(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722969
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】ボンディング適用のための銀合金ワイヤ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20150507BHJP
【FI】
H01L21/60 301F
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-182880(P2013-182880)
(22)【出願日】2013年9月4日
(65)【公開番号】特開2014-53610(P2014-53610A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】12006236.9
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511213476
【氏名又は名称】ヘレウス マテリアルズ テクノロジー ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】リュ ジェ−スン
(72)【発明者】
【氏名】チュン ウン−キュン
(72)【発明者】
【氏名】タク ヨン−ドク
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−087736(JP,A)
【文献】
特開平11−288962(JP,A)
【文献】
特開昭57−021830(JP,A)
【文献】
特開2010−167490(JP,A)
【文献】
特開2012−169374(JP,A)
【文献】
特開2005−268771(JP,A)
【文献】
特開2001−308134(JP,A)
【文献】
特開2013−139635(JP,A)
【文献】
特許第4771562(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有するコアを含む、ボンディングワイヤであって、
前記コアは、主成分としての銀と、金、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、銅およびイリジウムからなる群から選択される少なくとも1つの成分と、不可避の不純物からなり、前記ボンディングワイヤは、以下の特徴:
i)前記コアの平均結晶粒径は0.8μm〜3μmであり、
ii)前記ワイヤの断面における<001>方向の配向を有する結晶粒の量は10〜20%の範囲であり、
iii)前記ワイヤの断面における<111>方向の配向を有する結晶粒の量は5〜15%の範囲であり、
iv)前記ワイヤの断面における<001>方向の配向を有する結晶粒および<111>方向の配向を有する結晶粒の総量は15〜40%の範囲である、
のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、ボンディングワイヤ。
【請求項2】
前記コアが、主成分としての銀と、金、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1つの成分と、不可避の不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項3】
前記コアが、80〜95重量%の銀、5〜12重量%の金、1.5〜5重量%のパラジウムおよび0.01重量%以下の不可避の不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項4】
前記コアが、90〜99.7重量%の銀、0.3〜10重量%の金および0.01重量%以下の不可避の不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項5】
前記コアが、90〜99.7重量%の銀、0.3〜10重量%のパラジウムおよび0.01重量%以下の不可避の不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項6】
前記コアが、80〜99重量%の銀、0〜10重量%の金、1〜20重量%のパラジウムおよび0.01重量%以下の不可避の不純物からなることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項7】
前記コアの平均結晶粒径が1.0μm〜1.6μmであることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項8】
