(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1には、電動工具の各部位のうち本体部の断面形状を工夫することによって、ハンドグリップを把持する作業者の手指の負担をなくそうとする可能性が提示されているが、この種の電動工具をはじめ作業者がハンドグリップを把持して作業を行う各種の作業工具においては、作業者の手指の負担低減を追及するための更なる技術的探求が要請される。そこで、本発明者らは、この種の作業工具を用いた作業時において、ハンドグリップを把持している作業者の手指や掌の形、当該手指や掌がハンドグリップに及ぼす応力、ハンドグリップを把持している作業者が感じる把持感(フィット感、シックリ感など)等、作業者の手指の負担に関連する各種の事項について鋭意検討した。その検討の結果、本発明者らは、特に最適なハンドグリップ形状を追求することによって、作業者の手指の負担低減を図ることができ、長時間の作業においても作業者の手が疲れにくく痛くなりにくいハンドグリップ構造を見出すことに成功したのである。
本発明では、作業者がハンドグリップを把持して作業を行う構成の作業工具において、作業者の手指にかかる負担の低減を図るのに有効な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。本発明は、ネジ締め作業、切断作業、切削作業、研削・研磨作業、釘打ち作業、鋲打ち作業、穴あけ作業などの作業に用いられる各種の作業工具に適用され得る。
【0005】
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具は、本体部、駆動手段、ハンドグリップを少なくとも備える。先端工具は、本体部の先端側に取り付け可能に構成され、各種ネジのネジ締め作業、切断作業、切削作業、研削・研磨作業、釘打ち作業、鋲打ち作業、穴あけ作業等に用いられる。本発明の駆動手段は、本体部内に収容され先端工具を駆動する手段として構成される。本発明の駆動手段として、工具本体に搭載されたバッテリから供給される電流、或いは電源コードを用いて電源から供給される電流によって作動する電動モータや、空気や燃焼ガスの圧力によって作動する駆動機構を採用することができる。従って、本発明の「作業工具」には、電動式の作業工具、エア駆動式やガス駆動式の作業工具が広く包含される。また、本発明の作業工具を用いた作業形態としては、水平方向に延在する先端工具を前方へ押圧しながら作業を行う形態、垂直方向に延在する先端工具を上方または下方へ押圧しながら作業を行う形態、斜め方向に延在する先端工具を上方または下方へ押圧しながら作業を行う形態などがある。
【0006】
本発明のハンドグリップは、本体部側のグリップ基端からグリップ先端へ向けて先端工具の軸方向と交差する交差方向に長尺状に延在し、作業者(工具使用者)が手で把持する把持部として構成される。従って、本発明において「ハンドグリップ」とは、作業者が作業工具を手で把持する際に、その手の把持力(握力)が及ぶ部分(領域)に相当する。なお、ハンドグリップの先端
部には、バッテリが着脱可能に装着されるように構成されている。バッテリは、前記交差方向に交差する方向にスライドされて着脱されるように構成され、さらに、バッテリは、グリップ先端部よりも下方のグリップ外領域に配置される構成である。
【0007】
特に、本発明のハンドグリップには、本体部よりも軟質の材料で形成されたハンドグリップ緩衝部が設けられている。さらに、本体部には、前記軟質の材料で形成された本体部緩衝部が設けられている。そして、ハンドグリップ緩衝部と本体部緩衝部は、前記軟質の材料で連結されている。さらに、ハンドグリップは、当該ハンドグリップの側面での頂部が前記交差方向に延在するように形成されている。
【0008】
さらに、ハンドグリップは、先端工具の軸方向に関する断面が楕円状に形成され、当該ハンドグリップの各部位のうちグリップ基端とグリップ先端との間の領域に前記断面での長径及び短径がいずれも最大となる最大径部を有するとともに、当該最大径部よりもグリップ先端側に前記断面での長径及び短径がいずれも最小となる最小径部を有する。
これにより、グリップ基端とグリップ先端との間の領域からグリップ先端側に向かうにつれて長径及び短径が相対的に小さくなっていく。一般にハンドグリップを把持する際、グリップ先端側の指を強く(しっかりと)握ることができれば、掌全体による把持力(握力)を有効に使用することが可能である。そこで、本発明では、グリップ基端とグリップ先端との間の領域に最大径部を設け、最大径部よりもグリップ先端側に最小径部を設ける構成としている。
なお、これら最大径部や最小径部は、所定の位置に形成される部位であってもよいし、上下方向にある程度の幅をもって形成される領域であってもよい。最大径部や最小径部における長径及び短径は、断面の位置や向き、誤差や公差などを考慮しつつ適宜設定される。また、最大径部や最小径部における長径及び短径は、人種、性別、年齢などによる手指や掌の大きさの相違等に応じて適宜最適値を設定することができる。一例として、欧米人の手指や掌の大きさが東洋人よりも一般的に大きいことを考慮した場合、欧米人向けの設計においては、グリップの基本性能を保ちつつ、最大径部や最小径部における長径及び短径を、東洋人向けのグリップの大きさの106〜110%程度にスケールアップすることができ、好ましくは108%程度に設定することができる。
このような構成によれば、グリップ先端側に向けてグリップ断面の長径及び短径が小さくなるようにすることで、掌全体による把持力(握力)が有効に使用されることとなり、握り易く疲れにくいハンドグリップ構造が実現される。
