特許第5722980号(P5722980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5722980-溶融金属用の検出装置 図000010
  • 特許5722980-溶融金属用の検出装置 図000011
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5722980
(24)【登録日】2015年4月3日
(45)【発行日】2015年5月27日
(54)【発明の名称】溶融金属用の検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/06 20060101AFI20150507BHJP
   G01N 33/20 20060101ALI20150507BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20150507BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20150507BHJP
【FI】
   G01N25/06 C
   G01N33/20
   F27D21/00 A
   F27D21/00 G
   C21C7/00 R
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-231410(P2013-231410)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2014-98539(P2014-98539A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】13/677808
(32)【優先日】2012年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598083577
【氏名又は名称】ヘレーウス エレクトロ−ナイト インターナシヨナル エヌ ヴイ
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Electro−Nite International N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ブラック
【審査官】 清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−216552(JP,A)
【文献】 特開昭56−162040(JP,A)
【文献】 特開昭52−075493(JP,A)
【文献】 特表2001−507791(JP,A)
【文献】 特公昭50−036199(JP,B1)
【文献】 米国特許第04515485(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/02−25/06
G01N 33/20
F27D 21/00
C21C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属のサンプルを受容するべく構成されたキャビティーを有するサンプルカップ、及び前記キャビティー内に配置された小塊を備える溶融金属用の検出装置であって、
前記小塊が、カーバイド安定化成分、及び水酸化マグネシウムを含む水素放出材料を含む、検出装置。
【請求項2】
前記小塊がバインダーを更に含む、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記バインダーが3%ポリビニルアルコール水溶液である、請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
溶融金属のサンプルの総重量に基づいて0.35重量%〜0.45重量%の前記小塊を備える、請求項1に記載の検出装置。
【請求項5】
前記小塊が抑制剤を更に含み、該抑制剤が溶融金属との接触時の小塊の反応を妨げる、請求項1に記載の検出装置。
【請求項6】
溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルの相変化温度の検出に使用される小塊であって、カーバイド安定剤、水素放出材料としての水酸化マグネシウム、溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルとの接触時の当該小塊の反応を妨げる抑制剤、及びバインダーを含む、小塊。
【請求項7】
当該小塊の総重量に基づいて7重量%〜37重量%の前記カーバイド安定剤を含む、請求項に記載の小塊。
【請求項8】
前記カーバイド安定剤がテルルである、請求項に記載の小塊。
【請求項9】
当該小塊の総重量に基づいて15重量%〜54重量%の前記水酸化マグネシウムを含む、請求項に記載の小塊。
【請求項10】
前記バインダーが3%ポリビニルアルコール水溶液を含む、請求項に記載の小塊。
【請求項11】
当該小塊の総重量に基づいて1重量%〜4重量%の前記3%ポリビニルアルコール水溶液を含む、請求項10に記載の小塊。
【請求項12】
溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルの相変化温度の検出に使用される小塊であって、当該小塊の総重量に基づいて15重量%〜60重量%の量のテルルと、当該小塊の総重量に基づいて40重量%〜85重量%の量の水酸化マグネシウムを含、小塊。
【請求項13】
前記テルルが溶融鉄サンプルの総重量に基づいて0.05重量%〜0.10重量%の量で存在し、前記水酸化マグネシウムが、前記溶融鉄サンプルの前記総重量に基づいて0.11重量%〜0.22重量%の量で存在する、請求項12に記載の小塊。
【請求項14】
溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルの相温度変化の検出方法であって、
温度センサー、及び溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルを受容するべく構成されたキャビティーを有するサンプルカップを含む検出装置を準備するステップと、
