(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、打込み工具の一例として充電式の釘打機を用いて説明する。
図1〜
図4に示すように、釘打機100は、概括的に見て、釘打機100の外殻を形成する工具本体としての本体部101と、作業者が握るハンドル部103と、被加工材に打ち込まれる打込み材としての釘Nが装填されるマガジン105とを主体として構成される。ハンドル部103は、本体部101の側部から当該本体部101の長軸方向(
図1〜
図3の上下方向)と交差する側方に向って突き出る状態で一体に設けられている。ハンドル部103の突出側端部(
図1および
図2の右端)には、駆動モータ123の電源となる充電式のバッテリパック110が装着されている。駆動モータ123は、本発明における「モータ」に対応する。なお、
図1〜
図3には釘打機100の下向き状態、すなわち本体部101の先端部(下端部)が被加工材に向けられた状態が示される。このため、
図1〜
図3において下向き方向が釘Nの打込み(発射)方向(長軸方向)であり、ドライバ141による釘の打撃方向(長軸方向)となる。
【0017】
本体部101の先端部(
図1〜
図3において下方)には、釘Nの射出口を構成するドライバガイド121が配置されている。マガジン105は、本体部101の先端側において、ハンドル部103と概ね並行するように配置され、釘供給側先端部がドライバガイド121に連結され、他端側がハンドル部103の突出端部側に連接されている。なお、マガジン105には、
図1および
図2に示すように、当該マガジン105に収容された釘Nをドライバガイド121側へと送る打込み材送り機構197が設けられている。打込み材送り機構197は、釘を供給方向(
図1〜
図3において左方)に押すためのプッシャプレート199を有し、このプッシャプレート199によって釘Nがドライバガイド121の打込み孔121a(
図2参照)内に打込み方向と交差する方向から1本ずつ供給されるよう構成されている。打込み孔121aは、釘の打込み方向において貫通されている。なお説明の便宜上、本体部101の長軸方向の先端側(図示下側)を前、その反対側を後という。また、本体部101の長軸方向と交差する方向の、ハンドル部103側を背面、その反対側を正面という。
【0018】
本体部101は、
図2に示すように、概ね筒状に形成された樹脂製の本体ハウジング107と、駆動モータ123を収容するモータハウジング109を主体として構成される。モータハウジング109は、本体ハウジング107の先端側においてマガジン105に近接して配置されるとともに、本体ハウジング107に接合されている。駆動モータ123は、ハンドル部103に配置されたモータ駆動用の第1電子スイッチ192(
図6参照)がオン状態に操作されることで通電駆動されるよう構成される。
【0019】
ハンドル部103の構成が
図2の一部を拡大した
図6に示される。ハンドル部103は中空部材として構成されている。ハンドル部103内に配置された第1電子スイッチ192は、常時には内蔵の復帰バネ(便宜上図示を省略する)によってオフ状態に保持されており、ハンドル部103に回動軸195を中心として回動自在に取付けられたトリガロックレバー191が作業者により回動操作(
図6の二点鎖線参照)されたとき、当該ロックレバー191の先端作動部191aによって押動される連係レバー193でアクチュエータを押されてオン状態とされる。
【0020】
トリガロックレバー191は、作業者による回動操作が解除された状態(手指を離した状態)では、戻しバネ194の付勢力によって第1電子スイッチ192をオフ状態とする初期位置に保持される。トリガロックレバー191は、先端作動部191aと反対側にはトリガロック用のロック部191bを備えている。このロック部191bは、トリガロックレバー191が初期位置に置かれたとき、釘打ち操作用(後述する電磁ソレノイド181駆動用)のトリガ185に形成された係合部185aに対し後面側から係合し、これにより当該トリガ185の引き操作を規制(ロック)する構成とされる。すなわち、トリガ185は、トリガロックレバー191が作業者により回動操作されてロック部191bによる操作規制が解除されない限り、引き操作が禁止される構成とされる。
【0021】
本体ハウジング107は、
図2および
図2の一部拡大図である
