形態よりずっと強く結合したウランオキソ炭酸塩UO(CO4−錯体形態に変化し、ここでUの溶解度は、約0.34M程度に大きく増加する。ウラン炭酸塩錯体は、pH6以上でのみ存在し、炭酸塩イオンがpH6以下ではCO化されて炭酸塩錯体から抜け出し始めて、pH4以下では炭酸塩イオン成分は溶液から完全に抜けて、UO(CO4−はUO2+イオン形態で、UO(CO4−はUO(O)沈殿形態に変わる。
【0027】
図2は、本発明でpHによって測定されたSiの溶解度を示したグラフである。
Siは、ウラン複合酸化物でSiOの形態で存在するが、溶解時に硅酸(HSiO)イオンであるHSiO、HSiO2−、HSiO3−(これらはSi(OH)で表わすことができる)形態に溶解されて、pH0〜10では溶解度が10−2〜10−3MであるがpH10以上では溶解度が1〜2M程度まで急激に増加する。図2に示されている溶解度は、従来の文献値と類似である。
【0028】
したがって強アルカリで溶解されたSiは、溶液のpHを調節してHSiO(Si(OH))形態で沈殿させることができるが、ここでSi沈殿は溶液の温度、pH、圧力、溶液のイオン強度及び撹拌条件によって沈殿速度、沈殿誘導(precipitation induction)時間及び沈殿物の形態が非常に複雑に変化することが知られている。
【0029】
言い換えれば、Siは沈殿条件によってSiO粒子形態またはSi(OH)xが重合したゲル形態で複雑な挙動を見せて沈殿する特性が見られる。
図3ないし図8は、各々pHによるFe、Al、Sb、Mo、V及びBiの溶解度を示したグラフである(The hydrolysis of cations, Rober E, Kriger Pub. Co. Florida(1986年))。この文献には、Fe、Al、Sb、Mo、V、BiのpHによるイオン種形態と溶解度が示されている。図3ないし図8で、(x、y)は金属イオン種(M(OH);M=Fe、Al、Mo、V、Bi)を形成する該当金属イオンと水酸基の量論数の組み合わせであり、これらによってイオン種のイオン数が決定される。
【0030】
図3で、+3価状態のFeは、pH6〜9ではFe(OH)形態で存在して、溶解度が10−12M程度に非常に低くなるが、pH6以下からはFe(OH)z+の多様な形態の陽イオンで存在して、溶解度は急激に増加してpH0では溶解度が1M以上に増加する。一方、pH8以上ではFe(OH)陰イオン形態で存在して溶解度が増加し、pH14では溶解度が10−7M程度になる。
【0031】
図4で、+3価状態のAlは図3のFeと類似の挙動を示し、pH6〜7ではAl(OH)の形態で存在して、溶解度が10−6M程度に非常に低くなるが、pH6以下ではAl(OH)z+の多様な形態の陽イオンで存在し、溶解度は急激に増加して、pH0では溶解度が1M以上に増加する。一方、pH8以上ではAl(OH)陰イオン形態で存在して、溶解度が増加し、pH13以上では溶解度が10−1M程度になる。
【0032】
図5で、SbはpH3以下ではSb(OH)形態で、pH10以上でSb(OH)で存在して、溶解度がpH0、14では約10−2M以上であるが、pH3〜10ではSb(OH)の溶解度が10−4M以下に低くなる。
【0033】
図6で、+6価のMoはさらに複雑な挙動を示し、pHが約0〜4の領域では10−3M以下の溶解度を有するHMoO形態で沈殿するが、pHが4以上からはMoO2−の形態で存在する。また、pHが10以上では溶解度が1Mに増加する。溶液中のMo濃度が10−3M以上では、全pH領域で分子量が非常に大きく、複雑な陰イオン形態で存在して、溶解度は非常に高くなる。そして、pHが0に近い時のMoはHMoOまたはMoOで存在して溶解度が10−3M以下であるが、溶液のHが1M以上に増加すると、MoはMoO(HO)2+イオン形態で存在して、溶解度は増加し、Hの濃度が2M以上では溶解度が10−1M以上に増加することが知られていて、Moは溶液の酸度によって非常に複雑な形態と多様な溶解度を有する。
【0034】
図7で、Vは溶液の酸化還元電位条件によって+2、+3、+4、+5価の多様な酸化価イオンで存在して、溶液のpH及び溶液でのV濃度によって非常に多様なイオン種で存在することができ、pH全範囲で非常に複雑な溶解度特性を有する。
【0035】
図8で、BiはpH8以下ではBi(OH)z+の多様な形態の陽イオンで存在して、pHが低くなるにつれて溶解度は急激に増加し、pH0ではOH成分が重合しながらBi(OH)225+のような巨大な分子量を有して溶解度は非常に大きく増加する特性を示す。
【0036】
このように、廃ウラン触媒に存在するU、Sb、Fe、Mo、V、Bi及びSiは、酸性溶液とアルカリ性溶液で各々相異した挙動を示す。U、Sb、Fe、Mo、V、Bi及びSiの溶液でのこのような特性によって、USb(M=Fe、Al、Mo、V、Biの中から選択されたいずれか一つ以上、w、x、y、zは、酸化物を構成するモル比を示す)が担持されたSi支持体を、単一溶解系で効果的に溶解して減容ができないという特性がある。
【0037】
以下、上述したような特性を示す金属と支持体物質Siを含んでいる廃ウラン触媒に対する処理方法に対して、本発明を各工程別に詳しく説明する。
図9は、本発明の廃ウラン触媒の処理過程を示した流れ図である。
【0038】
図9を参照して、本発明の廃触媒の処理過程を説明すると下記のようになる。
本発明による工程1は、廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解して、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して酸性溶液に浸漬させて溶解する工程であり、より具体的には、廃ウラン触媒の金属成分を酸性溶液で溶解させると廃ウラン触媒の支持体中に結合されている金属成分が溶解され、前記金属成分の溶解だけでは前記廃ウラン触媒を減容することができないので、支持体の溶解過程を反復して行なう工程である。
【0039】
通常、廃ウラン触媒は、金属成分としてFe、Al、Mo、V、Biなどが酸化物の形態で支持体と結合されている。ところで図3ないし図8に示されているFe、Al、Sb、Mo、V、Biの溶解度を見ると、酸性溶液で溶解度が高くなる。
【0040】
酸性溶液に対する溶解度を増加させるために廃ウラン触媒が酸性溶液に浸漬された状態で80〜100℃に加熱して溶解させることが好ましい。何故ならば、金属の場合、固体状態であるので高温で高い溶解度を示すからである。
【0041】
しかし、このような廃ウラン触媒の成分の中で金属成分のみ溶解させる方法では、支持体を溶解することができないし、減容することもできなくなる。
したがって、廃ウラン触媒の支持体の溶解を達成するためには、アルカリ性溶液で支持体を溶解する過程が必要である。
【0042】
このような廃ウラン触媒の支持体として通常使用されているのが、Siである。
Siは、図2に図示されたように強いアルカリ性では金属とは異なり高い溶解度を示す。
【0043】
したがって、廃ウラン触媒の支持体の役割をするSiのような物質を溶解して分離する過程を通じて、本発明で得ようとする減容を達成することができる。
廃ウラン触媒の溶解過程を円滑に進行させるためには、80〜100℃で加熱しながら進行することが好ましい。
【0044】
特に前述しなかったが、本発明による廃ウラン触媒の支持体としてSiを使用する場合、多孔性状態で成り立っているので、このような現象をより一層促進することができる。
前記廃ウラン触媒は、USb(M=Fe、Al、Mo、V、Biの中から選択されたいずれか一つ以上で、w、x、y、zは酸化物を構成するモル比を現わす)を、Si支持体が担持した形態であることが好ましい。
【0045】
廃ウラン触媒は、ウラン触媒全体重量の約50%以上を占めるSi支持体と触媒成分であるUSbFeAlMo(a+b+c+d=yで、a、b、c、dは、各々Fe、Al、Mo、Vを構成するモル比を現わす)は、化学的に強く相互結合している。
【0046】
したがって、廃ウラン触媒を溶解させるためには、アルカリ性溶液でSi成分を溶解させて、触媒成分であるUSbFeAlMoを溶解させる工程が必要である。
【0047】
触媒成分であるUSbFeAlMoは、図3ないし図8に図示したように、酸性溶液でよく溶解する特性を示すので、上述した酸性溶液とアルカリ性溶液で溶解させる工程で減容を達成することができるようになる。
【0048】