さらに、ハンドグリップは、前記頂部がグリップ把持状態にある掌の窪みに嵌り込むように構成されている。
このような構成によれば、グリップ側面での頂部である凸部分が、グリップ把持状態にある作業者の掌に形成される窪み(凹部分)に嵌まり込むフィット感の高いハンドグリップ構造が実現される。
さらに、ハンドグリップは、前記頂部がグリップ把持状態にある掌の感情線または知能線に沿って延在するように構成されている。すなわち、グリップ把持状態の掌には、特に感情線や知能線に沿って窪み(凹部分)が形成されることを勘案して、本発明ではこの窪みに沿ってグリップ側面における頂部(凸部分)が延在するように構成している。
このような構成によれば、作業者の掌の形状を考慮した、よりフィット感の高いハンドグリップ構造が実現される。
【0009】
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、ハンドグリップ緩衝部は、ハンドグリップの長軸方向に関する先端工具側において、軟質の材料で形成された前側緩衝部と、ハンドグリップの長軸方向に関する先端工具とは反対側において、軟質の材料で形成された後側緩衝部を含む。
さらに、ハンドグリップの側面には、前側緩衝部と後側緩衝部を長軸方向に離隔するとともに、本体部と同質の材料で形成された離隔部が形成されている。
【0010】
(本発明の第
3発明)
前記課題を解決する本発明の第
3発明は、請求項
3に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具は、本体部、駆動手段、ハンドグリップを少なくとも備える。先端工具は、本体部の先端側に取り付け可能に構成され、各種ネジのネジ締め作業、切断作業、切削作業、研削・研磨作業、釘打ち作業、鋲打ち作業、穴あけ作業等に用いられる。本発明の駆動手段は、本体部内に収容され先端工具を駆動する手段として構成される。本発明の駆動手段として、工具本体に搭載されたバッテリから供給される電流、或いは電源コードを用いて電源から供給される電流によって作動する電動モータや、空気や燃焼ガスの圧力によって作動する駆動機構を採用することができる。従って、本発明の「作業工具」には、電動式の作業工具、エア駆動式やガス駆動式の作業工具が広く包含される。また、本発明の作業工具を用いた作業形態としては、水平方向に延在する先端工具を前方へ押圧しながら作業を行う形態、垂直方向に延在する先端工具を上方または下方へ押圧しながら作業を行う形態、斜め方向に延在する先端工具を上方または下方へ押圧しながら作業を行う形態などがある。
本発明のハンドグリップは、本体部側のグリップ基端からグリップ先端へ向けて先端工具の軸方向と交差する交差方向に長尺状に延在し、作業者(工具使用者)が手で把持する把持部として構成される。従って、本発明において「ハンドグリップ」とは、作業者が作業工具を手で把持する際に、その手の把持力(握力)が及ぶ部分(領域)に相当する。なお、ハンドグリップの先端部には、バッテリが着脱可能に装着されるように構成されている。バッテリは、前記交差方向に交差する着脱方向にスライドされて着脱されるように構成され、さらに、バッテリは、グリップ先端部よりも下方のグリップ外領域に配置される構成である。
特に、本発明のハンドグリップには、本体部よりも軟質の材料で形成されたハンドグリップ緩衝部が設けられている。さらに、本体部には、前記軟質の材料で形成された本体部緩衝部が設けられている。そして、ハンドグリップ緩衝部と本体部緩衝部は、前記軟質の材料で連結されている。さらに、ハンドグリップは、当該ハンドグリップの側面での頂部が前記交差方向に延在するように形成されている。
さらに、ハンドグリップは、先端工具の軸方向に関する断面が楕円状に形成され、当該ハンドグリップの各部位のうちグリップ基端とグリップ先端との間の領域に前記断面での長径及び短径がいずれも最大となる最大径部を有するとともに、当該最大径部よりもグリップ先端側に前記断面での長径及び短径がいずれも最小となる最小径部を有する。
これにより、グリップ基端とグリップ先端との間の領域からグリップ先端側に向かうにつれて長径及び短径が相対的に小さくなっていく。一般にハンドグリップを把持する際、グリップ先端側の指を強く(しっかりと)握ることができれば、掌全体による把持力(握力)を有効に使用することが可能である。そこで、本発明では、グリップ基端とグリップ先端との間の領域に最大径部を設け、最大径部よりもグリップ先端側に最小径部を設ける構成としている。
なお、これら最大径部や最小径部は、所定の位置に形成される部位であってもよいし、上下方向にある程度の幅をもって形成される領域であってもよい。最大径部や最小径部における長径及び短径は、断面の位置や向き、誤差や公差などを考慮しつつ適宜設定される。また、最大径部や最小径部における長径及び短径は、人種、性別、年齢などによる手指や掌の大きさの相違等に応じて適宜最適値を設定することができる。一例として、欧米人の手指や掌の大きさが東洋人よりも一般的に大きいことを考慮した場合、欧米人向けの設計においては、グリップの基本性能を保ちつつ、最大径部や最小径部における長径及び短径を、東洋人向けのグリップの大きさの106〜110%程度にスケールアップすることができ、好ましくは108%程度に設定することができる。
このような構成によれば、グリップ先端側に向けてグリップ断面の長径及び短径が小さくなるようにすることで、掌全体による把持力(握力)が有効に使用されることとなり、握り易く疲れにくいハンドグリップ構造が実現される。