図5に示すように、正面側が開口されたドライバ141の長軸方向に長い箱型形状とされ、正面側開口部がカバープレート107Aによって塞がれている。カバープレート107Aは、ネジ107B(
図7参照)によって本体ハウジング107に着脱自在に止着されている。本体ハウジング107の内部には、駆動モータ123の動力を伝達する動力伝達機構111、動力伝達機構111から介して入力される動力を受けて作動するドライバ駆動機構113、ドライバ駆動機構113によって駆動され、打込み材を被加工材に打込むためのドライバ機構115、打込み動作後のドライバ機構115を動作前の待機位置に戻すドライバ戻し機構117が収容される。
【0022】
動力伝達機構111の構成が
図5に示される。動力伝達機構111は、駆動モータ123の出力軸123a上に設けられた駆動Vプーリ125と、回転軸126上に設けられた被動Vプーリ127と、両Vプーリ125,127間に掛けられたVベルト129とを主体として構成される。出力軸123aと回転軸126は、互いに平行に、かつ釘の打込み方向、すなわちドライバ141の長軸方向(本体部101の長軸方向)に対し交差状に配置されている。また、出力軸123aと回転軸126の軸線方向は、マガジン105の延在方向、ハンドル部103の突出方向に対し概ね並行する方向に設定されている。
【0023】
ドライバ駆動機構113の構成が
図5、
図8および
図9に示される。ドライバ駆動機構113は、釘の打込みに必要な運動エネルギーを稼ぐべく所定の質量を備える略長方形状(円盤状でも構わない)の質量体として構成されるフライホイール131と、当該フライホイール131にその回転軸方向に進退自在(移動自在)に設けられた打込み機構用駆動部材としての打込みピン133と、打込みピン133をフライホイール131の一方の側面から突出(進出)させるカムプレート137とを主体として構成される。フライホイール131は、回転軸126上に固定され、被動Vプーリ127と一体に回転駆動される構成とされる。したがって、駆動モータ123が通電駆動された状態では、動力伝達機構111を介してフライホイール131が常時に回転駆動される。
【0024】
打込みピン133は、
図10に示すように、フライホイール131に形成された通し孔131aを貫通して延在し、長軸方向の一端がフライホール131の一方の側面から引込む(後退する)方向に付勢部材としてのコイルバネ135による付勢力が付与されている。これにより、打込みピン133は、常時にはフライホール131の一方の側面から突出しない引込み位置(実際にはフライホイール131の側面と概ね面一となる後退位置)に保持される構成とされる。以下、説明の便宜上、フライホイール131の一方の側面を正面といい、他方の側面を背面という。
【0025】
カムプレート137は、
図5に示すように、フライホイール131の背面と対向するように、当該フライホイール131と被動Vプーリ127との間に配置される。カム部材としてのカムプレート137は、略矩形の平板状に形成(
図8および
図9参照)されるとともに、フライホイール131の回転軸線と交差する前後方向、すなわちドライバ141の長軸方向(本体部101の長軸方向)に直線状に移動可能にハウジング本体107に取り付けられる。
【0026】
カムプレート137のフライホイール131と対向する側面の後端側(ドライバ141と反対側)には、当該フライホイール131とともに回転する打込みピン133の回転方向に延在するスロープ状のカム面138が側面から突出状に形成されている。そして、カムプレート137が後方へ移動された場合には、カム面138が打込みピン133の回転軌跡から外れる位置に置かれ、前方へ移動された場合には、カム面138が打込みピン133の回転軌跡(公転軌跡)と対向する位置、すなわち打込みピン133の他端と係合可能(当接可能)な位置に置かれる構成とされる。
【0027】
カムプレート137は、フライホイール131が1回転する間(打込みピン133が1周する間)に、後述するカム切替機構119によって休止領域としての後方位置(
図9に示す位置)と作動領域としての前方位置(
図8に示す位置)との間で1往復される構成とされる。そして、カムプレート137のカム面138の幅(カムプレート137の移動方向長さ)については、例えば、カムプレート137が休止領域から作動領域へと移動後、再び休止領域へと戻るまでの1往復動作中の大部分の範囲においてカム面138が打込みピン133の回転軌跡上に置かれるように設定されている。
【0028】