前記結晶粒径の標準偏差が0μm〜0.5μmであることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項9】
前記結晶粒径の標準偏差が0μm〜0.4μmであることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項10】
前記ワイヤが、前記ワイヤの最終引き工程の前に中間のアニーリング工程に曝露されることを特徴とする、請求項1に記載のボンディングワイヤ。
【請求項11】
コア前駆体が、前記中間のアニーリング工程に曝露される場合、少なくとも0.5mmの直径を有することを特徴とする、請求項10に記載のボンディングワイヤ。
【請求項12】
前記中間のアニーリング工程が、少なくとも5分の曝露時間の間、少なくとも350℃のアニーリング温度への前記ワイヤの曝露を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載のボンディングワイヤ。
【請求項13】
前記ワイヤが、前記アニーリング温度への曝露の後、冷却工程に曝露され、前記冷却工程の時間が少なくとも5分であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載のボンディングワイヤ。
【請求項14】
前記冷却工程の時間が、前記曝露時間の少なくとも半分の時間であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載のボンディングワイヤ。
【請求項15】
前記ワイヤの直径が10〜30μmの範囲であることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載のボンディングワイヤ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載のボンディングワイヤにより互いに接続される電子デバイスおよび基板を含む、マイクロ電子部品パッケージ。
【請求項17】
a.ワイヤコア前駆体を提供する工程と、
b.前記ワイヤコアの最終直径に到達するまで前記ワイヤコア前駆体を引く工程と、
c.最小のアニーリング時間の間、最小のアニーリング温度で、引いた前記ワイヤをアニーリングする工程と、
を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のボンディングワイヤを製造する方法。
【請求項18】
d.工程bの前に前記ワイヤコア前駆体の中間のアニーリングする工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
最小の中間のアニーリング温度が350℃であり、最小の中間のアニーリング時間が5分である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
e.中間のアニーリングする工程の後、前記ワイヤを少なくとも中間のアニーリング温度から通常の操作温度以下まで冷却する工程をさらに含み、前記冷却する工程は少なくとも5分間である、請求項18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を有するコアを含み、該コアが、主成分として銀、ならびに金、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、銅およびイリジウムからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む、ボンディングワイヤに関する。
【0002】
本発明はさらに、本発明に係るワイヤを有するマイクロ電子部品パッケージおよび本発明に係るワイヤを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ボンディングワイヤは、半導体素子製造の間、集積回路およびプリント回路基板を電気的に相互接続するための半導体素子の製造に使用される。さらに、ボンディングワイヤは、トランジスタ、ダイオードなどと、ハウジングのパッドまたはピンとを電気的に接続するために電子工学用途に使用される。ボンディングワイヤは初期の頃は金から作製されていたが、最近では銀などの高価ではない材料が使用されている。銀ワイヤは非常に良好な電気伝導性および熱伝導性を与えるが、銀ワイヤのボンディングはその課題を有する。
【0004】
本発明において、ボンディングワイヤという用語は全ての形状の断面および全ての通常のワイヤ直径を含むが、円形の断面および薄い直径を有するボンディングワイヤが好ましい。
【0005】