また、ここで使用することができる酸性溶液としては、硝酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸及びリン酸からなる群から選択されたいずれか一つ以上であることが好ましい。ここで、使用される酸性溶液のモル濃度は、1〜4Mであることが好ましい。
【0049】
このように、本発明の廃ウラン触媒で金属成分に対する酸性溶液での溶解過程を経るようになれば、酸性溶液で溶解されない廃ウラン触媒の支持体の成分である支持体物質であるSiの溶解過程も伴うことになる。もちろん、ここでアルカリ性溶液でもFe、Al、Sb、Mo、V及びBiの金属成分も一定程度溶解される。しかし、アルカリ性溶液の特性上、金属成分よりはSiの溶解作用が主に成り立つ。
【0050】
図2に示されたように、Siはアルカリ性溶液で溶解度が高い。もう少し具体的に説明すると、前述のように、Siは溶解時ケイ酸塩形態で溶解して、pH0〜10では溶解度が10−2〜10−3であるが、pH10以上では1〜2Mまで溶解度が急激に増加する。
【0051】
またSiも固体相を成す物質であるので温度を高めることを通じてSiの溶解度を増加させることができる。したがって、Siの溶解度を増加させるために上述したアルカリ性溶液の温度は80〜100℃に維持することが好ましい。
【0052】
ここで使用することができるアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化アンモニウムからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることが好ましい。ここで、アルカリ性溶液のモル濃度は1〜4Mであることが好ましい。
【0053】
本発明による廃ウラン触媒に対する処理方法では、工程1を反復して行なうことが好ましい。これに対する理由は下記のとおりである。
ウラン触媒の支持体物質であるSiは、アルカリ性溶液で溶解性が高い。したがって、先に廃ウラン触媒をアルカリ性溶液で溶解すると、触媒粒子表面のSi成分が大部分抜けるようになり、触媒粒子表面はSiが抜けた状態でUSbFeAlMoが主成分である層が粒子表面に形成されて、アルカリ性溶液が持続的に触媒内部のSiと接触するようになりにくいという問題が起こる。ここで、Si以外にアルカリ条件で多少溶解性があるU、Sb、Fe、Al、V、MoがSiと一緒に一部共溶解される。この場合、未溶解粒子を継続してアルカリ性溶液で溶解するより、酸性溶液に移動させて溶解すると表面に現われたUSbFeAlMo層からUとFeが大きく溶解されて、これと同時に酸性溶液に溶解性のある金属が溶解されて、最初USbFeAlMo層が相当に溶解されて触媒粒子表面は再び酸性で溶解性の低いSiが主成分となった層で覆われるようになる。
【0054】
このような状態で未溶解触媒を酸で継続して溶解を試みるようになると、表面のSiによって酸が未溶解触媒内部層と接触する過程が、やはり抵抗を受けるようになりながら溶解速度が減少する。
【0055】
したがって、廃ウラン触媒を酸性溶液に浸漬させて溶解して、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出してアルカリ性溶液に浸漬させて溶解する工程を反復して行なうことが好ましい。
【0056】
これを酸アルカリ反復溶解(Acid-base swing dissolution)と言って、Si、Sb、Fe、Al、Mo、V及びBiの酸化物で構成された固体廃ウラン触媒からアルカリ性溶液では廃ウラン触媒の支持体物質であるSiとその他成分を溶解させて、酸性溶液ではU、Fe等の主要成分を溶解させることで、廃ウラン触媒を効果的に溶解させることが好ましい。
【0057】
図10は、本発明の一実施例による酸アルカリ反復溶解の概念を模式的に示した図で、図11は本発明の一実施例による酸アルカリ反復溶解時の廃ウラン触媒の減容過程を模式的に示した図である。
【0058】
図10図11を参照すると、酸溶解後未溶解粒子を再びアルカリ性溶液に移動して溶解する酸アルカリ反復溶解を遂行すると、廃ウラン触媒粒子の嵩は溶解されて効果的に減少するようになる。
【0059】
ここで、各溶解工程で廃ウラン触媒の溶解速度を増大させるために各溶液を常圧条件で溶解を進行することが好ましいが、作業の容易性及び作業の安全性を考慮して100℃以下の加熱をすることがさらに好ましい。
【0060】
ここで、アルカリ性溶液に溶解されたSi、Sb、V、Al、Fe、Mo等のイオンと酸性溶液中のU、Feイオン等は、初期強酸(1〜4M)、初期強アルカリ(1〜4M)溶液における溶解度が充分に大きいので、酸アルカリ反復溶解過程時に同一のアルカリ性溶液と酸性溶液を使用することが好ましい。ここで使用される酸性溶液内部には、S、P固形成分がなく、ここで使用される酸では、硝酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸及びリン酸からなる群から選択されたいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0061】
また、アルカリ溶解に使用されるアルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化アンモニウムからなる群から選択されたいずれか一つ以上であることが好ましい。
【0062】
前記工程1完了後、溶解されない廃ウラン触媒を熱処理する工程をさらに含むことが好ましい。
上述したような酸アルカリ反復溶解過程を経ても、最終的に溶解されない廃ウラン触媒が存在し得る。このように溶解されない廃ウラン触媒は、処理の観点から工程の複雑性、経済性及び溶解による廃ウラン触媒の減容を考慮して、より強力な酸性溶液を用いて完全な追加溶解工程を使用したり、溶解工程の単純性と経済性を考慮して処分することができる。
【0063】
ここで、廃ウラン触媒が最終溶解されない未溶解固形物の場合には、未溶解固形物内に酸とアルカリで溶解されない炭素化合物及び窒素化合物があり得るので、残留する固形物を空気雰囲気で加熱して炭素及び窒素成分を気体化させて未溶解固形物の嵩及び重量の減少に用いることが好ましい。
【0064】
ここで加熱温度は500〜800℃であることが好ましいが、500℃未満では残留固形物が残り得る危険性があり、800℃超過まで加熱することは経済的な面で好ましくない。したがって、前記未溶解固形分の溶解のためには、500〜800℃に加熱して気体状態で蒸発させることが好ましい。
【0065】
このように加熱して溶解しない廃ウラン触媒を処分すると、安定した状態の金属酸化物は変換された状態になるので、2次廃棄物発生の憂慮も減らすことができるという長所も有するようになる。
【0066】
また廃ウラン触媒には、アクリロニトリルを生産する過程で炭素成分等の重合による多様な分子の不純物が合成され得、原子炉工程で使用した物質によって汚染されて前記不純物は、廃触媒気孔と表面にそのまま固形物で存在するようになる。このような不純物は、廃ウラン触媒の気孔を満たし、Si支持体と触媒成分を取り囲んでいて、U、Si及びその他成分の酸性溶液またはアルカリ性溶液による溶解過程が妨害を受け得る。
【0067】
このような効果を確認するために、廃ウラン触媒の熱分解特性分析を行なった例が、実験例1に示されている。
実験例1によると、酸アルカリ反復溶解前に熱処理をしないことが妥当であると判断して、本発明による廃ウラン触媒処理工程では前記工程1の酸アルカリ反復溶解工程の前に熱処理をしない方法で、廃ウラン触媒処理をすることに限って記述する。
【0068】
ここで、溶解に使用される酸性溶液とアルカリ性溶液の濃度は高いほど溶解度及び各成分の溶解度が増加するが、強酸、強アルカリ性条件では装置腐食問題と廃ウラン触媒処理後、最終的に発生する酸アルカリ無機塩溶液から電解透析による酸アルカリ性溶液を回収循環させる工程での限界濃度を考慮する時、酸アルカリ溶解に使用される酸性溶液とアルカリ性溶液の濃度は、4M以下であることが好ましい。
【0069】