カムプレート137は、常時には打込みピン133を突出させない位置、すなわち休止領域に置かれ、釘打ち要求に応じて打込みピン133を突出させる位置、すなわち作動領域へと移動される。具体的には、カムプレート137は、ハンドル部103に配置されたトリガ185の引き操作で第2電子スイッチ184がオン状態とされ、かつドライバガイド121の先端に配置されたコンタクトアーム189がその先端189aを被加工材に押し付けられて後退動作することで第3電子スイッチ186がオン状態とされた場合に駆動するカム切替機構119によって駆動され、フライホイール131の1回転に対し、休止領域と作業領域との間を1往復するように構成されている。このことについては、後述する。
【0029】
カム面138が打込みピン133の回転軌跡と対向する作動領域に置かれた場合、
図10に示すように、打込みピン133は、カムプレート137を横切って移動する際、その他端(フライホイール131の背面側の端部)がカム面138に乗り上がり、相対的に一端(フライホイール131の正面側の端部)がフライホイール131の正面から突出する。フライホイール131の正面から突出する一端が、後述するドライバ機構115と係合する係合突部134として定められる。カム面138の長さ、すなわちカムプレート137の移動方向と交差する方向の長さ(スロープ長さ)は、打込みピンの回転領域(360度)のうちの所定角度範囲、本実施の形態では、約40度前後を占めるように設定されている。したがって、打込みピン133は、360度のうちカム面138上を移動する40度の領域については、係合突部134がフライホイール131の正面から突出されるが、それ以外の領域では、突出されない。あるいはコイルバネ135によって引込み位置に戻される。
【0030】
カムプレート137の中央部には、
図8に示すように、当該カムプレート137を貫通して延在する回転軸126との干渉を回避するべく、カムプレート137の移動方向に長い長円形の逃がし孔137aが形成され、また逃がし孔137aの長軸方向の両脇に同方向に延びるガイド孔137bが形成されている。これら各ガイド孔137bに対し、本体ハウジング107内の固定プレート108に取付けられたガイド部材としてのガイドピン139が各1本ずつ相対摺動自在に係合され、これによってカムプレート137の移動動作の安定化が図られている。なお、固定プレート108は、本体ハウジング107に対してネジ108a(
図10参照)によって止着されている。
【0031】
次にドライバ機構115につき説明する。ドライバ機構115は、本発明における「打込み機構」に対応する。
図9および
図11に示すように、ドライバ機構115は、ドライバ141とリンクアーム143とを主体として構成される。ドライバ141は長尺状の棒状部材からなり、本体部101の長軸方向に直線状に移動し、ドライバガイド121の打込み孔121a内を前方に移動して釘を打込む作動部材として機能する。リンクアーム143は、打込みピン133の回転動作を直線運動に変換してドライバ141を駆動する運動変換部材であり、一端がドライバ141の長軸方向一端(後端)と連結ピン145によって相対回動自在に連結されるとともに、後方に向かって傾斜状に延在されており、当該延在端部にはフライホイール131の正面から突出された打込みピン133の係合突部134が係合可能な概ねC形の係合凹部144を有する。
【0032】
ドライバ141およびリンクアーム143は、本体ハウジング107の正面開口部を塞ぐカバープレート107Aの内面側に配置されている(
図5参照)。ドライバ141は、その先端(前端)がドライバガイド121の打込み孔121a(
図1参照)内を移動することと、ドライバ141とリンクアーム143とを連結する連結ピン145がカバープレート107Aに形成された長軸方向に延在する直線状のガイド孔107aに沿って移動することによって直線動作が規定される。またリンクアーム143の延在端部側には、延在方向と交差する方向のガイド部材としてのガイドピン147が設けられ、このガイドピン147がカバープレート107Aに形成された略半円弧状のガイド孔107bに沿って移動する(
図7参照)。
【0033】
ドライバ141およびリンクアーム143は、常時には後述するドライバ戻し機構117によって待機位置に保持される。待機位置とは、ドライバ141がドライバガイド121から最も離間した後方(