いくつかの最近の開発は、金と比べてその低い価格のために主成分として銀に基づいたコア材料を有するボンディングワイヤに関するものであった。それにも関わらず、ボンディングワイヤ自体およびボンディングプロセスに関してボンディングワイヤ技術をさらに改良するための継続中の必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は改良されたボンディングワイヤを提供することである。
【0007】
さらに、本発明の別の目的は、良好なプロセス特性を有し、相互接続する場合、特定の必要性を有さず、それ故、コストを節約できる、ボンディングワイヤを提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、優れた電気伝導性および熱伝導性を有するボンディングワイヤを提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、改良された信頼性を示すボンディングワイヤを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、優れたボンディング特性を示すボンディングワイヤを提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、第2のボンディングまたはウェッジボンディングに関する改良されたボンディング特性を示すボンディングワイヤを提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、高いステッチ引き値(stitch pull value)および小さい標準偏差のステッチ引き値を有するボンディングワイヤを提供することである。
【0013】
本発明のさらに別の目的は、高いボール剪断値および小さい標準偏差のボール剪断値を有するボンディングワイヤを提供することである。
【0014】
本発明のなおさらなる目的は、低い電気抵抗率を有するボンディングワイヤを提供することである。
【0015】
別の目的は、マイクロ電子部品パッケージを提供することであり、そのパッケージは、費用効率が高く、電子デバイスとパッケージの基板との間に信頼性のある接続を提供する。
【0016】
別の目的は、本発明のボンディングワイヤを製造する方法を提供することであり、その方法は基本的に公知の方法と比べて製造コストの増加を示さない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、本発明のワイヤは上記の目的の少なくとも1つを解決することが見出された。さらに、ワイヤを製造する課題の少なくとも1つを克服するこれらのワイヤを製造するプロセスが見出された。さらに、本発明に係るワイヤと他の電気素子との間のインターフェースにおいてより信頼性のある、本発明のワイヤを含むシステムが見出された。
【0018】
上記の目的の少なくとも1つの解決への貢献は、カテゴリーを形成する請求項の主題により与えられ、カテゴリーを形成する独立請求項の従属請求項は本発明の好ましい態様を表し、その主題は同様に上記の目的の少なくとも1つの解決への貢献を形成する。
【0019】
本発明の第1の態様は、表面を有するコアを含む、ボンディングワイヤであって、
前記コアは、主成分として銀、ならびに金、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、ニッケル、銅およびイリジウムからなる群から選択される少なくとも1つの成分を含み、前記ボンディングワイヤは、以下の特徴:i)前記コアの平均結晶粒径は0.8μm〜3μmであり、ii)前記ワイヤの断面における<001>方向の配向を有する結晶粒の量は10〜20%の範囲であり、iii)前記ワイヤの断面における<111>方向の配向を有する結晶粒の量は5〜15%の範囲であり、iv)前記ワイヤの断面における<001>方向の配向を有する結晶粒および<111>方向の配向を有する結晶粒の総量は15〜40%の範囲である、のうちの少なくとも1つを有することを特徴とする、ボンディングワイヤである。
【0020】
全ての内容物または成分の占有率はここで、占有率として重量で与える。特に、パーセントで与えた組成の占有率は重量パーセントであることを意図し、ppm(100万分の1)で与えた組成の占有率は重量ppmであることを意図する。特定のサイズおよび/または配向の結晶粒に関するパーセンテージの値に関して、値は粒子の総数の占有率である。
【0021】
粒径および/または粒子配向の決定に関して、ワイヤサンプルが調製され、測定され、電子顕微鏡法、特にEBSD(=電子後方散乱回折)の使用により評価される。本発明の特許請求される特徴の正確な定義に関して、参照が本明細書以下の本発明の例示的な実施形態の説明に対してなされる。
【0022】
好ましくは、本発明に係るワイヤはコアの表面を覆うコーティング層を有さない。このことにより、ワイヤの簡単かつコストが節約された製造が提供される。これは、特定の用途に関して、本発明のワイヤのコアの表面にコーティング層が提供されてもよいことを排除するわけではない。