さらに、ハンドグリップ緩衝部は、ハンドグリップの長軸方向に関する先端工具側において、軟質の材料で形成された前側緩衝部と、ハンドグリップの長軸方向に関する先端工具とは反対側において、軟質の材料で形成された後側緩衝部を含む。
さらに、ハンドグリップの側面には、前側緩衝部と後側緩衝部を長軸方向に離隔するとともに、本体部と同質の材料で形成された離隔部が形成されている。
【0011】
(本発明の第
4発明)
前記課題を解決する本発明の第
4発明は、請求項
4に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、ハンドグリップは、前記頂部がグリップ把持状態にある掌の窪みに嵌り込むように構成されている。
このような構成によれば、グリップ側面での頂部である凸部分が、グリップ把持状態にある作業者の掌に形成される窪み(凹部分)に嵌まり込むフィット感の高いハンドグリップ構造が実現される。
【0012】
(本発明の第
5発明)
前記課題を解決する本発明の第
5発明は、請求項
5に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、ハンドグリップは、前記最大径部がグリップ把持状態の中指ないし薬指に対応した領域に形成され、前記最小径部がグリップ把持状態の小指に対応した領域に形成される構成である。
一般にハンドグリップを把持する際、特に小指を強く(しっかりと)握ることができれば、掌全体による把持力(握力)を有効に使用することが可能である。そこで、本発明では、中指ないし薬指が巻き付く領域を最大径部とするとともに、特に小指が巻き付く領域を最小径部としている。
このような構成によれば、中指ないし薬指に対応した領域からグリップ先端側に向けてグリップ断面の長径及び短径が小さくなるようにし、小指に対応した領域おいてグリップ断面の長径及び短径が最小となるようにすることで、掌全体による把持力(握力)が有効に使用されることとなり握り易く疲れにくいハンドグリップ構造が実現される。
【0013】
(本発明の第
6発明)
前記課題を解決する本発明の第
6発明は、請求項
6に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、ハンドグリップの基端側には、作業者に操作されるトリガが設けられている。そして、前記交差方向に関して、ハンドグリップの前記頂部には、トリガのグリップ先端側と、グリップ先端と、の間において、ハンドグリップ緩衝部
が配置されている。
【0014】
(本発明の第
7発明)
前記課題を解決する本発明の第
7発明は、請求項
7に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、ハンドグリップの一方の側面における前記頂部を前記交差方向に連続状に結ぶ結線に対して、ハンドグリップの他方の側面における前記頂部を前記交差方向に連続状に結ぶ結線が、ハンドグリップの一方の側面とハンドグリップの他方の側面の間において、前記交差方向および前記軸方向の両方向に延在する平面に関して、鏡像を形成するようにハンドグリップが構成されている。
【0015】
(本発明の第
8発明)
前記課題を解決する本発明の第
8発明は、請求項
8に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、本体部は、駆動手段としての電動モータを収容するモータハウジングと、電動モータの出力軸の回転を減速する減速機構を収容するとともに、モータハウジングより先端側に設けられたギアハウジングと、を有する。そして、本体部緩衝部は、ギアハウジングの側面に形成されている。
【0016】
【0017】
(本発明の第9発明)
前記課題を解決する本発明の第9発明は、請求項9に記載の作業工具である。
本発明のこの作業工具では、本体部緩衝部は、前側緩衝部と連結する前側連結部と、後側緩衝部と連結する後側連結部と、を含む。
さらに、前側連結部と後側連結部を長軸方向に離隔するとともに、本体部の一部を形成する本体側離隔部が形成されている。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
特に、本発明のバッテリは、1または複数の円筒形電池セルを収容した躯体部分を備え、バッテリ装着状態において当該躯体部分がグリップ先端部よりも下方のグリップ外領域に配置される構成になっている。この円筒形電池セルとしては、乾電池形の形状を有するニッケル水素電池を用いることができる。従来、定格の円筒形電池セルからなるバッテリを用いる場合には、円筒形電池セルの躯体部分の一部または全部をハンドグリップ内の収容空間に収容するのが一般的であるが、このときには躯体部分の大きさがハンドグリップの形状を自由に設計する際の阻害要因となる。従って、これまでのハンドグリップでは、その形状を自由に設計したり大幅に変更するのに限界があった。そこで、本発明では、円筒形電池セルの躯体部分をグリップ外領域に配置するように構成することによって、定格の円筒形電池セルによるバッテリを用いる場合であっても、ハンドグリップ形状が、円筒形電池セルの躯体部分の形状に全く影響を受けない構造を用いることとしている。
【0027】