カーバイド安定剤と水素放出材料としての水酸化マグネシウムを含む小塊を前記キャビティー内に配置するステップと、
溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルを前記キャビティー内に入れ、前記小塊が前記溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルとの接触時にこれと反応し、前記水酸化マグネシウムから前記溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプル内に水素が放出するステップと、
前記溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルを凝固させ、これと同時に凝固するサンプルの相変化温度を測定するステップを含む、検出方法。
【請求項15】
溶融金属のサンプルの相変化温度を検出するのに用いられる小塊の製造方法であって、
カーバイド安定剤と水素放出材料としての水酸化マグネシウムを含む流体小塊混合物を形成し、
溶融金属のサンプルを受容するべく構成されたキャビティーを備えるサンプルカップを含む検出装置を準備し、
前記キャビティー内に前記流体小塊混合物を入れ、そして
前記流体小塊混合物を乾燥して小塊を形成する、方法。
【請求項16】
前記カーバイド安定剤は、前記流体小塊混合物の総重量に基づいて5重量%〜25重量%であり、前記小塊の総重量に基づいて7重量%〜37重量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記水酸化マグネシウムは、前記流体小塊混合物の総重量に基づいて10重量%〜37重量%であり、前記小塊の総重量に基づいて15重量%〜54重量%である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶融金属用の検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、溶融金属、特に溶融鉄用の検出装置に関する。該装置は、サンプルカップを有し、カーバイド安定剤と水素放出材料を含む小塊がサンプルカップに配置される。
【0003】
溶融金属、特に溶融鉄の処理及び準備過程では、金属のある化学成分をモニターすることが望ましい。そのように行う一つの一般的手段は、使い捨て式の相変化検出装置の使用であり、これが、相変化温度の検出のために凝固過程で溶融鋳鉄のサンプル温度を測定する。そのような相変化検出装置は、典型的には、カップ状形状を持つ金型本体と、溶融金属のサンプルを受けるための上部開口端を備える。該装置は、典型的には、注がれたままの溶融金属サンプルの表面下までカップ内に延びる熱電対をも含む。そのような従来の相変化検出装置の一つが米国特許第3,267,732号に記述されている。
【0004】
典型的には、オペレーターが、小さいスプーン又は柄杓を用いて溶融金属の一塊から溶融金属のサンプルを汲み、そして溶融金属のサンプルを検出装置のサンプル金型内に注ぐ。熱電対は、金属の凝固時にその温度を連続的に記録する。凝固する金属サンプルの相変化温度測定から、限定するわけではないが、炭素含有、シリコン含有、及び飽和度又は等価炭素レベルといった鋳鉄サンプルの化学成分の特定の特性や様相が予測される。次に、オペレーターは、この情報を利用して鋳造前に溶融金属槽に任意の必要な調整をすることができる。
【0005】
過共晶鉄といったある状況においては、グラファイト・フリーのサンプルされた鉄の白色凝固を実現することが有用である。用語「白凝固」は、本技術分野にて一般的な用語であり、割れる時に「白」に見えるカーバイド相で鉄の凝固が優位の鋳放し構造を意味する。
【0006】
米国特許第3,546,921号(「‘921特許」)は、カーバイド安定化成分又はそのような成分の化合物を含むペレットの溶融鉄への添加が、白凝固を促進することを教示する。しかしながら、ペレットがスラグとして溶融金属の表面に上がる傾向があり、若しくは大気酸化で燃える傾向があり、白凝固には利用できないため、‘921特許は、最適な白凝固を実現しない。更に、もし溶融鉄がかなり高いカーボン含有率を有し、若しくは溶融金属がかなりに接種されているならば、‘921特許のペレットの追加に基づく全白凝固の達成の見込みは低い。
【0007】
米国特許第4,003,425号は、溶融鉄の温度で遊離される水を含有する材料でサンプル金型の内面をコーティングすることで上述のカーバイド促進添加物の効果が向上することを開示する。この場合、水は、利用可能な水素を金属と合金にすることを目的とした輸送手段である。白構造で凝固する鉄、特には過共晶鉄の改良が水素の存在により促進される。
【0008】
米国特許第4,029,140号(「‘140特許」)は、使い捨て可能なサンプルカップでのカーバイド反応を促進するために用いられて種類のコーティングを採用する。コーティングは、カーバイド安定化成分又は化合物と、緩く結合した水又は幾つかのヒドロキシル基を含む材料を含有する。水又はヒドロキシル基がコーティングの乾燥後に保持されるが、溶融金属の温度でコーティングから自由に遊離する。
【0009】
しかしながら、‘140特許のコーティングをそのような従来の使い捨て式の相変化検出装置に適用する方法は、その有用性において制限があり、なぜなら、サンプルカップと熱電対自体の壁の両方がコーティングされていたからである。結果として、これらの従来装置が熱電対における熱遅延を被っていた。米国特許第4,274,284号は、サンプルが装置内に注がれる時に熱電対の接合部が溶融金属に晒されることを確保する融除(ablative)コーティングの追加により熱遅延を除去すると主張する。
【0010】
しかしながら、多数のコーティングにより、‘140特許の主張の経済的利益が否定される。加えて、上述のコーティングが薄膜で形成され、これが主な欠点と判明している。詳細には、薄膜コーティングからの激しい水素の放出に起因して、また金属と合金化するよりもむしろ、薄膜コーティングからの急速な材料の蒸発を促進するカーバイドに起因して、従来のコーティングされたサンプルカップを溶融鉄で完全に満たすことができないことが分かった。そのように、サンプルカップ内に残存する金属量が温度測定を取得するのに不十分であった。回りまわって、有効に白凝固を促進するために溶融金属に加えられるカーバイド安定化添加物の量を信頼性高く予想することができない。