本発明による工程2は、前記工程1で得られた前記アルカリ性溶液に炭酸塩と過酸化水素を添加して、pHを6〜10に調節して廃触媒の支持体物質であるSiを沈殿させて、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液の上澄み液の混合溶液に過酸化水素を添加して廃触媒の金属物質を沈殿させる工程であり、より具体的にはアルカリ性溶液のpHをpHを6〜10に低下させながら、Uが支持体物質と共沈殿することを防いで、選択的に炭酸塩と過酸化水素の添加でUをイオン状態に置いておいて支持体物質であるSiの沈殿のみを誘導する。溶液内で、ウラニウムはオキソカーボネート複合体(UO(CO4−)形態で存在するが、溶解された支持体物質Siは沈殿する。また、工程2は工程1で得られた酸性溶液とSiの沈殿以後に得られるアルカリ性上澄み液の混合溶液のpHを3〜4に調節して、過酸化水素を添加して混合物溶液からウラニウム過酸化物を沈殿させるまた異なる沈殿工程を含み得る。ウラニウムは、pH3〜4のような酸性条件でUO2+のウラニルイオンの形態で存在し、過酸化水素が溶液に追加されると、前記ウラニルイオンはUO(O)のウラニル過酸化物として沈殿する。
【0070】
また、アルカリ性溶液で溶解された支持体物質Siを沈殿させる他の方法としては、前記工程1で得られたアルカリ性溶液のpHを4以下に低下させながらMgCl、CaCl、KCl及びNaClからなる群から選択されたいずれか一つを添加して廃触媒の支持体物質であるSiを沈殿させる方法を用いることができる。
【0071】
酸アルカリ反復溶解過程で発生するアルカリ性溶液には、主に支持体物質Siと、一部のU、Fe、Al、Sb、Mo及びその他不純物金属イオンのような廃触媒の金属物質が共存している。また、酸性溶液には主にU、Fe等のような金属物質と一部支持体物質と一定程度の金属物質が溶解して共存しているので、前記酸性溶液と前記アルカリ性溶液からUまたは支持体物質Siを選択的に分離して溶解溶液内のU濃度、または分離した支持体物質であるSiの沈殿物内のU濃度を、環境放出放射能基準値以下に低下させることができなければ、いくら廃ウラン触媒を溶解させたと言っても溶解溶液全体または分離した廃触媒の支持体物質全体が、再び放射性廃棄物になるので、前記金属物質及び支持体物質が溶解したアルカリ性溶液と酸性溶液からUが1ppm未満になるように除去することが必要である。
【0072】
アルカリ性溶液に対する処理工程は、前記アルカリ性溶液のpHを6〜10に調節して炭酸塩と過酸化水素を添加して、廃触媒の支持体物質であるSiを沈殿させる工程である。
【0073】
pH14程度のアルカリ性溶液に廃ウラン触媒を溶解させると、Siは溶解度が高いのでSi濃度は数千ppm程度まで溶解されるが、Uは溶解度が低く、UO(OH)y−形態で10−3M程度(約200ppm)溶解される。Siが溶解したアルカリ性溶液からSiを分離させる方法では、Siの溶解度が図2にみられるようにpH10以下で低くなるので、pHを10以下に低下させることである。pHを10以下に低下させるとアルカリ性溶液の大部分のSiを沈殿させることができる、しかし、このようなpH条件では図1に見られるように、Uの溶解度も非常に低いので、SiとUが共沈殿して沈殿したSiは、全体が放射性廃棄物になる。
【0074】
SiからUを分離するための方法として、2つの方法を本発明で提案している。
一番目の方法として、図2にみられるように、SiはpH0〜10まで溶解度が200ppm未満なので、使用するアルカリ性溶液のpHを10以下に調節すると、溶液から大部分のSiを沈殿物として分離させておくことができる。アルカリ性溶液からSiを沈殿させながらUを溶液に残留させる方法としては、先に図1でみたように、Siが低い溶解度を有するpH6〜10領域で、アルカリ性溶液に炭酸塩を添加して溶解されたUを20g/L程度の高い溶解度を有するウラン炭酸塩錯イオン(UO(CO4−)を形成すると、溶液のpH6〜10領域でSiは沈殿して、Uは溶液にUO(CO4−のイオン形態で残留することができる。
【0075】
前記工程2の炭酸塩は、炭酸ナトリウム(NaCO)であることが好ましいが、これに限定されない。
ゆえに、廃ウラン触媒を溶解したアルカリ性溶液をpH6〜10に調節する時、溶液にNaCOを添加するとウランを溶液に残留させながらアルカリ性溶液のSiをSi(OH)形態で大部分沈殿させることができる。
【0076】
しかし、アルカリ性溶液で廃ウラン触媒からFeやAlなどがSi、Uと一緒に溶解すると、このアルカリ性溶液のpHを6〜10に調節してSiを沈殿させる時、図3図4にみられるようにFeとAlイオンは溶解度が非常に低いFe(OH)x、Al(OH)x形態で沈殿し、これら沈殿する金属水酸化物は、溶液中の金属イオンに対して凝集作用を有するため、溶液中の共存する陰イオンであるUO(CO4−をFe(OH)x、Al(OH)x沈殿物構造内に凝集させてSiとともに共沈殿するので、溶液からUがない高純度のSiを沈殿させることができなくなる。
【0077】
廃ウラン触媒を酸アルカリ順次溶解でpH14以上で溶解したアルカリ性溶液をpH9〜10以下に調節することと同時に、溶液にNaCOを添加して共溶解したUをUO(CO4−形態に変換させて、そこに追加でHを添加してUO(CO4−をUO(O)(CO4−形態に再び変化させて、この溶液でUと一緒に共溶解したFe、Alイオンによる化学凝集反応を抑制させて、Si沈殿時にUはUO(O)(CO4−形態で溶液に残留させて、SiのみをSi(OH)形態で沈殿させる方法を使用するものである。
【0078】
UO(O)(CO4−錯イオンは、UO(CO4−より安定度定数が非常に大きいだけでなく、HとAl、Feイオンの酸化還元平衡電位観点でHは、Al3+をAlに還元してAlイオンがAl(OH)x形態で存在することができないようにし、Fe3+に対しては6+価のFeO2−形態に酸化して、炭酸塩溶液中のHの存在は凝集作用をするFe(OH)x、Al(OH)xの化学種を無くすようにして、UをUO(O)(CO4−形態で存在できるようにする。したがって、pH14以上で溶解されたアルカリ性溶液をpH12程度に調節して、そこにNaCOとHを添加して共溶解したUをUO(O)(CO4−形態に変換して、それを再びpH6〜10に調節してUは溶液中に残留させてSiのみを大部分Si(OH)の形態で沈殿させることができる。
【0079】
またこのようなSi沈殿時、Fe、Alの化学凝集はないが、UがSi沈殿物構造内に物理的に捕獲されてSiと一緒にUが一部一緒に沈殿することが起こり得るが、ここでUはSi沈殿物の再溶解再沈殿を遂行する精製過程を経ることで、純粋なSi沈殿物のみを得ることができる。純粋なSi沈殿物のみを得るために、Uで汚染されたSi(OH)沈殿物を初期の廃ウラン触媒の溶解のようにpH14以上のアルカリ性溶液での再溶解と、それを再びpH12に調整し、そこにNaCOとHを添加して再びpH6〜10に調節する方法によるSiの再沈殿過程を1〜3回繰り返すことで、Si沈殿物内からUを放出させてSi沈殿物を精製することができる。
【0080】
二番目の方法は、アルカリ性溶液のpHを4以下に低下させながらMgCl、CaCl、KCl及びNaClからなる群から選択されたいずれか一つを添加して、廃触媒の支持体物質Siを沈殿させる方法である。
【0081】
図1にみられるように、UはpH6以下では溶解度が急激に増加して、pH3以下では初期アルカリ性溶液に溶解したU濃度が10−3Mになるので、ウラン触媒を溶解したアルカリ性溶液をpH4以下に調節して、Uはアルカリ性溶液にUO2+イオンで残留させて、初期アルカリ性溶液の大部分のSiを沈殿させる方法を使用することができる。
【0082】
SiとU、Alなどが溶解したアルカリ性溶液のpHを4以下に低下させながらClを添加する場合、SiはSi(OH)xの形態で沈殿するが、このSi(OH)xが重合作用によって溶液全体をSi水酸化ゲル形態で固形化することができる。しかし、Si沈殿時に溶液を撹拌することによって、SiイオンをSi(OH)xゲル形態の代わりにSiO粒子状で沈殿させることができ、ここでUはUO2+形態で溶液に残留させてSiとUを分離することができるようになる。SiO沈殿時の沈殿速度を増進させるために、Si溶液の温度を約60℃程度に加熱して、溶液にClイオンを添加することができる。沈殿したSiO粒子は気孔を有していて、この気孔には溶液中のUO2+イオンが含浸されてSi沈殿物を汚染させ得るが、これもまたSi沈殿物の再溶解と再沈殿を遂行する精製過程を経ることで純粋なSi沈殿物のみを得ることができる。
【0083】
実験例7によると、Si沈殿率は96%に大きく増加してその後の残留微量U吸着処理が可能な条件を満足させることができる。ここで発生したSi沈殿物にはやはりUが一部共沈殿しているので、Si沈殿物を精製するためにpH14以上のアルカリ溶液に再溶解させて、これを再び上述した方法でSi沈殿させる再溶解再沈殿を繰り返すことで、一般環境において処分可能なSi沈殿物に精製することができる。
【0084】