このような構成によれば、ハンドグリップの形状が円筒形電池セルの躯体部分によって制限されることがなく、ハンドグリップの形状に関し設計の自由度を高めることが可能であるところ、作業者の手指にかかる負担の低減を図るのに有効なハンドグリップ構造を実現するのに効果的である。このような構成は、とりわけグリップ先端部に装着されたバッテリをハンドグリップの延在方向と交差する方向にスライドさせて着脱操作を行う、いわゆるスライド式バッテリの構成として有効である。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明によれば、作業者がハンドグリップを把持して作業を行う構成の作業工具において、特にハンドグリップの形状を工夫することによって、作業者の手指にかかる負担の低減を図ることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の「作業工具」の一実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、作業工具の一例として電動式(充電式)のインパクトドライバを用いて説明する。このインパクトドライバは、「作業工具」或いは「電動工具」と称呼される。
【0030】
本発明の一実施の形態のインパクトドライバ100の外観が
図1及び
図2に示される。
図1には、本発明の一実施の形態のインパクトドライバ100の側面図が示され、
図2には、
図1中のインパクトドライバ100を図中右側からみた背面図が示される。
【0031】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態のインパクトドライバ100は、概括的に見て、インパクトドライバ100の外郭を形成する本体部101、当該本体部101の先端領域に着脱自在に取付けられて各種ネジのネジ締め作業を行うドライバビット110、当該本体部101内に収容される駆動モータ120、ハンドグリップ130、バッテリ140を主体として構成される。
【0032】
本体部101は、モータハウジング103及びギアハウジング105を備える。この本体部101が本発明における「本体部」を構成している。この本体部101とハンドグリ
ップ130をあわせて「本体部」ということもできる。
【0033】
モータハウジング103内に電動式の駆動モータ120が収容されており、ギアハウジング105の先端側に突出する(取り付けられる)ドライバビット110が、この駆動モータ120によって駆動される。この駆動モータ120が本発明における「電動モータ」に対応しており、この駆動モータ120によって駆動される被動体としてのドライバビット110が本発明における「本体部の先端側に取り付けられる先端工具」に相当する。
【0034】
ギアハウジング105内には、特に図示しないものの、駆動モータ120の出力軸の回転を適宜減速する減速機構、この減速機構によって回転駆動されるスピンドル、当該スピンドルからボールを伝達部材として回転駆動されるハンマー、およびハンマーによって回転駆動されるアンビルなどが配置されている。アンビルの先端は、ギアハウジング105の先端から突出しており、この突出された先端部にドライバビット110が着脱自在に取り付けられる。
【0035】
ハンドグリップ130は、作業時や携帯時などの際に作業者によって把持されるグリップであり、作業者が作業工具を手で把持する際に、その手の把持力(握力)が及ぶ部分(領域)に相当する。このハンドグリップ130が、本発明における「ハンドグリップ」に対応している。本実施の形態のハンドグリップ130は、本体部101下方(本体部側)のグリップ基端130aからグリップ先端130bへ向けてドライバビット110の軸方向と交差する方向に長尺状に延在する構成とされる。このハンドグリップ130のグリップ前部には、駆動モータ120の電源スイッチ(図示省略)を投入操作するトリガ131が設けられている。すなわち、このトリガ131は作業者によって駆動モータ120の駆動及び停止のいずれかに操作されるものであり、本発明における「トリガ」に相当する。
【0036】
また、本実施の形態において、ハンドグリップ130をはじめ本体部101は、硬質材(硬質合成樹脂材料など)によって形成された外殻部分(ケーシング部分)を有するが、その外殻部分の外周には更に、硬質材よりも軟質の軟質材(軟質合成樹脂材料やゴム材料など)によって形成された緩衝部が設けられている。この緩衝部は、例えば
図1中の斜線によって示される部材であり、側当て部107、後端当て部109、グリップ前当て部132、グリップ後当て部133、連結部134によって少なくとも構成される。側当て部107は、本体部101の両側面に形成される部位であり、後端当て部109は、本体部101の後端面に形成される部位である。グリップ前当て部132は、ハンドグリップ130の前面及び側面に形成される部位であり、グリップ後当て部133は、ハンドグリップ130の後面に形成される部位である。また、連結部134は、側当て部107、グリップ前当て部132、グリップ後当て部133を連結状に延在する部位である。このような構成の緩衝部を設けることによって、ハンドグリップ130を把持して作業を行う作業者にソフトな把持感を付与することができるとともに、外観において作業者に斬新な印象を付与することが可能となる。
【0037】
バッテリ140は、ハンドグリップ130のグリップ先端部(下端部)に着脱自在に装着される。このバッテリ140は、特に図示しないものの、駆動モータ120に電流を供給する電源としての複数の円筒形電池セル(蓄電池)を備え、当該複数の円筒形電池セルを横倒し状に配置した状態で躯体部分に収容している。なお、本構成にかえて、1または複数の円筒形電池セルを倒立状に配置した状態で躯体部分に収容する構成を用いることもできる。また、ハンドグリップ130内の収容空間には、駆動モータ120とバッテリ140とを接続する各種の基板類や配線類が収容されている。