図2において上方)に戻され、カバープレート107Aのガイド孔107bを通じて外表面に突出されているガイドピン147が、当該カバープレート107Aの外側に取付けられたストッパピン149(
図7参照)に当接される位置をいう。この待機位置では、ドライバ141の前端がドライバガイド121の打込み孔121aの後端(上端)に置かれ、リンクアーム143のC形係合凹部144が打込みピン133の係合突部134と係合可能な位置に置かれる。
【0034】
待機位置に置かれたリンクアーム143のC形係合凹部144は、打込みピン133の係合突部134がカムプレート137によってフライホイール131の正面から突出された際、当該突出された係合突部134と係合可能とされる。C形係合凹部144に対する係合突部134の係合動作は、打込みピン133がカムプレート137のカム面138を通過する前に行なわれるように設定されている。そして、当該係合状態は打込みピン133がフライホイール131の回転軸線回りを概ね半回転する間にわたって維持され、これによりリンクアーム143を介してドライバ141が前方へと移動して釘の打込み動作を遂行する。上記のC形係合凹部144に対する係合突部134の係合は、それらの係合面の摩擦によって維持される。
【0035】
ドライバ141の打込み動作が終了した時点で、C形係合凹部144に対する打込みピン133の係合が解除されるように定められている。すなわち、ドライバ141が打込み端へと移動された際、打込みピン133の係合突部134がC形係合凹部144の開口部分から径方向に抜け出るように構成されている。そして、打込みピン133は、係合突部134がC形係合凹部144から抜け出ると同時にコイルバネ135によって元の引込み位置に戻される。
【0036】
打込み動作後のドライバ141を待機位置に戻すドライバ戻し機構117は、
図5および
図7に示すように、ドライバ141を引き戻すつる巻バネ151および当該つる巻バネ151を保持するとともに、本体ハウジング107のカバープレート107Aの外表面に配置されたバネ保持用のホイール153を主体として構成される。つる巻バネ151は、その一端151aがホイール153側に掛止され、他端151bがカバープレート107Aの外表面に突出されたガイドピン147の外側端部に掛止されている。したがって、つる巻バネ151は、打込みピン133によってドライバ141が打込み動作される際には、ガイドピン147を介して締め付け方向に変形されて弾性エネルギーを蓄え、打込みピン133のリンクアーム143に対する係合が解除され、ドライバ141による釘の打込み動作が完了すると同時に当該弾性エネルギーによってドライバ141を待機位置へ戻す。なお、カバープレート107Aの外表面に配置されたドライバ戻し機構117を含むカバープレート107Aの全体は、フロントカバー106によって覆われている。
【0037】
次に、フライホイール131が1回転する間(打込みピン133が1周する間)に、カムプレート137を休止領域としての後方位置と作動領域としての前方位置との間で直線状に1往復させるカム切替機構119につき説明する。
図5に示すように、カム切替機構119は、カムプレート137を直線状に移動させるための、クランクシャフト167、クランクプレート169およびクランクピン168からなるクランク機構と、回転軸126の回転運動をクランク機構に伝達するための駆動側シンクロプーリ161、被動側シンクロプーリ163および両シンクロプーリ間に掛けられたシンクロベルト165からなる回転伝達機構と、回転伝達機構の回転をクランク機構に伝達したり遮断したりするスプリングクラッチ171と、スプリングクラッチ171を回転伝達状態と回転遮断状態に切替える電磁ソレノイド181とを主体として構成される。
【0038】
なお、スプリングクラッチ171は、便宜上、具体的構造については図示を省略するが、被動側シンクロプーリ163側に固定された駆動側部材と、クランクシャフト167側に固定された被動側部材と、それら部材間に配置されたスプリングを主体として構成されている。そして、電磁ソレノイド181の通電駆動によってストッパ183が突出動作して被動側部材の所定部位と係合し、当該被動側部材の回転を規制した場合には、回転伝達を遮断する状態とされ、ストッパ183が引込んで被動側部材の回転規制が解除された場合には、回転を伝達する状態とされる。
【0039】
電磁ソレノイド181は、作業者によるトリガ185の引き操作によって第2電子スイッチ184(