【0011】
更には、上述の先行技術のコーティングのカーバイド促進材料と水素放出物質は、鉄の融点未満の融点と、モニターされるべき相変化温度に近い融点を有する。従って、極限の配慮をしても、溶融金属とコーティング材料の反応が予想され、またこの反応の程度が、添加物の制御された合金化を提供するのに重要である。
【0012】
塗装又はコーティングに代えて、米国特許第4,059,996号が、サンプルカップの底に固定された材料の小塊を開示する。材料の小塊は、カーバイド形成促進材料、耐熱性材料及び溶融金属との接触時に水素を発生する材料(すなわち、水ガラス)を含む。耐熱性材料が、カーバイド形成促進材料が即時に焼失し、また溶融金属と過度に早急に混合することを妨げる効果がある。小塊は当初はサンプルカップ内に置かれた液体混合物の形態であるが、続いてオーブン内で固体に乾燥される。
【0013】
米国特許第4,515,485号(「‘485特許」)も材料の小塊の利用を開示する。しかしながら、小塊がサンプルカップの底壁の凹部に置かれ、溶融金属に晒される小塊の表面積が制限され、従って溶融金属に晒される水和物の量が制限される。
【0014】
上述の先行技術のコーティング及び小塊のいずれも鋳鉄の全成分にとって最適な白凝固を満足に達成しない。この欠点の理由は、上述の先行技術の各装置や方法は、コーティング及び小塊の材料の環境的な不安定性の問題を理解及び正当に評価するに足りないことである。詳細には、本発明者らは、上述の先行技術のコーティング及び小塊で用いられる材料が、使用場所までの保管及び輸送の過程で、また使用場所への配送後の使用待ちの過程で、時間と共に湿気を失い若しくは周囲環境から湿気を吸収することを見出した。
【0015】
例えば、先行技術の検出装置は、該装置の製造時にコーティング又は小塊が備えられ、該装置が実際に使用されるよりもだいぶ前である。製造された装置は、次に、箱詰め、パレットに乗せられ、収縮包装され、そして陸、海、又は空で輸送され、そして開封されて別の環境や場所で使用される。しかしながら、この期間、検出装置は、典型的には無制御の輸送及び保管環境の影響下にある。加えて、検出装置が最終的に開封されて使用される場所は、極限の温度や湿度の状況下にもあり得る。
【0016】
従って、本発明者は、コーティング又は小塊の材料がこれらの水和レベルの変化の影響を受けるため、先行技術の検出装置、より端的にはこの装置のコーティング及び小塊の水素放出容量が不安定であることを見出した。より端的には、コーティング又は小塊は、湿潤環境で追加の水和を取り、またかなりの乾燥環境で水和を失うことを被る。
【0017】
時間と共に湿気を失うことは問題であるが、本発明者は、先行技術のコーティング及び小塊にとって湿った状況に晒されることが本質的に好ましくないことを見出した。より端的には、湿った状況では、先行技術のコーティング及び小塊が周囲の湿った環境から無制御の湿気の吸収に晒され、溶融金属サンプルの無制御の沸点が結果として生じる。従って、上述のように、サンプルカップに残存の金属量が温度測定を得るのに不十分であり、回りまわって先行技術のコーティング及び小塊のカーバイド安定化添加物の予測性が否定的に影響を受ける。
【0018】
‘485特許は、無制御の沸騰により凝固過程でサンプルカップに残存する溶融金属量が変化し、従って、小塊が均一なサイズの時に異なる結果になる、と把握している。しかしながら、この先行技術の装置は、満足できるように沸騰を除去又は低減しない。従って、‘485特許の装置は、本発明者により新たに発見された課題、すなわち、無制御の沸騰の発生がカーバイド促進材料中に吸収された湿気の実際の帰結であるという課題を認識できていない。実のところ、本発明者は、ある環境から吸収された水が、‘485特許の小塊の限られて晒された表面にも不可避的に蓄積することを見出した。結果として、過剰な沸騰が依然として生じ、これにより、所望の向上を生み出すことができない。
【0019】
従って、上述の先行技術の全ての装置や方法は、湿気の存在を認識しておらず、またコーティング又は小塊の環境的曝露の帰結として生じる湿った状態を如何様にして抑止するのかを解決できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第3,267,732号明細書
【特許文献2】米国特許第3,546,921号明細書
【特許文献3】米国特許第4,003,425号明細書
【特許文献4】米国特許第4,029,140号明細書
【特許文献5】米国特許第4,274,284号明細書
【特許文献6】米国特許第4,059,996号明細書
【特許文献7】米国特許第4,515,485号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、輸送や保管の長期間に亘る環境曝露からの湿気吸収による水素放出容量の変化に耐性がある小塊を含むサンプリング装置を提供することにある。
【0022】
本発明の別の目的は、金属サンプルが最適な白凝固で得られ、他方、サンプルに添加が必須の水素量を制限し、従って、溶融金属に直接的に晒される材料の激しい反応を制限するサンプリング装置を提供することにある。
【0023】
これらの目的は、次に記述及び請求の本発明の実施形態により達成される。
【0024】
本発明のある側面が、溶融金属用のサンプリング装置に関する。サンプリング装置は、溶融金属のサンプルを受容するべく構成されたキャビティーと、該キャビティー内に配置された小塊を有するサンプルカップを備える。小塊が、カーバイド安定化成分と、アルカリ土類金属の水酸化物を含む水素放出材料を含む。
【0025】