【0038】
ここで、
図3には、
図1中のインパクトドライバ100においてバッテリ140の装着状態及び脱着状態が示される。
図3に示すように、本実施の形態のバッテリ140は、円筒形電池セルを収容した躯体部分の一部または全部がバッテリ上面から上方に向けて突出しておらず、バッテリ装着状態においてグリップ先端130b(グリップ先端部)よりも下方のグリップ外領域に円筒形電池セルの躯体部分が配置される構成、すなわち円筒形電池セルの躯体部分がハンドグリップ130内の収容空間に収容されない構成になっている。このバッテリ140が、本発明における「バッテリ」に相当する。本構成は、円筒形電池セルの躯体部分がバッテリ上面から上方へ向けて突出し、装着状態において円筒形電池セルの躯体部分の一部または全部をハンドグリップ内の収容空間に収容する、いわゆる差し込み式と称呼されるタイプのバッテリの構成とは異なる。すなわち、本実施の形態のバッテリ140は、グリップ外領域に円筒形電池セルの躯体部分が配置されており、バッテリ装着操作(取り付け)及びバッテリ脱着操作(取り外し)に関しスライド式に構成された、いわゆるスライド式と称呼されるタイプとして構成される。従って、このバッテリ140は、装着状態からスライド方向(ドライバビット110の軸方向と交差する方向)に沿ってそのままスライド移動させることよって脱着操作が可能とされる。
なお、ハンドグリップ130側から脱着(取り外し)されたバッテリ140は、専用の充電器(図示省略)に装着されることで充電が可能とされる。
【0039】
上記のように構成されたインパクトドライバ100において、作業者がハンドグリップ130を把持しトリガ131を引き操作して電源スイッチを投入すると、駆動モータ120が通電駆動され、減速機構、スピンドル、ハンマー、アンビルを介してドライバビット110が回転駆動され、ネジ締め作業が遂行される。なお、インパクトドライバ100の作動原理自体は、周知の技術事項に属するため、その詳細な構成や作用の説明は、便宜上省略する。
【0040】
本実施の形態のインパクトドライバ100を用いた作業形態としては、水平方向に延在するドライバビット110を前方へ押圧しながら作業を行う形態、垂直方向に延在するドライバビット110を上方または下方へ押圧しながら作業を行う形態、斜め方向に延在するドライバビット110を上方または下方へ押圧しながら作業を行う形態などが想定される。
【0041】
次に、本実施の形態のハンドグリップ130の具体的な構成及び作用を、
図4〜
図12を参照しながら詳細に説明する。
【0042】
なお、前述のようにスライド式のバッテリ140を採用する本実施の形態は、ハンドグリップ130内の収容空間の大きさが円筒形電池セルの躯体部分によって制限されることがなく、従って本構成は、ハンドグリップ130の形状に関し設計の自由度を高めるのに有効な構造とされる。すなわち、差し込み式のバッテリが装着される作業工具においては、ハンドグリップの形状が当該ハンドグリップ内の収容空間に収容される円筒形電池セルの躯体部分の形状に影響を受けることとなるが、本実施の形態の如くスライド式のバッテリが装着される構成によれば、ハンドグリップの形状が円筒形電池セルの躯体部分の形状に影響を受けることがなく、当該ハンドグリップの形状に関し設計の自由度が高まる。そこで、本発明者らは本構成の特徴をいかし、作業者の手指の負担低減を図ることができ、長時間の作業においても作業者の手が疲れにくく痛くなりにくいハンドグリップ形状について鋭意検討した結果、以下に示す効果的なハンドグリップ構造を想到したものである。
【0043】
図4には、本実施の形態のハンドグリップ130の側面図が示される。
図4に示すハンドグリップ130において、第1のグリップ領域135は、グリップ把持状態の親指と人差し指の間の水かき部が位置する領域とされる。また、第2のグリップ領域136は、グリップ把持状態の中指が位置する領域とされる。また、第3のグリップ領域137は、グリップ把持状態の中指ないし薬指が位置する中間的な領域とされる。また、第4のグリップ領域138は、グリップ把持状態の薬指が位置する領域とされる。また、第5のグリップ領域139は、グリップ把持状態の小指が位置する領域とされる。特に、第2のグリップ領域136から第5のグリップ領域139までの領域は、一例としてグリップ先端130bからグリップ基端130aに向けて47.0mm±2%の範囲に設定される。
【0044】
また、
図4中のハンドグリップ130の断面構造に関し、
図5には
図4中のA−A線における断面構造が、
図6には
図4中のB−B線における断面構造が、
図7には
図4中のC−C線における断面構造が、
図8には
図4中のD−D線における断面構造が、
図9には
図4中のE−E線における断面構造がそれぞれ示される。本実施の形態ではこれら各断面は、バッテリ140が長手状に延在する方向に沿った面とされる。
【0045】
図5に示すように、ハンドグリップ130の第1のグリップ領域135における断面構造は楕円状に構成されており、一例として当該断面におけるグリップ前後方向の長径a1が53.6mm±2%の範囲に設定され、グリップ左右方向の短径b1が31.2mm±2%の範囲に設定される。
【0046】
図6に示すように、ハンドグリップ130の第2のグリップ領域136における断面構造は楕円状に構成されており、一例として当該断面におけるグリップ前後方向の長径a2が46.0mm±2%の範囲に設定され、グリップ左右方向の短径b2が34.5mm±2%の範囲に設定される。