図6参照)がオン状態とされ、かつコンタクトアーム189が被加工材に押し付けられることによって第3電子スイッチ186(
図3参照)がオン状態とされた場合に通電状態とされ、第2電子スイッチ184と第3電子スイッチ186のいずれか一方がオフ状態では、非通電状態となるように構成されている。
【0040】
図6に示すように、トリガ185は、ハンドル部103に作業者による引き操作可能に配置されており、引き操作が解除されると、戻しバネ185bによって引き操作前の初期位置に戻される。トリガ185が引き操作されたときには、作動レバー187を介して第2電子スイッチ184がアクチュエータを押されてオン状態とされ、トリガ185の引き操作の解除によって第2電子スイッチ184が内蔵の復帰バネ(便宜上図示を省略する)によりオフ状態とされる。なお、前述したように、トリガ185は、前述したようにトリガロックレバー191によって引き操作が規制されており、当該トリガロックレバー191による操作規制が解除された場合に引き操作が許容される。
【0041】
コンタクトアーム189は、ドライバガイド121の長軸方向に移動可能に取り付けられ、付勢バネ188(
図7参照)によりドライバガイド121の先端から突出する方向に付勢されている。コンタクトアーム189が突出位置に置かれたときには第3電子スイッチ186がオフ状態とされ、コンタクトアーム189がその先端189aを被加工材に押し付けられて本体ハウジング107側に移動されたときに第3電子スイッチ186がオン状態とされるように構成される。
【0042】
次に、上記のように構成された釘打機100の作用および使用方法につき説明する。起動前の状態では、ドライバ141はドライバ戻し機構117によって待機位置に保持されている。カムプレート137はカム面138が打込みピン133と対向しない休止領域(
図9に示す後方位置)に置かれる。電磁ソレノイド181が非励磁状態にあり、ストッパ183によってスプリングクラッチ171が動力遮断状態に保持されている。
【0043】
かかる状態で、作業者がハンドル部103を把持してトリガロックレバー191を手前に回動操作(
図6の二点鎖線参照)すると、当該トリガロックレバー191の先端作動部191aに押動される連係レバー193を介して第1電子スイッチ192がオン状態とされ、駆動モータ123が通電駆動される。駆動モータ123の回転出力は、駆動Vプーリ125、Vベルト129、被動Vプーリ127および回転軸126を経てフライホイール131に伝達される。したがって、フライホイール131が回転駆動され、釘打ちに必要とされる運動エネルギーを蓄える。そして、フライホイール131に装着された打込みピン133が当該フライホイール131の回転軸線回りを回転する。このとき、カムプレート137のカム面138が当該打込みピン133の回転軌跡と対向しない休止領域にあるため、打込みピン133はフライホイール131に対して引込んだ位置のままで回転を継続する(カムプレート137の側面から離間している)。
【0044】
一方、回転軸126の回転運動は、駆動シンクロプーリ161からシンクロベルト165を経て被動側シンクロプーリ163に伝達されるが、このとき、スプリングクラッチ171が動力遮断状態にあるため、被動側シンクロプーリ163が空転する。なお、駆動モータ123を駆動するべくトリガロックレバー191が回動操作されたとき、当該トリガロックレバー191のロック部191bがトリガ185の係合部185aから離間され、トリガ185のロックが解除される。
【0045】
この状態で、トリガ185を引き操作すると、作動レバー187を介して第2電子スイッチ184がオン状態とされる。また、コンタクトアーム189の先端198aを被加工材に押し付けると、当該コンタクトアーム189が被加工材に押されて本体ハウジング107側に向って後退動作され、これにより第3電子スイッチ186がオン状態とされる。このように、第2電子スイッチ184および第3電子スイッチ186がオン状態とされると、電磁ソレノイド181が通電される。
【0046】
電磁ソレノイド181が通電され、ストッパ183が引込まれると、スプリングクラッチ171の被動側部材の回転規制が解除され、スプリングクラッチ171が回転伝達状態に切替わる。すると、被動側シンクロプーリ163の回転がスプリングクラッチ171を介してクランクシャフト167、クランクプレート169、クランクピン168からなるクランク機構に伝達され、当該クランク機構を介してカムプレート137が前方へと移動される。これにより、カムプレート137のカム面138が、それまでの休止領域から打込みピン133の回転軌跡と対向する作動領域(