本発明の別の側面は、溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルの相変化温度を検出するのに使用される小塊に関する。小塊は、カーバイド安定化成分、水素放出材料としてマグネシウム水酸化物、溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルとの接触時に小塊の反応を妨げる抑制剤、及びバインダーを含む。
【0026】
別の実施形態においては、小塊は、小塊の総重量に基づく15重量%〜60重量%の量のテルルと、小塊の総重量に基づく40重量%〜85%重量%の量のマグネシウム水酸化物を含む。小塊は、輸送及び保管過程での吸湿及び脱湿に耐性がある。
【0027】
本発明の別の側面が、溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルの相変化温度の検出方法に関する。この方法は、温度センサーと、溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルを受容するべく構成されたキャビティーを備えるサンプルカップを含む検出装置を提供し、前記キャビティーに小塊を配置し、前記キャビティー内に溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルを配置し、及び、前記溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルを凝固させつつ同時に凝固するサンプルの相変化温度を測定する各ステップを含む。小塊が、カーバイド安定剤と、水素放出材料としてのマグネシウム水酸化物を含む。小塊が溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルと接触して反応し、マグネシウム水酸化物から溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプル内に水素が放出される。
【0028】
本発明の別の側面が、溶融金属のサンプルの相変化温度を検出するために使用される小塊の製造方法に関する。本方法は、カーバイド安定剤、及び水素放出材料としてのマグネシウム水酸化物を含む流体小塊混合物を形成し、溶融金属のサンプルを受容するべく構成されたキャビティーを備えるサンプルカップを含む検出装置を準備し、前記流体小塊混合物を前記キャビティー内に配置し、そして前記流体小塊混合物を乾燥して小塊を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
次の本発明の詳細な説明も同様、前述の要約が、添付図面と一緒に読まれることでより良く理解されるだろう。本発明の説明の目的のため、図面には現在好ましい実施形態が示される。しかしながら、本発明は厳密な図示の配置や手段に限定されないと理解されるべきである。
【0030】
図1図1は、本発明の実施形態に係る検出装置の側面の断面図である。
【0031】
図2図2は、図1に図示した検出装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、溶融金属用の検出装置に関する。より端的には、本発明は、溶融鉄の冷却及び凝固過程で溶融鉄のサンプルの相変化温度を検出及び記録するための装置に関する。また、本発明は、検出装置に対して取り付けられ、またその中に配置される小塊の材料に関する。
【0033】
本発明の小塊の材料が従来の検出装置に適用できるため、図1及び図2を参照して典型的な検出装置の構造や構成材料について説明する。しかしながら、当業者は、本発明の小塊の材料が、他の構造や構成材料を有する検出装置と共に、また同検出装置においても使用可能である、と理解するだろう。
【0034】
図1及び図2を参照すると、検出装置10が図示される。検出装置10は、好ましくは使い捨て式装置であり、1,150℃〜1,450℃の温度の溶融金属のサンプルに用いられ、より好適には、1,250℃〜1,350℃の温度の溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルに用いられる。検出装置10は、耐熱性材料から成るサンプルチャンバー又はカップ12を備える。例えば、サンプルカップ12は、好適には、成形された鋳物砂、耐熱性セメント、若しくはこれらの材料の組み合わせから成る。より好適には、サンプルカップ12が、成形された熱硬化性樹脂で被覆された砂から成る。より好適には、サンプルカップ12が、成形されたフェノール樹脂で被覆された砂から成る。しかしながら、当業者は、サンプルカップ12が溶融鉄の温度に耐えることができ、所望の検出と測定に不利に干渉しない任意の材料から成り得る、と理解するだろう。
【0035】
サンプルカップ12は、好ましくは概して正方形又は長方形の断面形状を有し、上部開口端14と閉じた底壁16を有する。キャビティー18が、サンプルカップ12の上端の上部開口端14と底壁16の間に形成及び画定される。キャビティー18は、概して円柱状の構成を有する。底壁16の下面が、サンプルカップ12の対向壁22、24の間の中央に設けられたリセス20を含む。
【0036】
サンプルカップ12は、そこに入れられる溶融金属サンプルの温度を検出し、全温度変化の記録を促進するための温度センサー25を含む。温度センサー25は、好適には石英から構成された保護管28を含む。しかしながら、当業者は、石英と同様の特性の他の従来材料を代替的に利用できると理解するだろう。保護管28は、好適には、断面リング状であり、放射に対して透明である。
【0037】
熱電対ワイヤー30、32が少なくとも部分的に保護管28内に配置される。保護管28がキャビティー18を渡って延び、その各端部がサンプルカップ12の対向配置された壁に整列して形成された第1及び第2穿孔(第1及び第2整列穿孔)26により保持される。各穿孔26は、穿孔26を封止して温度センサーの位置を維持する耐熱性セメント33で実質的に閉鎖される。各穿孔26は、これらの軸がキャビティー18の中央横軸L1に沿って延びるような箇所に好適には設けられる。
【0038】
温度センサー25の熱電対ワイヤー30、32は、過共晶鋳鉄サンプルと使用されるクロメル、アルメルといった使い捨て式熱電対(つまり、タイプK熱電対)との関係で今まで使用されてきた従来の熱電対材料のいずれか一つであり得る。熱電対ワイヤー30、32の並置された端部が熱接点34で一緒に結合される。熱接点34は、好適には、キャビティー18の中央縦軸(中央高さ軸)L2に隣接して配置される。