【0023】
この成分の占有率が、参照した材料の全てのさらなる成分を超える場合、その成分は、「主成分」である。好ましくは、主成分は材料の全重量の少なくとも50%を含む。
【0024】
好ましい実施形態において、コアは、主成分として銀、ならびに金、パラジウムおよび白金からなる群から選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0025】
好ましい詳細な実施形態において、コアは、80〜95重量%の銀、5〜12重量%の金、1.5〜5重量%のパラジウムおよび0.01重量%以下の不可避の不純物を含む。この実施形態において、金含有物の量はより好ましくは5%〜12%の範囲であり、最も好ましくは6%〜10%の範囲である。パラジウムの量はより好ましくは2%〜5%の範囲であり、最も好ましくは2%〜4%の範囲である。
【0026】
代替の実施形態において、コアは、90〜99.7重量%の銀、0.3〜10重量%の金および0.01重量%以下の不可避の不純物を含む。
【0027】
別の代替の実施形態において、コアは、90〜99.7重量%の銀、0.3〜10重量%のパラジウムおよび0.01重量%以下の不可避の不純物を含む。
【0028】
さらに別の代替の実施形態において、コアは、80〜99重量%の銀、0〜10重量%の金、1〜20重量%のパラジウムおよび0.01重量%以下の不可避の不純物を含む。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態において、コアの平均結晶粒径は1.0μm〜1.6μmである。このような結晶粒径は特に均質であり、ワイヤ特性の良好な再現性に寄与する。
【0030】
最も有益な実施形態において、結晶粒径の標準偏差は0μm〜0.5μmである。より好ましくは、結晶粒径の標準偏差は0μm〜0.4μm、またはさらに0μm〜0.25μmである。驚くべきことに、結晶粒が特に均質なサイズである場合、ワイヤ特性の質および再現性は、顕著に増加することが判明した。
【0031】
一般に、粒径およびさらにそれらの配向のような粒子の構造は、公知の製造パラメータの適切な選択により調整され得る。それらは、アニーリング温度および曝露時間のようなアニーリングパラメータならびに引き工程の数、それぞれの直径減少およびさらに他のもののような他のパラメータである。
【0032】
本発明の最も好ましい実施形態において、ワイヤは、ワイヤの最終引き工程の前に中間のアニーリング工程に曝露される。中間のアニーリングは、このようなアニーリングが、ワイヤの微細構造に影響を与えるさらなる工程または測定の前に実施されることが考慮されることを意味する。このような工程は、例えば、中間のアニーリング後のワイヤの引き工程である。
【0033】
ボンディングプロセスにおいてワイヤを使用する前のアニーリング工程へのワイヤの曝露は一般に、このような中間のアニーリング工程として、または最終のアニーリング工程として理解され得る。このような最終のアニーリング工程は、ワイヤ微細構造に影響を与えるワイヤ製造における最後の工程として理解される。このような最終のアニーリング工程のパラメータは当該技術分野において周知である。
【0034】
ワイヤを最終のアニーリング工程に曝露する場合、最も好ましくは、中間のアニーリングは、ワイヤの製造における少なくとも2つの異なるアニーリング手順が実施される手段の前に実施される。引き工程のようなワイヤの微細構造に対して影響を与える操作は、中間のアニーリングと最終のアニーリングとの間に実施され得る。これにより、本発明のワイヤの結晶構造の特定の最適化が可能となる。
【0035】
好ましい実施形態において、コア前駆体は、中間のアニーリング工程に曝露される場合、少なくとも0.5mmの直径を有する。さらにより好ましくは、直径は少なくとも1mmである。一方で、中間のアニーリングの間のコアの直径は、10mmを超えない、より好ましくは5mmを超えないべきである。引きまたは他の形成方法によってこのようなコア前駆体から、ボンディングワイヤ、特に薄いボンディングワイヤを形成する場合、形成する工程の前に中間のアニーリングは、有益な結晶構造を得るのに顕著に役立つ。コア前駆体は、最終ワイヤコアの任意のプレフォームとして定義されるが、コア前駆体は、圧延、引き、加熱、または他のもののような製造工程により処理される。
【0036】
通常好ましくは、形成する工程、特に引き工程により得られる、最終ワイヤ直径と中間にアニーリングしたコアとの間の直径減少比は、0.1〜0.002、より好ましくは0.05〜0.005の範囲で選択される。