図8に示す位置)へと切替わる。
【0047】
このようにカムプレート137が作動領域へ切替えられると、フライホイール131に取付けられた打込みピン133がカム面138上に乗り上がり、コイルバネ135に抗してフライホイール131の正面から突出される(
図10参照)。当該突出された打込みピン133は、その突出端部である係合突部134が、待機位置のリンクアーム143のC形係合凹部144に対し開口を通じて径方向から係合される。
図11に係合直前の状態が示される。
【0048】
打込みピン133と係合されたリンクアーム143は、当該打込みピン133の回転動作によって前方へと移動(移動途中が
図9に示される)され、これに伴いドライバ141が直線状に前進し、その先端で釘を打撃して被加工材に打ち込む。このとき、つり巻バネ151がリンクアーム143と共に移動するガイドピン147を介して締め付け方向に変形されて弾性エネルギーを蓄える。
【0049】
ドライバ141による釘の打込み動作が完了した時点で、打込みピン133の係合突部134がリンクアーム143のC形係合凹部144の開口部分から径方向に抜け出る。かくして、打込みピン133との係合が解除されたリンクアーム143は、つり巻バネ151によってドライバ141と共に待機位置に戻される。
【0050】
このように、本実施の形態によれば、カムプレート137が休止領域から作動領域へと移動後、再び休止領域へと移動される1回の往復動作を行う場合において、フライホイール131が1回転されると、打込みピン133が当該フライホイール131の回転軸回りを1周(1公転)し、ドライバ機構115におけるリンクアーム143に係合して当該ドライバ機構115を駆動する。
【0051】
なお、通電後の電磁ソレノイド181は、スプリングクラッチ171が1回転する前に通電が遮断される。このため、ストッパ183がスプリングクラッチ171に向かって突出され、スプリングクラッチ171が1回転した時点で当該スプリングクラッチ171の被動側部材の所定部位に係合し、その回転を規制する。これにより、スプリングクラッチ171が回転伝達を遮断する状態に切り替えられる。このため、カムプレート137は休止領域と作動領域間を1往復した後は、電磁ソレノイド181が再度通電されるまで休止領域に待機する。
【0052】
釘打ちを連続して行う場合には、例えばトリガ185を引き操作位置に保持したままで、コンタクトアーム189を被加工材から一旦離間させて打込み場所を変えた後、被加工材に再度押し付けると、第2電子スイッチ184および第3電子スイッチ186が共にオン状態とされるため、電磁ソレノイド181が通電される。あるいはトリガ185の引き操作を解除後、コンタクトアーム189を押し付け状態のままで被加工材上を滑らせて打込み場所を変えた後、トリガ185を再度引き操作した場合にも、第2電子スイッチ184および第3電子スイッチ186が共にオン状態とされるため、電磁ソレノイド181が通電される。これにより、カムプレート137が休止領域と作動領域間で切替動作されるため、上記と同様のドライバ141による釘打ちを行うことができる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態によれば、フライホイール131を回転駆動したままの状態で、ドライバ141による釘の打込み動作を連続して行うことができる。このため、釘打ちを行う際、その都度モータを通電駆動してフライホイールを回転駆動する方式であって、フライホール131が運動エネルギーを確保する回転数に達してから釘打ち動作に移行する構成の従来の釘打機に比べて、連続した釘の打込み動作を素早く行うことが可能となる。すなわち連射が可能となり、作業効率を向上することができる。
【0054】
上記のように構成され、かつ作用する本実施の形態に係る釘打機100は、釘Nの打込み作業に際して、被加工材の釘打込み領域にエアを吹き付けてごみを吹き飛ばすためのブロワ機構201を更に備えている。エア発生手段としてのブロワ機構201が
図12および
図13に示される。ブロワ機構201は、駆動モータ123によって駆動されるファン(羽根車)203と、ファン203を収容するとともに、本体ハウジング107側に固定されるファンケーシング205とを主体として構成される。本実施の形態に係るファン203は、円板203aに複数のブレード203bが周方向に所定間隔で配置された遠心ファンであり、2つのファン203が互いに接続されて並列状に連接された2連式として構成されている。