【0047】
図7に示すように、ハンドグリップ130の第3のグリップ領域137における断面構造は楕円状に構成されており、一例として当該断面におけるグリップ前後方向の長径a3が45.4mm±2%の範囲に設定され、グリップ左右方向の短径b3が33.7mm±2%の範囲に設定される。
【0048】
図8に示すように、ハンドグリップ130の第4のグリップ領域138における断面構造は楕円状に構成されており、一例として当該断面におけるグリップ前後方向の長径a4が43.3mm±2%の範囲に設定され、グリップ左右方向の短径b4が32.0mm±2%の範囲に設定される。
【0049】
図9に示すように、ハンドグリップ130の第5のグリップ領域139における断面構造は楕円状に構成されており、一例として当該断面におけるグリップ前後方向の長径a5が38.7mm±2%の範囲に設定され、グリップ左右方向の短径b5が29.4mm±2%の範囲に設定される。
【0050】
図6〜
図9に示すように、本実施の形態のハンドグリップ130におけるグリップ径(長径及び短径)は、第2のグリップ領域136からグリップ先端側の範囲では、第2のグリップ領域136や第3のグリップ領域137において最大となっている。そして、グリップ径(長径及び短径)は、最大径部からグリップ先端130b側へと向かうにつれて小さくなり、第5のグリップ領域139において最小となるように構成されている。また、特に図示しないものの、各断面における断面積やグリップ外周径もグリップ径と概ね同様に、第2のグリップ領域136や第3のグリップ領域137において最大となり、グリップ先端130b側へと向かうにつれて小さくなり、第5のグリップ領域139において最小となるように構成されている。
なお、本実施の形態では、一例としてバッテリ140の長手状延在方向に沿った断面に関するグリップ径(長径及び短径)の値について記載したが、グリップ各部位におけるグリップ径(長径及び短径)の値は、断面の位置や向き、誤差や公差などを考慮しつつ適宜設定することができる。
【0051】
一般にハンドグリップを把持する際、特に小指を強く(しっかりと)握ることができれば、掌全体による把持力(握力)を有効に使用することが可能である。このことを考慮し、本実施の形態では、グリップの大きさ(少なくともグリップ径)が中指ないし薬指が巻き付く領域において最大となり、小指が巻き付く領域において最小となるように構成している。このときの第2のグリップ領域136や第3のグリップ領域137が、本発明における「最大径部」に対応しており、第5のグリップ領域139が、本発明における「最小径部」に対応している。なお、本発明では、本実施の形態のように最大径部(グリップ径が最大となる領域)の位置が、最大断面積部(断面積が最大となる領域)や最大外周長さ部(グリップ外周長さが最大となる領域)の位置と概ね合致してもよいし合致しなくてもよい。同様に、最小径部(グリップ径が最小となる領域)の位置が、最小断面積部(断面積が最小となる領域)や最小外周長さ部(グリップ外周長さが最小となる領域)の位置と概ね合致してもよいし合致しなくてもよい。
【0052】
また、
図4中に示すX領域、すなわち第2のグリップ領域136よりもグリップ基端130aにおいては、その断面形状を特に図示しないものの、グリップ径、グリップ外周長さ及びグリップ断面積が第2のグリップ領域136よりも相対的に小さくなるように構成されている。すなわち、作業者が作業工具を手で把持する際に、その手の把持力が実質的及ぶ部分は、グリップ基端130a側からグリップ先端130b側へと向かうにつれて細い→太い→細いという構成になっている。
【0053】
また、
図10には、本実施の形態のハンドグリップ130の表面形状が模式的に示される。
【0054】
図10に示すハンドグリップ130は、グリップ先端130b側の後端面での法線L1(後端面での接線L2に直交する線)が、グリップ前方においてドライバビット110の軸線と交差するように構成されている。すなわち、
図10において左斜め上方へ直線状に延在する法線L1は、ほぼ水平方向に延在するドライバビット110の軸線(図示省略)とグリップ前方において交差することとなる。法線L1のようにグリップ前方においてドライバビット110の軸線と交差する法線は、グリップ先端側領域のうちの少なくとも一部分に形成される構成であれば足り、例えばグリップ先端130bのみに形成されてもよいし、或いはグリップ先端130bからグリップ基端130aに向かう所定の領域内に複数形成されてもよい。本実施の形態では、この法線L1が後述する「人体データ分析」に基づいて設定されている。
【0055】
また、
図10に示すハンドグリップ130では、グリップ側面での頂部を上下方向に連続状に結ぶ線、例えば第2のグリップ領域136における頂部P(B)、第3のグリップ領域137における頂部P(C)、第4のグリップ領域138における頂部P(D)、第5のグリップ領域139における頂部P(E)を連続状に結ぶ結線が曲線L3を形成する。
図10に示すグリップ側面をみた場合には、曲線L3は、線上端がグリップ基端130aの後端側へと向かうとともに、線下端がグリップ先端130bの前端側へと向かうようにS字状に延在する構成とされる。この場合、一方のグリップ側面の頂部における結線がS字状に延在する場合には、他方のグリップ側面の頂部における結線は前記の結線(S字状)の鏡像となる。この曲線L3が、本発明における「結線」に相当する。本実施の形態では、この曲線L3あるいはこの曲線L3に沿って延在する延在線L4が後述する「人体データ分析」に基づいて設定されている。