【0037】
ワイヤのさらなる最適化は、いくつかの中間のアニーリング手順を含んでもよいことが指摘されるが、製造の効率性のために、ただ1つの中間のアニーリング工程が好ましい。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、中間のアニーリング工程は、少なくとも5分の曝露時間の間、少なくとも350℃のアニーリング温度へのワイヤの曝露を含む。
【0039】
より好ましいアニーリング温度は400℃〜600℃の範囲であり、最も好ましくは450℃〜550℃の範囲である。
【0040】
中間のアニーリング時間はより好ましくは30分より長く、特に30分〜120分の範囲である。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態は、中間のアニーリングのより好ましいアニーリング温度と、より好ましい曝露時間とを組み合わせる。この実施形態において、450℃〜550℃のアニーリング温度が30分〜120分の曝露時間と組み合わされる。
【0042】
本発明のなおさらなる詳細な実施形態は、中間のアニーリングにおけるアニーリング温度への曝露後の冷却工程への曝露を含み、冷却工程の時間は少なくとも5分である。
【0043】
冷却工程は、アニーリング温度からより低い温度までの右下がり温度曲線として理解される。このより低い温度は、室温またはワイヤの構造のより顕著な変化が生じない任意の他の温度であってもよい。特に、より低い温度はワイヤの通常の操作温度であってもよく、そのような操作温度は、結晶構造に対する顕著な影響が予想されない範囲で選択される。例えば通常のLED用途のための典型的な操作温度の例は70℃の範囲である。
【0044】
冷却工程の開始から終わりまでの温度対時間のグラフの形態は、必ずではないが、好ましくは線形である。
【0045】
冷却工程の時間が中間のアニーリングの少なくとも曝露時間の半分の時間である場合、
結晶構造に対する特に有益な影響が達成される。さらにより好ましくは、冷却工程の時間は、中間のアニーリング工程の時間とほぼ同じである。驚くべきことに、かなりゆっくりかつ制御された冷却が、結晶構造の均質性を顕著に向上させることが判明した。
【0046】
本発明は特に薄いボンディングワイヤに関する。観測した効果は、特に粒径および粒子配向の制御に関して、薄いワイヤに特に有益である。本発明の場合、「薄いワイヤ」という用語は8μm〜80μmの範囲の直径を有するワイヤと定義される。特に好ましくは、本発明に係る薄いワイヤは30μm未満の直径を有する。このような薄いワイヤにおいて、本発明の組成およびアニーリングが特に有益な特性を達成するのに役立つ。
【0047】
このような薄いワイヤは、必ずではないが、大部分が、本質的に円形の断面図を有する。本発明の文脈において、「断面図」という用語はワイヤの切断図を指し、切断面はワイヤの長手方向延在部に垂直である。断面図はワイヤの長手方向延在部における任意の点に見られ得る。断面においてワイヤを通る「最長経路」は、断面図の面内のワイヤの断面にわたる最長コードである。断面においてワイヤを通る「最短経路」は、上記の断面図の面内の最長経路に垂直な最長コードである。ワイヤが完全な円形の断面を有する場合、最長経路および最短経路は区別できず、同じ値を有する。「直径」という用語は、任意の平面および任意の方向における全ての幾何学的直径の算術平均であり、全ての平面はワイヤの長手方向延在部に垂直である。
【0048】
本発明のさらなる態様は、本発明に係るボンディングワイヤにより互いに接続される電子デバイスおよび基板を含むマイクロ電子部品パッケージである。
【0049】
マイクロ電子部品パッケージの好ましい詳細な実施形態において、電子デバイスは発光ダイオードである。本発明に係るワイヤはそのようなLEDデバイスを結合するのに優れて適しているだけでなく、ワイヤ材料の反射率がこの特定の用途で良好な結果を生じることが判明した。
【0050】
本発明のさらなる態様は、
a.ワイヤコア前駆体を提供する工程と、
b.ワイヤコアの最終直径に到達するまでワイヤコア前駆体を引く工程と、
c.最小のアニーリング時間の間、最小のアニーリング温度で、引いたワイヤをアニーリングする工程と、
を含む、本発明に係るボンディングワイヤを製造する方法である。
【0051】
前駆体の引きはいくつかの工程で行われてもよいことが理解される。ワイヤコア前駆体は本発明のワイヤの組成を有することが理解される。そのような前駆体は、規定量の銀を融解すること、さらなる組成を規定量に加えること、および均質の混合を考慮することにより、簡単に得られ得る。次いでワイヤコア前駆体を、融解または凝固合金から、任意の公知の方法で鋳造または形成してもよい。