しかし、Siの酸性条件下で得られたSi沈殿物精製過程は、pH6〜10の炭酸塩と Hの沈殿条件で得られたSi沈殿物精製過程より酸性溶液とアルカリ性溶液の消耗が多く、撹拌及び加熱による操業がより複雑になるという短所を有する。
【0085】
酸アルカリ反復溶解工程を経た酸性溶液と支持体物質であるSiが沈殿したアルカリ性溶液の混合溶液に対する処理に対して下記に説明する。
酸アルカリ反復溶解工程を経た酸性溶液と支持体物質であるSiが沈殿したアルカリ性溶液の混合溶液に対する処理工程は、過酸化水素を添加して廃ウラン触媒に残留しているFeやUのような金属物質を沈殿させる工程である。
【0086】
廃ウラン触媒を酸性溶液とアルカリ性溶液で反復溶解する過程で使用された強酸溶液には、高濃度(数百ppm以上:廃ウラン触媒溶解時の固/液比によって変化する特性を示す)のUがUO2+の形態で溶解され、200ppm未満のSiと数千ppmのFe及び微量のSbとVなどが共溶解される。
【0087】
前記工程2で沈殿する金属物質は、FeまたはUであることが好ましい。
図3にみられるように、Fe3+イオンはpHが3〜4程度になると、溶解度10−4〜10−8Mで溶解度が非常に低く、溶液中のFeがほとんど大部分Fe(OH)の形態で沈殿する。また、pHが3〜4の酸性条件でUO2+イオンは過量の過酸化水素添加によって溶解度10−3M程度のウラン過酸化物で(UO xHO)沈殿させることができる。しかし、Fe(OH)沈殿のpH条件とUO沈殿のpH条件の近接性と、Fe(OH)によるウランイオンの凝集を伴った沈殿によって、容易なFe(OH)沈殿物のU汚染の可能性、そして上述した廃ウラン触媒のアルカリ溶解で発生した溶液から得られたSi沈殿物に比べてFe(OH)とUO沈殿物量が相対的に少ないので、Fe(OH)とUOを選択的に分離しないでFe(OH)とUOを同時に沈殿させてそれを放射性廃棄物として処分することが、Fe(OH)x沈殿物の精製過程を省略する操業の簡便性の観点から有利であると判断される。
【0088】
また、Uのみを単独でUO沈殿時、U濃度が高くなくて溶液に他のイオンが多量共存する場合、UO沈殿速度が遅くなるので十分な沈降時間(Settling time)が必要であるが、UをFe(OH)とUO形態で同時沈殿時、UイオンがFe(OH)を伴って凝集沈殿しながらUの沈殿速度が早くなり、Fe(OH)とUOを選択的に分離するより、操業時間を短縮させることができる。
【0089】
アルカリ性溶液からSiを沈殿させて残るpH6〜10程度になるアルカリ性溶液の上澄み液には、100ppm程度のU、Si、微量のFeが存在するが、このアルカリ性溶液上澄み液と酸性溶液に対する処理後、発生する酸性溶液の上澄み液を混合すると、UとFeを共沈殿方法で除去することができ、酸性溶液でのみUとFeを沈殿分離するよりpH調節のためのアルカリ性溶液の消耗と添加しなければならない過酸化水素の量を減らすことができ、酸性溶液上澄み液とアルカリ性溶液上澄み液に対する処理をもう少し単純化することができる。
【0090】
前記工程2完了後、得られた固形沈殿廃棄物に対して熱処理する過程をさらに含むことが好ましい。
UOとFe(OH)の混合物形態のU−Fe沈殿物は、このような酸化物を処分時、処分環境の安全性を高めて追加的な減量及び減容のために前記熱処理をすることが好ましい。
【0091】
前記熱処理は、500〜800℃で行なうことが好ましい。
図12は、本発明の一実施例によってU−Fe沈殿物の熱分解による減量測定結果を示したグラフである。
【0092】
図12を参照すると、550℃以上で重量が初期U−Fe沈殿物より約40%程度追加的に減少することが分かる。また、800℃を超過すると、熱処理による追加減量効果より熱処理による費用が発生するので、800℃を超過しないことが好ましい。
【0093】
本発明による工程3は、工程2で金属物質が沈殿した後の混合溶液上澄み液からウランを除去する工程であり、より具体的には、酸性溶液とSiの選別的沈殿過程を進行したアルカリ性溶液からUとFeを除去した溶液に対して微量に含まれているウランを除去する工程である。
【0094】
放射性液体廃棄物を環境に放出するための基準は正確に設定されていないが、現在環境放出のために国内で形成された大体の共感される値は、放出水の放射能を約10−2Bq/ml未満に低下させることで、これはU−238イオン濃度が溶液中で1ppm未満水準に該当する。廃ウラン触媒を溶解した酸性溶液からFeとUが沈殿除去されたpH3〜4上澄み液には約10ppm未満のU、200ppm未満のSi、数十ppmのAl、数ppm程度のFe、Sbが存在し、廃ウラン触媒を溶解したアルカリ性溶液からSiを沈殿させて再びUをpH3〜4で沈殿させた上澄み液には約100ppm未満のU、200ppm未満のSi、数十ppmのSb、Mo、Alなどが存在するようになる。
【0095】
工程3でウランの除去は、吸着剤を用いて行なうことが好ましい。
このような吸着剤は、活性炭または生物吸着剤であり得る。
これら吸着剤は、金属イオンに対する選択性が低くU以外の他の成分イオンも一緒に同時に吸着するので、溶液に存在するイオンの総量によって溶液に注入する吸着剤の量が変化する。
【0096】
本発明に使用する生物吸着剤は、表面に存在するアルギン酸作用によって金属イオンを表面に吸着させることができる。ここで使用する生物吸着剤としては、ワカメ、コンブ及びホンダワラからなる群から選択されたいずれかひとつであることが好ましい。
【0097】
このように使用される生物吸着剤は、表面を酸で処理する過程をさらに経ることで、吸着性能をさらに高めることができる。
そして、最終嵩を縮小するために工程3で使用された吸着剤を500〜800℃で燃焼させる工程をさらに含むことが好ましい。
【0098】
Uを吸着させた吸着剤は、減容のために燃焼させるが、500〜800℃で燃焼時に生物吸着剤は約70〜80%、活性炭は90%以上の減容が行なわれる。
但し、U吸着能を比較する時、生物吸着剤が活性炭に比べて相対的に吸着性能が大きいので、生物吸着剤を使用することがより好ましい。
【0099】
前記燃焼させる温度が500℃未満なら、効果的に減容することができず、800℃を超過するとエネルギー消耗が必要以上になるので、燃焼させる温度は500〜800℃であることが好ましい。
【0100】
本発明による工程4は、工程3でウランが除去された溶液を電解透析槽に投入して電気分解して酸性溶液とアルカリ性溶液を回収する工程であり、本発明で使用されるアルカリ性溶液と酸性溶液はイオン交換膜に対する透過性に優れ、電気分解時にイオンとして残留する性質が強いので、前記イオン交換膜が設置されている電解透析槽に所定の電圧を印加する方法で、酸性溶液とアルカリ性溶液の濃度を高めて廃ウラン触媒処理工程に再び使用することができる酸性溶液とアルカリ性溶液を回収する工程である。
【0101】
このようにウラン除去工程に用いることができる技術としては、電解透析工程がある。
電解透析は、陽イオン交換膜(CEX)または陰イオン交換膜(AEX)の間に電気的ポテンシャルが形成される時、そのイオン交換膜でイオンが選択的に移動する原理を利用するものである。イオン交換膜ではイオン個数によってイオンの移動速度が大きく変化する。すなわち陽イオン交換膜では、+1価陽イオン>+2価陽イオン>>+3価陽イオンの順で、陰イオン交換膜では、−1価陰イオン>−2価陰イオン>>>−3価陰イオンの順に移動速度が変化する。そして、イオン交換膜でのイオンの移動は、下記の数式1のように拡散による要素と電気的移動の要素で表現できるが、選択的イオン交換膜ではイオンの移動は拡散による移動はほとんど無視することができ、イオン交換膜を間に置いてかかる電圧差に比例して増加するようになる。
【0102】
【数1】
(前記数式1において、J、D、C、R、F、n、φ及びxはそれぞれ、膜単位面積当たりイオン移動速度、イオン拡散係数、イオン濃度、ガス定数、ファラデー定数、反応参加電子数、ポテンシャル、距離を意味する。)
ここで全体的に電解透析槽に注入されたウランが除去された溶液は、脱塩されて電解透析機を抜け出るようになり、各々陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を通過する陽イオンと陰イオンは、再生工程で使用される酸性溶液とアルカリ性溶液になって廃ウラン触媒の処理工程で再び使用される。
【0103】
前記ウランが除去された溶液には、ウランが1ppm未満で含まれるようになる。