【0056】
更に、
図10に示すハンドグリップ130では、トリガ131のトリガ前面での法線L7(トリガ前面での接線L8に直交する線)がグリップ前方においてドライバビット110の軸線と交差するように構成されている。すなわち、
図10において左斜め上方へ直線状に延在する法線L7は、ほぼ水平方向に延在するドライバビット110の軸線(図示省略)とグリップ前方において交差することとなる。トリガ131のトリガ前面は、作業者によって引き操作される人差し指の当接領域とされる。法線L7のようにグリップ前方においてドライバビット110の軸線と交差する法線は、トリガ前面のうちの一部分に形成されてもよいし或いは複数部分に形成されてもよい。本実施の形態では、この法線L7が後述する「人体データ分析」に基づいて設定されている。
【0057】
なお、上記ハンドグリップ130のハンドグリップ構造は、下記の人体データ分析、官能評価解析、力学シミュレーション解析等に基づくものである。本実施の形態のハンドグリップ130は、特に、力学シミュレーション解析及び官能評価解析を用いた評価による検証の結果、作業者の手指の負担低減を図ることができ、長時間の作業においても作業者の手が疲れにくく痛くなりにくいことが確認された。
【0058】
(人体データ分析)
本発明者らは、ハンドグリップを把持している作業者の手指や掌の形を把握するべく、手指や掌の形のサンプリングを実施した。なお、サンプリング対象者は、20〜40歳の日本人の成人男性30人とした。
図11には、グリップ把持状態を想定した場合の手指や掌の形が示される。
【0059】
そのサンプリングの結果、
図11において、手の下面から水かき部までの垂直距離d1は平均で82mmであり、手の根元から人差し指までの水平距離d2は平均で181mmであった。また、伸長状態の人差し指に沿って延在する延在線L5の水平線に対する延在角度θ1は、平均で10°であり、掌の窪み(凹部分)が上下方向に延在する延在線L6の垂直線に対する延在角度θ2は、平均で15°であった。なお、掌に関する延在線L6は、感情線ないし知能線(頭脳線ともいう)に沿って概ね延在する線として規定することができる。
【0060】
本実施の形態では、このサンプリング結果に基づき、グリップ形状に関する前述のグリップ後端面での法線L1が、掌に関する延在線L5に沿って形成されるハンドグリップ構造としている。これにより、ハンドグリップ130の後端面に作用する押圧力が、自然とハンドグリップ130全体に均一に作用することとなる。
【0061】
また、本実施の形態では、上記サンプリング結果に基づき、グリップ形状に関する前述のグリップ側面での延在線L4(曲線L3)が、掌に関する延在線L6に沿って形成されるハンドグリップ構造としている。すなわち、グリップ把持状態の掌には、特に感情線や知能線に沿って窪み(凹部分)が形成されることを勘案して、本実施の形態ではこの窪みに沿ってグリップ側面における頂部(凸部分)が延在し、当該頂部(凸部分)が窪み(凹部分)に嵌まり込むように構成している。このような構成によれば、作業者が掌全体でハンドグリップ130を均一に把持することが可能となる。
【0062】
更に、本実施の形態では、上記サンプリング結果に基づき、グリップ形状に関する前述のトリガ前面での法線L7が、掌に関する延在線L5に沿って形成されるハンドグリップ構造としている。すなわち、
図11中の延在角度θ1に基づいてトリガ131の位置や向きを設定しており、作業者がトリガ131を人差し指で引き易く力が入り易い構造を用いている。
【0063】
(官能評価解析)
本発明者らは、本実施の形態のハンドグリップ130をはじめ、既存の各種のハンドグリップに関する官能評価解析を実施した。サンプリング対象者を上記人体データ分析の場合と同様とし、各ハンドグリップを実際に把持したときの把持感(フィット感、シックリ感など)を集計した。
【0064】
その集計の結果、概ねグリップ径が全体にわたって細い形状、グリップ径が中指→薬指→小指にかけて細くなる形状、掌全体がハンドグリップ表面に均一に当たる形状のものがサンプリング対象者に好まれるという結果が得られた。上記ハンドグリップ130のハンドグリップ構造は、サンプリング対象者に好まれる上記の各形状を満足するものであり、実際にサンプリング対象者がハンドグリップを把持したときの官能評価においても把持感に関し高い評価を得られることとなった。
【0065】
(力学シミュレーション解析)
本発明者らは、本実施の形態のハンドグリップ130及び比較例に関する力学シミュレーション解析として、各ハンドグリップにおいて、ハンドグリップ表面における握力分布を求め、この握力分布に基づいて手指や掌の各部位(水かき部、人差し指から小指までの部位、掌部)における圧力や皮膚ずれ応力を算出した。その結果、本実施の形態のハンドグリップ130を採用することによって、手指や掌の各部位における圧力や皮膚ずれ応力について良好な値を得ることが可能となった。
【0066】
例えば、
図12には、本実施の形態のハンドグリップ130(実施例)及び比較例に関する力学シミュレーション解析の結果として、水かき部における皮膚ずれ応力の分布が示される。なお、比較例として、
図12中の二点鎖線で示すような形状のハンドグリップを用いた。
図12に示すように、特に手指や掌がハンドグリップに及ぼす皮膚ずれ応力については、比較例に対し実施例における皮膚ずれ応力が大幅に低減されることとなり、水かき部が痛くなりにくい形状であることが確認された。
【0067】