【0055】
ファンケーシング205は、ファン203によって発生されたエアの流れを整流するバッフルプレートとして機能するものであり、本実施の形態では、側面中央部にエアの吸い込み口207を有する略椀形のケーシング半割体205Aと、周壁部にエアを吐出するノズル209を備えたケーシング半割体205Bとを長軸方向に接合することによって構成されている。なお、本実施の形態では、ノズル209がファンケーシング205の長軸方向と交差する方向(接線方向)に所定長さで延在されている。ノズル209は、本発明における「吹き出し口」に対応する。
【0056】
上記のように構成されたファン203は、
図2、
図5および
図8に示すように、円板203aのボス部203cが駆動モータ123の出力軸123aに圧入することで固定され、当該駆動モータ123によって回転駆動される。このような取り付けを可能とするために、出力軸123aは、駆動Vプーリ125を貫通して延在し、その延在端部にファン203が取り付けられる構成としている。出力軸123aは、本発明における「回転部材」に対応する。ファンケーシング205は、本体ハウジング107内に固定状に配置されるとともに、ノズル209が本体ハウジング107の先端壁部に形成された開口を通して本体ハウジング107の外方に突出されている。ノズル209は、前方へと所定長さで延在するとともに、ドライバガイド121の近傍に概ね並行して配置されており、ファン203の回転駆動によって発生したエアを打込み領域に吹き出す構成とされる。
【0057】
なお、本実施の形態においては、ノズル209が、ドライバ機構115の長軸線を挟んでマガジン105の打込み材送り機構197の反対側に配置されている。すなわち、釘打機100の先端側(ドライバガイド121側)を下方に向けた下向き状態で、釘打機100を先端側の反対側から見た(平面視した)場合において、打込み材送り機構197がドライバ機構115の長軸線の左側に配置され、ノズル209が右側に配置された構成としている。
【0058】
上記のように構成されたブロワ機構201は、前述したように、トリガロックレバー191を回動操作して第1電子スイッチ192をオン状態にし、駆動モータ123を通電駆動すると、出力軸123aと共にファン203が回転する。ファン203が回転すると、ファンケーシング205の吸い込み口207からファン203内部に吸い込まれたエアが、複数のブレード203bの間を通って外径方向へと吐き出されるとともに、ファン203の外周とファンケーシング205の周壁内面との間の送風路を経てノズル209へと圧送され、当該ノズル209の先端から吹き出される。
従って、本実施の形態によれば、釘打ち作業時において、ドライバ機構115による釘Nの打込み動作に先行して、ブロワ機構201を駆動し、ノズル209から吹き出されるエアによって被加工材の釘打込み領域のごみを吹き飛ばすことができる。
【0059】
本実施の形態に係る釘打機100は、迅速に釘Nを打込むために、トリガロックレバー191を操作した段階でフライホイール131を先行して回転させ、その後において、トリガ185を操作してドライバ機構115により釘Nを打込む方式であり、このような方式を利用すれば、ブロワ機構201を使いたいときには、任意にトリガロックレバー191を操作するだけでエアを吹き出すことができる。またブロワ機構201は、トリガロックレバー191をトリガ185のロックを解除する位置に保持する限り、継続して使用することができる。
【0060】
なお、マガジン105内の釘Nは、接着剤で互いに並列状に接続されており、釘Nが打込まれる毎に接着材の屑片が発生するが、本実施の形態によれば、このような接着剤の屑片が発生する同時にこれを吹き飛ばすことができるため、合理的である。
【0061】
また、本実施の形態では、ブロワ機構201のノズル209をドライバガイド121の右側、従ってマガジン105の右側に配置したので、右手で釘打機100のハンドル部103を掴んで釘打ち作業を行う場合において、ノズル209から吹き出されたエアが作業者の顔等にかかり難くなり、使用性を向上することができる。また、ブロワ機構201は、本体ハウジング107の内部空間に収容されているため、外部からの外力で損傷を受けることもないし、外観見栄えを損なうこともない。