【0039】
サンプルカップ12の反対の壁22、24には、周囲の縦に延びる溝36、38が設けられる。第1熱伝達ワイヤー30が、第1溝36に沿ってこれを通して延び、壁22に沿って曲げられてリセス20に向い、ここで、これが温度測定記録装置との接点として用いられる(図1参照)。第2熱伝達ワイヤー32が、第2溝38に沿ってこれを通して延び、壁24に沿って曲げられてリセス20に向い、ここで、これが別の接点として用いられる(図1参照)。ある実施形態においては、第1及び/又は第2熱電対ワイヤー30、32が、好適には、サンプルカップ12の穿孔26と底の間で絶縁スリーブ(不図示)と共に提供され、サンプルカップ12の本体から放出される燃焼ガスによる熱電対ワイヤー30、32との間での電気的接続を妨げる。
【0040】
繰り返すが、サンプルカップ12の上述の実施形態が、説明目的のためだけにある。以下に詳細に説明の本発明の小塊は、サンプルカップ相変化検出装置として用いられる多種多様な商業的に入手可能なカップのいずれか一つにおいて利用され得る。
【0041】
より詳細には、本発明の一実施形態では、小塊40が、サンプルカップ12のキャビティー18内に配置され、好適には取り付けられる。小塊40は、本質的には、キャビティー18内に配置される材料の集合である。一実施形態においては、小塊40のバインダー成分の作用により、小塊40が好適にはサンプルカップ12の内壁の少なくとも一つに付着され、またより好適にはサンプルカップ12の底壁16の上面に付着される。
【0042】
本発明に係る小塊40が、2つの主たる成分:カーバイド安定化成分及び水素源を備える。小塊40は、オプションとして、抑制剤、バインダー、及び/又は分散剤を備える。これらの成分の各々の特性や役割を以下により詳細に説明する。小塊40は、材料が大気中の湿気に親和性を有することで湿った空気や湿潤環境に晒される時に湿る任意の吸湿性材料を好適に本質的に欠いている。
【0043】
一実施形態においては、小塊40は、小塊40の成分を一緒に混合することにより形成され、結果物の流体小塊混合物を従来の液体分配機でサンプルカップ12のキャビティー18内に入れ、次に流体小塊混合物を乾燥して小塊40を得る。
【0044】
流体小塊混合物の体積は、好適には、サンプルカップ12のキャビティー18に入れられる溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの体積の1.89%〜2.70%である。より好適には、流体小塊混合物の体積が、溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの体積の2.00%〜2.30%である。最適には、流体小塊混合物の体積が、溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの体積の約2.25%である。流体小塊混合物の重量は、好適には、溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの重量の0.50%〜0.85%である。より好適には、流体小塊混合物の重量は、溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの重量の0.60%〜0.80%である。最適には、流体小塊混合物の重量は、溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの重量の約0.80%である。
【0045】
例えば、37ミリリットルのキャビティー体積を持つサンプルカップ12にとっては、キャビティー18が溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルで完全に満たされるとすれば、溶融金属サンプルの重量が270グラムである。そのようなサンプルカップ12には、キャビティー18が溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルで完全に満たされると仮定すれば、キャビティー18内に分配される流体小塊混合物の体積が好適には0.7ミリリットル〜1ミリリットルであり、流体小塊混合物の重量が好適には1.5〜1.7グラムである。より好適には、またここでもキャビティー18が溶融鉄又は溶融鋳鉄のサンプルで完全に充填されるとすれば、流体小塊混合物の体積と重量が、各々、約0.85ミリリットルと約1.58グラムである。
【0046】
乾燥後、小塊40の重量が、好適には溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの重量の0.35%〜0.45%である。より好適には、小塊40の重量が、溶融鉄又は溶融鋳鉄サンプルの重量の約0.40%である。
【0047】
当業者は、37ミリリットルのキャビティー体積のサンプルカップの説明が説明目的のためだけであると理解するだろう。他のキャビティー体積のサンプルカップも利用され、また従って小塊が様々な重量や体積の溶融金属サンプルと使用される。このように、用いられるサンプルカップに依存して、流体小塊混合物の重量や体積(また従って小塊40の体積や重量)がそれに応じて調整され、所望の体積や重量パーセントが維持されるものと理解される。
【0048】
ここで小塊40の各成分をより詳細に説明する。以降に使用の用語「湿重量(ウエット重量とも呼ぶ)」が、乾燥前の小塊40の状態に関するものと理解され、ここで、小塊が流体小塊混合物として存在する。また、以降に使用の用語「乾燥重量(ドライ重量とも呼ぶ)」が、流体小塊混合物を乾燥して固体の乾燥した小塊を形成した後の小塊40の状態に関するものと理解される。
【0049】