このように、前記アルカリ性溶液と前記酸性溶液からUを1ppm未満に除去した後、放出すると、上述した環境基準値を満足することができるが、さらに好ましくは、このようなアルカリ性溶液と酸性溶液を再び使用することが、2次放射性廃液の発生を最小化することを可能にする。
【0104】
したがって、前記廃ウラン触媒を処理する方法は、前記工程4で回収された酸性溶液とアルカリ性溶液を前記工程1に再循環する工程を、さらに含むことが好ましい。
上述した過程によるUの変化量を詳しくみると、下記のようになる。本発明による酸アルカリ溶液による溶解工程及び酸性溶液とアルカリ性溶液に対する沈殿過程を経てSiとUを分離して精製する工程2を経た場合、精製後に発生する金属物質が除去された沈殿溶液を得るとしても、まだ数ppm程度の微量のUが残存するが、前記金属物質が沈殿した後の混合溶液上澄み液を環境に放出するには放射能が高いと言える。
【0105】
その後、工程3の生物吸着剤や活性炭を通じてUイオンの吸着工程を経ると、ウランが除去された溶液には陽イオン(例えばNa)と陰イオン(例えばNO)が残る。
このような塩溶液を陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が設置されている電解透析槽に注入すると、図13に示されたように、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間の空間にある塩溶液は外部の電極に印加された5〜30Vの電圧にしたがって電気分解が起きる。5V未満で電圧を印加するとNaイオンが陰極の方に引き寄せられる程度の動力を得ることができず、30V以上の電圧を印加すると、電力消耗が非常に多くなって効率的ではないので、5〜30Vの外部電圧を印加することが好ましい。
【0106】
もう少し具体的に説明すると、工程4は陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が設置されている電解透析槽に、陰極と陽イオン交換膜の間に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化アンモニウムからなる群から選択されたいずれか一つ以上を投入して、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間に前記ウランが除去された溶液を投入して、前記陰イオン交換膜と陽極の間に硝酸、硫酸、塩酸、フッ化水素酸及びリン酸からなる群から選択されたいずれか一つ以上を投入し、5〜30Vの電圧をかけて水を電気分解して酸性溶液とアルカリ性溶液を回収することが好ましい。
【0107】
このように、外部電圧印加時の標準還元電位によって陰極でNaは還元が起きずにHイオンの還元が起きて、陽極ではNOの酸化が起きないでOHの酸化が起きながらO(酸素)気体が発生するようになる。
【0108】
したがって、このような過程を通じた本発明による廃ウラン触媒の処理方法によると、アルカリ性溶液と酸性溶液をウラン処理工程に再投入することができるので、アルカリ性溶液と酸性溶液による2次廃棄物の発生を最小化することができ、本発明で提示される工程の環境親和性を大きく強化することができる。
【0109】
以下、添付した図を参照して本発明による好ましい実施例及び実験例を詳細に説明する。しかし、以下の実施例及び実験例はこの技術分野で通常の知識を有する者に本発明が充分に理解されるように提供するものであって、多種の異なる形態で変形することができ、本発明の範囲が次に記述される実施例に限定されるものではない。図面上で同一符合は同一要素を示す。
<実施例>
(実施例1)廃ウラン触媒の処理1
工程1:廃ウラン触媒をアルカリ性溶液に浸漬させて溶解し、続いて溶解しない前記廃ウラン触媒を取り出して酸性溶液に浸漬させて溶解する工程
初期廃ウラン触媒10gをアルカリ性溶液である100℃の1M NaOH100mlに浸漬させて溶解し、続いて溶解されない廃ウラン触媒を取り出して酸性溶液である100℃の1M HNO100mlに浸漬させて溶解した。前記廃ウラン触媒の構成成分は、Si 31.1wt%、Sb 15.3wt%、U 3.13wt%、Fe 6.44wt%、Na 2.0wt%、Al 0.79wt%、V 0.62wt%、S 0.43wt%、Mo 0.41wt%、Ni 0.27wt%、Ca 0.17wt%、Mg 0.19wt%からなる。廃ウラン触媒の構成成分の質量比は、実験例3を通じて確認することができる。
【0110】
そして、このような酸アルカリ溶解工程を3回反復し、酸性溶液とアルカリ性溶液で溶解過程が円滑に進行するように各々4時間ずつ溶解を実施した。
工程2:前記工程1で得られたアルカリ性溶液で廃触媒の支持体物質Siを沈殿させて、前記工程1で得られた前記酸性溶液と廃触媒の支持体物質Siが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液に、pHを調節しながら過酸化水素を添加して廃触媒の金属物質を沈殿させる工程
前記アルカリ性溶液にNaCOとHを両方添加後、HNO溶液を導入してpHを8に調節してSiを沈殿させた。
【0111】
Si精製工程では、先に行なったSi沈殿工程で発生したSi沈殿物のみを分離して、pH14以上のアルカリ性溶液に再溶解させて、それを再びSi沈殿工程と同一の方法で pHを8に調節しながらSiを沈殿させた。
【0112】
このようなSi精製工程を、反復して3回行なった。
また、前記酸性溶液とSiが沈殿した後の前記アルカリ性溶液上澄み液を混合した。前記酸性溶液と前記アルカリ性溶液上澄み液との混合溶液のpHを、4M NaOH溶液を用いて3.5に調節し、溶液内のH濃度が約1MになるようにHを注入し、沈殿反応が充分に起こるように1日の反応時間を与えた。
工程3:前記工程2で得られた金属が沈殿した混合溶液の上澄み液からウランを除去する工程
溶液中に微量残留するUを含んだ金属イオン除去の実施のために、コンブを0.1M硝酸に接触させて表面改質をした後に乾燥させて粉砕し、それを金属が沈殿した混合溶液の上澄み液に1リットル当たり1g入れた。
工程4:前記工程3でウランが除去された溶液を電解透析槽に投入して電気分解して酸性溶液とアルカリ性溶液を回収する工程
ウランが除去された0.5MのNaNO溶液100mlを電解透析槽の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間で循環させて、初期0.1M NaOH溶液と0.1M HNO溶液をそれぞれ陰極と陽極で循環させながらセル電圧15ボルト(Volt)を印加して陽極、陰極及び供給溶液で電気分解を行なって、0.6M NaOHと0.6M HNOを回収した。
(実施例2)廃ウラン触媒の処理2
前記実施例1中の工程1の1M HNOを2MのHNOに変更して、1M NaOHを2M NaOHに変更した点を除き、実施例1と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
(実施例3)廃ウラン触媒の処理3
前記実施例1中の工程1の1M HNOを4M HNOに変更して、1M NaOHを4M NaOHに変更した点を除き、実施例1と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
(実施例4)廃ウラン触媒の処理4
前記実施例3中の工程2で、NaCOとHの導入なしにアルカリ性溶液をpH2.5に調節して、MgClを添加したことを除いて実施例3と同一の方法を使用して廃ウラン触媒を処理した。
(比較例1)
実施例3中の工程2で、NaCOとHを添加しないで単純にpHのみ8に調節して実施したことを除き、実施例3と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
(比較例2)
実施例3中の工程2で、NaCOとHを添加する代わりにNaCOのみを添加後、pHを8に調節して実施したことを除き、実施例3と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
(比較例3)
実施例4中の工程2で、MgClを添加しないことを除き、実施例4と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
(比較例4)
実施例3中の工程2で、酸とアルカリ混合溶液のpHを2.3に調節して実施することを除き、実施例3と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
(比較例5)