【0052】
本発明の最も好ましい実施形態において、方法は、d.工程bの前にワイヤコア前駆体の中間のアニーリングする工程を含む。
【0053】
この追加の中間のアニーリング工程により、ワイヤなどを引くことが行われるような強い機械的変形の前に結晶構造の最適化が導かれる。中間のアニーリングは最終的に得られるワイヤの微細構造に有益であることが判明した。例えば、中間のアニーリングは、最終製品における粒径の偏差を減少させ、粒子の配向およびさらなるものを向上させるのに役立ち得る。中間のアニーリングのパラメータは必要なワイヤパラメータに関して適合されてもよい。
【0054】
好ましくは、最小の中間のアニーリング温度は350℃であり、最小の中間のアニーリング時間は5分である。
【0055】
有益には、方法は、中間のアニーリング後にワイヤを、少なくともアニーリング温度から通常の操作温度以下まで冷却する工程をさらに含み、冷却工程は少なくとも5分の時間である。
【0056】
特に最適化したアニーリングパラメータに関してワイヤを製造する方法のより好ましい詳細な実施形態に関して、参照が本発明のワイヤの上記の説明に対してなされる。
【0057】
本発明の主題を図面に例示する。しかしながら、図面は本発明の範囲または特許請求の範囲を決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明のワイヤの調製物の断面の走査を示し、結晶粒界が見える。
【
図2】中間のアニーリングをしていないワイヤと比較した、本発明のワイヤの粒径評価のグラフを示す。
【
図3】マークされ、評価されている、異なる配向の結晶粒を有する
図1からのワイヤを示す。
【
図4】
図1からのワイヤの粒径の評価のグラフを示す。
【実施例】
【0059】
本発明を実施例によりさらに例示する。この実施例は本発明の例示的な説明を与え、本発明の範囲または特許請求の範囲を決して限定するものではない。
【0060】
合金を、以下のように十分に混合された組成(重量%)を得るために、所定量の純粋な銀を融解し、所定量の純粋な金およびパラジウムを加えることにより調製した:
銀 金 パラジウム
89% 8% 3%
【0061】
ワイヤコア前駆体を得るために、融解した混合物を形態に鋳造し、冷却する。ワイヤ前駆体は2mmの直径を有した。
【0062】
次いで、2mmの直径のワイヤコア前駆体を中間のアニーリング工程においてアニーリングした。この工程において、コア前駆体を500℃の温度まで予熱したアニーリングオーブン内に挿入した。次いでコア前駆体を、90分の曝露時間、500℃の一定の温度でオーブン内に置いておいた。
【0063】
中間のアニーリング工程の後に連続して以下のパラメータを用いて冷却工程を行った:90分間、オーブン温度を500℃から室温まで直線的に低下させる。
【0064】
次いで中間にアニーリングしたコア前駆体を、いくつかの引き工程において18μmの最終直径の薄いワイヤまで引いた。
【0065】
次いで得られた18μmのワイヤを、通常のアニーリングパラメータを用いて最終のアニーリング工程においてアニーリングした。
【0066】
本発明に従って得られたワイヤをいくつかの試験のために使用した。
【0067】
最初に、ワイヤを、本発明のワイヤと同様の銀合金に基づいた2つの標準的なワイヤと比較した。比較測定は、ワイヤの抵抗率、ステッチ引き挙動およびボール剪断挙動に関するデータを含む。ワイヤのこれらの目的のために、ワイヤボンディングの分野における標準的な試験手順を使用する。
【0068】
図5は3つのワイヤを比較するグラフを示す。本発明によるワイヤをW1と命名し、2つの比較ワイヤをC1およびC2と命名する。ワイヤの抵抗率は以下の値を有する:
W1 C1 C2
抵抗率[μΩ×cm]: 4,66 4,80 5,10
(表1)
【0069】
本発明のワイヤサンプルW1は、はるかに最も低い抵抗率(4.7μΩ×cm未満)を有し、それは一般にボンディングワイヤの非常に有益な特徴である。
【0070】
ステッチ引き挙動を比較すると、高いステッチ引き値が有益だけでなく、小さい偏差として、さらにより小さい偏差の値が、製造プロセスにおいて高い制御および信頼性を与える。
【0071】
3つのワイヤについての結果を以下の表2に示す:
【0072】
【表1】
【0073】
このデータは、本発明のワイヤが、顕著に良い偏差を有するので、ワイヤC1と比べて有益であることを示す。ワイヤC2と比べると、本発明のワイヤは、同じ偏差で、より高い平均値を有するので、少なくとも有益である。
【0074】
ボール剪断特性を比較すると、高い引き値が有益なだけでなく、小さい偏差として、さらにより小さい偏差の値が、製造プロセスにおいて高い制御および信頼性を与える。3つのワイヤについての結果を以下の表3に示す:
【0075】
【表2】
【0076】
ボール剪断特性についてのこのデータは、最も小さい偏差と共に最も高い平均値を有するので、両方の比較ワイヤより、本発明のワイヤが有益であることを示す。
【0077】
以下において、本発明のワイヤをその特定の性質に関して詳細に記載する。
【0078】
図1は本発明のワイヤのサンプル調製物の測定を示す。サンプル調製はいくつかの工程で行った。
ワイヤのピースを矩形断面を有する鋼の支持材上で巻いた。
巻いたワイヤおよび鋼の支持材をモールディングにより樹脂に埋め込んだ。
埋め込んだワイヤを断面で切断した。
ワイヤの断面積を0.04μmの粒径の仕上げ研磨材を用いていくつかの工程で研磨した。
研磨した表面を洗浄し、次いでイオンミリングにより処理した。
【0079】
ワイヤの微構造についてのいくつかの測定を、特に電子後方散乱回折(EBSD)により行った。使用した分析機器はFE−SEM Hitachi S−4300Eであった。測定およびデータ評価について使用したソフトウェアパッケージはTSLと呼ばれ、Edax Inc.,US(www.edax.com)から市販されている。
【0080】
これらの測定を用いて、ワイヤの結晶粒径および分布ならびに結晶配向を決定した。結晶粒の測定および評価は、現在、EBSD測定により実施されているので、5°の許容角度が粒界の決定のために設定されたことが理解されるべきである。
【0081】
図1の画像は本発明のワイヤの18μm直径の断面の走査を示し、ワイヤ材料の結晶粒はそれらの粒界により示される。単一の結晶粒の全てをそれらのサイズおよびそれらの結晶配向に関して評価する。
【0082】
この評価において、断面の3つの異なる領域をより綿密な理解のために定義する。それらの領域を、本質的に円形断面の中心からの半径方向距離に応じて「表面」、「中間」および「中心」と命名する。これらの3つの領域の各々は総断面積のほぼ同一の占有率を有する。
【0083】
図2において、平均結晶粒径を、中間のアニーリングおよび冷却工程を欠くワイヤ(下方の曲線)に関して、ならびに上記のように実施した中間のアニーリングおよび冷却工程を用いたワイヤ(上方の曲線)に関して、ワイヤの各領域について表す。粒径の標準偏差をそれぞれのグラフの点における垂直バーにより表す。
【0084】
中間にアニーリングしたワイヤに関して、全体の平均粒径は約1.2μmであり、異なる領域にわたって平均化した標準偏差は0.13μm未満である。異なる領域に関して、平均粒径は1μm以下ではなく、標準偏差は0.15μmより大きくはない。
【0085】
配向は、ワイヤサンプルの縦方向に対して設定し、<001>配向として定義した。
【0086】
図3に表すように、
図1のワイヤの結晶粒を、ワイヤ軸に対するそれらの配向に関して評価する。
図3の上側の右角において、三角形は一般に使用される提示法として異なる配向を示す。
【0087】
3つの基本または主な配向<001>、<101>および<111>は三角形のそれぞれの角に属する。
【0088】
本発明の評価において、結晶粒は、その測定した配向が<001>配向(またはそれぞれ<111>配向)に対して15°の許容角度内である場合、<001>配向(またはそれぞれ<111>配向)に属すると定義される。三角形において、これらの許容角度は、充填した領域として<001>配向および<111>配向の場合、可視的であり、2つの配向について灰色の2つの異なる陰影を有する。これらの配向のそれぞれの粒子はワイヤ断面において灰色の陰影の同じ色でマークする。白色の他の粒子は<001>または<111>配向に属さない。
【0089】
計数した粒子の評価により、粒子の全数の11.7%は<001>配向であり、粒子の全数の6.9%は<111>配向であることが示される。
【0090】
比較ワイヤC1およびC2との比較を示す:
【0091】
【表3】
【0092】
これらの結果およびさらなる評価により、本発明のワイヤサンプルが、以下の性質を有する特定の配向の粒子分布を有することが確認される:
a.ワイヤの断面において<001>方向の配向を有する結晶粒の量は10〜20%の範囲である。
b.ワイヤの断面において<111>方向の配向を有する結晶粒の量は5〜15%の範囲である。
c.ワイヤの断面において<001>方向の配向を有する結晶粒および<111>方向の配向を有する結晶粒の総量は15〜40%の範囲である。
d.コアの平均結晶粒径は0.8μm〜3μmである。
【0093】
これらの特性のうちの少なくとも1つを有する本発明のワイヤは、上記のボンディングプロセスにおいて良好な特性を示すことが判明した。さらに有益には、特徴a〜dのいずれかの2つ以上が同時に存在する。