カーバイド安定化成分又はカーバイド安定剤が、サンプルカップ12のキャビティー18に入れられた溶融鉄のサンプルのカーバイド形成(即ち、白凝固)を促進する。より端的には、カーバイド安定剤がメタリック材料(metallic material)であり、凝固するサンプルでのグラファイトの沈澱(precipitation)を防止する。溶融鉄との接触時、小塊40が溶融鉄サンプルと反応し、そしてカーバイド安定剤が小塊40から溶融鉄サンプル内に放出される。カーバイド安定剤が、好適には、ビスマス、ホウ素、テルル、セレン又はこれらの元素の化合物又は合金である。最適には、カーバイド安定剤がテルルである。
【0050】
好適な実施形態においては、カーバイド安定剤は、平均粒子サイズが5〜100μmの粉体の形態で存在する。より好適には、カーバイド安定剤は、平均粒子サイズが15〜50μmの粉体の形態で存在する。最適には、カーバイド安定剤は、平均粒子サイズが約20μmの粉体の形態で存在する。本明細書で異なるように示唆される場合を除き、本明細書で述べられる全粒子サイズは、レーザー回折分析装置若しくは沈澱分析により粒子サイズを決定する粒度分布測定装置(sedigraph)により測定されるd50粒子直径である。当業者により良く理解されるように、d50直径が、(重量で)個々の粒子の半分が特定の直径よりも小さいサイズを意味する。
【0051】
カーバイド安定剤が、好適には、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて5重量%〜25重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて7重量%〜37重量%の量で存在する。より好ましくは、カーバイド安定剤が、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて10重量%〜20重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて15重量%〜25重量%の量で存在する。より好ましくは、カーバイド安定剤が、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて12重量%〜14重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて18重量%〜20重量%の量で存在する。
【0052】
水素源(つまり、水素放出材料)は、小塊40がサンプルカップ12に入れられた溶融金属、特に溶融鉄のサンプルに接触して反応する時、溶融金属内に水素を発生又はそこに水素を放出する材料である。
【0053】
水素放出材料は、吸湿や脱湿に対して耐性がある材料といった1以上のイオン結合の水酸基(ヒドロキシ基)を有する材料であり、従って、湿気又は乾燥の輸送、保管、及び使用状況や環境においてその水和レベルを維持する。より好適には、水素放出材料が湿気を吸収しない材料である。水素放出材料は、また好適には小塊40の乾燥温度で安定するが検出装置10の使用温度で分解する材料である。
【0054】
好適には、水素放出材料は、アルカリ土類金属の水酸化物である。より好適には、水素放出材料は、水酸化マグネシウム、水酸化テルル、水酸化カルシウム、及び水酸化ビスマスの一つである。より好適には、水素放出材料は、水酸化マグネシウムである。そのように溶融鉄サンプルと小塊40の接触及び反応時、水酸化マグネシウムから溶融鉄サンプル内にマグネシウムが放出される。
【0055】
マグネシウムは、白銑凝固を促進するべく設計された検出装置においては慣例的に用いられていない。なぜなら、マグネシウムの溶融温度が溶融鉄の溶融温度未満であり、従って、溶融鉄中に合金化してカーバイド安定化成分(例えば、テルル)の作用に干渉して効果を打ち消すことが予想されるためである。しかしながら、本発明者は、マグネシウムが予想外に白銑凝固用の検出装置に使用可能であることを発見した。これは、マグネシウムが分解して等しい又はより多くの化学量論比の酸素を放出する酸素含有材料の存在下にある時、放出されたマグネシウムが溶融金属の汚染若しくはテルルとの干渉前に酸化により完全に中和されるためである。
【0056】
水素放出材料は、好適には、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて10重量%〜37重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて15重量%〜54重量%の量で存在する。より好適には、水素放出材料は、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて12重量%〜25重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて20重量%〜30重量%の量で存在する。より好適には、水素放出材料は、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて16重量%〜18重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて23重量%〜25重量%の量で存在する。
【0057】
好適な実施形態においては、小塊40が抑制剤も含む。抑制剤は、小塊40に加えられたフィラー材料であり、溶融金属サンプルの凝固過程で実質的にそのままで存在する十分に結合された集合を提供し、カーバイド安定剤の放出と水素放出材料からの水素の放出(両方とも蒸気の形態)が、サンプルされた溶融金属との小塊40の接触時に遅延する。より端的には、抑制剤は、サンプルされた溶融金属との接触時の小塊40の反応及び全分解を抑制する材料である。好適には、抑制剤は、非水和及び耐熱性(例えば、セラミック)フィラー材料である。抑制剤の好適な例は、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ジルコニア、アルミナ、及びこれらの化合物を含む。より好適には、抑制剤がケイ酸アルミナであり、最適には焼成カオリンである。
【0058】