実施例3中の工程2で、酸とアルカリ混合溶液のpHを2.7に調節して実施することを除き、実施例3と同一の方法で廃ウラン触媒を処理した。
<実験例>
(実験例1)廃ウラン触媒に対する熱処理効果確認
廃ウラン触媒に対する熱処理効果を確認するために次のような実験を行なった。
【0113】
廃ウラン触媒の原試料と酸アルカリ反復溶解過程で溶解されない廃ウラン触媒に対して熱処理をしながら減量の程度を測定した。
図14は、廃ウラン触媒原試料と本発明で酸アルカリ反復溶解過程で溶解されない廃ウラン触媒の熱分解による重量変化を示したグラフである。
【0114】
図14を参照すると、廃ウラン触媒原試料は約650℃では約5%、750℃では約15%の重量減少が発生し、その後、急激に重量減少が起きて1000℃で約20%の重量減少が起きた。
【0115】
これに対して、酸アルカリ反復溶解過程で溶解されない廃ウラン触媒の熱分解時には、約650〜700℃で熱処理すると40%の追加的な重量減少を得ることができ、1000℃で約50%の重量減少が示された。
【0116】
図14によると、廃ウラン触媒の原試料に対して熱処理することだけでも、廃ウラン触媒を減量できることを確認することができた。
また図14の結果から判断する時、酸アルカリ反復溶解過程を遂行する前に、先に廃ウラン触媒に対する熱処理を実施すると、酸アルカリ反復過程でより大きな重量減少が起きることが予想され、下記のような実験を行なった。
(実験例2)廃ウラン触媒溶解前後残留固体の熱処理効果確認
廃ウラン触媒処理工程の中で酸アルカリ溶解工程の前の熱処理効果を確認するために次のような実験を行なった。
【0117】
酸アルカリ溶解工程の前に550℃又は750℃で熱処理をしたものと熱処理をしない廃ウラン触媒に対して、図10のように硝酸と水酸化ナトリウムを使用して酸アルカリ2回各4時間ずつ反復溶解後の各工程での溶解による試料の重量減少を測定した。
【0118】
図15は、廃ウラン触媒の初期熱処理または未熱処理後、酸アルカリ反復溶解過程で現われる廃ウラン触媒の重量変化を示したグラフである。
図15を参照すると、熱処理をしない場合より高い温度で熱処理をした場合、酸アルカリ反復溶解をさらに妨害をすることが示された。
【0119】
これは、廃ウラン触媒を熱処理する場合、廃触媒の有機物、炭素、廃触媒内の硝酸塩物質の燃焼による減量は起きるが、燃焼によって形成された他の不純物が表面に固着してむしろ廃ウラン触媒の溶解を妨害することを意味する。
【0120】
図15によると、廃ウラン触媒の酸アルカリ反復溶解の前に熱処理をすると廃ウラン触媒の溶解が良好に進行しないので、熱処理をしないことで酸アルカリ反復溶解過程で廃ウラン触媒の減量を得ることができるということが分かり、これを通じて、本発明による未熱処理後の酸アルカリ反復溶解工程が、廃ウラン触媒の減量に対する効果が優れているということを確認することができた。
【0121】
したがって、本発明による廃ウラン触媒の処理方法では、酸アルカリ反復溶解前に熱処理をしないことが妥当であると判断し、熱処理をしない方法で廃ウラン触媒処理を実施した。
(実験例3)廃ウラン触媒の成分確認実験
本発明で酸アルカリ溶解工程を行なう前に、廃ウラン触媒の構成元素がどのような成分なのか確認するために、次のような実験を行なった。
【0122】
成分分析は、高温(約200℃)、高圧(約4気圧)、強酸(塩酸、硝酸、フッ化水素酸)を使用する湿式マイクロ波分析(CEM corporation,米国,MARS5)方法による完全溶解後元素分析方法と乾燥試料を前処理なしにX線蛍光を用いる乾式XRF(Rigaku,日本,RIX2100)分析を用いて行ない、その結果を表1に示した。
【0123】
【表1】
表1から廃ウラン触媒の主要構成成分は、SiとSb、Fe、Uであることを確認することができた。したがって、酸アルカリ溶解工程で主に溶解しなければならない成分は、SiとSb、Fe、U等の金属成分であることを確認することができた。
(実験例4)酸アルカリ溶解工程で酸とアルカリ性溶液によって溶解される成分の確認実験
廃ウラン触媒処理工程の中で酸アルカリ溶解工程(工程1)で主に溶解される成分がどのような成分なのかを確認するために、実施例3に記載した条件にしたがって次のような実験を行なった。
【0124】
初期廃ウラン触媒試料10gに対して、酸性溶液とアルカリ性溶液各100mlを使用した。ここで、酸性溶液とアルカリ性溶液には、100℃の4M HNOと4M NaOHを使用した。
【0125】
ここで再び試料を100℃の4M HNO溶液に溶解して、各溶液に対する成分分析を行なった。溶液に対する成分分析は、ICP−AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy:PerkinElmer,米国,5100DV)で分析した。
【0126】
表2と表3には、酸アルカリ2回反復、4時間ずつ溶解した溶液に累積した各溶解元素の濃度が示されている。
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
表2と表3の結果から、廃ウラン触媒で溶解可能な主要成分を把握することができ、アルカリ性溶液ではSiが最も多く溶解され、その他にU、Fe、Sb、Al、Vなどが数百ppm程度溶解されて、酸性溶液ではUとFeが主に溶解されてその他に一部V、Alなどが溶解されることが分かり、本発明で提示する廃ウラン触媒の溶解のために酸アルカリ反復溶解が効果的であることが分かり、使用済みの廃ウラン触媒で溶解したBi量は非常に少ないことが示された。
(実験例5)酸アルカリ溶解工程で酸とアルカリの濃度変化による廃ウラン触媒の重量変化測定実験
廃ウラン触媒処理工程中の酸アルカリ溶解工程(工程1)で、酸とアルカリの濃度変化の効果を確認するために次のような実験を行なった。
【0129】
実施例1ないし3に記載した条件で酸アルカリ反復溶解工程を行ない、溶解工程ごとに廃ウラン触媒の重量変化を測定した。
図16は、本発明の実施例1ないし3の条件によって廃ウラン触媒に対する処理工程中の工程1を行なって、酸とアルカリの濃度変化による廃ウラン触媒の重量変化を示したグラフである。
【0130】
図16を参照すると、酸アルカリ順次溶解を繰り返すことによって、重量の減少が大きくなることを確認することができた。
そして、酸性溶液とアルカリ性溶液の濃度が増加するほど、重量の減少が大きくなることが分かった。3回の酸アルカリ溶解後、初期重量に比べて最大約82%の重量減少を確認することができた。
【0131】
図16に、100℃1M HNOと1M NaOHの酸アルカリ溶液、100℃の2M HNOと100℃2M NaOHの酸アルカリ溶液、100℃の4M HNOと100℃4M NaOHの酸アルカリ溶液を使用して、酸アルカリ3回反復、4時間ずつ溶解した時の重量変化を測定した実験例を示している。
【0132】
このような結果から、本発明で提示する酸アルカリ反復溶解が廃ウラン触媒の溶解に効果的であるということを確認することができた。
図10図11に示されている酸アルカリ反復溶解による元素別順次溶解機序を確認するために、廃ウラン触媒を100℃の4M NaOHで4時間溶解後、溶解されない廃ウラン触媒を再び取り出して100℃の4M HNO溶液に溶解して、残留固形物を乾燥した後、XRF(X-ray florescence spectrometer:RIX2100,Rigaku,日本)による分析を行なった結果を図17に示している。
【0133】
図17を参照すると、アルカリ性溶液に溶解してから、廃ウラン触媒の主成分であるSi成分が減少しながら相対的にSbとFeの重量の割合が大きく増加するが、U、V、Moなどの重量の割合は多少減少する。しかし、酸性溶液ではSiの溶解は小さいのでSiの重量の割合は多少増加する。アルカリと酸溶解でSbは重量の割合が持続的に増加することを示すが、これは酸アルカリ溶解後、最後に存在する残留固形物の大部分がSb成分であることを示す。
【0134】
このように酸性溶液とアルカリ性溶液の種類に関わらずに順次に溶解を繰り返す回数が増加するほど、重量減少が大きく現われることは、廃ウラン触媒の減容という目的を達成するためには、酸性溶液とアルカリ性溶液での順次溶解の反復回数を増加させることが必要であるということを意味する。
【0135】
また、酸性溶液とアルカリ性溶液の濃度を高めることが、廃ウラン触媒の減容に効果的であるということが分かった。
(実験例6)アルカリ性溶液で沈殿条件の変化によるアルカリ性溶液内のSiの除去効果確認実験