【0062】
(本発明の第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態につき、
図14〜
図18を参照しつつ説明する。本実施の形態は、ブロワ機構301に関する変形例である。本実施の形態のブロワ機構301は、釘打機100に備えられる釘打込み用の駆動モータ123とは別のモータを用いてファンを駆動する構成としたものであり、釘Nの打込みシステムに関する構成については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0063】
本実施に形態に係るブロワ機構301は、モータ307を内蔵したモータ一体形として構成されている。モータ307は、ファン303の内側(内周側)に同軸で配置され、便宜上、具体的図示については省略するが、当該モータ307の回転側部材(筒状ロータ)がファン303に接続され、モータ307の固定側部材(軸部材)がファン303を収容し、エア流れを整流するファンケーシング305に接続される。ファンケーシング305の側壁面には、エアの吸い込み口305aが設けられ、周壁面には吹き出し口305bが形成されている。モータ307は、本発明における「ファン駆動用モータ」に対応する。
【0064】
上記のように構成されるブロワ機構301は、
図17および
図18に示すように、本体ハウジング107の先端側の内部空間に、ファン305の回転軸線がドライバ141の長軸方向と交差状に、かつファンケーシング305の吹き出し口305bが本体ハウジング107の前面壁に形成された開口(窓)107cに臨むように配置されるとともに、当該ファンケーシング305が本体ハウジング107にネジ等の適宜止着手段によって固定される。すなわち、ブロワ機構301は、開口107cから吹き出されるエアがドライバガイド121の近傍を通って当該ドライバガイド121の長軸方向(ドライバ141の長軸方向)に沿って流れるように位置および方向が定められている。そして、ブロワ機構301のモータ307は、釘打機100の駆動モータ123を駆動するべくトリガロックレバー191操作されたときに、通電駆動されるように構成されている。
【0065】
本実施の形態に係るブロワ機構301は、上記のように構成されており、前述した第1の実施の形態と同様の作用効果を奏するものである。特に本実施の形態では、ブロワ機構301を、モータ307を内蔵したモータ一体形としたので、本体ハウジング107の内部空間に配置する際、他の部材、釘打込みに関係する部材との機械的なつながりが無いことから、配置上の自由度が高い。
【0066】
なお、上述した各実施の形態では、ブロワ機構201,301を本体ハウジング107の内部空間に収容するとしたが、本体ハウジング107の外側に配置しても構わない。
また、釘Nの打込み方式については、実施の形態で説明した方式に限定されるものではなく、例えば釘を打込むドライバを、電動モータにより回転駆動される駆動ホイールと自由に回転するローラとの間に挟み込むことにより当該ドライバを直線状に移動させる方式の釘打機に、ブロワ機構201,301を適用することが可能である。
また、第2の実施形態においては、トリガロックレバー191とは更に別に設けたスイッチの操作によってモータ307が通電駆動されるように構成してもよい。
また、本実施の形態は、打込み工具として釘打機100を例にして説明したが、釘打機以外のタッカー、ステープラーと呼ばれる打込み工具に適用してもよい。
【0067】
なお、本発明の趣旨に鑑み、以下の態様を構成することができる。
(態様1)
「ブロワ機構は、工具本体の内部に収容されていることを特徴とする。」
【0068】
(態様2)
「態様1において、ブロワ機構は、ファンの回転駆動によって発生したエアを打込み材の打込み領域に向けて吹き出すノズルを有し、当該ノズルは、打込み機構の長軸線に並行して所定長さで工具本体の外部に延在されていることを特徴とする。」
【0069】
(態様3)
「ブロア機構は、軸方向に並列状に連接された複数のファンを有することを特徴とする。」
【0070】
(態様4)
「請求項1に記載の打込み工具において、第2操作スイッチは、第1操作スイッチの操作を不能とする状態に固定するロック部材としての機能を有し、前記第1操作スイッチの固定を解除して当該第1操作スイッチの操作を可能とする位置へと操作された場合に、ブロワ機構が駆動される構成としたことを特徴とする。」