抑制剤は、好適には、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて18重量%〜48重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて27重量%〜71重量%の量で存在する。より好適には、抑制剤は、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて30重量%〜40重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて50重量%〜60重量%の量で存在する。最適には、抑制剤は、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて37重量%〜39重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて54重量%〜56重量%の量で存在する。
【0059】
好適な実施形態においては、小塊40が、高温用途に適したバインダーも含む。好適には、バインダーは、熱硬化性バインダーである。より好適には、バインダーは、非吸湿性及び非ホルムアルデヒドの熱可塑性バインダーである。一実施形態においては、バインダーは、水と、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラールおよび他のポリビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル及びメタクリル酸エステル樹脂、ポリイソブチレン、ポリアミドおよびシリコーンといった重合材料を含む溶液である。最適には、バインダーは、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール溶液を含む。
【0060】
バインダーは、好適には、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて27重量%〜37重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて1重量%〜4重量%の量で存在する。より好適には、バインダーは、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて30重量%〜35重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて1重量%〜3重量%の量で存在する。最適には、バインダーは、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて31重量%〜33重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて1.5重量%〜2.5重量%の量で存在する。
【0061】
好適な実施形態においては、小塊40が分散剤も含む。分散剤は、様々な成分の分散粒子を懸濁に維持してこれらの粒子の沈澱を妨げる材料である。従って、分散剤の包含は必須ではないが、そのようにすることが商業規模で小塊40を製造するのに有利であることが分かっている。分散剤の好適な例は、クエン酸三ナトリウム、クエン酸アンモニウム及びこれらの同様の特性を有する同種材料を含む。最適には、分散剤は、クエン酸三ナトリウムである。
【0062】
分散剤は、好適には、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて0.04重量%〜1.3重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて0.06重量%〜2重量%の量で存在する。より好適には、分散剤は、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて0.08重量%〜1重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて0.1重量%〜1重量%の量で存在する。最適には、分散剤は、流体小塊混合物の全湿重量に基づいて0.1重量%〜0.5重量%の量で存在し、小塊40の全乾燥重量に基づいて0.3重量%〜0.5重量%の量で存在する。
【0063】
上述のように、一実施形態においては、流体小塊混合物の重量が、好適には、サンプルカップ12に入れられる溶融鉄/溶融鋳鉄サンプルの重量の0.80%であり、小塊40の重量が、好適には、溶融鉄/溶融鋳鉄サンプルの重量の0.40%である。このように、溶融鉄/溶融鋳鉄サンプルの総重量と比較して流体小塊混合物及び小塊40の成分の重量パーセントは、好適には下の表1に示す通りである:
【0064】
【表1】
【0065】
別の実施形態においては、小塊40が乾燥圧縮により形成される。詳細には、小塊40の成分が一緒に混合されて次に一緒にペレット状の小塊に圧縮され、これが接着剤又は耐熱性セメントの使用によりサンプルカップ12のキャビティー18内に取付けられ若しくは付着される。代替的に、小塊が、サンプルカップの壁に形成されたリセス内に配置される。
【0066】
そのような実施形態においては、プレスによりカーバイド安定剤と水素放出材料の粒子群の機械的な相互連結の機構が実現される。そのように、バインダー及び分散剤が不要である。加えて、抑制剤成分が除去されると、比較的早くカーバイド安定剤が放出して水素が発生する。カーバイド安定剤は、好適には、15重量%〜60重量%の量で小塊40に存在し、水素放出材料は、好適には、小塊の総重量に基づいて40%〜85%の量で小塊40に存在する。より好適には、カーバイド安定剤は、25重量%〜55重量%の量で存在し、水素放出材料は、小塊の総重量に基づいて45%〜75%の量で存在する。最適には、カーバイド安定剤は、30重量%〜35重量%の量で存在し、水素放出材料は、小塊の総重量に基づいて65%〜70%の量で存在する。
【0067】
また、そのような実施形態においては、カーバイド安定剤の重量が、サンプルカップ12に入れられる溶融鉄サンプルの重量の、好適には0.05%〜0.10%を構成し、またより好適には0.07%〜0.095%を構成する。最適には、カーバイド安定剤の重量が、溶融鉄サンプルの重量の約0.074%を構成する。水素放出材料の重量は、溶融鉄サンプルの重量の、好適には0.11%〜0.22%を構成し、またより好適には0.13%〜0.19%を構成する。最適には、水素放出材料の重量が、溶融鉄サンプルの重量の0.14%〜0.17%を構成する。