廃ウラン触媒処理工程の中でアルカリ性溶液で支持体物質であるSiを沈殿させる工程(工程2)で沈殿条件の変化による効果を確認するために、実施例3と比較例1、2に記載した条件で次のような実験を行なった。
【0136】
実験例6では、pH14以上の初期アルカリ溶液内のSi沈殿条件をpH8に設定し、添加剤を入れないで、4M HNO溶液だけで単純にpH8に調節した場合、NaCOを添加後、pHを8に調節した場合、及びNaCOとHを両方添加して、pHを8に調節した場合の比較を行なった。
【0137】
pH14以上の条件で、UはCO2−と反応してUO(CO4−錯体形態に容易に変換されて安定して存在するが、UO(O)(CO4−錯体の場合にはpH12以下の弱アルカリ性の環境で安定するので、溶液のpHを12程度に低下させた状態でNaCOとHを添加して安定した状態のUO(O)(CO4−を作ることが重要であるということを確認することができた。
【0138】
このように安定した状態のUO(O)(CO4−を作ってから、pHを再び8に調節してSi沈殿及びUの分離を試みた。Si精製工程では先立って行なったSi沈殿工程で発生したSi沈殿物のみを分離してpH14以上のアルカリ性溶液に再溶解させ、このようにSiを再溶解させたアルカリ性溶液をSi沈殿工程と同一の方法でpHを8に調節しながらSiを沈殿させた。
【0139】
表4は、Si沈殿及び精製(計3回)の各工程で上澄み液内のU、Siの濃度を示した。ここで、添加剤なしに単純にpHのみを8に調節した場合、上澄み液内のU濃度が1.5ppm、Si濃度が47.5ppmで、大部分のUがSiとともに沈殿したことが分かる。
【0140】
【表4】
表4でpH調節後の沈殿がないと仮定する時、アルカリ性溶液上澄み液内のUの濃度は106.6ppmで、Siの濃度は15,980ppmである。
【0141】
したがって、UとSiが一緒に沈殿した場合には、Si精製を行なってもUの分離効果を期待しにくいということを確認することができた。
比較例2は、比較例1と比較して相対的にアルカリ性溶液の上澄み液と酸性溶液の上澄み液のU濃度が高く測定されたが、この場合も大部分のUはSiとともに沈殿した。
【0142】
以後に成された3回にわたる精製工程でも、上澄み液のU濃度が1ppm未満で非常に低いことからして、Siの精製及びUの分離が効果的に実施できないということが分かる。
【0143】
これに対して、NaCOとHを添加してUO(O)(CO4−錯体を形成してからpHを8に調節した場合には、pHのみ8に調節した場合に比べてSi沈殿工程で上澄み液内のUの濃度が78.2ppmで、初期値に対して約70%のUが上澄み液内に存在し、残り30%のUだけがSiとともに沈積した。ここで発生した沈殿物を溶液から分離してアルカリ再溶解とNaCOとHを添加してSiを再沈殿をさせる過程を通じて、Si沈殿物の精製処理を行ない、このことから上澄み液へUが分離されることを確認することができた。
【0144】
Uが上述した各工程で上澄み液に徐々に分離されたことは、発生したSi沈殿物が効果的に精製されて最終的に残るSi沈殿物内のUの含量は非常に低くなることを示唆する。
実施例3のように精製しないSi沈殿物をMCA(Multi Channel Analyzer;Oxford Instrument Inc.UK)を用いて比放射能を測定した結果、35.7Bq/gと示されたが、これは先の上澄み液濃度分析結果と同様に、UとSiがともに沈積したことを示すものである。精製処理後に最終発生するSi沈殿物をMCAによって放射能測定時、測定された放射能は非常に低く、自然放射能(Background)水準程度で混在して正確に定量化することができず、Si沈殿物を完全溶解して溶液中のUをICP−AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy:
PerkinElmer,米国,5100DV)で分析した結果、最終精製された固体Si沈殿物にはUが約30ppm未満と評価され、これは放射能に換算した時、1Bq/g未満を示すものである。(減損ウラン(U−234;0.001%、U−235;0.194%、U−238;99.805%)の場合、1Bq/gに該当する固体内にU濃度は約67ppmである)したがって、このような実施を通じて廃ウラン触媒の約60%を占めるSiOは酸アルカリ反復溶解を通じて溶解後、Siは選択的沈殿−Si精製過程を通じて規制免除処理廃棄物の水準に精製され得ることを示している。
【0145】
表4によると、本発明で提案するSi沈殿及び精製技術が、Uは溶液中に残してUに汚染されない規制免除処理廃棄物の水準の高純度のSi沈殿物を形成させることに非常に効果的であることを確認することができた。
(実験例7)アルカリ性溶液で沈殿条件の変化によるアルカリ性溶液内のSiの除去効果確認実験
廃ウラン触媒処理工程中でアルカリ性溶液で支持体物質であるSiを沈殿させる工程(工程2)で沈殿条件の変化による効果を確認するために、実施例4と比較例3の記載条件によって次のような実験を行なった。
【0146】
実験例7では、アルカリ性溶液に4M HNOを用いて単純にpHを2.5に調節し殿た後、アルカリ性溶液に0.1M MgClを添加して、60℃で18時間撹拌しながらSiが沈殿する程度を比較した。
【0147】
それに加えて、Si沈殿物を再び4M NaOH溶液に溶解させた後、再びpHを2.5に調節しながらMgClを添加する精製過程を反復した。
表5は、アルカリ性溶液からのSi沈殿及び精製の各工程で上澄み液内のU、Si濃度を示した表である。
【0148】
【表5】
表5でpH調節後に沈殿がないと仮定する時、上澄み液のU濃度は98ppmで、Si濃度は14711.9ppmである。
【0149】
表5を参照すると、Si沈殿及び精製工程でアルカリ性溶液上澄み液内のU、Siの濃度を示す。比較例3の場合には、Siの沈殿率は54.2%に過ぎなかったが、沈殿物にUが一部共沈殿してアルカリ溶解後発生した溶液から効果的に高純度のSiを分離することができなかった。
【0150】
しかし、Si沈殿時のpHを3未満に調節しながらSiの沈殿を活性化させて、再びSiのゲル化を防止しながら粒子状(SiO)で沈殿させるために、Clイオンを入れて温度を60℃にあげて18時間撹拌した場合には、表5に見られるように、Uは同じ濃度で上澄み液内に存在しながらSi沈殿率は96%に増加して、その後の残留微量U吸着処理が可能な条件を満足させるということが分かった。
【0151】
ここでも発生したSi沈殿物中にはやはりUが一部含浸されているので、Si沈殿物を精製するためにpH14以上のアルカリ性溶液に再溶解させて、Siを沈殿させる過程を繰り返すことで一般環境において処分可能なSi沈殿物に精製することができた。
【0152】
表5に表示されているように、1回精製後アルカリ性溶液の上澄み液内のU濃度は19.8ppm、Si濃度は171.3ppmに大きく減少した。
このような実験例7から、アルカリ性溶液に対して再溶解と再沈殿の過程を繰り返すことを通じて、SiからUを充分に除去することができるということを確認することができた。
(実験例8)酸性溶液とアルカリ性溶液の混合溶液で沈殿条件の変化による酸性溶液内のUの除去効果確認実験
廃ウラン触媒処理工程の中で酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液で金属物質を沈殿させる工程(工程2)で、沈殿条件変化の効果を確認するために実施例4と比較例4、5によって次のような実験を行なった。
【0153】
酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液に、4M NaOH溶液を導入してpHが各々2.3、2.7又は3.5になるように調節して、溶液内のH濃度が約1MになるようにHを注入し、沈殿反応が充分に起こるように1日の反応時間を与えた。
【0154】
表6は、各pH条件による溶液内のU、Fe濃度を示すもので酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液のpHを、2.3と 2.7にした場合にU濃度がそれぞれ264.1ppm、150.9ppmであり、このようにU初期濃度対比79.7%、88.4%のU沈殿率を示したが、これは目標とする水準に及ばず強酸性環境でのUOの沈殿率が減少することに起因するものと考えられる。この場合、溶液の色は濃い赤色を帯び、Fe沈殿の初期工程であることを暗示したが、溶液内のFe濃度が初期濃度と大きな差がないので、Fe沈殿がまだ生じていないことを示す。一方、pHを3.5まであげた実施例では、多量のFe沈殿物が観察され上澄み液のFe濃度は検出されなかった。ここで、上澄み液内のU濃度は2.2ppmと示され、このようにしてpH3.5条件でのUO沈殿率は約99.8%に到達した。