以上のように、本実施の形態のハンドグリップ130を用いれば、作業者の手指にかかる負担の低減を図ることが可能となり、握り易く疲れにくく作業時においても手(特に水かき部が)が痛くなりにくいハンドグリップ構造が実現される。
【0068】
具体的には、本実施の形態では、作業者の掌の形状に基づき、グリップ先端130b側領域の後端面での法線L1が、グリップ前方においてドライバビット110の軸線と交差するように構成することによって、グリップ把持状態にある手を工具前方へと動かしつつ作業を行う際に、ハンドグリップ130の後端面に作用する押圧力が、自然とハンドグリップ130全体に均一に作用することとなる。従って、作業者が把持状態のハンドグリップ130を工具先端側に均一に押圧した状態で作業を行うことができ、作業時においても手が疲れにくく痛くなりにくいハンドグリップ構造が実現される。特に、法線L1が掌に関する延在線L5に沿って形成されるように構成することによって、作業者が把持状態のハンドグリップ130を押圧する際の押圧力をドライバビット110の軸心へ伝え易いハンドグリップ構造が実現される。本実施の形態のハンドグリップ130のこのようなグリップ構造は、本実施の形態のインパクトドライバ100をはじめ、先端工具を種々の方向へと押圧しながら長時間にわたって作業を行う可能性のある作業工具において特に効果的である。
【0069】
また、本実施の形態では、ハンドグリップを把持する際、特に小指を強く(しっかりと)握ることができれば、掌全体による把持力(握力)を有効に使用することが可能であることに着目し、中指ないし薬指が巻き付く領域からグリップ先端側に向けてグリップの大きさ(グリップ径、グリップ断面積、グリップ外周長さ)が小さくなり、特に小指が巻き付く領域においてグリップの大きさ(グリップ径、グリップ断面積、グリップ外周長さ)が最小となるようにしている。これにより、掌全体による把持力(握力)が有効に使用されることとなり握り易く疲れにくいハンドグリップ構造が実現される。なお、グリップの大きさ(グリップ径、グリップ断面積、グリップ外周長さ)に関しては、人種、性別、年齢などによる手指や掌の大きさの相違等に応じて適宜最適値を設定することができる。一例として、欧米人の手指や掌の大きさが東洋人よりも一般的に大きいことを考慮した場合、欧米人向けの設計においては、グリップの基本性能を保ちつつ、グリップの大きさ(グリップ径、グリップ断面積、グリップ外周長さ)を、東洋人向けのグリップの大きさの106〜110%程度にスケールアップすることができ、好ましくは108%程度に設定することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、グリップ側面での頂部を上下方向に連続状に結ぶ結線が、グリップ把持状態にある掌の概ね感情線ないし知能線に沿ってS字状に延在する曲線L3を形成するように構成することによって、グリップ側面の頂部(凸部分)が、掌の窪み(凹部分)に嵌まり込むフィット感の高いハンドグリップ構造が実現される。
【0071】
また、本実施の形態では、作業者の人差し指の向きに基づき、トリガ131のトリガ前面での法線L7が、グリップ把持状態にある人差し指を伸ばしたときに当該人差し指が延在する方向に沿って形成されるように構成することによって、作業者がトリガ131を人差し指で引き易く力が入り易い合理的な構造が実現される。
【0072】
また、本実施の形態では、グリップ外領域に円筒形電池セルの躯体部分が配置されるバッテリ140を採用することによって、ハンドグリップの形状に関し設計の自由度を高めることが可能であるところ、作業者の手指にかかる負担の低減を図るのに有効なハンドグリップ構造を実現するのに効果的である。
【0073】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、本実施の形態に基づいた種々の応用例や変更例を想到することができる。例えば、本実施の形態を応用した以下の形態を実施することもできる。
【0074】
上述した本実施の形態では、グリップの大きさ(グリップ径、グリップ断面積、グリップ外周長さ)に関するハンドグリップ構造、グリップ先端130b側の後端面での形状(法線L1)に関するハンドグリップ構造、グリップ側面での頂部の形状(曲線L3)に関するハンドグリップ構造について記載したが、本発明では、これら各ハンドグリップ構造のうちの少なくとも一つが満足すれば足りる。
【0075】
また、上述した本実施の形態では、ハンドグリップ130のグリップ外領域にバッテリ140の円筒形電池セルの躯体部分が配置される場合について記載したが、本発明では、所望のハンドグリップ形状に影響を及ぼさない範囲において円筒形電池セルの小型化等が可能であれば、当該円筒形電池セルの躯体部分をグリップ内の収容空間に収容する構成を用いることもできる。
【0076】
また、上述した本実施の形態では、作業工具の一例としてネジ締め作業に用いられるインパクトドライバ100を例にとって説明しているが、本発明は、インパクトドライバ100に限定されるものではなく、切断作業、切削作業、研削・研磨作業、釘打ち作業、鋲打ち作業、あるいは穴あけ作業に用いられる各種の作業工具に適用され得る。この際、先端工具の駆動方式に関しては、充電式或いは交流電源によって駆動される駆動モータによって先端工具が駆動される構成、エアやガスの圧力によって先端工具が駆動される構成などを適宜採用することができる。要するに、作業時において作業者が把持するハンドグリップを備える各種の作業工具に、本発明を適用することが可能である。