【0068】
別の実施形態においては、小塊40が、ただ一つの本質的成分、つまり水素源若しくは水素放出材料として水酸化テルルを含む。そのように、溶融鉄サンプルと小塊40の接触及び反応時、テルル(カーバイド安定化成分)、酸素及び水素の全てが水酸化テルルから溶融鉄サンプル内に放出される。好適には、水酸化テルルの重量が、溶融鉄サンプルの重量の0.120%〜0.175%を構成する。より好適には、水酸化テルルの重量が、溶融鉄サンプルの重量の約0.150%を構成する。
【0069】
ここで本発明の好適な実施形態に即した様々な小塊40の形成を次の特定の非限定の実施例を参照してより詳細に説明する:
【実施例】
【0070】
5つの例示の異なる小塊混合物を下の表2〜6に示した割合で様々な材料を混合することにより用意した:
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
小塊A、B、及びCのカーバイド安定剤がテルルであった。小塊A、B、及びCの水素源が水酸化マグネシウムであった。小塊Dの水素源が水酸化カルシウムであった。小塊Eの水素源が水酸化テルルであった。小塊A及びBの抑制剤が焼成カオリンであった。小塊A及びBのバインダーが、3%ポリビニルアルコール水溶液であった。小塊Aの分散剤がクエン酸三ナトリウムであった。
【0077】
小塊A及びBについては、小塊の各成分が一緒に混合されて流体小塊混合物を形成した。準備した各流体小塊混合物を次に溶融金属サンプルカップ(つまり、上述のサンプルカップ12)のキャビティー内に分配した。サンプルカップが約6センチメートルの鋳造係数を有し、約37ミリリットルの容積を有する。分配された流体小塊混合物の体積と重量は、各々、約0.85ミリリットルと約2.16グラムである。
【0078】
流体小塊混合物が中に分配されたサンプルカップを次に周囲状況で乾燥し、固体の乾燥した小塊40を形成し、バインダーの最終硬化を有効化し、これにより回りまわってサンプルカップ12のキャビティー18内に乾燥した小塊40が付着若しくは固着する。結果物の固体の乾燥した小塊40の重量が、サンプルカップのキャビティーが完全に満たされると仮定した時にサンプルカップ12内に入れられる溶融鉄サンプルの重量の約0.4%であった。
【0079】
小塊C及びDについては、小塊の成分を一緒に混合し、続いて実質的に一緒に圧縮してペレット状の小塊C及びDを形成した。小塊Eについては、水酸化テルルの粒子を一緒に圧縮してペレット状の小塊Eを形成した。次に小塊C、D、及びEの夫々を耐熱性セメントでサンプルカップのキャビティー内に取付若しくは付着した。サンプルカップが、約6センチメートルの鋳造係数を有し、約37ミリリットルの容積を有する。
【0080】
次に各サンプルカップのキャビティー内に入れられた各小塊A、B、C、D、及びEを溶融鉄サンプルに接触させた。各小塊A、B、C、D、及びEについて、溶融鉄サンプルの重量との関係における各成分の重量パーセントを下の表7に示す:
【0081】
【表7】
【0082】
小塊Aについては、特に、水酸化マグネシウムの存在が、如何なる熱処理の付与を無くしてバインダーのポリビニルアルコールの架橋を可能にすることが分かった。ポリビニルアルコールが典型的には周囲の湿気を吸収する傾向がある(また従って本発明の目的に適切ではない)が、架橋したポリビニルアルコールが小塊40に必要な程の十分な湿気耐性を呈する。従って、驚くことに、より優れた湿気耐性を有する小塊が、水酸化マグネシウムとポリビニルアルコールの特定の組み合わせから帰結することが分かった。
【0083】
加えて、小塊A、B、及びCの各々について、(水酸化マグネシウムから放出された)水素とテルルの両方が溶融鉄サンプル内に放出された。加えて、驚くことに、水酸化マグネシウムから放出されたマグネシウムが、溶融鉄サンプルと小塊40の反応の時に完全に中和されることが分かった。そのように、放出されたマグネシウムが、溶融鉄に対して如何なる汚染影響を有せず、若しくはテルルに干渉しない。むしろ、放出されたマグネシウムが、驚くことに、溶融鉄の完全な白凝固を許した。
【0084】
また、各小塊A、B、C、D、及びEが、水和レベルの変化に耐性を有することが分かった。詳細には、各小塊A、B、C、D、及びEは、極度に湿潤又は極度に乾燥した輸送や保管状況においてでさえも、長期間の輸送及び/又は保管の過程での吸湿及び脱湿に対して耐性があった。
【0085】
従って、小塊A、B、C、D、及びEに蓄積された環境から吸収した水が無い、若しくはそのような蓄積が最小であるうちのいずれかである。結果として、各小塊A、B、C、D、及びEが溶融金属サンプルに晒された時、任意の無制御の沸騰が除去され若しくは最小になった。従って、サンプルカップに最初に注がれる溶融金属の量が、金属の凝固過程で実際的に変化しなかった。結果として、小塊A、B、C、D、及びEの使用により、注ぎから注ぎへの予想可能な冷却/凝固時間に帰結した。
【0086】
また、各小塊A、B、C、D、及びEが、如何なる捕獲した湿気を包含せず、また従ってそのような湿気に起因して典型的に影響を受ける早まった乾燥に服しなかった。従って、各小塊の成分、詳細には水素放出材料の含有量が、製造時点から輸送と保管を介した使用まで実際的に変化しないままである。
【0087】
更には、小塊40での完全な白凝固を達成するために必要とされるカーバイド安定剤の量、典型的にはテルルの量が、下の表8に示すように、先行技術のコーティング及び小塊と比較してかなり少ない。
【0088】
【表8】
【0089】
従って、本発明の小塊と本発明の小塊を含む検出装置が、注ぎ温度、注ぎ状況、及び保管及び輸送状況の広範囲にわたり使用されて良好な結果を伴う。
【0090】
当業者は、本明細書の広範な発明概念から逸脱することなく上述に記載の実施形態を変形できると理解するだろう。従って、この発明は開示の特定の実施形態に限定されず、むしろ添付請求項により特定された本発明の精神及びスコープの範囲内のあらゆる変形を包含することが意図される、と理解される。
図1
図2