【0155】
【表6】
表6でpH調節後の沈殿がないと仮定する時、酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液におけるU濃度は1300.8ppmで、Fe濃度は2045.4ppmである。
【0156】
前述のように、廃ウラン触媒溶解過程で発生するアルカリ性溶液で得られるSi沈殿物に比べて、酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液で得られるFe−U沈殿物量が相対的に少ないので、Fe(OH)とUOを選択的に分離して沈殿させないで、同時に沈殿させてそれを放射性廃棄物として処分するのが、操業の簡便性の観点から有利であると判断された。
【0157】
また、UとFeが共存する溶液にHを注入しない状態でpHを3.5に調節すると、理論的にFeのみが沈殿してFeとUの相互分離が可能であるが、実際には過量のFeが沈積しながら微量のUがFeと一緒に共沈殿することを確認した。Hを注入しない状態でpHを3.5に調節した実施例1を通じて得られたFe沈殿物の放射能は、4394.3Bq/gと測定された。この場合、Fe沈殿物も精製過程を通じて共沈殿したUをFe沈殿物から分離可能かどうかを確認するため、Fe沈殿物を分離して酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液に再溶解させた後、再びpHを3.5に調節して沈殿物を獲得し、ここで発生したFe沈殿物の放射能は1559.6Bq/gと測定された。したがって、Uを含んだFe沈殿物も精製過程を反復してUを徐々に分離させることができることを確認した。しかし、先に提示したSi沈殿物精製工程とは異なり、酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液はU含量が高く、Fe沈殿物により多くのUが共沈殿するため、Fe沈殿物を環境放出基準まで処理するためには、より多数回の精製過程を経なければならないという問題がある。
【0158】
したがって、廃ウラン触媒溶解過程に発生するアルカリ性溶液で得られるSi沈殿物に比べて、酸性溶液と廃触媒の支持体物質であるSiが沈殿した後のアルカリ性溶液上澄み液の混合溶液から得られるFe−U沈殿物量が相対的に少ないので、FeとUを選択的に分離しないで同時に沈殿させてそれを放射性廃棄物として処分することが操業の簡便性の観点から有利であると判断される。また、Uのみを単独でUO沈殿させる場合と比べて、UをFe(OH)とともにUO形態で沈殿させる時、UイオンがFe(OH)とともに凝集沈殿しながらUの沈殿速度が早くなって操業時間も短縮することができると考えられる。
(実験例9)吸着剤の使用による、U-Fe沈殿後の上澄み液からのウラン除去程度の確認実験
工程3のU-Fe沈殿後の上澄み液から吸着剤の使用によるウラン除去効果を確認するために次のような実験を行なった。
【0159】
溶液中に微量残留するUを含んだ金属イオンを除去するために、本発明による実施例では、コンブを0.1M硝酸に接触させて表面改質をした後、乾燥させて粉砕して使用した。そして、上澄み液1リットル当り1gを入れて、それら上澄み液が約pH3の条件でU濃度変化を測定した実験例9を表7に示している。
【0160】
【表7】
表7を参照すると、アルカリ性溶液上澄み液と酸性溶液上澄み液の中に存在するUが溶液から完全に除去され、図9の廃ウラン触媒の処理工程で発生する溶液は、一般環境に排出することができる水準の放射能数値を示した。
【0161】
表7によると、アルカリ性溶液上澄み液と酸性溶液上澄み液に対する吸着剤の処理が、廃ウラン触媒からのウラン除去に効果的であるということを確認することができた。
(実験例10)吸着剤の燃焼処理が重量の減少に効果的な手段かどうかの確認実験
工程3で吸着剤の燃焼処理効果を確認するために、次のような実験を行なった。
【0162】
金属イオンを吸着した吸着剤を燃焼処理し、燃焼処理による重量の減少を測定した。
前記吸着剤を伴うアルカリ性溶液上澄み液と酸性溶液上澄み液に対する熱分解特性分析の実験例10が図18に示されている。
【0163】
図18を参照すると、500℃で重量が約75%減少したことが分かる。
図18によると、U及びその他の金属を吸着した吸着剤の減容と吸着物質の安定化のために、金属イオンを吸着した吸着剤に燃焼処理する工程が、減容及び減量に効果的であるということが分かった。
(実験例11)電気分解工程を通じた酸性溶液とアルカリ性溶液の回収確認実験
工程4で酸性溶液とアルカリ性溶液回収効果を確認するために、次のような実験を行なった。
【0164】
0.5Mの前記ウランが除去された溶液100mlを電解透析槽の陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の間で循環させて、初期0.1M NaOH溶液と0.1M HNO溶液を各々陰極と陽極で循環させながらセル電圧15ボルトを印加して陽極、陰極及び供給溶液で電気分解を行なって、0.5M NaOHと0.5M HNOを回収した。
【0165】
そして、この実験例11でセル電圧15ボルトを印加する時、陽極、陰極及び供給溶液で測定されたHNO、NaOH及びNaNO濃度変化の結果を図19に示した。
図19は、本発明の電解透析過程で、酸性、アルカリ性溶液とウランが除去された溶液の濃度変化を示したグラフである。
【0166】
図19を参照すると、二つのイオン交換膜の間に供給されたNaとNOイオンは、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を通過しながらそれぞれ陰極と陽極に供給される。ここで、陽極と陰極にかかる電圧によって水分解反応が進行して、陰極ではOHが、陽極ではHが生成され、これらからNaOHとHNOが生成されて、NaOHとHNOの濃度は0.5Mまで増加して回復する。
【0167】
そして、ウランが除去された溶液が透過する間に配置されたイオン交換膜の特性上、液状を成す溶液の透過が自然に成り立つので、2次廃棄物の発生を最小化することにおいて効果的な手段になると言える。上述したような過程を通じて、0.5M NaOHと0.5M HNOを得て、再び廃ウラン触媒の処理工程に再使用することができる。
【0168】
図19によると、本発明による廃ウラン触媒処理工程において形成される二次液相廃棄物を最少にするために、廃ウラン触媒に対する電解透析工程を通じて酸性溶液とアルカリ性溶液を回収できるということが分かる。
(実験例12)廃ウラン触媒の処理時に各工程で発生する廃棄物の減容率及び減量率確認実験
廃ウラン触媒処理工程(工程1ないし4)で、各工程での減容及び減量効果を確認するために、次のような実験を行なった。
【0169】
工程1で未溶解固形物の重量を測定し、工程2でアルカリ性溶液中及び酸性溶液中の沈殿物の重量を測定した。そして、工程3でU吸着廃棄物の重量を測定した。
表8は、本発明による廃ウラン触媒(1000g)の処理時の各工程で発生する廃棄物の減容率及び減量率を示した表である。
【0170】
【表8】
表8で、減容率は各工程廃棄物のタップ密度(Tap density)を測定して評価した。
【0171】
表8の結果によると、酸溶解後U−Fe沈殿物が本発明の方法による最終減量率及び減容率に最大の影響を与える廃棄物になるとみられる。
本発明の実施のために使用した廃ウラン触媒のFe含量が6.4%である時、最終減量率は76.7%であり、減容率は89.5%である。
【0172】
表8を参照すると、酸溶解後U−Fe沈殿物が本発明の方法による放射性廃棄物としての最終減量率及び減容率に最大の影響を与えるとみられる。
一般的に知られた廃ウラン触媒のFeの平均含量が3%程度であるので、Fe平均含量が3%である廃ウラン触媒を使用する場合には、約81.8%までの減量率及び約92.3%までの減容率を得ることができると推定される。
【0173】
以上、本発明の好ましい実施例及び実験例を挙げて詳細に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で当分野で通常の知識を有する者によって様々な変形が可能である。
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